(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】同期リラクタンスモータの磁気特性を適合させる方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H02P 25/08 20160101AFI20220608BHJP
H02P 21/26 20160101ALI20220608BHJP
H02P 21/14 20160101ALI20220608BHJP
【FI】
H02P25/08
H02P21/26
H02P21/14
(21)【出願番号】P 2019522792
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2017076697
(87)【国際公開番号】W WO2018077718
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-08-12
(31)【優先権主張番号】102016000109364
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】591040649
【氏名又は名称】カーエスベー ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディート ゲゼルシャフト アウフ アクチェン
【氏名又は名称原語表記】KSB SE & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ディ・サント,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】マロディン,エンリコ
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02555420(EP,A1)
【文献】特開2008-086129(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01641114(EP,A1)
【文献】特開2013-099241(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02453248(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0233807(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/08-25/098
H02P 21/26
H02P 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に回転子(4)を収容するとともに、それぞれ最小磁気リラクタンスの軸(D)及び最大磁気リラクタンスの軸(Q)の少なくとも1つの対を規定する固定子(3)、モータの電気供給を制御する制御ユニット(5)を備えるタイプの同期リラクタンスモータ(2)の磁気特性を自動的に適合させる方法であって、前記モータは、台上試験で得られた所定の定格電流(I)値及び定格電圧(V)値を有し、供給電流は、前記最小
磁気リラクタンスの軸及び前記最大
磁気リラクタンスの軸に沿った成分(i
d、i
q)を有し、該方法は、所定の数(m、n)の電圧変動(dV)及び電流変動(dI)を
、それぞれm個及びn個に分割して段階的に増加又は減少させて、所定の周波数(f)で固定子に印加するステップと、前記電圧変動及び前記電流変動に応じて微分インダクタンス(L
diff)を求めるステップと、前記微分インダクタンス(L
diff)を積分することによって
前記モータ
へと印加された磁束を示す束曲線(λ
d、λ
q)を計算するステップと、台上試験の精度と実質的に同じ精度を用いて前記モータの前記磁気特性を自動的に適合させるために前記制御ユニットにおいて前記曲線をマッピングするステップとを含
むものである、方法。
【請求項2】
前記軸(D)に対して整列した静止位置を確立するために、前記最小
磁気リラクタンス
の軸(D)に対する角度回転位置(α)を検出する第1のステップ(a)を提供することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のステップ(a)は、前記
定格電流(I)に等しい所定の値の電流パルスを前記固定子(3)に印加して、前記回転子の回転を所定の角度(α)だけ促し、前記回転子(4)の、前記最小
磁気リラクタンス
の軸(D)への前記整列を得ることによって実行されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記
第1のステップ(a)は、電圧注入又は電流注入による前記角度
(α)の識別によって得られることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記
第1のステップ(a)が行われると、前記最小
磁気リラクタンス
の軸に沿った第1の
電流値(I
dmax/m)の第1の数(m)の
前記電流変動
(dI)を前記固定子に注入する注入ステップ(b)が実行され、前記
電流変動は、前記
定格電流(I)よりも高い第1の最大値(I
dmax)を有する、段階的
