(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】IL-10の免疫刺激特性および抗炎症特性を調節するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20220608BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220608BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20220608BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220608BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20220608BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220608BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220608BHJP
A61K 47/55 20170101ALI20220608BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220608BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20220608BHJP
【FI】
A61K38/20 ZNA
C07K19/00
C07K14/54
C07K16/00
A61K47/65
A61P37/04
A61P29/00
A61K47/55
A61K47/68
C12N15/24
(21)【出願番号】P 2018566552
(86)(22)【出願日】2017-06-22
(86)【国際出願番号】 US2017038747
(87)【国際公開番号】W WO2018005226
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-16
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510185033
【氏名又は名称】アルカームス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムスターカス、ディミトリ、ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ナムチュク、マーク、エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ロージー、ヘザー、シー.
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス、ファン、シー.
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0316404(US,A1)
【文献】J Biol Chem,2006年,Vol.281, No.46,pp.35088-35096
【文献】J Exp Med,2000年,Vol.191, No. 2,pp.213-223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/00-38/58
A61K47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
(第1単量体サブユニット)-LINKER-(第2単量体サブユニット)
に従うN末端からC末端までのアミノ酸配列配置を含むscIL-10ポリペプチドであって、
式中、前記第1単量体サブユニットおよび前記第2単量体サブユニットは、独立して、配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1のアミノ酸配列に22位、41位、87位及びこれらを組み合わせた位置から選択される位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列から選択され、但し、前記第1単量体サブユニットまたは前記第2単量体サブユニットの少なくとも1つは、少なくとも1つのアミノ酸置換を含み;
前記LINKERは、5~15アミノ酸長のアミノ酸リンカーであり;
前記アミノ酸置換は、IL-10R1又はIL-10R2と接するscIL-10のアミノ酸またはIL-10R1およびIL-10R2の両方と接するアミノ酸の置換を含み;
41位のアスパラギン酸が、前記第1単量体サブユニットまたは前記第2単量体サブユニット上で置換されるが、両方の単量体サブユニット上では置換されない、scIL-10ポリペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸置換が、22位のメチオニンおよび41位のアスパラギン酸並びにそれらの任意の組み合わせから選択されるアミノ酸の置換を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
22位のメチオニンが、41位のアスパラギン酸の置換を含む単量体サブユニットと同じではない1つの単量体サブユニット上のみで置換される、請求項
1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記アミノ酸置換が87位のイソロイシンを含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記アミノ酸置換が、22位のメチオニンからアラニンへ(M22A);41位のアスパラギン酸からアスパラギンへ(D41N);41位のアスパラギン酸からアラニンへ(D41A);及び41位のアスパラギン酸からフェニルアラニンへ(D41F)の置換から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記scIL-10がヒンジ領域IgG1に融合されている融合パートナーを含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記scIL-10がIgG1の修飾されたヒンジ領域に融合されており、前記ヒンジ領域の修飾が前記IgG1のヒンジ領域からの1~10個のアミノ酸の欠失である、融合パートナーを含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記scIL-10がムチンリンカーを介してIgG1の前記ヒンジ領域に融合されている融合パートナーを含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記ムチンリンカーが、MUC20のタンデムリピートであるアミノ酸配列を含む、請求項
8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
配列番号20~21および配列番号37~44からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項11】
配列番号17、18および19からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記scIL-10が、融合パートナーに共有結合している、請求項1に記載のポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
IL-10は、炎症性メディエータの産生を強く阻害する強力な抗炎症性サイトカインであると考えられている。しかしながら、最近の試験は、IL-10がCD4+、CD8+T細胞および/またはNK細胞への免疫刺激特性も有しており、IFN-γ産生の増加をもたらし、これが次に、ヒトにおいて関連する炎症反応を引き起こし得ることを示唆している。
【0002】
このサイトカインが治療的に価値のある生物学的物質であることを示唆する有望な前臨床データにもかかわらず、慢性炎症におけるIL-10投与の利点を評価する臨床試験の結果は、圧倒的に期待外れなものであった。IL-10またはIL-10受容体欠損を有する患者の前臨床データおよび分析の大部分は、内因性に産生されたIL-10を強力で有意な抗炎症決定因子として明確に指摘する。しかしながら、徹底的な分析は、IL-10がインビボでの炎症環境において全く対照的な特性を獲得する可能性を有することをさらに示唆する。近年、特にその抗炎症能を考慮して、IL-10投与後のヒトの応答を確認するためにいくつかの試験が実施されている。これらの臨床的に重要な試験は、IL-10の複雑な前炎症機能を開示した。しかし、IL-10の免疫刺激作用の基礎は依然として不明である。
【0003】
他方で、IL-10は、増殖性障害、例えば癌、腫瘍等の治療における使用が検討されている。IL-10は、CD8 T細胞の細胞傷害活性、B細胞の抗体産生を誘導し、マクロファージ活性および腫瘍促進性炎症を抑制する。IL-10は、CD8+T細胞の腫瘍への浸潤を増加させるだけでなく、腫瘍免疫において役割を果たす炎症性サイトカインの発現を増加させると考えられる。IL-10での処置は、腫瘍治療のための有意な改善を提供し得る。
【0004】
IL-10を使用すること、特に治療において何らかの形態の組換えIL-10を使用することの1つの難点は、その短い血清半減期である。IL-10などの治療用タンパク質の血清半減期を増加させるための1つの戦略は、タンパク質を抗体のFc(結晶化可能なフラグメント)ドメインに結合させることである。そのような融合タンパク質の多くは、ホモ二量体またはヘテロ二量体を形成し、それにより、抗体様の融合タンパク質分子を形成することができる。
【0005】
治療用途に応じて、IL-10の抗炎症活性または免疫刺激活性のいずれかを選択的に増強できることが望ましい。また、組換えIL-10の半減期を増加させることも望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、IL-10の免疫刺激特性および/または抗炎症特性を調節するための組成物および方法を提供する。本発明は、式1のscIL-10ポリペプチドを提供する。本発明のポリペプチドは、融合パートナーに連結されていてもよい。
【0007】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示されるように、本発明の好ましい実施形態についての以下のより詳細な説明から明らかになり、図面中の同様の参照符号は、異なる図面を通して同じ部分を指す。図面は、必ずしも縮尺を重視するものではなく、その代わりに、本発明の基本的原理を示すことに重点を置いている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、2つのポリペプチド鎖のFc融合タンパク質ホモ二量体の略図であり、各ポリペプチド鎖はXとしてscIL-10を含み、scIL-10は、その後、scCLCH1リンカーを介してIgG1抗体のFc領域に融合される。
【
図2】
図2は、2つのポリペプチド鎖のFc融合タンパク質ホモ二量体の略図であり、各ポリペプチド鎖はscIL-10を含み、scIL-10は、その後、新規scCH1CLリンカーを介してIgG1抗体のFc領域に融合される。
【
図3】
図3は、還元および非還元条件下で、新規scCLCH1リンカー(左)または新規scCH1CLリンカー(右)を介してIgG1抗体のFc領域に融合されたscIL-10を含むFc融合タンパク質の発現を示すSDS-PAGEである。
【
図4】
図4は、分析ゲルろ過による、新規scCLCH1リンカーを介してIgG1抗体のFc領域に融合されたIL-10の特性付けを示すクロマトグラムである。
【
図5】
図5は、分析ゲルろ過による、新規scCH1CLリンカーを介してIgG1抗体のFc領域に融合されたIL-10の特性付けを示すクロマトグラムである。
【
図6】
図6は、対照として使用したscIL-10直接Fc融合タンパク質と比較した、本発明のIL-10一本鎖融合タンパク質によるマウス肥満細胞株MC/9の刺激を示すグラフである。
【
図7】
図7は、2つのIL-10R1界面の一方または両方を破壊するアミノ酸置換の影響の概略図である(配列番号20、21および22)。
【
図8】
図8は、2つのIL-10R2界面の一方または両方を破壊するアミノ酸置換の影響の概略図である(配列番号23、24および25)。
【
図9】
図9は、IL-10R1界面の1つおよびIL-10R2界面の1つを同時に破壊するアミノ酸置換の影響の概略図である(配列番号26~29)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
「ポリペプチド」とは、長さ、翻訳後修飾または機能にかかわらず、2つ以上のアミノ酸の任意の配列を意味する。「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では交換可能に使用される。ポリペプチドは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸を含み得る。ポリペプチドはまた、種々の標準的な化学的方法のいずれかで修飾することができる(例えば、アミノ酸を保護基で修飾することができ、カルボキシ末端アミノ酸を末端アミド基にすることができ、アミノ末端残基を、例えば親油性を増強するための基で修飾することができ、またはポリペプチドを、安定性もしくはインビボ半減期を増加させるために化学的にグリコシル化するかさもなければ修飾することができる)。ポリペプチド修飾は、環状化合物または他の分子などの別の構造のポリペプチドへの結合を含むことができ、また、1つ以上のアミノ酸を変化した立体配置(すなわちRもしくはS;またはLもしくはD)で含むポリペプチドも含み得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、「抗体」および「免疫グロブリン」は交換可能に使用され、抗原に特異的に結合して認識する、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチドまたは免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメントを指す。同定された免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子ならびに数え切れないほどの免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεとして分類され、これらはそれぞれ、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを規定する。抗体技術分野の当業者によって理解される用語は、本明細書において異なる定義が明白に示されない限り、それぞれ当技術分野で獲得された意味を有する。抗体は、可変領域、ヒンジ領域および定常ドメインを有することが公知である。免疫グロブリンの構造および機能は、例えばHarlow et al,Eds.,Antibodies:A Laboratory Manual,Chapter 14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,1988)に総説されている。
【0011】
本明細書中の「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を達成するために配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後に、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさずに、選択配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて、当業者の技術範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0012】
