(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】広告成果評価方法、装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20220608BHJP
【FI】
G06Q30/02 382
(21)【出願番号】P 2019035648
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】東條 直也
(72)【発明者】
【氏名】新井田 統
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/207833(WO,A1)
【文献】特開2002-288527(JP,A)
【文献】特表2015-505087(JP,A)
【文献】特開2016-212793(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043291(WO,A1)
【文献】特開2019-008378(JP,A)
【文献】特表2010-532515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対する広告の成果を評価する広告成果評価装置において、
ユーザのコンテキストを推定する手段と、
前記コンテキストの推定結果に基づいて前記ユーザの認知容量を評価する手段と、
前記ユーザの認知容量に基づいて当該ユーザに対する広告成果を評価する手段とを具備し
、
前記ユーザのコンテキストを推定する手段は、ユーザの状況を検知するセンサの出力信号に基づいてコンテキストを推定するコンテキスト予測モデルを具備し、
前記ユーザの状況を検知するセンサの出力信号を前記コンテキスト予測モデルに適用して当該ユーザのコンテキストを推定することを特徴とする広告成果評価装置。
【請求項2】
ユーザの知覚を評価して知覚評価値を求める知覚評価手段を更に具備し、
前記広告成果を評価する手段は、前記ユーザの認知容量および知覚評価値に基づいて広告成果を評価することを特徴とする請求項
1に記載の広告成果評価装置。
【請求項3】
ユーザの反応を評価して反応評価値を求める反応評価手段を更に具備し、
前記広告成果を評価する手段は、前記ユーザの認知容量および反応評価値に基づいて広告成果を評価することを特徴とする請求項
1に記載の広告成果評価装置。
【請求項4】
ユーザの知覚を評価して知覚評価値を求める知覚評価手段と、
ユーザの反応を評価して反応評価値を求める反応評価手段とを更に具備し、
前記広告成果を評価する手段は、前記ユーザの認知容量、知覚評価値および反応評価値に基づいて広告成果を評価することを特徴とする請求項
1に記載の広告成果評価装置。
【請求項5】
前記知覚評価手段は、音のSN比および広告発信源とユーザとの相対位置に基づいて当該ユーザの知覚を評価することを特徴とする請求項
2または4に記載の広告成果評価装置。
【請求項6】
前記反応評価手段は、ユーザの音声およびカメラ映像に基づいて当該ユーザの反応を評価することを特徴とする請求項
3または4に記載の広告成果評価装置。
【請求項7】
ユーザに発信した広告の成果をコンピュータに評価させる広告成果評価方法において、
コンピュータが、
ユーザのコンテキストを推定し、
前記コンテキストの推定結果に基づいて前記ユーザの認知容量を評価し、
前記ユーザの認知容量に基づいて当該ユーザに対する広告成果を評価
し、
前記コンテキストが、ユーザの状況を検知するセンサの出力信号に基づいてコンテキストを推定するコンテキスト予測モデルに、当該ユーザの状況を検知するセンサの出力信号を適用して推定されることを特徴とする広告成果評価方法。
【請求項8】
ユーザに発信した広告の成果を評価する広告成果評価プログラムにおいて、
ユーザのコンテキストを推定する手順と、
前記コンテキストの推定結果に基づいて前記ユーザの認知容量を評価する手順と、
前記ユーザの認知容量に基づいて当該ユーザに対する広告成果を評価する手順とを、コンピュータに実行させ
、
前記コンテキストを推定する手順では、ユーザの状況を検知するセンサの出力信号に基づいてコンテキストを推定するコンテキスト予測モデルに、前記ユーザの状況を検知するセンサの出力信号を適用してコンテキストを推定することを特徴とする広告成果評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告成果評価方法、装置およびプログラムに係り、特に、広告視聴ユーザの認知容量に基づいて広告成果を評価する広告成果評価方法、装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビやラジオを通して配信される広告の成果を広告視聴ユーザの視覚の状況や反応の程度に応じて評価し、広告報酬を決定するシステムが知られている。特許文献1には、ユーザのバイタルデータを収集し、配信された広告に対してユーザが反応を示したか否かに基づいて、広告の対象となった商品やサービスの将来の売り上げを予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】上田健揮, et al. "ユーザ位置情報と家電消費電力に基づいた宅内生活行動認識システム." 情報 処理学会論文誌 57.2 (2016): 416-425.
【文献】Yacoob, Yaser, and Michael J. Black. "Parameterized modeling and recognition of activities." Computer Vision and Image Understanding 73.2 (1999): 232-247.
