(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】蓄熱式バーナの熱交換部構造
(51)【国際特許分類】
F23L 15/02 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
F23L15/02
(21)【出願番号】P 2019198511
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2021-07-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年8月26日、株式会社TYK 大阪営業所
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】影山 健友
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-249239(JP,A)
【文献】特開2008-115021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に延びる外筒部、及び、該外筒部の内部で筒状に延びる内筒部を備え、前記外筒部と前記内筒部との間の空間に蓄熱体が充填された熱交換部を備えており、前記内筒部に供給された燃焼ガスの燃焼により高温となった排ガスを前記熱交換部に通すことにより、前記排ガスの熱を前記蓄熱体で回収する第一モードと、前記燃焼ガスの燃焼のために供給される空気を前記熱交換部に通すことにより、前記蓄熱体によって前記空気を予熱する第二モードとが、交互に切り替えられる蓄熱式バーナで
あって、前記外筒部及び前記内筒部の延びる軸方向に前記通気口が開口している直管型の蓄熱式バーナであり、
前記排ガスを排出する排出口、前記空気が供給される供給口、及び、前記排出口と前記供給口を兼ねる給排気口の何れかである通気口が前記熱交換部の一部で開口しており、
前記熱交換部において少なくとも前記通気口に臨む部分にボール状の蓄熱体が充填されていると共に、
通気性を有する材料で形成された被覆部によって前記通気口が被覆されている
ものであり、
筒状に形成されており前記外筒部の内周面に当接している外筒当接部と、筒状に形成されており前記内筒部の外周面に当接している内筒当接部と、通気性を有する材料で形成されており前記外筒当接部及び内筒当接部それぞれの一端を同じ側で連結している通気性底部と、通気性を有する材料で形成されており前記通気性底部とは反対側で前記外筒当接部と内筒当接部との間の空間を開閉する通気性蓋部とを有するカゴ体を備えており、
前記通気性蓋部の一部が前記被覆部を構成している
ことを特徴とする蓄熱式バーナの熱交換部構造。
【請求項2】
筒状に延びる外筒部、及び、該外筒部の内部で筒状に延びる内筒部を備え、前記外筒部と前記内筒部との間の空間に蓄熱体が充填された熱交換部を備えており、前記内筒部に供給された燃焼ガスの燃焼により高温となった排ガスを前記熱交換部に通すことにより、前記排ガスの熱を前記蓄熱体で回収する第一モードと、前記燃焼ガスの燃焼のために供給される空気を前記熱交換部に通すことにより、前記蓄熱体によって前記空気を予熱する第二モードとが、交互に切り替えられる蓄熱式バーナであって、前記外筒部及び前記内筒部の延びる軸方向に交差する方向に前記通気口が開口している枝管型の蓄熱式バーナであり、
通気性を有する材料で筒状に形成されており前記外筒部の内周面に当接している通気性外筒と、筒状に形成されており前記内筒部の外周面に当接している内筒当接部と、通気性を有する材料で形成されており前記通気性外筒及び内筒当接部それぞれの一端を同じ側で連結している通気性底部とを有するカゴ体を備えており、
前記通気性外筒の一部が前記被覆部を構成している
ことを特徴とす
る蓄熱式バーナの熱交換部構造。
【請求項3】
前記ボール状の蓄熱体は、炭化ケイ素質の焼結体で形成された中実ボールである
ことを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の蓄熱式バーナの熱交換部構造。
【請求項4】
