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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】電動グリッパ装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/04 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
B25J15/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018187201
(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2020055068
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000204240
【氏名又は名称】株式会社TAIYO
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岩田 元昭
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴弘
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-136283(JP,A)
【文献】特開昭59-232781(JP,A)
【文献】特開平03-154792(JP,A)
【文献】特開平11-188559(JP,A)
【文献】特開2002-036153(JP,A)
【文献】特開2006-133057(JP,A)
【文献】実開平02-023937(JP,U)
【文献】特開平10-043984(JP,A)
【文献】特開2014-188616(JP,A)
【文献】米国特許第05131706(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107813332(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/00-19/00
B23Q 3/155- 3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータおよびこのモータの動力で回転する駆動軸を有し、ロボットのツール取付部に取付けられる駆動部と、
前記駆動部に着脱機構を介して前記駆動軸の軸線方向へ着脱可能に取付けられるワーク把持部とを備え、
前記ワーク把持部は、
前記駆動軸の一端部に前記軸線方向へ分割可能な軸継手を介して連結された従動軸と、
渦巻き状のカム溝が形成され、前記従動軸と一体に回転するカム部材と、
前記カム部材を収容するハウジングと、
前記カム溝に移動自在に接触するカムフォロアを有し、前記ハウジングに移動自在に取付けられて前記カム部材の軸線に対して直交する方向へ移動する爪部材とを備え、
前記着脱機構は、
前記駆動部の前記駆動軸を挟む2箇所にそれぞれ突設され、前記ハウジングの両側部の一端部を貫通するピン孔に嵌合するピンと、
前記ピン孔に嵌合した前記ピンが前記ワーク把持部に固定される状態と前記ピンが前記ワーク把持部に対して着脱可能な状態とを切り換える固定機構とを備え
前記固定機構は、
前記ハウジングの両側部に配置されるとともに、前記ハウジングにおける前記ピン孔とは反対側の端部に前記ピンと平行な支軸を介して揺動自在に支持されて前記ピンに対して揺動自在に構成され、揺動に伴って揺動端部が前記ピンに接離するレバーと、
前記レバーの揺動端部と前記ピンとに設けられ、前記レバーが揺動方向に往復することにより前記ピンに選択的に係合する係合構造と、
前記レバーを前記揺動端部が前記ピンに係合する方向へ付勢するばね部材と、
前記カム部材に設けられ、前記レバーを前記ばね部材のばね力に抗して押す押圧子とを備えていることを特徴とする電動グリッパ装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動グリッパ装置において、
さらに、
前記駆動部に設けられた複数の第1の端子と、
前記ワーク把持部に設けられ、前記ワーク把持部が前記駆動部に対して着脱されることにより前記第1の端子に対して接離される複数の第2の端子と、
前記複数の第1の端子と前記モータとに接続された制御装置とを備え、
前記複数の第2の端子は、前記第1の端子との導通パターンが前記ワーク把持部毎に異なるように構成され、
前記制御装置は、前記導通パターンに基づいて前記モータの動作を制御するものであることを特徴とする電動グリッパ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の電動グリッパ装置において、
