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特許7084786かご枠構造体及びそれを用いた盛土の復旧方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】かご枠構造体及びそれを用いた盛土の復旧方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20220608BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20220608BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
E02D17/20 103G
E02D29/02 308
E02D29/02 312
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018102090
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019206827
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391047190
【氏名又は名称】岡三リビック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390019323
【氏名又は名称】小岩金網株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武斗
(72)【発明者】
【氏名】中島 進
(72)【発明者】
【氏名】片桐 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】小浪 岳治
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 秀人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】小池 進文
(72)【発明者】
【氏名】島津 優
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 聡
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政善
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 秀麿
(72)【発明者】
【氏名】大木 基裕
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-054140(JP,A)
【文献】特開平02-209529(JP,A)
【文献】特開平08-047145(JP,A)
【文献】特開2018-204335(JP,A)
【文献】“12. 被災盛土の早期・強化復旧技術の開発”,[online],日本,公益財団法人鉄道総合技術研究所,2017年,全文、全図,インターネット<https://www.rtri.or.jp/rd/seika/2017/2-12.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/18
E02D 17/20
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプを収容するパイプ収容かご枠を少なくとも1つ含む複数のかご枠を備えるかご枠構造体であって、
前記パイプ収容かご枠は、前記パイプが通過可能なパイプ通過穴を含むパイプ通過パネルを正面及び背面に有し、
前記パイプ通過パネルは、第1円弧状部分を含む第1開口を有する第1部分と、前記第1円弧状部分の径以下の径である第2円弧状部分を含む第2開口を有する第2部分とが組み合わされて形成され、前記パイプ通過穴は前記第1開口と第2開口とが組み合わされて形成され、
前記第2円弧状部分の径が異なる複数種類の第2部分が用意され、該第2部分を選択的に前記第1部分と組み合わせることによって、前記パイプ通過穴の径が調整可能であることを特徴とするかご枠構造体。
【請求項2】
前記かご枠は、地盤材料が充填可能であり、複数段に積み重ね可能である請求項1に記載のかご枠構造体。
【請求項3】
前記パイプは、前記地盤材料の流入を防止し、地盤に挿入される挿入部材が通過可能な空間を確保する請求項2に記載のかご枠構造体。
【請求項4】
段切りされた盛土の階段状部分に沿って複数のかご枠を複数段積み上げてかご枠構造体を構築する盛土の復旧方法であって、
前記複数のかご枠は、パイプを収容するパイプ収容かご枠を少なくとも1つ含み、
該パイプ収容かご枠は、前記パイプが通過可能なパイプ通過穴を含むパイプ通過パネルを正面及び背面に有し、