前記被覆部を形成している前記通気性を有する材料は、網体である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の蓄熱式バーナの熱交換部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱式バーナの熱交換部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鍛造炉、熱処理炉、溶解炉、焼成炉などの工業炉で使用される蓄熱式バーナ(リジェネバーナ)は、バーナの燃焼により高温となった排ガスと、バーナの燃焼のために供給されるガスとを、交互に熱交換部に流通させるべく、ガスの流通方向が所定の時間間隔で切り換えられるバーナである。熱交換部の内部には蓄熱体が配置されており、排ガスの熱は蓄熱体で回収され、バーナの燃焼のために新たに供給されるガスを予熱するために利用される。このような蓄熱式バーナには、それぞれ熱交換部と組み合わせられた一対のバーナを用いるタイプ(ツインリジェネバーナ)と、一つのバーナでガスの流通方向を切り替えるタイプ(セルフリジェネバーナ)とがある。
【0003】
蓄熱式バーナの熱交換部には多数の蓄熱体が充填されているが、蓄熱体としては、従前よりアルミナ製の中実ボール(「アルミナボール」と称されている)が使用されている(例えば、特許文献1参照)。また、アルミナ、コージェライト、ムライト等のセラミックスのハニカム構造体を、蓄熱式バーナ用の蓄熱体として使用する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
ハニカム構造体は、多数の隔壁により区画されたセルを備え、セルは単一の方向に延びているため、ガスの流通に伴う圧力損失が小さいというメリットがある。これに対し、ボール状の蓄熱体を熱交換部に充填した場合、ガスは蓄熱体間の空隙を流通するため、圧力損失が大きいというデメリットがある。
【0005】
また、ハニカム構造体は比表面積が非常に大きいため、流体に接触する面積が非常に大きい利点がある反面、嵩高さが同程度の中実の蓄熱体に比べて質量が非常に小さい。そのため、嵩高さが同程度の蓄熱体に関しては、ハニカム構造体よりも中実のボール状の蓄熱体の方が、熱容量が大きいというメリットがある。
【0006】
更に、ハニカム構造体は、押出成形によって成形されていることにより断面形状が単一の柱状であり、セルの延びる方向を一致させるように蓄熱部内に積み重ねられるため、多数を蓄熱部に充填する作業が非常に煩雑である。これに対し、ボール状の蓄熱体は、蓄熱部に投入するだけで自ずとデッドスペースが小さくなるように充填されるため、作業性が高いというメリットがある。
【0007】
上記のようなメリット及びデメリットを勘案した結果として、ボール状の蓄熱体は、依然として蓄熱式バーナの蓄熱体として採用されることが多い。
【0008】
一方、蓄熱式バーナに対しては、全体が占める体積をコンパクトにすることを意図して、排ガスを排出する排気口、及び、新たに供給されるガスを導入する導入口の少なくとも一方として使用される通気口の縁まで、熱交換部として使用したいという要請がある。しかしながら、ボール状の蓄熱体を通気口の縁まで充填すると、通気口から蓄熱体が転がり落ちてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-343829号公報
【文献】特開平8-247671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、通気口の縁まで熱交換部として使用されている蓄熱式バーナであっても、ボール状の蓄熱体が転がり落ちることなく充填されている蓄熱式バーナの熱交換部構造の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる蓄熱式バーナの熱交換部構造は、
「筒状に延びる外筒部、及び、該外筒部の内部で筒状に延びる内筒部を備え、前記外筒部と前記内筒部との間の空間に蓄熱体が充填された熱交換部を備えており、前記内筒部に供給された燃焼ガスの燃焼により高温となった排ガスを前記熱交換部に通すことにより、前記排ガスの熱を前記蓄熱体で回収する第一モードと、前記燃焼ガスの燃焼のために供給される空気を前記熱交換部に通すことにより、前記蓄熱体によって前記空気を予熱する第二モードとが、交互に切り替えられる蓄熱式バーナにおいて、
前記排ガスを排出する排出口、前記空気が供給される供給口、及び、前記排出口と前記供給口を兼ねる給排気口の何れかである通気口が前記熱交換部の一部で開口しており、
前記熱交換部において少なくとも前記通気口に臨む部分にボール状の蓄熱体が充填されていると共に、
通気性を有する材料で形成された被覆部によって前記通気口が被覆されている」ものである。
【0012】