前記押圧子は、前記カムフォロアが前記カム溝の一端部または他端部に位置している状態で前記レバーを押す位置に設けられているとともに、前記レバーの揺動端部と前記ピンとの係合が解除される状態で前記レバーと嵌合する嵌合部を有していることを特徴とする電動グリッパ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載の電動グリッパ装置において、
前記レバーの長手方向の中央部には、前記カム部材の前記押圧子と接触する接触子が設けられていることを特徴とする電動グリッパ装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載の電動グリッパ装置において、
前記ロボットの前記ツール取付部は、ロボットアームの先端部に固定された本体と、前記本体に着脱可能に取付けられるアダプタとによって構成され、
前記駆動部は、前記アダプタに取付けられていることを特徴とする電動グリッパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを有する駆動部と、ワークを把持するワーク把持部とに分割可能な電動グリッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットでワークを把持するにあたっては、ロボットのツール取付部に電動グリッパ装置を取付けて行われている。電動グリッパ装置は、ワークを把持するための爪部材と、この爪部材を駆動するモータとを備えている。1台のロボットで大きさや重量が異なる複数種類のワークを取扱う場合は、以下の2通りの方法が採られている。
【0003】
第1の方法は、爪部材の形状およびハンドリングする箇所を工夫して対応する。
第2の方法は、例えば特許文献1に記載されているようなロボットハンドチェンジャーを使用する。このロボットハンドチェンジャーは、ロボットハンドのツール取付部に取付けられる本体と、この本体に着脱可能に取付けられたアダプタとによって構成されている。電動グリッパ装置は、このアダプタに取付けられる。
【0004】
複数種類の電動グリッパ装置のうち、ワークに適合した電動グリッパ装置を選んでロボットハンドチェンジャーによってロボットに取付けるためには、予め全ての電動グリッパ装置にそれぞれアダプタを取付けておく必要がある。ワークの大きさや重量が変わって電動グリッパ装置を交換する場合は、ロボットハンドチェンジャーの本体に既に装着されているアダプタを外し、そのワークに適した電動グリッパ装置を有するアダプタをロボットハンドチェンジャーの本体に取付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-159377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した第1の方法では、爪部材の形状だけでは対応できる範囲が少ないという問題がある。すなわち、電動グリッパ装置で掴む場所やワークの大きさに制約を受けることになる。大型のワークでも把持できるよう爪部材を大きく形成すると、ハンドリング部分の質量が増し、タクトタイムに影響がでる。また、電動グリッパ装置の減速機構は同一の為、把持力の設定範囲の変更は困難である。
【0007】
第2の方法では、全ての電動グリッパ装置にアダプタを取付ける必要があることと、多くの種類の電動グリッパ装置を用意しておかなければならないこととから、導入コストが高くなってしまう。
また、ツール交換時にモータ電流およびエンコーダ供給電力をOFFしなければならないために、制御装置にリレーを設置する必要がある。このため製造コストが高くなってしまう。さらに、制御装置と電動グリッパ装置の本体とが一体に構成されたものでは、制御装置分のコストがさらに高くなる。
【0008】
さらに、電動グリッパ装置を交換する際にモータ電源およびエンコーダ電源がOFFされることにより、モータ励磁合わせ、原点復帰などが必要になり、交換に時間を要する。
さらにまた、ロボットハンドチェンジャーの本体とアダプタとの間に電気接点がモータ線およびエンコーダ線分だけ必要になり、コストアップおよび接点部の信頼性が低下する。加えて、電気信号が高周波の場合、ノイズ・接触不良で信頼性が低下する。
【0009】
本発明の目的は、モータおよび制御装置を交換することなくワークを把持する性能を変えることができる電動グリッパ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係る電動グリッパ装置は、モータおよびこのモータの動力で回転する駆動軸を有し、ロボットのツール取付部に取付けられる駆動部と、前記駆動部に着脱機構を介して前記駆動軸の軸線方向へ着脱可能に取付けられるワーク把持部とを備え、前記ワーク把持部は、前記駆動軸の一端部に前記軸線方向へ分割可能な軸継手を介して連結された従動軸と、渦巻き状のカム溝が形成され、前記従動軸と一体に回転するカム部材と、前記カム溝に移動自在に接触するカムフォロアを有し、前記カム部材の軸線に対して直交する方向へ移動する爪部材とを備え、前記着脱機構は、前記駆動部と前記ワーク把持部とのいずれか一方の部材に突設されて他方の部材のピン孔に嵌合するピンと、前記ピン孔に嵌合した前記ピンを前記他方の部材に選択的に固定する固定機構とを備えているものである。
