(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】防水装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
(21)【出願番号】P 2018076043
(22)【出願日】2018-04-11
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000252034
【氏名又は名称】株式会社鈴木シャッター
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】深川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】榎本 祐二
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3084988(JP,U)
【文献】特表2017-538878(JP,A)
【文献】特開2008-180061(JP,A)
【文献】特開2016-205041(JP,A)
【文献】特開2015-055060(JP,A)
【文献】米国特許第07523589(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結穴が形成される設置面に固定される防水板を備える防水装置であって、
前記防水板の下部に形成され、上方に開口する開口部を有する受け部と、
前記設置面に配置されるとともに上下方向に貫通する
とともに前後方向に延びる貫通孔が形成される固定部及び前記固定部
から上方に延出した後、折り返すように屈曲する前記開口部に係合する係合部を有する固定部材と、
前記貫通孔に回転可能に取り付けられ、前記締結穴に締結可能な締結部と、
前記締結部の上部に形成される操作部と、を備え、
前記係合部の折り返した部分には隙間が形成され、
前記開口部の横方向の幅は、前記係合部の横方向の幅よりも幅広に形成される防水装置。
【請求項2】
締結穴が形成される設置面に固定される防水板を備える防水装置であって、
前記防水板の下部に形成され、上方に開口する開口部を有する受け部と、
前記設置面に配置されるとともに上下方向に貫通する貫通孔が形成される固定部及び前記固定部に接続されるとともに前記開口部に係合する係合部を有する固定部材と、
前記貫通孔に回転可能に取り付けられ、前記締結穴に締結可能な締結部と、
前記締結部の上部に形成される操作部と、
前記固定部の下面に配置される弾性部材
と、を備え、
前記開口部の横方向の幅は、前記係合部の横方向の幅よりも幅広に形成される防水装置。
【請求項3】
水平方向に沿う向きで前記締結部に配置され、前記操作部を回転可能に支持する回転軸を更に備え、
前記操作部は、前記固定部に近づく固定位置に回転したときに当該固定部を下方に押圧して前記弾性部材を弾性変形させるカム部を有する請求項2に記載の防水装置。
【請求項4】
前記受け部は、前記防水板
とは別体の金具である請求項1から3の何れかに記載の防水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結穴が形成される設置面に固定される防水板を備える防水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豪雨等の非常時に、防水板を建物の出入口に設置して建物内への水の侵入を防止する防水装置が知られている。この種の技術を開示するものとして例えば特許文献1がある。特許文献1には、前方面及び後方面を有し、厚みを有する略矩形の板部材と、板部材の上側水平部の端部側に取り付けられた基部と、基部に対して略水平方向の外向き及び略上向きに変位可能で、かつ板部材の後方に突出して、基部に取り付けられた押圧機構と、を具備する止水板(防水装置)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される防水装置では、防水板の上側水平部の端部側を固定しているが、左右両側だけが押圧されているため、防水板の中央が水圧によって撓んだときに止水性能が低下するおそれがある。防水装置が設置される建物の開口幅が大きくなればなるほど、その影響が大きくなって止水性能が不安定になってしまう。
【0005】
アングル等のL字状の固定部材を左右方向に間隔をあけて複数配置し、当該固定部材を介して防止板の下部と設置面をボルト等によって締結固定することも考えられる。しかし、ボルトの締結作業には、ボルトの形状に合致する工具が必要となってしまう。工具が手元になければ、工具が調達できるまで防水板の設置が遅れることになる。また、開口幅が広い場合は、工具を用いた締結作業を行う回数も多くなり、防水板を固定する作業に時間が掛かってしまう。