「mg/kg」または「kg当たりのmg」という表記は、ミリグラム/キログラムを意味する。全ての表記は、本開示を通じて交換可能に使用される。
【0013】
ポリペプチドの「半減期」は、一般に、ポリペプチドの血清濃度が、例えばポリペプチドの分解および/または天然の機構によるポリペプチドのクリアランスもしくは隔離のために、インビボで50%減少するのに要する時間として定義することができる。半減期は、薬物動態解析などのそれ自体公知の任意の方法で決定することができる。適切な技術は、当業者には明らかであり、例えば、一般に、適切な用量のポリペプチドをげっ歯動物または霊長動物に投与する工程;げっ歯動物または霊長動物から定期的な間隔で血液試料または他の試料を採取する工程;前記血液試料中のポリペプチドのレベルまたは濃度を決定する工程;およびこのようにして得られたデータ(のプロット)から、ポリペプチドのレベルまたは濃度が投与後の初期レベルと比較して50%減少するまでの時間を計算する工程を含み得る。半減期を測定する方法は、例えば、Kenneth et al.,Chemical Stability of Pharmaceuticals:A Handbook for Pharmacists(1986);Peters et al.,Pharmacokinete analysis:A Practical Approach(1996);および“Pharmacokinetics”,M Gibaldi&D Perron,published by Marcel Dekker,2nd Rev.edition(1982)に見出され得る。
【0014】
生物学的マトリックス(血液、血清、血漿、組織)中の存在が、インビボで、適切な対照と比較してより長期間持続する場合、融合ポリペプチドの半減期は増加している。半減期は、適切な対照と比較して10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上増加させ得る。
【0015】
半減期は、t1/2-α、t1/2-βおよびHL_Lambda_zなどのパラメータを使用して表すことができる。本明細書において、「半減期の増加」とは、これらのパラメータのいずれか1つ、これらのパラメータのいずれか2つ、またはこれらのパラメータの3つ全ての増加を指す。「半減期の増加」とは、特に、t1/2-αの増加を伴うかまたは伴わないt1/2-βおよび/またはHL_Lambda_zの増加を指す。評価することができる他のPKパラメータには、分布容積(VD)、クリアランス(CL)、平均滞留時間(MRT)および曲線下面積(AUC)が含まれる。本明細書において、「薬物動態の変化」とは、上記に列挙した半減期パラメータの変化の存在下または不在下での、これらのパラメータのいずれか1つ、これらのパラメータのいずれか2つ、これらのパラメータのいずれか3つ、またはこれらのパラメータの4つ全ての変化を指す。
【0016】
本明細書の目的のための「活性」は、対応する天然の活性タンパク質の成分と一致するが必ずしも同一ではない融合タンパク質の成分の活動または作用を指し、「生物学的活性」または「生物活性」は、受容体結合、アンタゴニスト活性、アゴニスト活性または細胞応答もしくは生理学的応答を含むがこれらに限定されない、インビトロまたはインビボの生物学的機能または作用を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「二量体複合体」は、sc-IL-10または、例えば本発明のscIL-10-L1-HINGE-Fc融合タンパク質などの適切な融合パートナーに融合したsc-IL-10の2つの一本鎖を含み、2つの一本鎖ポリペプチドは、非共有結合または共有結合のいずれかを介して、例えばジスルフィド架橋によって、適切な条件下で共に結合される。本明細書で交換可能に使用される「ヘテロ二量体タンパク質」、「ヘテロ二量体複合体」または「ヘテロ二量体」とは、二量体複合体を形成する2つの一本鎖scIL-10-L1-HINGE-Fcポリペプチドから作られるタンパク質を指し、前記2つの一本鎖ポリペプチドは異なるアミノ酸配列を有する。例えば、ヘテロ二量体の1つの一本鎖ペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸置換を有する式Iに基づくscIL-10を有し、ヘテロ二量体の他の一本鎖ペプチドは、アミノ酸置換のない式1に基づくscIL-10配列を有する。本明細書で交換可能に使用される「ホモ二量体タンパク質」、「ホモ二量体複合体」または「ホモ二量体」とは、二量体複合体を形成する2つの同一または実質的に同一のポリペプチドから作られるタンパク質を指し、前記2つの一本鎖ポリペプチドは、好ましくは100%の同一性を共有する。ホモ二量体が、少なくとも約95%または少なくとも約99%の同一性を有する2つの実質的に同一のポリペプチドを含み、2つのポリペプチド鎖の間の任意のアミノ酸の相違が、例えば保存的アミノ酸置換などの、ホモ二量体のそのパートナーポリペプチドと比較してポリペプチドの機能的および物理的特性に影響を及ぼさないアミノ酸の置換、付加または欠失を含む状況が、特により大きなポリペプチドに関して存在する。
【0018】
本明細書で使用される場合、タンパク質は、そのようなポリペプチドを発現する細胞の膜にポリペプチドを固定するまたは組み込む膜貫通ドメインまたはタンパク質ドメインを欠く場合、「可溶性」である。
【0019】
本明細書で使用される場合、本発明のscIL-10-L1-HINGE-Fc融合タンパク質を表すために本明細書中で交換可能に使用され得るような「Fcドメイン」、「Fc領域」または「Fc部分」は、定常領域のフラグメント、類似体、変異体、突然変異体または誘導体を含む、免疫グロブリン、好ましくはヒト免疫グロブリンの定常領域に由来するドメインを包含する。適切な免疫グロブリンには、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、ならびにIgA、IgD、IgEおよびIgMなどの他のクラスが含まれる。免疫グロブリンの定常領域は、免疫グロブリンC末端領域に相同な天然に存在するまたは合成的に作製されたポリペプチドとして定義され、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはCH4ドメインを別々にまたは組み合わせて含むことができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療する」または「緩和する」または「改善する」は、本明細書では交換可能に使用される。これらの用語は、治療的利益および/または予防的利益を含むがこれらに限定されない有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療的利益とは、治療される基礎疾患の根絶または改善を意味する。また、治療的利益は、基礎疾患に関連する生理学的症状の1つ以上の根絶または改善によって達成され、その結果、被験体が依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、被験体において改善が認められる。
【0021】
予防的利益のために、組成物は、特定の疾患の診断がなされていない場合でも、この特定の疾患を発症する危険性のある被験体に、または疾患の生理学的症状の1つ以上を報告している被験体に投与され得る。
【0022】
本明細書で使用される「治療効果」は、本発明の融合タンパク質によってもたらされる、ヒトもしくは他の動物における疾患の治癒、緩和、改善もしくは予防を含むがこれらに限定されない生理学的効果、またはさもなければヒトもしくは動物の肉体的または精神的健康を高めることを指す。
【0023】
本明細書で使用される「治療有効量」および「治療有効用量」という用語は、単独または融合タンパク質組成物の一部としての活性タンパク質の量であって、被験体に単回または反復投与で投与された場合に疾患状態または状況の任意の症状、態様、測定されたパラメータまたは特性に何らかの検出可能な有益作用を及ぼすことができる量を指す。そのような効果は、有益であるために絶対的である必要はない。
【0024】
本明細書で使用される「治療有効用量レジメン」という用語は、単独でまたは融合タンパク質組成物の一部としての活性タンパク質の連続的に投与される用量のスケジュールを指し、ここで、用量は、疾患状態または状況の任意の症状、態様、測定されたパラメータまたは特性に持続的な有益効果をもたらす治療有効量で投与される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「抗炎症ウィンドウ」は、(CD8 T細胞、NK細胞等への)免疫刺激作用を誘導せずに、PBMC/マクロファージへの抗炎症作用を生じるscIL-10濃度の範囲として定義される。例えば、例では、2つのアッセイを用いてこれらの2つの生物活性の効力を定義する:
1)PBMCサイトカイン放出アッセイ:TNF-アルファ(TNFα)の放出の阻害によって測定される抗炎症作用が起こる濃度のIC50値(通常は低ピコモル濃度範囲)を生じる;および
2)MC/9増殖アッセイ:免疫刺激作用が起こる濃度のEC50値(通常は高ピコモルからナノモル範囲)を生じる。
【0026】
表11および12の比率は、(MC/9 EC50)/(PBMC IC50)値の比である。これらの2つのアッセイは、2つのタイプの活性の近似を示す。IL-10は、LPS刺激時の前炎症性サイトカインの放出を抑制するためにPBMC内の細胞集団を標的とし、およびIL-10は、その免疫刺激作用に関連する濃度でMC/9細胞の増殖を駆動する。本発明の分子の抗炎症ウィンドウサイズに対処するために使用し得る多くの他の潜在的アッセイが存在する。しかし、scIL-10の免疫刺激作用および抗炎症作用の両方が、より多くの細胞型において生じることが理解される。
【0027】
scIL-10
ヒト野生型IL-10(wtIL-10)は、2つの同一の単量体サブユニットを含む非共有結合した二量体タンパク質である。ヒト野生型IL-10(wtIL-10)の各々の同一の単量体サブユニットは、以下のアミノ酸配列を有する(リーダー配列は存在しない):
SPGQGTQSENSCTHFPGNLPNMLRDLRDAFSRVKTFFQMKDQLDNLLLKESLLEDFKGYLGCQALSEMIQFYLEEVMPQAENQDPDIKAHVNSLGENLKTLRLRLRRCHRFLPCENKSKAVEQVKNAFNKLQEKGIYKAMSEFDIFINYIEAYMTMKIRN(配列番号1)(IL 10のUniProtKB-P22301[鎖19~178]、インターロイキン10、ヒト(Homosapiens))。配列番号1は、本明細書では「非置換IL-10単量体サブユニット」とも称される。少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、配列番号1に基づくアミノ酸配列は、本明細書では「置換IL-10単量体サブユニット」と称される。
【0028】
式1のポリペプチドは、本明細書では「scIL-10」ポリペプチドと称され、式1に従うN末端からC末端までのアミノ酸配列配置を含む:
(第1単量体サブユニット)-LINKER-(第2単量体サブユニット)
式1
[式中、第1単量体サブユニット、第2単量体サブユニットまたは第1および第2の両方の単量体サブユニットは、独立して、非置換IL-10単量体サブユニット、または少なくとも1つのアミノ酸置換を含む置換IL-10単量体サブユニットから選択され得;ならびに
LINKERは、少なくとも1~100アミノ酸長の任意のアミノ酸リンカーである]。
【0029】
好ましくは、LINKERは、少なくとも2個のアミノ酸と100個未満のアミノ酸の間、例えば少なくとも2個のアミノ酸と75個未満のアミノ酸の間、より好ましくは少なくとも3個のアミノ酸と50個未満のアミノ酸の間、例えば少なくとも4個のアミノ酸と25個未満のアミノ酸の間、例えば少なくとも5個のアミノ酸と20個未満のアミノ酸の間、さらにより好ましくは少なくとも6個のアミノ酸と15個未満のアミノ酸の間の長さを有する。より好ましくは、リンカーは、少なくとも3個のアミノ酸と10個未満のアミノ酸の間の長さを有する。最も好ましくは、リンカーは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸の長さを有する。好ましくは、リンカーは、可撓性リンカーである。好ましくは、可撓性リンカーは、アミノ酸のグリシン、アスパラギンおよび/またはセリンを含むかまたはこれらからなる。より好ましくは、可撓性リンカーは、アミノ酸グリシンおよびセリンを含むかまたはこれらからなる。
【0030】
好ましくは、式1の第1単量体サブユニットおよび第2単量体サブユニットは、両方とも非置換IL-10単量体サブユニットであり、各々が配列番号1のアミノ酸配列を有する。これらのペプチドは、本明細書では「非置換scIl-10」とも称される。
【0031】
好ましくは、式1のscIL-10ペプチドは、式1の第1単量体サブユニット、式1の第2単量体サブユニットのいずれか、または式1の第1および第2の両方の単量体サブユニットに少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。配列番号1のヒトwtscIL-10と比較して置換単量体サブユニットを含むこれらのscIL-10タンパク質は、本明細書では「scIL-10変異体」とも称される。
【0032】
本発明の好ましいscIL-10ペプチドは、本明細書では「非置換scIL-10(10aaリンカー)」と称され、以下のアミノ酸配列を有する:
SPGQGTQSENSCTHFPGNLPNMLRDLRDAFSRVKTFFQMKDQLDNLLLKESLLEDFKGYLGCQALSEMIQFYLEEVMPQAENQDPDIKAHVNSLGENLKTLRLRLRRCHRFLPCENKSKAVEQVKNAFNKLQEKGIYKAMSEFDIFINYIEAYMTMKIRNGGSGGGGSGGSPGQGTQSENSCTHFPGNLPNMLRDLRDAFSRVKTFFQMKDQLDNLLLKESLLEDFKGYLGCQALSEMIQFYLEEVMPQAENQDPDIKAHVNSLGENLKTLRLRLRRCHRFLPCENKSKAVEQVKNAFNKLQEKGIYKAMSEFDIFINYIEAYMTMKIRN(配列番号29 3501)または(配列番号2)に50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列。アミノ酸179~188の2つのIL-10サブユニットの間の10アミノ酸のリンカーを下線で示している。他の共有結合したIL-10二量体タンパク質は、任意の適切な可撓性ペプチドリンカーを含んでいてもよく、また、配列番号2の下線を引いた配列よりも長くても短くてもよいことが理解される。
【0033】
配列番号2によって表されるscIL-10(10aaリンカー)は、各々が配列番号1のアミノ酸配列を含む2つの非置換scIL-10単量体サブユニットおよび式1のようにLINKERを含み、ここで、LINKERは、配列:GGSGGGGSGG(配列番号3)を有する10アミノ酸長である。好ましくは、scIL-10のLINKERは、配列番号3ではない。
【0034】
式1の他の好ましい非置換scIL-10ペプチドには、LINKERが、本明細書では「非置換sc-IL10(5aaリンカー)」とも称される5アミノ酸リンカーであるペプチドが含まれる。1つの好ましい5アミノ酸リンカーは、配列:GGSGG(配列番号4)である。
【0035】
式1の他の好ましい非置換scIL-10ペプチドには、LINKERが、本明細書では「非置換sc-IL10(3aaリンカー)」とも称される3アミノ酸リンカーであるペプチドが含まれる。1つの好ましい3アミノ酸リンカーは、配列GGGである。