【0011】
本発明は、前記電動グリッパ装置において、さらに、前記駆動部に設けられた複数の第1の端子と、前記ワーク把持部に設けられ、前記ワーク把持部が前記駆動部に対して着脱されることにより前記第1の端子に対して接離される複数の第2の端子と、前記複数の第1の端子と前記モータとに接続された制御装置とを備え、前記複数の第2の端子は、前記第1の端子との導通パターンが前記ワーク把持部毎に異なるように構成され、前記制御装置は、前記導通パターンに基づいて前記モータの動作を制御するものであってもよい。
【0012】
本発明は、前記電動グリッパ装置において、前記着脱機構の前記ピンは、前記駆動部に設けられ、前記固定機構は、前記ピンに対して揺動自在に構成され、揺動に伴って揺動端部が前記ピンに接離するレバーと、前記レバーの揺動端部と前記ピンとに設けられ、前記レバーが揺動方向に往復することにより前記ピンに選択的に係合する係合構造と、前記レバーを前記揺動端部が前記ピンに係合する方向へ付勢するばね部材と、前記カム部材に設けられ、前記レバーを前記ばね部材のばね力に抗して押す押圧子とを備えていてもよい。
【0013】
本発明は、前記電動グリッパ装置において、前記押圧子は、前記カムフォロアが前記カム溝の一端部または他端部に位置している状態で前記レバーを押す位置に設けられているとともに、前記レバーの揺動端部と前記ピンとの係合が解除される状態で前記レバーと嵌合する嵌合部を有していてもよい。
【0014】
本発明は、前記電動グリッパ装置において、前記ロボットの前記ツール取付部は、ロボットアームの先端部に固定された本体と、前記本体に着脱可能に取付けられるアダプタとによって構成され、前記駆動部は、前記アダプタに取付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電動グリッパ装置においては、大きさや重量などが異なるワークを把持する場合にワーク把持部をワークに適したものと交換することができる。したがって、モータおよび制御装置を交換することなくワークを把持する性能を変えることが可能な電動グリッパ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態による電動グリッパ装置を示す図である。
図2】電動グリッパ装置の分割状態の正面図である。
図3】着脱機構の取付前の状態を示す断面図である。
図4】着脱機構の取付後の状態を示す断面図である。
図5】カム部材の平面図である。
図6】第2の実施の形態による電動グリッパ装置を示す図である。
図7】電動グリッパ装置の分割状態の正面図である。
図8】電動グリッパ装置の断面図である。
図9】駆動部にワーク把持部が結合された状態を示す断面図である。
図10】レバーの一部とカム部材の嵌合部とを拡大して示す断面図である。
図11】ピンにレバーが係合している状態を示す断面図である。
図12】カム部材の平面図である。
図13】第3の実施の形態による電動グリッパ装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る電動グリッパ装置の一実施の形態を図1図5を参照して詳細に説明する。この実施の形態による電動グリッパ装置は、本願の請求項1および請求項2に記載した発明が適用されたものである。
【0018】
図1に示す電動グリッパ装置1は、産業用ロボット2のツール取付部3に取付けられるもので、ツール取付部3に取付けられた駆動部4と、この駆動部4に着脱機構5を介して着脱可能に取付けられるワーク把持部6とを備えている。図1(A)は電動グリッパ装置1の平面図、図1(B)は正面図、図1(C)は側面図、図1(D)は底面図である。
駆動部4は、図2に示すように、モータ7およびエンコーダ8などを収容する第1のハウジング11を有している。図2は、駆動部4およびワーク把持部6の一部を破断して描いてある。
【0019】
第1のハウジング11は、箱状に形成されている。第1のハウジング11の一端部(図2においては上端部)には、ツール取付部3に取付けられる取付座11aが設けられている。第1のハウジング11の他端部には、後述するワーク把持部6を取付けるための第1のフランジ12が設けられている。この第1のフランジ12の両端部には、ワーク把持部6を駆動部4に固定するためのピン13が突設されている。
【0020】
このピン13は、後述する着脱機構5の一部を構成するもので、第1のハウジング11の一端部から他端部を指向する方向と平行に設けられている。このピン13の構成は後述する。
