(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220608BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20220608BHJP
B41J 2/195 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/175
B41J2/195
(21)【出願番号】P 2018159326
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】西山 晃
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-168626(JP,A)
【文献】特開2009-166307(JP,A)
【文献】特開2009-178996(JP,A)
【文献】特開2010-264752(JP,A)
【文献】特開平08-276575(JP,A)
【文献】特開2008-302577(JP,A)
【文献】特開2016-190434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド配列方向に沿って配置された複数のインクジェットヘッドと、
前記ヘッド配列方向に流れる冷却風により複数の前記インクジェットヘッドを冷却する冷却部と、
前記各インクジェットヘッドに配置され、前記各インクジェットヘッドにおけるインク温度を検出する複数の検出部と、
前記各検出部の検出温度に基づき、前記ヘッド配列方向における前記各検出部の検出温度の温度勾配を求め、前記温度勾配を低減するよう前記各検出部の検出温度を補正する補正部と
を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記補正部が前記各検出部の検出温度を補正して得られた補正値を用いて、前記各インクジェットヘッドの駆動制御を行うヘッド制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記補正部が各検出部の検出温度を補正して得られた補正値を用いて、前記各インクジェットヘッドに供給されるインクの温調制御を行うインク温調制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記冷却風の流路が、複数の流路に分岐しており、
前記補正部は、前記各検出部の検出温度に基づき、前記流路ごとに前記ヘッド配列方向における前記各検出部の検出温度の温度勾配を求め、前記温度勾配を低減するよう前記各検出部の検出温度を補正することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
それぞれ前記ヘッド配列方向に沿って配置された複数の前記インクジェットヘッドを有する複数のヘッド列が形成されており、
前記冷却風の流路が、前記各ヘッド列に対応する複数の流路に分岐するとともに、前記各ヘッド列におけるいずれかの前記インクジェットヘッド間の位置で前記ヘッド配列方向に沿って互いに逆方向に分岐していることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記各インクジェットヘッドの印字寄与幅または印字率を考慮して、前記各検出部の検出温度を補正することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
前記インクジェットヘッドの内部を前記冷却風が通過することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドからインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置において、インクの温度が変化すると、インクの粘度が変化することで、インク吐出量が変化することがある。例えば、インク温度が高温化した場合、インクの粘度が低下するため、低温時と同じ駆動電圧でインクジェットヘッドを駆動させると、ノズルからのインク吐出量が増加する。このようなインク吐出量の変化は、印刷画質の低下を招く。
【0003】
これに対し、インクジェットヘッドにインク温度を検出するための温度センサを設け、その温度センサの検出温度に基づき、インクジェットヘッドの駆動電圧を制御する技術が知られている(特許文献1参照)。これにより、インク温度の変化によるインク吐出量の変化を抑え、印刷画質の低下を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、インクジェットヘッド内のヘッド駆動ICの発熱の影響により、温度センサによるインク温度の検出精度が低下し、検出温度が実際のインク温度から乖離するおそれがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、インクジェットヘッドにおけるインク温度の検出精度の低下を抑制できるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット印刷装置は、ヘッド配列方向に沿って配置された複数のインクジェットヘッドと、前記ヘッド配列方向に流れる冷却風により複数の前記インクジェットヘッドを冷却する冷却部と、前記各インクジェットヘッドに配置され、前記各インクジェットヘッドにおけるインク温度を検出する複数の検出部と、前記各検出部の検出温度に基づき、前記ヘッド配列方向における前記各検出部の検出温度の温度勾配を求め、前記温度勾配を低減するよう前記各検出部の検出温度を補正する補正部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインクジェット印刷装置によれば、インクジェットヘッドにおけるインク温度の検出精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すインクジェット印刷装置の印刷制御部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部、インク温調部、および圧力生成部の概略構成図である。
【
図4】
図1に示すインクジェット印刷装置のプリントバーユニットの概略構成図である。
【
図5】
図1に示すインクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。
【
図6】各ヘッド温度検出部の検出温度のオフセット量の一例を示す図である。
【
図7】(a)は、一方のヘッド列の各ヘッド温度検出部の検出温度のオフセット量を示すグラフである。(b)は、他方のヘッド列の各ヘッド温度検出部の検出温度のオフセット量を示すグラフである。
【
図8】各インクジェットヘッドの最大印字比率の一例を示す図である。
【
図9】(a),(b)は、ヘッド温度検出部の検出温度の補正方法を説明するための図である。
【
図10】(a),(b)は、ヘッド温度検出部の検出温度の補正方法を説明するための図である。
【
図11】(a),(b)は、ヘッド温度検出部の検出温度の補正方法を説明するための図である。
【
図12】(a),(b)は、ヘッド温度検出部の検出温度の補正方法を説明するための図である。
【
図13】各ヘッド温度検出部の検出温度の補正値のオフセット量の一例を示す図である。
【
図14】(a)は、一方のヘッド列の各ヘッド温度検出部の検出温度の補正値のオフセット量を、補正前の検出温度のオフセット量と並べたグラフである。(b)は、他方のヘッド列の各ヘッド温度検出部の検出温度の補正値のオフセット量を、補正前の検出温度のオフセット量と並べたグラフである。
【
図15】(a)は、ヘッド列ごとの全インクジェットヘッドにおける補正前の検出温度の分散と、検出温度の補正値の分散とを示す図である。(b)は、ヘッド列ごとの端部のインクジェットヘッドを除く各インクジェットヘッドにおける補正前の検出温度の分散と、検出温度の補正値の分散とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0011】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の印刷制御部の構成を示すブロック図である。
