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特許7084895セルロース繊維複合再生樹脂及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】セルロース繊維複合再生樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/02 20060101AFI20220608BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20220608BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
C08L1/02
C08L23/12
C08K5/09
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019120698
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006604
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 優
(72)【発明者】
【氏名】松末 一紘
(72)【発明者】
【氏名】大川 淳也
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-071676(JP,A)
【文献】特開2020-193263(JP,A)
【文献】高密度ポリエチレンノバテックHD製品情報,三菱ケミカル株式会社,2012年10月11日,https://www.m-chemical.co.jp/products/departments/group/jpe/product/1200016_7016.html
【文献】低密度ポリエチレンノバテックLD製品情報,三菱ケミカル株式会社,2012年10月11日,https://www.m-chemical.co.jp/products/departments/group/jpe/product/1200019_7016.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00-101/16
C08L 1/00-1/32
C08L 23/00-23/36
C08K 3/00-13/08
C08J 3/00-3/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維長0.02~3mmであるマイクロ繊維セルロースと、
樹脂粉末及び樹脂ペレット少なくともいずれか一方と、
フタル酸、フタル酸塩の中から選択された少なくともいずれか1種以上の物質と、
ポリプロピレンを含む再生樹脂とを含
前記樹脂粉末及び前記樹脂ペレットの少なくともいずれか一方の成分と、前記再生樹脂の成分とが同一である、
ことを特徴とするセルロース繊維複合再生樹脂。
【請求項2】
前記再生樹脂50質量部に対して、
前記樹脂粉末及び前記樹脂ペレット少なくともいずれか一方が0質量部を超え、100質量部以下とする、
請求項1記載のセルロース繊維複合再生樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維複合再生樹脂及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースナノファイバーは、通常、分散液(スラリー)の状態で得られるが、分散液の状態で輸送するとコストが嵩む。そこで、事業化するにあたっては、セルロースナノファイバーの分散液を乾燥し、乾燥物として輸送するのが合理的である。しかしながら、分散液を乾燥させると、セルロースナノファイバー同士が結合して強く凝集する。したがって、セルロースナノファイバーを再び水に分散させるのが難しく、乾燥前のようには分散しなくなる。
【0003】
このような背景のもと、本発明者等は、セルロースナノファイバーの再分散性を向上させることを目的として、ヒドロキシ酸類の使用を提案し(特許文献1参照)、また、グリセリン又はグリセリン誘導体の使用を提案した(特許文献2参照)。これらの提案によれば、セルロースナノファイバーの再分散性は十分に向上する。
【0004】
一方、セルロースナノファイバー、マイクロ繊維セルロース等の微細繊維は、樹脂の補強材としての使用が脚光を浴びている。
また、近年の環境問題に対する意識の高まりから、樹脂をリサイクルして資源の有効利用を図ることが求められている。しかしながら、リサイクルされた樹脂(再生樹脂)は、紫外線や経年劣化によって強度等の品質が低下することから、十分に有効利用できているとは言い難い状況である。そこで、本発明者等は、上記提案に従って乾燥物とした微細繊維について、再生樹脂の補強材としての性能を調べるために各種試験を行った。しかるに、この試験の過程において、上記提案による乾燥物を使用した場合、得られるセルロース繊維複合再生樹脂は、強度の点で改善の余地があることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-2138号公報
【文献】特開2017-101184号公報
【文献】特開2002-59425号公報
【文献】特許4409923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする主たる課題は、強度に優れるセルロース繊維複合再生樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は各種試験を行うなかで、特許文献1,2の乾燥物は水に対する再分散性に優れるが、樹脂に対する分散性には劣ることを知見した。このことが樹脂に乾燥物(セルロースナノファイバー、マイクロ繊維セルロース等)を混合しても当該樹脂の強度が期待するほど向上しない一因になっていたのである。この点、乾燥物をいったん水に分散させ、分散液の状態で樹脂と混合することもできるが、樹脂との混合に伴ってセルロースナノファイバー等の水分を蒸発させるというのは非常に熱効率が悪い。このような背景のもと想到するに至ったのが下記に示す態様である。
【0008】
(第1の態様)
セルロース繊維のスラリーに、樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方を混合して第1混合物とし、
この第1混合物を再生樹脂と混練するものとし、
前記セルロース繊維の一部又は全部として微細繊維を使用する、
ことを特徴とするセルロース繊維複合再生樹脂の製造方法。
【0009】
従来再生樹脂の強度を高める目的で、微細繊維を同再生樹脂と混錬してセルロース繊維複合再生樹脂を製造したが、このセルロース繊維複合再生樹脂は十分な強度にならなかった。本発明者等は、微細繊維が十分な強度にならなかった理由として、次記のように推測する。
【0010】
セルロース繊維は、それ自体が三次元ネットワーク構造を構築しており、外力に対する応力(弾性力)を発揮する。セルロース繊維が十分に分散されて再生樹脂全体と混合されていないと、単純にセルロース繊維を再生樹脂と混錬しても、再生樹脂とセルロース繊維とが十分に混合された部分と、十分に混合されていない部分、すなわち、ムラが生じる。ムラが生じる理由は定かでは無いが、セルロース繊維を再生樹脂と混合した際にセルロース繊維が凝集し、再生樹脂中にセルロース繊維が均一に分散していないためと考えられる。再生樹脂とセルロース繊維が十分に混合されていない部分では、再生樹脂相互におけるセルロース繊維の三次元ネットワーク構造の介在が不十分であり、セルロース繊維複合再生樹脂の強度が高いものとはならない。