第1のフランジ12には、駆動部側コネクタ14が設けられている。この駆動部側コネクタ14は、複数の第1の端子14aを備えている。これらの第1の端子14aは、ワーク把持部6側から接続するように構成されており、ロボット2の図示していない制御部に設けられた電動グリッパ装置用の制御装置15に接続されている。
【0021】
モータ7は、回転軸16を駆動して回転させるもので、この回転軸16の軸線Cがピン13と平行になる状態で第1のハウジング11に固定されている。この実施の形態においては、この回転軸16が本発明でいう「モータの動力で回転する駆動軸」に相当する。このモータ7の動作は制御装置15によって制御される。
回転軸16の先端部には、軸継手17の駆動側半部17aが取付けられている。この軸継手17は、軸線方向に分割可能かつ回転伝達可能に連結される駆動側半部17aと、後述するワーク把持部6の従動側半部17bとによって構成されている。
【0022】
従動側半部17bは、ワーク把持部6の従動軸21に取付けられている。この実施の形態による駆動側半部17aと従動側半部17bは、それぞれ回転方向に繰り返し並ぶ凸部22と凹部23とを有している。駆動側半部17aの凸部22が従動側半部17bの凹部23に嵌合し、駆動側半部17aの凹部23に従動側半部17bの凸部22が嵌合することにより、駆動側半部17aと従動側半部17bとが回転伝達可能に接続される。
【0023】
ワーク把持部6は、駆動部4の第1のフランジ12と対向する第2のフランジ24が一端部に設けられた第2のハウジング25と、この第2のハウジング25の他端部にガイドレール26を介して移動自在に取付けられた第1および第2の爪部材27,28と、これらの第1および第2の爪部材27,28を駆動するためのカム部材29などを備えている。このワーク把持部6は、第1および第2の爪部材27,28やカム部材29、ガイドレール26の構成を変えて複数種類形成されている。このワーク把持部6において、第1および第2の爪部材27,28のストロークや移動速度、第1および第2の爪部材27,28に生じる把持力などの性能は、他のワーク把持部とは異なる。
【0024】
ワーク把持部6の第2のフランジ24は、上述した従動軸21を軸受31によって回転自在に支持しているとともに、駆動部4のピン13が嵌合するピン孔32を有している。この実施の形態においては、駆動部4が本発明でいう「一方の部材」に相当し、ワーク把持部6が本発明でいう「他方の部材」に相当する。従動軸21は、第2のフランジ24を貫通して第2のハウジング25の中に挿入されており、第2のハウジング25内に収容された後述するカム部材29に結合されている。従動軸21は、カム部材29に一体に回転するように結合されている。
【0025】
ピン孔32は、図3に示すように、両端部の小径部32a,32bと、中央部の大径部32cとから形成されている。
小径部32a,32bは、駆動部4のピン13の後述する円柱部13bが嵌合する形状に形成されている。大径部32cは、小径部32a,32bより孔径が大きくなるように形成されている。
ピン13は、駆動部4の第1のフランジ12に固定された筒状部13aと、この筒状部13aから突出した円柱部13bとによって形成されている。
【0026】
このピン13の中には、ピン13をワーク把持部6の第2のフランジ24に選択的に固定する固定機構33が設けられている。固定機構33は、円柱部13bの先端部に保持された複数のボール34と、ピン13の軸心部に移動自在に嵌合したロッド35と、ピン13の筒状部13a内に収容された圧縮コイルばね36などによって構成されている。この実施の形態において、ワーク把持部6を駆動部4に着脱可能に取付ける着脱機構5は、ピン13と、ピン孔32と、固定機構33などによって構成されている。
【0027】
ボール34は、ロッド35の先端部に設けられた環状溝37の中に入る後退位置と、円柱部13bの外周部に設けられたストッパー38によって移動が規制される突出位置との間で移動自在である。図3は、ボール34が後退位置に位置する状態を示している。
環状溝37の側壁37aは、環状溝37の開口側に向かうにしたがって溝幅が次第に広くなるように傾斜している。
ロッド35の基端部には、ばね受け35aが設けられている。このばね受け35aは、圧縮コイルばね36によってロッド35の先端部とは反対方向に付勢されている。
【0028】
この実施の形態においては、ロッド35が圧縮コイルばね36のばね力によって押されて移動することにより、ボール34が環状溝37の側壁37aによって押されて円柱部13bの外周部側に移動し、突出位置に保持される。この状態でピン13がピン孔32に挿入されると、ボール34がピン孔32の入口側の小径部32aによって押されて環状溝37の側壁37aを押し、ロッド35が圧縮コイルばね36のばね力に抗して先端部側に移動する。
【0029】