【0036】
本発明は、一部には、式1によって表される非置換scIL-10および同じく式1によって表される少なくとも1つのアミノ酸置換を含むscIL-10(「scIL-10変異体」)を含む融合タンパク質が、広い抗炎症ウィンドウを有するという発見に基づく。本発明はまた、一部には、非置換scIL-10の特定のアミノ酸置換が免疫刺激EC50をさらに増加させるという発見に基づく。低い抗炎症IC50を維持しながら免疫刺激EC50を増加させる能力は、例えば野生型IL-10または本発明に従って修飾されていないIL-10を含む他の融合タンパク質と比較して、抗炎症ウィンドウサイズの桁違いの増加を提供する。
【0037】
いかなる理論にも限定されるものではないが、scIL-10とIL-10R1および/またはIL-10R2受容体との界面におけるアミノ酸置換は、IL-10の免疫刺激特性、抗炎症特性またはその両方の調節をもたらしたと考えられる。
【0038】
式1のscIL-10の第1単量体サブユニットの41位(配列番号1に基づく)のアスパラギン酸または第2単量体サブユニットの41位(配列番号1に基づく)のアスパラギン酸におけるアミノ酸置換は、scIL-10とそのIL-10R1受容体との界面の少なくとも1つを破壊し、それによって抗炎症ウィンドウの増加をもたらすscIL-10の免疫刺激効力を有意に弱めながら、抗炎症効力をわずかに減弱させることが見出された。第1または第2単量体サブユニットのいずれか一方のIL-10R1との1つの界面でscIL-10を破壊し、またIL-10R1界面を破壊する突然変異と同じではない第1または第2単量体サブユニットのいずれかのIL-10R2との1つの界面でscIL-10を破壊する突然変異(例えば配列番号1の22位のメチオニンにおける)は、極めて大きな抗炎症ウィンドウを提供することも見出された。
【0039】
また、87位(配列番号1に基づく)の、IL-10R1およびIL-10R2の両方への結合に影響を及ぼすと考えられているイソロイシンのアミノ酸置換は、scIL-10を、一方のサブユニットにおいてIL-10R1を破壊し、他方のサブユニットにおいてIL-10R2を破壊するように設計した場合、同様の作用を及ぼすと考えられることが発見された。いかなる理論にも限定されるものではないが、ヒトwtIL-10の87位のイソロイシンは両方のIL-10受容体との相互作用を調節すると考えられるが、そのような相互作用がどのようにして起こるかは明らかではない。
【0040】
好ましくは、本発明は、少なくとも1つのアミノ酸置換(配列番号1のヒト野生型IL-10と比較して)が式1の第1および/または第2単量体サブユニットに導入されたscIL-10変異体を提供する。好ましくは、scIL-10は、式1の第1または第2単量体サブユニットの1つのみのIL-10R1界面の界面に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むが、式1の第1または第2単量体サブユニットの両方に含むことはない。さらにより好ましくは、scIL-10は、式1の第1または第2単量体サブユニットの1つのみのIL-10R1界面の界面に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、IL-1-R1界面におけるアミノ酸置換と同じ単量体サブユニットではない、式の第1または第2単量体サブユニットの1つのみのIL-10R2界面に少なくとも1つのアミノ酸置換も含む。
【0041】
scIL-10変異体の好ましいアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸の番号付けに基づいており、以下の突然変異を含む:22位のメチオニンおよび41位のアスパラギン酸。
【0042】
好ましくは、本発明は、少なくとも1つのアミノ酸が式1の第1または第2単量体サブユニットの41位で置換されており、および少なくとも1つのアミノ酸が、41位のアミノ酸置換を含む同じサブユニットではない第1または第2単量体サブユニットの22位で置換されているscIL-10変異体を提供する。
【0043】
好ましくは、本発明は、少なくとも1つのアミノ酸が、両方の単量体サブユニットではなく、式1の第1単量体サブユニットまたは第2単量体サブユニットのみの87位のイソロイシンで置換されているscIL-10変異体を提供する。
【0044】
22位のメチオニン、41位のアスパラギン酸および87位のイソロイシンのアミノ酸置換は、任意の他のアミノ酸による置換を含み得る。保存的または非保存的アミノ酸置換は、1つ以上のアミノ酸残基で行うことができる。保存的置換および非保存的置換の両方を行うことができる。保存的置換は、側鎖に関連するアミノ酸ファミリー内で起こる置換である。遺伝的にコードされたアミノ酸は、4つのファミリーに分けることができる:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性(疎水性)=システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン、チロシン;および(4)非荷電極性=アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン。非極性は、強疎水性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、および中等度に疎水性=グリシン、プロリン、システイン、チロシン、トリプトファンに細分し得る。別の方法では、アミノ酸レパートリーは、(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)脂肪族=グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、セリンおよびトレオニンは脂肪族-ヒドロキシルとして別途に分類してもよい;(4)芳香族=フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;(5)アミド=アスパラギン、グルタミン;ならびに(6)硫黄含有=システインおよびメチオニンに分類することができる。
【0045】
式1に従う第1単量体サブユニットおよび/または第2単量体サブユニットの好ましいアミノ酸置換には、以下の置換が含まれる:22位のメチオニンからアラニンへ(M22A);41位のアスパラギン酸からアスパラギンへ(D41N);41位のアスパラギン酸からアラニンへ(D41A);41位のアスパラギン酸からフェニルアラニンへ(D41F);87位のイソロイシンからアラニンへ(I87A)の置換。
【0046】
本発明はまた、一部には、scIL-10およびscIL-10変異体の免疫刺激または抗炎症活性が、scIL-10またはscIL-10変異体を、Fcポリペプチドおよび修飾Fcポリペプチド、例えば一本鎖Fc融合タンパク質、ムチンリンカーFc融合物、切断されたヒンジ領域を有するFcポリペプチドを含むがこれらに限定されない、融合パートナーに融合させることによってさらに調節され得るという発見に基づく。他の融合パートナーには、ムチンドメインポリペプチド、アルブミン融合タンパク質、トランスフェリンタンパク質およびFcドメインを含まない他の融合パートナーが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
sc-IL10の一本鎖Fc融合タンパク質
本発明の一本鎖Fc融合タンパク質は、式2に示すようにアミノ末端(N末端)からカルボキシ末端(C末端)まで以下の配置を有する:
(scIL-10)-L1-HINGE:Fc
(式2)
[式中、scIL-10は、式1のアミノ酸配列を有し;
L1は、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の配置を有するリンカーであり:
L2-CL-L3-CH1-L4(式3)またはL2-CH1-L3-CL-L4(式4)
(ここで、
L2およびL4は、独立して、ポリペプチドリンカーであるかまたは独立して存在せず;
L3はポリペプチドリンカーであり;
CLは、免疫グロブリン軽鎖由来の定常領域ポリペプチドであり;および
CH1は、免疫グロブリン重鎖のCH1ドメイン由来の定常領域ポリペプチドである);
HINGEは、免疫グロブリンのヒンジ配列であるかまたは存在せず、但し、HINGEが存在しない場合は、L4が存在し;ならびに
Fcは、免疫グロブリンのカルボキシ末端またはその任意の活性フラグメントもしくは誘導体である]。
【0048】
本発明に従って、式1のscIL-10は、本明細書では「scCLCH1リンカー」(式3)とも称される一本鎖(sc)として配置された免疫グロブリンのCLおよびCH1ドメインに由来する新規なリンカー(L1)を介して免疫グロブリンFc領域のN末端領域に融合される。
【0049】
CL領域のC末端は、ポリペプチドリンカーL3を介してCHI領域のN末端領域に連結され得る。CL領域のN末端は、任意選択のポリペプチドリンカーL2を介して式1のscIL-10のC末端に融合され得る。CH1ドメインのC末端は、免疫グロブリンヒンジ領域(HINGE)またはポリペプチドリンカー(L4)またはヒンジ(HINGE)とポリペプチドリンカー(L4)の両方を介してFcドメインに連結される。
【0050】
CHIドメインのC末端はまた、ポリペプチドリンカーL3を介してCL領域のN末端に連結され得る。CHI領域のN末端は、任意選択のポリペプチドリンカーL2を介して式1のscIL-10のC末端に融合され得る。CL領域のC末端は、免疫グロブリンヒンジ領域(HINGE)またはポリペプチドリンカー(L4)またはヒンジ(HINGE)とポリペプチドリンカー(L4)の両方を介してFc領域に連結される。
【0051】
好ましくは、L3は、Gly(G)および/またはSer(S)から選択されるアミノ酸を含む人工可撓性ドメインから選択される。好ましくは、リンカーは、一般式(Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号5))nまたは(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号6))nのポリペプチドからなり、ここで、nは1~10の整数である。好ましくは、各リンカーは、約1~約100個のアミノ酸、好ましくは約1~50個のアミノ酸、好ましくは約1~25個のアミノ酸、好ましくは約1~15個のアミノ酸、好ましくは約1~10個のアミノ酸、好ましくは約4~24個のアミノ酸、好ましくは約5~20個のアミノ酸、好ましくは約5~15個のアミノ酸、および好ましくは約5~10個のアミノ酸を含むポリペプチドである。好ましくは、リンカーは、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号6))nであり、ここで、nは2または4である。
【0052】
L2およびL4は、独立して、例えばGly(G)およびSer(S)から選択されるアミノ酸を含む人工可撓性ドメインから選択される。好ましくは、リンカーは、一般式(Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号5))nまたは(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号6))nのポリペプチドからなり、ここで、nは1~10の整数である。好ましくは、各リンカーは、約1~約100個のアミノ酸、好ましくは約1~50個のアミノ酸、好ましくは約1~25個のアミノ酸、好ましくは約1~15個のアミノ酸、好ましくは約1~10個のアミノ酸、好ましくは約4~24個のアミノ酸、好ましくは約5~20個のアミノ酸、好ましくは約5~15個のアミノ酸、および好ましくは約5~10個のアミノ酸を含むポリペプチドである。好ましくは、リンカーは、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号6))nであり、ここで、nは2または4である。
【0053】
L2、L3およびL4は、例えばLys(K)、Thr(T)、Glu(E)およびAsp(D)などのアミノ酸をさらに含み得る。
【0054】
新規scCLCH1リンカー(L1)のCL領域は、免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGもしくはIgMのいずれかまたはIgG抗体サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかに属する天然免疫グロブリンの対応するCL領域と実質的に同一であり得る。CL領域(L1)は、免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGもしくはIgMのいずれかまたはIgG抗体サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかに属する天然免疫グロブリンの対応するCL領域と少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有し得る。LIのCL領域が天然のCL領域の修飾された誘導体または変異体である場合、そのような修飾には、アミノ酸の挿入、欠失、置換および再構成が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明に従うCL領域のアミノ酸配列は、免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGもしくはIgMのいずれかまたはIgG抗体サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかに属する天然免疫グロブリンの対応するCL領域と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一である。
【0055】
新規scCLCH1リンカー(L1)のCH1領域は、免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGもしくはIgMのいずれかまたはIgG抗体サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかに属する天然免疫グロブリンの対応するCH1領域と実質的に同一であり得る。L1のCL領域は、免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGもしくはIgMのいずれかまたはIgG抗体サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかに属する天然免疫グロブリンの対応するCH1領域と少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有し得る。L1リンカーのCL領域が天然のCH1免疫グロブリン領域の修飾された誘導体または変異体である場合、そのような修飾には、アミノ酸の挿入、欠失、置換および再構成が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、CH1領域のアミノ酸配列は、免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGもしくはIgMのいずれかまたはIgG抗体サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかに属する天然免疫グロブリンの対応するCH1領域と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一である。
【0056】
L1のCH1領域およびCL領域は、同じ免疫グロブリンクラスの対応する領域と同一であるかまたはその変異体である必要はない。例えば、CL領域はIgEの対応する領域に由来してもよく、CH1領域はIgGの対応する領域に由来してもよい。
