IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-レーザ加工装置 図1
  • 特許-レーザ加工装置 図2
  • 特許-レーザ加工装置 図3
  • 特許-レーザ加工装置 図4
  • 特許-レーザ加工装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20220608BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220608BHJP
   H01S 3/097 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
B23K26/00 M
H01S3/00 B
H01S3/097 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018065398
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019171459
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】田坂 泰久
(72)【発明者】
【氏名】原 章文
(72)【発明者】
【氏名】塚原 大地
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-089788(JP,A)
【文献】特開平04-262885(JP,A)
【文献】特開2005-095934(JP,A)
【文献】特開2010-234444(JP,A)
【文献】特開2016-59932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
H01S 3/00
H01S 3/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源に電力を供給する電源装置と、
加工対象物の目標位置に前記レーザ光源からの光エネルギを照射する加工機と、
を備え、
前記電源装置は、変更可能な複数の制御パラメータを有するとともに、前記複数の制御パラメータの値のセットを識別番号と対応付けて保持しており、
前記電源装置は、前記加工機から前記識別番号を受信すると、前記識別番号に応じた値のセットにもとづいて動作し、
前記電源装置は、それぞれが少なくともひとつの前記制御パラメータを有する複数の制御部を含み、
前記加工機は、前記複数の制御部のうちのひとつに前記識別番号を送信し、
前記識別番号は、前記複数の制御部を順に伝送されることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記複数の制御部のうち、最後のひとつが前記識別番号を受信すると、前記識別番号を前記加工機に送信することを特徴とする請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記加工機は、前記目標位置の移動中に、前記識別番号を送信することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記電源装置は、
平滑コンデンサの電圧を所定の範囲に保つ充電電源と、
前記平滑コンデンサに生ずる電圧を受け、高周波信号に変換して前記レーザ光源に供給する高周波電源と、
前記電源装置を統括的に制御する全体制御部と、
を含み、
前記複数の制御パラメータの少なくともひとつは前記充電電源により参照され、それらの別の少なくともひとつは前記高周波電源により参照され、それらのさらに別の少なくともひとつは前記全体制御部により参照されることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
レーザ光源と、
前記レーザ光源に電力を供給する電源装置と、
加工対象物の目標位置に前記レーザ光源からの光エネルギを照射する加工機と、
を備え、
前記電源装置は、変更可能な複数の制御パラメータを有するとともに、前記複数の制御パラメータの値のセットを識別番号と対応付けて保持しており、
前記電源装置は、前記加工機から前記識別番号を受信すると、前記識別番号に応じた値のセットにもとづいて動作し、
前記電源装置は、
平滑コンデンサの電圧を所定の範囲に保つ充電電源と、
前記平滑コンデンサに生ずる電圧を受け、高周波信号に変換して前記レーザ光源に供給する高周波電源と、
前記電源装置を統括的に制御する全体制御部と、
を含み、
前記複数の制御パラメータの少なくともひとつは前記充電電源により参照され、それらの別の少なくともひとつは前記高周波電源により参照され、それらのさらに別の少なくともひとつは前記全体制御部により参照され、
前記複数の制御パラメータは、前記充電電源によって参照される、前記平滑コンデンサの電圧の目標値および前記充電電源のフィードバック制御器のパラメータを含むことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
前記複数の制御パラメータは、前記高周波電源の励振時間幅の補正量を含むことを特徴とする請求項4または5に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記複数の制御パラメータの値のセットは、前記レーザ加工装置の動作開始前に、前記加工機から前記電源装置に送信されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用の加工ツールとして、レーザ加工装置が広く普及している。レーザ加工装置は、レーザ光源と、レーザ光源に電力を供給する電源装置と、レーザ光源の出射光を加工対象に照射する加工機と、を備える。加工条件に応じて、光出力や高周波電源のパラメータを変更することが行われる(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-347447号公報
