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特許7084758中性子線検出装置、及び中性子線検出装置の異常検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】中性子線検出装置、及び中性子線検出装置の異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/00 20060101AFI20220608BHJP
   G01T 3/06 20060101ALI20220608BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
G01T3/00 E
G01T3/06
G01T1/20 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018062605
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019174272
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 清崇
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/192321(WO,A1)
【文献】特開2010-271153(JP,A)
【文献】特開2007-187546(JP,A)
【文献】特開2015-094624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 3/06
G01T 1/20
G21C 17/10-17/12
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子線を検出する中性子線検出装置であって、
放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、
前記シンチレータで発生した前記光を伝送する光ファイバーと、
前記光ファイバーによって伝送された前記光を受光し、受光した前記光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、前記検出信号を前記中性子線に関する信号として弁別する弁別部と、
前記中性子線検出装置の異常を判定する異常判定部と、を備え、
前記弁別部は、波高分布における前記中性子線によるピークを検出し、
前記異常判定部は、前記波高分布に関する曲線の中で前記ピークが検出されない場合に異常と判定する、中性子線検出装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記ピークが検出された場合、前記ピーク周辺における前記波高分布に対するフィッティングの結果が、正規分布とならない場合に異常と判定する、請求項1に記載の中性子線検出装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記ピークが検出された場合、前記ピーク周辺における前記波高分布に対するフィッティングの結果を正規分布と対比し、正規分布と類似しない場合には、異常と判定する、請求項1に記載の中性子線検出装置。
【請求項4】
前記中性子線検出装置の劣化を判定する劣化判定部を更に備え、
前記劣化判定部は、
前記異常判定部によって異常が判定されなかった場合に劣化の判定を行い、
フィッティングの結果に係る正規分布の幅が予め定めた範囲から外れる場合には、劣化と判定する、請求項2又は3に記載の中性子線検出装置。
【請求項5】
前記中性子線検出装置の劣化を判定する劣化判定部を更に備え、
前記劣化判定部は、
前記異常判定部によって異常が判定されなかった場合に劣化の判定を行い、
フィッティングの結果に係る正規分布の中心位置が予め定めた範囲から外れる場合には、劣化と判定する、請求項2又は3に記載の中性子線検出装置。
【請求項6】
放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、
前記シンチレータで発生した前記光を伝送する光ファイバーと、
前記光ファイバーによって伝送された前記光を受光し、受光した前記光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、前記検出信号を中性子線に関する信号として弁別する弁別部と、を備える中性子線検出装置の異常検知方法であって、
波高分布における前記中性子線によるピークを検出する工程と、
前記中性子線検出装置の異常を検出する工程と、を備え、