【0006】
本発明は、建物の開口部等に用いられる防水装置において、工具を用いることなく防水板を設置面に容易に固定できる防水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、締結穴(例えば、後述の締結穴90)が形成される設置面(例えば、後述の設置面FL)に固定される防水板(例えば、後述の防水板10)を備える防水装置(例えば、後述の防水装置1)であって、前記防水板の下部に形成され、上方に開口する開口部(例えば、後述の開口部71)を有する受け部(例えば、後述の受け金具70)と、前記設置面に配置されるとともに上下方向に貫通する貫通孔(例えば、後述の貫通孔55)が形成される固定部(例えば、後述の固定部52)及び前記固定部に接続されるとともに前記開口部に係合する係合部(例えば、後述の係合部53)を有する固定部材(例えば、後述のアングル50,250,350)と、前記貫通孔に回転可能に取り付けられ、前記締結穴に締結可能な締結部(例えば、後述の締結部60,260,360)と、前記締結部の上部に形成される操作部(例えば、後述の操作部61,270,371)と、を備え、前記開口部の横方向の幅は、前記係合部の横方向の幅よりも幅広に形成される防水装置に関する。
【0008】
前記放水装置は、前記固定部の下面に配置される弾性部材(例えば、後述のシール部材80)を更に備えることが好ましい。
【0009】
前記防水装置は、水平方向に沿う向きで前記締結部に配置され、前記操作部を回転可能に支持する回転軸(例えば、後述の回転軸64)を更に備え、前記操作部は、前記固定部に近づく固定位置に回転したときに当該固定部を下方に押圧して前記弾性部材を弾性変形させるカム部(例えば、後述のカム部600)を有することが好ましい。
【0010】
前記受け部は、前記防水板に別体の金具であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防水装置によれば、工具を用いることなく防水板を設置面に容易に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防水装置の正面図である。
【
図2】本実施形態の防水板を固定するアングル(固定部材)を示す正面図である。
【
図3】本実施形態の防水板を固定するアングル(固定部材)を上から見た様子を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態の防水板を固定するアングル(固定部材)を下から見た様子を示す斜視図である。
【
図5A】本実施形態の防水板を固定するアングル(固定部材)を受け金具(受け部)まで移動させる様子を示す拡大側面図である。
【
図5B】本実施形態の防水板を固定するアングル(固定部材)の締結軸を締結穴に締結した様子を示す拡大側面図である。
【
図5C】本実施形態の防水板を固定するアングル(固定部材)の操作部をロック位置に回動させ始めた様子を示す拡大側面図である。
【
図5D】本実施形態の防水板を固定するアングル(固定部材)の操作部がロック位置まで回動したロック状態を示す拡大側面図である。
【
図6A】第1変形例のアングル(固定部材)を示す側面図である。
【
図6B】第1変形例のアングル(固定部材)を示す平面図である。
【
図6C】第1変形例のアングル(固定部材)を示す正面図である。
【
図7A】第2変形例のアングル(固定部材)を示す側面図である。
【
図7B】第2変形例のアングル(固定部材)を示す平面図である。
【
図7C】第2変形例のアングル(固定部材)を示す正面図である。
【
図8A】第2変形例のアングル(固定部材)における操作部を用いた固定作業の第1段階を示す平面図である。
【
図8B】第2変形例のアングル(固定部材)における操作部を用いた固定作業の第2段階を示す平面図である。
【
図8C】第2変形例のアングル(固定部材)における操作部を用いた固定作業の第3段階を示す平面図である。
【
図8D】第2変形例のアングル(固定部材)における操作部を用いた固定作業の第4段階を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る防水装置1の正面図であり、防水板10が建物の開口部に固定された様子が示されている。なお、以下の説明において「左右方向」というときは、