【0057】
好ましくは、scCLCH1リンカーのCLおよびCH1は、IgG1、好ましくはヒトIgG1の対応するCLおよびCH1領域に由来する。
【0058】
ヒトIgG1(hIgG1)のCL領域に対応する例示的なCL領域は:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLN FYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVT EQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGES(配列番号7)
を含む。
【0059】
hIgG1のCH1領域に対応する例示的なCHI領域は:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVL QSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRV(配列番号8)
を含む。
【0060】
本明細書に開示される一本鎖Fc融合タンパク質は、免疫グロブリン重鎖のカルボキシ末端の少なくとも一部を含有するFc領域を含む。例えば、Fc部分は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、CH2-CH3ドメイン、CH2-CH4ドメイン、CH2-CH3-CH4ドメイン、ヒンジ-CH2ドメイン、ヒンジ-CH2-CH3ドメイン、ヒンジ-CH2-CH4ドメイン、またはヒンジ-CH2-CH3-CH4ドメインを含み得る。
【0061】
Fcドメインは、免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGもしくはIgMのいずれかまたはIgG抗体サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかに属する抗体に由来し得る。好ましくは、Fc領域は、IgG1、好ましくはヒトIgG1に由来する。Fcドメインは、天然の対立遺伝子変異体またはスプライス変異体を含む、免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGもしくはIgMのいずれかまたはIgG抗体サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかに属する、天然に存在するFc配列であり得る。あるいは、Fcドメインは、2つ以上の異なるIgアイソタイプ由来のFcドメインの一部、例えばIgG2/IgG4ハイブリッドFcドメインを含むハイブリッドドメインであってもよい。好ましくは、Fcドメインは、ヒト免疫グロブリン分子に由来する。あるいは、Fcドメインは、マウス、ラット、ウサギおよびサルを含むがこれらに限定されない非ヒト動物由来のFcドメインのヒト化または脱免疫化(ヘルパーT細胞を活性化することができるT細胞エピトープの除去)バージョンであってもよい。
【0062】
Fcドメインは、変異体Fc配列、例えば、望ましい構造特徴および/または生物学的活性を提供するために、親Fc配列(例えば、その後変異体を生じるように修飾される、非修飾Fcポリペプチド)と比較して修飾されている(例えばアミノ酸の置換、欠失および/または挿入によって)Fc配列であり得る。例えば、(a)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の増加もしくは減少、(b)補体媒介性細胞傷害(CDC)の増加もしくは減少、(c)C1qに対する親和性の増加もしくは減少、および/または(d)親Fcと比較してFc受容体に対する親和性の増加または減少を有するFc変異体を作製するために、Fc領域内で修飾を行い得る。そのようなFc領域変異体は、一般に、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。アミノ酸修飾を組み合わせることは特に望ましいと考えられる。例えば、変異体Fc領域は、その中に、例えば、本明細書で同定された特定のFc領域位置の2つ、3つ、4つ、5つ等の置換を含み得る。
【0063】
本発明のFc融合タンパク質のヒンジ領域は、免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMのいずれかに属する抗体に由来し得る。ヒンジ領域は、IgG抗体サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかに由来し得る。ヒンジ領域は、天然にシステイン残基を含んでいてもよく、または1つ以上のシステイン残基を含むように操作されていてもよい。
【0064】
好ましくは、ヒンジ領域は、免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGもしくはIgMのいずれかまたはIgG抗体サブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかに属する天然免疫グロブリンの対応するヒンジ領域と少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有し得る。好ましくは、ヒンジ領域のアミノ酸配列は、ヒトIgG1の対応するヒンジ領域と少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%同一である。
【0065】
ヒトIgG1免疫グロブリン定常領域の配列を以下に示しており、ヒンジ領域の相対位置を実線の下線によって示す:
ASTKGPSVJFPLASSTSOSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号9)。CH1領域を点線の下線で示し、CH2領域およびCH3領域を太字で示す。IgG配列のC末端リシンは、Fc融合タンパク質の血清半減期をさらに増加させるために、除去し得るかまたはアラニンなどの非リシンアミノ酸で置換し得る。
【0066】
ヒンジ配列は、望ましい薬物動態、生物物理学的および/または生物学的特性を付与する置換を含み得る。本発明の例示的なヒンジ領域は、EPKSSDKTHTCPPCP(配列番号51)と少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0067】
Fcドメインおよびヒンジ領域は、1つの抗体クラスまたはサブクラスに由来し得る。例えば、ヒンジ領域およびFcドメインは、IgG1に由来し得る。Fcドメインおよびヒンジ領域は、異なる抗体クラスまたはサブクラスに対応し得る。例えば、FcドメインはIgG2またはIgG4のFc領域に対応してもよく、ヒンジ領域はIgG1に対応してもよい。
【0068】
好ましくは、本発明のFc融合タンパク質の全ての免疫グロブリンドメインは、IgG1、好ましくはヒトIgG1に由来する。好ましくは、本発明の融合タンパク質のヒンジ領域とFc領域の組み合わせは、
EPKSSDKTHTCPPCP APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVK FNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKAL P APIEKTI SKAKGQPREP QV YTLPP SREEMTKNQ V S LTCL VKGFYP S DI AVEWESNGQ PENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLS LSPGK(配列番号10)と少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、本発明の融合タンパク質のヒンジ領域とFc領域の組み合わせは、
EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVQVJHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQNWLDGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALFINHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)と少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0069】
ヒンジ領域および/またはFc領域の間のジスルフィド結合の形成を可能にし、それによって本発明のFc融合タンパク質の二量体を形成するために、遊離システイン残基を含む本発明の一本鎖融合タンパク質のヒンジ配列および/またはFc領域を有することが望ましい場合がある。ヒンジおよび/またはFc領域配列を改変して、例えばリンカー中の1つ以上のシステイン残基をセリン、アラニンまたはグリシンなどの別の残基に変異させることによって、遊離システイン残基を除去することが望ましい場合がある。本発明の一本鎖融合タンパク質のヒンジ領域は、本発明の第2の一本鎖融合タンパク質と1つ以上のジスルフィド結合を形成して二量体複合体を形成することができる1つ以上の遊離システイン残基を含み得る。
【0070】
好ましくは、本発明の(scIL-10)-L1-HINGE-Fc融合タンパク質は、ジスルフィド結合を介して他の単量体のヒンジ領域またはFc領域に連結された本発明の2つの単量体一本鎖(scIL-10)-L1-HINGE-Fc融合タンパク質を含む二量体複合体である。二量体複合体は、ホモ二量体(例えば単量体融合タンパク質の両方が同一である)またはヘテロ二量体(例えばscIL-10が各々の単量体融合タンパク質について異なり得る)であり得る。好ましくは、二量体複合体はホモ二量体であり、それにより、天然抗体のものと類似する抗体立体配置を提供するホモ二量体複合体を形成する。
【0071】
いかなる理論にも限定されるものではないが、本発明のホモ二量体融合タンパク質は、従来のFc融合タンパク質と比較して天然の抗体構造により密接に類似する二量体Fc領域の存在により、半減期を増加させると考えられる。これは、融合タンパク質が式3の立体配置を有する場合に特に当てはまる。より天然のFcドメイン抗体立体配置は、FcRn受容体へのより良好な結合を可能にし、したがってscIL-10-L1-HINGE-Fc二量体複合体の循環半減期を増加させると考えられる。
【0072】
scIL-10-L1-HINGE-Fc二量体複合体に関連する別の改善された特性は、ヒンジ領域におけるFcを介した二量体化によって生じる立体障害を軽減する柔軟性を与えるscCLCH1リンカーの使用に基づき、従来のFc融合タンパク質と比較して生物活性が増加することである。
【0073】
好ましくは、本発明は、式1のscIL-10が非置換scIL-10(10aaリンカー)である(scIL-10)-L1-HINGE-Fc融合を提供する。好ましくは、本発明は、式1のscIL-10が、22位のメチオニン、41位のアスパラギン酸および87位のイソロイシンまたはそれらの任意の組み合わせから選択される式1のような第1単量体サブユニットまたは第2単量体サブユニットに少なくとも1つのアミノ酸置換を含むsc-IL-10変異体である(scIL-10)-L1-HINGE-Fc融合を提供する。好ましくは、式1の第1または第2単量体サブユニットの41位に少なくとも1つのアミノ酸置換が存在し、少なくとも1つのアミノ酸は、41位にアミノ酸置換を含む同じサブユニットではない第1または第2単量体サブユニットの22位で置換されている。
【0074】
本発明の好ましいscIL10-L1-HINGE-Fc融合タンパク質は、配列番号12と50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、scIL-10は非置換scIL-10(10aaリンカー)である。
【0075】
本発明の好ましいscIL-10-L1-HINGE-Fc融合タンパク質は、全て表4に示す配列番号20~21および37~44と50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0076】
本発明の好ましいscIL-10-L1-HINGE-Fc融合タンパク質は、表4に示す配列番号17~19と50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、scIL-10はscIL-10変異体である。
【0077】
本発明はまた、本明細書に開示される様々な融合タンパク質のいずれかをコードする核酸を提供する。コドン使用頻度は、細胞における発現を改善するように選択され得る。そのようなコドン使用頻度は、選択される細胞型に依存する。大腸菌(E.coli)および他の細菌、ならびに哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞および昆虫細胞のために、特殊なコドン使用頻度パターンが開発されている。例えば、Mayfield et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100(2):438-442(Jan.21,2003);Sinclair et al.,Protein Expr.Purif.,26(I):96-105(October 2002);Connell,N.D.,Curr.Opin.Biotechnol,12(5):446-449(October 2001);Makrides et al.,Microbiol Rev.,60(3):512-538(September 1996);およびSharp et al.,Yeast,7(7):657-678(October 1991)参照。
【0078】
核酸操作のための一般的な技術は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Vols.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)またはAusubel,F.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing and Wiley-Interscience,New York(1987)および定期的な更新に記載されている。一般に、ポリペプチドをコードするDNAは、哺乳動物、ウイルスまたは昆虫遺伝子に由来する適切な転写または翻訳調節エレメントに作動可能に連結される。そのような調節エレメントは、転写プロモーター、転写を制御するための任意選択のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終結を制御する配列を含む。通常、複製起点によって与えられる宿主中で複製する能力、および形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子がさらに組み込まれる。
【0079】
本明細書中に記載される融合タンパク質は、直接組換え生産され得るだけでなく、好ましくはシグナル配列または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組換え生産され得る。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識され、処理される(すなわちシグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物系におけるポリペプチドの産生のための例示的なN末端リーダー配列は、MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号48)であり、これは、発現後に宿主細胞によって除去される。
【0080】
天然のシグナル配列を認識せず、処理しない原核宿主細胞については、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列によって置換される。
