(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】変化する曲率を有するフロントガラスのためのフロントガラスワイパー装置
(51)【国際特許分類】
B60S 1/24 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
B60S1/24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018198322
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2021-05-25
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517058473
【氏名又は名称】ドーガ エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス ラソ ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア チカ ホアン ホセ
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス エルヴィラ セルジ
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-87863(JP,A)
【文献】特開昭63-78850(JP,A)
【文献】特開平6-270768(JP,A)
【文献】実開平7-6000(JP,U)
【文献】実開昭63-189857(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/02-1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変化する曲率を有するフロントガラスのためのフロントガラスワイパー装置(1)であって、
[a]固有のセカンダリ軸(8)の周りに開始セカンダリ位置と最終セカンダリ位置との間で回転するセカンダリシャフト(6)と、
[b]該フロントガラスワイパー装置(1)の駆動手段(10)によって、固有のプライマリ軸(4)の周りに開始プライマリ位置と最終プライマリ位置との間で交互に回転するプライマリシャフト(2)であって、前記プライマリ軸(4)が前記セカンダリ軸(8)に対して傾斜して互いに対して第1の鋭角(β)をなすように、前記セカンダリシャフト(6)内に取り付けられるプライマリシャフトと、
[c]前記プライマリシャフト(2)を介して前記フロントガラスに対して同様に交互に運動するように、前記プライマリシャフト(2)に固定して取り付けられるワイパーブレードアームと、
を備え、
該フロントガラスワイパー装置は、前記駆動手段(10)を前記セカンダリシャフト(6)と運動学的に接続し、前記プライマリシャフト(2)が前記開始プライマリ位置と前記最終プライマリ位置との間で回転の50%を終えたとき、前記セカンダリシャフト(6)が前記開始セカンダリ位置と前記最終セカンダリ位置との間で回転の0%~30%を終えるように前記セカンダリシャフト(6)の回転を引き起こす遅延装置(44)を更に備えることを特徴とする、フロントガラスワイパー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフロントガラスワイパー装置(1)であって、前記プライマリシャフト(2)が前記開始プライマリ位置と前記最終プライマリ位置との間で回転の50%を終えたとき、前記セカンダリシャフト(6)は、前記開始セカンダリ位置と前記最終セカンダリ位置との間で回転の5%~23%を終えていることを特徴とする、フロントガラスワイパー装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフロントガラスワイパー装置(1)であって、前記プライマリシャフト(2)が前記開始プライマリ位置と前記最終プライマリ位置との間で回転の75%を終えたとき、前記セカンダリシャフト(6)は、前記開始セカンダリ位置と前記最終セカンダリ位置との間で回転の65%を終えていることを特徴とする、フロントガラスワイパー装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のフロントガラスワイパー装置(1)であって、前記駆動手段(10)は、モーター(38)と、該モーター(38)によって駆動される第1の平面四節リンク機構(12)とを備え、該第1の四節リンク機構(12)は、