図3は、
図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部、インク温調部、および圧力生成部の概略構成図である。
図4は、
図1に示すインクジェット印刷装置のプリントバーユニットの概略構成図である。
図5は、
図1に示すインクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズル面を示す図である。なお、以下の説明において、
図3の矢印で示す上下前後を上下前後方向とする。また、
図3における紙面に直交する方向を左右方向とし、紙面表方向を右方向とする。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、印刷部2A~2Eと、インク温調部3と、圧力生成部4と、制御部5とを備える。なお、印刷部2A~2E等の符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0014】
印刷部2A~2Eは、それぞれインクを循環させつつ、図示しない搬送部により搬送される用紙にインクを吐出して画像を印刷する。印刷部2A~2Eは、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、グレー)のインクを吐出する。印刷部2A~2Eは、吐出するインクの色が異なる以外は、同様の構成を有する。
【0015】
図3に示すように、印刷部2は、プリントバーユニット11と、インク循環部12と、インク補給部13とを備える。
【0016】
プリントバーユニット11は、用紙にインクを吐出して印刷を行う。
図4に示すように、プリントバーユニット11は、インクジェットヘッド16A~16Jと、ヘッドベース17と、ヘッド冷却部(冷却部に相当)18とを備える。
【0017】
インクジェットヘッド16A~16Jは、インク循環部12により供給されるインクを吐出する。インクジェットヘッド16A~16Jは、ヘッド配列方向である前後方向(主走査方向)に沿って、後側からインクジェットヘッド16A~16Jの順で千鳥配置されている。
【0018】
すなわち、プリントバーユニット11において、それぞれ前後方向に沿って等ピッチで配置された5つのインクジェットヘッド16からなる2列のヘッド列19A,19Bが、左右方向に並列して、前後方向に半ピッチ分だけ互いにずれるように配置されている。前後方向に直交する用紙搬送方向における上流側のヘッド列19Aは、16A,16C,16E,16G,16Iにより形成されている。下流側のヘッド列19Bは、16B,16D,16F,16H,16Jにより形成されている。
【0019】
インクジェットヘッド16は、
図5に示すように、2列のノズル列21A,21Bを有する。ノズル列21A,21Bは、左右方向に並列して配置されている。ノズル列21は、インクを吐出する複数のノズル22を有する。
【0020】
ノズル列21において、複数のノズル22は、前後方向(主走査方向)に沿って所定ピッチで配置されている。上流側のノズル列21Aのノズル22と下流側のノズル列21Bのノズル22とは、前後方向における位置が互いに半ピッチ分だけずれるように配置されている。ノズル22は、インクジェットヘッド16の下面であるノズル面16aに開口している。
【0021】
また、インクジェットヘッド16は、ノズル列21Aのノズル22から吐出するインクを貯留するチャンバと、ノズル列21Bのノズルから吐出するインクを貯留するチャンバ(いずれも図示せず)とを備える。各チャンバ内には、各ノズル22からインクを吐出させる複数の圧電素子(図示せず)が配置されている。
【0022】
また、インクジェットヘッド16には、インク循環部12により供給されるインクを各チャンバに流入させるためのインク流入管(図示せず)が、各チャンバに対して1本ずつ設けられている。また、インクジェットヘッド16には、ノズル列21のノズル22から吐出されずにインク循環部12へ戻るインクを各チャンバから流出させるためのインク流出管(図示せず)が、各チャンバに対して1本ずつ設けられている。
【0023】
また、インクジェットヘッド16は、
図2に示すように、ヘッド温度検出部(検出部に相当)23A,23Bと、ヘッド駆動IC24A,24Bとを備える。
【0024】
ヘッド温度検出部23は、インクジェットヘッド16におけるインクの温度を検出するためのものである。ヘッド温度検出部23A,23Bは、それぞれノズル列21A,21Bから吐出するためのインクの温度を検出する。ヘッド温度検出部23A,23Bは、それぞれノズル列21A,21Bに対応するチャンバに接続された上述のインク流出管に設置されている。
【0025】
インクジェットヘッド16は、前後方向に貫通する通風孔(図示せず)を有し、この通風孔を、後述するヘッド冷却ファン31の駆動により発生する冷却風Wが通過可能に構成されている。これにより、インクジェットヘッド16の内部を冷却風Wが通過する。ヘッド温度検出部23A,23Bは、冷却風Wが通過する位置に配置されている。また、ヘッド温度検出部23A,23Bは、前後方向に互いに離間して配置されており、ヘッド温度検出部23Bがヘッド温度検出部23Aの前方に配置されている。
【0026】
ヘッド駆動IC24は、圧電素子を駆動させてノズル22からインクを吐出させる。ヘッド駆動IC24A,24Bは、それぞれノズル列21A,21Bに対応する圧電素子を駆動させる。
【0027】
ヘッドベース17は、インクジェットヘッド16A~16Jを保持する。ヘッドベース17は、矩形の板状の部材からなる。ヘッドベース17には、ノズル面16aがヘッドベース17から下方に突出するように、各インクジェットヘッド16が固定されている。
【0028】
ヘッド冷却部18は、インクジェットヘッド16を冷却する。ヘッド冷却部18は、ヘッド冷却ファン31と、流路形成部32とを備える。
【0029】
ヘッド冷却ファン31は、インクジェットヘッド16を冷却するための冷却風Wを発生させる。
【0030】
流路形成部32は、冷却風Wの流路を形成する。流路形成部32は、接続部材36と、ダクト37と、ヘッド間部材38A~38Hとを備える。
【0031】
接続部材36は、ヘッド冷却ファン31とダクト37とを接続するものであり、ヘッド冷却ファン31からダクト37までの冷却風Wの流路を形成する。
【0032】
ダクト37は、接続部材36からヘッド間部材38D,38Eまでの冷却風Wの流路を形成する。ダクト37の右側の壁には、ダクト37の内部空間とヘッド間部材38Dの内部空間とを連通するための開口部(図示せず)が形成されている。また、ダクト37の左側の壁には、ダクト37の内部空間とヘッド間部材38Eの内部空間とを連通するための開口部(図示せず)が形成されている。
【0033】
ヘッド間部材38は、前後方向に互いに隣接するインクジェットヘッド16間に配置され、インクジェットヘッド16間における冷却風Wの流路を形成する部材である。ヘッド間部材38Aはインクジェットヘッド16A,16C間に配置され、ヘッド間部材38Bはインクジェットヘッド16B,16D間に配置され、ヘッド間部材38Cはインクジェットヘッド16C,16E間に配置されている。また、ヘッド間部材38Dはインクジェットヘッド16D,16F間に配置され、ヘッド間部材38Eはインクジェットヘッド16E,16G間に配置され、ヘッド間部材38Fはインクジェットヘッド16F,16H間に配置されている。また、ヘッド間部材38Gはインクジェットヘッド16G,16I間に配置され、ヘッド間部材38Hはインクジェットヘッド16H,16J間に配置されている。
【0034】
