(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱用包装容器の蓋及び電子レンジ加熱用包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20220608BHJP
B65D 51/16 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D51/16 310
(21)【出願番号】P 2018152039
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390021429
【氏名又は名称】株式会社JSPパッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174702
【氏名又は名称】安藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】秋元 斉
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3138601(JP,U)
【文献】特開2014-43276(JP,A)
【文献】特開2014-91543(JP,A)
【文献】特開2017-7703(JP,A)
【文献】特開2014-91542(JP,A)
【文献】特開2010-195453(JP,A)
【文献】特開2017-132507(JP,A)
【文献】特開2017-165485(JP,A)
【文献】実開昭63-199985(JP,U)
【文献】実開平4-29976(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0166362(US,A1)
【文献】西独国特許出願公開第3801122(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 51/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ加熱用包装容器の蓋であって、
前記蓋は該蓋の天板面には切込みにより連結部を残して形成された蒸気排出用の舌片が形成されており、
前記連結部及び/又は前記舌片の先端部が、下方側に凸の湾曲及び/又は屈曲状で
あり、
前記蓋は該蓋の天板面に下方側に凸の湾曲及び/又は屈曲状の凹溝が形成されており、
前記凹溝を含む位置には前記舌片が形成されており、
前記連結部が前記凹溝の溝に沿った方向と交差しており、
前記舌片の幅方向における50%以上の部分が前記凹溝内に形成されていることを特徴とする電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
【請求項2】
前記舌片の湾曲深さが0.1~5mmであることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
【請求項3】
前記舌片の
全体が前記凹溝内に形成されていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
【請求項4】
前記凹溝が2つ以上並列して形成されており、前記凹溝間が平坦状に形成されており、前記舌片がそれぞれの凹溝内に形成されていることを特徴とする請求項
1から3のいずれか一項に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
【請求項5】
前記舌片の先端部に前記切込みを介して対向する側の天板面に、前記舌片の先端部に向けてリブが形成されていることを特徴とする請求項
1から4のいずれか一項に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
【請求項6】
前記舌片の幅(A)が5~25mmであり、前記舌片の長さ(B)が5~30mmであり、前記舌片の幅(A)に対する前記舌片の長さ(B)の比(B/A)が1.2~3であることを特徴とする請求項
1から5のいずれか一項に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
【請求項7】
前記舌片が、前記天板面から上方側に突出して形成された突条及び/又は前記天板面から下方側に向けて凹んでいる凹部によって区画された領域内に形成されていることを特徴とする請求項
1から6のいずれか一項に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
【請求項8】
前記領域の底面が前記天板面よりも下方側に形成されていることを特徴とする
請求項7に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
【請求項9】
容器本体と蓋とを備える電子レンジ加熱用包装容器であって、
前記蓋は該蓋の天板面には、切込みにより連結部を残して形成された蒸気排出用の舌片が形成されており、
前記連結部及び/又は前記舌片の先端部が、下方側に凸の湾曲及び/又は屈曲状であり、
前記蓋は該蓋の天板面に下方側に凸の湾曲及び/又は屈曲状の凹溝が形成されており、
前記凹溝を含む位置には前記舌片が形成されており、
