IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェヴレー トランスポート ヴィッテン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7084936鉄道車両用の走行装置及び走行装置用の軸受要素
<>
  • 特許-鉄道車両用の走行装置及び走行装置用の軸受要素 図1
  • 特許-鉄道車両用の走行装置及び走行装置用の軸受要素 図2
  • 特許-鉄道車両用の走行装置及び走行装置用の軸受要素 図3
  • 特許-鉄道車両用の走行装置及び走行装置用の軸受要素 図4
  • 特許-鉄道車両用の走行装置及び走行装置用の軸受要素 図5
  • 特許-鉄道車両用の走行装置及び走行装置用の軸受要素 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】鉄道車両用の走行装置及び走行装置用の軸受要素
(51)【国際特許分類】
   B61H 5/00 20060101AFI20220608BHJP
   B61F 5/00 20060101ALI20220608BHJP
   B61F 15/02 20060101ALI20220608BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20220608BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20220608BHJP
   F16C 35/02 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
B61H5/00
B61F5/00 Z
B61F15/02
F16C17/02 Z
F16C33/20 A
F16C35/02 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019542117
(86)(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2018050873
(87)【国際公開番号】W WO2018141538
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】202017100568.2
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519278491
【氏名又は名称】フェヴレー トランスポート ヴィッテン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Faiveley Transport Witten GmbH
【住所又は居所原語表記】Brauckstrasse 26, 58454 Witten, Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン モンツァ
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103882(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/046174(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第19844507(DE,A1)
【文献】米国特許第04168666(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 1/00-99/00
B61H 1/00-15/00
F16C 17/00-17/26
F16C 33/00-33/28
F16C 35/00-39/06
F16C 43/00-43/08
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車とブレーキ・リンケージ(10)とを備え、少なくとも1つの軸受要素(22)を有する鉄道車両用の走行装置(100)であって、
前記ブレーキ・リンケージ(10)は前記少なくとも1つの軸受要素(22)により前記台車に取り付けられ、及び/又は、前記台車に接続されており、
前記少なくとも1つの軸受要素(22)がプラスチックを有し、及び/又は、プラスチックからなることを特徴とし、
前記プラスチックは、ポリオキシメチレン(POM)及び/又は自己潤滑性プラスチックであり、
前記台車は、前記少なくとも1つの軸受要素(22)により前記ブレーキ・リンケージ(10)から振動が減衰される、
鉄道車両用の走行装置(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの軸受要素(22)はブッシュ(21)であり、
前記軸受要素(22)は前記ブレーキ・リンケージ(10)内に配置され、好ましくは前記ブレーキ・リンケージ(10)の孔、具体的にはボア内に配置されることを特徴とする、
請求項1に記載の走行装置(100)。