ヘッド間部材38は、その前側の壁および後側の壁に、ヘッド間部材38の内部空間と隣接するインクジェットヘッド16の通気孔とを連通するための開口部(図示せず)が形成されている。また、ヘッド間部材38Dには、上述した前側の壁および後側の壁の開口部に加えて、左側の壁に、ヘッド間部材38Dの内部空間とダクト37の内部空間とを連通するための開口部(図示せず)が形成されている。また、ヘッド間部材38Eには、上述した前側の壁および後側の壁の開口部に加えて、右側の壁に、ヘッド間部材38Eの内部空間とダクト37の内部空間とを連通するための開口部(図示せず)が形成されている。
【0035】
上述のようなダクト37およびヘッド間部材38の構成により、ダクト37を流れる冷却風Wは、ヘッド間部材38D,38Eに流入し、ヘッド間部材38D,38Eからそれぞれの前側、後側へ流れるようになっている。すなわち、ダクト37により形成される冷却風Wの流路が、それぞれヘッド列19A,19Bに対応する2つの流路に分岐するとともに、インクジェットヘッド16E,16G間の位置、インクジェットヘッド16D,16F間の位置で前後方向に沿って互いに逆方向に分岐している。これにより、プリントバーユニット11において、ダクト37により形成される冷却風Wの流路から分岐した流路41A~41Dが形成されている。
【0036】
流路41Aは、ヘッド間部材38E,38Gおよびインクジェットヘッド16G,16Iにより形成され、ヘッド間部材38Eから前方へ冷却風Wが流れる流路である。流路41Aを流れる冷却風Wにより、インクジェットヘッド16G,16Iが冷却される。
【0037】
流路41Bは、ヘッド間部材38A,38C,38Eおよびインクジェットヘッド16A,16C,16Eにより形成され、ヘッド間部材38Eから後方へ冷却風Wが流れる流路である。流路41Bを流れる冷却風Wにより、インクジェットヘッド16A,16C,16Eが冷却される。
【0038】
流路41Cは、ヘッド間部材38D,38F,38Hおよびインクジェットヘッド16F,16H,16Jにより形成され、ヘッド間部材38Dから前方へ冷却風Wが流れる流路である。流路41Cを流れる冷却風Wにより、インクジェットヘッド16F,16H,16Jが冷却される。
【0039】
流路41Dは、ヘッド間部材38B,38Dおよびインクジェットヘッド16B,16Dにより形成され、ヘッド間部材38Dから後方へ冷却風Wが流れる流路である。流路41Dを流れる冷却風Wにより、インクジェットヘッド16B,16Dが冷却される。
【0040】
ここで、インクジェットヘッド16A~16Jの中で最も後側にあるインクジェットヘッド16A、および最も前側にあるインクジェットヘッド16Jは、他のインクジェットヘッド16に比べて、後述する最大印字比率Rが小さく、発熱量が少ない。一方、冷却風Wの流路41における風下側ほど、冷却風Wが多くのヘッド駆動IC24の発熱の影響を受けて高温になりやすく、冷却効果が低減しやすい。
【0041】
そこで、ヘッド列19Aに対しては、インクジェットヘッド16Aがある流路41B側よりも流路41A側の方が、インクジェットヘッド16が少なくなるように、インクジェットヘッド16E,16G間の位置で冷却風Wの流路を分岐させている。また、ヘッド列19Bに対しては、インクジェットヘッド16Jがある流路41C側よりも流路41D側の方が、インクジェットヘッド16が少なくなるように、インクジェットヘッド16D,16F間の位置で冷却風Wの流路を分岐させている。
【0042】
これにより、ヘッド列19A,19Bにおいてそれぞれ冷却風Wが最も高温になりやすい位置には、発熱量が少なく抑えられやすいインクジェットヘッド16A,16Jが配置されているので、冷却風Wの風下側のインクジェットヘッド16ほど冷却効果が低減することによる温度上昇を軽減できる。
【0043】
インク循環部12は、インクを循環させつつ、プリントバーユニット11の各インクジェットヘッド16にインクを供給する。インク循環部12は、加圧タンク51と、分配器52と、集合器53と、負圧タンク54と、サブタンク55と、インク循環管56~58と、接続管59と、サブタンク弁60と、インク循環ポンプ61と、ヒートシンク62と、ヘッド上流温度検出部63とを備える。
【0044】
加圧タンク51は、インクジェットヘッド16に供給するインクを貯留する。加圧タンク51のインクは、インク循環管56および分配器52を介してインクジェットヘッド16に供給される。すなわち、加圧タンク51は、インクの循環方向におけるインクジェットヘッド16の上流側に配置されている。加圧タンク51内には、インクの液面上に空気層66が形成されている。加圧タンク51は、後述の加圧連通管92を介して、後述の加圧共通気室91に接続されている。加圧タンク51は、インクジェットヘッド16のノズル面16aより高い位置(上方)に配置されている。
【0045】
加圧タンク51には、加圧タンク液面センサ67と、インクフィルタ68とが設けられている。
【0046】
加圧タンク液面センサ67は、加圧タンク51内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。加圧タンク液面センサ67は、加圧タンク51内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0047】
インクフィルタ68は、インク内のゴミ等を除去する。
【0048】
分配器52は、インク循環管56を介して加圧タンク51から供給されるインクを、プリントバーユニット11の各インクジェットヘッド16に分配する。
【0049】
集合器53は、プリントバーユニット11で消費されなかったインクを各インクジェットヘッド16から集める。集合器53により集められたインクは、インク循環管57を介して負圧タンク54へと流れる。
【0050】
負圧タンク54は、インクジェットヘッド16で消費されなかったインクを集合器53から受け取って貯留する。すなわち、負圧タンク54は、インクの循環方向におけるインクジェットヘッド16の下流側に配置されている。負圧タンク54内には、インクの液面上に空気層69が形成されている。負圧タンク54は、後述の負圧連通管97を介して、後述の負圧共通気室96に接続されている。負圧タンク54は、加圧タンク51と同じ高さに配置されている。
【0051】
負圧タンク54には、負圧タンク液面センサ70が設けられている。負圧タンク液面センサ70は、負圧タンク54内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。負圧タンク液面センサ70は、負圧タンク54内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0052】
サブタンク55は、負圧タンク54へ供給するインクを貯留する。サブタンク55は、インク補給部13からインクの供給を受け、供給されたインクを貯留する。サブタンク55は、接続管59を介してインク循環管58に接続されている。サブタンク55内には、インクの液面上に空気層71が形成されている。サブタンク55は、後述のサブタンク連通管106を介して、後述のサブタンク共通気室105に接続されている。サブタンク55は、インクジェットヘッド16のノズル面16aより低い位置(下方)に配置されている。
【0053】
サブタンク55には、サブタンク液面センサ72が設けられている。サブタンク液面センサ72は、サブタンク55内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。サブタンク液面センサ72は、サブタンク55内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0054】
インク循環管56は、加圧タンク51と分配器52とを接続する。インク循環管56には、加圧タンク51から分配器52に向かってインクが流れる。インク循環管57は、集合器53と負圧タンク54とを接続する。インク循環管57には、集合器53から負圧タンク54に向かってインクが流れる。インク循環管58は、加圧タンク51と負圧タンク54とを接続する。インク循環管56~58、分配器52、および集合器53により、インクの循環経路が構成される。インク循環管58は、この循環経路における負圧タンク54から加圧タンク51への経路を構成する。