前記連結部が前記凹溝の溝に沿った方向と交差しており、
前記舌片の幅方向における50%以上の部分が前記凹溝内に形成されていることを特徴とする電子レンジ加熱用包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ加熱用包装容器の蓋及び電子レンジ加熱用包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストア等で販売される弁当等において、電子レンジにそのまま投入して加熱調理できる、所謂レンジアップ商品の販売が伸びている。一方、このような商品に使用される電子レンジ加熱用包装容器は、レンジでの加熱中に食品から発生した蒸気により蓋が変形する虞があるため、蒸気を適度に容器外に排出する必要がある。
【0003】
そこで、これまでに、蓋に切込みを入れた舌片を有する蒸気排出孔を形成した容器の蓋が提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。このような舌片を設けた蓋の製造では、通常、蓋を成形した後に当該蓋の裏側から所定の位置に切込み刃を押し当てて舌片を形成している。
【0004】
しかしながら、このように成形した舌片においては以下のような問題が生じていた。
(1)蓋に切込みを入れる際に、切込み刃を引き抜く過程において、舌片の面が上側に反った状態となり、蓋の天板と舌片との間に間隙が生じ、異物混入の虞がある。
(2)一方で、舌片が天板部分よりも下側又は面一に位置した場合、間隙は生じ難くなるが、蒸気発生時に舌片部分が開口しないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭63-199985号公報
【文献】実開平4-29976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、電子レンジ加熱用包装容器の蓋に切込みにより設けられた舌片において、製造後の上側への舌片の反りや、蓋の天板と舌片との間に間隙が生じず、蒸気発生時には舌片が開口する電子レンジ加熱用包装容器の蓋及び電子レンジ加熱用包装容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋及び電子レンジ加熱用包装容器を提供する。
<1>電子レンジ加熱用包装容器の蓋であって、前記蓋は該蓋の天板面には切込みにより連結部を残して形成された蒸気排出用の舌片が形成されており、前記連結部及び/又は前記舌片の先端部が、下方側に凸の湾曲及び/又は屈曲状であることを特徴とする電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
<2>前記蓋は該蓋の天板面に下方側に凸の湾曲及び/又は屈曲状の凹溝が形成されており、前記凹溝を含む位置には切込みにより連結部を残して形成された蒸気排出用の舌片が形成されており、前記連結部及び/又は前記舌片の先端部が、下方側に凸の湾曲及び/又は屈曲状であり、前記連結部が前記凹溝の溝に沿った方向と交差していることを特徴とする<1>に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
<3>前記舌片の幅方向における50%以上の部分が前記凹溝内に形成されていることを特徴とする<2>に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
<4>前記舌片の全体が前記凹溝内に形成されていることを特徴とする<2>又は<3>に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
<5>前記凹溝が2つ以上並列して形成されており、前記凹溝間が平坦状に形成されており、前記舌片がそれぞれの凹溝内に形成されていることを特徴とする<2>から<4>のいずれか一項に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
<6>前記舌片の先端部に前記切込みを介して対向する側の天板面に、前記舌片の先端部に向けてリブが形成されていることを特徴とする<2>から<5>のいずれかに記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
<7>前記舌片の幅(A)が5~25mmであり、前記舌片の長さ(B)が5~30mmであり、前記舌片の幅(A)に対する前記舌片の長さ(B)の比(B/A)が1.2~3であることを特徴とする<2>から<6>のいずれかに記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
<8>前記舌片が、前記天板面から上方側に突出して形成された突条及び/又は前記天板面から下方側に向けて凹んでいる凹部によって区画された領域内に形成されていることを特徴とする<2>から<7>のいずれかに記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
<9>前記領域の底面が前記天板面よりも下方側に形成されていることを特徴とする<8>に記載の電子レンジ加熱用包装容器の蓋。