【請求項3】
取付手段(23)、具体的にはピン(16)は、前記台車上に配置され、及び/又は、前記台車に接続され、
前記取付手段(23)は前記軸受要素(22)内に取り付けられることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の走行装置(100)。
【請求項4】
前記ブレーキ・リンケージ(10)はブレーキ・ブリッジ(14)を備え、
前記ブレーキ・ブリッジ(14)は前記ブレーキ・ブリッジ(14)の前記少なくとも1つの軸受要素(22)により前記台車に取り付けられ、
前記少なくとも1つの軸受要素(22)は、特に好ましくは前記ブレーキ・ブリッジ(14)の孔、具体的にはボア内に配置されることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の走行装置(100)。
【請求項5】
前記台車はアダプタ(15)及び/又は、懸架ブラケットを備え、
前記ブレーキ・リンケージ(10)、具体的には前記ブレーキ・ブリッジ(14)は前記軸受要素(22)により前記アダプタ(15)に取り付けられ、及び/又は
前記懸架ブラケット(15)に取り付けられていることを特徴とする、
請求項4に記載の走行装置(100)。
【請求項6】
前記台車は、前記少なくとも1つの軸受要素(22)により前記ブレーキ・リンケージ(10)から電気的に絶縁され、
前記軸受要素(22)は、好ましくは、少なくとも20kV、更に好ましくは少なくとも40kV、特に好ましくは少なくとも50kV、更に特に好ましくは少なくとも60kV、一層より好ましくは少なくとも80kV、最も好ましくは少なくとも100kVの絶縁耐力を有することを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の走行装置(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの軸受要素(22)の取付け特性は、
DIN EN61 373による耐用寿命試験中、特に前記軸受要素(22)で取り付けられた前記ブレーキ・リンケージ(10)の加速度密度応答が、10Hz~100Hzの周波数範囲の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、更に好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%にわたり、20,000(m/s/Hz未満、好ましくは10,000(m/s/Hz未満、より好ましくは9,000(m/s/Hz未満であるように形成されることを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の走行装置(100)。
【請求項8】
前記軸受要素(22)は、30mm~200mm、好ましくは50mm~100mm、特に好ましくは50mm~60mmの長さ(L)と、及び/又は
30mm~100mm、好ましくは40mm~70mm、特に好ましくは50mm~65mmの外径(A)、及び/又は25mm~90mm、好ましくは35mm~75mm、特に好ましくは50mm~55mmの内径(I)と、及び/又は
1mm~6mm、好ましくは2mm~5mm、特に好ましくは3mm~4mm、最も好ましくは3.5mmの壁厚(W)と、を有することを特徴とする、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の走行装置(100)。
【請求項9】
取付端部要素(26)、具体的には取付ディスク(25)、より具体的にはスペーサが設けられることを特徴とする、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の走行装置(100)。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の走行装置(100)用の軸受要素(22)は、プラスチック有し、及び/又はプラスチックからなることを特徴とし、
前記プラスチックはポリオキシメチレン(POM)、及び/又は自己潤滑性プラスチックであることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの軸受要素を備える台車とブレーキ・リンケージとを備える鉄道車両の走行装置に関し、ブレーキ・リンケージは、少なくとも1つの軸受要素により台車に取り付けられ、及び/又は台車に接続される。本発明は更に、鉄道車両の走行装置用の軸受要素に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の走行装置は一般に、台車及びブレーキ・リンケージを備える。ブレーキ・リンケージは、いわゆるブレーキ・ブリッジを更に備えることがある。ブレーキ・リンケージ、具体的にはブレーキ・ブリッジは台車に取り付けられている。従って、台車はブレーキ・リンケージ又はブレーキ・ブリッジと台車との間のコネクタとして配置されるアダプタを備えることがある。更に、懸架ブラケットが設けられることがあり、これによってブレーキ・リンケージ、具体的にはブレーキ・ブリッジは台車に接続されて、台車に取り付けられる。