に増加する値を有することで、前記最小
磁気リラクタンス
の軸(D)に沿った前記固定子の飽和を提供する一方で、前記最大
磁気リラクタンス
の軸(Q)に沿った電流成分(i
q)を0に等しく保つことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の最大
値(I
dmax)は、前記
定格電流(I)の150%に等しいことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の電流値
(I
dmax
/m)が段階的に増加することに応じて、前記最小
磁気リラクタンス
の軸に沿った前記電圧(V
d)及び前記電流(I
d)を測定して、第1の測定された値(V
d、I
d)を得る、測定ステップ(c)を提供することを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記最大
磁気リラクタンス
の軸に沿った第2の電流値(I
qmax/n)の第2の数(n)の電流変動(I
q)を注入する第2の注入ステップ(d)であって、前記変動は、前記
定格電流(I)よりも低い第2の所定の最大値(I
qmax)を有する、徐々に増加する段階的平均値を有することで、前記回転子を前記
軸(D)に対して整列した静止位置内に保つとともに、前記最小
磁気リラクタンス
の軸(D)に沿った電流成分(i
d)を0に等しく保つ、ステップを提供することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の
所定の最大電流値(I
qmax)は、前記
定格電流(I)の15%に等しいことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の注入ステップ(d)において注入された
第2の増加する段階的変動に応じて、前記最大リラクタンス軸(Q)に沿って電圧(V
q)及び電流(I
q)を測定して、第2の測定された値(V
q、I
q)を得る、測定ステップ(e)を提供することを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
以下の関数[1]、[2]、[3]及び[4]
【数1】
に従って、
モータ固有パラメータ(L
d0、I
dSat、L
q0、I
qSat、L
Sat、X
Cross)から開始して前記微分
インダクタンス(L
diff)を求める求解ステップ(g)を含むことを特徴とする、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ
(a)~
(g)は、前記微分インダクタンス
を計算するとともに、前記モータの前記束曲線
(λ
d
、λ
q
)を、試験実験室において得ることができる精度に相当する精度を用いてマッピングする
アルゴリズムを用いて、前記制御ユニット
によって制御されることを特徴とする、請求項
7、8、10及び11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
内部に回転子(4)を収容するとともに、最小磁気リラクタンスの軸(D)及び最大磁気リラクタンスの軸(Q)の少なくとも1つの対を規定する固定子(3)、モータ
に電気
を供給する手段を備える同期リラクタンスモータ(2)の磁気特性を自動的に適合させる装置(1)であって、
定格電流(I)及び
定格電圧(V)は、台上試験によって事前に測定されたラベルデータであり、
所定の角度だけの前記回転子の回転と、該回転子の、前記最小
磁気リラクタンス軸(D)への整列を提供するように構成された
、電流パルスを印加する手段と、
所定の
数の電圧変動(dV)及び電流変動(dI)を所定の周波数(f)で固定子に印加するように構成された電気注入器と、
所定の周波数(f)での前記電圧変動(dV)及び前記電流変動(dI)に応じて、前記固定子
の微分インダクタンス(L
diff)を求める電圧及び電流測定デバイスと、
前記変動に応じて微分インダクタンス(L
diff)を求めるフィルタリング手段と、
前記微分インダクタンス(L
diff)の積分によってモータ束曲線(λ
d、λ
q)を計算し、該モータ束曲線をマッピングして、台上試験によって取得可能である精度に実質的に等しい精度を用いて前記モータの前記磁気特性を自動的に適合させるように構成された制御ユニット(5)と
を備えることを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、電子機器の分野に用途を見出し、詳細には、同期リラクタンスモータの磁気特性を求めて、最大効率状態に自動的にモータを適合させる方法に関する。
【0002】
第2の態様では、本発明は、同期リラクタンスモータについての上述の方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
リラクタンスモータにおいて、トルクが磁気異方性によって生成されることが既知であり、この特性の最大化は、主要な設計仕様のうちの1つであることが既知である。それにもかかわらず、機器の異方性挙動は、極めて複雑であり、多大な数の因子に依存する。
【0004】
固定子に印加される起磁力は、最大リラクタンス軸及び最小リラクタンス軸と整列し、結果として得られる束特性λdo及びλqoは、