【文献】Jianming Wu, Toshiyuki Hagiya, Yujin Tang, and Keiichiro Hoashi. 2017. Effects of objective feedback of facial expression recognition during video support chat. In Proc. MUM '17. 293-297.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザの反応をバイタルデータに基づいて取得するためには、各ユーザにバイタルデータを取得する専用のセンサを装着しなければならない。このため、ユーザに負担を強いることになり、また、大量の情報を簡易的に取得することが難しい。加えて、ユーザの知覚や反応のみからは、広告成果を正確に評価できない場合がある。
【0006】
図10は、ユーザの広告に対する知覚および反応の程度と当該ユーザに対する広告成果との関係を模式的に示した図である。
【0007】
ユーザが広告に対して明確な反応を示したと認められる場合は十分な広告成果を期待できる一方、明確な反応を示したと認められない場合でも広告成果を期待できる場合がある。また、ユーザが広告を知覚できていないと認められる場合は広告成果を期待できない一方、知覚できていると認められる場合でも、それだけでは十分な広告成果を期待できるとは判断できない。
【0008】
このように、広告成果をユーザの反応や知覚のみで評価すると、十分な広告成果を期待できる状況や広告成果を全く期待できない状況は評価できるが、その中間すなわちユーザが広告を知覚できる状況にあるが明確な反応を示していない場合などに広告成果を定量的に評価することができなかった。
【0009】
本発明の目的は、上記の技術課題を解決し、広告成果をユーザの知覚や反応に基づいて評価することが難しい場合でもユーザの認知容量の評価値に基づいて定量的に評価できる広告成果評価方法、装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、ユーザに対する広告の成果を評価する広告成果評価方法、装置およびプログラムにおいて、以下の手段を講じた点に特徴がある。
【0011】
(1) ユーザの認知容量の評価値に基づいて広告成果を評価するようにした。
【0012】
(2) ユーザのコンテキストの推定結果に基づいて認知容量を評価できるようにした。
【0013】
(3) ユーザの状況を検知するセンサの出力信号に基づいてコンテキストを推定するコンテキスト予測モデルを用意し、ユーザの状況を検知するセンサの出力信号をコンテキスト予測モデルに適用してコンテキストを推定するようにした。
【0014】
(4) ユーザの知覚を評価して知覚評価値を求める知覚評価手段を更に設け、ユーザの認知容量の評価値および知覚評価値に基づいて広告成果を評価するようにした。
【0015】
(5) ユーザの反応を評価して反応評価値を求める反応評価手段を更に設け、ユーザの認知容量の評価値および反応評価値に基づいて広告成果を評価するようにした。
【0016】
(6) ユーザの知覚を評価して知覚評価値を求める知覚評価手段およびユーザの反応を評価して反応評価値を求める反応評価手段を更に設け、ユーザの認知容量の評価値、知覚評価値および反応評価値に基づいて広告成果を評価するようにした。
【0017】
(7) ユーザの知覚を音のSN比および広告発信源とユーザとの相対位置に基づいて評価するようにした。
【0018】
(8) ユーザの反応を音声およびカメラ映像に基づいて評価するようにした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下のような成果が達成される。
【0020】
(1) ユーザの認知容量の評価値に基づいて広告成果を評価するので、広告成果をユーザの知覚や反応に基づいて評価することが難しい場合でも定量的に評価できるようになる。
【0021】
(2) ユーザの認知容量と相関の高いコンテキストに基づいて認知容量を求めるようにしたので、ユーザの認知容量を正確に評価できるようになる。
【0022】
(3) ユーザの状況を検知するセンサの出力信号をコンテキスト予測モデルに適用して当該ユーザのコンテキストを推定するようにしたので、ユーザの状況に基づいてコンテキストを正確に推定できるようになる。
【0023】
(4) ユーザの認知容量の評価値および知覚評価値に基づいて広告成果を評価するようにしたので、ユーザが広告を知覚できている場合の広告成果を認知容量の評価値に基づいて定量的に評価できるようになる。
【0024】
(5) ユーザの認知容量の評価値および反応評価値に基づいて広告成果を評価するようにしたので、ユーザが明確な反応を示していない場合の広告成果を認知容量の評価値に基づいて定量的に評価できるようになる。
【0025】