[a]第1の原動節(14)と、
[b]第1の伝達節(16)と、
[c]前記プライマリ軸(4)の周りに揺動するように取り付けられる第1の従動節(18)であって、前記プライマリシャフト(2)を交互に駆動するように前記プライマリシャフト(2)に接続される第1の従動節(18)と、
によって形成され、
前記遅延装置(44)は、第2の平面四節リンク機構(20)及び第3の平面四節リンク機構(30)を備え、前記第2の四節リンク機構(20)は、
[d]前記プライマリ軸(4)の周りに揺動するように取り付けられる第2の原動節(22)であって、該第2の原動節(22)と前記第1の従動節(18)とが一体として運動することができるように、互いに対して第2の角度(θ1)をなして前記第1の従動節(18)に運動学的に接続される第2の原動節(22)と、
[e]第2の伝達節(24)と、
[f]固定スイベル軸(28)の周りに揺動するように取り付けられる第2の従動節(26)と、
によって形成され、前記第3の四節リンク機構(30)は、
[g]前記スイベル軸(28)の周りに揺動するように取り付けられる第3の原動節(32)であって、該第3の原動節(32)と前記第2の従動節(26)とが一体として運動することができるように、互いに対して第3の角度(θ2)をなして前記第2の従動節(26)に運動学的に接続される第3の原動節(32)と、
[h]第3の伝達節(34)と、
[i]前記セカンダリ軸(8)の周りに揺動するように取り付けられる第3の従動節(36)であって、前記セカンダリシャフト(6)を交互に駆動するように前記セカンダリシャフト(6)に接続される第3の従動節(36)と、
によって形成され、
前記フロントガラスワイパーの開始位置において、前記第3の原動節(32)と前記第3の伝達節(34)とは、互いに対して-5度~+20度で構成される第4の角度(θ3)をなして配置されることを特徴とする、フロントガラスワイパー装置。
【請求項5】
請求項4に記載のフロントガラスワイパー装置(1)であって、前記フロントガラスワイパーの前記開始位置において、前記第3の原動節(32)と前記第3の伝達節(34)とは、互いに対して-5度~+10度で構成される第4の角度(θ3)をなして配置されることを特徴とする、フロントガラスワイパー装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のフロントガラスワイパー装置(1)であって、前記第2の原動節(22)と前記第1の従動節(18)との間の前記第2の角度(θ1)は、35度~55度で構成され、前記第3の原動節(32)と前記第2の従動節(26)との間の前記第3の角度(θ2)は、55度~75度で構成されることを特徴とする、フロントガラスワイパー装置。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載のフロントガラスワイパー装置(1)であって、前記第1の四節リンク機構(12)は、てこクランクタイプの機構であり、前記第2の四節リンク機構(20)及び前記第3の四節リンク機構(30)は、両てこタイプの機構であることを特徴とする、フロントガラスワイパー装置。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載のフロントガラスワイパー装置(1)であって、
[a]前記第2の原動節(22)と前記第2の伝達節(24)との間の長さ比は、0.5~0.7で構成され、
[b]前記第2の原動節(22)と前記第2の従動節(26)との間の長さ比は、1.1~1.3で構成され、
[c]前記第2の原動節(22)と前記プライマリ軸(4)及び前記スイベル軸(28)間の距離との長さ比は、1.1~1.3で構成され、
それに対して、
[d]前記第3の原動節(32)と前記第3の伝達節(34)との間の長さ比は、0.4~0.6で構成され、
[e]前記第3の原動節(32)と前記第3の従動節(36)との間の長さ比は、0.7~0.9で構成され、
[f]前記第3の原動節(32)と前記スイベル軸(28)及び前記セカンダリ軸(8)間の距離との長さ比は、0.6~0.8で構成される、