「ボール状の蓄熱体」の材質は特に限定されるものではなく、炭化珪素、チタン酸アルミニウム、アルミナ、コージェライト等のセラミックスであっても良いし、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属であっても良い。
【0013】
「通気口」は、燃焼ガスの燃焼により高温となった排ガスを排出する「排出口」、燃焼ガスの燃焼のために供給される空気が供給される「供給口」、及び、排出口と供給口を兼ねる「給排気口」の総称である。
【0014】
「通気性を有する材料」としては、網体、パンチングメタルのシート、金属製の糸やリボンを交絡させたシート、セラミックス繊維を織編した、または交絡させたシート、を例示することができる。
【0015】
本構成では、熱交換部において少なくとも通気口に臨む部分にボール状の蓄熱体が充填されているため、通気口からボール状の蓄熱体が転がり落ちてしまうおそれがあるところ、通気性を有する材料で形成された被覆部で通気口が被覆されているため、ボール状の蓄熱体が転がり落ちることなく、熱交換部の内部に確実に保持される。
【0016】
本発明にかかる蓄熱式バーナの熱交換部構造は、上記構成に加え、
「前記蓄熱式バーナは、前記外筒部及び前記内筒部の延びる軸方向に交差する方向に前記通気口が開口している枝管型の蓄熱式バーナであり、
通気性を有する材料で筒状に形成されており前記外筒部の内周面に当接している通気性外筒と、筒状に形成されており前記内筒部の外周面に当接している内筒当接部と、通気性を有する材料で形成されており前記通気性外筒及び内筒当接部それぞれの一端を同じ側で連結している通気性底部とを有するカゴ体を備えており、
前記通気性外筒の一部が前記被覆部を構成している」ものとすることができる。
【0017】
本構成は、蓄熱式バーナが枝管型の場合であって、カゴ体の通気性外筒の一部が通気口を被覆する被覆部に相当する場合である。通気口と熱交換部との間で流通するガスは、通気性を有する材料で形成された通気性底部と通気性外筒とを、問題なく通過することができる。なお、通気性外筒を形成している通気性を有する材料と、通気性底部形成している通気性を有する材料とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
カゴ体において通気性外筒と内筒当接部との間の空間に、予めボール状の蓄熱体を充填しておき、蓄熱式バーナの外筒部と内筒部との間の空間にカゴ体を挿入すれば、多数の蓄熱体をカゴ体ごと、短時間で容易に熱交換部の内部に配置することができる。
【0019】
本発明にかかる蓄熱式バーナの熱交換部構造は、上記構成に替えて、
「前記蓄熱式バーナは、前記外筒部及び前記内筒部の延びる軸方向に前記通気口が開口している直管型の蓄熱式バーナであり、
筒状に形成されており前記外筒部の内周面に当接している外筒当接部と、筒状に形成されており前記内筒部の外周面に当接している内筒当接部と、通気性を有する材料で形成されており前記外筒当接部及び内筒当接部それぞれの一端を同じ側で連結している通気性底部と、通気性を有する材料で形成されており前記通気性底部とは反対側で前記外筒当接部と内筒当接部との間の空間を開閉する通気性蓋部とを有するカゴ体を備えており、
前記通気性蓋部の一部が前記被覆部を構成している」ものとすることができる。
【0020】
本構成は、蓄熱式バーナが直管型の場合であって、カゴ体の通気性蓋部の一部が通気口を被覆する被覆部に相当する場合である。通気口と熱交換部との間で流通するガスは、通気性を有する材料で形成された通気性底部と通気性蓋部とを、問題なく通過することができる。なお、通気性蓋部を形成している通気性を有する材料と、通気性底部形成している通気性を有する材料とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
カゴ体において外筒当接部と内筒当接部との間の空間に、予めボール状の蓄熱体を充填しておき、蓄熱式バーナの外筒部と内筒部との間の空間にカゴ体を挿入すれば、多数の蓄熱体をカゴ体ごと、短時間で容易に熱交換部の内部に配置することができる。
【0022】
本発明にかかる蓄熱式バーナの熱交換部構造は、上記構成において、
「前記被覆部を形成している前記通気性を有する材料は、網体である」ものとすることができる。
【0023】
網体は、汎用的な材料で入手しやすく安価であるため、本構成における被覆部は、低コストで容易に製造することができる。
【0024】
本発明にかかる蓄熱式バーナの熱交換部構造は、上記構成において、
「前記ボール状の蓄熱体は、炭化ケイ素質の焼結体で形成された中実ボールである」ものとすることができる。
