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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】バッテリパック搭載構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20220608BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220608BHJP
【FI】
B62D25/20 H
B60K1/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018135640
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020011632
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】森永 達也
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 祐
(72)【発明者】
【氏名】蟻川 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】岡村 純也
【審査官】岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013593(JP,A)
【文献】特開2017-071253(JP,A)
【文献】特開2013-107592(JP,A)
【文献】特開2007-253933(JP,A)
【文献】特開2018-075878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部に設けられたフロア部と、
容器内にバッテリセルを収容して構成され前記フロア部に取り付けられるバッテリパックと
を備えるバッテリパック搭載構造であって、
前記バッテリパックの前記フロア部に対する上下方向の支持剛性が、前側と後側との一方において他方よりも低くされ、
前記支持剛性が低い側が、前記支持剛性が高い側に対して、前記フロア部の弾性振動モードの腹の部分に近くなるように配置したこと
を特徴とするバッテリパック搭載構造。
【請求項2】
弾性を有する材料によって車両前後方向に延在して形成され、前端部及び後端部で前記車体の構造部材に取り付けられるとともに前記バッテリパックを支持するバッテリパック支持部材を有し、
前記バッテリパック支持部材の前後方向における中心位置に対して、前記バッテリパックの重心位置を前記弾性振動モードの腹の部分から遠い箇所に配置したこと
を特徴とする請求項1に記載のバッテリパック搭載構造。
【請求項3】
弾性を有する材料によって車両前後方向に延在して形成され、前端部及び後端部で前記車体の構造部材に取り付けられるとともに前記バッテリパックを支持するバッテリパック支持部材を有し、
前記バッテリパック支持部材の前後方向における中心位置に対して、前記バッテリパック支持部材と前記バッテリパックとが結合される範囲の中心位置を前記弾性振動モードの腹の部分から遠い箇所に配置したこと
を特徴とする請求項1に記載のバッテリパック搭載構造。
【請求項4】
前記フロア部に沿って前後方向に延在するとともに車幅方向に離間して一対設けられたサイドフレームを備え、
前記バッテリパック支持部材の前端部及び後端部が前記サイドフレームに連結されること
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載のバッテリパック搭載構造。
【請求項5】
前記フロア部の前記弾性振動モードの腹の部分と一致する箇所又は近接する箇所に設けられ前記フロア部の他部に対して補強された補強箇所と、
前記バッテリパックの前記支持剛性が低い側の端部と、前記補強箇所とを連結する連結部材とを備えること
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のバッテリパック搭載構造。
【請求項6】
車体下部に設けられたフロア部と、
容器内にバッテリセルを収容して構成され前記フロア部に取り付けられるバッテリパックと
を備えるバッテリパック搭載構造であって、
前記バッテリパックは前側と後側との一方において前記フロア部に固定されるとともに、他方が前記容器の弾性変形により前記フロア部との固定箇所に対して上下方向に揺動可能とされ、
前記揺動可能とされた側が、前記固定箇所に対して、前記フロア部の弾性振動モードの腹の部分に近くなるように配置したこと
を特徴とするバッテリパック搭載構造。
【請求項7】
前記フロア部の前記弾性振動モードの腹の部分と一致する箇所又は隣接する箇所に設けられ前記フロア部の他部に対して補強された補強箇所と、
前記バッテリパックの前記揺動可能とされた側の端部と、前記補強箇所とを連結する連結部材とを備えること