【0011】
そこで、セルロース繊維の分散性を向上させるため、セルロース繊維のスラリーに、樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方を混合させた。この混合操作により、同樹脂の大部分にセルロース繊維が付着し、セルロース繊維の分散性が向上する。この混合物を再生樹脂と混錬して製造されたものは、再生樹脂相互において、適度に分散されたセルロース繊維による三次元ネットワーク構造が無数に介在されるので、強度が向上する、と発明者等は推測する。
【0012】
なお、再生樹脂の強度を向上させる手法に、使用済み樹脂に未使用の樹脂を混ぜてリサイクル樹脂を成形することで、強度低下を抑制する手法(特許文献3)や、使用済み樹脂にゴム質重合体や無機充填材を添加させてリサイクル樹脂を成形することで、強度低下を抑制する手法(特許文献4)がある。これらの手法は、セルロース繊維を使用していない点で本発明と異なる。
【0013】
(第2の態様)
前記第1混合物に前記再生樹脂を混合して第2混合物とし、
この第2混合物を混錬するものとし、
前記セルロース繊維の一部又は全部として微細繊維を使用する、
ことを特徴とするセルロース繊維複合再生樹脂の製造方法。
【0014】
(第3の態様)
第1の態様又は第2の態様に加え、
前記再生樹脂50質量部に対して、
前記樹脂粉末と前記樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方が0質量部を超え、100質量部以下とする、
態様を挙げることができる。
【0015】
(第4の態様)
第1の態様又は第2の態様に加え、
前記樹脂粉末の平均粒子径が1~1500μmである、
態様を挙げることができる。
【0016】
(第5の態様)
第1の態様又は第2の態様に加え、
前記樹脂ペレットの平均粒子径が1~10mmである、
態様を挙げることができる。
【0017】
(第6の態様)
第1の態様又は第2の態様に加え、
前記樹脂粉末と前記樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方の成分と、
前記再生樹脂の成分とが同一である、
態様を挙げることができる。
【0018】
(第7の態様)
第1の態様又は第2の態様に加え、
さらに、
多塩基酸、多塩基酸塩類、多塩基酸の誘導体、及び多塩基酸塩類の誘導体の中から選択された少なくともいずれか1種以上の物質を前記スラリーに混合する、
態様を挙げることができる。
【0019】
(第8の態様)
第1の態様又は第2の態様に加え、
さらに、
フタル酸、フタル酸塩類、フタル酸の誘導体、及びフタル酸塩類の誘導体の中から選択された少なくともいずれか1種以上の物質を前記スラリーに混合する、
態様を挙げることができる。
【0020】
(第9の態様)
第1の態様に加え、
前記第1混合物を乾燥及び粉砕して粉状物としてから前記再生樹脂と混錬するものとする、
態様を挙げることができる。
【0021】
(第10の態様)
平均繊維長0.02~3mmであるマイクロ繊維セルロースと、
樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方と、
フタル酸、フタル酸塩類、フタル酸の誘導体、及びフタル酸塩類の誘導体の中から選択された少なくともいずれか1種以上の物質と、の混合物と、
再生樹脂とを含む、
ことを特徴とするセルロース繊維複合再生樹脂。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、強度に優れるセルロース繊維複合再生樹脂となり、及び強度に優れるセルロース繊維複合再生樹脂の製造方法となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0024】
本形態のセルロース繊維複合再生樹脂は、セルロース繊維及び樹脂粉末の混合物と、再生樹脂とを含む。セルロース繊維は、例えば、セルロースナノファイバー(CNF)やマイクロ繊維セルロース(MFC)等の微細繊維が混合されてなる。
【0025】
樹脂粉末としては、バージン樹脂(リサイクルされていない樹脂や原料樹脂、未使用の樹脂)の粉末を使用することができる。樹脂粉末の平均粒子径は1~1500μm、より好ましくは100~1000μmとするとよい。樹脂粉末の平均粒子径がこの範囲であれば、製造物が好適な強度になる。この範囲より小さいと、セルロース繊維に対して樹脂粉末が小さ過ぎ、また微細繊維の分散化が十分になされないと推測される。
【0026】
樹脂ペレットとしては、バージン樹脂のペレットを使用することができる。樹脂ペレットの平均粒子径は1~10mm、より好ましくは1~5mmとするとよい。樹脂ペレットの平均粒子径がこの範囲であれば、製造物が所望の強度になる。この範囲より大きいと、微細繊維の分散化が十分になされないと推測される。
【0027】
再生樹脂は、使用済みの樹脂を原料として製造された樹脂をいう。再生樹脂としては、廃棄された樹脂材料を再生処理して得られた樹脂を使用することができる。再生処理された回数は特に限定されず、1回でもよいし複数回でもよい。一般的に再生樹脂はバージン樹脂よりも機械的性質に劣る。これは繰り返し粉砕、成形されることによる熱履歴、物理的衝撃、紫外線反応、加水分解反応等を受け、樹脂の分子量が小さくなり強度が低下することによるものであると言われている。本技術ではポリプロピレンの他にポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等が混在している再生樹脂であっても強度物性を向上させることができ、好ましくは単一の樹脂に選別された再生樹脂がよく、より好ましくはポリプロピレンの再生樹脂がよい。
【0028】
セルロース繊維複合再生樹脂は、例えば、セルロース繊維のスラリーに樹脂粉末を混合して混合物とし、この混合物を再生樹脂と混練することで得ることができる。再生樹脂と混錬するに先立って、この混合物を乾燥及び粉砕して粉状物としてもよい。以下、詳細に説明する。
【0029】
(セルロースナノファイバー)
本形態のセルロース繊維は、その一部又は全部として微細繊維を含む。微細繊維としては、セルロースナノファイバー及びマイクロ繊維セルロースの少なくともいずれか一方を、好ましくは、マイクロ繊維セルロースを含む。
【0030】
セルロースナノファイバーは、再生樹脂の強度を大幅に向上する役割を有する。セルロースナノファイバーは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができる。
【0031】
セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物(粉状物)の状態等であってもよい。
【0032】
ただし、不純物の混入を可及的に避けるために、セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、木材パルプを使用するのが好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0033】
広葉樹クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプは、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。
【0034】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、漂白サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0035】