ことを特徴とする、フロントガラスワイパー装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のフロントガラスワイパー装置(1)であって、前記プライマリ軸(4)と前記セカンダリ軸(8)とは、同一平面上にあることを特徴とする、フロントガラスワイパー装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のフロントガラスワイパー装置(1)であって、前記プライマリ軸(4)が前記セカンダリ軸(8)に対して傾斜して、互いに対して12度~32度で構成される前記第1の鋭角(β)をなすことを特徴とする、フロントガラスワイパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変化する曲率を有するフロントガラスのためのフロントガラスワイパー装置であって、固有のセカンダリ軸の周りに回転するセカンダリシャフトと、該フロントガラスワイパー装置の駆動手段によって、固有のプライマリ軸の周りに開始位置と最終位置との間で交互に回転するプライマリシャフトであって、上記プライマリ軸が上記セカンダリ軸に対して傾斜して互いに対して第1の鋭角をなすように、上記セカンダリシャフト内に取り付けられるプライマリシャフトと、上記プライマリシャフトに固定して取り付けられるワイパーブレードアームであって、上記プライマリシャフトを介して上記フロントガラスに対して同様に交互に運動するようになっているワイパーブレードアームとを備える、フロントガラスワイパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両製造者は、安全性、視界性、空気力学的形状及び低消耗性を優先したフロントガラス設計を生み出している。これらの要件により、従来のフロントガラスワイパー装置では清掃するのが困難な湾曲形状がフロントガラスにもたらされている。
【0003】
特に、湾曲フロントガラスのグレージング加工面を清掃する場合、フロントガラスの表面上でワイパーブレードの適切な進入角を達成することが特に重要である。当該技術分野では、フロントガラスに対してワイパーブレードがなす進入角は、アタックアングルとしても知られている。アタックアングルαは、
図1及び
図2に概略的に示されている。アタックアングルαは、清掃経路の任意の地点における、ワイパーブレードの清掃リップ46の断面の対称軸48とフロントガラス52の表面に対する法線50との間で構成される角度と理解される。
【0004】
実質的に平坦であるか又は事実上認識不可能なほど僅かな曲率を有する中央領域を備えるが、対照的に側端部においては曲率が非常に著しく大きくなることを特徴とする、上述されたようなフロントガラスのタイプが存在する。これらの条件では、側端部の湾曲領域におけるワイパーブレードの不適切なアタックアングルが、装置のスイープ効率及び耐久性に影響を与える。
【0005】
最適なアタックアングルαは、ワイパーブレードの清掃リップ46の断面の対称軸48とフロントガラス52の表面に対する法線50との間でおよそ0度をなす角度である。不適切なアタックアングルによって、騒音が生じ、ワイパーブレードがフロントガラスの表面上でスキップし、清掃が不十分となるとともにフロントガラスワイパー装置全体に影響を及ぼす早期の摩耗が生じることが知られている。フロントガラスの寸法が大きいほど、この問題はより顕著なものとなる。
【0006】
上述の問題を解決するために、現在の技術水準でいくつかの解決策が検討されてきた。
【0007】
特許文献1は、アタックアングル補償装置が組み込まれた湾曲フロントガラスのためのフロントガラスワイパー装置を開示している。この装置は、ワイパーブレードを支持するプライマリ支持シャフトを備える。このプライマリシャフトは、ワイパーブレードのアタックアングルを変更するために旋回することもできるように、第2のピボットシャフトに取り付けられる。それでもなお、この装置は、一定の曲率を有するフロントガラスを清掃するためにのみ意図されたものである。したがって、この装置は、特にフロントガラスの側部領域において変化する曲率を有するフロントガラスを清掃するのに適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ワイパーブレードの全経路に沿って変化する曲率を有するフロントガラスを効果的に清掃するためにワイパーブレードのアタックアングルを補償することを可能にする、上記で示されたタイプのフロントガラスワイパー装置を提供することである。この装置は、ワイパーブレードのうちの少なくとも1つのワイパーブレードの経路の最後の部分において最も顕著な湾曲が始まるフロントガラスのために特に意図されている。