を特徴とする請求項6に記載のバッテリパック搭載構造。
【請求項8】
前記補強箇所は、前記フロア部に沿って車幅方向に延在する閉断面部を有するクロスメンバであること
を特徴とする請求項5又は請求項7に記載のバッテリパック搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両のバッテリパックを車体に搭載する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車や、エンジン-電気ハイブリッド車両等の電動車両においては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の多数のバッテリセルを、容器状の筐体に収容してユニット化したバッテリパックを、車体後部やセンタフロア部等に搭載している。
電動車両のバッテリパック搭載構造に関する従来技術として、例えば特許文献1には、バッテリの重量によって車両フロアの振動の腹の振幅を低減することを目的とし、フロアパネルのセンタ部に前側及び後側のバッテリ用ブラケットが設けられ、前側バッテリ用ブラケットはフロアアンダリインフォースメント上に配置され、後側バッテリ用ブラケットは、センタクロスメンバ上に設けられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-107592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モノコック構造を有する乗用車等の自動車において、重量物であるバッテリパックをフロア部分に取り付けた場合、車体の固有振動数が変化して弾性振動が悪化し、騒音や乗り心地悪化の原因となる場合がある。
例えば、フロア後部にバッテリパックを搭載した場合に、フロンドウインドウガラスの上端部とフロア後部との間隔が伸縮する弾性振動モードの振動が悪化してこもり音などの騒音の原因となることが懸念される。
このような振動の悪化に対し、車体を補強して固有振動数を変化させて対処することも考えられるが、この場合車体の構造が複雑化し、重量、コストが増加してしまう。
また、特許文献1に記載された技術のように、バッテリの重量により振動の腹の部分の振幅を抑え込むことも考えられるが、単純にバッテリの重量を負荷するのみでは制振効果は限定的なものとなる。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、簡単かつ軽量な構成により車体の弾性振動を効果的に抑制したバッテリパック搭載構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、車体下部に設けられたフロア部と、容器内にバッテリセルを収容して構成され前記フロア部に取り付けられるバッテリパックとを備えるバッテリパック搭載構造であって、前記バッテリパックの前記フロア部に対する上下方向の支持剛性が、前側と後側との一方において他方よりも低くされ、前記支持剛性が低い側が、前記支持剛性が高い側に対して、前記フロア部の弾性振動モードの腹の部分に近くなるように配置したことを特徴とするバッテリパック搭載構造である。
これによれば、バッテリパックの上下方向の支持剛性を前後で異ならせることにより、バッテリパックが支持剛性の高い側を支点として支持剛性の低い側が上下に揺動するピッチング挙動を誘発させることができる。
このピッチング挙動による揺動が大きい側を、フロア部の弾性振動モードの腹の部分に近くなるように配置することにより、バッテリパックの質量がマスダンパ(動吸振器)として作用してフロア部の制振効果を発揮し、簡素かつ軽量な構成により車体の弾性振動を効果的に抑制することができる。
また、車体各部の固有振動数に与える影響が少なく、他のモードの共振が悪化するといった悪影響が発生しにくい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、振動の腹とは、振幅が最大となる1点に限らず、節又は節に隣接する箇所を除く部分を指すものとする。
【0006】
請求項2に係る発明は、弾性を有する材料によって車両前後方向に延在して形成され、前端部及び後端部で前記車体の構造部材に取り付けられるとともに前記バッテリパックを支持するバッテリパック支持部材を有し、前記バッテリパック支持部材の前後方向における中心位置に対して、前記バッテリパックの重心位置を前記弾性振動モードの腹の部分から遠い箇所に配置したことを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック搭載構造である。
請求項3に係る発明は、弾性を有する材料によって車両前後方向に延在して形成され、前端部及び後端部で前記車体の構造部材に取り付けられるとともに前記バッテリパックを支持するバッテリパック支持部材を有し、前記バッテリパック支持部材の前後方向における中心位置に対して、前記バッテリパック支持部材と前記バッテリパックとが結合される範囲の中心位置を前記弾性振動モードの腹の部分から遠い箇所に配置したことを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック搭載構造である。