前記パイプ通過パネルは、第1円弧状部分を含む第1開口を有する第1部分と、前記第1円弧状部分の径以下の径である第2円弧状部分を含む第2開口を有する第2部分とが組み合わされて形成され、前記パイプ通過穴は前記第1開口と第2開口とが組み合わされて形成され、
前記第2円弧状部分の径が異なる複数種類の第2部分が用意され、該第2部分を選択的に前記第1部分と組み合わせることによって、前記パイプ通過穴の径が調整可能であることを特徴とする盛土の復旧方法。
【請求項5】
前記かご枠には地盤材料が充填され、前記パイプは、前記地盤材料の流入を防止し、盛土に挿入される挿入部材が通過可能な空間を確保する請求項4に記載の盛土の復旧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、かご枠構造体及びそれを用いた盛土の復旧方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の線路、すなわち、軌道を地面よりも高い所に通すために、地盤の上に土砂を盛り上げて構築した盛土が広く使用されているところ、豪雨や地震によって盛土が大規模に崩壊した際には、早期復旧が重要であるため、大型土のうを積み上げて迅速に断面を確保する仮復旧を行い、これにより、列車の走行を再開させる。その後、仮土留め工を施工した上で、大型土のうを撤去し、盛土による本復旧を行うようになっている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】山村、五日市、川中島、藤原、「2013年8月東北地方豪雨による被害と復旧対策(田沢湖線・花輪線)」、SED、No.43、pp.64-71、JR東日本構造技術センター、2014.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の技術では、仮復旧として仮設構造物である大型土のうの構築、仮土留めの構築及び大型土のうの撤去を行った後、本復旧として本設構造物である盛土の構築を行うので、施工手順が煩雑となってしまう。また、盛土が被災する箇所は、地形的な要因等から弱点箇所となっていることがあり、繰り返し被災する懸念があるので、耐降雨性及び耐震性の向上を図る場合が多く、その場合、本復旧を行う際に排水パイプや補強材の施工の対策が取られるが、これらの対策の設計施工には時間がかかり、復旧工事が長期化してしまう。
【0005】
ここでは、前記従来の技術の問題点を解決して、仮復旧を行うことなく本復旧を行うことができ、排水パイプや補強材の後施工が可能であり、短期間で、容易に、かつ、確実に盛土を復旧することができるかご枠構造体及びそれを用いた盛土の復旧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、かご枠構造体においては、パイプを収容するパイプ収容かご枠を少なくとも1つ含む複数のかご枠を備えるかご枠構造体であって、前記パイプ収容かご枠は、前記パイプが通過可能なパイプ通過穴を含むパイプ通過パネルを正面及び背面に有し、前記パイプ通過パネルは、第1円弧状部分を含む第1開口を有する第1部分と、前記第1円弧状部分の径以下の径である第2円弧状部分を含む第2開口を有する第2部分とが組み合わされて形成され、前記パイプ通過穴は前記第1開口と第2開口とが組み合わされて形成され、前記第2円弧状部分の径が異なる複数種類の第2部分が用意され、該第2部分を選択的に前記第1部分と組み合わせることによって、前記パイプ通過穴の径が調整可能である。
【0007】
他のかご枠構造体においては、さらに、前記かご枠は、地盤材料が充填可能であり、複数段に積み重ね可能である。
【0008】
更に他のかご枠構造体においては、さらに、前記パイプは、前記地盤材料の流入を防止し、地盤に挿入される挿入部材が通過可能な空間を確保する。
【0009】
盛土の復旧方法においては、段切りされた盛土の階段状部分に沿って複数のかご枠を複数段積み上げてかご枠構造体を構築する盛土の復旧方法であって、前記複数のかご枠は、パイプを収容するパイプ収容かご枠を少なくとも1つ含み、該パイプ収容かご枠は、前記パイプが通過可能なパイプ通過穴を含むパイプ通過パネルを正面及び背面に有し、前記パイプ通過パネルは、第1円弧状部分を含む第1開口を有する第1部分と、前記第1円弧状部分の径以下の径である第2円弧状部分を含む第2開口を有する第2部分とが組み合わされて形成され、前記パイプ通過穴は前記第1開口と第2開口とが組み合わされて形成され、前記第2円弧状部分の径が異なる複数種類の第2部分が用意され、該第2部分を選択的に前記第1部分と組み合わせることによって、前記パイプ通過穴の径が調整可能である。
【0010】
他の盛土の復旧方法においては、さらに、前記かご枠には地盤材料が充填され、前記パイプは、前記地盤材料の流入を防止し、盛土に挿入される挿入部材が通過可能な空間を確保する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、仮復旧を行うことなく本復旧を行うことができ、排水パイプや補強材の後施工が可能であり、短期間で、容易に、かつ、確実に盛土を復旧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態におけるかご枠構造体を用いた盛土の復旧方法を示す概念図である。
