(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】搬送装置及びバランス制御方法
(51)【国際特許分類】
B65G 65/16 20060101AFI20220608BHJP
B65G 63/00 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
B65G65/16
B65G63/00 C
(21)【出願番号】P 2018113461
(22)【出願日】2018-06-14
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】柿木 基志
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 弘貴
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-086935(JP,U)
【文献】特開2004-292146(JP,A)
【文献】実開昭63-032893(JP,U)
【文献】特開平04-338032(JP,A)
【文献】特開2013-170045(JP,A)
【文献】特開2002-302267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/16
B65G 63/00
B66C 23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム支持部と、
前記ブーム支持部に支持されているブームと、
前記ブームに取り付けられており、搬送物を取り込む取込み部と、
前記ブームに取り付けられており、前記取込み部が取り込んだ前記搬送物を送る送出部と、
平面視において前記ブーム支持部を挟んで前記取込み部の反対側に配置されており、少なくとも水平方向に移動可能なカウンターウェイトと、
少なくとも前記ブーム支持部、前記ブーム、前記取込み部、前記送出部、及び前記カウンターウェイトを含む部分の重心位置の基準位置からの変動を検出する検出部と、
前記検出部の検出値に基づいて、前記重心位置が前記基準位置に近づくように、前記カウンターウェイトを移動させる制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記ブームが長手方向に伸縮可能であり、
前記制御部は、前記ブームの伸縮に伴って変動した前記重心位置が前記基準位置に近づくように、前記カウンターウェイトを移動させる制御を行うことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置であって、
前記ブームの伸縮量の目標値が設定されて当該伸縮が開始した後であって、前記ブームの伸縮量が目標値に到達する前に、少なくとも1回は前記検出部による検出と前記制御部による前記カウンターウェイトの移動が行われることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の搬送装置であって、
少なくとも前記ブーム支持部、前記ブーム、前記取込み部、前記送出部、及び前記カウンターウェイトを支持するとともに走行可能な台車と、
前記台車を支持する支持体と、
を更に備え、
前記支持体には、円形レールが形成されており、
前記台車が前記円形レールに沿って走行することで、前記ブームが略上下方向を回転軸として回転し、
前記検出部は、前記台車が受ける荷重を検出することを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置であって、
前記台車は、基部と、前記基部に取り付けられた車輪と、を備えており、
少なくとも前記ブーム及び前記カウンターウェイトを、前記基部に設けられたシャフトで支持しており、
前記シャフトは、当該シャフトに掛かる荷重を検出する前記検出部としてのロードセルであることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1から3までの何れか一項に記載の搬送装置であって、
前記ブームを支持し、前記ブーム支持部に連結する連結アームを備え、
前記検出部は、前記連結アームに掛かる荷重を検出することを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送装置であって、
前記連結アームは、前記ブームに上下方向を成分として含む力を与えることで、当該ブームを水平方向を回転軸として回転させる昇降装置であることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項6に記載の搬送装置であって、