この結果、ボール34が突出位置から移動して円柱部13b内に収容され、ピン13が小径部32aの中に挿入される。そして、ボール34がピン孔32の小径部32aから大径部32cに入ると、図4に示すように、環状溝37の側壁37aによって押されて円柱部13bから突出し、突出位置に移動する。大径部32cは、このようにボール34が突出位置に位置付けられた状態でボール34と係合するように構成されている。このようにボール34が大径部32cに係合することによって、ワーク把持部6が駆動部4に取付けられた状態で固定されることになる。
【0030】
ワーク把持部6を駆動部4から取り外すときは、図4中に二点鎖線で示すように、ロッド35のばね受けを作業者の指(図示せず)や押圧部材39によって押し、ボール34を環状溝37の側壁37aによって押されることがない状態にする。この状態でピン13がピン孔32から引き抜かれるようにワーク把持部6を駆動部4から取り外すことができる。
【0031】
ワーク把持部6のガイドレール26は、図2に示すように、回転軸16の軸線Cと直交する方向に延びている。このガイドレール26には、第1の爪部材27と第2の爪部材28とが移動自在に装着されている。これらの第1および第2の爪部材27,28には、図示してはいないが、ワークを把持するためのフィンガ部材が設けられる。
第1および第2の爪部材27,28は、回転軸16の軸線Cと平行に延びる第1および第2のカムフォロア41,42を備えている。第1および第2のカムフォロア41,42は、それぞれガイドレール26に形成された長穴43と、第2のハウジング25に形成された長穴44とに通されて第2のハウジング25内に挿入されており、第2のハウジング25内のカム部材29に接続されている。
【0032】
カム部材29は、図5および図12に示すように、円板状に形成されており、軸心部に結合された従動軸21を介して第2のハウジング25に回転自在に支持されている。また、このカム部材29には、渦巻き状の第1および第2のカム溝45,46が同芯状に形成されている。これらの第1および第2のカム溝45,46は、いわゆるアルキメデスのうず巻線に沿う形状に形成されている。第2のカム溝46は、第1のカム溝45に対してカム部材29の回転方向に180°離れた位置に形成されている。
【0033】
第1のカム溝45には、第1のカムフォロア41が移動自在に嵌合し、第2のカム溝46には、第2のカムフォロア42が移動自在に嵌合している。このため、カム部材29が回ることにより、第1および第2の爪部材27,28がガイドレール26に沿ってカム部材29の軸線(回転軸16の軸線C)に対して直交する方向へ移動する。このとき、第1の爪部材27と第2の爪部材28は互いに反対方向に移動する。
【0034】
第2のハウジング25の一側部であって、駆動部側コネクタ14と対向する位置には、ワーク把持部側コネクタ51が設けられている。このワーク把持部側コネクタ51は、複数の第2の端子51aを備えている。これらの第2の端子51aは、ワーク把持部6が駆動部4に対して着脱されることにより第1の端子14aに対して接離するように構成されている。また、これらの複数の第2の端子51aは、第1の端子14aとの導通パターンがワーク把持部6毎に異なるように構成されている。
【0035】
導通パターンは、例えば、複数ずつある第1および第2の端子14a,51aのうち、導通状態になる第1および第2の端子14a,51aの位置と、非導通状態になる第1および第2の端子14a,51aの位置とに基づいて規定することが可能である。導通パターンがワーク把持部6毎に異なることにより、導通パターンに基づいてワーク把持部6を識別することが可能になる。ワーク把持部6毎の導通パターンは、制御装置15のメモリ52に記録されており、制御装置15によって読み出される。制御装置15のメモリ52には、導通パターンの他に、ワーク把持部6を制御するためのデータも記録されている。このデータは、個々に性能が異なるワーク把持部6を設計通りに動作させるためのデータである。このデータも制御装置15によって読み出される。
【0036】
このように構成された電動グリッパ装置1は、駆動部4がロボット2のツール取付部3に取付けられた状態で使用される。駆動部4には、ワークに適したワーク把持部6が取付けられる。この取付時には、駆動部4のピン13がワーク把持部6のピン孔32に挿入されるとともに、従動軸21に取り付けられている軸継手17の従動側半部17bが回転軸16の駆動側半部17aに接続される。また、ワーク把持部側コネクタ51が駆動部側コネクタ14に接続される。
【0037】