【文献】特開2013-89788号公報
【文献】特開2017-131937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源装置の制御パラメータは多岐にわたっており、より精密な加工のためには、変更する制御パラメータの個数を増やすことが有効である。一方で、加工機は、加工条件の変更毎に、複数の制御パラメータを電源装置に送信する必要があるところ、制御パラメータの個数が増えると、加工機と電源装置の間の通信量が増加する。通信中は加工を中断する必要があるため、制御パラメータの個数の増加は生産性の低下を引き起こす。
【0005】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、通信時間を短縮したレーザ加工装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、レーザ加工装置に関する。レーザ加工装置は、レーザ光源と、レーザ光源に電力を供給する電源装置と、加工対象物の目標位置にレーザ光源からの光エネルギを照射する加工機と、を備える。電源装置は、変更可能な複数の制御パラメータを有するとともに、複数の制御パラメータの値のセットを識別番号と対応付けて保持しており、電源装置は、加工機から識別番号を受信すると、識別番号に応じた値のセットにもとづいて動作する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、通信時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係るレーザ加工装置のブロック図である。
図2】複数の制御パラメータと識別番号PRM_IDの関係を示す図である。
図3】レーザ加工装置のデータフローを示す図である。
図4】電源装置の具体的な構成例を示すブロック図である。
図5図4のレーザ加工装置の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、レーザ加工装置に関する。レーザ加工装置は、レーザ光源と、レーザ光源に電力を供給する電源装置と、加工対象物の目標位置にレーザ光源からの光エネルギを照射する加工機と、を備える。電源装置は、変更可能な複数の制御パラメータを有するとともに、複数の制御パラメータの値のセットを識別番号と対応付けて保持する。電源装置は、加工機から識別番号を受信すると、識別番号に応じた値のセットにもとづいて動作する。
【0011】
この態様によると、加工機から電源装置に対して、識別番号を送信することにより、複数の制御パラメータを変更することが可能となる。したがって、複数の制御パラメータそれぞれの変更後の値を、加工機から電源装置に対して送信する場合に比べて、通信量を大幅に減らすことができる。これは、加工の中断時間の短縮、ひいては生産性の向上に資することとなる。
【0012】
電源装置は、それぞれが少なくともひとつの制御パラメータを参照する複数の制御部を含んでもよい。加工機は、複数の制御部のうちのひとつに識別番号を送信し、識別番号は、複数の制御部を順に伝送されてもよい。
【0013】
複数の制御部のうち、最後のひとつが識別番号を受信すると、識別番号を加工機に送信してもよい。すなわち加工機からのデータを加工機にループバックすることにより、識別番号が正常に送信されたか否かを、加工機が検証できる。
【0014】
加工機は、目標位置の移動中に、識別番号を送信してもよい。目標位置の移動期間中は、もともとレーザ照射が停止されるため、この期間を利用して識別番号を送信し、電源装置の制御パラメータを変更することにより、パラメータ変更による遅延を低減し、あるいは無くすことができる。
【0015】
電源装置は、平滑コンデンサの電圧を所定の範囲に保つ充電電源と、平滑コンデンサに生ずる電圧を受け、高周波信号に変換してレーザ光源に供給する高周波電源と、電源装置を統括的に制御する全体制御部と、を含んでもよい。複数の制御パラメータの少なくともひとつは充電電源により参照され、それらの別の少なくともひとつは高周波電源により参照され、それらのさらに別の少なくともひとつは全体制御部により参照されてもよい。
【0016】
複数の制御パラメータは、平滑コンデンサの電圧の目標値を含んでもよい。複数の制御パラメータは、高周波電源の励振時間幅の補正量を含んでもよい。複数の制御パラメータは、充電電源のフィードバック制御器のパラメータを含んでもよい。
【0017】
複数の制御パラメータの値のセットは、レーザ加工装置の動作開始前に、加工機から電源装置に送信されてもよい。
【0018】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
図1は、実施の形態に係るレーザ加工装置100のブロック図である。レーザ加工装置100は、レーザ光源110、電源装置120、加工機130を備える。レーザ光源110は、たとえばCOレーザである。電源装置120は、レーザ光源110に電力を供給し、レーザ光源110に光パルス112を断続的に発生させる。加工機130は、レーザ光源110からの光パルス112を受け、加工対象物OBJの目標位置TPに照射する。たとえば加工機130は、ステージ132、光学系134、コントローラ136を含むことができる。光学系134は、レーザ光源110からの光パルス112を受け、ビームのサイズ、ビームプロファイルを調節し、目標位置TPに集光する。ステージ132は、加工対象物OBJを移動させることにより、目標位置TPを制御する。なお加工対象物OBJを固定し、レーザ光の照射位置を変化させてもよく、要するに、加工対象物OBJとレーザ光の相対的な位置が制御可能であればよい。