図1に示すように台上試験の測定値(bench measurements)によって実験的に得られる特性である。
【0005】
それにもかかわらず、これらの束曲線は、モータの磁気挙動を完全には記述しない。したがって、双方の成分id及びiqが0ではない場合、追加の情報が必要とされる。概して、束λd及びλqは、双方の電流の関数であり、一方で、関数λdo及びλqoは、単に、一般関数の2つの特定の場合を表す。
【数1】
ここで、λdo=λd(id,0)及びλqo=λq(0,iq)である。
【0006】
同期リラクタンスモータの磁気特性の実験室測定のためのいくつかの方法が既知である。これらの方法は、通常、試験システムを必要とし、この試験システムは、被試験モータを駆動するための定速駆動モータを備え、一方で、被試験モータに電流ステップが適用され、これらの電流ステップにより、適切な測定機器を用いて測定することができる電磁力(EMF)が生成される。
【0007】
同期リラクタンスモータの磁気特性の実験室測定のための1つの方法は、例えば、特許文献1から既知である。
【0008】
この既知の方法の主な欠点は、モータに対して台上試験を実行する実験室及び機器は、常に利用可能であるというわけではないということである。
【0009】
さらに、束特性が適切な精度を用いてマッピングされるために、非常に多数の電流ステップが駆動モータに印加される必要がある場合があり、これにより、試験のコストが大幅に増加し、モータコストの劇的な増加がもたらされる。
【0010】
特許文献2は、同期永久磁石モータのインダクタンスを測定する方法を開示しており、この方法は、固定子に試験電圧を印加するステップと、モータが静止している間に固定子における応答電流を測定するステップと、デジタルフィルターを用いて応答電流の微分値を求めるステップとを含む。
【0011】
当該技術分野において、台上試験を用いることなく同期リラクタンスモータの磁気特性を適合させる方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】イタリア国特許第1354129号
【文献】米国特許出願公開第2015/0226776号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術の観点において、本発明によって対処される技術的課題は、実験室試験を実行することなく同期リラクタンスモータの磁気特性の適合を可能にすることと、求められることになる特性の数を最小化する一方で、実験試験によって得られるであろう精度と同程度の精度を維持することとにあるとみなされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の全体的な目的は、高効率でかつ比較的に費用効果的である同期リラクタンスモータの磁気特性を適合させる方法を提供することによって、上述の技術的課題を解決して上記欠点を軽減することである。
【0015】
或る特定の目的は、高価な実験室試験を必要とすることなく、モータの特性をマッピングすることを可能にする、上記で規定した方法を提供することである。
【0016】
更なる目的は、システムによって得られる物理量の測定値の数を削減して、方法の複雑度及びコストを低減することである。
【0017】
更に別の目的は、インバータ及び電子モータ制御システムを用いてモータの磁気特性の完全自動適合を確実にすることである。
【0018】
これらの目的及び他の目的は、以降でより十分に説明されるように、請求項1において規定される同期リラクタンスモータの磁気特性を自動的に適合させる方法によって満たされる。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、独立請求項15において規定される、上述の方法を実行する装置を提供する。
【0020】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に従って規定される。
【0021】
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明による同期リラクタンスモータの磁気特性を適合させる方法及び装置の1つの好ましい非排他的な実施形態の詳細な説明からより明らかになる。これらの特徴及び利点は、添付図面を援用して非限定的な例として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来技術による、実験室において実験的に測定されたモータの束曲線を示す図である。
【
図2】本発明の同期リラクタンスモータの磁気特性を適合させる装置を概略的に示す図である。
【
図3】最大リラクタンス及び最小リラクタンスの軸が概略的に配置されている、同期リラクタンスモータの断面図である。
【
図6】実験的に測定された電流曲線及び電圧曲線を部分的に示す図である。
【
図7】実験試験から推測することができる対応する図と比較した、本発明の方法を用いて検出された微分インダクタンス(differential inductances)の図である。
【
図8】実験試験から推測された対応する束曲線とも比較した、