図2】本実施の形態におけるかご枠構造体の三面図である。
図3】本実施の形態におけるかご枠構造体の構成を示す斜視図である。
図4】本実施の形態における第2かご枠の前後部網板の第1の例を示す図である。
図5】本実施の形態における第2かご枠の前後部網板の第2の例を示す図である。
図6】本実施の形態における構築途中のかご枠構造体を示す写真である。
図7】本実施の形態における第2かご枠の正面を示す写真である。
図8】本実施の形態におけるかご枠構造体とともに補強材を用いて復旧した盛土の断面図である。
図9】本実施の形態におけるかご枠構造体とともに使用する補強材の構造を示す図である。
図10】本実施の形態におけるかご枠構造体とともに排水パイプを用いて復旧した盛土の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は本実施の形態におけるかご枠構造体を用いた盛土の復旧方法を示す概念図、図2は本実施の形態におけるかご枠構造体の三面図である。なお、図1において、(a)は崩壊した盛土を示す図、(b-1)~(b-3)は従来の技術による盛土の復旧の各工程を示す図、(c-1)~(c-3)は本実施の形態における盛土の復旧の各工程を示す図であり、図2において、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0015】
図において、31は、原地盤32の上に構築された地盤としての盛土である。該盛土31は、図1の画面に対して垂直な方向に延在し、例えば、道路を支持するために使用されるものであってもよいし、河川の堤防として使用されるものであってもよいし、いかなる用途に使用されるものであってもよいが、ここでは、説明の都合上、鉄道の線路、すなわち、軌道を支持するために使用されるものであるとする。
【0016】
図1(a)には、豪雨や地震によって法面33を含む盛土31の一部が崩壊した状態が示されている。「背景技術」の項で説明した従来の技術では、図1(b-1)~(b-3)に示されるようにして、崩壊した盛土31を復旧する。すなわち、まず、図1(b-1)に示されるように、土のう34を積み上げて盛土31の断面を確保する。続いて、図1(b-2)に示されるように、仮土留め36を施工して土のう34を撤去する。これにより、仮復旧が完了する。次に、図1(b-3)に示されるように、盛土31を再構築し、法面33も形成する。これにより、本復旧が完了する。
【0017】
これに対し、本実施の形態においては、図1(c-1)~(c-3)に示されるようにして、崩壊した盛土31を復旧する。すなわち、まず、図1(c-1)に示されるように、階段状に盛土31を削る段切り施工を行う。続いて、図1(c-2)に示されるように、段切りされた盛土31の階段状部分に沿ってかご枠構造体10を構築し、該かご枠構造体10内に砕石等の地盤材料を充填するかご工を行う。これにより、本復旧が完了する。その後、図1(c-3)に示されるように、挿入部材40をかご枠構造体10を通して地盤としての盛土31内に挿入する。これにより、排水性や耐震性を更に向上させることができる。
【0018】
なお、本実施の形態において、かご枠構造体10の各部及びその他の部材の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、前記かご枠構造体10の各部及びその他の部材が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0019】
本実施の形態におけるかご枠構造体10は、図2に示されるように、積み上げられた複数の第1かご枠11及び少なくとも1つの第2かご枠12を含んでいる。
【0020】
前記第1かご枠11の各々は、一般的なかご枠部材と同様に、略直方体状の第1内部空間17を有し、さらに、該第1内部空間17の底面を画定するかご材としての略長方形状の後述される底部網板13と、前記第1内部空間17の左右の側面を画定するかご材としての略長方形状の後述される一対の側部網板14と、前記第1内部空間17の正面及び背面、すなわち、前後面を画定するかご材としての略長方形状の後述される一対の前後部網板15とを有する。なお、図に示される例において、前記第1内部空間17の上面は、開放されているが、図示されない網板によって画定されていてもよい。また、左右に隣接する第1かご枠11同士は側部網板14を共有し、前後に隣接する第1かご枠11同士は前後部網板15を共有する。そして、前記第1内部空間17内には、砕石等の地盤材料が充填される。
【0021】