<10>容器本体と蓋とを備える電子レンジ加熱用包装容器であって、前記蓋は該蓋の天板面には、切込みにより連結部を残して形成された蒸気排出用の舌片が形成されており、前記連結部及び/又は前記舌片の先端部が、下方側に凸の湾曲及び/又は屈曲状であることを特徴とする電子レンジ加熱用包装容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子レンジ加熱用包装容器の蓋は、電子レンジ加熱用包装容器の蓋に設けられた、特定形状の舌片により、製造後の上側への舌片の反りや、蓋の天板と舌片との間に間隙が生じず、蒸気発生時に舌片が開口する電子レンジ加熱用包装容器の蓋とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器の蓋の一実施形態を示す概略斜視図である。
【
図2】凹溝と舌片の位置関係を示す概略平面図であり、(a)は舌片の全体が凹溝内に形成されている実施形態を示す平面図であり、(b)は舌片の50%以上の部分が凹溝内に形成されている実施形態を示す平面図である。
【
図3】(a)~(d)は、凹溝及び舌片の形状の実施形態を示す連結部の断面図である。
【
図4】領域内に凹溝及び舌片を形成した実施形態を示す平面図である。
【
図5】(a)~(e)は、領域の形状の実施形態を示す、連結部を通る直線における断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の電子レンジ加熱用包装容器の蓋(以下、単に蓋と略称する)について図面に基づいて以下に詳述する。
図1は本発明に係る蓋の一実施形態を示す概略斜視図である。
【0011】
本発明の蓋1は、電子レンジ加熱用包装容器の蓋であって、前記蓋は該蓋1の天板面2には切込み41により連結部42を残して形成された蒸気排出用の舌片4が形成されており、前記連結部42及び/又は前記舌片4の先端部43が、下方側に凸の湾曲及び/又は屈曲状である。さらに具体的には、樹脂シートを熱成形して得られる、樹脂シートの熱成形体の電子レンジ加熱用包装容器の蓋であって、蓋1の天板面2に下方側に凸の湾曲又は屈曲状の凹溝3が形成されており、さらに凹溝3を含む位置に切込み41により形成された蒸気排出用の舌片4が形成されている。なお、本発明において、下方側とは、蓋1を電子レンジ加熱用包装容器に取り付けた際の下方側のことをいう。
【0012】
本発明の蓋1の原材料である樹脂シートとしては、通常、加熱可能な食品用包装容器に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリスチレン、耐熱ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、コストや入手容易性等の観点からポリスチレンを好適に用いることができる。また、これらの樹脂から構成された樹脂シートやこれらを延伸した延伸シート等を用いることができる。 また、前記樹脂シートの厚みは、舌片部分の強度と蓋全体の強度との観点から、0.15~0.6mmが好ましく、0.20~0.4mmがさらに好ましい。
【0013】
蓋1の天板面2に設ける凹溝3は、
図3に示すように、天板面2から下方側に向けて、凸の湾曲又は屈曲状の形状に形成されている。凹溝3の湾曲の形状は、全体に連続する湾曲形状のほか、少なくとも一部に湾曲が形成されていればよい。例えば、
図3に示されているような、凹溝3の幅方向の断面が、下方側に凸の、湾曲状又は屈曲状の形状に形成されている。したがって、
図3(a)に示す断面のような連続湾曲型をはじめとして、
図3(b)に示す一部湾曲型の断面形状とすることもできる。また、屈曲形状としては
図3(c)に示すような断面V字型や、
図3(d)に示すような断面台形型を例示することができる。
なお、凹3溝は、溝幅方向において湾曲深さが変化するように、下方側に向けて凸の湾曲又は屈曲状の形状に形成されて入ればよいが、同時に、凹溝3が凹溝の溝に沿った方向(連続方向)(β)にも湾曲していてもよい。なお、凹溝3の深さは、0.1~5mmが好ましく、0.2~3mmが好ましい。
また、舌片4の湾曲深さは、0.1~5mmが好ましく、0.2~3mmがさらに好ましい。なお、湾曲深さとは、
図3に示される天板面から舌片4を形成する凹溝部分の最深部分の深さ(C)をいい、舌片4が後述する領域6に形成される場合には、
図5に示される領域6の底面から舌片4の凹部の最深部分の深さ(D)をいう。
【0014】
舌片4は、天板面2の凹溝3を含む位置に、切込みにより形成される。舌片4には、切込みの端部が形成される舌根部分に相当する、舌片4と凹溝3との連結部42が形成されている。一方、連結部42に対向する位置である、舌片4の先端部43は、例えば
図2に示すような先端U字型や、V字型、矩形、連結部を有する円形、楕円等、設計に応じて種々の形状とすることができる。
連結部42及び/又は先端部43を、天板面2から下方側に向けて凸の凹溝3の湾曲又は屈曲状に形成することにより、レンジアップ前に舌片部分が上方に反る変形を起こすことが防止されるので、舌片と天板面との間に間隙を生じることなく、異物の混入等を効果的に予防することができる。一方、レンジアップ時には、容器の内圧が上昇したときに、舌片4の先端側が上側に反り、蒸気を排出することが可能となる。