(6) ユーザの認知容量の評価値、知覚評価値および反応評価値に基づいて広告成果を評価するようにしたので、ユーザが広告を知覚できているが明確な反応を示していない場合の広告成果を認知容量の評価値に基づいて定量的に評価できるようになる。
【0026】
(7) 音のSN比および広告発信源とユーザとの相対位置に基づいてユーザの知覚が評価されるのでユーザの多様な知覚を評価できるようになる。
【0027】
(8) ユーザの音声およびカメラ映像に基づいて当該ユーザの反応が評価されるのでユーザの多様な反応を評価できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る広告成果評価装置の機能ブロック図である。
【
図2】認知容量の評価方法を模式的に示した図である。
【
図7】コンテキストテーブルの一例を示した図である。
【
図8】本発明の一実施形態の動作を示したフローチャートである。
【
図9】映像ベース知覚評価値の求め方の一例を示した図である。
【
図10】ユーザの広告に対する知覚および反応と広告成果との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る広告成果評価装置1の主要部の構成を、その適用環境と共に示した機能ブロック図である。
【0030】
広告成果評価装置1は、広告配信事業設備2が配信し、テレビTVやラジオ等を通して発信する広告を対象にその視聴ユーザUの状況を識別するユーザ状況識別部10と、ユーザ状況の識別結果に基づいて当該ユーザに対する広告成果を決定する広告成果決定部11とを主要な構成とし、さらにユーザ状況を検知するセンサ群として、カメラ12、マイク13および人感センサ14などの各種センサを備えている。なお、ユーザが携帯するスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末15のマイク機能を前記マイク13と共に又は前記マイク13に代えて用いることもできる。
【0031】
前記ユーザ状況識別部10は、知覚評価部101、反応評価部102および認知容量評価部103を含む。知覚評価部101は、ユーザの広告に対する知覚を評価する。反応評価部102は、ユーザの広告に対する反応を評価する。認知容量評価部103は、ユーザの広告に対する認知容量を評価する。
【0032】
このような広告成果評価装置1は、汎用のコンピュータやサーバに各機能を実現するアプリケーション(プログラム)を実装することで構成できる。あるいは、アプリケーションの一部をハードウェア化またはソフトウェア化した専用機や単能機としても構成できる。
【0033】
図2は、前記認知容量評価部103における認知容量の評価方法を模式的に示した図である。各ユーザは所定の認知容量を有しているが、「歩行」、「睡眠」、「読書」などのコンテキストごとに認知容量が消費される。そこで、本実施形態ではユーザのコンテキストを分析し、コンテキストにより消費された後に残った認知容量をユーザが広告の認知に割ける容量として評価する。
【0034】
宅内のユーザに対してテレビやラジオから放送される広告の当該ユーザへの成果を評価対象とする場合、前記広告成果評価装置1は、例えばAIアシスタント機能を持つスピーカー(スマートスピーカ)や対話型ロボットに実装されて稼働される。また、前記カメラ12、マイク13および人感センサ14等のセンサ群は、各居室、台所、廊下、トイレ、風呂などにそれぞれ分散配置される。
【0035】
前記カメラ12は、その設置空間内を撮影したカメラ映像をセンサ出力として広告成果評価装置1へ送信する。マイク13は、その設置空間内で検知した音響信号をセンサ出力として広告成果評価装置1へ送信する。人感センサ14は、その設置空間内での人物の検知結果をセンサ出力として広告成果評価装置1へ送信する。各センサ出力の広告成果評価装置1への送信は、無線または有線のLANあるいはモバイル通信網を中継して行われる。
【0036】
前記知覚評価部101は、
図3に示したように、知覚の指標値として音のSN比を計測するSN比計測部101aおよびテレビとユーザとの相対位置を計測する相対位置計測部101bを含み、さらに前記SN比および相対位置に基づいて知覚評価値p(x)を計算する評価値計算部101cを含む。
【0037】
前記SN比計測部101aは、テレビが出力する音声信号(S)と環境騒音(N)との比(S/N)を計算する。本実施形態では、ユーザが携帯するスマートフォン15のマイク機能を用いることでユーザ近傍のS/Nを計測できる。あるいは、カメラ映像および人感センサ14の出力に基づいてユーザの居場所を推定し、推定された居場所に設置したマイク13の音声信号に基づいてS/Nを計測しても良い。あるいは、マイクとユーザとの距離およびスピーカからの出力に基づいてS/Nを推定しても良い。
【0038】