さらに、アタックアングルを補償する結果として、この装置は、ワイパーブレードの全経路に沿ってワイパーブレードの騒音を低減するとともに早期の摩耗を防止する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、上記で示されたタイプのフロントガラスワイパー装置であって、上記駆動手段を上記セカンダリシャフトと運動学的に接続し、上記プライマリシャフトが上記開始プライマリ位置と上記最終プライマリ位置との間で回転の50%を終えたとき、上記セカンダリシャフトが上記開始セカンダリ位置と上記最終セカンダリ位置との間で回転の0%~30%を終えるように上記セカンダリシャフトの回転を引き起こす遅延装置を更に備えることを特徴とする、フロントガラスワイパー装置によって達成される。
【0011】
本発明において、プライマリシャフトの「開始プライマリ位置(starting primary position)」及びセカンダリシャフトの「開始セカンダリ位置(starting secondary position)」とは、それぞれ、フロントガラスワイパーが車両のフロントガラスの清掃動作を開始する前の待機状態にある場合のこれらの2つのシャフトの角度位置を指す。
【0012】
一方、プライマリシャフトの「最終プライマリ位置(final primary position)」及びセカンダリシャフトの「最終セカンダリ位置(final secondary position)」とは、それぞれ、フロントガラスワイパーが車両のフロントガラスの清掃の終端位置にある場合のこれらのシャフトの角度位置を指す。したがって、ワイパーブレードは、この最終位置から待機位置まで、すなわち開始プライマリ位置及び開始セカンダリ位置まで戻る動作を開始する。
【0013】
本発明に係る装置の利点は、プライマリシャフト及びセカンダリシャフトのそれぞれの軸を第1の鋭角をなして相対的に傾斜させた状態でプライマリシャフトをセカンダリシャフト内に組み付けることと、プライマリシャフトとセカンダリシャフトとを運動学的に接続する遅延装置を適用することとを組み合わせて、アタックアングルを補償することからなる。既に論じたように、軸間の傾斜は、セカンダリシャフトによってもたらされる回転と組み合わせて、フロントガラス上でのワイパーブレードのアタックアングルを最適化することを担う。一方、遅延装置は、ワイパーブレードアームの回転とともに非線形的にアタックアングルの補償を行うことを可能にする。したがって、清掃経路の最初の部分におけるワイパーブレードのアタックアングルの変化は非常に小さく、ワイパーブレードの経路の第2の部分におけるアタックアングルの変化よりも小さい。
【0014】
したがって、この遅延によってアタックアングルをフロントガラスの曲率に適合させることにより、ワイパーブレードがフロントガラスの側部により接近して動作するので、より顕著な曲率を有するフロントガラスを清掃することが可能になる。これにより、ワイパーブレードがワイパーブレードの清掃経路の最後の部分において表面上でスキップするリスクが回避されるか又は少なくとも大幅に低減される。スキップが排除される結果、フロントガラスは、全経路においてより効率的に清掃される。さらに、スキップが起こらないので、ワイパーブレードが受ける機械的応力がはるかに小さくなり、これにより、ワイパーブレードの耐用寿命が延長される。
【0015】
本発明は、従属請求項の対象である複数の好ましい特徴を更に含み、その有用性は、本発明の実施形態の詳細な説明において以下で強調される。
【0016】
装置を可能な限りコンパクトにするために、特に好ましい方式では、プライマリシャフトは、セカンダリシャフトの内側に同心に取り付けられる。
【0017】
フロントガラス、特に中央領域が平坦であるフロントガラスを清掃するために意図された特に好ましい実施形態において、上記プライマリシャフトが上記開始プライマリ位置と上記最終プライマリ位置との間で回転の50%を終えたとき、上記セカンダリシャフトは、上記開始セカンダリ位置と上記最終セカンダリ位置との間で回転の5%~23%を終えている。この比率は、例えばバスにおいて使用されるフロントガラス等の、大きな寸法を有するフロントガラスに特に適していることがわかっている。
【0018】
フロントガラスワイパー、特にエアロダイナミックフロントガラスワイパーの最後の部分の清掃を最適化することを意図する別の実施形態において、上記プライマリシャフトが上記開始プライマリ位置と上記最終プライマリ位置との間で回転の75%を終えたとき、上記セカンダリシャフトは、上記開始セカンダリ位置と上記最終セカンダリ位置との間で回転の65%を終えている。