【0025】
炭化ケイ素は熱伝導率が高い。そのため、炭化ケイ素質の焼結体で形成された中実ボールである蓄熱体は、従前より多用されているアルミナボールに比べて、排ガスから速やかに熱を回収し、供給される空気に速やかに熱を与えて予熱することができる。
【0026】
また、ボール状の蓄熱体を中実とすると熱容量を大きくできると期待されるが、中実のアルミナボールでは、内外方向に温度分布があり中心部の温度が低いため、中心部が熱交換に寄与しにくい。これに対し、炭化ケイ素は熱伝導率が高いため、内外方向の温度分布が殆どなく、中心部も有効に熱交換に寄与させることができる。
【0027】
加えて、炭化ケイ素は熱膨張率が小さいため、排ガスから熱を回収する第一モードと空気に熱を与えて予熱する第二モードとの切り替えが繰り返されることによる熱衝撃に対する耐性が高い。そのため、炭化ケイ素質の焼結体であるボール状の蓄熱体は、アルミナボールに比べて、熱衝撃に起因する割れ等の損傷が大幅に低減されている。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、通気口の縁まで熱交換部として使用されている蓄熱式バーナであっても、ボール状の蓄熱体が転がり落ちることなく充填されている蓄熱式バーナの熱交換部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1(a)は枝管型の蓄熱式バーナの縦断面図であり、
図1(b)は
図1(a)の蓄熱式バーナの熱交換部に蓄熱体が充填された状態の縦断面図であり、
図1(c)は通気性円筒の斜視図であり、
図1(d)は変形例の通気性円筒の斜視図である。
【
図2】
図2(a)は
図1(a)の蓄熱式バーナに使用されるカゴ体の斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)のカゴ体の縦断面図である。
【
図3】
図3(a)は
図1(a)の蓄熱式バーナに使用される他のカゴ体の斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)のカゴ体の縦断面図である。
【
図4】
図4(a)は直管型の蓄熱式バーナの縦断面図であり、
図4(b)は
図4(a)の蓄熱式バーナに使用されるカゴ体の斜視図である。
【
図5】
図5は
図1(a)の蓄熱式バーナの熱交換部にボール状の蓄熱体のみが充填される場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態である蓄熱式バーナ1,2の熱交換部20の構造について、図面を用いて具体的に説明する。
【0031】
蓄熱式バーナ1,2は、円筒状に延びる外筒部11、及び、外筒部11の内部で円筒状に延びる内筒部12を備えており、外筒部11と内筒部12との間の空間が、蓄熱体が充填される熱交換部20である。蓄熱式バーナ1,2では、内筒部12に供給された燃焼ガスの燃焼により高温となった排ガスを熱交換部20に通すことにより、排ガスの熱を蓄熱体で回収する第一モードと、燃焼ガスの燃焼のために供給される空気を熱交換部20に通すことにより蓄熱体によって空気を予熱する第二モードとが、交互に切り替えられる。
【0032】
蓄熱式バーナ1,2では、外筒部11と内筒部12との間の空間を外部に開放する通気口10が設けられている。本実施形態の蓄熱式バーナ1,2は、全体が占める体積をコンパクトにすることを意図して、外筒部11と内筒部12との間の空間において通気口10に臨む部分まで、熱交換部20として使用している。ここでは、熱交換部20のうち、通気口10に臨む部分を開口付き熱交換部21と称し、それ以外の部分を熱交換主部22と称する。
【0033】
熱交換主部22において、第一モードの上流端(第二モードの下流端)には、蓄熱体の移動を制限するストッパ18が設けられている。ストッパ18は、外筒部11と内筒部12との間の空間を、放射状に連結する複数の棒状部材で構成されている。また、蓄熱式バーナ1,2には、通気口10に対して第一モードにおける上流側で、蓄熱式バーナ1,2を工業炉の炉壁に取り付けるためのフランジ部19が、外筒部11の外表面から外方に張り出すように設けられている。
【0034】
蓄熱式バーナ1は、