前記検出部は、前記連結アームと前記ブームの連結箇所、又は、前記連結アームと前記ブーム支持部の連結箇所に掛かる荷重を検出するロードセルであることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項7に記載の搬送装置であって、
前記昇降装置が流体シリンダであり、
前記検出部は、前記流体シリンダの流体圧を検出することで、前記昇降装置に掛かる荷重を検出することを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
ブーム支持部と、
前記ブーム支持部に支持されているブームと、
前記ブームに取り付けられており、搬送物を取り込む取込み部と、
前記ブームに取り付けられており、前記取込み部が取り込んだ前記搬送物を送出する送出部と、
平面視において前記ブーム支持部を挟んで前記取込み部の反対側に配置されており、少なくとも水平方向に移動可能なカウンターウェイトと、
を備える搬送装置に対して、
少なくとも前記ブーム支持部、前記ブーム、前記取込み部、前記送出部、及び前記カウンターウェイトを含む部分の重心位置の基準位置からの変動を検出する検出工程と、
前記検出工程での検出値に基づいて、前記重心位置が前記基準位置に近づくように、前記カウンターウェイトを移動させる移動工程と、
を行うことを特徴とするバランス制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ブームに取り付けられた取込み部で搬送物を取り込んで搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、この種の搬送装置の1つであるリクレーマが開示されている。特許文献1のリクレーマは、機体と、ブームと、バランス台車と、を備える。ブームは、伸縮可能に構成されている。ブームの先端には搬送物を取り込むためのバケットホイールが取り付けられており、ブームの基端は機体に支持されている。バランス台車は、機体に対してブームと同じ側に配置されている。バランス台車は、ブームの伸縮方向とは逆方向に移動することで、バランスの変動を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ブームの伸縮動作と同調してバランス台車が移動することが記載されている。しかし、リクレーマ等の搬送装置は様々な要因(例えば、搬送物の重量、ブームの姿勢)で重心位置が変化する可能性があるため、特許文献1の構成では、搬送装置を十分に安定させることができない場合があった。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、様々な要因で搬送装置の重心位置が変化した場合であっても、安定性を保つことができる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の搬送装置が提供される。即ち、この搬送装置は、ブーム支持部と、ブームと、取込み部と、送出部と、カウンターウェイトと、検出部と、制御部と、を備える。前記ブームは、前記ブーム支持部に支持されている。前記取込み部は、前記ブームに取り付けられており、搬送物を取り込む。前記送出部は、前記ブームに取り付けられており、前記取込み部が取り込んだ前記搬送物を送る。前記カウンターウェイトは、平面視において前記ブーム支持部を挟んで前記取込み部の反対側に配置されており、少なくとも水平方向に移動可能である。前記検出部は、少なくとも前記ブーム、前記取込み部、前記送出部、及び前記カウンターウェイトを含む部分の重心位置の基準位置からの変動を検出する。前記制御部は、前記検出部の検出値に基づいて、前記重心位置が前記基準位置に近づくように、前記カウンターウェイトを移動させる制御を行う。
【0008】
本発明の第2の観点によれば、搬送装置に対して、以下の工程を行うバランス制御方法が提供される。即ち、このバランス制御方法は、検出工程と、移動工程と、を含む。前記検出工程では、少なくとも前記ブーム支持部、前記ブーム、前記取込み部、前記送出部、及び前記カウンターウェイトを含む部分の重心位置の基準位置からの変動を検出する。前記移動工程では、前記検出工程での検出値に基づいて、前記重心位置が前記基準位置に近づくように、前記カウンターウェイトを移動させる。
【0009】