前記相対位置計測部101bは、カメラ12が出力する映像出力および人感センサ14の出力に基づいてテレビ及びユーザを識別し、その居場所を推定したうえで、テレビとユーザとの距離を計算する。
【0039】
前記反応評価部102には、
図4に示したように、反応予測モデル102aおよび反応テーブル102bが予め登録されている。本実施形態では、ユーザの反応形態の候補として「返事をする」、「うなずく」、「視線を向ける」、「表情を変える」、「作業を中断する」などが予め登録されており、これらの反応候補ごとまたはその組み合わせごとに各センサ出力を機械学習することで、各センサ出力からユーザの反応を推定する反応予測モデル102aを構築する。前記反応テーブル102bには、
図6に示したように、ユーザの反応と重み値との対応付けが予め登録されている。
【0040】
評価値計算部102cは、マイク13等が検知した音声信号および前記カメラ映像から分析したユーザの挙動を反応予測モデル102aに適用してユーザの反応を推定し、さらに反応の推定結果を前記反応テーブル102bに適用することで反応ごとに重み値を求める。そして、各反応に対応した重み値を全て乗じることで反応評価値r(x)を計算する。なお、反応の具体的な推定方法については、非特許文献1に開示されている。
【0041】
前記認知容量評価部103には、
図5に示したように、認知容量予測モデル103aおよびコンテキストテーブル103bが予め登録されている。本実施形態では、コンテキスト候補として「歩行」、「入浴」、「食事」、「テレビ視聴」、「料理」などが定義されており、予めコンテキスト候補ごとに各センサ出力を機械学習することで、各センサ出力からコンテキストを推定する認知容量予測モデル103aが構築される。前記コンテキストテーブル103bには、
図7に示したように、コンテキストと認知容量との対応付けが予め登録されている。
【0042】
評価値計算部103cは、前記各センサ出力を前記コンテキスト予測モデル102aに適用することでユーザのコンテキストを推定し、コンテキストの推定結果をコンテキストテーブル103bに適用することで認知容量を求める。なお、コンテキストの具体的な推定方法は、非特許文献2,3に開示されている。
【0043】
図8は、本発明の一実施形態に係る広告成果評価装置1の動作を示したフローチャートであり、ステップS1では、予めスケジューリングされた広告配信のタイミングに先立って、前記各センサ12,13,14の出力信号が取得される。各出力信号の取得は、これ以降も所定のサンプリング周期で繰り返される。
【0044】
ステップS2では、知覚評価部101が各センサの出力信号に基づいて知覚指標値を計測する。本実施形態では、前記SN比計測部101aにより音のSN比が計測され、前記相対位置計測部101bによりテレビとユーザとの相対距離が計測される。
【0045】
ステップS3では、前記認知容量評価部103がユーザのコンテキストを推定する。本実施形態では、各センサの出力信号をコンテキスト予測モデル103aに適用することでコンテキストが推定される。なお、本実施形態では複数のコンテキストを同時に推定できるように予測モデル103aが構築されており、ユーザが歩きながら読書をしていると、コンテキストとして「歩行」および「読書」が推定される。
【0046】
ステップS4では、評価対象の広告が発信されたか否かが判断される。発信が発行されるまでは、ステップS1へ戻って上記の各処理が繰り返され、知覚指標値およびユーザのコンテキストが最新の情報に更新される。
【0047】
広告が発信されると、ステップS5では、前記知覚評価部101の評価値計算部101cが、前記ステップS2で計測した知覚指標値に基づいて知覚評価値p(x)を計算する。本実施形態では、広告に応じて音声に対する知覚と映像に対する知覚とに区別して評価するものとし、ラジオ広告のような音声広告であれば音声ベースの知覚評価値p1(x)のみが求められる。これに対して、テレビ広告のように音声および映像の組み合わせで構成される広告であれば音声ベースの知覚評価値p1(x)および映像ベース知覚評価値p2(x)が求められる。
【0048】
前記SN比については、その値を0~1.0の範囲で正規化することで音声ベース知覚評価値p1(x)が求められる。SN比を0~1.0の範囲に変換する手法としては、明瞭度指数の改良版として1997年にANSIにより標準化された手法(SII)を用いることができる。SIIでは、値が大きくなるほど明瞭度が高くなる。
【0049】
一方、前記相対位置に関しては、
図9に示したように、広告発生源であるテレビを基準にユーザとの距離に応じて映像ベース知覚評価値p2(x)が求められる。本実施形態では、テレビからの距離が2メートル以内であればp2(x)=1.0、10メートル以上であればp2(x)=0とし、その間では距離に応じてp2(x)を線形に変化させる関数を用いて計算される。
【0050】