【0055】
接続管59は、インク循環管58とサブタンク55とを連通させるためのインクの流路を形成する。接続管59は、一端がインク循環管58の負圧タンク54とインク循環ポンプ61との間の部分に接続され、他端がサブタンク55に接続されている。
【0056】
サブタンク弁60は、インク循環管58とサブタンク55との間の連通、遮断を切り替えるために、接続管59内のインクの流路を開閉する。サブタンク弁60は、接続管59の途中に設けられている。
【0057】
インク循環ポンプ61は、負圧タンク54から加圧タンク51へインクを送液する。インク循環ポンプ61は、インク循環管58における接続管59の接続地点と加圧タンク51との間に配置されている。
【0058】
ヒートシンク62は、インク循環部12において循環されるインクを冷却するために放熱する。ヒートシンク62は、インク循環管58の途中に設けられている。
【0059】
ヘッド上流温度検出部63は、インクの循環方向におけるインクジェットヘッド16の上流側近傍において、インクジェットヘッド16に供給されるインクの温度を検出する。ヘッド上流温度検出部63は、インク循環管56の途中に設けられている。
【0060】
インク補給部13は、インク循環部12にインクを補給する。インク補給部13は、インクカートリッジ76と、インク補給ポンプ77と、インク補給弁78と、インク補給管79とを備える。
【0061】
インクカートリッジ76は、インクジェットヘッド16による印刷に用いられるインクを収容している。インクカートリッジ76内のインクは、インク補給管79を介してインク循環部12のサブタンク55に供給される。
【0062】
インク補給ポンプ77は、インクカートリッジ76からサブタンク55へインクを送る。インク補給ポンプ77は、インク補給管79の途中に設けられている。
【0063】
インク補給弁78は、インク補給管79内のインクの流路を開閉する。
【0064】
インク補給管79は、インクカートリッジ76とサブタンク55とを接続する。
【0065】
インク温調部3は、インク循環部12において循環されるインクの温度調整を行う。インク温調部3は、印刷部2A~2Eに共通のものである。インク温調部3は、インク冷却ファン81と、加温部82とを備える。
【0066】
インク冷却ファン81は、印刷部2A~2Eのインク循環部12において循環されるインクを冷却するために、インク循環部12のヒートシンク62に冷却風を送る。
【0067】
加温部82は、印刷部2A~2Eのインク循環部12において循環されるインクに加温する。加温部82は、発熱するヒータ86と、ヒータ86の熱をインク循環管58内のインクに伝える伝熱部材87とを備える。
【0068】
圧力生成部4は、印刷部2A~2Eの加圧タンク51および負圧タンク54にインク循環のための圧力を生成する。
図3に示すように、圧力生成部4は、加圧共通気室91と、5本の加圧連通管92と、加圧圧力調整弁93と、加圧圧力調整管94と、加圧圧力センサ95と、負圧共通気室96と、5本の負圧連通管97と、負圧大気開放弁98と、負圧大気開放管99と、負圧圧力調整弁100と、負圧圧力調整管101と、負圧圧力センサ102と、加負圧連通弁103と、加負圧連通管104と、サブタンク共通気室105と、5本のサブタンク連通管106と、サブタンク大気開放管107と、エアフィルタ108と、エアポンプ109と、エアポンプ用配管110とを備える。
【0069】
加圧共通気室91は、各印刷部2の加圧タンク51の圧力を等しくするための気室である。加圧共通気室91は、5本の加圧連通管92を介して5つの印刷部2A~2Eの加圧タンク51の空気層66と連通されている。これにより、各印刷部2の加圧タンク51どうしが、加圧共通気室91および加圧連通管92を介して連通されている。
【0070】
加圧連通管92は、加圧共通気室91と加圧タンク51の空気層66とを連通させる。5本の加圧連通管92は、各印刷部2に1本ずつ対応して設けられている。加圧連通管92は、一端が加圧共通気室91に接続され、他端が加圧タンク51の空気層66に接続されている。
【0071】
加圧圧力調整弁93は、加圧共通気室91および加圧タンク51の圧力を調整するために、加圧圧力調整管94内の空気の流路を開閉する。加圧圧力調整弁93は、加圧圧力調整管94の途中に設けられている。
【0072】
加圧圧力調整管94は、加圧共通気室91および加圧タンク51の圧力調整のための空気の流路を形成する。加圧圧力調整管94は、一端が加圧共通気室91に接続され、他端がサブタンク大気開放管107に接続されている。
【0073】
加圧圧力センサ95は、加圧共通気室91内の圧力を検出する。加圧共通気室91内の圧力は、各印刷部2の加圧タンク51内の圧力と等しい。加圧共通気室91と各印刷部2の加圧タンク51の空気層66とが連通されているためである。
【0074】
負圧共通気室96は、各印刷部2の負圧タンク54の圧力を等しくするための気室である。負圧共通気室96は、5本の負圧連通管97を介して5つの印刷部2A~2Eの負圧タンク54の空気層69と連通されている。これにより、各印刷部2の負圧タンク54どうしが、負圧共通気室96および負圧連通管97を介して連通されている。
【0075】
負圧連通管97は、負圧共通気室96と負圧タンク54の空気層69とを連通させる。5本の負圧連通管97は、各印刷部2に1本ずつ対応して設けられている。負圧連通管97は、一端が負圧共通気室96に接続され、他端が負圧タンク54の空気層69に接続されている。
【0076】
負圧大気開放弁98は、負圧共通気室96および負圧タンク54を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、負圧大気開放管99内の空気の流路を開閉する。負圧大気開放弁98は、負圧大気開放管99の途中に設けられている。
【0077】
負圧大気開放管99は、負圧共通気室96および負圧タンク54を大気開放するための空気の流路を形成する。負圧大気開放管99は、一端が負圧共通気室96に接続され、他端がサブタンク大気開放管107に接続されている。
【0078】
負圧圧力調整弁100は、負圧共通気室96および負圧タンク54の圧力を調整するために、負圧圧力調整管101内の空気の流路を開閉する。負圧圧力調整弁100は、負圧圧力調整管101の途中に設けられている。
【0079】
負圧圧力調整管101は、負圧共通気室96および負圧タンク54の圧力調整のための空気の流路を形成する。負圧圧力調整管101は、一端が負圧共通気室96に接続され、他端がサブタンク大気開放管107に接続されている。
【0080】
負圧圧力センサ102は、負圧共通気室96内の圧力を検出する。負圧共通気室96内の圧力は、各印刷部2の負圧タンク54内の圧力と等しい。負圧共通気室96と各印刷部2の負圧タンク54の空気層69とが連通されているためである。
【0081】
加負圧連通弁103は、加圧共通気室91と負圧共通気室96との間の連通、遮断を切り替えるために、加負圧連通管104内の空気の流路を開閉する。加負圧連通弁103は、加負圧連通管104の途中に設けられている。加負圧連通弁103が開放され、加圧共通気室91と負圧共通気室96とが連通されることで、加圧連通管92、加圧共通気室91、加負圧連通管104、負圧共通気室96、および負圧連通管97を介して、加圧タンク51と負圧タンク54とが連通される。すなわち、加負圧連通弁103の開放、閉鎖により、加圧タンク51と負圧タンク54との間の連通、遮断が切り替えられる。
【0082】
加負圧連通管104は、加圧共通気室91と負圧共通気室96とを連通させるための空気の流路を形成する。加負圧連通管104は、一端が加圧共通気室91に接続され、他端が負圧共通気室96に接続されている。
【0083】
