(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】インサイドハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/12 20140101AFI20220608BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
E05B85/12 D
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2018142273
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 綾一
(72)【発明者】
【氏名】長谷 佳幸
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-83986(JP,A)
【文献】特公昭61-44648(JP,B2)
【文献】特許第4887084(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/10-85/18
B60J 5/04
B29C 45/26-45/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアパネルに取り付けられるハンドルベースと、
前記ハンドルベースに回動可能に支持される操作ハンドルと、を備え、
前記操作ハンドルは、回動支点となる前記操作ハンドルの基端側に設けられるハンドル軸支部と、前記操作ハンドルの先端側に形成され、乗員が車両のドアを開く際に把持して操作する把持部とを有し、
前記操作ハンドルにおける前記把持部よりも前記ドアパネル側に配設される部位に、前記操作ハンドルを成型する際に発生するパーティングラインが形成されることを特徴とするインサイドハンドル装置。
【請求項2】
前記操作ハンドルは、前記把持部から前記ドアパネル側に延出する壁部を有し、前記壁部の先端部分に、前記パーティングラインが形成されることを特徴とする請求項1に記載のインサイドハンドル装置。
【請求項3】
前記操作ハンドルの表面に、メッキ処理が施されることを特徴とする請求項1又は2に記載のインサイドハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサイドハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両のドアに装着されるインサイドハンドル装置(車両用インサイドハンドル装置)が公知である。
【0003】
インサイドハンドル装置は、例えば、車両のドアパネルに取り付けられるハンドルベースと、ハンドルベースに回動可能に支持される操作ハンドルとを備える。操作ハンドルの表面には、例えばクロームメッキ等のメッキ処理が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
操作ハンドルは、一般的に合成樹脂材料を射出成形することにより形成され、成型後の操作ハンドルには、パーティングライン(成形型の分割ライン)による段差が存在する。成型後の操作ハンドルからパーティングラインを除去するためには、研磨工程を実施する必要がある。しかしながら、インサイドハンドル装置の製造コストを低減するという観点からは、操作ハンドルの研磨工程は極力削減することが好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、操作ハンドルの研磨工程を削減することにより、製造コストを低減することができるインサイドハンドル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインサイドハンドル装置は、車両のドアパネルに取り付けられるハンドルベースと、ハンドルベースに回動可能に支持される操作ハンドルと、を備える。操作ハンドルは、回動支点となる操作ハンドルの基端側に設けられるハンドル軸支部と、操作ハンドルの先端側に形成され、乗員が車両のドアを開く際に把持して操作する把持部とを有する。操作ハンドルにおける把持部よりもドアパネル側に配設される部位に、操作ハンドルを成型する際に発生するパーティングラインが形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るインサイドハンドル装置によれば、操作ハンドルの研磨工程を削減することにより、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るインサイドハンドル装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るインサイドハンドル装置の分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るインサイドハンドル装置の正面図である。
【
図7】成形型の型抜き方向を説明するための、
図5のB-B線矢視断面に相当する断面図である。
【
図8】成形型の型抜き方向を説明するための、
図5のC-C線矢視断面に相当する断面図である。
【
図9】パーティングラインを説明するための、操作ハンドルの斜視図である。
【
図10】パーティングラインを説明するための、操作ハンドルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0011】
図1から
図4に示すように、インサイドハンドル装置10は、ハンドルベース11と、ロックレバー12と、操作ハンドル13と、を備える。インサイドハンドル装置10は、車両のドアパネルを構成するインナーパネル(図示せず)に固定されて、車室内に面するドアトリム(図示せず)から部分的に露出するように配設される。また、インサイドハンドル装置10には、ドアパネル内部に配設されるボーデンケーブル(図示せず)が連結される。なお、図示しないボーデンケーブルは、筒形状を有するアウターチューブと、アウターチューブ内に挿通されるインナーワイヤーとを備えて構成される。
【0012】
ハンドルベース11は、例えば合成樹脂材料を射出成形することにより形成される。ハンドルベース11は、一側に貫通孔から構成される軸支孔14と、軸支孔14に隣接されて凹形状を有する操作凹部15とが配設されている。軸支孔14の一側端部には、一対のチューブ保持部(図示せず)が設けられる。なお、図示しないチューブ保持部には、ロックレバー12側のボーデンケーブル及び操作ハンドル13側のボーデンケーブルの各アウターチューブの端部が保持される。
【0013】
ハンドルベース11の枠部16に、係止片17が複数配設され、これらの係止片17には、貫通孔から構成される固定部18が設けられている。図示しない固定ネジを固定部18に挿入し、インナーパネルに螺合することにより、インサイドハンドル装置10がインナーパネルに対して固定される。
【0014】