前記異常を検出する工程では、前記波高分布に関する曲線の中で前記ピークが検出されない場合に異常と判定する、中性子線検出装置の異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子線検出装置、及び中性子線検出装置の異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中性子線とガンマ線とを弁別する技術として特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に係るシステムでは、検出した信号の波高分布から中性子線による信号とガンマ線による信号とを弁別している。このシステムは、所定の判定閾値を設定し、検出した信号のうち、波高が判定閾値を超えたものを中性子線に関する信号として弁別している。また、このシステムは、検出器が劣化することで波高分布が低エネルギー側へ移動しても、判定閾値を設定し直すことで、弁別を好適に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/192321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のシステムによれば、検出器が劣化した場合に対応することができるものの、異常の発生を検知することが出来なかった。ここで、異常を検知するために、複数のモニタを併用し、検出結果の差異を監視することが考えられる。しかし、このような方法は、複数のモニタが必要となり、且つ、どのモニタで異常が発生しているかを把握することができない。従って、シンプルな構成で中性子線検出装置の異常を検知することが求められていた。
【0005】
従って、本発明は、シンプルな構成で中性子線検出装置の異常を検知することができる中性子線検出装置、及び中性子線検出装置の異常検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る中性子線検出装置は、中性子線を検出する中性子線検出装置であって、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、シンチレータで発生した光を伝送する光ファイバーと、光ファイバーによって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号として弁別する弁別部と、中性子線検出装置の異常を判定する異常判定部と、を備え、弁別部は、波高分布における中性子線によるピークを検出し、異常判定部は、ピークが検出されない場合に異常と判定する。
【0007】
この中性子線検出装置では、弁別部は、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号として弁別する。ここで、検出信号に基づいて形成される波高分布は、中性子線検出装置に異常が無い場合は、中性子線が徐々に増加し、ピークを形成して徐々に減少するような波形となる。すなわち、波高分布にピークが検出されない場合は、中性子線検出装置に異常があると判断できる。従って、異常判定部は、ピークが検出されない場合に異常と判定する。これにより、複数のモニタなどを用いることなく、容易に中性子線検出装置の異常を検知することができる。以上より、シンプルな構成で中性子線検出装置の異常を検知できる。
【0008】
中性子線検出装置において、異常判定部は、ピークが検出された場合、ピーク周辺における波高分布に対するフィッティングの結果が、正規分布とならない場合に異常と判定してよい。ここで、検出信号に基づいて形成される波高分布は、中性子線検出装置に異常が無い場合は、ピーク付近が正規分布となる。従って、異常判定部は、フィッティングの結果が正規分布とならない場合に異常と判定することで、容易に中性子線検出装置の異常を検知することができる。
【0009】
中性子線検出装置において、異常判定部は、ピークが検出された場合、ピーク周辺における波高分布に対するフィッティングの結果を正規分布と対比し、正規分布と類似しない場合には、異常と判定してよい。ここで、検出信号に基づいて形成される波高分布は、中性子線検出装置に異常が無い場合は、ピーク付近が正規分布に類似する。従って、異常判定部は、フィッティングの結果が正規分布に類似しない場合に異常と判定することで、容易に中性子線検出装置の異常を検知することができる。
【0010】
中性子線検出装置において、中性子線検出装置の劣化を判定する劣化判定部を更に備え、劣化判定部は、異常判定部によって異常が判定されなかった場合に劣化の判定を行い、フィッティングの結果に係る正規分布の幅が予め定めた範囲から外れる場合には、劣化と判定してよい。中性子線検出装置が劣化した場合は、フィッティングの結果に係る正規分布の幅が変化する。従って、劣化判定部が、フィッティングの結果に係る正規分布の幅が予め定めた範囲から外れる場合に劣化と判定することで、容易に中性子線検出装置の劣化を判定することができる。
【0011】
中性子線検出装置において、中性子線検出装置の劣化を判定する劣化判定部を更に備え、劣化判定部は、異常判定部によって異常が判定されなかった場合に劣化の判定を行い、フィッティングの結果に係る正規分布の中心位置が予め定めた範囲から外れる場合には、劣化と判定してよい。中性子線検出装置が劣化した場合は、フィッティングの結果に係る正規分布の中心位置が変化する。従って、劣化判定部が、フィッティングの結果に係る正規分布の中心位置が予め定めた範囲から外れる場合に劣化と判定することで、容易に中性子線検出装置の劣化を判定することができる。
【0012】