サブタンク共通気室105は、各印刷部2のサブタンク55を大気開放状態とするための共通の気室である。サブタンク共通気室105は、サブタンク大気開放管107を介して常時大気開放されている。サブタンク共通気室105は、5本のサブタンク連通管106を介して5つの印刷部2のサブタンク55の空気層71と連通されている。これにより、各印刷部2のサブタンク55が、常時大気開放状態になっている。
【0084】
サブタンク連通管106は、サブタンク共通気室105とサブタンク55の空気層71とを連通させる。5本のサブタンク連通管106は、各印刷部2に1本ずつ対応して設けられている。サブタンク連通管106は、一端がサブタンク共通気室105に接続され、他端がサブタンク55の空気層71に接続されている。
【0085】
サブタンク大気開放管107は、サブタンク共通気室105を大気と連通させる。サブタンク大気開放管107は、一端がサブタンク共通気室105に接続され、他端がエアフィルタ108を介して大気に通じている。サブタンク大気開放管107には、加圧圧力調整管94、負圧大気開放管99、および負圧圧力調整管101が接続されている。これにより、加圧圧力調整管94、負圧大気開放管99、および負圧圧力調整管101が大気に連通される。
【0086】
エアフィルタ108は、サブタンク大気開放管107への空気中のゴミ等の進入を防止する。エアフィルタ108は、サブタンク大気開放管107の上端に設置されている。
【0087】
エアポンプ109は、負圧共通気室96から空気を吸引するとともに、加圧共通気室91へ空気を送る。エアポンプ109は、エアポンプ用配管110の途中に設けられている。
【0088】
エアポンプ用配管110は、エアポンプ109により負圧共通気室96から加圧共通気室91へ送られる空気の流路を形成する。エアポンプ用配管110は、一端が負圧共通気室96に接続され、他端が加圧共通気室91に接続されている。
【0089】
制御部5は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、印刷制御部121A~121Eと、メカ制御部122と、インク温調制御部123とを備える。制御部5の各部は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等によってソフトウェア的またはハードウェア的に実現できる。
【0090】
印刷制御部121A~121Eは、それぞれ印刷部2A~2Eを制御して画像を印刷させる。
図2に示すように、印刷制御部121は、ヘッド制御部131と、ヘッド駆動部132と、補正部133とを備える。
【0091】
ヘッド制御部131は、印刷対象の画像データに基づき、ヘッド駆動部132によりインクジェットヘッド16を駆動させて印刷を行うよう制御する。
【0092】
印刷時において、ヘッド制御部131は、ヘッド温度検出部23の検出温度とヘッド上流温度検出部63の検出温度とに基づき、各インクジェットヘッド16の駆動制御を行う。具体的には、ヘッド制御部131は、ヘッド温度検出部23の検出温度とヘッド上流温度検出部63の検出温度とに基づき、各インクジェットヘッド16のインク温度に応じた駆動電圧の調整を行う。ここで、ヘッド制御部131は、ヘッド温度検出部23の検出温度として、実測値ではなく、補正部133が各ヘッド温度検出部23の検出温度を補正して得られた補正値を用いて、各インクジェットヘッド16の駆動制御を行う。
【0093】
ヘッド駆動部132は、各インクジェットヘッド16に駆動電圧を供給し、各インクジェットヘッド16を駆動させる。
【0094】
補正部133は、各ヘッド温度検出部23の検出温度に基づき、前後方向における各ヘッド温度検出部23の検出温度の温度勾配を求め、その温度勾配を低減するよう各ヘッド温度検出部23の検出温度を補正する。この補正方法の詳細は後述する。
【0095】
メカ制御部122は、インク循環部12、インク補給部13、圧力生成部4、およびヘッド冷却部18の制御を行う。
【0096】
インク温調制御部123は、インク温調部3を制御することで、インクジェットヘッド16に供給されるインクの温調制御を行う。具体的には、インク温調制御部123は、ヘッド温度検出部23の検出温度とヘッド上流温度検出部63の検出温度とに基づき、インク温調部3によるインクの温調制御を行う。ここで、インク温調制御部123は、ヘッド温度検出部23の検出温度として、実測値ではなく、補正部133が各ヘッド温度検出部23の検出温度を補正して得られた補正値を用いて、インク温調部3によるインクの温調制御を行う。
【0097】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0098】
印刷動作を開始する際、メカ制御部122は、加負圧連通弁103を閉鎖する。また、メカ制御部122は、サブタンク弁60を閉鎖する。加負圧連通弁103の閉鎖により、加圧共通気室91と負圧共通気室96との間が遮断される。また、サブタンク弁60の閉鎖により、インク循環管58とサブタンク55との間が遮断される。
【0099】
なお、印刷動作を行わない待機中は、加負圧連通弁103およびサブタンク弁60は開放されている。また、加圧圧力調整弁93、負圧大気開放弁98、負圧圧力調整弁100、およびインク補給弁78は閉鎖されている。
【0100】
次いで、メカ制御部122は、エアポンプ109の駆動を開始させる。これにより、負圧共通気室96および負圧タンク54が減圧され、加圧共通気室91および加圧タンク51が加圧される。これにより、加圧タンク51からプリントバーユニット11を経由して負圧タンク54へ向かうインクの流れが生じ、インク循環が始まる。エアポンプ109の駆動開始後、メカ制御部122は、加圧タンク51および負圧タンク54の圧力がそれぞれの設定圧Pk,Pfに達し、それが維持されるように、加圧圧力センサ95および負圧圧力センサ102の検出値に基づき、エアポンプ109の駆動、加圧圧力調整弁93の開閉、および負圧圧力調整弁100の開閉を制御する。
【0101】
設定圧Pk,Pfは、インクを循環させつつインクジェットヘッド16のノズル圧を適正値にするための圧力値として予め設定されたものである。加圧タンク51の設定圧Pkは正圧であり、負圧タンク54の設定圧Pfは負圧である。
【0102】
加圧タンク51および負圧タンク54の圧力が設定圧Pk,Pfになった後、ヘッド制御部131は、画像データに基づき、インクジェットヘッド16からインクを吐出して用紙に画像を印刷するよう制御する。
【0103】
このようにインク循環および印刷を行う際、メカ制御部122は、液面維持制御を行う。液面維持制御は、加圧タンク51、負圧タンク54、およびサブタンク55の液面を基準高さ付近に維持するための制御である。液面維持制御において、メカ制御部122は、加圧タンク51および負圧タンク54の液面高さに応じて、サブタンク弁60およびインク循環ポンプ61を制御する。また、メカ制御部122は、サブタンク55の液面高さに応じて、インク補給ポンプ77およびインク補給弁78を制御する。
【0104】
具体的には、加圧タンク液面センサ67および負圧タンク液面センサ70がともにオフの状態では、メカ制御部122は、サブタンク弁60を開放し、インク循環ポンプ61をオフとする。
【0105】
加圧タンク液面センサ67がオンで負圧タンク液面センサ70がオフの状態では、メカ制御部122は、サブタンク弁60を閉鎖し、インク循環ポンプ61をオフとする。加圧タンク液面センサ67および負圧タンク液面センサ70がともにオンの状態でも同様に、メカ制御部122は、サブタンク弁60を閉鎖し、インク循環ポンプ61をオフとする。
【0106】
加圧タンク液面センサ67がオフで負圧タンク液面センサ70がオンの状態では、メカ制御部122は、サブタンク弁60を閉鎖し、インク循環ポンプ61をオンとする。
【0107】
また、サブタンク液面センサ72がオフの状態では、メカ制御部122は、インク補給弁78を開放し、インク補給ポンプ77をオンとする。サブタンク液面センサ72がオンの状態では、メカ制御部122は、インク補給弁78を閉鎖し、インク補給ポンプ77をオフとする。