図1を正面として見たときの左右方向であり、横方向のことを意味する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の防水装置1は、建物の開口部に固定される左右一対の設置枠20と、設置枠20に対して着脱可能な防水板10と、防水板10を設置面FLに固定する複数のアングル50と、を含んで構成される。
【0015】
左右一対の設置枠20は、断面形状が略U字状に形成されており、防水板10を前後方向(防水板10の厚み方向)に挟み込む溝25を有する。本実施形態の設置枠20は、防水板10を使用しないときでも建物側に常設されており、防水板10が設置されていない状態で左右の設置枠20の溝25が対向する位置関係にある。
【0016】
防水板10は、左右方向に細長い板状の部材である。防水板10は、例えば、矩形に枠組みされた框及び補強材の前後それぞれにアルミ等の金属製の面材を配置することで構成される。なお、防水板10自体の構成は、事情に応じて適宜変更することができる。
【0017】
本実施形態の防水板10の平面部10aには、取手部11、複数のグレモン錠21及び受け金具70が配置される。取手部11は、防水板10の平面部10aの上部に固定される。グレモン錠21は、防水板10の平面部10aの左右両側に配置される。
【0018】
グレモン錠21は、一側の端部に形成されるグレモン操作部210と他側の端部に形成される規制部211を備えており、防水板10に回転可能に取り付けられる。設置枠20に防水板10が挟み込まれた状態で、グレモン操作部210を回転させて規制部211を設置枠20の内側に移動させる。規制部211は、溝25の内側から設置枠20の内側面に接触することで防水板10を見込方向一側(紙面奥)側に押圧する。
【0019】
本実施形態の防水板10の裏面には、設置枠20の内側面に接触する弾性変形可能なパッキン部材(図示省略)が配置されている。グレモン錠21が閉止位置に移動して紙面奥側に防水板10が押圧されると、当該パッキン部材が弾性変形して防水板10と設置枠20の隙間が塞がれる。
【0020】
受け金具70は、防水板10の平面部10aの下部に左右方向で間隔をあけて複数配置される。受け金具70は、後述する設置面FLに形成される締結穴90の位置に対応する位置に配置される。各受け金具70には、固定部材としてのアングル50が固定されており、防水板10が設置面FLに固定された状態となっている。
【0021】
次に、本実施形態のアングル50及び受け金具70について説明する。
図2は、本実施形態の防水板10を固定するアングル50を示す正面図である。
図3は本実施形態の防水板10を固定するアングル50を上から見た様子を示す斜視図であり、
図4はアングル50を下から見た様子を示す斜視図である。なお、
図2~
図4では、ロック状態のアングル50が示されている。
【0022】
図2~
図4に示すように、本実施形態のアングル50は、断面形状がL字状のアングル本体部51と、アングル本体部51に回転可能に取り付けられる締結部60と、締結部60に形成される操作部61と、を含んで構成される。
【0023】
アングル本体部51は、設置面FLに設定される固定部52と、固定部52から上方に延出した後、折り返すように屈曲する係合部53と、備える。
【0024】
固定部52には、上下方向に貫通する貫通孔55が形成されている。貫通孔55は前後方向に延びる長孔となっている。また、固定部52の下面には略板状の弾性変形可能なシール部材(弾性部材)80が配置される。シール部材80は、固定部52における防水板10と反対側の端部に位置しており、前後方向に延びる貫通孔55とは上下方向で重ならない位置関係となっている。
【0025】
係合部53の折り返した部分には隙間530が形成されており、当該隙間530が後述する受け金具70に係合する部分となる。
【0026】
締結部60は、ネジ溝が下部に形成されるとともに貫通孔55に挿通される締結軸65と、締結軸65における貫通孔55よりも上側に固定される上側フランジ66と、締結軸65における貫通孔55よりも下側に固定される下側フランジ67と、備える。
【0027】
締結軸65は、上側フランジ66及び下側フランジ67によって貫通孔55から抜け止めされながら当該貫通孔55の内側で回転可能となっている。また、貫通孔55は、前後方向に細長く構成されているので、貫通孔55に係合した状態を維持しながら前後方向に移動可能となっている。
【0028】
締結軸65には、操作部61を回転可能に支持する回転軸64が取り付けられる。回転軸64は、その軸方向が水平方向を向いた状態で締結軸65の上部に固定される。