原料パルプは、解繊するに先立って化学的手法によって前処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)等を例示することができる。
【0036】
解繊に先立ってアルカリ処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの水酸基が一部解離し、分子がアニオン化することで分子内及び分子間水素結合が弱まり、解繊におけるセルロース繊維の分散が促進される。
【0037】
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の有機アルカリ等を使用することができる。ただし、製造コストの観点からは、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
【0038】
解繊に先立って酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、セルロースナノファイバーの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、かつ均質性を高くすることができる。この点、セルロースナノファイバーの保水度が低いと脱水し易くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
【0039】
原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解される。結果、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。ただし、前処理は、セルロースナノファイバーのアスペクト比を低下させるため、再生樹脂の強度を高めるという点では、過度の前処理を避けるのが好ましい。
【0040】
原料パルプの解繊は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用して原料パルプを叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましい。
【0041】
原料パルプの解繊は、得られるセルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長、保水度、結晶化度、擬似粒度分布のピーク値、パルプ粘度、分散液のB型粘度が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
【0042】
セルロースナノファイバーの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは3~100nm、より好ましくは10~80nm、特に好ましくは20~60nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維径が3nmを下回ると、繊維構造を保つことができなくなり、樹脂の補強効果が十分得られなくなるおそれがある。また、セルロースナノファイバーを分散剤と混合する形態においては、分散剤がセルロースナノファイバーを十分に覆わなくなり(纏わりつかなくなり)、樹脂中での再分散性の向上効果が不十分になるおそれがある。他方、セルロースナノファイバーの平均繊維径が100nmを上回ると、セルロースナノファイバー1本当たりに含まれるセルロース単結晶の個数が増えるため、補強効果が低くなるおそれがある。
【0043】
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0044】
セルロースナノファイバーの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
【0045】
セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さ)は、好ましくは0.1~1,000μm、より好ましくは0.5~500μm、特に好ましくは1~100μmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長が0.1μmを下回ると、セルロースナノファイバー同士の三次元ネットワークを構築できず、補強効果が低下するおそれがある。他方、セルロースナノファイバーの平均繊維長が1,000μmを上回ると、繊維同士が絡み易くなり、再分散性が十分に向上しないおそれがある。
【0046】
セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0047】
セルロースナノファイバーの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
【0048】
セルロースナノファイバーの保水度は、好ましくは250~500%、より好ましくは280~490%、特に好ましくは300~480%である。セルロースナノファイバーの保水度が250%を下回ると、セルロースナノファイバーの分散性が悪化し、他の繊維、例えばパルプと均一に混合することができなくなるおそれがある。他方、セルロースナノファイバーの保水度が500%を上回ると、セルロースナノファイバー自体の保水力が高くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化するおそれがある。
【0049】
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0050】
セルロースナノファイバーの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
【0051】
セルロースナノファイバー結晶化度は、好ましくは95~50%、より好ましくは90~60%、特に好ましくは85~70%である。セルロースナノファイバーの結晶化度が以上の範囲内であれば、再生樹脂の強度を確実に向上することができる。
【0052】
結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整することができる。
【0053】
セルロースナノファイバーの結晶化度は、JIS K 0131(1996)に準拠して測定した値である。
【0054】
セルロースナノファイバーの擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、セルロースナノファイバーは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、セルロース繊維スラリーの脱水性に優れる。
【0055】
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば0.1~100μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは5~25μmである。
【0056】
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0057】
セルロースナノファイバーのピーク値は、ISO-13320(2009)に準拠して測定した値である。より詳細には、まず、粒度分布測定装置を使用してセルロースナノファイバーの水分散液の体積基準粒度分布を調べる。次に、この分布からセルロースナノファイバーの中位径を測定する。この中位径をピーク値とする。
【0058】