図1に示すように、外筒部11及び内筒部12の延びる軸方向に交差する方向に通気口10が開口している枝管型である。通気口10は、第一モードにおける下流端の近傍(第二モードにおける上流端の近傍)で、外筒部11を貫通している。ここでは、通気口10が、排出口と供給口を兼ねる給排気口である場合を例示する。外筒部11と内筒部12との間の空間において、第一モードにおける下流端(第二モードにおける上流端)は、蓋部16によって開閉される端部開口15である。蓋部16には、内筒部12の内部空間と連通する孔部16hが貫設されている。
【0035】
このような蓄熱式バーナ1の熱交換部20には、多数の隔壁により区画されたセルが単一の方向に延びているハニカム構造の蓄熱体52と、中実のボール状の蓄熱体51とを、組み合わせて充填することができる。例えば、
図1(b)に示すように、熱交換主部22にハニカム構造の蓄熱体52を複数段に積層すると共に、開口付き熱交換部21にボール状の蓄熱体51を充填することができる。ハニカム構造の蓄熱体52は、外径が外筒部11の内径より僅かに小さく、内径が内筒部12の外径より僅かに大きい円環状であり、セルが延びる方向を外筒部11及び内筒部12の軸方向に一致させて充填する。なお、本実施形態では、ハニカム構造の蓄熱体52、及び、ボール状の蓄熱体51として、何れも炭化ケイ素質の焼結体を使用している。
【0036】
本実施形態では、開口付き熱交換部21にボール状の蓄熱体51を充填するに当たり、
図1(c)に示すように、通気性を有する材料で円筒状に形成された通気性円筒31を使用する。本実施形態では、通気性を有する材料として、ステンレス鋼製の網体を使用している。通気性円筒31の径は、外筒部11の内径より僅かに小さく設定されている。通気性円筒31は、外筒部11の内周面に当接するように外筒部11の内部に挿入されており、その一部で通気口10を被覆している。
【0037】
なお、通気性円筒は、このように網体で形成する他、
図1(d)に示すように、パンチングメタルのシートで円筒状に形成された通気性円筒31bとすることもできる。
【0038】
蓄熱式バーナ1の熱交換部20をこのような構造とすることにより、圧力損失が小さいハニカム構造の蓄熱体52の利点と、熱容量が大きいボール状の蓄熱体51の利点とを、バランスさせて使用することができる。
【0039】
また、このような枝管型の蓄熱式バーナ1を、通気口10の縁までを熱交換部20(開口付き熱交換部21)として使用する場合、その開口付き熱交換部21にハニカム構造の蓄熱体52を充填したとすると、熱交換部20におけるガスの流通に不具合を生じる。つまり、通気口10が開口している方向が外筒部11及び内筒部12の軸方向と交差しているため、開口付き熱交換部21におけるハニカム構造の蓄熱体52のセルの方向を、熱交換主部22におけるハニカム構造の蓄熱体52のセルの方向と一致させると、ガスを通気口10に流通させることができない。一方、開口付き熱交換部21においてハニカム構造の蓄熱体52のセルの方向を通気口10の方向と一致させると、そこを通過したガスを、熱交換主部22におけるハニカム構造の蓄熱体52に流通させることができない。これに対し、開口付き熱交換部21にボール状の蓄熱体51を充填している本実施形態では、蓄熱体51間でランダムな方向に空隙が存在している。そのため、熱交換主部22に充填されたハニカム構造の蓄熱体52のセルと通気口10との間で、ガスを問題なく流通させることができる。
【0040】
更に、本実施形態では、ボール状の蓄熱体51、及び、ハニカム構造の蓄熱体52の何れも炭化ケイ素質の焼結体である。炭化ケイ素は熱伝導率が高いため、流通させるガスとの間の熱交換が速やかに行われる利点がある。すなわち、燃焼ガスの燃焼により高温となった排ガスから速やかに熱を回収できると共に、燃焼ガスの燃焼のために新たに供給される空気に、蓄熱体から速やかに熱を与えることができる。加えて、炭化ケイ素は熱膨張率が小さいため、第一モードと第二モードとの切り替えの繰り返しに伴う熱衝撃に対する耐性が高い利点がある。
【0041】
そして、枝管型の蓄熱式バーナ1では、通気口10に臨んでいる開口付き熱交換部21にボール状の蓄熱体51を充填した場合、通気口10からボール状の蓄熱体51が転がり落ちてしまうおそれがあるところ、本実施形態では網体で形成された通気性円筒31の一部で通気口10が被覆されているため、ボール状の蓄熱体51が転がり落ちることなく、開口付き熱交換部21の内部に確実に保持されている。すなわち、通気性円筒31の一部が本発明の「被覆部」に相当する。
【0042】
上記では、通気口10を被覆する被覆部が通気性円筒31の一部である場合を例示したが、これに限定されず、