【0019】
頑丈で耐摩耗性の機構を提案することが意図される一実施形態において、上記駆動手段は、モーターと、該モーターによって駆動される第1の平面四節リンク機構とを備え、該第1の四節リンク機構は、
[a]第1の原動節と、
[b]第1の伝達節と、
[c]上記プライマリ軸の周りに揺動するように取り付けられる第1の従動節であって、上記プライマリシャフトを交互に駆動するように上記プライマリシャフトに接続される第1の従動節と、
によって形成され、
上記遅延装置は、第2の平面四節リンク機構及び第3の平面四節リンク機構を備え、上記第2の四節リンク機構は、
[d]上記プライマリ軸の周りに揺動するように取り付けられる第2の原動節であって、該第2の原動節と第1の従動節とが一体として運動することができるように、互いに対して第2の角度をなして上記第1の従動節に運動学的に接続される第2の原動節と、
[e]第2の伝達節と、
[f]固定スイベル軸の周りに揺動するように取り付けられる第2の従動節と、
によって形成され、上記第3の四節リンク機構は、
[g]上記スイベル軸の周りに揺動するように取り付けられる第3の原動節であって、該第3の原動節と第2の従動節とが一体として運動することができるように、互いに対して第3の角度をなして上記第2の従動節に運動学的に接続される第3の原動節と、
[h]第3の伝達節と、
[i]上記セカンダリ軸の周りに揺動するように取り付けられる第3の従動節であって、上記セカンダリシャフトを交互に駆動するように上記セカンダリシャフトに接続される第3の従動節と、
によって形成され、
上記フロントガラスワイパーの開始位置において、上記第3の原動節と上記第3の伝達節とは、互いに対して-5度~+20度で構成される第4の角度をなして配置される。このタイプの機構の別の利点は、組立て公差への良好な適合性である。さらに、負の角度により、機構の後方移動が実際に認識されることなく遅延を大幅に増加させることが可能になる。実際、装置自体の遊びにより、負の角度は認識不可能なものになる。
【0020】
本発明において、平面四節リンク機構とは、機構の全ての関節点を通る平面上で動作を行う四節リンク機構を指す。当業者には既知であるように、四節リンク機構における4つの節のうちの1つは、機構の2つの不動点によって規定される節である。
【0021】
特に好ましい方式では、上記フロントガラスワイパーの上記開始位置におけるセカンダリシャフトの回転遅延を最大にするために、上記第3の原動節と上記第3の伝達節とは、互いに対して-5度~+10度で構成される第4の角度をなして配置される。
【0022】
別の実施形態において、第2の原動節と上記第1の従動節との間の上記第2の角度は、35度~55度で構成され、上記第3の原動節と上記第2の従動節との間の上記第3の角度(θ2)は、55度~75度で構成される。これにより、効果的かつコンパクトな機構がもたらされる。
【0023】
別の実施形態において、上記第1の四節リンク機構は、てこクランクタイプの機構であり、上記第2の四節リンク機構及び上記第3の四節リンク機構は、両てこタイプの機構である。
【0024】
四節リンク機構のタイプの機構において、てこクランク機構(crank-rocker mechanism)は、一端部が固定点にヒンジ接続された節のうちの1つ(原動節又は従動節)は完全な回転を行うことができるが、一端部が固定点にヒンジ接続されたもう1つの節(原動節又は従動節)は単に揺動する機構である。
【0025】
また、両てこ機構(double rocker mechanism)とは、端部のうちの一方が固定点にヒンジ接続された2つの節が単に揺動する機構である。
【0026】
特に好ましい実施形態において、上記第2の原動節と上記第2の伝達節との間の長さ比は、0.5~0.7で構成され、上記第2の原動節と上記第2の従動節との間の長さ比は、1.1~1.3で構成され、上記第2の原動節と上記プライマリ軸及び上記スイベル軸間の距離との長さ比は、1.1~1.3で構成され、それに対して、上記第3の原動節と上記第3の伝達節との間の長さ比は、0.4~0.6で構成され、上記第3の原動節と上記第3の従動節との間の長さ比は、0.7~0.9で構成され、上記第3の原動節と上記スイベル軸及び上記セカンダリ軸間の距離との長さ比は、0.6~0.8で構成される。