【0081】
酵母分泌のためには、天然シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、因子リーダー(サッカロミセス(Saccharomyces)およびクルイベロミセス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含む)、または酸ホスファターゼリーダー、C.アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、または米国特許第5,631,144号に記載されているシグナルによって置換され得る。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列およびウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。そのような前駆体領域のDNAは、リーディングフレーム内でそのタンパク質をコードするDNAに連結され得る。
【0082】
発現ベクターおよびクローニングベクターの両方が、ベクターが1つ以上の選択された宿主細胞中で複製することを可能にする核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターでは、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAとは独立して複製することを可能にする配列であり、複製起点または自律複製配列を含む。そのような配列は、種々の細菌、酵母およびウイルスについて周知である。プラスミドpBR322からの複製起点は大部分のグラム陰性細菌に適しており、2ミクロンプラスミドの起点は酵母に適しており、様々なウイルスの起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は哺乳動物発現ベクターには必要でない(SV40起点は、初期プロモーターを含むという理由だけで典型的に使用され得る)。
【0083】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択マーカーとも称される選択遺伝子を含み得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートまたはテトラサイクリンに耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求欠損を補うタンパク質、または(c)複合培地からは入手できない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードし、例えばバチルス属(Bacilli)にとってのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。
【0084】
発現およびクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、本明細書に開示されるタンパク質、例えばフィブロネクチンに基づく足場タンパク質をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む。原核生物宿主での使用に適するプロモーターには、phoAプロモーター、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系ならびにtanプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが含まれる。しかし、他の公知の細菌プロモーターが適切である。細菌系における使用のためのプロモーターはまた、本明細書に開示されるタンパク質をコードするDNAに作動可能に連結されたシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を含む。プロモーター配列は真核生物に関して公知である。実質的に全ての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25~30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始部位から70~80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT(配列番号49)領域であり、ここで、Nは任意のヌクレオチドであり得る。大部分の真核生物遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端にポリA尾部を付加するためのシグナルであり得るAATAAA(配列番号50)配列が存在する。これらの配列は全て、真核生物発現ベクターに適切に挿入される。
【0085】
酵母宿主での使用に適したプロモーター配列の例には、3-ホスホグリセラートキナーゼまたは他の解糖酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセラートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼのためのプロモーターが含まれる。
【0086】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよび最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーター、異種哺乳動物プロモーターから得られるプロモーター、例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターによって、そのようなプロモーターが宿主細胞系と適合性であれば、制御され得る。
【0087】
高等真核生物による、本明細書に開示されるタンパク質をコードするDNAの転写は、多くの場合、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加される。現在、多くのエンハンサー配列が哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテインおよびインスリン)から公知である。しかし、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用する。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp 100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントについては、Yaniv,Nature,297:17-18(1982)も参照されたい。エンハンサーは、ペプチドをコードする配列の5’側または3’側の位置でベクターにスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’側に位置する。
【0088】
真核宿主細胞(例えば酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒトまたは他の多細胞生物由来の有核細胞)において使用される発現ベクターはまた、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列も含む。そのような配列は、一般に、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’および時には3’非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、本明細書に開示されるタンパク質をコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含む。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号およびその中に開示されている発現ベクター参照。
【0089】
組換えDNAはまた、タンパク質を精製するために有用であり得る任意のタイプのタンパク質タグ配列を含み得る。タンパク質タグの例には、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグまたはGSTタグが含まれるが、これらに限定されない。細菌、真菌、酵母および哺乳動物細胞宿主での使用のための適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、Cloning Vectors:A Laboratory Manual(Elsevier,New York(1985))に見出すことができ、その関連する開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
発現構築物は、当業者には明らかなように、宿主細胞に適切な方法を用いて宿主細胞に導入される。宿主細胞に核酸を導入するための様々な方法が当技術分野において公知であり、エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランまたは他の物質を使用するトランスフェクション;マイクロプロジェクタイルボンバードメント;リポフェクション;および感染(ベクターが感染性因子である場合)を含むが、これらに限定されない。
【0091】
適切な宿主細胞には、原核生物、酵母、哺乳動物細胞または細菌細胞が含まれる。適切な細菌には、グラム陰性菌またはグラム陽性菌、例えば大腸菌またはバチルス属菌(Bacillus spp.)が含まれる。好ましくはサッカロミセス属種、例えばS.セレビシエ(S.cerevisiae)由来の酵母も、ポリペプチドの産生のために使用し得る。様々な哺乳動物または昆虫細胞培養系も、組換えタンパク質を発現させるために使用することができる。昆虫細胞における異種タンパク質の産生のためのバキュロウイルス系は、Luckow et al.(Bio/Technology,6:47(1988))によって総説されている。適切な哺乳動物宿主細胞株の例には、内皮細胞、COS-7サル腎臓細胞、CV-1、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、ヒト胎児腎細胞、HeLa、293、293TおよびBHK細胞株が含まれる。精製ポリペプチドは、適切な宿主/ベクター系を培養して組換えタンパク質を発現させることによって調製される。多くの適用について、本明細書に開示されるポリペプチドの多くが小さなサイズであるため、発現のための好ましい方法として大腸菌での発現が行われる。次いで、培養培地または細胞抽出物からタンパク質が精製される。
【0092】
他の態様では、本発明は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするベクターを含む宿主細胞、および本明細書に記載の融合タンパク質を生産するための方法を提供する。宿主細胞を、タンパク質産生のための本明細書に記載の発現ベクターまたはクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導する、形質転換体を選択するまたは所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適宜に改変した従来の栄養培地で培養し得る。ハイスループットタンパク質生産(HTPP)および中規模生産のために有用な宿主細胞には、HMS 174細菌株が含まれる。本明細書に開示されるタンパク質を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養し得る。ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma))、RPMI-1640(Sigma)およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、(Sigma))などの市販の培地は、宿主細胞を培養するのに適している。さらに、様々な科学文献に記載されている培地の多くが、宿主細胞の培養培地として使用し得る。これらの培地のいずれかは、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよびリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン薬など)、微量元素(通常、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、ならびにグルコースまたは同等のエネルギー源で補充され得る。任意の他の必要な栄養補助剤もまた、当業者に公知の適切な濃度で含まれていてもよい。温度、pH等のような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞で以前に使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
【0093】
本明細書で提供される融合タンパク質はまた、細胞翻訳系を用いて生産することができる。そのような目的のために、融合タンパク質をコードする核酸は、mRNAを生成するインビトロ転写を可能にし、利用される特定の無細胞系(哺乳動物もしくは酵母無細胞翻訳系などの真核生物または細菌無細胞翻訳系などの原核生物)においてmRNAの無細胞翻訳を可能にするように修飾されなければならない。
【0094】
本明細書に開示される融合タンパク質は、化学合成によって(例えばSolid Phase Peptide Synthesis,2nd Edition,The Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.(1984)に記載の方法によって)生産することもできる。融合タンパク質に対する修飾は、化学合成によって行うこともできる。
【0095】
本明細書に開示される融合タンパク質は、タンパク質化学の分野で一般的に公知のタンパク質の単離/精製方法によって精製することができる。非限定的な例には、抽出、再結晶、塩析(例えば硫酸アンモニウムもしくは硫酸ナトリウムを用いて)、遠心分離、透析、限外ろ過、吸着クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィ、順相クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、ゲルろ過、ゲル浸透クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、電気泳動、向流分配またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。精製後、ポリペプチドを、ろ過および透析を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の様々な方法のいずれかによって種々の緩衝液中に交換および/または濃縮し得る。
【0096】
精製された融合タンパク質は、好ましくは少なくとも純度85%、または好ましくは少なくとも純度95%、最も好ましくは少なくとも純度98%である。純度の正確な数値にかかわらず、融合タンパク質は医薬品として使用するのに十分な純度である。
【0097】
他の融合パートナー。
本発明のscIL-10タンパク質の他の適切な融合パートナーには、他の全てのタイプのFc領域を含むタンパク質が含まれるが、これに限定されない。
【0098】
例えば、scIL-10タンパク質は、Fc領域、例えばIgG1を含有する天然免疫グロブリンのヒンジ領域に直接融合し得る。配列番号13は、IgG1分子のヒンジ領域に融合した非置換scIL-10(5aaリンカー)の一例である。IgG1分子は、例えばIgG1のヒンジ領域を短縮することによって修飾し得る。配列番号14は、IgG1のヒンジ領域に融合されたscIL-10(5aaリンカー)の一例であり、ここで、天然IgG1のヒンジ領域は4アミノ酸短縮されている。配列番号15は、IgG1のヒンジ領域に融合したscIL-10の一例であり、ここで、天然IgG1のヒンジ領域は7アミノ酸短縮されている。配列番号16は、IgG1のヒンジ領域に融合したscIL-10の一例であり、ここで、天然IgG1のヒンジ領域は10アミノ酸短縮されている。