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、好ましくは10.0~1.0cps、より好ましくは8.0~1.5cps、特に好ましくは5.0~2.0cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示している。パルプ粘度が以上の範囲内であれば、スラリーに脱水性を付与しつつ、再生樹脂と混練する際にセルロースナノファイバーの分解を抑えられ、十分な補強効果を得ることができる。
【0059】
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、TAPPI T 230に準拠して測定した値である。
【0060】
解繊して得られたセルロースナノファイバーは、必要により、他のセルロース繊維と混合するに先立って水系媒体中に分散して分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
【0061】
セルロースナノファイバーの分散液(濃度1%)のB型粘度は、好ましくは2,000~10cp、より好ましくは1,500~30cp、特に好ましくは1,300~50cpである。分散液のB型粘度を以上の範囲内にすると、他のセルロース繊維との混合が容易になり、また、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
【0062】
セルロースナノファイバーの分散液のB型粘度(固形分濃度1%)は、JIS-Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
【0063】
セルロース繊維中におけるセルロースナノファイバーの含有率は、好ましくは50質量%未満、より好ましくは30質量%未満、特に好ましくは0質量%である。他方、セルロースナノファイバーの含有率が50質量%を超えると、セルロースナノファイバー同士の凝集が強く、再生樹脂中で分散できず、補強効果が十分とならないおそれがある。
【0064】
(マイクロ繊維セルロース)
本形態においては、微細繊維として、セルロースナノファイバーに換えて、セルロースナノファイバーと共にマイクロ繊維セルロースを使用したり、好ましくはマイクロ繊維セルロースのみを使用したりしてもよい。
【0065】
マイクロ繊維セルロースは、セルロースナノファイバーに比べサイズが大きいため再生樹脂中で分散し易く三次元ネットワークを構築し易いが、セルロースナノファイバーの方がマイクロ繊維セルロースに比べ単結晶体に近いため、強度物性が高く再生樹脂への補強効果が期待することができる。双方使用する場合は上記の割合で混合することが望ましい
【0066】
マイクロ繊維セルロースは、セルロースナノファイバーよりも平均繊維径の太い繊維を意味する。具体的には、例えば0.1~15μm、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~5μmである。
【0067】
マイクロ繊維セルロースの平均繊維径が0.1μmを下回ると、セルロースナノファイバーであるのと変わらなくなり、再生樹脂の強度(特に曲げ弾性率)向上効果が十分に得られなくなる。また、解繊時間が長くなり、大きなエネルギーが必要になる。さらに、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化する。脱水性が悪化すると、分散剤と混合した後に乾燥する場合において、当該乾燥に大きなエネルギーが必要になり、乾燥に大きなエネルギーをかけるとマイクロ繊維セルロースが熱劣化して、強度が低下するおそれがある。他方、マイクロ繊維セルロースの平均繊維径が15μmを上回ると、パルプであるのと変わらなくなり、補強効果が十分でなくなるおそれがある。
【0068】
マイクロ繊維セルロースは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができる。原料パルプとしては、セルロースナノファイバーと同じものを使用することができ、セルロースナノファイバーと同じものを使用するのが好ましい。
【0069】
マイクロ繊維セルロースの原料パルプは、セルロースナノファイバーの場合と同様の方法で前処理や解繊をすることができる。ただし、解繊の程度は異なり、例えば、平均繊維径が0.1μm以上に留まる範囲で行う必要がある。以下、セルロースナノファイバーの場合と異なる点を中心に説明する。
【0070】
マイクロ繊維セルロースの平均繊維長(単繊維の長さの平均)は、好ましくは0.02~3.0mm、より好ましくは0.05~2.0mm、特に好ましくは0.1~1.5mmである。平均繊維長が0.02mm未満であると、繊維同士の三次元ネットワークを形成できず、再生樹脂の補強効果が低下するおそれがある。
【0071】
平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
【0072】
マイクロ繊維セルロースの繊維長は、0.2mm以下の割合が60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、75%以上であるのが特に好ましい。当該割合が60%未満であると、再生樹脂の補強効果が十分に得られない可能性がある。他方、マイクロ繊維セルロースの繊維長は、0.2mm以下の割合の上限がなく、全て0.2mm以下であっても良い。
【0073】
マイクロ繊維セルロースのアスペクト比は、好ましくは2~5,000、より好ましくは100~1,000である。アスペクト比とは、平均繊維長を平均繊維幅で除した値である。アスペクト比が大きいほど再生樹脂中において引っかかりが生じる箇所が多くなるため補強効果が上がるが、他方で引っかかりが多い分再生樹脂の延性が低下するものと考えられる。なお、無機フィラーを再生樹脂に混練した場合、フィラーのアスペクト比が大きいほど曲げ強度が向上するが、伸びは著しく低下するとの知見が存在する。
【0074】
マイクロ繊維セルロースのフィブリル化率は、好ましくは1.0~30.0%、より好ましくは1.5~20.0%、特に好ましくは2.0~15.0%である。フィブリル化率が30.0%を超えると、水との接触面積が広くなり過ぎるため、たとえ平均繊維幅が0.1μm以上に留まる範囲で解繊できたとしても、脱水が困難になる可能性がある。他方、フィブリル化率が1.0%未満では、フィブリル同士の水素結合が少なく、強硬な三次元ネットワークを形成することができなくなるおそれがある。
【0075】
マイクロ繊維セルロースの結晶化度は、50%以上であるのが好ましく、60%以上であるのがより好ましい。結晶化度が50%未満であると、パルプやセルロースナノファイバーとの混合性は向上するものの、繊維自体の強度が低下するため、強度を担保することができなくなるおそれがある。
【0076】
他方、マイクロ繊維セルロースの結晶化度は、90%以下であるのが好ましく、88%以下であるのがより好ましく、86%以下であるのが特に好ましい。結晶化度が90%を超えると、分子内の強固な水素結合割合が多くなり繊維自体が剛直となり、再分散性が劣るようになる。
【0077】
マイクロ繊維セルロースの結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、微細化処理で任意に調整可能である。
【0078】
マイクロ繊維セルロースのパルプ粘度は、2cps以上であるのが好ましく、4cps以上であるのがより好ましい。パルプ粘度が2cps未満であると、マイクロ繊維セルロースの凝集を十分に抑制することができないおそれがある。
【0079】
マイクロ繊維セルロースのフリーネスは、500cc以下が好ましく、300cc以下がより好ましく、100cc以下が特に好ましい。マイクロ繊維セルロースのフリーネスが500ccを超えるとマイクロ繊維セルロースの平均繊維径が10μmを超え、強度に関する効果が十分に得られないおそれがある。