これらの各発明によれば、簡単かつ軽量な構成によりバッテリパックの弾性振動モードの腹の部分に近い側の端部が揺動するピッチング挙動を発生させ、上述した効果を得ることができる。
【0007】
請求項4に係る発明は、前記フロア部に沿って前後方向に延在するとともに車幅方向に離間して一対設けられたサイドフレームを備え、前記バッテリパック支持部材の前端部及び後端部が前記サイドフレームに連結されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のバッテリパック搭載構造である。
これによれば、バッテリパック支持部材の車体への取付箇所が強固であることにより、バッテリパックのピッチング挙動をより安定した状態で確実に誘発することができる。
【0008】
請求項5に係る発明は、前記フロア部の前記弾性振動モードの腹の部分と一致する箇所又は近接する箇所に設けられ前記フロア部の他部に対して補強された補強箇所と、
前記バッテリパックの前記支持剛性が低い側の端部と、前記補強箇所とを連結する連結部材とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のバッテリパック搭載構造である。
これによれば、バッテリパックがピッチング挙動により揺動する側の端部と、これに隣接するフロア部との間で確実な荷重伝達を可能とし、制振効果をより高めることができる。
【0009】
請求項6に係る発明は、車体下部に設けられたフロア部と、容器内にバッテリセルを収容して構成され前記フロア部に取り付けられるバッテリパックとを備えるバッテリパック搭載構造であって、前記バッテリパックは前側と後側との一方において前記フロア部に固定されるとともに、他方が前記容器の弾性変形により前記フロア部との固定箇所に対して上下方向に揺動可能とされ、前記揺動可能とされた側が、前記固定箇所に対して、前記フロア部の弾性振動モードの腹の部分に近くなるように配置したことを特徴とするバッテリパック搭載構造である。
これによれば、バッテリパックの固定側とは反対側の端部(フロア部の弾性振動モードの腹側の端部)が上下方向に揺動する弾性変形を示すことによって、バッテリパックの揺動する側の端部近傍の質量がマスダンパとして作用してフロア部の制振効果を発揮し、簡素かつ軽量な構成によって車体の弾性振動を効果的に抑制することができる。
【0010】
請求項7に係る発明は、前記フロア部の前記弾性振動モードの腹の部分と一致する箇所又は隣接する箇所に設けられ前記フロア部の他部に対して補強された補強箇所と、前記バッテリパックの前記揺動可能とされた側の端部と、前記補強箇所とを連結する連結部材とを備えることを特徴とする請求項6に記載のバッテリパック搭載構造である。
これによれば、バッテリパックが弾性変形により揺動する側の端部と、これに隣接するフロア部との間で確実な荷重伝達を可能とし、制振効果をより高めることができる。
【0011】
請求項8に係る発明は、前記補強箇所は、前記フロア部に沿って車幅方向に延在する閉断面部を有するクロスメンバであることを特徴とする請求項5又は請求項7に記載のバッテリパック搭載構造である。
これによれば、既存の車体の構造部材を利用することにより、部品点数の増加や構造の複雑化を抑制しつつ上述した効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、簡単かつ軽量な構成により車体の弾性振動を効果的に抑制したバッテリパック搭載構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用したバッテリパック搭載構造の第1実施形態を有する車両を側面から見た図である。
図2図1の車両のフロア後部を上方から見た平面図(図1のII-II部矢視図)である。
図3図1の車両のフロア後部を斜め上方かつ斜め前方側から見た斜視図であって、バッテリパックを搭載する前の状態を示す図である。
図4図1の車両のフロア後部を斜め上方かつ斜め前方側から見た斜視図であって、バッテリパックを搭載した後の状態を示す図である。
図5】第1実施形態のバッテリパック搭載構造を車幅方向から見た模式的分解図である。
図6】第1実施形態のバッテリパック搭載構造におけるバッテリパックの挙動を模式的に示す図である。
図7】本発明を適用したバッテリパック搭載構造の第2実施形態を車幅方向から見た模式的分解図である。
図8】本発明を適用したバッテリパック搭載構造の第3実施形態を車幅方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用したバッテリパック搭載構造の第1実施形態について説明する。