図6に示す微分インダクタンスの図から求められた束曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述の図面は、参照符号1によって指定される、本発明の同期リラクタンスモータの磁気特性を適合させる装置を示している。
【0024】
詳細には、装置1は、内部回転子4が収容された固定子、すなわち静止部分3を有する同期リラクタンスモータ2を備える。
【0025】
モータ2は、
図3に示すように、それぞれ最小磁気リラクタンス及び最大磁気リラクタンスの軸D、Qの少なくとも1つの対と、モータ、好ましくはインバータへの電源を制御する制御ユニット5とを有し、制御ユニット5は、三相電源網6に接続されるとともに、ディスプレイ7及びキーパッド8又は図示されていないコンピュータ等の、適切なデジタルインターフェースが場合によっては制御ユニット5に関連付けられる。
【0026】
モータ2は、設計中に設定され、台上試験で(on the bench)実験的に検証することができる定格電流I値及び定格電圧V値を有する。供給電流Iは、最小リラクタンス及び最大軸抵抗の軸に沿って成分id、iqを有する。
【0027】
全体的に、本方法は、所定の周波数で固定子に、所定の数の電圧変動dV及び電流変動dIを印加するステップと、電圧変動及び電流変動に応じて微分インダクタンス(Ldiff)を求めるステップと、微分インダクタンスLdiffを積分することによってモータの束曲線λd、λqを計算するステップと、実験試験の精度と実質的に同じ精度を用いてモータの磁気特性を自動的に適合させるために制御ユニット5において曲線をマッピングするステップとを含む。
【0028】
利便的には、電圧変動及び電流変動の数は、方法がより迅速かつより費用効果的なものとなるように、台上試験で実験的に得られた測定値と比較して、相対的に低いレベルに保つことができる。
【0029】
詳細には、
図5に示すように、ステップa)が最初に提供され、このステップにおいて、回転子は、最小リラクタンスの軸Dと整列する。
【0030】
そのような整列は、以下のモードのうちのいずれかによって達成することができる。
a’)固定子に所定の振幅の電流パルスを印加して、回転子を、最小リラクタンスの軸Dと整列する静止位置に所定の角度αを通じて回転させることであって、そのような振幅は、定格電流Iとほぼ等しいこと、又は、
a’’)電圧注入又は電流注入後の角度位置αを識別して、回転子の回転を回避する一方で、軸D及びQにおける後の処理のためのランドマークとしてそのような位置αを用いることである。
【0031】
回転子が角度的に整列するステップaには、ステップbが後続し、このステップbにおいて、第1の数mの第1の電流変動ΔIdが最小リラクタンスの軸に沿って注入され、各々の変動は、約Idmax/mの値を有する。
【0032】
変動ΔIdは、定格電流I超である第1の最大値Idmaxを有する段階的増加平均値を有することで、最小リラクタンスの軸Dに沿った固定子の飽和を引き起こす一方で、最大リラクタンスの軸Qに沿った0電流成分iqを維持する。
【0033】
一例として、上述の第1の最大電流値Idmaxは、定格電流Iの約150%である。
【0034】
電流注入ステップbは、段階的増加電流値に応じて最小リラクタンスの軸Dに沿った電圧Vd及び電流Idを測定して、第1の検出された振幅Vd1、Id1を得るステップcに対応する。
【0035】
原理的に、所与の電流(I)及び周波数(f)において、モータに印加される電圧変動(dV)は、以下の関数を用いて微分インダクタンスを計算することを可能にする変動(dI)及び平均値(V)をもたらす。
【数2】
【0036】
第2の注入ステップdが後続し、この第2の注入ステップdにおいて、第2の電流値Iqmax/nを有する、第2の数nの電流変動ΔIqが最大リラクタンスの軸Qに沿って注入され、ここで、変動Iqは、定格電流Iよりも小さな第2の所定の最大値Iqmaxを有する段階的増加平均値ΔIqを有することで、回転子を初期静止整列位置において維持するとともに、最小リラクタンスの軸Dに沿った0電流成分idを維持する。
【0037】
一例として、上述の第2の最大電流値Idmaxは、定格電流Iの約15%である。
【0038】
そして、第2の測定ステップeが後続し、この第2の測定ステップeにおいて、ステップdで注入された第2の段階的増加電流変動値に応じて、最大リラクタンスの軸Qに沿って電圧Vq及び電流Iqが測定されて、第2の検出された振幅Vq2、Iq2が得られる。
【0039】
第1の検出された振幅Vd1、Id1及び第2の検出された振幅Vq2、Iq2は、処理ステップfを受け、この処理ステップfは、適切なモータ固有パラメータLd0、IdSat、Lq0、IqSat、LSat、XCrossを求めるように設計される。
【0040】
ここで、方法は、ステップgを含み、このステップgにおいて、微分値Ldiffが固有パラメータLd0、IdSat、Lq0、IqSat、LSat、XCrossから求められ、これらの固有パラメータの意味は、以下で説明される。
【0041】
Ld0は、理想値Idが0である軸Dに沿った微分インダクタンスを表す。
【0042】
IdSatは、軸Dに沿った0微分インダクタンスに理想的に対応する電流を表す。
【0043】
Lq0は、理想値Iqが0である軸Qに沿った微分インダクタンスを表す。