【0003】
高機械的応力及び高電圧が鉄道車両の走行装置において発生する。また、動作中に強い振動が予想される。台車とブレーキ・ブリッジ又はブレーキ・リンケージとの間に形成される電圧は、それぞれ10kVから100kV以上の範囲内である可能性がある。鉄道車両の上部構造と同様に台車の重量が大きいため、100kN以上の力が台車とブレーキ・リンケージとの間の接続要素又は軸受要素に作用することがある。また、強い振動により、台車とブレーキ・リンケージとの間の接続部及び取付部が急速に劣化するため、短い間隔でまた頻繁に保守及び点検をする必要がある。
【0004】
DE19844507A1には、鉄道車両用のブレーキ組立体が提案されており、このブレーキ組立体では、ブレーキ・ブリッジは球形の可撓性継手取付部により台車に球状に取り付けられており、可撓性継手取付部はゴム製のカフを備える。
【0005】
DE10241755A1には、騒音の発生を低減した貨車台車が提案され、騒音低減のために、ブレーキ・リンケージのピン及びブッシュ連結部にブッシュが使用される。
【0006】
DE4425598C1には、鉄道車両のブレーキ・ディスクに対する停止時又は操作中の自動制動力決定のための装置が開示され、ブレーキ・ブリッジは懸架ブラケットによりフレームに接続されている。
【0007】
従来技術では、台車にブレーキ・リンケージを取り付けるために使用されるゴム-金属取付部もよく知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
【発明の効果】
【0010】
本発明の目的は、台車へのブレーキ・リンケージの取付部であって、長期の耐用年数を有し、メンテナンスをほとんど必要としない取付部を備える走行装置を提供することである。ブレーキ・リンケージと台車との間の衝撃及び振動の伝達は低減され、台車とブレーキ・リンケージとは互いに電気的に絶縁される。本発明は更に、鉄道車両用の走行装置のための軸受要素を提供しようとするものである。
【0011】
この目的を達成するために、台車とブレーキ・リンケージとを備え、少なくとも1つの軸受要素を有する鉄道車両用の走行装置であって、ブレーキ・リンケージは、少なくとも1つの軸受要素により台車に取り付けられ、並びに/又は、少なくとも1つの軸受要素はプラスチックを有し、及び/若しくはプラスチックからなる鉄道車両用の走行装置を提供する。
【0012】
台車は、ブレーキ・リンケージを取り付けるためのアダプタ及び/又は懸架ブラケットを備えてもよい。更に、ブレーキ・リンケージはブレーキ・ブリッジを備えてもよく、ブレーキ・リンケージの取付けはブレーキ・ブリッジにより行われることが好ましい。
【0013】
プラスチックは、好ましくは加硫されていないプラスチック、具体的には硬質プラスチックを有する軸受要素、及び/又はプラスチック、好ましくは加硫されていない、具体的には硬質プラスチックからなる軸受要素を有利に使用することにより、ブレーキ・リンケージと台車との間が良好に電気絶縁された、ブレーキ・リンケージの取付部を台車に設けることができる。
【0014】
本出願人が試験したところ、プラスチックで製造された軸受要素、及び/又はプラスチックを含む軸受要素は、台車への制動力の伝達に非常に有利な影響を与えることが分かった。更にこの軸受要素は、ブレーキ・リンケージの取付部用の公知のゴム/金属取付部の性能に応じる程度まで、衝撃及び振動の低減を促す。
【0015】
軸受要素は、ゴム/金属製の取付部ではないことが好ましい。更に、台車上のブレーキ・リンケージの取付部にはゴム/金属の取付部は使用されないことが好ましい。
【0016】
鉄道車両の走行装置において、プラスチックを含む、及び/又はプラスチックからなる軸受要素を、懸架ブラケット有り又は懸架ブラケット無しのブレーキ・リンケージにおけるゴム/金属取付部の一般的な代替品として使用することができる。ブレーキ・ブリッジをアダプタで接続するため、又はブレーキ・ブリッジを台車及び/若しくは懸架ブラケットに接続するためのピンの取付部として、プラスチックを有する、及び/又はプラスチックからなる電気絶縁軸受要素は特に好適である。
【0017】
耐用年数試験の結果、非常に、特に有利なことに、公知のゴム/金属取付部と比較して、鉄道車両用の走行装置においてプラスチックを有する及び/又はプラスチックからなる軸受要素の耐用年数は明らかに長いことが分かった。
【0018】
少なくとも1つの軸受要素はブッシュであることが好ましく、軸受要素はブレーキ・リンケージに配置されており、ブレーキ・リンケージの孔内に配置されることが好ましく、具体的にはブレーキ・リンケージのボア内に配置されることが好ましい。
【0019】
軸受要素をブッシュとして形成し、軸受要素をブレーキ・リンケージの孔に配置することにより、ブレーキ・リンケージ又は台車に対して何ら改造を更にすることなく、鉄道車両の台車におけるブレーキ・リンケージの取付部に軸受要素を容易に使用することができる。