【0027】
製造をより単純にすることを目指す実施形態において、特に好ましい方式では、上記プライマリ軸と上記セカンダリ軸とは同一平面上にある。
【0028】
本発明によって検討される別の目的は、装置の可能な限り最も円滑な動作を提供することからなる。このために、特に好ましい実施形態において、プライマリ軸が上記セカンダリ軸に対して傾斜して、互いに対して12度~32度で構成される上記第1の鋭角をなす。
【0029】
また、本発明は、本発明の実施形態の詳細な説明及び添付図面に示される細部の他の特徴も含む。
【0030】
本発明の更なる利点及び特徴は、いかなる限定的な性質も伴わずに、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態が開示される以下の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】0度のアタックアングルを示す、フロントガラスワイパーのワイパーブレードの断面図である。
【
図2】0度ではないアタックアングルでの
図1のワイパーブレードの断面図である。
【
図3】本発明に係る変化する曲率を有するフロントガラスのためのフロントガラスワイパー装置の底面図である。
【
図5】
図3の装置のアタックアングルを補償する機構が設けられるワイパーブレードの領域の詳細な正面図である。
【
図6】
図3の装置のアタックアングルを補償する機構が設けられるワイパーブレードの領域の詳細な上面図である。
【
図7】
図5の平面VII-VIIに沿った切断図である。
【
図8】
図5の平面VIII-VIIIに沿った切断図である。
【
図9A】原動節が0度位置にある、
図3の装置の部分正面図である。
【
図9B】原動節が90度位置にある、
図3の装置の部分正面図である。
【
図9C】原動節が180度位置にある、
図3の装置の部分正面図である。
【
図10A】原動節が0度位置にある、
図3の装置の部分背面図である。
【
図10B】原動節が90度位置にある、
図3の装置の部分背面図である。
【
図10C】原動節が180度位置にある、
図3の装置の部分背面図である。
【
図11A】駆動クランクが0度位置にある、
図3の装置の詳細な正面図である。
【
図11B】駆動クランクが90度位置にある、
図3の装置の詳細な正面図である。
【
図11C】駆動クランクが180度位置にある、
図3の装置の詳細な正面図である。
【
図12A】駆動クランクが0度位置にある、
図3の装置の詳細な背面図である。
【
図12B】駆動クランクが90度位置にある、
図3の装置の詳細な背面図である。
【
図12C】駆動クランクが180度位置にある、
図3の装置の詳細な背面図である。
【
図13】フロントガラスワイパー装置の駆動モーターの回転角度に対する、ワイパーブレードのアタックアングルの変更を担うセカンダリシャフトの回転角度の展開を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図3~
図12cは、本発明に係る変化する曲率を有するフロントガラスのためのフロントガラスワイパー装置1の一実施形態を示している。
【0033】
この実施形態の装置1は、2つのワイパーブレードを備えるフロントガラスワイパー装置であって、ワイパーブレードのうちの1つにつき1つのアタックアングル補償システムを備える、フロントガラスワイパー装置からなる。
【0034】
装置1は、概して、歯車駆動装置40を備えるモーター38からなる主駆動手段10を備え、モーター38は、車両のシャーシに固定される支持体42に取り付けられる。
【0035】
モーター38は、双方のワイパーブレードアームを既知の方式で駆動することを担う。ワイパーブレードアームと、ひいてはワイパーブレードとは、図面に示されていない。
【0036】
モーター38に加えて、駆動手段10は、モーター38自体によって駆動される第1の平面四節リンク機構12を備える。この第1の四節リンク機構12は、双方のワイパーブレードアームに関して同様であり、歯車駆動装置40の出力に接続される第1の原動節14と、第1の伝達節16と、第1の従動節18とによって形成される。第1の原動節14は、モーター38によって連続駆動されて360度回転する。第1の原動節14の回転は、第1の伝達節16を介して第1の従動節18に伝達される。第1の従動節18は、プライマリ軸4の周りで揺動するように取り付けられるとともに、プライマリシャフト2を交互に駆動するようにこのプライマリシャフト2に接続される。このプライマリシャフト2は、正確には、図面には示されていないワイパーブレードアームを支持することを担うものである。