第1実施形態のバッテリパック搭載構造は、例えば、乗用車等の自動車であって、プラグイン充電機能を有するエンジン-電気ハイブリッド車両等の電動車両に設けられるものである。
【0015】
図1は、第1実施形態のバッテリパック搭載構造を有する車両を側面から見た図である。
車両1は、キャビン100、フロア部110、Aピラー120、Bピラー130、Cピラー140、Dピラー150、ルーフ160、フロントサイドドア170、リアサイドドア180、リアフェンダ190、リアゲート200、リアバンパフェイス210、エンジンコンパートメント220、フード230、フロントエンドモジュール240、フロントバンパフェイス250、フロントフェンダ260、フロントホイルハウス270、リアホイルハウス280、リアフロア部300等を有して構成されている。
【0016】
キャビン(車室)100は、乗員等が収容される空間部を有する車体の本体部である。
キャビン100の内部には、乗員が着座するフロントシートFS、リアシートRSが前後に配列されている。
キャビン100を含めた車体の主要部分は、例えば鋼板をプレスしたパネルを集成し、電気抵抗スポット溶接、レーザ溶接、構造用接着材などで接合したモノコック構造として構成されている。
【0017】
フロア部110は、キャビン100の床面部を構成する部分である。
フロア部110は、例えば鋼板をプレスして形成したフロアパネルに、各種フレーム、クロスメンバ類や、サイドシル等の補強構造体を接合して補強した構造を有する。
また、フロア部110の後半部であるリアフロア部300の構造については、後に詳しく説明する。
【0018】
Aピラー120、Bピラー130、Cピラー140、Dピラー150は、車体側面部に沿って上下方向に延在する部分であって、閉断面部を有する柱状に形成され、車両前方側から順次配置されている。
Aピラー120は、フロア部110の側端部に沿って配置されたサイドシルの前端部から上方へ突出するとともに、上半部は後傾して配置されている。
左右のAピラー120の間隔には、フロントウインドウガラス121が設けられている。
【0019】
Bピラー130は、サイドシルの中間部分から上方に突出している。
Cピラー140、Dピラー150は、リアホイルハウス280の上方からルーフ160の側端部にかけて配置されている。
【0020】
ルーフ160は、キャビン100の上面部(天井部分)を構成する部材である。
ルーフ160は、車両外装の一部を構成するルーフパネルの下面側を、図示しないルーフサイドフレームやクロスメンバによって補強して構成されている。
ルーフ160の前端部は、フロントウインドウガラス121の上端部と隣接して配置されている。
Aピラー120、Bピラー130、Cピラー140、Dピラー150の上端部は、ルーフ160の側端部において、図示しないルーフサイドフレームに接続されている。
【0021】
フロントサイドドア170は、フロントシートFSに着座する乗員が乗降するフロントドア開口に開閉可能に取り付けられた扉状体である。
フロントドア開口は、Aピラー120とBピラー130との間に設けられる。
フロントサイドドア170は、Aピラー120に取り付けられるヒンジ回りに揺動可能に取り付けられている。
【0022】
リアサイドドア180は、リアシートRSに着座する乗員が乗降するリアドア開口に開閉可能に取り付けられた扉状体である。
リアドア開口は、Bピラー130とCピラー140との間に設けられる。
リアサイドドア180は、Bピラー130に取り付けられるヒンジ回りに揺動可能に取り付けられている。
【0023】
リアフェンダ190は、リアサイドドア180の後方側に設けられた車体外板である。
リアフェンダ190の下部には、リアホイルハウス280の上縁部が形成されている。
リアフェンダ190の後端部には、灯火装置であるリアコンビネーションランプが設けられている。
【0024】
リアゲート200は、車体後端部に設けられた開口に開閉可能に取り付けられた扉状体である。
リアゲート200は、ルーフ160の後端部に設けられたヒンジ回りに回動して開閉される。
リアバンパフェイス210は、車体後端部におけるリアゲート200の下方に設けられた樹脂製の外装部材である。
【0025】
エンジンコンパートメント220は、キャビン100の前方側に設けられ、図示しないエンジン、モータジェネレータ、トランスミッション等のパワートレーンが収容される空間部を有する部分である。
フード230は、エンジンコンパートメント220の上部に開閉可能に設けられた蓋状の外装部材である。
【0026】
フロントエンドモジュール240は、車体前端部に設けられるラジエータ、エアコンディショナのコンデンサ等の熱交換器や、これらの熱交換器に設けられる電動ファン、灯火装置であるフロントコンビネーションランプ等を有するユニットである。
フロントバンパフェイス250は、車体前端部に設けられる樹脂製の外装部材である。