【0099】
好ましい融合パートナーは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013/184938号に記載されているようなムチンドメインポリペプチドリンカーをさらに含有するFc領域を含む。「ムチンドメインポリペプチドリンカー」は、本明細書では、1つ以上の融合ポリペプチドパートナーに連結することができる「ムチンドメイン」を含む任意のタンパク質として定義される。ムチンドメインは、潜在的なグリコシル化部位が豊富であり、ムチンドメイン内のアミノ酸の40%を超えて存在し得る、セリンおよび/またはトレオニンおよびプロリンの高い含量を有する。ムチンドメインは、主にO-結合型グリカンで高度にグリコシル化されている。ムチンドメインポリペプチドは、グリカンによってその質量の少なくとも約60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を有する。ムチンドメインは、各タンデムリピート単位当たり約8アミノ酸から150アミノ酸の長さで変化し得るタンデムアミノ酸反復単位(本明細書ではTRとも称される)を含み得る。タンデムリピート単位の数は、本発明のムチンドメインポリペプチドにおいて1~25の間で変化し得る。
【0100】
本発明のムチンドメインポリペプチドリンカーには、ムチンタンパク質の全部または一部が含まれるが、これに限定されない。「その一部」とは、ムチンポリペプチドリンカーがムチンタンパク質の少なくとも1つのムチンドメインを含むことを意味する。ムチンタンパク質には、MUC遺伝子(例えばMUC1、MUC2、MUC3A、MUC3B、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC6、MUC7、MUC8、MUC9、MUC11、MUC12、MUC13、MUC15、MUC16、MUC17、MUC19、MUC20、MUC21)によってコードされる任意のタンパク質が含まれる。ムチンタンパク質のムチンドメインは、典型的には両側で非反復アミノ酸領域によって隣接されている。ムチンドメインポリペプチドは、ムチンタンパク質(例えばMUC20)の全部または一部を含み得る。ムチンドメインポリペプチドは、可溶性ムチンタンパク質のムチンタンパク質の全部または一部を含み得る。好ましくは、ムチンドメインポリペプチドは、ムチンタンパク質の細胞外部分を含む。
【0101】
好ましくは、式1のscIL-10タンパク質は、ムチンドメインポリペプチドリンカーを介してFc領域を含む分子に共有結合される。配列番号52は、ムチンリンカーに融合した非置換scIL-10の一例であり、このムチンリンカーは、天然のIgG1 Fc領域のヒンジに融合している。
【0102】
好ましい融合パートナーは、国際公開第2013/184939号に記載されているムチンドメインポリペプチド(Fc領域を含まない)である。
【0103】
好ましい融合パートナーは、血清アルブミンまたは血清アルブミンのドメインを含む。本発明の融合タンパク質を、ヒトを治療するために使用する場合は、ヒト血清アルブミンが好ましい。別の実施形態では、融合パートナーはヒトトランスフェリンを含む。
【0104】
scIL-10タンパク質の使用
一態様では、本発明は、診断薬または治療薬として有用なscIL-10(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)を提供する。一態様では、本発明は、障害の治療において有用なタンパク質を提供する。
【0105】
本発明はまた、治療有効量または予防有効量の本発明のscIL-10(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)を被験体に投与する工程を含む、被験体において有益な作用を達成するための方法も提供する。有効量は、疾患または障害を治療するのを助ける有益な作用をもたらすことができる。場合によっては、有益な作用を達成するための方法は、治療用タンパク質またはペプチドが存在しない疾患および疾患カテゴリーに関して被験体を治療するために治療有効量の融合タンパク質組成物を投与することを含み得る。
【0106】
好ましくは、scIL-10はいかなる融合パートナーにも連結されていない。
【0107】
好ましくは、scIL-10は、scIL-10-L1-HINGE-Fcなどの適切な融合パートナーに共有結合されている。好ましくは、本発明は、適切な融合パートナーに融合したscIL-10の二量体複合体を提供する。
【0108】
好ましくは、scIL-10(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)は、例えば自己免疫障害、線維症性疾患、炎症性疾患、虚血性疾患、神経変性疾患、神経障害性疾患、疼痛性障害、聴覚障害、精神障害、癌ならびに外傷および損傷に罹患している患者を治療するために使用される。
【0109】
自己免疫障害の例には、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、急性壊死性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群(APS)、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性肝炎、自己免疫性高脂血症、自己免疫性免疫不全、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性じんま疹、軸索性および神経性ニューロパチー、バロー病、ベーチェット病、心筋症、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST病、クローン病、脱髄性ニューロパチー、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状狼瘡、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性食道炎、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、実験的アレルギー性脳脊髄炎、線維筋痛、線維化肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、巨細胞性心筋炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)(以前はウェゲナー肉芽腫症と呼ばれていた)、グレーブス病、ギラン-バレー症候群、橋本脳症、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、IgG4関連硬化性疾患、免疫調節性リポタンパク質、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、若年性糖尿病(1型糖尿病)、若年性筋炎、川崎病、ランバート-イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA病(LAD)、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、ライム病、慢性メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合結合組織病(MCTD)、モーレン潰瘍、ムッハ-ハーベルマン病、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(デビック病)、好中球減少症、眼瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、PANDAS(小児自己免疫性連鎖球菌関連性精神神経障害)、発作性夜間血色素尿症(PNH)、パリー・ロンバーグ症候群、扁平部炎(周辺性ブドウ膜炎)、パーソネージ-ターナー症候群、天疱瘡、末梢性ニューロパチー、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、プロゲステロン皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、レイノー現象、反応性関節炎、反射性交感神経性ジストロフィ、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、不穏下肢症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ(RA)、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子および精巣自己免疫、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病、トロサ-ハント症候群、横断性脊髄炎、1型糖尿病、I型、II型およびIII型多腺性自己免疫症候群、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患(UCTD)、ブドウ膜炎、脈管炎、小水疱水疱性皮膚病、白斑ならびにウェゲナー肉芽腫症が含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
本発明のscIL-10およびscIL-10変異体ペプチド(適切な融合パートナーへのそれぞれの融合物を含む)によって治療され得る線維症性疾患の例には、癒着性関節包炎、関節線維症、心房線維症、慢性腎臓病、肝硬変、嚢胞性線維症(CF)、デュピュイトラン拘縮、心内膜心筋線維症、グリア瘢痕、特発性肺線維症、ケロイド、黄斑変性、縦隔線維症、骨髄線維症、NAFLD/NASH、腎性全身性線維症、ペロニー病、進行性塊状線維症(肺)、増殖性硝子体網膜症、肺線維症、後腹膜線維症、卒中に起因する瘢痕組織形成、強皮症、全身性硬化症、組織癒着が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
炎症性疾患の例には、アレルギー性腸炎、α1-アンチトリプシン欠損症、強直性脊椎炎、喘息、バレット食道、ベーチェット病、慢性疲労症候群(CFS/CFIDS/ME)、慢性ライム病(ボレリア症)、コカイン関連脈管炎、クローン病、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)、うつ病、糖尿病、家族性地中海熱(FMF)、線維筋痛症(FM)、胃食道逆流性疾患(GERD)、糸球体腎炎、移植片対宿主病、肉芽腫性血管炎、橋本甲状腺炎、高血圧症、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、炎症性腸疾患(IBD)、炎症性ミオパシー(多発性筋炎、封入体筋炎、皮膚筋炎)、間質性膀胱炎(IC)、過敏性腸症候群(IBS)、虚血性大腸炎、腎結石、ロフグレン症候群、紅斑性狼瘡、メタンフェタミン関連血管炎、片頭痛、モルジェロンズ病、多種化学物質過敏症(MCS)、多発性硬化症(MS)、新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID)、視神経炎、変形性関節炎、尋常性天疱瘡、リウマチ性多発性筋痛、前立腺炎、乾癬、乾癬性関節炎、放射線大腸炎、レイノー症候群/現象、反応性関節炎(ライター症候群)、反射性交感神経性ジストロフィ(RSD)、不穏下肢症候群、関節リウマチ(RA)、サルコイドーシス、強皮症、季節性感情障害(SAD)、敗血症性ショック、副鼻腔炎、シェーグレン症候群、側頭動脈炎、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期熱症候群(TRAPS)、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎およびめまいが含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
虚血性疾患の例には、急性冠動脈症候群、狭心症、生命苦悶、コペプチン、冠動脈疾患、冠虚血、冬眠心筋、虚血性脳卒中、急性冠動脈症候群の管理、メルドニウム、心筋梗塞、心筋梗塞合併症、心筋梗塞診断、筋細胞融解、無酸素後脳症、プリンツメタル狭心症、スガルボッサ基準、脳卒中、TIMI、一過性脳虚血発作(TIA)および不安定狭心症が含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
神経変性疾患の例には、毛細血管拡張性運動失調症、常染色体優性小脳性運動失調症、バッジョ・ヨシナリ症候群、バッテン病、エストロゲン神経変性疾患、近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー、乳児レフスム病、JUNQおよびIPOD、歩行性運動失調症、ライム病、マシャド・ジョセフ病、脳橋および小脳形成不全を伴う精神遅滞および小頭症、多系統萎縮症、神経有棘赤血球症、神経セロイドリポフスチン症、ニーマン・ピック病、橋小脳形成不全、タンパク質凝集、ピルビン酸脱水素酵素欠損症、放射線ミエロパシー、レフサム病、網膜色素変性症、サンドホフ病、シャイ・ドレーガー症候群、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脊髄の亜急性連合変性症、亜急性硬化性全脳炎、脊髄癆、テイ・サックス病、中毒性脳症、中毒性白質脳症ならびにウォブリー・ヘッジホッグ症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
神経障害性疾患の例には、ベル麻痺、カンピロバクター関連運動軸索障害、シャルコー・マリー・トゥース病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、糖尿病性筋萎縮症裂離(diabetic amyotrophy avulsion)、糖尿病性ニューロパチー、ギラン・バレー症候群および脈管炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
疼痛性障害の例には、増幅筋骨格痛症候群(Amplified musculoskeletal pain syndrome)、前皮神経絞扼症候群、中枢痛症候群、慢性機能性腹痛、慢性疼痛、慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群、慢性創傷疼痛、変性椎間板疾患、歯下顎感覚運動機能不全、脊椎手術後疼痛症候群、線維筋痛症、間質性膀胱炎、過敏性腸症候群(IBS)、筋筋膜疼痛症候群、骨盤痛、精管切除後疼痛症候群、反射性神経血管性ジストロフィ、鎌状赤血球症、テラミンおよび外陰痛が含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
聴覚障害の例には、伝音難聴、感音難聴(SNHL)、混合性難聴が含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
精神障害の例には、大うつ病性障害、難治性うつ病、治療抵抗性うつ病が含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
外傷および損傷の例には、中枢神経系(CNS)損傷、外傷性脳損傷、脊髄損傷、圧挫傷害、ショック、腱損傷、角膜への創傷、眼への創傷、皮膚創傷が含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