【0037】
第1の四節リンク機構12は、てこクランクタイプの機構である。このタイプの機構は、フロントガラスワイパーの分野で広く知られており、したがって、より詳細に記載する必要はない。
【0038】
【0039】
図8に見られるように、ワイパーブレードアームが取り付けられるプライマリシャフト2は、プライマリ軸4がセカンダリ軸8に対して傾斜して互いに対して第1の鋭角βをなすように、セカンダリ軸8に対して傾斜してセカンダリシャフト6内に取り付けられる。より詳細には、プライマリ軸4とセカンダリ軸8とは、同一平面上にある。特に好ましい方式では、第1の鋭角βは、12度~32度で構成される。特に、この好ましい実施形態において、プライマリ軸とセカンダリ軸との間の第1の鋭角βは、22度である。
【0040】
駆動手段10によって、ひいては第1の従動節18の動作によって、プライマリシャフト2は、固有のプライマリ軸4の周りに、
図9A、
図10A、
図11A及び
図12Aに示される開始プライマリ位置と、
図9C、
図10C、
図11C及び
図12Cに示される最終プライマリ位置との間で交互に回転することができる。開始プライマリ位置は、フロントガラスワイパーが車両のフロントガラスの清掃動作を開始する前の待機状態にある場合のプライマリシャフト2の位置に対応する。また、最終プライマリ位置は、フロントガラスワイパーが車両のフロントガラスの清掃の終端位置にある場合のプライマリシャフト2の角度位置に対応する。
【0041】
既に論じたように、対応するワイパーブレードアームは、このワイパーブレードアームがプライマリシャフト2を介してフロントガラスに対して同様に交互に運動するように、プライマリシャフト2に取り付けられる。
【0042】
特に、端部においてより大きな曲率を有するフロントガラスの場合に、変化する曲率を有するフロントガラスをワイパーブレードの全経路において効果的に清掃することを可能にするアタックアングル補償システムを備えるフロントガラスワイパー装置1を提供するために、本発明は、駆動手段10とセカンダリシャフト6とが一体として運動することができるように、駆動手段10をセカンダリシャフト6と運動学的に接続する遅延装置44を設けている。この場合において、図面のフロントガラスワイパー装置は、ただ1つの遅延装置44を組み込んでいる。代替的には、フロントガラスワイパー装置は、ワイパーブレードそれぞれにつき1つの遅延装置44を備えることができる。
【0043】
この好ましい実施形態において、この遅延装置44は、第2の平面四節リンク機構20及び第3の平面四節リンク機構30を備える。これらの第2の四節リンク機構20及び第3の四節リンク機構30は、両てこタイプの機構である。
【0044】
したがって、第2の四節リンク機構20は、60mm長の第2の原動節22によって形成される。第2の原動節22は、プライマリ軸4の周りに揺動するように取り付けられ、第2の原動節22と第1の従動節18とが一体として運動することができるように、互いに対して45度の第2の角度θ1をなして第1の従動節18に運動学的に接続される。第2の機構は、100mm長の第2の伝達節24及び50mm長の第2の従動節26も備える。第2の従動節26は、固定スイベル軸28の周りに揺動するように取り付けられる。
【0045】
第3の四節リンク機構30は、32mm長の第3の原動節32と、70mm長の第3の伝達節34と、40mm長の第3の従動節36とによって形成される。第3の原動節32は、スイベル軸28の周りに揺動するように取り付けられ、第3の原動節32と第2の従動節26とが一体として運動することができるように、互いに対して67度の第3の角度θ2をなして第2の従動節26に運動学的に接続される。第3の従動節36は、セカンダリ軸8の周りに揺動するように取り付けられ、セカンダリシャフト6を交互に駆動するようにセカンダリシャフト6に接続される。
【0046】
図9A、
図10A、
図11A及び
図12Aに見られるように、フロントガラスワイパーの開始位置において、すなわちワイパーブレードアームが待機状態にあるとき、第3の原動節32と第3の伝達節34とは、互いに対して-5度~+20度、より好ましくは-5度~10度で構成される第4の角度θ3をなして配置される。特に、
図12Aに示される角度θ3は、正の角度である。