これにより、検出部の検出結果に基づいて重心位置を修正できるので、様々な要因(例えば、搬送物の重量、ブームの姿勢)で搬送装置の重心位置が変化した場合であっても、搬送装置を安定させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、様々な要因で搬送装置の重心位置が変化した場合であっても、安定性を保つことができる搬送装置ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリクレーマの全体的な構成を示す側面図。
【
図2】リクレーマの制御部に入力される情報と出力される情報とを示すブロック図。
【
図7】第1変形例に係るリクレーマの全体的な構成を示す側面図。
【
図8】第1変形例に係るバランス調整制御を示すフローチャート。
【
図9】第2変形例に係るバランス調整制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1から
図4を参照して本実施形態のリクレーマ(搬送装置)1の構成について説明する。
【0013】
リクレーマ1は、貯蔵場に積まれた搬送物を取り込んで、後述のコンベアにより連続的に搬送する(払い出す)。リクレーマ1の搬送物は、粉体又は粒状体等の流動性を有する物であって梱包されていない物(ばら物)であり、具体的には、石炭及び鉄鉱石等である。
【0014】
図1に示すように、リクレーマ1は、支持体10と、上部旋回体20と、を備える。上部旋回体20は支持体10に支持されている。また、上部旋回体20は支持体10に対して略上下方向を回転軸として相対回転可能に構成されている。以下では、略上下方向を回転軸とした上部旋回体20の回転を「旋回」と称する。
【0015】
図1に示すように、支持体10は、脚部11と、支持架構12と、ホッパ13と、を備える。脚部11は、リクレーマ1の全体を支持している。脚部11の下部には車輪が設けられており、この車輪は、地面(設置面)と接触している。脚部11の上部には支持架構12が配置されている。支持架構12には、
図3に示すように、円形レール12a及び開口部12bが形成されている。円形レール12aは、上下方向で見たときに円形状のレールである。後述の台車21の走行をガイドする構成であれば、円形レール12aは溝であってもよいし、経路に沿ってガイド部材を配置した構成であってもよい。貯蔵場から取り込んで搬送された搬送物は、開口部12b及びその下方のホッパ13を介して下方へ排出される。
【0016】
上部旋回体20は、骨格となる支持構造物として、台車21と、ブーム支持部22と、ブーム23と、ウェイト支持アーム24と、第1支持アーム25と、第2支持アーム26と、第3支持アーム27と、を備える。
【0017】
台車21は、
図3に示すように等間隔で4台配置されている。4台の台車は何れも同じ構成である。それぞれの台車21は、上部旋回体20を構成する他の部材を支持するとともに、旋回可能に構成される。具体的には、
図4に示すように、台車21は、基部21aと、2つの車輪21bと、ロードセル(検出部)21cと、を備える。車輪21bは基部21aに回転可能に取り付けられている。車輪21bは円形レール12aに沿って走行可能に構成されている。ロードセル21cはシャフト状であり、歪みゲージ等の荷重検出構造を有している。ロードセル21cは、2つの車輪の間において、基部21aに取り付けられている。
【0018】
ブーム支持部22は、台車21の上部に配置されるとともに、台車21(特にロードセル21c)に荷重が掛かるように取り付けられている。この構成により、上部旋回体20を構成する台車21以外の部材の荷重は、4つのロードセル21cに掛かることとなる。
【0019】
ブーム23は、細長状の部材であり、ブーム支持部22に回転可能に取り付けられている。ブーム23は、長手方向に伸縮可能に構成されている。具体的には、ブーム23は、固定部材23aと可動部材23bとを備える。固定部材23aは、ブーム支持部22に取り付けられている。
図2に示すブーム伸縮モータ23cが発生させた動力が図略の動力伝達機構を介して可動部材23bに伝達されることで、可動部材23bが固定部材23aに対してスライドする。ブーム23が伸縮することで、水平方向の重心位置が変化する。なお、ブーム23には、バケットホイール(取込み部)31と、ブームコンベア(送出部)32と、昇降シリンダ(連結アーム、昇降装置)33と、が取り付けられている。
【0020】