好ましくは、本発明のscIL-10タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)は、例えば、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性甲状腺炎、クローン病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、川崎病、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、乾癬、関節リウマチ、シェーグレン症候群、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎を含む自己免疫障害;慢性腎疾患、肝硬変、黄斑変性、NAFLD/NASH、増殖性硝子体網膜症、肺線維症、脳卒中から生じる瘢痕組織形成、組織接着を含む線維症性疾患;アレルギー性腸炎、α1-アンチトリプシン欠損症、喘息、ベーチェット病、コカイン関連血管炎、糸球体腎炎、移植片対宿主病、肉芽腫性血管炎、炎症性腸疾患、炎症性ミオパシー(多発性筋炎、封入体筋炎、皮膚筋炎)、虚血性大腸炎、メタンフェタミン関連脈管炎、視神経炎、尋常性天疱瘡、放射線大腸炎、サルコイドーシス、敗血症性ショック、側頭動脈炎、脈管炎を含む炎症性疾患;心筋梗塞、無酸素後脳症、脳卒中を含む虚血性疾患;神経セロイドリポフスチン症、放射線ミエロパシー、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症を含む神経変性疾患;カンピロバクター関連運動軸索障害、シャルコー・マリー・トゥース病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、糖尿病性筋萎縮症裂離、糖尿病性神経障害、ギラン・バレー症候群を含む神経障害疾患;伝音難聴、感音難聴(SNHL)、混合性難聴を含む聴覚障害;大うつ病性障害、難治性うつ病、治療抵抗性うつ病を含む精神障害;中枢神経系(CNS)損傷、外傷性脳損傷、脊髄損傷、圧挫損傷、ショック、腱損傷、角膜への創傷、眼への創傷、皮膚創傷を含む外傷および損傷に罹患している患者を治療するために使用し得る。
【0120】
最も好ましくは、本発明に従うscIL-10タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)は、例えば、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性甲状腺炎、クローン病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、川崎病、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、乾癬、関節リウマチ、シェーグレン症候群、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎を含む自己免疫障害;慢性腎疾患、肝硬変、黄斑変性、NAFLD/NASH、増殖性硝子体網膜症、肺線維症、脳卒中から生じる瘢痕組織形成、組織接着を含む線維症性疾患;アレルギー性腸炎、α1-アンチトリプシン欠損症、喘息、ベーチェット病、コカイン関連脈管炎、糸球体腎炎、移植片対宿主病、肉芽腫性血管炎、炎症性腸疾患、炎症性ミオパシー(多発性筋炎、封入体筋炎、皮膚筋炎)、虚血性大腸炎、メタンフェタミン関連血管炎、視神経炎、尋常性天疱瘡、放射線大腸炎、サルコイドーシス、敗血症性ショック、側頭動脈炎、脈管炎を含む炎症性疾患;心筋梗塞、無酸素後脳症、脳卒中を含む虚血性疾患;神経セロイドリポフスチン症、放射線ミエロパシー、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症を含む神経変性疾患;カンピロバクター関連運動軸索障害、シャルコー・マリー・トゥース病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、糖尿病性筋萎縮症裂離、糖尿病性神経障害、ギラン・バレー症候群を含む神経障害疾患;伝音難聴、感音難聴(SNHL)、混合性難聴を含む聴覚障害;大うつ病性障害、難治性うつ病、治療抵抗性うつ病を含む精神障害;中枢神経系(CNS)損傷、外傷性脳損傷、脊髄損傷、圧挫損傷、ショック、腱損傷、角膜への創傷、眼への創傷、皮膚創傷を含む外傷および損傷に罹患している患者を治療するために使用し得る。
【0121】
好ましくは、本発明のscIl-10タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)は、例えば、子宮、子宮頸部、乳房、卵巣、前立腺、精巣、陰茎、胃腸管、食道、中咽頭、胃、小腸または大腸、結腸または直腸、腎臓、腎細胞、膀胱、骨、骨髄、皮膚、頭部または頸部、皮膚、肝臓、胆嚢、心臓、肺、膵臓、唾液腺、副腎、甲状腺、脳、神経膠腫、神経節、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)の癌、ならびに免疫系の癌、脾臓または胸腺の癌、パピローマウイルス誘発性癌、上皮細胞癌、内皮細胞癌、扁平上皮癌、腺癌、癌腫、黒色腫、肉腫、奇形癌、免疫原性腫瘍、非免疫原性腫瘍、休眠腫瘍、リンパ腫、白血病、骨髄腫、化学的に誘発された癌、転移および血管新生、ならびに結節硬化症に罹患している患者を治療するのに使用し得る。
【0122】
好ましくは、本発明に従うscIL-10融合タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)は、聴覚障害、腎細胞癌、黒色腫、乾癬、線維症、うつ病および炎症性腸疾患(IBD)に罹患している患者を治療するために使用し得る。
【0123】
好ましくは、本発明に従うscIL-10融合タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)はまた、上記に示すような疾患、聴覚障害、聴覚障害、腎細胞癌、黒色腫、乾癬、線維症、うつ病および炎症性腸疾患(IBD)に対して患者を治療するための薬剤の製造においても使用し得る。
【0124】
本出願はさらに、本明細書に記載されるscIL-10タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)を含有する薬学的に許容される組成物を提供する。scIL-10タンパク質を含有する治療用製剤は、任意選択の生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と、所望の程度の純度を有する記載されたタンパク質を混合することによって、水溶液、凍結乾燥製剤または他の乾燥製剤の形態で保存用に調製される。許容される担体、賦形剤または安定剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノールおよびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースもしくはデキストランを含む単糖類、二糖類および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤を含む。
【0125】
本明細書の製剤は、治療される特定の適応症のために必要に応じて1つより多い活性化合物、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する化合物も含み得る。そのような分子は、意図される目的のために有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0126】
好ましくは、本発明に従うscIL-10タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)はまた、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリラート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)に、またはマクロエマルジョンに封入され得る。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0127】
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌ろ過膜によるろ過によって容易に達成される。
【0128】
徐放性調製物を調製し得る。徐放性調製物の適切な例としては、本明細書に記載のフィブロネクチンベースの足場タンパク質を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、マトリックスは、成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、ラクチドとグリコリドのコポリマー、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマーが含まれる。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは徐放を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。カプセル化されたタンパク質が長時間体内にとどまる場合、37℃で水分に暴露された結果として変性または凝集することがあり、生物学的活性の喪失および免疫原性の変化の可能性をもたらす。関与する機構に応じて安定化のための合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド相互交換を介した分子間S-S結合形成であることが判明した場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾する、酸性溶液から凍結乾燥する、含水量を制御する、適切な添加剤を使用する、および特異的なポリマーマトリックス組成物を開発することによって達成され得る。
【0129】
当業者は、本発明に従う各scIL-10タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)の投与量が患者の特定の状況に依存することを理解するであろう。投与量は、約0.0001~100mg/kg宿主体重、より一般的には0.01~5mg/kg宿主体重の範囲である。例えば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重または1~30mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療レジメンは、1週間に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、1ヶ月ごとに1回、3ヶ月ごとに1回または3~6ヶ月ごとに1回の投与を伴う。投与レジメンは、1mg/kg体重または3mg/kg体重の静脈内投与を含み、タンパク質は、以下の投与スケジュール:6回にわたって4週間ごと、次いで3ヶ月ごと;3週間ごと;3mg/kg体重を1回、続いて3週間ごとに1mg/kg体重の1つを用いて与えられる。好ましくは、本発明に従うscIL-10融合タンパク質(適切な融合パートナーへのそれぞれの融合物およびその二量体複合体を含む)は、通常、複数回投与される。単回投与間の間隔は、例えば毎週、毎月、3ヶ月ごとまたは毎年であり得る。間隔は、患者の可溶性タンパク質の血中濃度を測定することによって示されるように、不規則であってもよい。いくつかの方法では、投与量は、約0.1~1000pg/mlおよびいくつかの方法では約5~300mg/mlの可溶性タンパク質の血漿濃度を達成するように調整される。
【0130】
治療適用では、本発明に従うscIL-10タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)を、薬学的に許容される剤形で被験体に投与する。それらは、ボーラスとしてもしくは一定期間にわたる持続注入によって静脈内に、筋肉内、皮下、眼内、関節内、滑液包内、髄腔内、経口、局所または吸入経路によって投与することができる。タンパク質はまた、局所的および全身的治療効果を発揮するために、腫瘍内、腫瘍周囲、病巣内または病巣周囲経路によっても投与し得る。適切な薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤は周知であり、臨床状況が許す場合は当業者によって決定され得る。適切な担体、希釈剤および/または賦形剤の例には、(1)約1mg/ml~25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有するpH約7.4のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、(2)0.9%生理食塩水(0.9%w/v NaCl)、および(3)5%(w/v)デキストロースが含まれる。本発明の方法は、インビトロ、インビボまたはエクスビボで実施することができる。
【0131】
scIL-10タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)および1つ以上のさらなる治療薬の投与は、同時投与または逐次投与のいずれの場合も、治療適用に関して上述したように実施し得る。同時投与のための適切な薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤は、同時投与される特定の治療薬の固有性に依存することが当業者に理解されるであろう。
【0132】
凍結乾燥されるのではなく、水性剤形中に存在する場合、scIL-10(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)は、典型的には約0.1mg/ml~100mg/mlの濃度で製剤化されるが、これらの範囲外の広い変動が許容される。疾患の治療のために、scIL-10(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)の適切な投与量は、治療される疾患の種類、疾患の重症度および経過、scIL-10タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)が予防目的または治療目的のどちらで投与されるのか、以前の治療の経過、患者の臨床歴およびscIL-10タンパク質(適切な融合パートナーへのscIL-10の融合物およびその二量体複合体を含む)に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存する。scIL-10タンパク質は、一度にまたは一連の治療にわたって患者に適切に投与される。
【0133】
例
例1:非置換scIL-10
scIL-10の設計:C
L
:C
H
1:FcおよびscIL-10:C
H1
:C
L
:Fc
scIL-10一本鎖融合体分子は、IgG1重鎖のCL-CH1-Fc(式3)ドメインまたはCH1-CL-Fcに連結された、共有結合したIL-10ホモ二量体融合タンパク質を含む(
図1および2)。合成した各分子のアミノ酸配列を表1に示す。
【0134】
【0135】
scIL-10:C
L
:C
H
1:FcおよびscIL-10:C
H1
:C
L
:Fcの発現
遺伝子を合成的に合成し、pcDNA3.1発現ベクター(GeneArt)に供給し、Expi293発現系(Life Technologies)を用いてHEK293細胞で一過性に発現させた。プロテインA(GE Healthcare)を用いて低pHでの溶出でタンパク質を精製し、1X PBS 2Lに対して2回透析した。
【0136】
還元および非還元条件下でSDS PAGEゲルによって分子を分析した(
図3)。還元および非還元条件のために、タンパク質2.5μgをPrecision Plus Protein Kaleidoscope標準物質(Invitrogen)(MW範囲10kD~250kD)と共にAny kDゲル(Invitrogen)に負荷した。分子を、XBridge Protein BEH SECカラム(200Å、3.5μm、7.8mm×150mm(Waters))での分析ゲルろ過によって特徴付けた。カラムを平衡化し、全ての分析のためのランニング緩衝液として100mMリン酸ナトリウムpH7.0を用いて0.9ml/分で流した。精製した試料(0.5mg/ml)を注入し(15μl)、15分間の実行時間で溶出させた(