【0020】
加工条件(レシピ)が、ユーザによって用意される。コントローラ136は、レシピにもとづいて、ステージ132を制御し、目標位置TPを移動しながら、各目標位置TPにおいて、電源装置120に発光指示(励振信号)S1を与える。電源装置120は、発光指示S1に応答して、レーザ光源110に光パルス112を発生させる。
【0021】
電源装置120は、変更可能な複数の制御パラメータPRM~PRMを有する。電源装置120には、複数の制御パラメータPRM,PRM…,PRMの値のセットが、識別番号PRM_IDと対応付けて保持されている。図2は、複数の制御パラメータと識別番号PRM_IDの関係を示す図である。この例では、制御パラメータの個数はN=4であり、識別番号PRM_IDは、ID(1)~ID(5)の5つから選択可能である。たとえばID(2)のとき、制御パラメータPRM~PRMの値として、a,b,c,dのセットが使用される。図2の関係は、電源装置120のメモリ(ルックアップテーブル)に格納される。
【0022】
識別番号PRM_IDごとの、複数の制御パラメータPRM~PRMの値のセットは、レーザ加工装置100の動作開始前に、加工機130から電源装置120に送信してもよい。
【0023】
図1に戻る。加工機130のコントローラ136は、加工条件に応じて、電源装置120に識別番号PRM_IDを含むデータS2を送信する。電源装置120は、識別番号PRM_IDを受信すると、その内部の複数の制御パラメータPRMを、識別番号PRM_IDに応じた値のセットに変更し、変更後の制御パラメータPRMにもとづいて動作する。
【0024】
コントローラ136は、識別番号PRM_IDを含むデータS2に加えて、パラメータ変更の許可・禁止を示す制御信号ENを送信してもよい。コントローラ136は、制御信号ENが許可を示すとき(たとえばハイ)、受信した識別番号PRM_IDにもとづく設定変更を実施する。
【0025】
図3は、レーザ加工装置100のデータフローを示す図である。電源装置120は、複数の制御部128_1~128_Mを含む。各制御部128_i(i=1,2,・・・M)は、動作に際して、複数の制御パラメータPRMのなかの少なくとも一つを参照し、対応する制御対象129_i(i=1,2,・・・M)を制御する。
【0026】
加工機130のコントローラ136は、複数の制御部128_1~128_Mのうちのひとつ(128_1)に識別番号PRM_IDを送信する。識別番号PRM_IDは、複数の制御部128_1~128_Mを順に伝送される。複数の制御部128_1~128_Mのうち、最後のひとつ(128_M)が識別番号PRM_IDを受信すると、その識別番号PRM_IDを加工機130に送り返す。すなわち加工機130と電源装置120の間で、識別番号PRM_IDがループバックされる。加工機130は、ループバックされた識別番号PRM_IDが、自身が送信した元の識別番号PRM_IDと一致しているか否かによって、識別番号PRM_IDが電源装置120のすべての制御部128に正しく伝送されたかを確認できる。不一致である場合、加工機130は、識別番号PRM_IDを再送してもよい。
【0027】
制御部128_i(i=1,2,・・・M)は、前段から識別番号PRM_IDを受信し、自身に割り当てられた少なくともひとつの制御パラメータPRMの変更が完了した後に、後段の制御部128_i+1に、識別番号PRM_IDを送信してもよい。この場合、コントローラ136に識別番号PRM_IDがループバックされたタイミングで、すべての制御部128の制御パラメータの変更完了が保証される。
【0028】
図4は、電源装置120の具体的な構成例を示すブロック図である。電源装置120は、整流器122、充電電源124、高周波電源126、全体制御部127を備える。整流器122は、交流電圧VACを整流する。充電電源124は、整流後の電圧VRECTを受け、DCリンク125に発生するDCリンク電圧VDCを、所定の電圧範囲に維持する。DCリンク125には、DCリンクコンデンサ(平滑コンデンサ)Cが接続される。より詳しくは充電電源124は、コンバータ124aと、そのコントローラ124bを含む。レーザ光源110の点灯期間において、高周波電源126がスイッチング動作すると、平滑コンデンサCの電荷が放電され、DCリンク電圧VDCが低下する。充電電源124は、レーザ光源110のワンショットごとに、平滑コンデンサCから失われるであろう電荷量を、平滑コンデンサCに補充する。たとえばコントローラ124bは、補充すべき電荷量を推定し、その電荷量が平滑コンデンサCに供給されるように、コンバータ124aを制御する。
【0029】
高周波電源126は、DCリンク電圧VDCを交流の駆動電圧VDRVに変換し、レーザ光源110に供給する。高周波電源126は、インバータ126aとコントローラ126bを含む。コントローラ126bは、加工機130からの励振信号S1をトリガーとして、励振幅τ(時間)の間、インバータ126aをスイッチング動作させる。これにより駆動電圧VDRVは、間欠的な交流電圧となり、したがってレーザ光源110はパルス光を発生する。
【0030】
全体制御部127は、たとえばPLC(Programmable Logic Controller)であり、シーケンサあるいはステートマシンとしての機能を備え、電源装置120を統括的に制御する。なお全体制御部127を、CPU(Central Processing Unit)とソフトウェアプログラムの組み合わせで実装してもよい。