中性子線検出装置の異常検知方法は、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、シンチレータで発生した光を伝送する光ファイバーと、光ファイバーによって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号として弁別する弁別部と、を備える中性子線検出装置の異常検知方法であって、波高分布における中性子線によるピークを検出する工程と、中性子線検出装置の異常を検出する工程と、を備え、異常を検出する工程では、ピークが検出されない場合に異常と判定する。
【0013】
この中性子線検出装置の異常検知方法では、上述の中性子線検出装置と同様の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シンプルな構成で中性子線検出装置の異常を検知することができる中性子線検出装置、及び中性子線検出装置の異常検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の中性子線検出装置を備えた中性子捕捉療法システムを示す概略図である。
図2】コリメータに設けられた中性子線検出器を示す断面図である。
図3】中性子線検出装置を示すブロック図である。
図4】正常な状態の波高分布を示すグラフである。
図5】中性子線によるピークが検出できない波高分布を示すグラフである。
図6】正規分布に類似しない波高分布を示すグラフである。
図7】中性子線検出装置が劣化した場合の波高分布を示すグラフである。
図8】実際の検出信号による波高分布の一例を示すグラフである。
図9】中性子線検出装置の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1に示される中性子捕捉療法システム150は、中性子捕捉療法装置1と、中性子線検出装置100と、表示部31と、入力部32と、を備える。ここでは、まず中性子捕捉療法装置1について説明する。中性子捕捉療法装置1は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)を用いたがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法装置1では、例えばホウ素(10B)が投与された患者(被照射体)50の腫瘍に中性子線Nを照射する。
【0018】
中性子捕捉療法装置1は、サイクロトロン2を備えている。サイクロトロン2は、陰イオン等の荷電粒子を加速して、荷電粒子線Rを作り出す加速器である。本実施形態において、荷電粒子線Rは陰イオンから電荷を剥ぎ取って生成した陽子ビームである。このサイクロトロン2は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Rを生成する能力を有している。なお、加速器は、サイクロトロンに限られず、シンクロトロンやシンクロサイクロトロン、ライナックなどであってもよい。
【0019】
サイクロトロン2から出射された荷電粒子線Rは、中性子線生成部Mへ送られる。中性子線生成部Mは、ビームダクト3とターゲット7とからなる。サイクロトロン2から出射された荷電粒子線Rは、ビームダクト3を通り、ビームダクト3の端部に配置されたターゲット7へ向かって進行する。このビームダクト3に沿って複数の四極電磁石4、電流モニタ5、及び走査電磁石6が設けられている。複数の四極電磁石4は、例えば電磁石を用いて荷電粒子線Rのビーム軸調整を行うものである。
【0020】
電流モニタ5は、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの電流値(つまり、電荷,照射線量率)をリアルタイムで検出するものである。電流モニタ5は、荷電粒子線Rに影響を与えずに電流測定可能な非破壊型のDCCT(DC Current Transformer)が用いられている。電流モニタ5は、検出結果を後述する制御部20に出力する。なお、「線量率」とは、単位時間当たりの線量を意味する。
【0021】
具体的には、電流モニタ5は、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの電流値を精度よく検出するため、四極電磁石4による影響を排除すべく、四極電磁石4より下流側(荷電粒子線Rの下流側)で走査電磁石6の直前に設けられている。すなわち、走査電磁石6はターゲット7に対して常時同じところに荷電粒子線Rが照射されないように走査するため、電流モニタ5を走査電磁石6よりも下流側に配設するには大型の電流モニタ5が必要となる。これに対し、電流モニタ5を走査電磁石6よりも上流側に設けることで、電流モニタ5を小型化することができる。
【0022】
走査電磁石6は、荷電粒子線Rを走査し、ターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射制御を行うものである。この走査電磁石6は、荷電粒子線Rのターゲット7に対する照射位置を制御する。
【0023】
中性子捕捉療法装置1は、荷電粒子線Rをターゲット7に照射することにより中性子線Nを発生させ、患者50に向かって中性子線Nを出射する。中性子捕捉療法装置1は、ターゲット7、遮蔽体9、減速材8、コリメータ10、ガンマ線検出部11を備えている。
【0024】