ワーク把持部6が駆動部4に取付けられると、制御装置15がワーク把持部6を識別し、このワーク把持部6に適した制御を実施する。また、このときには、制御装置15が所定の原点復帰動作を行う。電動グリッパ装置1でワークを把持するときは、電動グリッパ装置1がロボット2によってワーク把持位置に移動する。この状態で駆動部4のモータ7が制御装置15によって制御されて動作すると、回転軸16の回転が軸継手17を介して従動軸21およびカム部材29に伝達される。そして、カム部材29が回ることにより第1および第2の爪部材27,28が互いに反対方向に移動し、これらの第1および第2の爪部材27,28に設けられているフィンガ部材がワークを把持する。
【0038】
大きさや重量などが異なるワークを把持する場合は、ロボット2に取付けられている駆動部4からワーク把持部6が取り外され、ワークに適した新たなワーク把持部6が駆動部4に取付けられる。したがって、この実施の形態によれば、モータ7および制御装置15を交換することなくワークを把持する性能を変えることが可能な電動グリッパ装置を提供することができる。モータ7の交換が不要であるために、従来の電動グリッパ装置と較べて脱着時のモータ電源およびエンコーダ電源をOFFする必要がなくなり、モータ励磁とエンコーダ位相合わせが不要になる。この結果、装置のタクトタイム向上を図ることができる。
【0039】
この実施の形態による電動グリッパ装置1は、駆動部4に設けられた複数の第1の端子14aと、ワーク把持部6に設けられた複数の第2の端子51aと、複数の第1の端子14aとモータ7とに接続された制御装置15とを備えている。複数の第2の端子51aは、ワーク把持部6が駆動部4に対して着脱されることにより第1の端子14aに対して接離され、第1の端子14aとの導通パターンがワーク把持部6毎に異なるように構成されている。制御装置15は、導通パターンに基づいてモータ7の動作を制御する。
【0040】
この実施の形態においては、第2の端子51aが第1の端子14aに接続されることによりワーク把持部6を識別することができる。このため、ワーク把持部6を制御するためのデータを全てのワーク把持部6について制御装置15に記憶させておくことにより、爪部材27,28のストローク、移動速度、把持力などが異なる複数のワーク把持部6を一つの駆動部4でそれぞれ設計通りの性能が生じるように動作させることが可能になる。
したがって、この実施の形態によれば、一つの駆動部4を複数のワーク把持部6で共有する構成を採っているにもかかわらず、動作の信頼性が高い電動グリッパ装置を提供することができる。
【0041】
(第2の実施の形態)
着脱機構5は図6図12に示すように構成することができる。図6図12において、図1図5によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。この実施の形態による電動グリッパ装置61は、本願の請求項3と請求項4とに記載した発明が適用されたものである。図6(A)は電動グリッパ装置1の平面図、図6(B)は正面図、図6(C)は側面図、図6(D)は底面図である。
【0042】
この実施の形態による電動グリッパ装置61の着脱機構62(図7参照)は、駆動部4に設けられたピン63と、このピン63が嵌合するようにワーク把持部6に設けられたピン孔64と、ワーク把持部6に設けられた固定機構65とによって構成されている。図7は駆動部4の一部とワーク把持部6とを破断した状態で描いてある。ワーク把持部6の断面位置は、図6(D)においてVII-VII線で示す位置である。
ピン63は、第1のフランジ12の対角線上であって回転軸16を挟む2箇所にそれぞれ設けられている。これらのピン63は、基端側の小径部63aと、先端側の大径部63bとからなり、長手方向の中間部に段部63cを有している。この段部63cは、請求項3記載の発明でいう「係合構造」の一部を構成するものである。
【0043】
ピン孔64は、ワーク把持部6の第2のハウジング25を貫通し、ピン63の大径部63bが嵌合するように形成されている。
固定機構65は、図8(A)~(C)に示すように、第2のハウジング25の両側部に配置された第1および第2のレバー71,72を備えている。図8(A)は、ワーク把持部6を図8(B)中のA-A線の位置で破断した断面図である。図8(B)はワーク把持部6を回転軸16の軸線Cと直交する方向に破断した断面図である。図8(C)はワーク把持部6を図8(B)中のC-C線の位置で破断した断面図である。
第1および第2のレバー71,72の一端部は、第2のハウジング25におけるピン孔64とは反対側の端部に支軸73,74を介して揺動自在に支持されている。
【0044】
第1および第2のレバー71,72の揺動端部は、これらのレバー71,72の揺動に伴ってピン孔64に接離する。第1および第2のレバー71,72の揺動端部には、ピン63の小径部63aに嵌合する半円状の切欠き75が形成されている。第1および第2のレバー71,72の切欠き75がピン63の小径部63aに嵌合している状態においては、図11に示すように、ピン63の段部63cが第1および第2のレバー71,72に当接しているから、ピン63をピン孔64から引き抜くことはできなくなる。すなわち、切欠き75を有する第1および第2のレバー71,72の揺動端部と、ピン63の段部63cは、第1および第2のレバー71,72が揺動方向に往復することによりピン63に選択的に係合する係合構造76を構成している。