【0080】
マイクロ繊維セルロースの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
【0081】
セルロース繊維中におけるマイクロ繊維セルロースの含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは100質量%である。マイクロ繊維セルロースの含有率が50質量%を下回ると、相対的にセルロースナノファイバーの含有率が増えることになり、マイクロ繊維セルロースを含有することによる効果が得られないおそれがある。
【0082】
マイクロ繊維セルロースの各種物性の測定方法は、特にこれに反する記載のない限り、セルロースナノファイバーの場合と同様である。
【0083】
(スラリー)
微細繊維を含むセルロース繊維は、必要により、水系媒体中に分散して分散液(スラリー)にする。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましいが、一部が水と相溶性を有する他の液体である水系媒体も使用することができる。他の液体としては、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
【0084】
スラリーの固形分濃度は、0.5~5.0質量%であるのが好ましく、1.0~3.0質量%であるのがより好ましい。固形分濃度が0.5質量%を下回ると、脱水と乾燥する際に過大なエネルギーが必要となるおそれがある。他方、固形分濃度が5.0質量%を上回ると、スラリー自体の流動性が低下してしまい分散剤を均一に混合できなくなるおそれがある。
【0085】
(分散剤)
セルロース繊維のスラリーには、分散剤を混合することもできる。分散剤としては、多塩基酸、多塩基酸の誘導体、多塩基酸塩類、及び多塩基酸塩類の誘導体の中から選択された少なくともいずれか1種以上の添加剤を添加することができる。この多塩基酸等の添加剤としては、例えば、シュウ酸類、フタル酸類、マロン酸類、コハク酸類、グルタル酸類、アジピン酸類、酒石酸類、グルタミン酸類、セバシン酸類、ヘキサフルオロケイ酸類、マレイン酸類、イタコン酸類、シトラコン酸類、クエン酸類等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。だだし、フタル酸、フタル酸塩類及びこれら(フタル酸類)の誘導体の少なくともいずれか1種以上であるのが好ましい。フタル酸類(誘導体)としては、フタル酸、フタル酸水素カリウム、フタル酸水素ナトリウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸アンモニウム、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジアリル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリイソデシル等が挙げられる。好適にはフタル酸、より好適にはフタル酸塩類を使用するのが好ましい。特に上記の多塩基酸塩類は得られる樹脂組成物の着色が抑えられ、高温での発泡も抑えられる。また、多塩基酸塩類はセルロースと再生樹脂の両方と馴染み易く、再生樹脂の補強効果をさらに向上できるしたがって、微細繊維及び再生樹脂の混練に際して微細繊維が再生樹脂中において確実に分散(再分散)するようになる。加えて、以上の分散剤は、微細繊維及び再生樹脂の相溶性を向上させる役割も有する。この点でも、微細繊維の再生樹脂中における分散性が向上する。したがって、分散剤は、相溶剤ということもできる。
【0086】
(変性処理)
セルロース繊維は変性することも可能である。例えば、酸化、エーテル化、亜リン酸化、エステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化、カルバメート化等が挙げられる。特にカルバメート化処理は、樹脂との分散、親和性に優れ、好適である。
なお、セルロース繊維及び再生樹脂の混練に際して、別途、相溶剤(薬剤)を添加することも考えられるが、この段階で薬剤を添加するよりも、予めセルロース繊維と分散剤(薬剤)を混合している本形態の方が、セルロース繊維に対する薬剤の纏わりつきが均一になり、再生樹脂との相溶性向上効果が高くなる。
【0087】
また、例えば、ポリプロピレンは融点が160℃であり、したがってセルロース繊維及び再生樹脂の混練は、180℃程度で行うとよい。しかるに、この状態で分散剤(液)を添加すると、一瞬で乾燥してしまう。そこで、融点の低い再生樹脂を使用してマスターバッチ(CNF等の濃度の濃い複合樹脂)を作製し、その後に通常の再生樹脂で濃度を下げる方法が一例に存在する。しかしながら、融点の低い再生樹脂は一般的に強度が低い。したがって、当該方法によると、複合樹脂の強度が下がるおそれがある。
【0088】
分散剤の混合量は、セルロース繊維100質量部に対して、好ましくは0.1~1,000質量部、より好ましくは1~500質量部、特に好ましくは10~200質量部である。多塩基酸塩類の配合割合が0.1質量部を下回ると、十分な補強効果を得ることができない。他方、多塩基酸塩類の配合割合が1,000質量部を上回ると、補強効果は頭打ちになる。
【0089】
なお、セルロース繊維の分散性を向上させるという点に着目すれば、分散剤の混合はセルロース繊維による再生樹脂の補強効果を向上させるものである。しかしながら、分散剤は、セルロース繊維の存在故に親水性(親水基を有する)でなくてはならず、この点で再生樹脂の強度を落とす側面も有している。また、分散剤は、時間の経過とともに表面に表出してくる可能性がある。したがって、分散剤の混合量を減らせるというのは、大きな利点である。
【0090】
(製造方法)
製造に用いられる繊維セルロースは原料繊維(パルプ繊維)を叩解(解繊)処理して得られる。原料繊維は、植物由来の繊維、動物由来の繊維、微生物由来の繊維等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。特に、安価、サーマルリサイクルの観点から植物由来のパルプ繊維を原料繊維に使用するのが好ましい。
【0091】
続く混錬工程としては、得られたセルロース繊維に、樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方を混合して混合物(請求項の第1混合物)とする。この第1混合物とする手法には、セルロース繊維に、樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方を混練して混合物とする手法も含まれる。そして、この混合物を再生樹脂と混練する混錬手法を挙げることができる。他の混錬手法としては、セルロース繊維のスラリーに、樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方を混合して第1混合物(請求項の第1混合物)とし、この第1混合物に再生樹脂を混合して第2混合物(請求項の第2混合物)とし、この第2混合物を混錬する混錬手法を挙げることができる。
【0092】
樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方と、再生樹脂との配合割合は次記のようにするとよい。再生樹脂50質量部に対して、樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方を配合する下限は、0質量部超、好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上とするとよい。また配合する上限は、100質量部以下、好ましくは90質量部以下、より好ましくは50質量部以下とするとよい。樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方の配合割合が0だと、バージン樹脂が本来有する強度が最終的に得られるセルロース繊維複合再生樹脂に備わらず、所望の強度にならない。また配合割合の上限が100質量部を超えると、最終的に得られるセルロース繊維複合再生樹脂に占める再生樹脂の割合が少なくなり過ぎ、再生樹脂をリサイクルするメリットに乏しい。
【0093】
なお、樹脂粉末と樹脂ペレットとの配合割合は特に限定されず、次記のとおりとしてよい。
樹脂粉末量:樹脂ペレット量=a:100-a
ただし、aは0以上100以下の数とする。
一例に、樹脂粉末量:樹脂ペレット量=0:100、10:90、50:50、90:10、100:0とすることができる。
【0094】
樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方と、再生樹脂とは、同一の種類からなる樹脂であってもよいし同一でなくてもよい。同一の種類でない場合の例として、樹脂粉末にポリエチレン、樹脂ペレットにフェノール樹脂、再生樹脂にヒドロキシカルボン酸重合体を用いることができる。また、同一の種類である場合の例として、樹脂粉末、樹脂ペレット、及び再生樹脂それぞれにポリカーボネート樹脂を用いることができる。樹脂粉末、樹脂ペレット、及び再生樹脂の全てを同一の種類とすると、化学的物性(融点、分子組成など)がほぼ同一となり製造工程を簡素化でき好ましい。なお、ここでいう「種類」とは、樹脂の種類をいい、例えば、後述する熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に分類される樹脂の中から選ばれる樹脂をいう。
【0095】
樹脂粉末と樹脂ペレットとの少なくともいずれか一方と、セルロース繊維との混合物は、再生樹脂と混練するに先立って乾燥及び粉砕して粉状物にするのが好ましい。この形態によると、再生樹脂との混練に際してセルロース繊維を乾燥させる必要がなく、熱効率が良い。また、混合物に分散剤が混合されているため、当該混合物を乾燥したとしても、微細繊維が再分散しなくなるおそれが低い。
【0096】
セルロース繊維と樹脂粉末を混合する際、薬品を混合してセルロース繊維を疎水化学変性させることができる。疎水化学変性の手法として、例えば、エステル化、エーテル化、アミド化、スルフィド化等を挙げることができる。特に、エステル化による疎水化学変性が好ましい。疎水化学変性により、最終成形物の強度が増す。
【0097】
セルロース繊維をエステル化するには、公知の薬品を適宜使用できるが、例えば、多塩基酸、多塩基酸塩類、多塩基酸の誘導体、及び多塩基酸塩類の誘導体、並びにこれらの物質の無水物の中から選択された少なくともいずれか1種以上の物質を用いるとよい。例えば、フタル酸、フタル酸塩類、フタル酸の誘導体、及びフタル酸塩類の誘導体、並びにこれらの無水物の中から選択された少なくともいずれか1種以上の物質などを挙げることができる。無水多塩基酸を例とすると、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水クエン酸を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上を選択して使用するとよい。好ましくは無水マレイン酸、より好ましくは無水フタル酸を使用できる。
【0098】
なお、セルロース繊維と再生樹脂又はパルプ繊維の溶解パラメータ(cal/cm3)1/2(すなわちSP値)の差は、次式で表すことができる。
(SP値の差)=(セルロース繊維のSPMFC値)―(再生樹脂のSPPOL値)
【0099】
混合物は、必要により、乾燥するに先立って脱水して脱水物にする。この脱水は、例えば、ベルトプレス、スクリュープレス、フィルタープレス、ツインロール、ツインワイヤーフォーマ、バルブレスフィルタ、センターディスクフィルタ、膜処理、遠心分離機等の脱水装置の中から1種又は2種以上を選択使用して行うことができる。
【0100】
混合物の乾燥は、例えば、ロータリーキルン乾燥、円板式乾燥、気流式乾燥、媒体流動乾燥、スプレー乾燥、ドラム乾燥、スクリューコンベア乾燥、パドル式乾燥、一軸混練乾燥、多軸混練乾燥、真空乾燥、攪拌乾燥等の中から1種又は2種以上を選択使用して行うことができる。
【0101】
乾燥した混合物(乾燥物)は、粉砕して粉状物にする。乾燥物の粉砕は、例えば、ビーズミル、ニーダー、ディスパー、ツイストミル、カットミル、ハンマーミル等の中から1種又は2種以上を選択使用して行うことができる。
【0102】
粉状物の平均粒子径は、1,000μm以下であるのが好ましく、800μm以下であるのがより好ましく、600μm以下であるのが特に好ましい。粉状物の平均粒子径が1,000μmを超えると、再生樹脂との混練性に劣るものになるおそれがある。ただし、粉状物の平均粒子径を1μm未満にするには大きなエネルギーが必要になるため、経済的でない。なお、粉状物の平均粒子径の制御は、粉砕の程度を制御することのほか、フィルター、サイクロン等の分級装置を使用した分級によることができる。
【0103】
混合物(粉状物)の嵩比重は、0.03~1.0であるのが好ましく、0.1~0.8であるのがより好ましい。嵩比重が1.0を超えるということはセルロース繊維相互の結合がより強固であり、再生樹脂中で分散させることは容易ではない。他方、嵩比重を0.03未満にするのは、移送コストの面から不利である。
【0104】
嵩比重は、JIS K7365に準じて測定した値である。
【0105】
混合物(粉状物)の水分率は、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。水分率が50%を超えると、再生樹脂と混練する際のエネルギーが膨大になり、経済的でない。
【0106】
繊維の水分率は、定温乾燥機を用いて、試料を105℃で6時間以上保持し質量の変動が認められなくなった時点の質量を乾燥後質量とし、下記式にて算出した値である。
繊維水分率(%)=[(乾燥前質量-乾燥後質量)÷乾燥前質量]×100
【0107】
以上のようにして得た粉状物は、再生樹脂と混練し、セルロース繊維複合再生樹脂が得られる。この混練は、例えば、ペレット状の再生樹脂と粉状物とを混ぜ合わす方法によることのほか、再生樹脂をまず溶融し、この溶融物の中に粉状物を添加するという方法によることもできる。
【0108】
樹脂粉末、再生樹脂、及びバージン樹脂のそれぞれに使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0109】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、脂肪族ポリエステル樹脂や芳香族ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂、ポリスチレン、メタアクリレート、アクリレート等のポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0110】