フロントフェンダ260は、エンジンコンパートメント220の側部に設けられた車体外板である。
フロントフェンダ260の下部には、リアホイルハウス270の上縁部が形成されている。
【0027】
フロントホイルハウス270、リアホイルハウス280は、それぞれ前輪FW、後輪RWが収容される空間部である。
フロントホイルハウス270は、エンジンコンパートメント220の側部に設けられている。
リアホイルハウス280は、リアフェンダ190の下部付近であってリアフロア部300の側方に設けられている。
【0028】
リアフロア部300は、キャビン100の後部における床面部(フロア部110の後部)を構成する部分である。
リアフロア部300の上面側には、後述するバッテリパック400が搭載される。
【0029】
以下、リアフロア部300の構造及びバッテリパック400の搭載構造について、より詳細に説明する。
図2は、図1の車両のフロア後部を上方から見た平面図(図1のII-II部矢視図)である。
図3は、図1の車両のフロア後部を斜め上方かつ斜め前方側から見た斜視図であって、バッテリパックを搭載する前の状態を示す図である。
図4は、図1の車両のフロア後部を斜め上方かつ斜め前方側から見た斜視図であって、バッテリパックを搭載した後の状態を示す図である。
図5は、第1実施形態のバッテリパック搭載構造を車幅方向から見た模式的分解図である。
図5は、図2におけるV-V部矢視断面における分解図を示している。
【0030】
リアフロア部300には、リアフロアパネル310、サイドフレーム320、第1クロスメンバ330、第2クロスメンバ340等が設けられている。
リアフロアパネル310は、キャビン100の後部における床面部を構成するパネル状の部材である。
リアフロアパネル310は、例えば、鋼板をプレス成形して形成されている。
リアフロアパネル310の下方には、図示しない燃料タンクや、リアサスペンションのアーム類やリアディファレンシャルが取り付けられる図示しないリアサブフレーム等が配置される。
【0031】
サイドフレーム320は、リアフロアパネル310の側端部に沿って車両前後方向に伸びた構造部材である。
サイドフレーム320は、例えば、鋼板をプレス成形した部材を集成し、スポット溶接等により接合することによって車両前後方向から見た断面形状が矩形の閉断面となるように形成されている。
【0032】
サイドフレーム320は、前方側から順に、連続かつ一体に形成された前部321、中間部322、後部323を有する。
前部321は、車両前後方向に沿って配置されるとともに、第1クロスメンバ330の左右側端部にそれぞれ結合されている。
前部321は、第1クロスメンバ330を介して、車体前部で前後方向に伸びた構造部材であるフロントサイドフレーム、サイドシル等と結合されている。
中間部322は、前部321と後部323との間に設けられる領域である。
後部323は、サイドフレーム320の後半部において、車両前後方向に沿って配置されている。
【0033】
中間部322は、前端部に対して後端部が、上方かつ車幅方向内側となるように、車両前後方向に対して傾斜して形成されている。
その結果、サイドフレーム320は、上方及び側面から見た形状がそれぞれS字状に湾曲して形成され、後部323は、前部321に対して、車両前後方向から見たときに、上方かつ車幅方向内側にオフセットして配置されている。
上述したリアホイルハウス280は、後部323の車幅方向外側の領域に配置される。
また、後部323には、リアサスペンションの図示しないダンパスプリングユニットの上端部が取り付けられるマウント部324が設けられている。
マウント部324は、後部323から車幅方向外側に突出して形成されている。
【0034】
第1クロスメンバ330、第2クロスメンバ340は、左右のサイドフレーム320間にわたして、車幅方向に沿って伸びた構造部材である。
第1クロスメンバ330、第2クロスメンバ340は、例えば、鋼板をプレス成形した部材を集成し、スポット溶接等により接合することによって、車幅方向から見た断面形状が矩形の閉断面となるように形成されている。
【0035】
第1クロスメンバ330は、左右のサイドフレーム320の前部321の前端部間にわたして設けられている。
第1クロスメンバ330は、リアフロアパネル310の前縁部に沿って配置されている。
第1クロスメンバ330には、それよりも前方側のフロア部110に沿って前後方向に伸びて配置された構造部材であるフロントサイドフレーム及びサイドシルの後端部が接続される。
【0036】
第2クロスメンバ340は、左右のサイドフレーム320の中間部322の間にわたして設けられている。
第2クロスメンバ340は、リアフロアパネル310の下面側に、上方が開いた逆ハット状の断面形状を有するパネルを接合することによって、リアフロアパネル310の下面側において閉断面を有するよう構成されている。