【0029】
操作部61は、板状部材を折り曲げて形成される板状の金属製部材である。操作部61において、回転軸64に支持される部分を基端側とすると、先端側には把持部62が形成される。把持部62は、横長の板状に形成されている。
【0030】
操作部61には、アングル50をロック状態とするカム部600が形成される。カム部600は、略直線状の第1接触部601、略円弧状の第2接触部602、略直線状の第3接触部603を含んで構成される。
【0031】
図2~
図4に示すように、アングル50がロック状態にあるときは、第3接触部603が固定部52の上面に接触する。第1接触部601は、アングル50がロック状態ではないときに上側フランジ66の上面に接触し、操作部61を起立した姿勢で保持する(後述の
図5A及び
図5B参照)。
【0032】
第2接触部602は、第1接触部601と第3接触部603の間に位置する。第2接触部602は、操作部61が起立した状態から固定部52に沿って倒れる状態に至るまでに、上側フランジ66の上面に接触する部分である。操作部61を起立した状態から固定部52に沿って倒れる状態にするときに、操作部61は、第2接触部602を乗り越えるような動きをすることになる。同様に、固定部52に沿って倒れた状態から操作部61を起立した状態にするときも、操作部61は第2接触部602を乗り越えるような動きをする。
【0033】
受け金具70は、金属製の板状部材によって形成されるアングル50を防水板10に固定するための受け部である。受け金具70は、平面部10aとの間に隙間が形成された状態で、防水板10にネジ等の締結部材75によって固定されており、この隙間が係合部73を係合する開口部71として機能する。この開口部71の横幅は、アングル50の係合部53の横幅よりも幅広に形成されており、係合部53を開口部71に係合した状態でアングル50を左右方向(横方向)に移動可能となっている。
【0034】
本実施形態では、受け金具70は防水板10の室内側に配置されており、アングル50も室内側で防水板10を固定する構成となっている。
【0035】
次に、
図5A~
図5Dを参照し、アングル50を受け金具70に固定する方法について段階的に説明する。
【0036】
図5Aは、本実施形態の防水板を固定するアングル50を受け金具70まで移動させる様子を示す拡大側面図である。アングル50は、使用していない状態では防水板10から取り外された状態であり、使用時に防水板10に固定される。防水板10が設定される設置面FLは、地面に埋設される金属製の床であり、ネジ溝が形成される締結穴90が左右方向に間隔をあけて複数(3個)形成されている。受け金具70の位置は、締結穴90の位置に対応しているので、アングル50を受け金具70まで持っていくことで、締結作業にスムーズに移行することができる。
【0037】
図5Bは、本実施形態の防水板10を固定するアングル50の締結軸65を締結穴90に締結した様子を示す拡大側面図である。作業者は、アングル50の係合部53を受け金具70の開口部71に係合させる。このとき、締結軸65の横方向の位置が設置面FLの締結穴90の位置に合うように開口部71におけるアングル50の左右方向の位置を調節するとともに、締結軸65の位置が締結穴90に合うように貫通孔55における締結軸65の前後方向の位置を調節する。締結穴90の上方に締結軸65が位置している状態で、作業者は、操作部61を回転させることにより、締結軸65を締結穴90に螺合させる。
【0038】
図5Cは、本実施形態の防水板10を固定するアングル50の操作部61をロック位置に回動させ始めた様子を示す拡大側面図である。アングル50の締結軸65が締結穴90に締結された状態で、作業者が操作部61を引き倒すと該操作部61における上側フランジ66に接触する部分が第2接触部602に移動する。
【0039】
図5Dは、本実施形態の防水板10を固定するアングル50の操作部61がロック位置まで回動したロック状態を示す拡大側面図である。作業者が操作部61を
図5Cの状態から更に引き倒すと、操作部61における上側フランジ66に接触する部分が第2接触部602を乗り越えて第3接触部603となる。この状態では、操作部61が上側フランジ66を介して固定部52を下方に押圧し、押圧された固定部52によってシール部材80が圧縮されて弾性変形し、設置面FLと密着する。
【0040】
アングル50を固定する作業を複数の受け金具70のそれぞれで行うことで、防水板10が設置面FLに固定される。防水板10に下部に配置される弾性部材10bも、アングル50の係合部53を介して下側に押し込まれ弾性変形し、設置面FLに密着する。