バケットホイール31は、環状のベース体に複数のバケット(すくい部)が取り付けられた構成である。環状のベース体を回転させることで、バケットによって搬送物がブーム23に取り込まれる。ブームコンベア32は、ベルトコンベア又はローラコンベア等であり、ブーム23(固定部材23a及び可動部材23bの両方)に取り付けられている。ブームコンベア32は、バケットホイール31が取り込んだ搬送物を、ブーム23に沿って支持体10に向かって送出する。
【0021】
昇降シリンダ33は、油圧シリンダであり、
図2に示すシリンダ駆動モータ34(電動モータ)により作動油の供給及び排出が行われることで伸縮する(筒部に対してロッドがスライド移動する)。また、昇降シリンダ33は、ブーム支持部22及びブーム23(固定部材23a)の両方に回転可能に連結されていることで、ブーム支持部22を支持している。この構成により、昇降シリンダ33を伸縮させることで、ブーム23に上下方向を成分として含む力を与えることができるので、ブーム23を水平方向を回転軸として回転させることができる。以下では、水平方向を回転軸としたブーム23の回転を「俯仰」と称する。なお、俯仰角が0度以外でブーム23を伸縮させた場合であっても、伸縮方向は水平方向の成分を含むため、水平方向の重心位置が変化する。また、昇降シリンダ33の近傍には、昇降シリンダ33の作動油の圧力を計測する圧力計35が配置されている。
【0022】
ウェイト支持アーム24は、ブーム23と同様に、一端がブーム支持部22に取り付けられている。ウェイト支持アーム24は、平面視においてブーム23と反対側に延びるように構成されている。以下の説明では、ブーム23の長手方向(厳密には俯仰角が0度のときの長手方向)及びウェイト支持アーム24の長手方向を装置長手方向と称する。また、
図1に示すように、この装置長手方向において、ブーム23側(バケットホイール31側)を第1側と称し、その反対側を第2側と称する。ウェイト支持アーム24には、カウンターウェイト41と、CW駆動モータ42と、駆動ギア43と、が配置されている。
【0023】
カウンターウェイト41は、リクレーマ1のつり合いを取るための重りである。具体的には、ブーム23は片持ち支持であるとともに細長状の重量物であるため、重心位置は支持体10の中央よりも大幅に第1側に位置する。そのため、カウンターウェイト41を配置することで、重心位置を支持体10の中央に近づける。
【0024】
また、カウンターウェイト41は、CW駆動モータ42及び駆動ギア43によって、ウェイト支持アーム24に沿ってスライド可能に構成されている。具体的には、CW駆動モータ42及び駆動ギア43はカウンターウェイト41と一体的に移動可能に構成されている。また、駆動ギア43は、CW駆動モータ42が発生させた駆動力が伝達されることで、一方向又は他方向に回転可能である。ウェイト支持アーム24には、駆動ギア43と噛み合うラックギアが取り付けられている。この構成により、CW駆動モータ42を駆動することで、カウンターウェイト41をウェイト支持アーム24に沿って第1側又は第2側に移動させることができる。
【0025】
ブーム伸縮モータ23c、シリンダ駆動モータ34、及びCW駆動モータ42は、リクレーマ1が備える制御部50によって制御されている。制御部50は、自律的に、又は、操作装置60を介して入力された信号に基づいて、ブーム伸縮モータ23c、シリンダ駆動モータ34、及びCW駆動モータ42を制御する。
【0026】
第1支持アーム25は、ブーム23及びウェイト支持アーム24と同様に、ブーム支持部22の上部に取り付けられている。また、第1支持アーム25は、この取付位置から上方に延びるように構成されている。第2支持アーム26の基端は第1支持アーム25の上端に取り付けられており、第2支持アーム26の先端はブーム23(固定部材23a)に取り付けられている。また、第3支持アーム27の基端は第1支持アーム25の上端に取り付けられており、第3支持アーム27の先端はウェイト支持アーム24に取り付けられている。以上の構成により、荷重の集中を防止するとともに、上部旋回体20の剛性を高めることができるので、リクレーマ1を安定して稼動させることができる。なお、第1支持アーム25から第3支持アーム27は、上部旋回体20に必要な強度や安定性に従って、適宜増減可能である。また、リクレーマ1は、支持アームを備えていない構成であってもよい。
【0027】
次に、
図5及び
図6を参照して、重心位置の変化を検出して、重心位置を移動させるバランス調整制御について説明する。
図5は、バランス調整制御を示すフローチャートである。
図6は、重心位置の算出方法を説明する図である。
図5に示す処理は、制御部50によって行われる。
【0028】