【0044】
IqSatは、軸Qに沿った0微分インダクタンスに理想的に対応する電流を表す。
【0045】
LSatは、軸D及びQに沿った、飽和における微分インダクタンスを表す。
【0046】
XCrossは、交差飽和率を説明するパーセント値を表す。
【0047】
Ldiffdの導関数が、特性勾配の変化を検出するために計算される。そして、第1の直線部において傾向線が、1次方程式
【数3】
としてプロットされ、
結果として、
【数4】
がもたらされる。
【0048】
上述した手順は、Ldiffqを用いて繰り返される。
【0049】
LqSatは、LdSatと等しいものとみなすことができる。
【0050】
LSatは、最大電流注入点において得られたLdiffd値に等しい飽和値から求められる。
【0051】
XCrossは、異方性が軸Dに沿った微分インダクタンスにいかに影響を及ぼすのかを規定する。
【0052】
このパラメータは、以下のように近似することができ、
【数5】
限界値
【数6】
にまで飽和される。
【0053】
上述の微分インダクタンス値は、以下の関数[1]、[2]、[3]及び[4]を用いて得られる。
【数7】
【0054】
微分インダクタンスの使用は、特性の線形化を与え、これにより、固有パラメータを少数、例えば限定するものではないが6個に制限することが可能になる。
【0055】
ステップa~gは、適切なアルゴリズムによって制御され、このアルゴリズムは、微分インダクタンスを処理するとともに、モータの束曲線λd、λqを、実験的に得られた精度に近い精度でマッピングするために、インバータ5において初期化される。
【0056】
最後に、束曲線λd、λqのマップが、モータの磁気特性の自動適合のためのアルゴリズムにおいて用いられる。
【0057】
本発明によって得られるマップは、センサレスモータ制御を可能にするような精度を有するものの、本方法は、センサーを用いるモータ制御にも適用される。
【0058】
本方法は、モータに通常関連付けられるインバータに加えて、更なるハードウェアを必要としない。
【0059】
方法及び装置が、添付図面を仔細に参照して記載されてきたが、参照符号は、単に本発明をより明瞭にするために用いられており、特許請求の範囲を制限することを意図していない。
なお、本願の出願当初の開示事項を維持するために、本願の出願当初の請求項1~15の記載内容を以下に追加する。
(請求項1)
内部に回転子(4)を収容するとともに、それぞれ最小磁気リラクタンスの軸(D)及び最大磁気リラクタンスの軸(Q)の少なくとも1つの対を規定する固定子(3)、モータの電気供給を制御する制御ユニット(5)を備えるタイプの同期リラクタンスモータ(2)の磁気特性を自動的に適合させる方法であって、前記モータは、台上試験で得られた所定の定格電流(I)値及び定格電圧(V)値を有し、供給電流は、前記最小リラクタンスの軸及び前記最大リラクタンスの軸に沿った成分(i
d
、i
q
)を有し、該方法は、所定の数(m、n)の電圧変動(dV)及び電流変動(dI)を、所定の周波数(f)で固定子に印加するステップと、前記電圧変動及び前記電流変動に応じて微分インダクタンス(L
diff
)を求めるステップと、前記微分インダクタンス(L
diff
)を積分することによってモータの束曲線(λ
d
、λ
q
)を計算するステップと、台上試験の精度と実質的に同じ精度を用いて前記モータの前記磁気特性を自動的に適合させるために前記制御ユニットにおいて前記曲線をマッピングするステップとを含み、前記電圧変動及び電流変動の所定の数(m、n)は、台上試験で実験的に得られた測定値の数と比較して相対的に小さいものである、方法。
(請求項2)
前記軸(D)に対して整列した静止位置を確立するために、前記最小リラクタンス軸(D)に対する角度回転位置(α)を検出する第1のステップ(a)を提供することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
(請求項3)
前記第1のステップ(a)は、前記公称電流(I)に等しい所定の値の電流パルスを前記固定子(3)に印加して、前記回転子の回転を所定の角度(α)だけ促し、前記回転子(4)の、前記最小リラクタンス軸(D)への前記整列を得ることによって実行されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
(請求項4)
前記ステップ(a)は、電圧注入又は電流注入による前記角度位置(α)の識別、及び前記回転子(4)の回転が無い場合に軸(D及びQ)に沿った更なる計算のための参照としてのそのような位置(α)の使用によって得られることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
(請求項5)
前記回転子角度整列ステップ(a)が行われると、前記最小リラクタンス軸に沿った第1の値(I
dmax
/m)の第1の数(m)の電流変動(ΔI
d
)を前記固定子に注入する注入ステップ(b)が実行され、前記変動は、前記公称電流(I)よりも高い第1の最大値(I
dmax
)を有する、徐々に増加する段階的平均値を有することで、前記最小リラクタンス軸(D)に沿った前記固定子の飽和を提供する一方で、前記最大リラクタンス軸(Q)に沿った電流成分(i