【0041】
以上説明した上記実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態の防水装置1は、防水板10の下部に形成され、上方に開口する開口部71を有する受け金具(受け部)70と、設置面FLに配置されるとともに上下方向に貫通する貫通孔55が形成される固定部52及び固定部52に接続されるとともに開口部71に係合する係合部53を有するアングル(固定部材)50と、貫通孔55に回転可能に取り付けられ、締結穴90に締結可能な締結部60と、締結部60の上部に形成される操作部61と、を備え、開口部71の横方向(左右方向)の幅は、係合部53の横方向の幅よりも幅広に形成される。
【0042】
これにより、アングル50の係合部53を開口部71に係合することで防水板10とアングル50を連結できるとともに、操作部61を回転させることで締結部60の締結軸65を締結穴90に締結することでアングル50を設置面FLに連結できる。従って、作業者は、突然の水害等により、設置作業を急きょ行う場合であっても、工具を用いることなく防水板10を設置面FLに固定する作業を容易かつ迅速に完了させることができる。また、設置面FLがタイル等でも、締結軸65を締結穴90に確実に締め付けることができるので、高い止水効果を実現できる。また、開口部71に対する係合部53の位置を横方向で微調整できるので、防水板10や締結穴90の多少の位置ずれも吸収することができる。また、アングル50を防水板10から取り外すことができるので保管性も良い。更に、本実施形態のように、締結軸65が取り付けられる貫通孔55を前後方向に延びる長孔として形成することにより、横方向(左右方向)だけではなく、前後方向の位置調整もできる構成を実現できる。
【0043】
また、本実施形態では、防水装置1は、固定部52の下面に配置されるシール部材(弾性部材)80を更に備える。
【0044】
これにより、シール部材80によって設置面FLと固定部52の間の隙間を塞ぐことができる。
【0045】
また、本実施形態では、防水装置1は、水平方向に沿う向きで締結部60に配置され、操作部61を回転可能に支持する回転軸64を更に備え、操作部61は、固定部52に近づく固定位置に回転したときに当該固定部52を下方に押圧してシール部材80を弾性変形させるカム部600を有する。
【0046】
これにより、カム部600によってシール部材80を設置面FLに密着させることができるので、防水板10を強固かつ安定的に保持することができる。また、シール性もより一層向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、受け金具70は、防水板10とは別体の金具である。
【0048】
これにより、従来の防水板と固定部材を締結部材によって締結していた構成にも、本実施形態の構成に置き換えることができる。従来の構成を利用して製造でき、製造コストの低減にも寄与できる。
【0049】
上記実施形態では、受け金具(受け部)70は、防水板10の室内側に配置される構成を例として説明したがこの構成に限定されるわけではない。例えば、受け金具(受け部)70を室外側に配置し、室外側でアングル50によって防水板10を設置面FLに固定する構成としてもよい。
【0050】
上記実施形態では、受け部としての受け金具70が防水板10とは別体として形成されるが、この構成に限定されない。受け部を別体ではなく防水板と一体的な部材として形成することもできる。
【0051】
上記実施形態では、操作部が締結部に対して回転可能に構成され、当該操作部によってアングル(固定部材)50をロック状態とする構成であるがこの構成に限定されない。例えば、操作部が回転する機構を省略し、締結穴への締結だけで固定部材をロックする構成とすることもできる。
【0052】
次に、上記実施形態と締結部の構成が異なる変形例について説明する。なお、以下の変形例の説明において、アングル本体部51は、上記実施形態と共通又は同様の構成である。そして、このような上記実施形態と同様の構成について図面に同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0053】
図6A~
図6Cを参照して第1変形例について説明する。
図6Aは、第1変形例のアングル250を示す側面図である。
図6Bは、第1変形例のアングル250を示す平面図である。
図6Cは、第1変形例のアングル250を示す正面図である。
【0054】