【0047】
本発明に係る装置の動作を、下記の表に基づいてより詳細に説明する。プライマリシャフト2は、固有のプライマリ軸4の周りに回転することに加えて、アタックアングルを補償するセカンダリシャフト6の回転の結果としても回転するので、プライマリシャフト2の回転角度を測定してこのシャフトの回転のパーセンテージを評価することは困難であることを指摘しておかなければならない。それでもなお、後述するように、モーター38の軸の回転角度及び第1の原動節14の回転角度に基づいて、プライマリシャフト2の回転のパーセンテージの間接的な測定を行うことができる。
【0048】
本発明に係るフロントガラスワイパー装置1の開始位置は、
図9A、
図10A、
図11A及び
図12Aに示されている。この位置において、プライマリシャフト2は、第1の原動節14の回転の0度並びにプライマリシャフト2及びセカンダリシャフト6の回転の0度に対応する開始プライマリ位置にある。
【0049】
セカンダリシャフト6の回転及びフロントガラスワイパーのモーターの駆動シャフトの回転に基づいて測定されたプライマリシャフト2の回転のパーセンテージ及びセカンダリシャフト6の回転のパーセンテージを関係付ける表が、以下に示される。
【0050】
【0051】
上記表に見られるように、遅延装置44の結果として、モーター38が第1の原動節14を90度回転させたとき(
図9B、
図10B、
図11B及び
図12B)、プライマリシャフトは、開始プライマリ位置と最終プライマリ位置との間で構成される回転の50%を終えている。この90度の回転は、プライマリシャフト2の45度の回転に相当する。遅延装置44の結果として、セカンダリシャフト6は、単に6度~7度の回転を終えるように回転を行う。この回転は、開始セカンダリ位置と最終セカンダリ位置との間でのセカンダリシャフト6の回転のパーセンテージの約19.3%に相当する。
【0052】
一方で、プライマリシャフト2が開始プライマリ位置と最終プライマリ位置との間で構成される回転の75%(67度を僅かに超える角度に相当する)を終えたとき、セカンダリシャフトは、開始セカンダリ位置と最終セカンダリ位置との間で21度の回転(回転のパーセンテージの約62.2%に相当する)を終える。
【0053】
したがって、セカンダリシャフト6の回転の結果としてもたらされるワイパーブレードのアタックアングルαの変更の大部分は、ワイパーブレードアームの経路の後半において実現され、経路の最後の部分において顕著な曲率変化を有するフロントガラスの場合に、より有利な動作が得られる。この動作原理は、
図13に図式的に示されている。
図13は、モーター38のシャフトに対するセカンダリシャフト6の回転比を示している。これは、最も容易に測定することができる角度であり、プライマリシャフト2が50%回転した後、アタックアングルの補償を担うセカンダリシャフト6の回転の最も重要な部分がどのように行われ、それにより、側端部においてより大きな曲率を有するフロントガラスの幾何形状により良好に適合するかを示している。
【0054】
最終的に、
図9C、
図10C、
図11C及び
図12Cに示されるように第1の原動節14が180度回転すると、プライマリシャフト2及びセカンダリシャフト6の双方が、それぞれの最終プライマリ位置及び最終セカンダリ位置に到達する。
【0055】
この時点から、第1の原動節14が360度の回転を完了するように回転を続ける場合、開始位置に向かうワイパーブレードアームの後方移動が開始する。
【0056】
特に好ましい方式では、本発明に従って課題を解決するのに最適な長さ比は、第2の原動節22と第2の伝達節24との比が0.5~0.7で構成される場合、第2の原動節22と第2の従動節26との比が1.1~1.3で構成される場合、並びに、第2の原動節22とプライマリ軸4及びスイベル軸28間の距離との比が1.1~1.3で構成される場合に得られることを述べておかなければならない。より詳細には、この例において、プライマリ軸4及びスイベル軸28間の距離は50mmである。
【0057】
一方で、第3の原動節32と第3の伝達節34との間の最適な長さ比は、0.4~0.6で構成され、第3の原動節32と第3の従動節36との間の最適な長さ比は、0.7~0.9で構成され、第3の原動節32とスイベル軸28及びセカンダリ軸8間の距離との最適な長さ比は、0.6~0.8で構成される。より詳細には、この例において、スイベル軸28及びセカンダリ軸間の距離は、50mmである。