なお、前記第1かご枠11は、比較的幅広の幅広かご枠11aと比較的幅狭の幅狭かご枠11bとを含んでいる。前記幅広かご枠11aと幅狭かご枠11bとは、幅方向(図2(a)及び(b)における左右方向)の寸法が相違するだけであって、縦方向(図2(a)における上下方向)の寸法及び高さ方向(図2(b)における上下方向)の寸法は、同一である。前記幅広かご枠11aと幅狭かご枠11bとを統合的に説明する場合には、第1かご枠11として説明する。なお、該第1かご枠11は、3種類以上の寸法の異なるものを含んでいてもよいし、すべての第1かご枠11の寸法が同一であってもよい。
【0022】
また、前記第2かご枠12の各々は、略直方体状の第2内部空間18を有し、さらに、該第2内部空間18の底面を画定する略長方形状の後述される底部網板13と、前記第2内部空間18の左右の側面を画定する略長方形状の後述される一対の側部網板14と、前記第2内部空間18の正面及び背面、すなわち、前後面を画定する略長方形状の後述される一対の前後部網板15とを有する。なお、図に示される例において、前記第2内部空間18の上面は、開放されているが、図示されない網板によって画定されていてもよい。また、前記第2かご枠12は左右に隣接する第1かご枠11と側部網板14を共有し、前後に隣接する第2かご枠12同士は前後部網板15を共有する。
【0023】
そして、パイプ収容かご枠としての第2かご枠12の第2内部空間18内には、砕石等の地盤材料が充填されるとともに縦方向に延在するパイプとしての保孔管21が収容される。また、パイプ通過パネルとしての前後部網板15には、保孔管21が通過可能なパイプ通過穴としての管通過穴19が形成されている。前記保孔管21は、挿入部材40が通過可能な空間を確保するためのパイプであり、かご枠構造体10内において、必ずしも密集して配設される必要はなく、ある程度の間隔を開けて配設されていればよい。したがって、保孔管21が収容される第2かご枠12も、図2に示されるように、かご枠構造体10内において、ある程度の間隔を開けて配設されていればよい。つまり、保孔管21が収容される第2かご枠12は、かご枠構造体10内の任意の箇所に任意の数だけ、必要に応じて、配設することができる。
【0024】
次に、前記第2かご枠12の構成について詳細に説明する。
【0025】
図3は本実施の形態におけるかご枠構造体の構成を示す斜視図、図4は本実施の形態における第2かご枠の前後部網板の第1の例を示す図、図5は本実施の形態における第2かご枠の前後部網板の第2の例を示す図である。なお、図4及び5において、(a)は下側部を示す図、(b)は上側部を示す図、(c)は下側部と上側部とを組み合わせた状態を示す図である。
【0026】
本実施の形態において、かご材としての底部網板13、側部網板14及び前後部網板15は、炭素鋼等の金属から成る線材を格子状又は網目状に形成した部材であるが、金属板に多数の穴を打ち抜き形成したパンチングメタルのような多孔板であってもよいし、多数の開口を有する板状の部材であれば、いかなる材料から成るものであっても、いかなる形状のものであってもよい。また、網目は、1辺の長さが、例えば、50~200〔mm〕程度の略正方形であるが、いかなる大きさであっても、いかなる形状であってもよい。さらに、前記底部網板13は、例えば、幅方向の寸法が500~1000〔mm〕程度、縦方向の寸法が1000〔mm〕程度の矩形部材であり、側部網板14は、例えば、高さ方向の寸法が500〔mm〕程度、縦方向の寸法が1000〔mm〕程度の矩形部材であり、前後部網板15は、例えば、高さ方向の寸法が500〔mm〕程度、幅方向の寸法が500~1000〔mm〕程度の矩形部材であるが、いかなる大きさであっても、いかなる形状であってもよい。
【0027】
図3に示されるように、第2かご枠12の前後部網板15は、第1部分としての下側部15Aと、第2部分としての上側部15Bとが組み合わされて形成される。そして、前記下側部15Aには、略U字状で上側が開放された第1開口としての下側凹部16Aが形成され、前記上側部15Bには、略U字状で下側が開放された第2開口としての上側凹部16Bが形成され、前記下側部15Aと上側部15Bとを組み合わせると、下側凹部16Aと上側凹部16Bとが組み合わされて、保孔管21が通過可能な大きさの略円形のパイプ通過穴としての管通過穴19が形成される。
【0028】
本実施の形態においては、比較的大きな円弧状部分である第1円弧状部分24Aを含む下側凹部16Aが形成された下側部15Aを1種類用意しておくとともに、径が第1円弧状部分24Aの径以下の円弧状部分である第2円弧状部分24Bを含む上側凹部16Bが形成された上側部15Bを用意しておく。なお、該上側部15Bは、第2円弧状部分24Bの径が異なるものを複数種類用意しておく。そして、前記上側部15Bを選択的に下側部15Aと組み合わせることによって、前記管通過穴19の径が調整可能である。具体的には、保孔管21の外径に適合する径の第2円弧状部分24Bを含む上側凹部16Bが形成された上側部15Bを選択し、該上側部15Bを下側部15Aと組み合わせることによって、保孔管21の外径に適合する大きさの管通過穴19を有するパイプ通過パネルとしての前後部網板15を構成するようになっている。