第2クロスメンバ340は、長手方向に沿って離散的に配置されたスポット溶接箇所により、あるいは、連続的に形成されたレーザ溶接箇所や構造用接着剤等により、リアフロアパネル310に接合されている。
第2クロスメンバ340の周辺は、後述する車体潰れモードの弾性振動における腹(節以外の部分)となる。すなわち、第2クロスメンバ340は、リアフロアパネル310の弾性振動モードの腹の部分と一致あるいは近接する箇所に設けられた補強箇所である。
【0037】
バッテリパック400は、車両のモータジェネレータが発電した電力、及び、駐車中に外部から供給される電力が充電されるとともに、モータジェネレータに走行用電力を供給する高電圧バッテリを有する。
バッテリパック400は、例えば、金属板をプレス成形して構成した容器状の筐体内部に、複数のリチウムイオンバッテリセルと、その電流、電圧、温度、SOC等を管理する制御装置であるバッテリECU、各セルを冷却する冷却装置等を収容して構成されている。
バッテリパック400は、図4等に示すように、リアフロア部300の上方側であって、第2クロスメンバ340よりも後方側の領域の上部に搭載される。
バッテリパック400は、容量にもよるが、例えば150kg程度の質量を有する場合がある。
【0038】
バッテリパック400は、バッテリブラケット500を介してサイドフレーム320に取り付けられる。
バッテリブラケット500は、バッテリパック400の左右の側端部にそれぞれ設けられる。
バッテリブラケット500は、弾性を有する材料により一体に形成される。
例えば、第1実施形態の場合には、バッテリブラケット500は、例えば高弾性の鋼板をプレス成型することによって、全体として弓なり状にしなる弾性変形を示し、一種の板バネとして機能するよう形成されている。
【0039】
バッテリブラケット500は、前後方向に伸びたパネル状に形成され、前部510、中間部520、後部530を一体に形成して構成されている。
図2に示すように、バッテリブラケット500は、上方から見た車両平面視において、車両前後方向に沿って伸びた帯状に形成されている。
前部510、中間部520、後部530は、前方側から順次連続的に設けられている。
図5等に示すように、前部510は、前端部が後端部に対して下がるよう、前傾している。
前部510は、バッテリパック400の前端部よりも車両前方側に突出して配置されている。
前部510の前端部近傍には、サイドフレーム320の中間部322の上面部に締結される締結箇所511が設けられている。
【0040】
後部530は、サイドフレーム320の後部321の上面部に沿ってほぼ水平に伸びている。
後部530の後端部近傍には、サイドフレーム320の後部323の上面部に締結される締結箇所531が設けられている。
中間部520は、前部510と後部530との間で、車両前後方向に対する傾斜が連続的に徐変するよう、車両側面視において上方が凸となるように湾曲して形成されている。
バッテリパック400の前端部は、中間部520の上方に配置されている。
【0041】
バッテリブラケット500の下面部は、締結箇所511,531以外の領域においては、サイドフレーム320の上面部との間に、後述するバッテリパック400の揺動を許容するだけの間隔が設けられている。
バッテリブラケット500の後部530は、車両前後方向に分散して設けられた複数(一例として第1実施形態においては3箇所)の固定箇所P1,P2,P3において、バッテリパック400の下部と固定される。
【0042】
図5に示すように、バッテリブラケット500の前後方向における中心位置Cbに対して、バッテリパック400の重心位置CGは、車両後方側にオフセットして配置されている。
また、バッテリブラケット500は、車両の走行時にバッテリパック400に作用する加振力により、中間部520の湾曲箇所の曲率が変化する方向に弾性変形が可能となるよう構成されている。
【0043】
センタブラケット600は、バッテリパック400の前端部における車幅方向中央部と、第2クロスメンバ340の直上におけるリアフロアパネル310の車幅方向中央部とを、上下方向に連結する連結部材である。
センタブラケット600は、バッテリパック400の前部と第2クロスメンバ340との間で、上下方向の荷重伝達を行なうことが可能となっている。
【0044】
図6は、第1実施形態のバッテリパック搭載構造におけるバッテリパックの挙動を模式的に示す図である。
第1実施形態のバッテリパック搭載構造においては、バッテリブラケット500に湾曲した中間部520を設けるとともに、その弾性変形によって前部510と後部530とが相対回動するようにバッテリブラケット500が弾性変形するように構成されている。
また、バッテリパック400の重心位置CGが、バッテリブラケット500の前後方向における中心位置Cbよりも後方側にオフセットされていることから、バッテリパック400の車体(サイドフレーム320)に対する上下方向の支持剛性は、前部側において後部側よりも低く(上下バネ定数が小さく)なる。