【0108】
印刷動作中は、加圧タンク51からインクジェットヘッド16へインクが供給され、インクジェットヘッド16で消費されなかったインクが負圧タンク54に回収される。加圧タンク液面センサ67がオフで負圧タンク液面センサ70がオンの状態になると、上述の液面維持制御により、インク循環ポンプ61が負圧タンク54から加圧タンク51へインクを送液する。このようにしてインクが循環されつつ、印刷が行われる。
【0109】
インクの消費によりインク量が減少し、加圧タンク液面センサ67および負圧タンク液面センサ70がともにオフの状態になると、液面維持制御により、サブタンク弁60が開放される。これにより、負圧が付与されている負圧タンク54と大気開放状態のサブタンク55との圧力差により、サブタンク55から負圧タンク54へインクが送られる。
【0110】
また、サブタンク55から負圧タンク54へのインクの供給により、サブタンク液面センサ72がオフになると、液面維持制御により、インク補給弁78が開放され、インク補給ポンプ77が駆動される。これにより、インクカートリッジ76からサブタンク55へインクが補給される。
【0111】
ここで、印刷動作中は、インクジェットヘッド16内のヘッド駆動IC24が発熱する。これに対し、印刷動作中において、メカ制御部122は、ヘッド冷却部18のヘッド冷却ファン31を駆動させる。これにより、
図4のような冷却風Wが発生し、各インクジェットヘッド16が冷却される。
【0112】
また、印刷動作中において、ヘッド制御部131は、インク温度の変化に応じてインクの粘度が変化することによるインク吐出量の変化を抑えるために、各インクジェットヘッド16のインク温度に応じた駆動電圧の制御を行っている。
【0113】
また、印刷動作中において、インク温調制御部123は、インク温度が適正温度範囲内を維持するように、インク温調部3によるインク温調制御を行う。
【0114】
上述したインクジェットヘッド16の駆動電圧の制御、およびインク温調制御は、ヘッド温度検出部23の検出温度とヘッド上流温度検出部63の検出温度とを用いて行われる。
【0115】
ただし、ヘッド温度検出部23は、前述のように冷却風Wが通過する位置に配置されているため、ヘッド温度検出部23の検出温度は、冷却風Wの影響を受ける。そして、冷却風Wの温度は、インクジェットヘッド16におけるヘッド駆動IC24の発熱の影響を受ける。すなわち、冷却風Wの流路41における風下側ほど、冷却風Wが多くのヘッド駆動IC24の発熱の影響を受けて高温になり、風下側のヘッド温度検出部23ほど、検出温度が実際のインク温度より高くなりやすい。
【0116】
このため、前後方向において、各ヘッド温度検出部23の検出温度に温度勾配が生じる。これに対し、インクジェット印刷装置1では、補正部133が、各ヘッド温度検出部23の検出温度の温度勾配を低減するよう各ヘッド温度検出部23の検出温度を補正する。そして、補正により得られたヘッド温度検出部23の検出温度の補正値を用いて、上述したインクジェットヘッド16の駆動電圧の制御、およびインク温調制御を行う。
【0117】
ヘッド温度検出部23の検出温度の補正方法について説明する。
【0118】
まず、補正部133は、各ヘッド温度検出部23における検出温度(実測値)θjを取得すると、それらの中で最も低い温度である最低ヘッド温度θkを抽出する。
【0119】
次いで、補正部133は、最低ヘッド温度θkを基準とした各ヘッド温度検出部23の検出温度θjのオフセット量θtを算出する。オフセット量θtは、検出温度θjから最低ヘッド温度θkを差し引いた値であり、下記の式(1)により算出される。
【0120】
θt=θj-θk …(1)
各ヘッド温度検出部23の検出温度θjに対して算出されたオフセット量θtの一例を
図6、
図7に示す。
図6は、インクジェットヘッド16の配置に対応させて、各ヘッド温度検出部23の検出温度θjに対して算出されたオフセット量θtを配置した図である。
図7(a)は、
図6のオフセット量θtのうち、ヘッド列19Aの各インクジェットヘッド16の各ヘッド温度検出部23におけるオフセット量θtを示すグラフである。
図7(b)は、
図6のオフセット量θtのうち、ヘッド列19Bの各インクジェットヘッド16の各ヘッド温度検出部23におけるオフセット量θtを示すグラフである。
【0121】
図6、
図7の例では、インクジェットヘッド16Fのヘッド温度検出部23Aの検出温度θjが最低ヘッド温度θkであり、インクジェットヘッド16Fのヘッド温度検出部23Aが基準となっている。
図6、
図7から、流路41A~41Dにおける風下側に配置されたヘッド温度検出部23ほど、オフセット量θtが大きくなる、換言すれば、検出温度θjが高くなる傾向であることが分かる。すなわち、前後方向において、各ヘッド温度検出部23の検出温度に温度勾配が生じている。なお、以下の説明において、各ヘッド温度検出部23における検出温度θjに対して算出されたオフセット量θtは、
図6の値であるとする。
【0122】
次いで、補正部133は、冷却風Wの流路41ごとに、検出温度θjの温度勾配を求め、その温度勾配に基づき、検出温度θjの補正値θcを算出するための補正量θsを算出する。
【0123】
ここで、温度勾配および補正量θsの算出においては、各インクジェットヘッド16の最大印字比率Rを考慮する。このため、最大印字比率Rについて説明する。
【0124】
最大印字比率Rは、インクジェットヘッド16が印刷可能な幅(前後方向の長さ)である印字幅Waに対する、印刷時に使用され得る幅である印字寄与幅Wkの比率である。すなわち、最大印字比率R[%]は、下記の式(2)で表される。
【0125】
R=Wk/Wa×100 …(2)
各インクジェットヘッド16の最大印字比率Rの一例を
図8に示す。
図8の例では、印字幅Waが77.5mmであるのに対し、印字領域設定値(印字幅)が658mmである。印字領域設定値は、プリントバーユニット11全体での印字領域の幅である。
【0126】
前後方向において、印字領域の中心と、インクジェットヘッド16A~16Jが配置された領域の中心とが一致するように印刷が行われるため、
図8の例では、前後方向における端部にあるインクジェットヘッド16A,16Jは、全体を使用する必要がない。このため、インクジェットヘッド16B~16Iの最大印字比率Rが100%であるのに対し、インクジェットヘッド16A,16Jの最大印字比率Rは24.5%になっている。なお、以下の説明において、各インクジェットヘッド16の最大印字比率Rは
図8の値であるとする。
【0127】
ヘッド温度検出部23の検出温度θjの補正方法の説明に戻る。
【0128】
前述のように、各ヘッド温度検出部23に対応するオフセット量θtを算出すると、補正部133は、冷却風Wの流路41ごとに、検出温度θjの温度勾配を求め、その温度勾配に基づき、補正量θsを算出する。
【0129】
具体的には、流路41Aの場合、まず、補正部133は、インクジェットヘッド16G,16Iのそれぞれのヘッド温度検出部23A,23Bについて、オフセット量θtと前後方向における位置との関係を、切片を0として直線近似する。ここで、後述するように、最大印字比率Rが100%未満のインクジェットヘッド16が含まれる流路41では、そのインクジェットヘッド16のヘッド温度検出部23に対応するオフセット量θtを除いて直線近似を行う。流路41Aでは、
図8に示すように、インクジェットヘッド16G,16Iの最大印字比率Rがいずれも100%であるため、インクジェットヘッド16G,16Iのすべてのヘッド温度検出部23A,23Bを直線近似の対象とする。
【0130】
上述の直線近似により、
図9(b)に示すような近似直線が得られる。この近似直線の傾きが、検出温度θjの温度勾配に相当する。この温度勾配は、インクジェットヘッド16におけるヘッド駆動IC24の発熱および冷却風Wの影響により生じているものである。
【0131】
ここで、