図2に示すようなカゴ体32を使用することができる。カゴ体32は、通気性を有する材料で円筒状に形成された通気性外筒41と、通気性を有する材料で円筒状に形成されており通気性外筒41の内部に同心に設けられた内筒当接部42と、通気性を有する材料で形成されており通気性外筒41及び内筒当接部42それぞれの一端を同じ側で連結している通気性底部43とを備えている。ここでは、通気性外筒41、内筒当接部42、及び、通気性底部43それぞれを形成している通気性を有する材料が、何れもステンレス鋼製の網体である場合を例示している。通気性外筒41の径は蓄熱式バーナ1の外筒部11の内径より僅かに小さく設定されており、内筒当接部42の径は内筒部12の外径より僅かに大きく設定されている。
【0043】
このようなカゴ体32は、枝管型の蓄熱式バーナ1を縦向き(外筒部11及び内筒部12の軸方向が鉛直方向となる向き)で使用する場合、ボール状の蓄熱体51を開口付き熱交換部21に充填する作業を容易とする。具体的には、通気性外筒41と内筒当接部42との間の充填空間Sにボール状の蓄熱体51を充填した状態で、蓋部16を外した蓄熱式バーナ1の端部開口15から、通気性底部43を第一モードにおける上流側に向けた状態で、カゴ体32を開口付き熱交換部21に挿入することができる。これにより、通気性外筒41が外筒部11の内周面に当接すると共に、内筒当接部42が内筒部12の外周面に当接し、通気性底部43が最上層のハニカム構造の蓄熱体52の上に載置された状態となる。
【0044】
熱交換部20と通気口10との間で流通するガスは、網体で形成された通気性底部43と通気性外筒41とを、問題なく通過することができる。なお、本実施形態では、内筒当接部42も網体で形成されているが、内筒当接部42は薄板状の材料など、通気性を有していない材料で形成されていても構わない。
【0045】
ボール状の蓄熱体51が通気口10から転がり落ちるおそれは、カゴ体32の通気性外筒41によって防止されている。すなわち、このようなカゴ体32では、通気性外筒41の一部が本発明の「被覆部」に相当する。
【0046】
一般に、蓄熱式バーナが使用されている工業炉では、定期的に蓄熱体の交換が行われる。蓄熱式バーナを使用する時間の経過に伴って、蓄熱体に目詰まりや損傷が生じるおそれがあるためである。蓄熱体を交換する作業の際、蓄熱式バーナの温度を作業に適した温度まで下げてしまうと、次の使用のための昇温に時間とエネルギーを要する。そのため、通常は、蓄熱式バーナの温度を十分に下げることなく、高温の環境下で蓄熱体の交換作業が行われる。そこで、蓄熱式バーナが使用されている現場では、蓄熱体の交換作業をできるだけ短時間で素早く行いたいという要請がある。上記構成のカゴ体32を使用することにより、予め常温の場所でカゴ体32の充填空間Sにボール状の蓄熱体51を充填しておくことができ、多数の蓄熱体をカゴ体32ごと一度に蓄熱式バーナ1の開口付き熱交換部21の内部に設置することができる。これにより、高温の環境下で行う蓄熱体の交換作業を、短時間で素早く行うことができる。
【0047】
カゴ体としては、
図3に示すように、更に内筒延出部46を備えるカゴ体33を使用することもできる。内筒延出部46は、通気性底部43から突出するように、内筒当接部42の端部から同径の円筒状に延出している。
【0048】
このような構成のカゴ体33は、上記のカゴ体32と同様に、蓄熱式バーナ1の端部開口15から開口付き熱交換部21の内部に配置することができる。通気性底部43を最上層のハニカム構造の蓄熱体52の上に載置したとき、内筒延出部46は最上層のハニカム構造の蓄熱体52と内筒部12との間に挿入された状態となる。これにより、カゴ体33が開口付き熱交換部21に配置された状態が安定する。
【0049】
一方、蓄熱式バーナ2は、
図4(a)に示すように直管型である。枝管型の蓄熱式バーナ1では通気口10が外筒部11を貫通していたのに対し、直管型の蓄熱式バーナ2では、端部開口15を開閉する蓋部16に通気口10が設けられている。蓋部16には、通気口10に加えて、内筒部12の内部空間と連通する孔部16hが貫設されている。
【0050】
このような蓄熱式バーナ2においても、蓋部16で端部開口15を閉鎖した状態で通気口10に臨んでいる状態となる開口付き熱交換部21に、ボール状の蓄熱体51を充填し、熱交換部20におけるそれ以外の部分である熱交換主部22に、ハニカム構造の蓄熱体52を充填することができる。
【0051】
その際、ボール状の蓄熱体51は、