【0020】
取付手段、具体的にはピンは、台車上に配置され、及び/又は台車に接続され、取付手段は、軸受要素内に取り付けられることが更に好ましい。
【0021】
ブレーキ・リンケージ、具体的にはブレーキ・ブリッジを取り付け又は懸架するために、取付手段、具体的にはピンは、台車上に、台車のアダプタ上に、及び/又は台車の懸架ブラケット上に配置されることが好ましく、軸受要素内に取り付けられるか、及び/又は配置されることが更に好ましい。これにより、台車とブレーキ・リンケージとの接続及び取付けがなされる。
【0022】
ブレーキ・リンケージは、ブレーキ・ブリッジを備えることが更に好ましく、ブレーキ・ブリッジは、少なくとも1つの軸受要素により台車に取り付けられ、少なくとも1つの軸受要素は、ブレーキ・ブリッジ内に配置されるのが好ましく、ブレーキ・ブリッジの孔内に配置されるのが特に好ましく、具体的にはブレーキ・ブリッジのボア内に配置されるのが一層好ましい。
【0023】
ブレーキ・リンケージを台車のブレーキ・ブリッジにより取り付けることによって、効果的且つ安定的に取付けが行われる。ブレーキ・リンケージは、ブレーキ・ブリッジにより台車上に取り付けられてもよい。取付部は、ブレーキ・ブリッジ専用に設けられてもよいが、ブレーキ・リンケージ、具体的にはブレーキ・ブリッジを台車上の更なる取付部、例えば懸架ブラケットにより取り付けることも可能である。例えば懸架ブラケットにより更なる取付部を設ける場合には、プラスチックを含む、及び/又はプラスチックからなる軸受要素もまたそこに使用することができる。ブレーキ・レバー及び/又はブレーキ・ライニング保持部により、台車とのブレーキ・リンケージの更なる取付部又は追加の取付部を設けることもできる。
【0024】
従って、ブレーキ・ブリッジは、この目的のために設けられたアダプタ及び/又は懸架ブラケットにより台車に固定され、取り付けられることが特に好ましい。従って、ブレーキ・ブリッジは、孔を有することが好ましく、ボアを有することが特に好ましく、ここに軸受要素が配置される。取付手段、具体的にはピンは、アダプタ及び/又は懸架ブラケット上に配置され、及び/又は固定され、次いで取付手段、具体的には1つ又は複数のピンが軸受要素内に配置される。更にアダプタ及び/又は懸架ブラケット上に取付手段を配置するために、アダプタ及び/又は懸架ブラケットに別の取付ホルダを設けることができ、このアダプタ及び/又は懸架ブラケットには更なる軸受要素が配置される。取付手段、具体的には1つ又は複数のピンは、具体的にはその端部は、懸架ブラケット及び/又はアダプタ内に配置され、好ましくは、懸架ブラケット又はアダプタ内に配置された軸受要素内に配置される。懸架ブラケット及び/又はアダプタは、台車に接続される、及び/又は台車の一部である。このようにして、要素制動ブリッジ、孔、軸受要素、ピン、懸架ブラケット及び/又はアダプタ、並びに台車は、台車にブレーキ・ブリッジを取り付ける。
【0025】
懸架ブラケット及び/又はアダプタの取付ホルダが軸受要素も備えるように、少なくとも1つの軸受要素が、アダプタ及び/又は懸架ブラケットの取付ホルダ内に配置されてもよい。ここで、軸受要素はプラスチックを含む、及び/又は軸受要素はプラスチックからなる。
【0026】
台車は、少なくとも1つの軸受要素によりブレーキ・リンケージから電気的に絶縁されることが更に好ましく、軸受要素は、好ましくは、少なくとも20kV、更に好ましくは少なくとも40kV、特に好ましくは少なくとも50kV、更に特に好ましくは少なくとも60kV、一層より好ましくは少なくとも80kV、最も好ましくは少なくとも100kVの絶縁耐力を有する。
【0027】
軸受要素は、20kV~200kV、好ましくは50kV~150kV、特に好ましくは80kV~120kV、最も好ましくは100kVの絶縁耐力を有することが好ましい。
【0028】
絶縁耐力は、絶対的なものであってもよいし、軸受要素の1ミリメートル当たりの材料厚さで決定されてもよい。高い絶縁耐力は、台車に対するブレーキ・リンケージの電気的絶縁を良好にする。
【0029】
更に、軸受要素の電気抵抗は、2kΩ以上が好ましく、特にマイクロ秒範囲で2.5kVの電圧インパルスの後に50V試験電圧で測定されることが好ましい。
【0030】
軸受要素は、ブレーキ・リンケージ、及び/又はブレーキ・リンケージの孔、具体的にはブレーキ・ブリッジ、及び/又はアダプタの取付ホルダ及び/又は懸架ブラケットに、ピンなどの取付手段に圧入されることによって、配置され得ることが更に好ましい。
【0031】
更に、公知のゴム/金属取付部の金属部分又はゴム部分を、プラスチックを有するか又はプラスチックからなる軸受要素と交換することも可能である。
【0032】
更に、鉄道車両用における走行装置の軸受要素は、旋回工程により製造されることが好ましい。更に、軸受要素は、押出工程によって製造されることも可能である。