本実施形態では、上部旋回体20の重心位置の変動に着目して制御を行う。上部旋回体20の重心位置は、主として、ブーム23の伸縮量、ブーム23の俯仰角、及び搬送物の重量等によって変化する。本実施形態では、ブーム23の伸縮時にバランス調整制御を行うが、後述の第2変形例に示すように、ブーム23の伸縮時以外にも同様の制御を行うことができる。また、本実施形態では、ブーム23の長さに応じて予め定められた長さだけカウンターウェイト41を移動させるのではなく、現在の重心位置を推定する処理を行う。そのため、例えばブーム23の伸縮量が同じであっても、例えば俯仰角や搬送物の重量等が異なる場合は、カウンターウェイト41の移動量も異なる。以下、具体的に説明する。
【0029】
制御部50は、操作装置60から入力された信号に基づいて、ブーム長の変更指示及び目標値を受け付ける(S101)。次に、制御部50は、ブーム伸縮モータ23cを駆動することで、ブーム23の伸縮を開始する(S102)。次に、制御部50は、4つの台車21のロードセル21cからそれぞれ出力された電圧に基づいて演算を行うことで、それぞれの台車21に掛かる荷重を取得する(S103)。なお、制御部50は、別の装置によって電圧から算出された荷重を直接取得してもよい。
【0030】
制御部50は、ステップS102において所定量だけブーム23を伸縮させて停止させた後に、ステップS103の処理を行う。これに代えて、制御部50は、ブーム23の伸縮を継続しながら(ブーム23が伸縮している途中の状態で)、ステップS103の処理を行ってもよい。
【0031】
次に、制御部50は、計測した4つの荷重に基づいて、基準位置からの重心位置の偏り(以下、偏心量e)を推定する(S104)。基準位置とは、旋回の回転軸が通る部分、円形レール12aの中心、装置長手方向における支持体10の中央等であり、リクレーマ1が通常状態(ブーム23及びカウンターウェイト41が初期位置、俯仰角が0度、搬送物の搬送なし)のときにおける重心位置である。ブーム23の伸縮量、ブーム23の俯仰角、及び搬送物の重量等が変化した場合、装置長手方向の重心位置が変化する。従って、本実施形態では、重心位置の変化のうち装置長手方向の成分が偏心量eとして取り扱われる。
【0032】
図6の状態では、4つの台車21のうち2つの台車21が基準位置から第1側に距離Aだけ離れており、残りの2つの台車21が第2側に距離Aだけ離れている。この場合、第2側をプラスとし、4つの台車21に掛かる荷重をそれぞれWa,Wb,Wc,Wdで表すと、
図6に示す演算を行うことで偏心量eを求めることができる。
【0033】
次に、制御部50は、偏心量eが許容範囲内か否かの判定を行う(S105)。許容範囲は予め定められており、第1側の偏心量の上限と第2側の偏心量の上限が定められている。
【0034】
制御部50は、偏心量eが許容範囲外と判定した場合、重心位置が基準位置より第2側であればCW駆動モータ42を一方向に駆動して第1側にカウンターウェイト41を移動させ、重心位置が基準位置より第1側であればCW駆動モータ42を他方向に駆動して第2側にカウンターウェイト41を移動させる(S106)。言い換えれば、制御部50は、偏心量eが小さくなる方向にカウンターウェイト41を移動させる。その後、制御部50は、再びステップS103以降の処理を行う。カウンターウェイト41の移動量は固定値であってもよいし、偏心量eが大きいほど長い距離を移動させる構成であってもよい。
【0035】
一方、制御部50は、偏心量eが許容範囲内と判定した場合、ブーム長が目標値に到達したか否かを判定する(S107)。ブーム長が目標値に到達している場合、制御部50は、バランス調整制御を終了する。なお、偏心量eが許容範囲内と判定した場合であって、カウンターウェイト41が移動中であるときは、制御部50は、CW駆動モータ42のブレーキ機構等を用いてカウンターウェイト41を停止させる。また、制御部50は、ステップS107の処理でブーム長が目標値に到達していない場合、制御部50は、再びステップS102の処理を行って、ブーム23を伸縮させる。
【0036】
以上の処理を継続することで、偏心量eが許容範囲内かつブーム長が目標値となる状態が実現できる。また、上述したように、リクレーマ1は、偏心量eを推定するため、ブーム23の伸縮以外の原因で重心位置が変化している場合であっても、その影響を考慮してカウンターウェイト41を動かすことで、重心位置を移動させることができる。そのため、特許文献1の構成と比較して、様々な状況においてリクレーマ1を安定させることができる。なお、本実施形態では、偏心量eに、予め定められた許容範囲を設定したが、荷重Wa,Wb,Wc,Wdに許容範囲を予め定めてもよい。その場合、偏心量eを推定せず、計測した荷重Wa,Wb,Wc,Wdによって、重心位置を変更してもよい。