図4(b)に示すようなカゴ体34に充填する。カゴ体34は、通気性を有する材料で円筒状に形成されている外筒当接部41bと、通気性を有する材料で円筒状に形成されており外筒当接部41bの内部に同心に設けられている内筒当接部42と、通気性を有する材料で形成されており外筒当接部41b及び内筒当接部42それぞれの一端を同じ側で連結している通気性底部43と、通気性を有する材料で形成されており通気性底部43とは反対側で外筒当接部41bと内筒当接部42との間の空間を開閉する通気性蓋部44とを有している。ここでは、外筒当接部41b、内筒当接部42、通気性底部43、及び通気性蓋部44それぞれを形成している通気性を有する材料が、何れもステンレス鋼製の網体である場合を例示している。外筒当接部41bの径は蓄熱式バーナ1の外筒部11の内径より僅かに小さく設定されており、内筒当接部42の径は内筒部12の外径より僅かに大きく設定されている。また、通気性蓋部44は、中心に孔部44hを有する円板であり、ヒンジ49によって外筒当接部41bに連結されている。
【0052】
そして、カゴ体34は、通気性底部43を第一モードにおける上流側に向けた状態で、蓄熱式バーナ2の端部開口15から開口付き熱交換部21の内部に配置される。これにより、外筒当接部41bが外筒部11の内周面に当接すると共に、内筒当接部42が内筒部12の外周面に当接し、通気性底部43が最外層のハニカム構造の蓄熱体52に当接した状態となる。外筒当接部41bと内筒当接部42との間の空間を通気性蓋部44で閉鎖した状態では、通気性底部43とは反対側で外筒当接部41b及び内筒当接部42それぞれの一端が通気性蓋部44によって連結され、孔部44hが内筒当接部42の内部空間と連通する。
【0053】
このようなカゴ体34も、カゴ体32,33と同様に、予め充填空間Sにボール状の蓄熱体51を充填しておけば、多数の蓄熱体をカゴ体34ごと一度に蓄熱式バーナ2の開口付き熱交換部21に配置することができるため、蓄熱体の交換作業を短時間に素早く行うことができる。
【0054】
熱交換部20と通気口10との間で流通するガスは、網体で形成されている通気性底部43と通気性蓋部44とを、問題なく通過することができる。なお、本実施形態では、外筒当接部41b及び内筒当接部42も網体で形成されているが、これらは薄板状の材料など、通気性を有していない材料で形成されていても構わない。
【0055】
蓄熱式バーナ2が横向き(外筒部11及び内筒部12の軸方向が水平方向となる向き)に使用される場合、カゴ体34を使用しない場合は、開口付き熱交換部21に充填されたボール状の蓄熱体51が通気口10から転がり落ちるおそれがあるところ、カゴ体34の通気性蓋部44の一部が通気口10を被覆しているため、ボール状の蓄熱体51が通気口10から転がり落ちるおそれが防止されている。すなわち、このようなカゴ体34では、通気性蓋部44の一部が本発明の「被覆部」に相当する。
【0056】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0057】
例えば、上記では、熱交換主部22にハニカム構造の蓄熱体52が充填され、開口付き熱交換部21にボール状の蓄熱体51が充填される場合を例示した。これに限定されず、枝管型の蓄熱式バーナ1を縦向きで使用する場合は、熱交換主部22及び開口付き熱交換部21の双方に、ボール状の蓄熱体51を充填することもできる。この場合、
図5に示すように、多数の貫通孔が貫設された円板状部材60をストッパ18の上に載置する。このような円板状部材60により、外筒部11と内筒部12との間の空間を放射状に連結する複数の棒状部材で構成されているストッパ18の隙間から、ボール状の蓄熱体51が落下することを防止することができる。なお、
図5における破線は、外筒部11の内周面11sを表したものである。
【0058】
また、上記では、通気口10が排出口と供給口を兼ねる給排気口である場合を例示した。これに限定されず、枝管型の蓄熱式バーナ1の場合、外筒部11を貫通する通気口10を排出口及び供給口の一方とし、端部開口15を開閉する蓋部16に排出口及び供給口の他方を設けることができる。また、直管型の蓄熱式バーナ2の場合、端部開口15を開閉する蓋部16に、排出口及び供給口を別個に設けることもできる。
【符号の説明】
【0059】
1,2 蓄熱式バーナ
10 通気口
11 外筒部
12 内筒部
20 熱交換部
21 開口付き熱交換部(熱交換部において通気口に臨む部分)
31 通気性円筒(被覆部)
32,33,34 カゴ体
41 通気性外筒(被覆部)
41b 外筒当接部
42 内筒当接部
43 通気性底部
44 通気性蓋部(被覆部)
51 ボール状の蓄熱体