また、中性子捕捉療法装置1は、制御部20を備えている。制御部20は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等から構成されており、中性子捕捉療法装置1を総合的に制御する電子制御ユニットである。制御部20の詳細な構成については後述する。
【0025】
ターゲット7は、荷電粒子線Rの照射を受けて中性子線Nを生成するものである。ここでのターゲット7は、例えば、ベリリウム(Be)やリチウム(Li)、タンタル(Ta)、タングステン(W)により形成され、例えば直径160mmの円板状を成している。なお、ターゲット7は、円板状に限らず、他の形状であってもよい。また、ターゲット7は固体状に限らず液体状であってもよい。
【0026】
減速材8は、ターゲット7で生成された中性子線Nのエネルギーを減速させるものである。減速材8は、中性子線Nに含まれる速中性子を主に減速させる第1の減速材8Aと、中性子線Nに含まれる熱外中性子を主に減速させる第2の減速材8Bと、からなる積層構造を有している。
【0027】
遮蔽体9は、発生させた中性子線N、及び当該中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等を外部へ放出されないよう遮蔽するものである。遮蔽体9は、減速材8を囲むように設けられている。遮蔽体9の上部及び下部は、減速材8より荷電粒子線Rの上流側に延在しており、これらの延在部にガンマ線検出部11が設けられている。
【0028】
コリメータ10は、中性子線Nの照射野を整形するものであり、中性子線Nが通過する開口10aを有する。コリメータ10は、例えば中央に開口10aを有するブロック状の部材である。
【0029】
ガンマ線検出部11は、荷電粒子線Rの照射により中性子線生成部Mから発生するガンマ線をリアルタイムで検出するものである。ガンマ線検出部11としては、シンチレータや電離箱、その他様々なガンマ線検出機器を採用することができる。本実施形態において、ガンマ線検出部11は、ターゲット7の周囲で減速材8より荷電粒子線Rの上流側に設けられている。
【0030】
ガンマ線検出部11は、荷電粒子線Rの上流側に延在する遮蔽体9の上部及び下部の内側にそれぞれ配置されている。なお、ガンマ線検出部11の数は特に限定されず、一つであってもよく、三つ以上であってもよい。ガンマ線検出部11を三つ以上設けるときは、ターゲット7の外周を囲むように所定間隔で設けることができる。ガンマ線検出部11は、ガンマ線の検出結果を制御部20に出力する。このガンマ線検出部11を備えていない構成でもよい。
【0031】
次に、本実施形態に係る中性子線検出装置100の構成について、図2及び図3を参照して説明する。
【0032】
図2に示されるように、中性子線検出装置100は、中性子線検出器12と、制御部20と、を備える。また、中性子線検出装置100の制御部20は、表示部31及び入力部32と、接続されている。
【0033】
コリメータ10には、コリメータ10の開口10aを通過する中性子線Nをリアルタイムで検出するための中性子線検出器12が設けられている。中性子線検出器12は、コリメータ10に形成された貫通孔10b(開口10aと直交する方向に形成された貫通孔)中に少なくともその一部が設けられている。中性子線検出器12は、シンチレータ13、光ファイバー14、光検出器15を有している。
【0034】
シンチレータ13は、入射した放射線(中性子線N、ガンマ線)を光に変換する蛍光体である。シンチレータ13は、入射した放射線の線量に応じて内部結晶が励起状態となり、シンチレーション光を発生させる。シンチレータ13は、コリメータ10の貫通孔10b内に設けられており、コリメータ10の開口10aに露出している。シンチレータ13は、開口10a内の中性子線Nまたはガンマ線がシンチレータ13に入射することで発光する。シンチレータ13には、Liガラスシンチレータ、LiCAFシンチレータ、LiFを塗布したプラスチックシンチレータ、LiF/ZnSシンチレータ等を採用できる。
【0035】
光ファイバー14は、シンチレータ13で生じた光を伝達する部材である。光ファイバー14は、例えば、フレキシブルな光ファイバーの束などから構成されている。光検出器15は、光ファイバー14を通じて伝達された光を検出するものである。光検出器15としては、例えば光電子増倍管や光電管など各種の光検出機器を採用することができる。光検出器15は、光検出時に電気信号(検出信号)を制御部20に出力する。
【0036】
表示部31は、使用者に対して各種情報を表示する機器である。表示部31として、ディスプレイ等が採用される。使用者に入力させたい情報がある場合、表示部31は、使用者に対して情報の入力を案内する通知を表示する。また、表示部31は、使用者の入力を受けて制御部20で演算された結果などを表示する。表示部31は、中性子線検出器12の検出信号の波高分布を表示する。入力部32は、使用者による各種入力がなされる機器である。入力部32は、キーボード、マウス、タッチスクリーン等によって構成されている。
【0037】
図3に示されるように、制御部20は、線量算出部21と、判定部(異常判定部、劣化判定部)23と、照射制御部22と、を有している。制御部20は、電流モニタ5、走査電磁石6、ガンマ線検出部11及び光検出器15(中性子線検出器12)、表示部31、及び入力部32と電気的に接続されている。