【0037】
この構成により、ブーム23が伸縮できる長さが非常に長い場合であっても、リクレーマ1を安定させることができる。また、重心位置を基準位置に近づけることにより、ブーム支持部22、支持体10及び台車21等に掛かる負荷が均一化され易くなるので、特定の部分のみが過剰に摩耗することを防止できる。また、重心位置が基準位置から大きく離れている場合、ブーム23を支える昇降シリンダ33やブーム支持部22が受ける荷重が大きくなる。この点、本実施形態では昇降シリンダ33にあまり荷重が掛からないため、ブーム支持部22の軽量化や昇降シリンダ33の小型化、高寿命化を実現できる。
【0038】
次に、上記実施形態の第1変形例を説明する。
図7は、第1変形例に係るリクレーマ1の全体的な構成を示す側面図である。
図8は、第1変形例に係るバランス調整制御を示すフローチャートである。なお、第1変形例及び後述の第2変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0039】
上記実施形態のリクレーマ1は、台車21が円形レール12aに沿って回転することで、上部旋回体20を旋回させる構成である。これに代えて、第1変形例のリクレーマ1は、支持体10が旋回ベアリング14を備えており、ブーム支持部22が旋回ベアリング14に対して相対回転することで、上部旋回体20が旋回する。第1変形例の構成では、台車21が存在しないため、台車21にロードセル21cを設ける構造は採用できない。
【0040】
そのため、第1変形例では、昇降シリンダ33に掛かる荷重を計測する。具体的には、昇降シリンダ33とブーム23との連結箇所にロードセル(検出部)36を配置する。なお、ロードセル36は、昇降シリンダ33とブーム支持部22の連結箇所に配置してもよい。また、昇降シリンダ33が水平方向に並べて配置される場合は、その両方にロードセル36が配置されることが好ましい。なお、昇降シリンダ33の圧力計35を検出部として用いてもよい。
【0041】
重心位置が基準位置に完全に一致している場合、昇降シリンダ33には荷重は掛からない。重心位置が基準位置よりも第1側である場合、昇降シリンダ33には圧縮力(シリンダロッドを縮める方向の力)が掛かる。重心位置が基準位置よりも第2側である場合、昇降シリンダ33には引張り力(シリンダロッドを伸ばす方向の力)が掛かる。
【0042】
そのため、
図8に示す第1変形例のバランス調整制御では、ステップS203及びステップS206の処理が上記実施形態とは異なる。その他の処理は上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。ステップS203では、ロードセル36から出力された電圧に基づいて演算を行うことで、昇降シリンダ33に掛かる荷重を計測する(S203)。ステップS206では、制御部50は、昇降シリンダに引張力が掛かる場合、CW駆動モータ42を一方向に駆動して第1側にカウンターウェイト41を移動させ、昇降シリンダに圧縮力が掛かる場合、CW駆動モータ42を他方向に駆動して第2側にカウンターウェイト41を移動させる。
【0043】
以上の処理を行うことで、旋回ベアリング14を用いて旋回を行う構成のリクレーマ1にも本発明を適用できる。なお、昇降シリンダ33にロードセル36を配置する構成は、台車21を用いて旋回を行う上記実施形態のリクレーマ1にも適用できる。また、ブーム支持部22と支持体10が一体化したような旋回を行わないリクレーマ1にも、昇降シリンダ33にロードセル36を配置する構成を適用することで、本発明を実施できる。また、俯仰を行わない構成のリクレーマ1であって、昇降シリンダ33に代えて伸縮しない構成の連結アームが取り付けられているリクレーマ1に対しても、連結アームに掛かる荷重をロードセル36により検出することで、適切な方向に重心位置を調整することができる。
【0044】
次に、上記実施形態の第2変形例を説明する。
図9は、第2変形例に係るバランス調整制御を示すフローチャートである。
【0045】
上記実施形態のリクレーマ1は、ブーム23の伸縮時にバランス調整制御を行う構成である。これに対し、第2変形例のリクレーマ1は、ブーム23の伸縮に関係なく(即ちブーム23による作業中は常に)バランス調整制御を行う構成である。