ただし、ポリオレフィン及びポリエステル樹脂の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましい。また、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレンを使用するのが好ましい。さらに、ポリエステル樹脂としては、脂肪族ポリエステル樹脂として、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等を例示することができ、芳香族ポリエステル樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート等を例示することができるが、生分解性を有するポリエステル樹脂(単に「生分解性樹脂」ともいう。)を使用するのが好ましい。
【0111】
生分解性樹脂としては、例えば、ヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル、カプロラクトン系脂肪族ポリエステル、二塩基酸ポリエステル等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0112】
ヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルとしては、例えば、乳酸、リンゴ酸、グルコース酸、3-ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体や、これらのヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種を用いた共重合体等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、ポリ乳酸、乳酸と乳酸を除く上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種とカプロラクトンとの共重合体を使用するのが好ましく、ポリ乳酸を使用するのが特に好ましい。
【0113】
この乳酸としては、例えば、L-乳酸やD-乳酸等を使用することができ、これらの乳酸を単独で使用しても、2種以上を選択して使用してもよい。
【0114】
カプロラクトン系脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリカプロラクトンの単独重合体や、ポリカプロラクトン等と上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0115】
二塩基酸ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0116】
生分解性樹脂は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0117】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂等を使用することができる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0118】
樹脂粉末、再生樹脂、及びバージン樹脂には、無機充填剤が、好ましくはサーマルリサイクルに支障が出ない割合で含有されていてもよい。
【0119】
無機充填剤としては、例えば、Fe、Na、K、Cu、Mg、Ca、Zn、Ba、Al、Ti、ケイ素元素等の周期律表第I族~第VIII族中の金属元素の単体、酸化物、水酸化物、炭素塩、硫酸塩、ケイ酸塩、亜硫酸塩、これらの化合物よりなる各種粘土鉱物等を例示することができる。
【0120】
具体的には、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ほう酸アルミニウム、アルミナ、酸化鉄、チタン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、クレーワラストナイト、ガラスビーズ、ガラスパウダー、珪砂、硅石、石英粉、珪藻土、ホワイトカーボン、ガラスファイバー等を例示することができる。これらの無機充填剤は、複数が含有されていてもよい。また、古紙パルプに含まれるものであってもよい。
【0121】
セルロース繊維及び再生樹脂の配合割合は、セルロース繊維が1質量部以上、再生樹脂が80質量部以下であるのが好ましく、セルロース繊維が2質量部以上、再生樹脂が75質量部以下であるのがより好ましく、セルロース繊維が3質量部以上、再生樹脂が70質量部以下であるのが特に好ましい。
【0122】
また、セルロース繊維が10質量部以下、再生樹脂が30質量部以上であるのが好ましく、セルロース繊維が9質量部以下、再生樹脂が40質量部以上であるのがより好ましく、セルロース繊維が8質量部以下、再生樹脂が50質量部以上であるのが特に好ましい。ただし、セルロース繊維の配合割合が5~10質量部であると、セルロース繊維複合再生樹脂の強度、特に曲げ強度及び引張り弾性率の強度を著しく向上させることができる。
【0123】
なお、最終的に得られる複合再生樹脂の組成物に含まれるセルロース繊維及び再生樹脂の含有割合は、通常、セルロース繊維及び再生樹脂の上記配合割合と同じとなる。
【0124】
(その他の組成物)
複合再生樹脂の組成物には、以上の微細繊維やパルプ等のほか、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などの各種植物体から得られた植物材料に由来する繊維を含ませることもでき、含まれていてもよい。
【0125】
複合再生樹脂の組成物には、例えば、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤、ラジカル捕捉剤、発泡剤等の中から1種又は2種以上を選択して、本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができる。これらの原料は、セルロース繊維の分散液に添加しても、混合物及び再生樹脂の混練の際に添加しても、これらの混練物に添加しても、その他の方法で添加してもよい。ただし、製造効率の面からは、混合物及び再生樹脂の混練の際に添加するのが好ましい。
【0126】
(成形処理)
混合物及び再生樹脂の混練物は、必要により再度混練する等した後、所望の形状に成形することができる。この成形の大きさや厚さ、形状等は、特に限定されず、例えば、シート状、ペレット状、粉末状、繊維状等とすることができる。
【0127】
成形処理の際の温度は、再生樹脂のガラス転移点以上であり、再生樹脂の種類によって異なるが、例えば100~300℃、好ましくは160~200℃である。
【0128】
混練物の成形は、例えば、金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等によることができる。また、混練物を紡糸して繊維状にし、前述した植物材料等と混繊してマット形状、ボード形状とすることもできる。混繊は、例えば、エアーレイにより同時堆積させる方法等によることができる。
【0129】
混練物を成形する装置としては、例えば、射出成形機、吹込成形機、中空成形機、ブロー成形機、圧縮成形機、押出成形機、真空成形機、圧空成形機等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0130】
以上の成形は、混練に続いて行うことも、混練物をいったん冷却し、破砕機等を使用してチップ化した後、このチップを押出成形機や射出成形機等の成形機に投入して行うこともできる。もちろん、成形は、本発明の必須の要件ではない。
【実施例
【0131】
次に、本発明の実施例の操作手順について、説明する。後述のポリプロピレンペレットは、リサイクルされていないポリプロピレンを主成分とする樹脂である。ポリプロピレン粉末は、このポリプロピレンを粉末状にしたものである。
【0132】
(実施例1)