第1変形例のアングル250が備える締結部260は、ネジ溝が形成されるとともに固定部52を挿通する軸部265と、軸部265における固定部52の上方に配置される操作部270と、軸部265における固定部52の下方に配置されるフランジ267と、を備える。締結部260は、全体としてはいわゆる蝶ボルトであり、蝶ボルトの取手部分が操作部270として機能する。
【0055】
作業者は、アングル本体部51を締結穴90の位置にあわせてセットした状態で締結部260の操作部270をつまんで回すことで軸部265が締結穴90に螺合し、アングル250が設置面FLに固定される。本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。即ち、工具を用いることなく防水板10の固定作業を完了することができる。
【0056】
次に、
図7A~
図7Cを参照して第2変形例について説明する。
図7Aは、第2変形例のアングル350を示す側面図である。
図7Bは、第2変形例のアングル350を示す平面図である。
図7Cは、第2変形例のアングル350を示す正面図である。
【0057】
第2変形例のアングル350が備える締結部360は、ネジ溝が形成されるとともに固定部52を挿通する軸部365と、軸部365における固定部52の上方に配置され、棒状の操作部371をスライド移動可能に保持する保持部370と、軸部365における固定部52の下方に配置されるフランジ367と、を備える。
【0058】
保持部370には、水平方向に貫通する貫通孔375が形成されており、当該貫通孔375に対して操作部371が係合される。操作部371は、その両端に上方に突出する突起部372が形成されており、当該突起部372によって貫通孔375からの抜けが防止される。
【0059】
図8A~
図8Dを参照して第2変形例の操作部371を用いて固定作業について説明する。
図8Aは、第2変形例のアングル350における操作部371を用いた固定作業の第1段階を示す平面図である。
図8Aに示す第1段階では、操作部371の長手方向が左右方向(紙面では上下方向)を向いており、長手方向の一側(紙面上側)が他側に比べて保持部370より大きく突出している。作業者は、この左右方向を向いた状態の操作部371をつまんで右方向に回転させる。
図8Bは、第2変形例のアングル350における操作部371を用いた固定作業の第2段階を示す平面図である。
図8Bでは、
図8Aの状態から90度回転して操作部371が前後方向を向いた状態となっている。
【0060】
図8Cは、第2変形例のアングル350における操作部371を用いた固定作業の第3段階を示す平面図である。
図8Cでは、
図8Bの状態から90度回転して操作部371が左右方向を向いた状態となっており、
図8Aの状態からは180度回転している。この状態では、操作部371の長手方向の他側(紙面下側)が操作部371よりも大きく突出しており、そのままでは回転させにくくなるため、操作部371を矢印方向にスライド移動させる。
【0061】
図8Dは、第2変形例のアングル350における操作部371を用いた固定作業の第4段階を示す平面図である。
図8Dでは、スライド移動によって操作部371の長手方向の一側(紙面上側)が再び大きく突出した状態となる。
図8Dに示す状態は、作業者から見れば
図8Aと略同様の状態となる。これによって、操作部371とアングル本体部51の間の隙間が小さくなって操作しづらくなったり、操作部371がアングル本体部51と干渉したりする事態も回避できる。以後、
図8B~
図8Dで示す操作を繰り返すことで、軸部365が締結穴90に締結される。
【0062】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。即ち、工具を用いることなく防水板10の固定作業を完了することができる。なお、この説明では
図8Aから順に説明したが、
図8B~
図8Dの何れの段階から操作を開始してもよいし、操作部371が左右方向に対して傾いている状態から操作を開始してもよく、あくまで操作手順の一例を示したものである。
【0063】
以上、本実施形態の好ましい実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 防水装置
10 防水板
50,250,350 アングル(固定部材)
52 固定部
53 係合部
60,260,360 締結部
61,270,371 操作部
64 回転軸
70 受け部(受け金具)
71 開口部
80 シール部材(弾性部材)
90 締結穴
600 カム部
FL 設置面