【0046】
図9において、ステップS301、S302、S303、及びS304は、それぞれ上記実施形態のステップS103、S104、S105、及びS106に対応する。従って、ブーム23の伸縮以外の原因で重心位置が変化した場合であっても、カウンターウェイト41を移動させて重心位置の変動を抑えることができる。
【0047】
以上に説明したように、上記実施形態のリクレーマ1は、ブーム支持部22と、ブーム23と、バケットホイール31と、ブームコンベア32と、カウンターウェイト41と、ロードセル21c,36と、制御部50と、を備える。ブーム23は、ブーム支持部22に支持されている。バケットホイール31は、ブーム23に取り付けられており、搬送物を取り込む。ブームコンベア32は、ブーム23に取り付けられており、バケットホイール31が取り込んだ搬送物を送る。カウンターウェイト41は、平面視においてブーム支持部22を挟んでバケットホイール31の反対側に配置されており、少なくとも水平方向に移動可能である。ロードセル21c,36は、少なくともブーム支持部22、ブーム23、バケットホイール31、ブームコンベア32、及びカウンターウェイト41を含む部分の重心位置の基準位置からの変動を検出する(検出工程)。制御部50は、ロードセル21c,36の検出値に基づいて、重心位置が基準位置に近づくように、カウンターウェイト41を移動させる制御を行う(移動工程)。
【0048】
これにより、ロードセル21c,36の検出結果に基づいて重心位置を修正できるので、様々な要因(例えば、搬送物の重量、ブーム23の姿勢)でリクレーマ1の重心位置が変化した場合であっても、リクレーマ1を安定させることができる。
【0049】
また、上記実施形態のリクレーマ1において、ブーム23は長手方向に伸縮可能である。制御部50は、ブーム23の伸縮に伴って変動した重心位置が基準位置に近づくように、カウンターウェイト41を移動させる制御を行う。
【0050】
これにより、ブーム23が長手方向に伸縮して重心位置が変動しても、その重心位置の変動を打ち消すようにカウンターウェイト41を移動させることができるため、ブーム23の伸縮後においてもリクレーマ1を安定させることができる。
【0051】
また、上記実施形態のリクレーマ1において、ブーム23の伸縮量の目標値が設定されて当該伸縮が開始した後であって、ブーム23の伸縮量が目標値に到達する前に、少なくとも1回はロードセル21c,36による検出と制御部50によるカウンターウェイト41の移動が行われる。
【0052】
仮にブーム23を目標値まで伸縮した後にカウンターウェイト41を移動させる場合、リクレーマ1が一時的に不安定となる。この点、上記のようにブーム23が目標値に到達するまでに最低1回はカウンターウェイト41を移動させることで、リクレーマ1を安定させながらブーム23を伸縮できる。しかしながら、リクレーマ1は、ブーム23を目標値まで伸縮した後に、カウンターウェイト41を移動させる構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態のリクレーマ1は、台車21と、支持体10と、を備える。台車21は、少なくともブーム支持部22、ブーム23、バケットホイール31、ブームコンベア32、及びカウンターウェイト41を支持するとともに走行可能である。支持体10は、前記台車を支持する。支持体10には、円形レール12aが形成されている。台車21が円形レール12aに沿って走行することで、ブーム23が略上下方向を回転軸として回転(旋回)する。ロードセル21cは、台車21が受ける荷重を検出する。
【0054】
リクレーマ1が台車21及び円形レール12aを備える場合、台車21にはブーム23を含む上部旋回体20の全体の荷重が掛かるので、重心位置の変動を的確に検出できる。
【0055】
また、上記実施形態のリクレーマ1において、台車21は、基部21aと、基部21aに取り付けられた車輪21bと、を備えている。基部21aに設けられたシャフトはロードセル21cであり、少なくともブーム23及びカウンターウェイト41を支持するとともに、自身が受ける荷重を検出する。
【0056】
これにより、簡単な構成で重心位置の基準位置からの変動を検出することができる。
【0057】
また、上記第1変形例のリクレーマ1は、ブーム23を支持し、ブーム支持部22に連結する昇降シリンダ33を備える。ロードセル36は、昇降シリンダ33に掛かる荷重を検出する。
【0058】