【0029】
これにより、1種類のみの下側部15Aを使用し、複数種類用意された上側部15Bのうちからいずれかを選択するだけで、複数種類の外径の保孔管21に適合する大きさの管通過穴19を有する前後部網板15を提供することができ、部品点数を削減することが可能となる。なお、必ずしも、第2円弧状部分24Bの径が異なる第2部分が上側部15Bである必要はなく、第2円弧状部分24Bの径が異なる第2部分が下側部15Aであってもよいが、ここでは、説明の都合上、第1部分が下側部15Aであって第2部分が上側部15Bである例についてのみ説明する。また、第2部分は3種類以上あってもよいが、ここでは、説明の都合上、第2部分としての上側部15Bが、比較的小さな小型上側凹部16Baが形成された小型用上側部15Baと、比較的大きな大型上側凹部16Bbが形成された大型用上側部15Bbとの2種類である例についてのみ説明する。
【0030】
図4に示されるように、下側部15Aには比較的大きな下側凹部16Aが形成されている。図4に示される例において、前記下側部15Aは、1辺の寸法が500〔mm〕程度の正方形の外形を有し、下側凹部16Aは、第1円弧状部分24Aの半径が170〔mm〕程度のU字状で上側が開放された第1開口である。また、図4(b)に示される例において、上側部15Bは小型用上側部15Baであって、幅方向(図4における左右方向)の寸法が500〔mm〕程度、高さ方向(図4における上下方向)の寸法が390〔mm〕程度の矩形の外形を有し、上側凹部16Bは、小型上側凹部16Baであって、第2円弧状部分24Bの半径が35〔mm〕程度のU字状で下側が開放された第2開口である。そして、図4(c)に示されるように、小型用上側部15Baを下側部15Aと組み合わせると、小径保孔管21aの外径に適合する大きさの小径管通過穴19aを有する前後部網板15を得ることができる。前記小径保孔管21aは、例えば、後述される排水パイプ42を通すための保孔管21として使用される。
【0031】
一方、図5(b)に示される例において、上側部15Bは大型用上側部15Bbであって、幅方向(図5における左右方向)の寸法が500〔mm〕程度、高さ方向(図5における上下方向)の寸法が290〔mm〕程度の矩形の外形を有し、上側凹部16Bは、大型上側凹部16Bbであって、第2円弧状部分24Bの半径が170〔mm〕程度のU字状で下側が開放された第2開口である。なお、下側部15Aは、図4に示される例と同様のものである。そして、図5(c)に示されるように、大型用上側部15Bbを下側部15Aと組み合わせると、大径保孔管21bの外径に適合する大きさの大径管通過穴19bを有する前後部網板15を得ることができる。前記大径保孔管21bは、例えば、後述される補強材41を通すための保孔管21として使用される。
【0032】
なお、小型用上側部15Ba及び大型用上側部15Bb、小型上側凹部16Ba及び大型上側凹部16Bb、小径管通過穴19a及び大径管通過穴19b、並びに、小径保孔管21a及び大径保孔管21bを、それぞれ、統合的に説明する場合には、上側部15B、上側凹部16B、管通過穴19及び保孔管21として説明する。
【0033】
図3に示されるように、かご材を組み立てて第2かご枠12を構成する際には、まず、第2内部空間18の前後を画定する下側部15Aが取り付けられる。該下側部15Aは、複数個の仮止め金具22によって、左右に隣接する第1かご枠11の前後部網板15又は側部網板14に仮止めされる。そして、下側凹部16A内を通るように保孔管21が第2内部空間18内に載置された後、前記保孔管21の外径に適合する大きさの上側凹部16Bが形成された上側部15Bを下側部15Aと組み合わせる。これにより、保孔管21の外径に適合する大きさの管通過穴19を有するパイプ通過パネルとしての前後部網板15が構成される。なお、互いに組み合わされた上側部15B及び下側部15Aは、接続金具としての接続コイル23によって左右に隣接する第1かご枠11の前後部網板15に固定される。具体的には、図4(c)及び5(c)に示されるように、上側部15B及び下側部15Aの左右両端において高さ方向に延在する線材が、左右に隣接する第1かご枠11の前後部網板15の左右両端において高さ方向に延在する線材に、接続コイル23によって固定される。その後、第2内部空間18内における保孔管21の周囲の空間に砕石が充填される。
【0034】
前記保孔管21は、砕石が充填される第2内部空間18内に挿入部材40が通過可能な空間を確保するためのパイプであり、例えば、塩化ビニル、炭素鋼等から成るパイプであるが、いかなる種類の材料から成るパイプであってもよいし、いかなる寸法のパイプであってもよい。