【0031】
コントローラ126b、コントローラ124b、全体制御部127は、図3の制御部128_1~128_3に対応する。すなわち、加工機130からの識別番号PRM_IDは、コントローラ126b、コントローラ124b、全体制御部127を経由し、加工機130にループバックされる。
【0032】
複数の制御パラメータPRM~PRMの少なくともひとつは、充電電源124により参照される。また複数の制御パラメータPRM~PRMの別の少なくともひとつは、高周波電源126により参照される。また複数の制御パラメータPRM~PRMのさらに別の少なくともひとつは、全体制御部127により参照される。
【0033】
たとえば高周波電源126は、高周波電源126の励振幅τ、すなわちレーザ光のワンショットの長さを規定(あるいは補正)する制御パラメータPRMを参照する。高周波電源126のコントローラ126bは、識別番号PRM_IDが変更されると、制御パラメータPRMの値を、変更後の識別番号PRM_IDに対応付けられる値aに変更する。
【0034】
たとえば充電電源124のコントローラ124bは、PID制御(あるいはPI制御)によって、充電電荷量(言い換えればコントローラ124bのスイッチング素子のオン時間)をフィードバック制御するPID制御器を含む。このPID制御器のゲイン(Pゲイン、Iゲイン、Dゲインの少なくとも一つ)は、制御パラメータPRMにより規定される。充電電源124のコントローラ124bは、識別番号PRM_IDが変更されると、制御パラメータPRMの値を、変更後の識別番号PRM_IDに対応付けられる値bに変更する。
【0035】
たとえば全体制御部127は、DCリンク電圧VDCの目標電圧(あるいはその範囲)を規定する制御パラメータPRMを参照する。全体制御部127は、制御パラメータPRMの値を、アナログの基準電圧VREFに変換し、充電電源124に供給する。充電電源124は、DCリンク電圧VDCを基準電圧VREFに応じた目標電圧範囲に安定化する。
【0036】
図5は、図4のレーザ加工装置100の動作波形図である。
たとえば加工期間t~tの間、識別番号PRM_IDとして、第1の値ID(1)が与えられている。加工期間t~tの間、加工機130は繰り返し励振信号S1をアサートする。電源装置120は、励振信号S1のアサートに応答して、パルス状のレーザ出力を生成する。レーザのパルス幅τの補正量(励振時間τの補正量)は、ID(1)に対応する制御パラメータPRMの値a=0μsとなる。この補正量aが励振信号S1の幅に加算されレーザ出力幅となる。励振信号S1のパルス幅が15μs、補正量aが0μsのとき、実際のレーザ出力幅は15μsとなる。
【0037】
また、充電電源124の制御ゲインの値Pは、ID(1)に対応する制御パラメータPRMの値b=10に設定されている。DCリンク電圧の目標値(VREF)は、ID(1)に対応する制御パラメータPRMの値c=400Vに設定されている。
【0038】
期間t~tの間に、レーザ光の照射位置が移動する。この期間は、励振信号S1はローに固定されており、レーザ光源110は発光しない。期間t~tの間に、加工機130はEN信号をハイとし、変更後の識別番号PRM_ID(2)を送信する。新しい識別番号PRM_ID(2)は高周波電源126に入力され、制御パラメータPRMの値(すなわち励振幅τの補正量)が、識別番号PRM_ID(2)に対応する値a(=0.1μs)に変更される。これによりレーザ出力幅は15.1μsとなる。
【0039】
識別番号PRM_ID(2)は、高周波電源126から充電電源124に送信され、制御パラメータPRMの値(すなわち制御ゲインP)が、識別番号PRM_ID(2)に対応する値b(=50)に変更される。さらに識別番号PRM_ID(2)は、充電電源124から全体制御部127に送信され、制御パラメータPRMの値(すなわちDCリンク電圧VDCの目標値)が、識別番号PRM_ID(2)に対応する値c(=430V)に変更される。
【0040】
以上がレーザ加工装置100の動作である。このレーザ加工装置100によれば、加工機130から電源装置120に対して、識別番号IDを送信することにより、電源装置120の複数の制御パラメータを一括してに変更することが可能となる。つまり複数の制御パラメータPRMそれぞれの変更後の値を、加工機130から電源装置120に対して個別に送信する場合に比べて、通信量を大幅に減らすことができる。これは、加工の中断時間の短縮、ひいては生産性の向上に資することとなる。
【0041】
またループバックの仕組みを導入することで、加工機130は、電源装置120のパラメータが正常に書き換えられたかを判定できる。ループバックの結果、書き換えが正常終了したことを条件として、発光指示(励振信号)S1を生成することにより、誤った加工条件(パラメータのセット)で電源装置120が動作するのを防止することができる。
【0042】
また、ドリルの移動中を利用して制御パラメータを変更することにより、制御パラメータの変更にともなう遅延を低減し、あるいは遅延を無くすことができる。
【0043】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0044】
100 レーザ加工装置
110 レーザ光源
112 光パルス
120 電源装置
122 整流器
124 充電電源
124a コンバータ
124b コントローラ
125 DCリンク
126 高周波電源
126a インバータ
126b コントローラ
127 全体制御部
128 制御部
130 加工機
132 ステージ
134 光学系
136 コントローラ
OBJ 加工対象物
TP 目標位置
図1
図2
図3
図4
図5