q
)を0に等しく保つことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
(請求項6)
前記第1の最大電流値(I
dmax
)は、前記公称電流(I)の150%に等しいことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
(請求項7)
前記第1の電流値が段階的に増加することに応じて、前記最小リラクタンス軸に沿った前記電圧(V
d
)及び前記電流(I
d
)を測定して、第1の測定された値(V
d
、I
d
)を得る、測定ステップ(c)を提供することを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
(請求項8)
前記最大リラクタンス軸に沿った第2の電流値(I
qmax
/n)の第2の数(n)の電流変動(I
q
)を注入する第2の注入ステップ(d)であって、前記変動は、前記公称電流(I)よりも低い第2の所定の最大値(I
qmax
)を有する、徐々に増加する段階的平均値を有することで、前記回転子を前記静止整列位置内に保つとともに、前記最小リラクタンス軸(D)に沿った電流成分(i
d
)を0に等しく保つ、ステップを提供することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
(請求項9)
前記第2の最大電流値(I
qmax
)は、前記公称電流(I)の15%に等しいことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
(請求項10)
ステップ(d)において注入された前記第2の増加する段階的変動に応じて、前記最大リラクタンス軸(Q)に沿って電圧(V
q
)及び電流(I
q
)を測定して、第2の測定された値(V
q
、I
q
)を得る、測定ステップ(e)を提供することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
(請求項11)
前記第1の測定された値(V
d
、I
d
)及び前記第2の測定された値(V
q
、I
q
)を計算して、適切なモータパラメータ(L
d0
、I
dSat
、L
q0
、I
qSat
、L
Sat
、X
Cross
)を求める、計算ステップ(f)を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
(請求項12)
以下の関数[1]、[2]、[3]及び[4]
【数1】
に従って、前記固有パラメータ(L
d0
、I
dSat
、L
q0
、I
qSat
、L
Sat
、X
Cross
)から開始して前記微分値(L
diff
)を求める求解ステップ(g)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
(請求項13)
前記ステップa)~g)は、前記微分インダクタンス(λ
d
、λ
q
)を計算するとともに、前記モータの前記束曲線を、試験実験室において得ることができる精度に相当する精度を用いてマッピングするために、前記制御ユニットにおいて初期化されるアルゴリズムによって制御されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
(請求項14)
前記束曲線(λ
d
、λ
q
)の前記マッピングは、前記モータの前記磁気特性を最良モードに自動的に適合させるために前記アルゴリズムにおいて適用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
(請求項15)
内部に回転子(4)を収容するとともに、最小磁気リラクタンスの軸(D)及び最大磁気リラクタンスの軸(Q)の少なくとも1つの対を規定する固定子(3)、モータを電気供給する手段を備える同期リラクタンスモータ(2)の磁気特性を自動的に適合させる装置(1)であって、公称電流(I)及び公称電圧(V)は、台上試験によって事前に測定されたラベルデータであり、
所定の角度だけの前記回転子の回転と、該回転子の、前記最小リラクタンス軸(D)への整列を提供するように構成された電気インパルスアプリケータと、
所定の最小数の電圧変動(dV)及び電流変動(dI)を所定の周波数(f)で固定子に印加するように構成された電気注入器と、
所定の周波数(f)での前記電圧変動(dV)及び前記電流変動(dI)に応じて、前記固定子微分インダクタンス(L
diff
)を求める電圧及び電流測定デバイスと、
前記変動に応じて微分インダクタンス(L
diff
)を求めるフィルタリング手段と、
前記微分インダクタンス(L
diff
)の積分によってモータ束曲線(λ
d
、λ
q
)を計算し、該モータ束曲線をマッピングして、台上試験によって取得可能である精度に実質的に等しい精度を用いて前記モータの前記磁気特性を自動的に適合させるように構成された制御ユニット(5)と
を備えることを特徴とする、装置。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、産業における用途を見出すことができる。なぜならば、本発明は、三相同期リラクタンスモータのドライブを製造する工場において産業規模で生産することができるためである。