【0035】
次に、本実施の形態におけるかご枠構造体10を構築する方法について説明する。
【0036】
図6は本実施の形態における構築途中のかご枠構造体を示す写真、図7は本実施の形態における第2かご枠の正面を示す写真、図8は本実施の形態におけるかご枠構造体とともに補強材を用いて復旧した盛土の断面図、図9は本実施の形態におけるかご枠構造体とともに使用する補強材の構造を示す図である。
【0037】
本実施の形態におけるかご枠構造体10は、図2に示されるように、かご材を組み立てて第1かご枠11及び第2かご枠12を階段状に複数段(図2に示される例では、4段)積み上げて構成される。この場合、かご材を組み立てて1段目を構成して砕石等の地盤材料を充填した後、その上にかご材を組み立てて2段目を構成する。なお、1段目に第1かご枠11のみならず第2かご枠12が含まれる場合には、該第2かご枠12の第2内部空間18内に保孔管21を配設して砕石等の地盤材料を充填した後、その上にかご材を組み立てて2段目を構成する。このような動作を繰り返して、第1かご枠11及び第2かご枠12を階段状に複数段積み上げる。
【0038】
図6には、構築途中のかご枠構造体が示されている。最上段の第1かご枠11及び第2かご枠12が構成され、該第2かご枠12の第2内部空間18内に保孔管21が配設されているが、未だ砕石等の地盤材料が充填されていない状態が示されている。
【0039】
また、図7には、第2内部空間18内に保孔管21が配設され、さらに、砕石が充填された状態の第2かご枠12の正面が示されている。
【0040】
このようにして、段切りされた盛土31の階段状部分に沿って、かご枠構造体10を構築することによって、図1(c-2)に示されるように、崩壊した盛土31の本復旧が完了する。さらに、排水性や耐震性を向上させる必要があれば、本復旧が完了した後に、図1(c-3)に示されるように、挿入部材40をかご枠構造体10を通して盛土31内に挿入する。なお、挿入部材40を盛土31内に挿入するために採用される工法は、例えば、RRR-C工法(例えば、非特許文献2参照。)であるが、いかなる種類の工法であってもよい。
【文献】http://www.rrr-sys.gr.jp/rrr-c.html
【0041】
ここでは、耐震性を向上させるために、挿入部材40として補強材41を選択し、図8に示されるように、第2かご枠12の第2内部空間18内に配設された保孔管21を通して、前記補強材41を盛土31内に挿入する場合について説明する。前記補強材41は、図9に示されるように、細長い注入管41cと、該注入管41cの先端(図9における右端)近傍に取り付けられた第1袋体41aと、該第1袋体41aの基端(図9における左端)側において前記注入管41cに取り付けられた第2袋体41bとを有する。前記注入管41cは、その基端近傍が、溝型鋼等の第1取付金具27及び溝付角座金等の第2取付金具28を介して、第2かご枠12の正面における前後部網板15に固定されている。また、前記注入管41cの先端は、盛土31に形成された孔内に挿入されている。
【0042】
そして、補強材41が保孔管21を通して盛土31内に挿入された後、注入管41cを通して、第1袋体41a及び第2袋体41b内に充填材が充填される。これにより、第1袋体41aは、図9に示されるように膨張し、周囲の盛土31と干渉するので、補強材41と盛土31との間の固着力を高め、補強材41が盛土31から抜け出ることを防止するためのアンカーとして機能する。また、第2袋体41bも、図9に示されるように膨張し、保孔管21の内面に当接するので、補強材41と保孔管21との間の固着力を高めるとともに、保孔管21内に盛土31が流入することを防止することができる。なお、注入管41cには、図示されない一方向弁(逆止弁)が配設され、充填材の逆流を防止するので、膨張した第1袋体41a及び第2袋体41bが収縮してしまうことはない。また、膨張した第1袋体41aの径は、膨張した第2袋体41bよりも小さいことが望ましい。
【0043】
前記充填材は、いかなる種類の材料から成るものであってもよいが、例えば、セメントミルク等のように、第1袋体41a及び第2袋体41b内に充填する際には十分な流動性を有し、その後、固化する固化材であることが望ましい。ここでは、前記充填材が、モルタルの一種であるグラウト材であるものとして説明する。また、前記第1袋体41a及び第2袋体41bは、柔軟性を有する袋状のものであれば、いかなる種類のものであってもよいが、ここでは、土木工事等で使用されるパッカーと称されるものであって、内部に充填された充填材に含まれる水分だけが第1袋体41a及び第2袋体41bの表面から外部に染み出るものであるとする。
【0044】
このように、前記補強材41は、第1袋体41aが膨張して周囲の盛土31と干渉するので、盛土31との間の固着力を十分に発揮することができ、地盤である盛土31が効果的に補強される。したがって、地震、降雨時等における法面33の崩壊を防止することができる。