【0045】
第1および第2のレバー71,72を支持する支軸73,74には、ばね部材77が装着されている。ばね部材77は、ねじりコイルばねで、支軸73,74が貫通する状態で第1および第2のレバー71,72と第2のハウジング25との間で圧縮されており、第1および第2のレバー71,72を揺動端部がピン63に係合する方向へ付勢している。
【0046】
第1および第2のレバー71,72の長手方向の中央部には、カム部材29の押圧子81{図8(B)参照}と接触する接触子82が設けられている。
この実施の形態による固定機構65は、第1および第2のレバー71,72と、係合構造76と、ばね部材77と、カム部材29の押圧子81などによって構成されている。
カム部材29の押圧子81は、カム部材29の外周部に径方向の外側へ部分的に突出する形状に形成されており、カム部材29を回転方向に2等分する位置にそれぞれ設けられている。
【0047】
これらの押圧子81は、カム部材29の径方向に所定の幅を有し、かつカム部材29の回転方向に所定の長さを有する形状に形成されている。カム部材29の径方向における押圧子81の形成幅は、一定ではなく、図8(B)においてカム部材29の軸心を中心として時計方向に向かうにしたがって次第に大きくなっている。すなわち、押圧子81は、起点P1からカム部材29の回転角にしてθ1°だけ離れた終点P2まで延びる長さを有し、起点P1から終点P2まで幅が漸次大きくなるように形成されている。
【0048】
起点P1は、一対の爪部材27,28の間隔が次第に拡がって最大になったときの第1および第2のカムフォロア41,42と隣り合う位置(図9参照)に設定されている。この実施の形態による第1および第2のカム溝45,46は、爪部材27,28どうしの間隔が最大になる全開位置P3(起点P1と隣接する位置)から角度θ1°分だけ延長されている。この延長部45a,46aは、カム部材29の軸心を中心とする円弧状に形成されている。このため、この延長部45a,46aを第1および第2のカムフォロア41,42が通過するようにカム部材29が回ったとしても、第1および第2のカムフォロア41,42の位置が変わることはない。
【0049】
押圧子81の幅が最大になる部分には、図10および図12に示すように、断面円弧状の切欠きからなる嵌合部83が設けられている。この嵌合部83は、図8(B)に示すように、第1および第2のレバー71,72の揺動端部とピン63との係合が解除される状態で、接触子82と嵌合する。嵌合部83が接触子82に嵌合することにより、カム部材29の回転が規制され、カム部材29がその位置に固定される。この実施の形態による制御装置15は、このようにカム部材29が固定される位置を原点としてモータ7の動作を制御する。
【0050】
この実施の形態による爪部材27,28どうしの間隔は、第1および第2のカムフォロア41,42が第1および第2のカム溝45,46の全開位置P3および延長部45a,46aに位置している状態で最大になる。また、図9に示すように第1および第2のカムフォロア41,42が全開位置P3に位置している状態から、カム部材29が回転角にしてθ2°だけ時計方向に回ることによって、爪部材27,28どうしの間隔が最小になる。
【0051】
第1および第2のレバー71,72は、カム部材29の回転方向の位置に応じて係合解除位置と係合位置との間で揺動する。すなわち、爪部材27,28どうしの間隔が最小になる位置から最大になる位置までカム部材29が回転して図9に示す状態になった後に、カム部材29が更に同方向(図においては反時計方向)に回ることにより、押圧子81がばね部材77のばね力に抗して第1および第2のレバー71,72を押すようになる。そして、カム部材29が図9の位置から角度θ1°だけ回ることにより、図8(B)に示すように、第1および第2のレバー71,72が係合解除位置に位置付けられる。ワーク把持部6は、このように第1および第2のレバー71,72が係合解除位置に位置している状態で駆動部4に対して着脱される。
【0052】
カム部材29が図8(B)に示す位置(カム溝45,46の延長端に第1および第2のカムフォロア41,42が存在している位置)から時計方向にθ1°だけ回ることにより、図9に示すように押圧子81が接触子82を押すことがなくなり、第1および第2のレバー71,72切欠き75がピン63の小径部63aに嵌合して第1および第2のレバー71,72が係合位置に位置付けられる。
【0053】