【0038】
線量算出部21は、電流モニタ5による荷電粒子線Rの電流値の検出結果に基づいて、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの線量をリアルタイムで測定(算出)する。線量算出部21は、測定された荷電粒子線Rの電流値を時間に関して逐次積分し、荷電粒子線Rの線量をリアルタイムで算出する。
【0039】
また、線量算出部21は、ガンマ線検出部11によるガンマ線の検出結果に基づいて、ガンマ線の線量をリアルタイムで測定(算出)する。
【0040】
さらに、線量算出部21は、中性子線検出器12による中性子線Nの検出結果に基づいて、コリメータ10の開口10aを通過する中性子線Nの線量を測定(算出)する。線量算出部21は、光検出器15から検出信号を受信し、中性子線に関する信号とガンマ線に関する信号とを弁別する(詳しくは後述する)。光検出器15及び線量算出部21は、弁別部を構成する。
【0041】
線量算出部21は、算出した荷電粒子線Rの線量、ガンマ線の線量、及び中性子線Nの線量に基づいて、ターゲット7で発生した中性子線Nの線量を総合的にリアルタイムで算出する。中性子線Nの線量など線量算出部21による算出結果は、例えば表示部31に表示される。
【0042】
判定部23は、中性子線検出装置100の異常を判定する。また、判定部23は、中性子線検出装置100の中性子線検出器12の劣化を判定する。判定部23は、判定結果を表示部31へ送信し、当該表示部31で表示させる。なお、判定部23の詳細については、後述する。
【0043】
照射制御部22は、線量算出部21によって算出された中性子線Nの線量に基づいて、ターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射を制御する。照射制御部22は、サイクロトロン2及び走査電磁石6に指令信号を送信してターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射を制御することで、ターゲット7から生成される中性子線Nの患者に対する照射制御を行う。照射制御部22は、線量算出部21の算出する中性子線Nの線量が予め設定された治療計画に沿うように中性子線Nの照射制御を行う。
【0044】
次に、弁別部である線量算出部21の機能、及び判定部23の機能について、より詳細に説明する。
【0045】
線量算出部21は、光検出器15で受光した光に関する検出信号の波高(光量)が判定閾値Qを超えているか否か判定し、中性子線Nによる検出信号と、ガンマ線による検出信号とを弁別する。シンチレータ13において、放射線として中性子線N及びガンマ線が入射するので、光量の強さに応じて中性子線Nとガンマ線とを弁別する。
【0046】
図4は、中性子線検出装置100が正常である場合の検出信号の波高分布を示すグラフである。図4では、横軸に光検出器15で受光した光に関する検出信号の波高(光量)を示し、縦軸に検出信号のイベント数(Count/s)を示している。図4に示されるように、線量算出部21は、波高分布において2つ目のピークを中性子線NによるピークPとする。なお、実際の検出信号による波高分布は、図8に示すように、揺らぎのあるグラフとなる。図4図7においては、波高分布を曲線で近似した状態のグラフを示している。
【0047】
線量算出部21は、波高分布における中性子線NによるピークPを検出する。なお、ここでは、中性子線検出装置100が正常である場合の波高分布を示す図4と、中性子線検出装置100の異常によって中性子線NによるピークPを有していない波高分布を示す図5と、を比較することによって説明を行う。
【0048】
前述のように、検出信号の波高分布は図8のような揺らぎのあるグラフである。従って、線量算出部21は、検出信号の波高分布に対して、近似曲線を作成する。これにより、図4及び図5に示すようなグラフが得られる。パルス波高分布をスムージング(平滑化)して滑らかにすることで近似曲線を作成する。線量算出部21は、近似曲線の横軸の位置(検出信号の波高)に応じた傾きを微分によって取得する。更に得られた微分曲線をスムージングする。これに基づき、線量算出部21は、近似曲線のうち、傾きが正の状態から傾きが0となり、その後傾きが負となる箇所を、中性子線NによるピークPとして検出する。一方、線量算出部21は、近似曲線の中で、前述のような傾きの変化がある箇所を特定できない場合は、「ピークPを検出できない」という結果を取得する。例えば、図4に示すグラフでは、前述のような傾きの変化がある箇所と特定できるため、線量算出部21は、ピークPを検出することができる。一方、図5に示すグラフでは、近似曲線は急激に減少した後、一様に減少し、その後、傾き0の状態が続いている。従って、線量算出部21は、ピークPを検出することができない。
【0049】