【0033】
台車は、少なくとも1つの軸受要素を用いてブレーキ・リンケージに対して振動減衰されることが好ましく、少なくとも1つの軸受要素の取付け特性が、DIN EN61 373による耐用寿命試験において、ブレーキ・リンケージ、特に軸受要素が取り付けられたブレーキ・リンケージの加速度密度応答が、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、更に好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の10Hz~100Hzの周波数範囲で、20,000(m/s/Hz未満、好ましくは10,000(m/s/Hz未満、特に好ましくは9,000(m/s/Hz未満であるように形成されることが好ましい。
【0034】
少なくとも1つの軸受要素の取付け特性を決定するために、ブレーキ・ブリッジを備えるブレーキ・リンケージは、軸受要素が配置されたブレーキ・ブリッジ内に存在する孔又はボアと共に、対応する試験装置に挿入される。DIN EN61 373による耐用寿命試験中、振動は、軸受要素及び/又はブレーキ・リンケージ及び/又はブレーキ・ブリッジに伝達され、ブレーキ・リンケージ、具体的にはブレーキ・ブリッジの加速度密度応答は、ブレーキ・リンケージ上に配置されたセンサによって記録される。センサによって、ブレーキ・リンケージの加速度密度応答は、次に、ブレーキ連結の特定の測定周波数、例えば0Hz~250Hzの測定周波数により出力密度の単位で加えられる。ここで、具体的には、ブレーキ・リンケージにおいて測定された周波数スペクトルの10~100Hzの周波数範囲において、出力密度スペクトルは、具体的には、出力密度スペクトルの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、更に好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%にわたり、20,000(m/s/Hz未満、好ましくは10,000(m/s/Hz未満、最も好ましくは9,000(m/s/Hz未満に規定してもよい。
【0035】
プラスチックはポリオキシメチレン(POM)であること、及び/又はプラスチックは自己潤滑性プラスチックであることが更に好ましい。
【0036】
ポリオキシメチレン(POM)は高分子熱可塑性プラスチックであり、広い温度範囲で高い安定性、硬度及び剛性を特徴とする。その高い粘度を-40°まで維持し、且つ高い耐摩耗性及び低い摩耗係数を有することが有利である。更に、ポリオキシメチレンは、非常に耐熱性が高く、また良好な滑り特性及び良好な電気特性及び誘電特性を有する。更に、ポリオキシメチレンは、-40°~130°の使用温度が可能であるように、低い吸水性を特徴とする。POMは、自己潤滑性プラスチックと組み合わせることができる。
【0037】
軸受要素は、30mm~200mm、好ましくは50mm~100mm、特に好ましくは50mm~60mmの長さを有し、及び/又は30mm~100mm、好ましくは40mm~70mm、特に好ましくは50mm~65mmの外径、及び/又は25mm~90mm、好ましくは35mm~75mm、特に好ましくは50mm~55mmの内径、及び/又は1mm~6mm、好ましくは2mm~5mm、特に好ましくは3mm~4mm、最も好ましくは3.5mmの壁厚を有することが更に好ましい。
【0038】
軸受要素は、30mm~200mm、好ましくは50mm~100mm、特に好ましくは50mm~60mm、及び最も好ましくは57mmの長さ、及び/又は30mm~100mm、好ましくは40mm~70mm、特に好ましくは50mm~65mm、最も好ましくは60mmの外径、及び/又は25mm~90mm、好ましくは35mm~75mm、特に好ましくは50mm~55mm、最も好ましくは53mmの内径、及び/又は1mm~6mm、好ましくは2mm~5mm、特に好ましくは3mm~4mm、最も好ましくは3.5mmの壁厚を有することが更に好ましい。公差(許容誤差)は、0.1~0.2mmの範囲でよく、特に0.15mmの公差が好ましい。
【0039】
軸受要素、特に取付ディスク、更には特にスペーサも設けてもよい。
【0040】
取付端部要素、特に取付ディスクは、プラスチックを含むか又はプラスチックからなる軸受要素の弛緩を抑制する働きをする。軸受要素がブッシュとして形成され、ブレーキ・ブリッジのボアのような孔の中に同一平面上に配置される場合に、更に、ブレーキ・リンケージがブレーキ・ブリッジ及びブッシュの上に取り付けられている場合には、動作中の強い負荷下において、ブッシュのプラスチックは、ブレーキ・ブリッジ内のボアの側方から押し出されるか、又はそこから流出することが可能である。
【0041】