(1)固形分濃度2.6質量%のマイクロ繊維セルロース水分散液384gに、フタル酸水素カリウム11g、平均粒子径136μmのポリプロピレン粉末76gを添加し、105℃で加熱乾燥し、微細セルロース繊維混合物を得た。この微細セルロース繊維混合物の含水率は10%未満であった。この時使用したマイクロ繊維セルロースは、平均繊維長0.17mm、であった。
(2)この微細セルロース繊維混合物に無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)3gを混合後、二軸混錬機を用いて180℃、200rpmの条件で混錬し、マイクロ繊維セルロース複合樹脂を得た。
(3)このマイクロ繊維セルロース複合樹脂をペレッターで切断し、円柱状(径2mm、高さ2mm)のマイクロ繊維セルロース複合樹脂ペレットを得た。
(4)マイクロ繊維セルロース複合樹脂ペレットと再生樹脂とを、マイクロ繊維セルロース複合樹脂ペレット:再生樹脂=1:1の比率で二軸混錬機を用いて180℃、200rpmの条件で混錬して混錬物を得た。
(5)この混錬物をペレッターで切断し、円柱状(径2mm、高さ2mm)としたものを180℃にして直方体試験片(長さ59mm、幅9.6mm、厚さ3.8mm)に射出成型した。
【0133】
(実施例2)
(1)固形分濃度2.6質量%のマイクロ繊維セルロース水分散液192gに、フタル酸水素カリウム5.5g、平均粒子径136μmのポリプロピレン粉末38g、再生樹脂50gを添加し、105℃で加熱乾燥し、微細セルロース繊維混合物を得た。この微細セルロース繊維混合物の含水率は10%未満であった。
(2)この微細セルロース繊維混合物に無水マレイン酸変性ポリプロピレン1.5gを混合後、二軸混錬機を用いて180℃、200rpmの条件で混錬し、マイクロ繊維セルロース複合樹脂を得た。
(3)このマイクロ繊維セルロース複合樹脂をペレッターで切断し、円柱状(径2mm、高さ2mm)としたものを、180℃にして直方体試験片(長さ59mm、幅9.6mm、厚さ3.8mm)に射出成型した。
【0134】
(実施例3)
(1)固形分濃度2.6質量%のマイクロ繊維セルロース水分散液192gに、フタル酸水素カリウム5.5g、平均粒子径136μmのポリプロピレン粉末28g、再生樹脂50g、平均粒子径3mmのポリプロピレンペレット10gを添加し、105℃で加熱乾燥し、微細セルロース繊維混合物を得た。この微細セルロース繊維混合物の含水率は10%未満であった。
(2)この微細セルロース繊維混合物に無水マレイン酸変性ポリプロピレン1.5gを混合後、二軸混錬機を用いて180℃、200rpmの条件で混錬し、マイクロ繊維セルロース複合樹脂を得た。
(3)このマイクロ繊維セルロース複合樹脂をペレッターで切断し、円柱状(径2mm、高さ2mm)としたものを、180℃にして直方体試験片(長さ59mm、幅9.6mm、厚さ3.8mm)に射出成型した。
【0135】
(実施例4)
(1)固形分濃度2.6質量%のマイクロ繊維セルロース水分散液192gに、フタル酸水素カリウム5.5g、ポリプロピレン粉末18g、再生樹脂50g、ポリプロピレンペレット20gを添加し、105℃で加熱乾燥し、微細セルロース繊維混合物を得た。この微細セルロース繊維混合物の含水率は10%未満であった。
(2)この微細セルロース繊維混合物に無水マレイン酸変性ポリプロピレン1.5gを混合後、二軸混錬機を用いて180℃、200rpmの条件で混錬し、マイクロ繊維セルロース複合樹脂を得た。
(3)このマイクロ繊維セルロース複合樹脂をペレッターで切断し、円柱状(径2mm、高さ2mm)としたものを、180℃にして直方体試験片(長さ59mm、幅9.6mm、厚さ3.8mm)に射出成型した。
【0136】
(実施例5)
(1)固形分濃度2.6質量%のマイクロ繊維セルロース水分散液192gに、フタル酸水素カリウム5.5g、ポリプロピレン粉末8g、再生樹脂50g、ポリプロピレンペレット30gを添加し、105℃で加熱乾燥し、微細セルロース繊維混合物を得た。この微細セルロース繊維混合物の含水率は10%未満であった。
(2)この微細セルロース繊維混合物に無水マレイン酸変性ポリプロピレン1.5gを混合後、二軸混錬機を用いて180℃、200rpmの条件で混錬し、マイクロ繊維セルロース複合樹脂を得た。
(3)このマイクロ繊維セルロース複合樹脂をペレッターで切断し、円柱状(径2mm、高さ2mm)としたものを、180℃にして直方体試験片(長さ59mm、幅9.6mm、厚さ3.8mm)に射出成型した。
【0137】
(実施例6)
(1)固形分濃度2.6質量%のマイクロ繊維セルロース水分散液192gに、フタル酸水素カリウム5.5g、再生樹脂50g、ポリプロピレンペレット38gを添加し、105℃で加熱乾燥し、微細セルロース繊維混合物を得た。この微細セルロース繊維混合物の含水率は10%未満であった。
(2)この微細セルロース繊維混合物に無水マレイン酸変性ポリプロピレン1.5gを混合後、二軸混錬機を用いて180℃、200rpmの条件で混錬し、マイクロ繊維セルロース複合樹脂を得た。
(3)このマイクロ繊維セルロース複合樹脂をペレッターで切断し、円柱状(径2mm、高さ2mm)としたものを、180℃にして直方体試験片(長さ59mm、幅9.6mm、厚さ3.8mm)に射出成型した。
【0138】
(比較例1)
(1)再生樹脂50g、ポリプロピレンペレット50gの混合物を二軸混錬機を用いて180℃、200rpmの条件で混錬し、再生樹脂とポリプロピレンからなる複合樹脂を得た。
(2)この複合樹脂をペレッターで切断し、円柱状(径2mm、高さ2mm)としたものを、180℃にして直方体試験片(長さ59mm、幅9.6mm、厚さ3.8mm)に射出成型した。
【0139】
各複合樹脂について、曲げ弾性率を調べ、曲げ試験評価を行った。結果を表1に示した。
【0140】
(曲げ弾性率)
各セルロースナノファイバー複合樹脂を曲げ試験片に成形し、この成形物について曲げ弾性率を調べた。曲げ弾性率は、JIS K7171:2008に準拠して測定した。
【0141】
(曲げ試験評価)
再生樹脂の曲げ弾性率を1とした場合の、セルロース繊維複合再生樹脂の曲げ弾性率(倍率)が1.4倍以上であれば、曲げ試験評価を「〇」と評価した。
再生樹脂の曲げ弾性率を1とした場合の、セルロース繊維複合再生樹脂の曲げ弾性率(倍率)が1.2倍以上、1.4倍未満であれば、曲げ試験評価を「△」と評価した。
再生樹脂の曲げ弾性率を1とした場合の、セルロース繊維複合再生樹脂の曲げ弾性率(倍率)が1.2倍未満であれば、曲げ試験評価を「×」と評価した。
【0142】
実施例の結果を表1に示す。
【表1】
表1中、薬品はフタル酸水素カリウムと無水マレイン酸変性ポリプロピレンを表す。数値は配合割合を表す。
【0143】
(その他)
・繊維分析について、数平均繊維径と繊維長0.2mm以下の割合は、バルメット社製の繊維分析計「FS5」により測定した。
・結晶化度について、セルロース繊維は、非晶質部分と結晶質部分とを有し、結晶化度は、セルロース繊維全体(非晶質部分と結晶質部分の合計)に占める晶質部分の割合を意味する。
・マイクロ繊維セルロースのパルプ粘度は、JIS P 8215(1998)に準拠して測定した。パルプ粘度が高いほどマイクロ繊維セルロースの重合度が高いということができる。
・フリーネスは、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定した。
・平均粒子径は、JIS Z8825:2013に準拠して測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、セルロース繊維複合再生樹脂及びその製造方法として利用可能である。