【0045】
次に、挿入部材40として排水パイプ42を選択した場合について説明する。
【0046】
図10は本実施の形態におけるかご枠構造体とともに排水パイプを用いて復旧した盛土の断面図である。
【0047】
前記補強材41に代えて、排水パイプ42を挿入部材40として選択することもできる。前記排水パイプ42は、少なくとも盛土31に挿入される部分の円筒壁面に多数の貫通孔が形成された金属製の多孔管であって、図10に示されるように、第2かご枠12の第2内部空間18内に配設された保孔管21を通して、盛土31内に挿入される。すると、盛土31内の水分は、貫通孔から排水パイプ42内に進入して、第2かご枠12の正面における前後部網板15に開口する排水パイプ42の末端から外部に排出される。なお、前記第2かご枠12は、かご枠構造体10の最下段に配設されていることが望ましい。これにより、盛土31の底面近傍から水分を排出することができる。このように、地盤である盛土31内の間隙水圧を低減させ、地震、降雨時等における法面33の崩壊を防止することができる。
【0048】
このように、本実施の形態において、かご枠構造体10は、保孔管21を収容する第2かご枠12を少なくとも1つ含む複数のかご枠を備える。そして、第2かご枠12は、保孔管21が通過可能な管通過穴19を含む前後部網板15を正面及び背面に有し、前後部網板15は、第1円弧状部分24Aを含む下側凹部16Aを有する下側部15Aと、第1円弧状部分24Aの径以下の径である第2円弧状部分24Bを含む上側凹部16Bを有する上側部15Bとが組み合わされて形成され、管通過穴19は下側凹部16Aと上側凹部16Bとが組み合わされて形成され、第2円弧状部分24Bの径が異なる複数種類の上側部15Bが用意され、上側部15Bを選択的に下側部15Aと組み合わせることによって、管通過穴19の径が調整可能である。したがって、第2円弧状部分24Bの径が異なる上側部15Bを複数種類用意しておけば、下側部15Aを交換しなくとも、管通過穴19の径を調整することができるので、部材の種類が少なくても、多様な保孔管21を収容することが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態において、盛土31の復旧方法は、段切りされた盛土31の階段状部分に沿って複数のかご枠を複数段積み上げてかご枠構造体10を構築する。そして、複数のかご枠は、保孔管21を収容する第2かご枠12を少なくとも1つ含み、第2かご枠12は、保孔管21が通過可能な管通過穴19を含む前後部網板15を正面及び背面に有し、前後部網板15は、第1円弧状部分24Aを含む下側凹部16Aを有する下側部15Aと、第1円弧状部分24Aの径以下の径である第2円弧状部分24Bを含む上側凹部16Bを有する上側部15Bとが組み合わされて形成され、管通過穴19は下側凹部16Aと上側凹部16Bとが組み合わされて形成され、第2円弧状部分24Bの径が異なる複数種類の上側部15Bが用意され、上側部15Bを選択的に下側部15Aと組み合わせることによって、管通過穴19の径が調整可能である。したがって、盛土31の復旧において、仮復旧を行うことなく本復旧を行うことができ、短期間で、容易に、かつ、確実に盛土31を復旧することができる。
【0050】
さらに、かご枠は、地盤材料が充填可能であり、複数段に積み重ね可能である。さらに、保孔管21は、地盤材料の流入を防止し、盛土31に挿入される挿入部材40が通過可能な空間を確保する。さらに、挿入部材40としての補強材41は、盛土31内において膨張可能な第1袋体41aと、保孔管21内において膨張可能な第2袋体41bとを有する。さらに、挿入部材40としての排水パイプ42は、少なくとも盛土31に挿入される部分に貫通孔が形成された多孔管である。このように、盛土31を復旧した後、補強材41や排水パイプ42の後施工が可能である。
【0051】
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示は、かご枠構造体及びそれを用いた盛土の復旧方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 かご枠構造体
11 第1かご枠
12 第2かご枠
15 前後部網板
15A 下側部
15B 上側部
15Ba 小型用上側部
15Bb 大型用上側部
16A 下側凹部
16B 上側凹部
16Ba 小型上側凹部
16Bb 大型上側凹部
19 管通過穴
19a 小径管通過穴
19b 大径管通過穴
21 保孔管
21a 小径保孔管
21b 大径保孔管
24A 第1円弧状部分
24B 第2円弧状部分
31 盛土
40 挿入部材
41 補強材
41a 第1袋体
41b 第2袋体
42 排水パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10