特に、レンジアップ前に舌片部分が上方に反る変形を起こすのを防止する観点から、舌片4部分が反る際の起点となる連結部42が、下方側に凸の凹溝3の湾曲又は屈曲状に形成されていることがより好ましい。
また、先端U字型の舌片4は先端に行くほど凹溝3の湾曲或いは屈曲が緩くなるため、レンジアップ時の蒸気の発生に伴い先端部43のみを反らせて開口させることができるため特に好ましい。
【0015】
また、舌片4と凹溝3との連結部42は、凹溝3を含む位置に形成されるとともに、凹溝3の溝に沿った方向(連続方向)(β)と交差する方向(α)に形成される。交差する方向(α)は、通常、
図1、
図2、
図4に示すように凹溝3の溝に沿った方向(β)に対して直交方向であるが、適宜角度を付けて設けることもできる。連結部42を凹溝3の湾曲又は屈曲状に形成することにより、レンジアップによって容器の内圧が上昇したときに、連結部42は反らず舌片4の先端側のみが上側に反り、蒸気を排出することが可能となる。
【0016】
具体的には、
図1、
図2(a)に示すような舌片4の全体が凹溝3内に形成されている構成や、
図2(b)に示すような舌片4の幅方向における50%以上の部分が凹溝3内に形成されている構成を例示することができる。舌片4の断面に凹溝3による湾曲又は屈曲形状を形成することにより、成形後の舌片4の反りを抑制することができ、レンジアップによって蒸気が発生したときのみ舌片4を反らせて先端部43を開口させることができる。また、レンジアップ前の舌片4の反りを効果的に抑制する観点から、前記舌片4部分の幅方向における80%以上が凹溝3内に形成されていることが好ましく、特に、舌片4の全体が凹溝3内に形成されていることが好ましい。
【0017】
また、舌片4の寸法としては、舌片4の幅(A)を5~40mm、より好ましくは8~30mm、さらに好ましくは10~20mmである。また、舌片4の長さ(B)は5~30mm、より好ましくは、10~25mm、さらに好ましくは15~23mmである。さらに、舌片4の幅(A)に対する舌片4の長さ(B)の比(B/A)を1.2~3の範囲とするのが好ましく、1.5~2.5の範囲がより好ましく、1.7~2.3の範囲がさらに好ましい。特に、舌片4の幅と長さが上記範囲内であり、前記比(B/A)が上記範囲内であれば、レンジアップ前の舌片4の反り防止効果に優れるものとなり、また、レンジアップ時には適度に蒸気を排出することが可能となることから好ましい。
【0018】
また、凹溝3及び舌片4は、2つ以上を並列して形成することもできる。凹溝3及び舌片4の数は、レンジアップ時の蒸気の発生量を考慮して適宜決定することができる。また、凹溝3を2つ以上並列して形成する場合、凹溝3の間は平坦状に形成し、舌片4はそれぞれの凹溝3を含む位置に形成する。
【0019】
さらに、本実施形態の蓋1においては、舌片4の先端部43に、切込みを介して対向する側の面に、舌片4の先端部43に向けてリブ5を形成することができる。リブ5は、レンジアップ時に舌片4のみを上側に反りやすくするために形成されるものである。通常、レンジアップ時には、蒸気の発生により容器内部の圧力が上昇し、舌片4部分だけでなく舌片4の先端部43に対向する側の凹溝面も上方に持ち上がり、レンジアップ時の蒸気の排出に影響するおそれがある。
【0020】
また、
図1、
図2、
図4に示すように舌片4の先端部43に向けてリブ5を形成すると、リブ5の作用により舌片4の先端部43に対向する側の凹溝面の持ち上がりが抑制され、レンジアップ時には舌片4のみを上側に反らせることができ、舌片4の開口面積を十分に確保することが可能となる。さらに、加熱後においても舌片4が大きく反り上がって固定され難くなり、異物の混入を防止できる。
【0021】
舌片4は、天板面2から上方側に突出して形成された突条61及び/又は天板面2から下方側に向けて凹んでいる凹部62によって区画された領域6内に形成することができる。
図1、
図4に示す実施形態の領域6は、天板面2から一段高い突条61が幅をもって矩形に形成されており、この領域6内に凹溝3が形成されるとともに、凹溝3を含む位置に舌片4が形成されている。また、領域6内の底面には、舌片4の先端部43に対向する側の面に、舌片4の先端部43に向けてリブ5が設けられている。
なお、凹溝3や舌片4は、天板面においてこれらを形成する場合と同様にして、領域6の底面に形成することができる。前記領域6内に形成されることにより、区画された底面部分の剛性が向上するので、舌片4部分の開閉がより容易となる。
【0022】
本実施形態における領域6の形状は、
図5(a)~(e)に示すような種々の構成とすることができる。
図5(a)は天板面2から一段高い突条61を設けて領域6を形成した実施形態であり、
図5(b)は天板面2から一段低い凹部62を設けて領域6を形成した実施形態、
図5(c)は天板面2から一段高い突条61と、一段低い凹部62を複合的に設けて領域6を形成した実施形態である。また、
図5(d)に示すように、天板面2から一段低い凹部62から一部を少し高くした実施形態や、