重心位置に応じて昇降シリンダ33に掛かる荷重が変化するため、昇降シリンダ33に掛かる荷重を検出することで、重心位置の基準位置からの変動を的確に検出できる。特に、ブーム支持部22とブーム23を連結する部材にロードセル36が配置されている構成を採用することで、伸縮機能を有していない連結アームが昇降シリンダ33の代わりに配置されている構成であっても、重心位置の基準位置からの変動を的確に検出できる。
【0059】
また、上記第1変形例のリクレーマ1は、ブーム23に上向きの力を与えることで、当該ブーム23を水平方向を回転軸として回転(俯仰)させる昇降シリンダ33を備える。
【0060】
これにより、ブーム23が俯仰可能な構成であっても、ブーム23を俯仰させるための昇降シリンダ33にロードセル36を配置することで、重心位置の基準位置からの変動を的確に検出できる。
【0061】
また、上記第1変形例では、ロードセル36は、昇降シリンダ33とブーム23の連結部に掛かる荷重を検出する。これに代えて、上述したように、上記実施形態の圧力計35を検出部とすることもできる。即ち、圧力計35が検出する圧力は昇降シリンダ33に掛かる荷重と相関性があるため、圧力計35の検出結果に基づいて昇降シリンダ33の荷重を検出できる。この場合、特別なセンサを追加することなく昇降シリンダ33に掛かる荷重を検出できる。
【0062】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0063】
上記実施形態のリクレーマ1は、ブーム23を伸縮させる機能、ブーム23の俯仰角を変化させる機能、及び上部旋回体20を旋回させる機能を有している。リクレーマ1は、これらの3つの機能のうち少なくとも1つを有していない構成であってもよい。なお、これらの3つの機能の全てを有していない場合であっても、搬送物の性質の変動又は搬送量の変化等に起因して搬送物の重量が変動し、その結果、重心が変動することがあるため、重心位置を調整する処理が必要となる可能性がある。
【0064】
リクレーマ1は、バケットホイール31を用いて搬送物を取り込む構成であるが、バケットホイール31に代えてスクレーパにより搬送物を取り込む構成であってもよい。
【0065】
昇降シリンダ33は、他の流体圧シリンダ(エアシリンダ)であってもよいし、電動シリンダであってもよい。また、リクレーマ1は、シリンダ以外のアクチュエータを用いてブーム23を昇降させる構成であってもよい。
【0066】
上記実施形態では、上部旋回体20は4つの台車21を備えるが、台車21は3つ以下又は5つ以上であってもよい。また、上記実施形態のリクレーマ1は、全ての台車にロードセル21cを取り付けて荷重を計測するが、一部の台車21のみにロードセル21cを取り付ける構成であってもよい。この場合、重心位置が基準位置にあるときに台車21に掛かる荷重を予め記憶していれば、少なくとも1つのロードセル21cの検出値を用いて、重心位置が基準位置よりも第1側にあるか第2側にあるかを推測できる。このように、検出部は、具体的な重心位置を検出する構成に限られず、基準位置からズレている方向のみを検出する構成であってもよい。
【0067】
上記実施形態では、ラックピニオン機構を用いてカウンターウェイト41を移動させる構成であるが、スプロケットを回転させてチェーンを移動させることで、当該チェーンに取り付けられたカウンターウェイト41を移動させる構成であってもよい。また、カウンターウェイト41にワイヤ取り付けて当該ワイヤを引っ張ることでカウンターウェイト41を移動させる構成であってもよい。また、カウンターウェイト41は、水平方向の成分を含むように移動させる構成であれば、上下方向の成分が含まれていてもよい。
【0068】
上記実施形態では、本発明をリクレーマ1に適用する例を説明したが、他の搬送装置に適用することもできる。例えば、取り込んだ搬送物を外部へ搬送して積み上げる機能を更に有するスタッカリクレーマ、港湾等に配置され、船舶に積まれた搬送物を陸揚げするアンローダ、又は搬送物を船舶へ積み込むシップローダ等にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 リクレーマ(搬送装置)
10 支持体
20 上部旋回体
21 台車
21c ロードセル(検出部)
22 ブーム支持部
23 ブーム
24 ウェイト支持アーム
31 バケットホイール(取込み部)
32 ブームコンベア(送出部)
33 昇降シリンダ(連結アーム、昇降装置)
34 シリンダ駆動モータ
35 圧力計(検出部)
36 ロードセル(検出部)
41 カウンターウェイト