【0045】
この場合、バッテリパック400に上下方向の加振力が加わると、バッテリブラケット500が弾性変形することにより、バッテリパック400の後端部近傍において車幅方向に沿って伸びた回転中心軸回りに、バッテリパック400の前端部が上下する方向に揺動するピッチング挙動を示すことになる。
このピッチング挙動は、第2クロスメンバ340とバッテリパック400の前端部とがセンタブラケット600で連結されていることにより、第2クロスメンバ340の中央部における上下方向の弾性振動と連動する。
このとき、バッテリパック400の質量の一部は、第2クロスメンバ340周辺のリアフロアパネル310の振動を抑制するマスダンパとして機能する。
【0046】
一般に、モノコック構造の車体を有する乗用車等の自動車において、リアフロア部に重量物であるバッテリパックを搭載した場合、フロントウインドウガラス121の上端近傍の点Aと、第2クロスメンバ340の近傍の点B(図1参照)との距離が伸縮する方向にキャビン100が変形する弾性振動(いわゆる車体潰れモードの振動)によるこもり音などの騒音の悪化が問題となりやすい。
この点、第1実施形態によれば、バッテリパック400の質量がマスダンパとして機能することにより、このような車体の弾性振動を効果的に抑制し、部品点数や質量をほとんど増加させない簡素かつ軽量な構成により、車体振動に起因する騒音を抑制することができる。
【0047】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)バッテリパック400の上下方向の支持剛性を、前後で異ならせることにより、バッテリパック400が支持剛性の高い側(後部)を支点として支持剛性の低い側(前部)が上下に揺動するピッチング挙動を発生させることができる。
このピッチング挙動による揺動が大きい側(前部)を、リアフロア部300の弾性振動モードの腹の部分Bに隣接する第2クロスメンバ340側に近くなるように配置することにより、バッテリパック400の質量がマスダンパとして作用して、フロア部100の制振効果を発揮し、簡素かつ軽量な構成により車体の弾性振動を効果的に抑制することができる。
また、車体各部の固有振動数に与える影響が少なく、他のモードの共振が悪化するといった悪影響が発生しにくい。
(2)弾性を有する材料により形成されたバッテリブラケット500の前後方向における中心位置Cbに対して、バッテリパック400の重心位置を弾性振動モードの腹の部分Bから遠い箇所(車両後方)に配置したことにより、簡単かつ軽量な構成によりバッテリパック400の前端部が上下に揺動するピッチング挙動を発生させ、上述した効果を得ることができる。
(3)バッテリブラケット500の車体への取付箇所を、リアフロア部300のなかで比較的強固な部分であるサイドフレーム320としたことにより、バッテリパック400のピッチング挙動をより安定した状態で確実に得ることができる。
(4)バッテリパック400が揺動する側である前端部と、リアフロア部300における補強箇所である第2クロスメンバ340とをセンタブラケット600で連結したことにより、バッテリパック400がピッチング挙動により揺動する側の端部と、これに隣接するリアフロア部300との間で確実な荷重伝達を可能とし、制振効果をより高めることができる。
また、センタブラケット600の車体側の連結箇所として第2クロスメンバ340を利用することにより、部品点数の増加や構造の複雑化を抑制しつつ上述した効果を得ることができる。
【0048】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用したバッテリパック搭載構造の第2実施形態について説明する。
なお、以下説明する各実施形態において、従前の実施形態と実質的に同様の箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図7は、第2実施形態のバッテリパック搭載構造を車幅方向から見た模式的分解図である。
図7に示すように、バッテリパック400とバッテリブラケット500との固定箇所P1乃至P3が設けられた領域においては、バッテリパック400自体の剛性によってバッテリブラケット500が補強(補剛)された補強領域Rが形成される。
【0049】
第2実施形態においては、第1実施形態と同様のバッテリパック400の揺動を可能とするため、補強領域Rの車両前後方向における中心位置Cr(最前端の固定箇所P1と、最後端の固定箇所P3との中間位置)を、バッテリブラケット500の中間位置Cbに対して車両後方側に配置している。
以上説明した第2実施形態においても、上述した第1実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0050】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用したバッテリパック搭載構造の第3実施形態について説明する。