線量算出部21は、ピークPを有する波高分布に対してフィッティングを行う。フィッティングのための関数としては、下記式(1)のガウス関数が挙げられる。線量算出部21は、最小二乗法を用いてフィッティングを行う。なお、線量算出部21は、少なくとも検出したピークP付近の領域を含む範囲にて、最小二乗法によるフィッティングを行う。本実施形態では、ピークPよりも横軸の負側(波高が低い側)の基準位置を設定し、線量算出部21は、当該基準位置よりも横軸の正側(波高が高い側)の全範囲にわたってフィッティングを行うものとする。負側の基準位置は、例えば、微分が負から0となりその後正となる点に設定されてよい。図4に示す例では、ピークPの負側に隣接した谷部(下側のピーク)の位置を基準位置としてよい。なお、正側にも基準位置を設定してもよく、例えば、谷部のピークPを挟んだ反対側の位置を基準位置に設定してよい。これにより、線量算出部21は、少なくともピークP付近の領域を含んだ範囲にてフィッティングを行うことができる。このような手順により、線量算出部21は、ピークP周辺における波高分布に対するフィッティングの結果として、正規分布(すなわちガウス分布)にフィッティングされた近似曲線を得ることができる。
【数1】


xは検出信号の光量を示し、μはピークの位置を示している。
【0050】
線量算出部21は、正規分布にフィッティングされた近似曲線に対して、判定閾値Qを設定する。ただし、線量算出部21は、判定部23の後述の判定方法により、中性子線検出装置100の異常及び劣化がないと判定された近似曲線に対して、判定閾値Qを設定する。判定閾値Qを求めるための判定閾値計算式は、「Q=μ-aσ」と表される。「μ」は中性子線NによるピークPのエネルギー方向(グラフにおける横軸方向)の位置、すなわち検出信号の波高を示している。「σ」は、中性子線Nが作る分布の標準偏差を示す。なお、ここでは、正規分布にフィッティングされた近似曲線から得られた「μ」、「σ」を用いている。「a」は、σに対する係数を示す。すなわち、判定閾値Qは、エネルギー方向における中性子線NによるピークPの波高μからaσだけ低い値に設定される。例えば、「a=1.5」に設定され、中性子線Nによるピークの波高μから1.5σ低い値が判定閾値xに設定される。ただし、「a」の値は特に限定されず、弁別の精度などに基づいて適宜変更してもよい。線量算出部21は、このようにして得られた判定閾値Qを用いて中性子線Nによる検出信号と、ガンマ線による検出信号とを弁別する。
【0051】
判定部23は、線量算出部21によって波高分布の中性子線NによるピークPが検出されない場合に異常と判定する。判定部23は、線量算出部21からピークPの検出結果を取得するが、このとき、「ピークPを検出できない」という結果を受け取った場合に、異常があると判定する。
【0052】
また、判定部23は、波高分布にピークPが検出された場合、ピークP周辺における波高分布に対するフィッティングの結果を正規分布と対比し、正規分布と類似しない場合には、異常と判定する。ここでのフィッティングの結果とは、上述のように、線量算出部21によって得られた、正規分布にフィッティングされた近似曲線である。具体的には、判定部23は、下記式(2)を用いて、X redを演算する。最小二乗法を用いてフィッティングを行った場合、X redの値が1に近いほど、フィッティングの結果が正規分布に近いことを示し、1から遠いほどフィッティングの結果が正規分布からずれていることを示す。なお、式(2)のうちの「f(x)」は、上述の式(1)が当てはまる。「y」は、横軸のある箇所(iに対応する箇所)におけるカウント数を示している。「i=1」の箇所は、最小二乗法でフィッティングした際に設定した基準位置に該当する箇所である。
【数2】

【0053】
判定部23は、X redに対する閾値として、X thresholdを予め設定しておく。判定部23は、X redがX thresholdより大きくなった場合に、異常と判定する。当該閾値は特に限定されないが、フィッティングの結果の近似曲線が正規分布に類似していると見なすことができる範囲で設定される。例えば、閾値として1.5が設定される。例えば、図4に示す近似曲線は、正規分布に類似した曲線であるため、X redは1に近い値となる。一方、図6に示す近似曲線は、ピークPが検出されているため、正規分布でのフィッティングはなされるものの、フィッティングの結果の近似曲線は、正規分布からは大きくずれている。従って、X redは1から大きく離れて閾値を超えるため、判定部23は異常であると判定する。
【0054】
判定部23は、当該判定部23によって異常が判定されなかった場合に劣化の判定を行う。判定部23は、フィッティングの結果に係る正規分布の幅が予め定めた範囲から外れる場合には、劣化と判定する。また、判定部23は、フィッティングの結果に係る正規分布の中心位置が予め定めた範囲から外れる場合には、劣化と判定する。
【0055】
具体的には、判定部23は、フィッティングの結果に係る正規分布の標準偏差である「σ」を正規分布の幅とする。フィッティングの結果に係る正規分布のピークPの位置「μ」を正規分布の中心位置とする。そして、判定部23は、エネルギー分解能(σ/μ)が予め定めた閾値以上となった場合に、劣化と判定する。閾値は特に限定されないが、例えば0.3に設定されてよい。劣化としては、光量の低下が挙げられる。このような光量の低下は、シンチレータ13、光学グリース、光ファイバー14、光ファイバコネクタ、光電子増倍管の光電面などの劣化に起因する。この場合は、検出器のエネルギー分解能が正常時よりも悪化するため、エネルギー分解能の判定を行うことで、劣化を好適に検知できる。例えば、図7に示す近似曲線は、図4の近似曲線から形状は変わってはいるものの、正規分布に類似した状態が維持された曲線であるため、判定部23は異常とは判定しない。しかし、劣化に伴ってエネルギー分解能が正常な状態から変化しているため、判定部23は、エネルギー分解能の変化に基づいて、劣化と判定する。