図5(e)に示すように、天板面2から一段低い凹部62から一部を天板面2の高さとした実施形態を例示することもできる。天板面2の一部に領域6を形成して、当該領域6内に凹溝3及び舌片4を形成することにより、領域6内の強度を向上させることができ、レンジアップ時の凹溝3及び舌片4の歪みが抑制され、蒸気の排出を確実に行うことがより容易となる。
【0023】
また、領域6の底面は天板面2及び/又は突条61の上端部よりも下方側に形成することが好ましい。例えば、
図5(a)~(d)に示す実施形態では、領域6の底面を天板面2、突条61の上端部よりも下方側に形成しているため、包装材等で天板面2を覆った状態でも舌片4が開口する空間を確保することができる。
【0024】
また、領域6を形成する突条61の上面部には、領域6の内外を繋ぐ切欠き溝63を設けることができる。切欠き溝63を設けることにより、例えば、包装材等で天板面2の領域6を覆った状態でレンジアップした場合であっても、容器内で発生した蒸気を切欠き溝63を通して排出させることができる。
【0025】
本実施形態の蓋1の製造方法としては、原材料の樹脂シートを加熱した金型にて成形して凹溝3を有する蓋1を成形した後、舌片成形刃やレーザーにより所定の位置に切込み41を入れることにより製造することができる。なお、切込み41を舌片成形刃により入れる場合には、刃を当てる方向等を考慮とすることで、舌片4の切込み41を形成した際に舌片4を天板面2の上側に重なるように配置することが可能となる。
【0026】
また、
図1に示されるように、蓋1は中央部分に平坦な天板面を有し、蓋1の外縁部の周囲に上方向に向かって延設された側壁部を形成し、蓋1の側壁部を容器の開口部の内周面に沿って嵌入可能な内嵌合容器とすることができる。特に、容器を熱成形する際に、容器の開口部の周囲には、外方向に張り出した段部と該段部の外方向端部から上方向に向かって延設された側壁部とを含むフランジ部を形成し、更に、蓋1を熱成形する際に、蓋1の外縁部の周囲には、外方向に張り出した段部と該段部の外側端部から上方向に向かって延設された側壁部とを含むフランジ部を形成し、蓋1のフランジ部を容器のフランジ部に沿うように嵌入可能な内嵌合容器とすることが好ましい。
【0027】
以上、本発明を一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、蓋1を容器本体とは別体に成形して取り外し可能な蓋としているが、蓋1と容器本体を一部接続した一体の容器としてもよい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の電子レンジ加熱用包装容器の蓋について、実施例により具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
ポリスチレンからなる樹脂シートを金型により加熱成形して、天板面に下方向に凸の湾曲の凹溝(幅15mm)と、舌片の先端部となる位置に向けてリブを形成した内嵌合容器用の蓋を得た。その蓋の天板面の厚さは0.25mmであった。次に、その天板面の凹溝内に全て入るように、舌片の幅(A)10mm、舌片の長さ(B)20mm、B/A=2のU字型の舌片を舌片成形刃により上方から刃を凹溝部分に押し当てて切込みを入れて成形して、
図1に見られる蓋を製造した。
【0030】
実施例2
舌片の先端部となる位置に向けてリブを形成しなかった以外は、実施例1と同様にして蓋を製造した。
【0031】
比較例1
天板面に凹溝を成形せず、かつ、舌片の先端部となる位置に向けてリブを形成しなかった以外は実施例1と同様にして蓋を製造した。
【0032】
<隙間の測定>
製造した上記実施例1~3及び比較例1の蓋の舌片の先端部分について、天板面(又は領域6の底面)から舌片の隙間高さを測定した。その測定結果を表1に示す。
【0033】
<放散蒸気量の測定>
300ccの水を入れた容器に実施例1~3及び比較例1の蓋を被せた状態で、1500Wで90秒間レンジで加熱した後、加熱前後の容器重量を測定することにより、放散蒸気量を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0034】
【0035】
表1に示す隙間の測定結果では、湾曲の凹溝を形成した実施例1、2は、舌片と領域の底面との間に隙間がなく良好であったのに対して、凹溝を形成しなかった比較例1は隙間が生じた。この結果から、本発明の湾曲の凹溝が製造後の舌片の反りを抑制していることがわかる。
【0036】
また、従来の舌片である比較例1に対して、本発明の実施例1、実施例2による舌片であっても、従来と同様に蒸気の排出が可能であることが示された。
【0037】
これらの結果から、本発明の電子レンジ加熱用包装容器の蓋は、製造後の舌片の上側への反りや、蓋の天板と舌片との間に間隙が生じず、蒸気発生時にのみ舌片が開口する電子レンジ加熱用包装容器の蓋であることが確認された。
【符号の説明】
【0038】
1 電子レンジ加熱用包装容器の蓋
2 天板面
3 凹溝
4 舌片
41 切込み
42 連結部
43 先端部
5 リブ
6 領域
61 突条
62 凹部
63 切欠き溝
64 領域の底面