以上のようにして、音声ベース知覚評価値p1(x)および映像ベース知覚評価値p2(x)が求まると、各知覚評価値p1(x),p2(x)を次式(1)に適用することで映像広告に対する知覚評価値p(x)が求められる。
p(x)= (p1(x) + p2(x))/2 …(1)
【0051】
ステップS6では、前記認知容量評価部103がユーザのコンテキストを認知容量指標値として認知容量評価値c(x)を求める。本実施形態では、前記ステップS3で推定されたユーザのコンテキストに基づいてコンテキストテーブル103bを参照することで当該ユーザの認知容量が求められる。
【0052】
本実施形態では、
図7に示したように、コンテキストテーブル103bではコンテキストごとに0から1.0の認知容量が登録されている。そして、前記
図2を参照して説明したように、認知容量の初期値を最大値1.0とし、ここからコンテキストの推定結果に対応した認知容量を減算することでユーザの現在の認知容量が計算される。
【0053】
例えば、前記各センサの出力信号に基づいてユーザが歩いていると推定されると、コンテキストとして「歩行」が推定されるので、次式(2)に基づいて、当該ユーザの現在の認知容量c(x)は0.9となる。
c(x) = 1.0-0.1 = 0.9 …(2)
【0054】
また、ユーザが歩きながら読書をしていると推定されると、コンテキストとして「歩行」および「読書」が推定されるので、次式(3)に基づいて、当該ユーザの現在の認知容量c(x)は0.2となる。
c(x) = 1.0-0.1-0.7 =0.2 …(3)
【0055】
さらに、ユーザが掃除をしながら読書をしていると、コンテキストとして「掃除」および「読書」が推定されるので、次式(4)に基づいて、ユーザの現在の認知容量c(x)は-0.4となる。ただし、この場合はオーバーフロー状態と認定されるので認知容量c(x)は0となる。
c(x) = 1.0-0.7-0.7 = -0.4 …(4)
【0056】
なお、ユーザのコンテキストと認知容量との関係は、広告の種類すなわち音声広告および映像広告のいずれであるかに応じて異なる可能性がある。したがって、音声広告用のコンテキストテーブルと映像広告のコンテキストテーブルとを設けてコンテキストと認知容量との関係を異ならせ、広告の種類に応じて各コンテキストテーブルを使い分けるようにしても良い。
【0057】
ステップS7では、前記マイク13の出力信号から分析された音声信号および前記カメラ映像から分析されたユーザの反応に基づいて当該ユーザの反応評価値r(x)が計算される。本実施形態では、反応の推定結果に基づいて反応テーブル102bを参照することで重み値が求められる。そして、推定された反応に対応した重み値を全て乗じることで反応評価値r(x)が求められる。
【0058】
例えば、ユーザが広告に対して返事をしながら表情を変える反応が推定されると、反応評価値r(x)が次式(5)に基づいてr(x)=1.32として求まる。
r(x)=1.2×1.1=1.32 …(5)
【0059】
なお、ユーザの反応と重み値との関係も広告の種類に応じて異なる可能性があるので、音声広告用の反応テーブルと映像広告の反応テーブルとを設けて反応と重み値との関係を異ならせ、広告の種類に応じて各反応テーブルを使い分けるようにしても良い。
【0060】
ステップS8では、前記知覚評価値p(x)、認知容量評価値c(x)および反応評価値r(x)に基づいて広告成果が計算される。本実施形態では、次式(6)に示すように、全ての評価値を乗じることで広告成果vが計算される。
v= p(x)×c(x)×r(x) …(6)
【0061】
このように、本実施形態では知覚評価値p(x)、認知容量評価値c(x)および反応評価値r(x)に基づいて広告成果が求められるが、反応評価値r(x)は必ず1.0以上の値をとるので、広告に対するユーザの反応が認められない場合でも、知覚評価値p(x)および認知容量評価値c(x)に基づいて広告成果を定量的に評価できるようになる。
【0062】
また、本実施形態ではユーザが広告を知覚できない場合は知覚評価値p(x)が0となるので、ユーザが広告を知覚することが物理的に不可能な場合には、認知容量評価値c(x)にかかわらず広告成果を0とすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…広告成果評価装置,2…広告配信事業設備,10…ユーザ状況識別部,11…広告成果決定部,12…カメラ,13…マイク,14…人感センサ,15…モバイル端末,101…知覚評価部,101a…SN比計測部,101b…相対位置計測部,101c…評価値計算部,102…反応評価部,102a…反応予測モデル,102b…反応テーブル,102c…評価値計算部,103…前記認知容量評価部,103a…認知容量予測モデル,103b…コンテキストテーブル,103c…評価値計算部