図9(b)における横軸は、各ヘッド温度検出部23の前後方向における位置を示している。ここでは、計算の便宜のため、各ヘッド温度検出部23が等間隔で配置されているものとしている。
【0132】
次いで、補正部133は、各ヘッド温度検出部23の位置における近似直線上の値を、各ヘッド温度検出部23に対応する近似オフセット量θthとして算出する。
【0133】
次いで、補正部133は、近似オフセット量θthと最大印字比率Rとに基づき、下記の式(3)により、補正オフセット量θtcを算出する。
【0134】
θtc=θth×R/100 …(3)
これにより、
図9(a)に示すような補正オフセット量θtcの値が算出される。ここで、流路41Aに対応するインクジェットヘッド16G,16Iでは、最大印字比率Rは100%であるため、近似オフセット量θthと補正オフセット量θtcとは同じ値となる。
【0135】
次いで、補正部133は、オフセット量θtと補正オフセット量θtcとに基づき、下記の式(4)により、補正量θsを算出する。
【0136】
θs=θt-θtc …(4)
上述のように算出される補正量θsは、流路41における温度勾配がないとした場合の、最低ヘッド温度θkと各ヘッド温度検出部23の検出温度との差を示すものである。
【0137】
流路41Bの場合、流路41Bに対応するインクジェットヘッド16A,16C,16Eのうち、インクジェットヘッド16Aの最大印字比率Rが100%未満である。このため、補正部133は、インクジェットヘッド16Aを除いて、インクジェットヘッド16C,16Eのそれぞれのヘッド温度検出部23A,23Bについて、オフセット量θtと前後方向における位置との関係を、切片を0として直線近似する。
【0138】
ここで、最大印字比率Rが100%未満のインクジェットヘッド16では、最大印字比率Rが100%のインクジェットヘッド16よりも駆動率が低く、発熱量が少ないと考えられるため、温度勾配を求めるための直線近似の対象外としている。
【0139】
インクジェットヘッド16C,16Eのそれぞれのヘッド温度検出部23A,23Bを対象とした直線近似により、
図10(b)に示すような近似直線が得られる。この後、補正部133は、上述した流路41Aの場合と同様の手順により、
図10(a)に示すような補正オフセット量θtcを算出し、さらに補正量θsを算出する。
【0140】
ここで、流路41Bでは、インクジェットヘッド16Aの最大印字比率Rが100%未満であるため、式(3)から、補正オフセット量θtcは、近似オフセット量θthよりも小さな値となる。
【0141】
流路41Cの場合、流路41Cに対応するインクジェットヘッド16F,16H,16Jのうち、インクジェットヘッド16Jの最大印字比率Rが100%未満である。このため、補正部133は、上述した流路41Bの場合と同様の手順により、
図11(b)に示すような近似直線を求め、
図11(a)に示すような補正オフセット量θtcを算出し、さらに補正量θsを算出する。
【0142】
ここで、流路41Cでは、インクジェットヘッド16Fのヘッド温度検出部23Aにおいて、最低ヘッド温度θkが検出されている。このため、流路41Cでは、
図11(b)のように、インクジェットヘッド16Fのヘッド温度検出部23Aの位置において切片0となるように、直線近似を行っている。
【0143】
流路41Dの場合、流路41Dに対応するインクジェットヘッド16B,16Dの最大印字比率Rがいずれも100%である。このため、補正部133は、上述した流路41Aの場合と同様の手順により、
図12(b)に示すような近似直線を求め、
図12(a)に示すような補正オフセット量θtcを算出し、さらに補正量θsを算出する。
【0144】
上述のように補正量θsを算出すると、補正部133は、最低ヘッド温度θkと補正量θsとに基づき、下記の式(5)により、ヘッド温度検出部23の検出温度θjの補正値θcを算出する。
【0145】
θc=θk+θs …(5)
これにより、各流路41における温度勾配がないとした場合に各ヘッド温度検出部23で検出されるインク温度が、補正値θcとして算出される。
【0146】
図6のオフセット量θtに対応する検出温度θjを補正して得られた補正値θcのオフセット量θcfを
図13に示す。補正値θcのオフセット量θcfは、補正値θcから基準補正値θckを差し引いた値である。基準補正値θckは、最低ヘッド温度θkが計測されたインクジェットヘッド16Fのヘッド温度検出部23Aの補正値θcである。すなわち、補正値θcのオフセット量θcfの算出においても、
図6のオフセット量θtと同様に、インクジェットヘッド16Fのヘッド温度検出部23Aが基準となっている。
【0147】
また、
図14(a)は、
図13の補正値θcのオフセット量θcfのうち、ヘッド列19Aの各インクジェットヘッド16の各ヘッド温度検出部23における補正値θcのオフセット量θcfを、補正前の検出温度θjのオフセット量θtと並べたグラフである。
図14(b)は、
図13の補正値θcのオフセット量θcfのうち、ヘッド列19Bの各インクジェットヘッド16の各ヘッド温度検出部23における補正値θcのオフセット量θcfを、補正前の検出温度θjのオフセット量θtと並べたグラフである。
図14(a),(b)から、補正値θcのオフセット量θcfでは、補正前の検出温度θjのオフセット量θtに比べて、流路41A~41Dにおける風下側に配置されたヘッド温度検出部23ほど絶対値が大きくなる傾向が緩和している。これは、補正値θcでは、補正前の検出温度θjに比べて、温度勾配が低減していることを意味する。
【0148】
また、ヘッド列19A,19Bのそれぞれについて、全インクジェットヘッド16における
図6のオフセット量θtに対応する補正前の検出温度θjの分散と、検出温度θjの補正後の値である補正値θcの分散とを
図15(a)に示す。また、ヘッド列19A,19Bのそれぞれについて、端部のインクジェットヘッド19A,19Jを除くインクジェットヘッド16B~16Iにおける
図6のオフセット量θtに対応する補正前の検出温度θjの分散と、検出温度θjの補正後の値である補正値θcの分散とを
図15(b)に示す。
図15(a),(b)から、温度勾配が低減したことで、分散が低減していることが分かる。
【0149】
次に、インクジェットヘッド16の駆動制御について説明する。
【0150】
前述のように、インクジェット印刷装置1では、ヘッド温度検出部23の検出温度θjの補正値θcを用いて、インクジェットヘッド16の駆動電圧の制御を行う。
【0151】
具体的には、ヘッド制御部131は、各ノズル列21に対して、補正部133により算出された、当該ノズル列21に対応するヘッド温度検出部23の検出温度θjの補正値θcと、ヘッド上流温度検出部63の検出温度との平均値を算出する。そして、ヘッド制御部131は、算出した平均値に応じた駆動電圧で、当該ノズル列の吐出駆動を行うようヘッド駆動部132を制御する。
【0152】
印刷制御部121におけるヘッド温度検出部23の検出温度θjの取得、およびヘッド上流温度検出部63の検出温度の取得は、所定周期で行われ、その周期で、上述のようなインクジェットヘッド16の駆動電圧の制御が行われる。
【0153】
次に、インク温調部3によるインクの温調制御について説明する。
【0154】
前述のように、インクジェット印刷装置1では、ヘッド温度検出部23の検出温度θjの補正値θcを用いて、インク温調部3によるインクの温調制御を行う。
【0155】
具体的には、インク温調制御部123は、全印刷部2のヘッド上流温度検出部63の検出温度、および全印刷部2の全ヘッド温度検出部23の検出温度θjの補正値θcのうちの最大値と最小値とを算出する。そして、インク温調制御部123は、その最大値が適正温度範囲の上限を超えると、インク冷却ファン81を駆動させてインクの冷却を行う。また、最小値が適正温度範囲の下限未満となると、インク温調制御部123は、ヒータ86を駆動させてインクに加温する。
【0156】