このため、取付ディスク又は特にスペーサのような取付端部要素は、ブレーキ・ブリッジと同一平面上にあるブッシュの端部側に配置されてもよく、取付端部要素をブレーキ・ブリッジと台車のアダプタ又は懸架ブラケットとの間にクランプして圧力を加えることによってブッシュのプラスチックがボアから流出する又は押し出されることを防止してもよい。この目的のため、軸受要素又は取付ディスクは内側開口を有してもよい。取付けのために使用されるボルトであって、軸受要素、具体的にはブッシュに配置されるボルトの端部はこの内側開口を通って、ガイドされる。
【0042】
取付端部要素、特に取付ディスクは、40mm~100mm、好ましくは50mm~80mm、特に好ましくは60mm~80mm、最も好ましくは70mmの直径、及び/又は20mm~50mm、好ましくは25mm~45mm、特に好ましくは30mm~40mm、最も好ましくは35mmの内側開口部の開口直径を有してもよい。取付端部要素、特に取付ディスクは、1mm~5mm、好ましくは2mm~4mm、特に好ましくは2.5mm~3mmの厚さを更に有してもよい。
【0043】
本発明が基づく目的の更なる解決手段は、上述の走行装置用の軸受要素、特にブッシュを提供することであり、軸受要素はプラスチックを有し、及び/又はプラスチックからなる。
【0044】
以下、図面を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】アダプタに取り付けられたブレーキ・ブリッジを有するブレーキ・リンケージの図である。
図2】ブッシュを有するブレーキ・ブリッジの図である。
図3】センサ用の位置を有するブレーキ・リンケージの図である。
図4】ブッシュの断面図である。
図5】取付ディスクの上面図及び側面図である。
図6】様式化された出力密度スペクトルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、鉄道車両の走行装置100用のブレーキ・リンケージ10を示す。ブレーキ・リンケージ10は、ブレーキ・ライニング保持部11と、ブレーキ・ライニング12と、ブレーキ・レバー13と、ブレーキ・ブリッジ14とを備える。図1は、また、ブレーキ・リンケージのアダプタ15を示し、これは更に詳細には示されていない。ブレーキ・ブリッジ14は、ピン16によってアダプタ15に接続されており、アダプタ15は次々に固定ネジ17により台車に配置されてもよい。ブレーキ・レバー13は、ブレーキ・シリンダ30によって作動される。
【0047】
図2は、ブレーキ・ブリッジ14の斜視図である。ブレーキ・ブリッジ14は、ブレーキ・レバー13を固定するための二つのアーム18を備える。更に、接続部分19はブレーキ・ブリッジ14の上部に配置される。接続部分19は二つの貫通孔20を備える。貫通孔20の各々には、プラスチックで製造された軸受要素22がブッシュ21として配置される。更に、取付手段23はピン16の形状のブッシュ21内に配置される。接続部分20の右側部分の図2に示され取付部25は、ブッシュ21及びピン16に加えて、取付ディスク25として形成されるプラスチックでできた取付端部要素26を含む。ブレーキ・リンケージ10を取り付けるために、ピン16は、図1に示されるように、アダプタ15の取付ホルダ27内に配置されてもよく、更なるブッシュ21がアダプタ15の取付ホルダ27内にあってもよい。更に、ピン16は台車に直接接続されてもよいし、あるいは、台車に取り付けられてもよい。ピン16は台車の懸架ブラケットの端部側に配置されることも可能である。
【0048】
図3は、ブレーキ・リンケージ10の側面図であり、特に加速度密度応答を記録するためのセンサ28の位置を示す。
【0049】
図4は、ブッシュ21の中心面を通る断面を示す。ブッシュ21は57mmの長さLを有し、60mmの外径Aを有する。壁厚Wが3.5mmであるため、ブッシュ21の内径Iは、53mmである。
【0050】
図5は、取付ディスク25として形成された取付端部要素26の平面図を示す。取付ディスク25は、70mmの直径Dを有し、35mmの内部開口の開口径Oを有する。また、取付ディスクは2.5mmの厚さTを有する。
【0051】
最後に、図6は、センサ28によって記録された加速度密度応答の様式化された出力密度スペクトル29を示す。X軸は5~250Hzの記録周波数を示し、Y軸は(m/s/Hzの単位における出力密度を示す。10~100Hzの周波数範囲の少なくとも50%にわたって出力密度スペクトルは10,000(m/s/Hz未満である。
【符号の説明】
【0052】
100 走行装置
10 ブレーキ・リンケージ
11 ブレーキ連結保持部
12 ブレーキ・ライニング
13 ブレーキ・レバー
14 ブレーキ・ブリッジ
15 アダプタ
16 ピン
17 固定ネジ
18 アーム
19 接続部分
20 ボア
21 ブッシュ
22 軸受要素
23 取付手段
24 取付部
25 取付ディスク
26 取付端部要素
27 取付ホルダ
28 センサ
29 出力密度スペクトル
30 ブレーキ・シリンダ
L 長さ
A 外径
I 内径
W 壁厚
D 直径
O 開口直径
T 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6