図4および5)。
【0137】
scIL-10:C
L
:C
H
1:FcおよびscIL-10:C
H1
:C
L
:Fcの生物活性
マウス肥満細胞株MC/9(ATCC CRL-8306)の増殖を刺激するscIL-10:C
L:C
H1:FcおよびscIL-10:C
H1:C
L:Fcの能力を評価することによってインビトロ生物活性を評価した。scIL-10直接Fc融合タンパク質(scIL-10:Fc)を対照として使用した。アッセイのために、10%熱不活性化ウシ胎仔血清、2mMグルタミンおよび0.05mM 2-メルカプトエタノールを含有するDMEM培地にMC/9細胞を10,000細胞/ウェルで播種した。細胞を、様々な濃度のヒトIL-10(R&D Systems)、scIL-10:C
L:C
H1:Fc、scIL-10:C
H1:C
L:FcまたはscIL-10:Fcと共に37℃、5%CO
2で72時間インキュベートした。72時間後、CellTiter-Blue(Promega)を用いて細胞を37℃、5%CO
2で4時間、製造者のプロトコルに従って染色した。560/590nmで蛍光測定を行った。IL-10(EC
50=75pM)、scIL-10:C
L:C
H1:Fc(EC
50=79pM)、scIL-10:C
H1:C
L:Fc(EC
50=93pM)およびscIL-10:Fc(EC
50=493pM)は用量依存的に活性であった(
図6)。
【0138】
scIL-10:C
L
:C
H
1:FcおよびscIL-10:C
H1
:C
L
:FcのマウスPK
マウスにおけるscIL-10:CL:CH1:Fc、scIL-10:CH1:CL:FcおよびscIL-10:Fcの薬物動態を、尾静脈に投与した0.5mg/kgの単回静脈内用量および肩甲骨間領域に投与した2.5mg/kgの単回皮下用量で評価した。scIL-10:CL:CH1:Fc、scIL-10:CH1:CL:FcおよびscIL-10:Fcの投与の0.083、0.5、1、4、6、24、48、96、168、192および216時間後に血液試料(n=3試料/時点/融合タンパク質)を収集した。各々の時点/融合タンパク質/投与経路について、血清をプールし、標準的なMSD技術を用いて濃度を測定した。生物分析データを、Phoenix WinNonlin 6.4ソフトウェアを用いた非コンパートメント薬物動態分析に供した。標準的な薬物動態パラメータである最大濃度(C
max
)、最大濃度までの時間(T
max
)、時間対濃度曲線下面積(AUC)、平均滞留時間(MRT)、排出半減期(t1/2)、クリアランス(CL)、定常状態での分布容積(Vss)およびバイオアベイラビリティ(%F)を含む薬物動態パラメータを測定し、表2および表3に報告した。
【0139】
【0140】
【0141】
例2:(scIL-10)-L1-HINGE-Fc融合タンパク質
scIL-10変異体融合タンパク質の設計
式1のscIL-10を、式3のようにL1がCL-CH1-Fcである式2の一本鎖Fcリンカーに融合する。合成した各々の完全長scIL-10-L1-HINGE-Fc融合変異体タンパク質のアミノ酸配列を表4に示す。表4の説明欄は、融合パートナーとの構築物に使用したscIL-10を示す。例えばwtIL-10:リンカー:D41Fは、式1に従って、第1単量体サブユニットが配列番号1のwtIL-10であり、したがって第2単量体サブユニットに連結されたリンカーに連結された非置換であり、配列番号1のwtIL-10が、アミノ酸41のイソロイシンがフェニルアラニンで置換される(D41F)ようにアミノ酸41で置換されていることを示す。
【0142】
哺乳動物細胞における発現のために、配列番号48のN末端リーダー配列を、表4に示すタンパク質配列の各々に付加した。
【0143】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【表4-9】
【0144】
sc-IL-10変異体融合タンパク質の発現
遺伝子を合成的に合成し、pcDNA3.1発現ベクター(GeneArt)に供給し、Expi293発現系(Life Technologies)を用いてHEK293細胞で一過性に発現させた。プロテインA(GE Healthcare)を用いて低pHでの溶出でタンパク質を精製し、1X PBS 2Lに対して2回透析した。
【0145】
還元および非還元条件下でSDS PAGEゲルによって分子を分析した。還元および非還元条件のために、タンパク質2.5μgをPrecision Plus Protein Kaleidoscope標準物質(Invitrogen)(MW範囲10kD~250kD)と共にAny kDゲル(Invitrogen)に負荷した。分子を、XBridge Protein BEH SECカラム(200Å、3.5μm、7.8mm×150mm(Waters))での分析ゲルろ過によって特徴付けた。カラムを平衡化し、全ての分析のためのランニング緩衝液として100mMリン酸ナトリウムpH7.0を用いて0.9ml/分で流した。精製した試料(0.5mg/ml)を注入し(15ul)、15分間の実行時間で溶出させた。
【0146】
マウスPBMCサイトカイン放出アッセイ
LPS刺激したC57BL/6マウスPBMC(Bioreclamation)においてTNFαの産生を阻害するscIL-10構築物の能力を評価することによってインビトロ生物活性を評価した。アッセイのために、PBMC細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清を含有するRPMI培地に50,000細胞/ウェルで播種した。細胞を、100ng/mL LPSおよび様々な濃度のscIL-10構築物(R&D Systems)と共に37℃、5%CO2で18時間インキュベートした。18時間後、V-PlexマウスTNFα MSD(Mesoscale Discovery)を用いてTNFα産生を測定した。IC50値については以下の表5および表6参照。
【0147】
MC/9アッセイ
本発明者らのscIL-10構築物の、マウス肥満細胞株MC/9(ATCC CRL-8306)の増殖を刺激する能力を評価することによってインビトロ生物活性を評価した。アッセイのために、10%熱不活性化ウシ胎仔血清、2mMグルタミンおよび0.05mM 2-メルカプトエタノールを含有するDMEM培地にMC/9細胞を10,000細胞/ウェルで播種した。細胞を、様々な濃度のヒトIL-10(R&D Systems)、RDB3515、RDB3516またはRDB3509と共に37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。72時間後、CellTiter-Blue(Promega)を用いて細胞を37℃、5%CO2で4時間、製造者のプロトコルに従って染色した。560/590nmで蛍光測定を行った。EC50値については以下の表5および表6参照。
【0148】
【0149】
【0150】
表5に示すように、WT IL-10の比率は約11であった。配列番号12の比率は1000であり、scIL-10配列をCL:CH1:Fc足場上に構築するだけで抗炎症ウィンドウが増加することを示した。以下の実験は、CL:CH1:Fc足場上の非置換scIL-10、scIL-10変異体および様々なサイズのLINKER長を含む式1のscIL-10分子の様々な立体配置で実施した。
【0151】
実験は、scIL-10ヘテロ五量体シグナル伝達複合体からの2つのIL-10R1受容体鎖および2つのIL-10R2受容体鎖の種々の組み合わせでscIL-10界面を破壊する非置換scIL-10およびscIL-10変異体の作用を調べるために、表5および表6の構築物を用いて実施した。
図7に示すように2つのIL-10R1界面のいずれか一方を破壊する突然変異である配列番号20、21、37および41は、抗炎症効力をわずかに弱めるが、免疫刺激効力を有意に弱め、抗炎症ウィンドウサイズの増加をもたらす。
【0152】
両方のIL-10R1界面を同時に破壊する二重突然変異の導入(配列番号22)は、測定可能な抗炎症活性または免疫刺激活性を有さない構築物をもたらす。これは、scIL-10がIL-10受容体を介してシグナル伝達するためには、少なくとも1つのIL-10R1受容体鎖を動員できなければならないことを実証する。IL-10R1受容体鎖は「高親和性」受容体鎖(IL-10R2よりもIL-10により密接に結合する)であることが公知であるので、両方のIL-10R1結合界面を同時に破壊する突然変異は、scIL-10がIL-10受容体に結合する能力を排除するかまたは有意に弱め、シグナル伝達を全くもたらさない可能性が高い。
【0153】
図8に示すように、2つのIL-10R2界面のいずれか一方を破壊する突然変異(配列番号23および24)は、抗炎症効力の変化を示さないが、免疫刺激効力のわずかな増加を示し、抗炎症ウィンドウサイズをわずかに減少させる。両方のIL-10R2界面を同時に破壊する二重突然変異体の導入(配列番号29)は、抗炎症活性および免疫刺激活性の両方の効力の損失をもたらし、天然のscIL-10構築物と比較するとわずかに低い、IL-10R2界面の単一突然変異体のものと同様の抗炎症ウィンドウサイズを有する構築物を生じる。この結果は、IL-10R2界面を破壊する突然変異は、単独ではscIL-10の抗炎症ウィンドウを拡大する潜在能を有さないことを明らかにする。
【0154】
図8に示すように、IL-10R1界面の1つとIL-10R2界面の1つを同時に破壊する突然変異を調べた。scIL-10融合二量体の同じ側からIL-10R1およびIL-10R2部位に位置する突然変異(配列番号26および27)は、抗炎症活性および免疫刺激活性の両方について減弱した効力を示す;それらの組み合わせのうちの1つ(配列番号27)は、有意に増加した抗炎症ウィンドウサイズを示す。scIL-10融合二量体の反対側からIL-10R1界面およびIL-10R2界面に位置する突然変異(配列番号28および29)は、減弱した抗炎症効力を示し、試験した濃度では測定可能な免疫刺激活性を示さない。したがって、それらは非常に大きな抗炎症ウィンドウを示す。IL-10受容体シグナル伝達は、IL-10結合後にIL-10R1およびIL-10R2がクラスター化されることを必要とするので、これらのデータは、免疫刺激活性を減弱させる(およびそれによって抗炎症ウィンドウを増加させる)ための最適な戦略は、IL-10R1/IL-10R2受容体鎖の対の両方を標的とすることであることを示す。IL-10R1界面スキャンは、シグナル伝達が、少なくとも1つのIL-10R1界面が結合に適格であることを必要とすることを明らかにしたので、scIL-10結合時にクラスターを形成するIL-10R1/IL-10R2受容体鎖の両方の対を有効に破壊するためにscIL-10融合二量体の反対側のIL-10R2界面を標的とする必要がある。この突然変異のパターンは、免疫刺激を媒介する細胞へのscIL-10生物活性をより劇的に調節するが、抗炎症作用を媒介する細胞はscIL-10シグナル伝達に対して極めて感受性のままである。
【0155】
例3:scIL-10の様々なリンカー長
LINKERの長さが変化する式1のscIL-10を、L1が式3のようにCL-CH1-Fcである式2の一本鎖Fcリンカーに融合する。合成した各々の完全長scIL-10-L1-HINGE-Fc融合変異体タンパク質のアミノ酸配列を表7に示す。
【0156】
哺乳動物細胞における発現のために、配列番号48のN末端リーダー配列を表7に示すタンパク質配列の各々に付加した。
【0157】
各融合タンパク質のアミノ酸配列を表7に示す。ペプチドの発現は例2に記載されている通りである。例2に記載のマウスPBMCサイトカイン放出アッセイおよびMC/9アッセイにおいて生物活性を試験した。結果を例2の表5に示している。結果は、リンカーのサイズを減少させると抗炎症ウィンドウのサイズが減少することを示し、リンカーの長さが、免疫刺激抗力に比べて抗炎症効力の選択性を低下させるように、IL-10R1およびIL-10R2界面の強さに影響を及ぼすことを示唆する。
【0158】
【0159】
例4:立体的混み合いを介したscIL-10の抗炎症ウィンドウの調節
この実験で用いた各scIL-10融合タンパク質のアミノ酸配列を表8に示す。ペプチドの発現は例2に記載されている通りである。例2に記載のマウスPBMCサイトカイン放出アッセイおよびMC/9アッセイにおいてペプチドの生物活性を試験した。結果を例2の表5に示している。結果は、ヒンジが短くなるにつれて、抗炎症ウィンドウのサイズが増加することを示す。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、これは、ヒンジ切断が2つのscIL-10部分間の立体的混み合いを増加させ、IL-10R1およびIL-10R2界面の調節をもたらし、抗炎症効力および免疫刺激抗力の変化につながることを示唆する。
【0160】
【0161】
例5:scIL-10
実験は、LINKERの長さが様々である式1のscIL-10を用いて実施した。これらの実験のために合成したアミノ酸配列を表9に示す。配列番号45および46の発現は例2に記載されている通りである。配列番号45の生物活性を、例2に記載のMC/9アッセイで試験した。このデータは、MC/9における配列番号45の値が5.6pMであることを示した。
【0162】
配列番号45および46の生物活性を、例2に記載のマウスPBMCサイトカイン放出アッセイおよびMC/9アッセイにおいてさらに試験する。結果は、scIL-10 Fc融合タンパク質について観察された傾向と一致して、いかなる融合パートナーも存在しないscIL-10部分が極めて強力な生物活性を示すことを示すであろう。
【0163】
【0164】
例6
式1のscIL-10を、MUC20のタンデムリピートを含むムチンドメインリンカーに融合し、次にこれをFcドメインに融合した。(scIL-10(5aaリンカー))-(ムチンリンカー)-Fcのアミノ酸配列を表10に示す。哺乳動物細胞における発現のために、配列番号48のN末端リーダー配列を表11に示すタンパク質に付加した。
【0165】
各融合タンパク質のアミノ酸配列を表10に示す。ペプチドの発現は例2に記載されている通りである。例2に記載のマウスPBMCサイトカイン放出アッセイおよびMC/9アッセイにおいて生物活性を試験した。結果を表11に示す。結果は、scIL-10 Fc融合タンパク質の生物活性が、scIL-10ドメインとFcドメインとを連結するリンカードメインの組成にかかわらず一貫していることを示す。
【0166】
【0167】
【0168】
本明細書で言及される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用される全ての米国特許および公開または非公開の米国特許出願は、参照により組み込まれる。本明細書で引用される全ての公開外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される全ての他の公開された参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0169】
本発明を、その好ましい特徴に関して具体的に示し、説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更がなされ得ることは当業者に理解されるであろう。また、本明細書に記載される本発明の様々な特徴は互いに排他的ではなく、特徴は本発明に従って全体的または部分的に組み合わされ得ることも理解されるべきである。
【配列表】