前述のように、印刷制御部121におけるヘッド温度検出部23の検出温度θjの取得、およびヘッド上流温度検出部63の検出温度の取得は、所定周期で行われる。上述のインクの温調制御もその周期で行われる。
【0157】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、補正部133は、各ヘッド温度検出部23の検出温度に基づき、前後方向における各ヘッド温度検出部23の検出温度の温度勾配を求め、その温度勾配を低減するよう各ヘッド温度検出部23の検出温度を補正する。これにより、インクジェットヘッド16における発熱および冷却風Wの影響によりヘッド温度検出部23の検出温度が実際のインク温度から乖離していても、その影響を低減するよう検出温度が補正される。この結果、インクジェットヘッド16におけるインク温度の検出精度の低下を抑制できる。
【0158】
また、インクジェット印刷装置1では、ヘッド制御部131は、補正部133がヘッド温度検出部23の検出温度を補正して得られた補正値を用いて、インクジェットヘッド16の駆動制御を行う。これにより、インク温度の変化に応じてインクの粘度が変化することによるインク吐出量の変化が抑えられるので、印刷画質の低下を抑制できる。
【0159】
また、インクジェット印刷装置1では、インク温調制御部123は、補正部133がヘッド温度検出部23の検出温度を補正して得られた補正値を用いて、各インクジェットヘッド16に供給されるインクの温調制御を行う。これにより、実際のインク温度に適していないインクの温度調整が行われることを低減できる。
【0160】
また、インクジェット印刷装置1では、補正部133は、複数に分岐した冷却風Wの流路41ごとに、各ヘッド温度検出部23の検出温度の補正を行う。これにより、それぞれの流路41に応じた補正値を算出できるので、インクジェットヘッド16におけるインク温度の検出精度の低下をより抑制できる。
【0161】
また、冷却風Wが流路41A~41Dに分岐しているので、1つの流路41あたりのインクジェットヘッド16の数を低減できる。これにより、冷却風Wの流れる方向における風下側に位置するインクジェットヘッド16ほど冷却効果が低減することによる温度上昇を軽減できる。
【0162】
また、インクジェット印刷装置1では、補正部133は、各インクジェットヘッド16の印字寄与幅を考慮して、各ヘッド温度検出部23の検出温度を補正する。これにより、各インクジェットヘッド16の発熱の度合いに影響する印字寄与幅を考慮して各ヘッド温度検出部23の検出温度の補正を行うことで、インクジェットヘッド16におけるインク温度の検出精度の低下をより抑制できる。
【0163】
また、インクジェット印刷装置1では、インクジェットヘッド16の内部を冷却風Wが通過するので、インクジェットヘッド16の冷却効率を向上できる。
【0164】
なお、各インクジェットヘッド16の印字寄与幅に代えて、印字率を考慮して、各ヘッド温度検出部23の検出温度を補正するようにしてもよい。この場合、例えば、各ヘッド温度検出部23の検出温度(実測値)を各インクジェットヘッド16の印字率に基づいて補正し、その補正後の検出温度の温度勾配を低減するように、検出温度をさらに補正するようにすればよい。
【0165】
印字率は、例えば、ヘッド制御部131が、直近の所定ページ数分のヘッド駆動カウント値をヘッド駆動部132から取得して、ヘッド駆動カウント値に基づき算出することができる。また、ヘッド制御部131が、印刷済みの画像データから印字率を算出してもよい。また、これから印刷する画像データを取得済みである場合は、これから印刷する画像データに基づく印字率を事前に算出しておいてもよい。
【0166】
また、上述した実施の形態では、1つのインクジェットヘッド16に2列のノズル列21および2つのヘッド温度検出部23が設けられた構成を示したが、この構成に限らない。例えば、1つのインクジェットヘッドに1つのヘッド温度検出部が設けられたものであってもよい。
【0167】
また、上述した実施の形態では、それぞれ5つのインクジェットヘッド16からなる2列のヘッド列19A,19Bが形成された構成を示したが、インクジェットヘッドの数および配置はこれに限らない。複数のインクジェットヘッドがヘッド配列方向に沿って配置されているものであればよい。
【0168】
また、上述した実施の形態では、ヘッド列19A,19Bにおいて、それぞれインクジェットヘッド16E,16G間の位置、インクジェットヘッド16D,16F間の位置で冷却風Wの流路が分岐する構成を示したが、各ヘッド列19において冷却風Wの流路が分岐する位置はこれに限らず、いずれかのインクジェットヘッド16間の位置であればよい。
【0169】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0170】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0171】
(付記1)
ヘッド配列方向に沿って配置された複数のインクジェットヘッドと、
前記ヘッド配列方向に流れる冷却風により複数の前記インクジェットヘッドを冷却する冷却部と、
前記各インクジェットヘッドに配置され、前記各インクジェットヘッドにおけるインク温度を検出する複数の検出部と、
前記各検出部の検出温度に基づき、前記ヘッド配列方向における前記各検出部の検出温度の温度勾配を求め、前記温度勾配を低減するよう前記各検出部の検出温度を補正する補正部と
を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【0172】
(付記2)
前記補正部が前記各検出部の検出温度を補正して得られた補正値を用いて、前記各インクジェットヘッドの駆動制御を行うヘッド制御部をさらに備えることを特徴とする付記1に記載のインクジェット印刷装置。
【0173】
(付記3)
前記補正部が各検出部の検出温度を補正して得られた補正値を用いて、前記各インクジェットヘッドに供給されるインクの温調制御を行うインク温調制御部をさらに備えることを特徴とする付記1または2に記載のインクジェット印刷装置。
【0174】
(付記4)
前記冷却風の流路が、複数の流路に分岐しており、
前記補正部は、前記各検出部の検出温度に基づき、前記流路ごとに前記ヘッド配列方向における前記各検出部の検出温度の温度勾配を求め、前記温度勾配を低減するよう前記各検出部の検出温度を補正することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【0175】
(付記5)
それぞれ前記ヘッド配列方向に沿って配置された複数の前記インクジェットヘッドを有する複数のヘッド列が形成されており、
前記冷却風の流路が、前記各ヘッド列に対応する複数の流路に分岐するとともに、前記各ヘッド列におけるいずれかの前記インクジェットヘッド間の位置で前記ヘッド配列方向に沿って互いに逆方向に分岐していることを特徴とする付記4に記載のインクジェット印刷装置。
【0176】
(付記6)
前記補正部は、前記各インクジェットヘッドの印字寄与幅または印字率を考慮して、前記各検出部の検出温度を補正することを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【0177】
(付記7)
前記インクジェットヘッドの内部を前記冷却風が通過することを特徴とする付記1乃至6のいずれかに記載のインクジェット印刷装置。
【符号の説明】
【0178】
1 インクジェット印刷装置
2,2A~2E 印刷部
3 インク温調部
4 圧力生成部
5 制御部
11 プリントバーユニット
16,16A~16J インクジェットヘッド
18 ヘッド冷却部
21,21A,21B ノズル列
22 ノズル
23,23A,23B ヘッド温度検出部
31 ヘッド冷却ファン
32 流路形成部
36 接続部材
37 ダクト
38 ヘッド間部材
41,41A~41D 流路
121,121A~121E 印刷制御部
122 メカ制御部
123 インク温調制御部
131 ヘッド制御部
132 ヘッド駆動部
133 補正部
W 冷却風