図8は、本発明を適用したバッテリパック搭載構造の第3実施形態を車幅方向から見た模式図である。
第3実施形態においては、第1実施形態のバッテリブラケット500に代えて、以下説明するバッテリブラケット700を備えている。
バッテリブラケット700は、バッテリパック400の下部における車両後方側の領域と、サイドフレーム320の後部323の上面部とを、車両の走行時における変形が無視しうる程度の高剛性で強固に結合するものである。
一方、バッテリパック400の車両前方側の領域は、センタブラケット600(図8では不図示)のみによってリアフロア部300に取り付けられている。
バッテリパック400の重心位置は、バッテリブラケット700の前端部よりも車両前方側に配置される。
【0051】
第3実施形態においては、車両の走行時にバッテリパック400内の重量物であるバッテリセルに作用する加振力により、バッテリパック400の筐体が弾性変形して、バッテリパック400の前端部がサイドフレーム320に対して上下方向に揺動する。
バッテリパック400の前方側の領域は、この揺動により、第1実施形態と同様にマスダンパとしての機能を発揮する。
以上説明したように、第3実施形態においても、上述した第1実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(変形例)
本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)車両及びバッテリパック搭載構造の構成は、上述した各実施形態に限定されず、適宜変更することが可能である。
例えば、車両の車形、車体構造、構造部材の配置等は、適宜変更することができる。
また、各実施形態において、車両は一例としてエンジン-電気ハイブリッド車両であったが、本発明はバッテリパックを搭載するピュアEVや燃料電池車両(FCV)などであっても適用することが可能である。
(2)各実施形態において、バッテリパックは、車体の弾性振動モードの腹に対して後方側に配置されるとともに、前端部が上下方向に揺動するよう構成されているが、バッテリパックを車体の弾性振動モードの腹に対して前方側に配置する場合には、後端部が揺動するように構成することができる。この場合、バッテリパックの後端部と車体における弾性振動モードの腹の部分とをセンタブラケットにより連結する構成とすることができる。
(3)各実施形態において、バッテリパックは車体床面よりも上方に載置されているが、本発明はこれに限らず、バッテリパックを床下に吊下げる車両においても適用することが可能である。
(4)第1、第2実施形態においては、弾性を有するバッテリブラケットによりバッテリパックを支持するとともに、バッテリブラケットの中心位置と、バッテリパックの重心位置あるいは補強領域の中心位置との位置関係を利用して、バッテリパックの上下方向の支持剛性を前後で異ならせているが、バッテリパックの上下方向の支持剛性を前後で異ならせる手法はこれに限定されず、適宜変更することができる。
例えば、バッテリパックの前後を別個の支持部材により車体に取り付けるとともに、前後の支持部材の剛性を異ならせてもよい。
(5)各実施形態において、センタブラケットは車幅方向中央部に一箇所設けているが、センタブラケットを設ける位置は車幅方向中央部に限らず、車幅方向にオフセットされた他の箇所であってもよい。
また、複数のセンタブラケットを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 車両 100 キャビン
FS フロントシート RS リアシート
110 フロア部 120 Aピラー
121 フロントウインドウガラス 130 Bピラー
140 Cピラー 150 Dピラー
160 ルーフ 170 フロントサイドドア
180 リアサイドドア 190 リアフェンダ
200 リアゲート 210 リアバンパフェイス
220 エンジンコンパートメント 230 フード
240 フロントエンドモジュール 250 フロントバンパフェイス
260 フロントフェンダ 270 フロントホイルハウス
280 リアホイルハウス
300 リアフロア部 310 リアフロアパネル
320 サイドフレーム 321 前部
322 中間部 323 後部
324 マウント部 330 第1クロスメンバ
340 第2クロスメンバ
FW 前輪 RW 後輪
400 バッテリパック CG 重心位置
500 バッテリブラケット Cb 中心位置
510 前部 511 締結箇所
520 中間部 530 後部
531 締結箇所 P1,P2,P3 固定箇所
R 補強領域 Cr 中心位置
600 センタブラケット 700 バッテリブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8