ロックレバー12は、ハンドルベース11に回動可能に支持されるものであり、例えば合成樹脂材料を射出成形することにより形成される。ロックレバー12は、ロックノブとも称されるものであり、操作ハンドル13に近接(隣接)させてハンドルベース11に配設される。
【0015】
ロックレバー12は、回動支点となる基端側に設けられたロック軸支部19が、ハンドルベース11の軸支孔14に支持軸20を介して回動可能に支持される。また、ロックレバー12のロック軸支部19には、ロック側ワイヤー保持部21が配設され、このロック側ワイヤー保持部21に、ロックレバー12側のボーデンケーブルのインナーワイヤーの端部が連結される。
【0016】
操作ハンドル13は、ハンドルベース11に回動可能に支持される。操作ハンドル13は、支持軸20に装着される巻バネ22により初期位置側に付勢され、初期位置でのガタツキ等が抑制される。
【0017】
操作ハンドル13は、例えば合成樹脂材料を射出成形することにより形成される。操作ハンドル13は、本実施形態では、所謂リング型に形成されており、クロームメッキ等のメッキ処理が施される。このため、操作ハンドル13の表面には、メッキ処理によるメッキ層23が形成されている。
【0018】
操作ハンドル13は、回動支点となる基端側に設けられたハンドル軸支部24が、ハンドルベース11の軸支孔14に支持軸20を介して回動可能に支持される。また、操作ハンドル13は、先端側に形成され、乗員が車両のドアを開く際に把持して操作する把持部25が巻バネ22によって操作凹部15内に付勢保持されている。さらに、これらのハンドル軸支部24と把持部25とが、一対の連結部26,26によって連結されることによって、操作ハンドル13は、その中央部分に開口部27が形成されたリング型(リング形状)に形成されている。
【0019】
そして、操作ハンドル13のハンドル軸支部24には、ハンドル側ワイヤー保持部28が配設され、このハンドル側ワイヤー保持部28に、操作ハンドル13側のボーデンケーブルのインナーワイヤーの端部が連結される。
【0020】
以下、操作ハンドル13の具体的構成例を説明する。
【0021】
図5及び
図6に示すように、操作ハンドル13は、把持部25を定義(規定)するための壁部29を有しており、この壁部29は、把持部25における操作ハンドル13の先端側からドアパネル側(車幅方向外側)に延出している。そして、乗員の手指がパーティングラインPL1に触れないようにするために、壁部29の先端部分に、パーティングラインPL1が形成されている。すなわち、本実施形態では、操作ハンドル13における乗員が手指で触れない部位である壁部29にパーティングラインPL1を形成することにより、パーティングラインPL1の研磨を実施しなくても済むようになる。
【0022】
前述のように、操作ハンドル13は、合成樹脂材料を射出成形することにより形成される。このため、操作ハンドル13は、例えば
図7及び
図8に示すような成形型(金型)30を用いて成型される。
図7及び
図8に示す成形型30は、互いに上下方向に対向し且つ斜め方向(
図7及び
図8中の矢印X参照)に相対移動可能な上型31と下型32とを有して構成されている。
【0023】
図9及び
図10に示すように、操作ハンドル13の表面には、射出成形により操作ハンドル13を成型する際に発生する微小な線状突起であるパーティングラインPL1,PL2が形成される。
【0024】
第1のパーティングラインPL1は、操作ハンドル13におけるリング形状の内周側に形成される。パーティングラインPL1が操作ハンドル13におけるリング形状の内周側に形成される場合、自動研磨機による研磨が比較的難しく、自動研磨機による研磨と比較して手間及び時間を要する手動研磨による研磨を実施するのが一般的である。しかしながら、本実施形態においては、操作ハンドル13における乗員が手指で触れない部位である壁部29に第1のパーティングラインPL1を形成することにより、パーティングラインPL1の研磨を実施しなくても済むようになっている。
【0025】
その一方で、第2のパーティングラインPL2は、操作ハンドル13におけるリング形状の外周側に形成される。パーティングラインPL2が操作ハンドル13におけるリング形状の外周側に形成される場合、自動研磨機による研磨で十分対応することが可能である。このため、本実施形態では、第2のパーティングラインPL2の研磨を実施して除去するようにしている。
【0026】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0027】
(1)インサイドハンドル装置10は、車両のドアパネルに取り付けられるハンドルベース11と、ハンドルベース11に回動可能に支持される操作ハンドル13と、を備える。操作ハンドル13は、回動支点となる操作ハンドル13の基端側に設けられるハンドル軸支部24と、操作ハンドル13の先端側に形成され、乗員が車両のドアを開く際に把持して操作する把持部25とを有する。操作ハンドル13における把持部25よりもドアパネル側(車幅方向外側)に配設される部位に、操作ハンドル13を成型する際に発生するパーティングラインPL1が形成される。
【0028】
インサイドハンドル装置10では、操作ハンドル13における把持部25よりもドアパネル側(車幅方向外側)に配設される部位に、パーティングラインPL1が形成されることにより、乗員の手指がパーティングラインPL1に触れないようになる。このため、パーティングラインPL1の研磨を実施しなくても済むようになる。
【0029】
従って、インサイドハンドル装置10によれば、操作ハンドル13の研磨工程を削減することにより、製造コストを低減することが可能になる。
【0030】
(2)操作ハンドル13は、把持部25からドアパネル側(車幅方向外側)に延出する壁部29を有し、壁部29の先端部分に、パーティングラインPL1が形成される。
【0031】
このようにパーティングラインPL1を形成することにより、操作ハンドル13における乗員が手指で触れない位置にパーティングラインPL1を配設することができ、パーティングラインPL1の研磨を実施しなくても済むようになる。
【0032】
(3)操作ハンドル13の表面に、メッキ処理が施されている。このため、操作ハンドル13の表面には、メッキ処理によるメッキ層23が形成される。
【0033】
前述のようにパーティングラインPL1を形成することにより、操作ハンドル13における乗員が手指で触れない位置にパーティングラインPL1を配設することができ、パーティングラインPL1付近を起点とするメッキ層23の剥がれを抑制することができる。
【0034】
ところで、本発明のインサイドハンドル装置は前述の実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 インサイドハンドル装置
11 ハンドルベース
13 操作ハンドル
24 ハンドル軸支部
25 把持部
29 壁部
PL1 パーティングライン