このように構成された固定機構65によれば、カム部材29を利用して固定機構65を駆動し、ワーク把持部6が駆動部4に固定される状態と、ワーク把持部6が駆動部4に対して着脱可能な状態とを切替えることができる。したがって、この実施の形態によれば、ワーク把持部6の交換を作業者に頼ることなく短時間にかつ容易に行うことが可能な電動グリッパ装置を提供することができる。
【0054】
この実施の形態によるカム部材29の押圧子81は、第1および第2のカム溝45,46の一端部(延長部45a,46aの延長端)に第1および第2のカムフォロア41,42が位置している状態{図8(B)に示す状態}で、第1および第2のレバー71,72を押す位置に設けられている。また、押圧子81は、第1および第2のレバー71,72の揺動端部とピン63との係合が解除される状態で第1および第2のレバー71,72(接触子82)と嵌合する嵌合部83を有している。
【0055】
このため、爪部材27,28が全開の状態でワーク把持部6が駆動部4から外される。駆動部4から外された離脱後のワーク把持部6においては、押圧子81と第1および第2のレバー71,72との嵌合によりカム部材29の回転が規制されるから、爪部材27,28が全開位置に固定される。
したがって、ワーク把持部6が駆動部4に取付けられたときの爪部材27,28の位置は離脱時の爪部材27,28の位置と同一であるから、ワーク把持部6が駆動部4に取付けられたときの爪部材27,28の位置を制御装置15で容易に特定できる。この結果、モータ7の原点復帰動作が不要になり、装置のタクトタイムが更に向上する。
【0056】
(第3の実施の形態)
ロボットのツール取付部は、図13に示すように構成することができる。図13において、図1図12によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。この実施の形態による電動グリッパ装置は、本願の請求項5に記載した発明が適用されたものである。
図13に示すロボット2のツール取付部3は、従来から知られているロボットハンドチェンジャーと同等のもので、ロボットアーム91の先端部に固定されたロボットハンドチェンジャー本体92と、このロボットハンドチェンジャー本体92に着脱可能に取付けられるアダプタ93とによって構成されている。図13に示すアダプタ93には、第1の実施の形態で示した電動グリッパ装置1の駆動部4が取付けられている。なお、アダプタ93には、第2の実施の形態で示した電動グリッパ装置61を取付けることもできる。
この実施の形態によれば、従来のロボットハンドチェンジャーに適用可能な電動グリッパ装置を提供することができる。
【0057】
上述した第1の実施の形態に示した電動グリッパ装置1においては、着脱機構5のピン13が駆動部4に設けられ、ピン孔32がワーク把持部6に設けられている。しかし、第1の実施の形態を採る場合の着脱機構5は、ピン13をワーク把持部6に設け、ピン孔32を駆動部4に設けたとしても実現可能である。
【0058】
第2の実施の形態に示す固定機構65は、爪部材27,28どうしの間隔が最大になる状態(第1および第2のカムフォロア41,42が第1および第2のカム溝45,46の一端部に位置している状態)で押圧子81が第1および第2のレバー71,72を押す構成が採られている。しかし、本発明はこのような限定にとらわれることはない。すなわち、爪部材27,28どうしの間隔が最小になる状態(第1および第2のカムフォロア41,42が第1および第2のカム溝45,46の他端部に位置している状態)で押圧子81が第1および第2のレバー71,72を押す構成を採ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1,61…電動グリッパ装置、2…ロボット、3…ツール取付部、4…駆動部、5…着脱機構、6…ワーク把持部、12…モータ、13,63…ピン、16…回転軸(駆動軸)、17…軸継手、21…従動軸、27…第1の爪部材、28…第2の爪部材、29…カム部材、32,64…ピン孔、33,65…固定機構、41…第1のカムフォロア、42…第2のカムフォロア、45…第1のカム溝、46…第2のカム溝、71…第1のレバー、72…第2のレバー、76…係合構造、77…ばね部材、81…押圧子、83…嵌合部、91…ロボットアーム、92…ロボットハンドチェンジャー本体、93…アダプタ、C…軸線。
図1
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図5
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図7
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図10
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図13