【0056】
判定部23は、エネルギー分解能を用いることで、正規分布の幅と正規分布の中心位置をまとめて一度に判定していた。これに変えて、判定部23は、正規分布の幅、及び正規分布の中心位置に対して、個々の閾値を設定して判定を行ってもよい。
【0057】
次に、図9を参照して、本実施形態に係る異常検知方法を含む、中性子線検出装置の処理内容について説明する。図9に示す処理は、制御部20にて繰り返し実行される処理である。
【0058】
まず、線量算出部21は、検出信号の波高分布が中性子線NによるピークPを検出する(ステップS10)。このとき、線量算出部21は、図4図6及び図7のようにピークPを有する波高分布については、ピークPの位置を検出する。一方、線量算出部21は、図5に示すようにピークPを有さない波高分布については、ピークPを検出できなかった旨の結果を取得する。
【0059】
次に、判定部23は、S10においてピークPが検出されたか否かを判定する(ステップS20)。S20において、ピークPが検出されなかったと判定された場合、判定部23は中性子線検出装置100に異常があると判定する。この場合は、判定部23は、表示部31に警告を表示する(ステップS30)。
【0060】
一方、S20においてピークPが検出されたと判定された場合、線量算出部21は、ピークP周辺における波高分布に対して、最小二乗法を用いて正規分布にフィッティングする(ステップS40)。次に、判定部23は、S40でのフィッティングの結果を正規分布と対比し、正規分布と類似するか否かを判定する(ステップS50)。判定部23は、上述の式(2)で算出されるX redが閾値であるX thresholdの範囲から外れる場合に、フィッティングの結果が正規分布に類似しないと判定する。S50において、フィッティングの結果が正規分布と類似しないと判定された場合、判定部23は中性子線検出装置100に異常があると判定する。この場合は、判定部23は、表示部31に警告を表示する(ステップS30)。
【0061】
一方、S50においてフィッティングの結果が正規分布と類似すると判定された場合、判定部23は、中性子線検出装置100に劣化があるか否かを判定する(ステップS60)。S60では、判定部23は、エネルギー分解能(σ/μ)が予め定めた閾値以上となった場合に、劣化と判定する。S60において劣化と判定された場合、判定部23は表示部31に警告を表示する(ステップS30)。一方、S60において劣化がないと判定された場合は、線量算出部21は、フィッティングの結果によって得られた近似曲線を用いて判定閾値Qを設定する。そして、線量算出部21は、判定閾値Qを用いて、光検出器15から検出信号を受信し、中性子線に関する信号とガンマ線に関する信号とを弁別する(ステップS70)。以上により図9に示す処理が終了し、再びS10から処理をスタートする。ただし、S30の警告が行われた場合は、処理を中断してもよい。
【0062】
次に、本実施形態に係る中性子線検出装置100の作用・効果について説明する。
【0063】
この中性子線検出装置100では、線量算出部21は、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線Nに関する信号として弁別する。ここで、検出信号に基づいて形成される波高分布は、中性子線検出装置100に異常が無い場合は、中性子線Nが徐々に増加し、ピークPを形成して徐々に減少するような波形となる。すなわち、波高分布にピークが検出されない場合は、中性子線検出装置100に異常があると判断できる。従って、判定部23は、ピークPが検出されない場合に異常と判定する。これにより、複数のモニタなどを用いることなく、容易に中性子線検出装置100の異常を検知することができる。以上より、シンプルな構成で中性子線検出装置100の異常を検知できる。
【0064】
中性子線検出装置100において、判定部23は、ピークPが検出された場合、ピークP周辺における波高分布に対するフィッティングの結果を正規分布と対比し、正規分布と類似しない場合には、異常と判定してよい。ここで、検出信号に基づいて形成される波高分布は、中性子線検出装置100に異常が無い場合は、ピークP付近が正規分布に類似する。従って、判定部23は、フィッティングの結果が正規分布に類似しない場合に異常と判定することで、容易に中性子線検出装置の異常を検知することができる。
【0065】
中性子線検出装置100において、中性子線検出装置100の劣化を判定する判定部23を更に備え、判定部23は、判定部23によって異常が判定されなかった場合に劣化の判定を行い、フィッティングの結果に係る正規分布の幅が予め定めた範囲から外れる場合には、劣化と判定してよい。中性子線検出装置100が劣化した場合は、フィッティングの結果に係る正規分布の幅が変化する。従って、判定部23が、フィッティングの結果に係る正規分布の幅が予め定めた範囲から外れる場合に劣化と判定することで、容易に中性子線検出装置100の劣化を判定することができる。
【0066】
中性子線検出装置100において、中性子線検出装置100の劣化を判定する判定部23を更に備え、判定部23は、判定部23によって異常が判定されなかった場合に劣化の判定を行い、フィッティングの結果に係る正規分布の中心位置が予め定めた範囲から外れる場合には、劣化と判定してよい。中性子線検出装置100が劣化した場合は、フィッティングの結果に係る正規分布の中心位置が変化する。従って、判定部23が、フィッティングの結果に係る正規分布の中心位置が予め定めた範囲から外れる場合に劣化と判定することで、容易に中性子線検出装置100の劣化を判定することができる。
【0067】
中性子線検出装置100の異常検知方法は、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータ13と、シンチレータ13で発生した光を伝送する光ファイバー14と、光ファイバー14によって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号として弁別する弁別部と、を備える中性子線検出装置100の異常検知方法であって、波高分布における中性子線NによるピークPを検出する工程と、中性子線検出装置100の異常を検出する工程と、を備え、異常を検出する工程では、ピークPが検出されない場合に異常と判定する。
【0068】
この中性子線検出装置100の異常検知方法では、上述の中性子線検出装置100と同様の作用・効果を得ることができる。
【0069】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、下記のような種々の変形が可能である。
【0070】
例えば、実施形態に係る中性子線検出装置は、フィッティングの結果が正規分布と類似しない場合に、異常を判定していた。これに代えて、中性子線検出装置100において、判定部23は、ピークPが検出された場合、ピークP周辺における波高分布に対するフィッティングの結果が、正規分布とならない場合に異常と判定してよい。ここで、検出信号に基づいて形成される波高分布は、中性子線検出装置100に異常が無い場合は、ピークP付近が正規分布となる。従って、判定部23は、フィッティングの結果が正規分布とならない場合に異常と判定することで、容易に中性子線検出装置の異常を検知することができる。なお、フィッティングの結果が正規分布となる場合とは、フィッティングの結果に係る近似曲線が、誤差の範囲内で正規分布となっている状態である。具体的には、閾値であるX thresholdを狭い範囲に設定すればよい。例えば、X thresholdとして1~1.01を設定してよい。ただし、波高分布は正規分布となる場合であっても、図8に示すように揺らぎが大きい場合がある。このように、揺らぎの関係で一時的に閾値の範囲から外れしまうような場合、判定部23は異常と判定しなくてもよい。
【0071】
例えば、シンチレータ13が配置される場所は、コリメータ10内に限定されずその他の場所でもよい。シンチレータは例えばコリメータ10の下流に配置されていてもよく、患者の表面(被照射部の近傍)に配置されていてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、σに対する係数aを1.5とし、中性子線Nによるピークの波高μから1.5σ低い値を判定閾値Qとして調整しているが、その他の値となるように判定閾値Qを変更してもよい。例えば、中性子線Nによるピークの波高μからσ低い値を判定閾値Qとした場合には、中性子線Nの検出効率は84.1%であった。中性子線Nによるピークの波高μから1.5σ低い値を判定閾値Qとした場合には、中性子線Nの検出効率は93%であった。また、中性子線Nによるピークの波高μから2σ低い値を判定閾値Qとした場合には、中性子線Nの検出効率は99.8%であった。このように、中性子線Nによるピークの波高μからσ低い値を判定閾値Qとしてもよく、中性子線Nによるピークの波高μから2σ低い値を判定閾値Qとしてもよく、その他の値だけ低い判定閾値Qでもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、中性子線検出装置を中性子捕捉療法装置1に適用しているが、中性子線検出装置の用途は限定されない。例えば、原子炉の運転状態を監視するモニタとして、本発明の中性子線検出装置を適用してもよい。また、物理実験で使用される加速中性子を測定する際に本発明の中性子線検出装置を使用してもよい。また、非破壊検査用の中性子照射装置において、本発明の中性子線検出装置を使用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…中性子捕捉療法装置、12…中性子線検出器、13…シンチレータ、14…光ファイバー、15…光検出器(弁別部)、20…制御部、21…線量算出部(弁別部)、23…判定部、100…中性子線検出装置、150…中性子捕捉療法システム、N…中性子線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9