(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】ガラス製造システムの再調整方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/173 20060101AFI20220608BHJP
C03B 5/225 20060101ALI20220608BHJP
C03B 5/027 20060101ALI20220608BHJP
C03B 5/43 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
C03B5/173
C03B5/225
C03B5/027
C03B5/43
(21)【出願番号】P 2019567339
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(86)【国際出願番号】 US2018035693
(87)【国際公開番号】W WO2018226535
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-28
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ショーン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】デ アンジェリス,ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラムリア,メーガン オーロラ
(72)【発明者】
【氏名】クニタケ,ミキ ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】ランバーソン,デルウィン リー
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-511461(JP,A)
【文献】特開2017-065933(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157349(WO,A1)
【文献】特開平08-059248(JP,A)
【文献】特開平07-157316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製造システムの再調整方法において、
ガラス溶融槽内に還元雰囲気を確立する工程と、
前記還元雰囲気が前記ガラス溶融槽内に存在する間に、ガラス溶融組成物を該ガラス溶融槽から排出する工程と
を含み、
前記ガラス溶融槽内の前記還元雰囲気の圧力は、該ガラス溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高く、
前記ガラス溶融槽内に前記還元雰囲気を確立する工程は、該ガラス溶融槽内の少なくとも1つの燃焼バーナーを燃料豊富条件で運転する工程を含むものである方法。
【請求項2】
前記ガラス溶融槽は、清澄槽を含む下流側ガラス製造装置と流体連通するものであり、前記ガラス溶融組成物を該ガラス溶融槽から排出する工程の間、前記清澄槽内の雰囲気の圧力は、該ガラス溶融槽内の前記還元雰囲気の前記圧力より高いものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記清澄槽内の前記雰囲気は、約0.1体積%から約1.0体積%の酸素を含むものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
約1.0体積%未満の酸素を含む気体を、前記清澄槽に供給する工程を、
含むものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記清澄槽は、白金または、その合金を含むものである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融槽は、モリブデンを含む少なくとも1つの電極を含むものである、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記還元雰囲気が前記ガラス溶融槽に存在し、かつ、前記清澄槽内の前記雰囲気の前記圧力が該ガラス溶融槽内の該還元雰囲気の前記圧力より高い間に、溶融ガラスを該清澄槽から排出する工程を、
更に含む、請求項2から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記清澄槽から排出される前記溶融ガラスの少なくとも一部は、前記ガラス溶融槽を通って排出されるものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガラス溶融槽内の前記還元雰囲気の前記圧力は、少なくとも約0.25水柱インチ(約63Pa)、該ガラス溶融槽を囲む前記雰囲気の前記圧力より高いものである、請求項2から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記清澄槽内の前記雰囲気の前記圧力は、少なくとも約0.05水柱インチ(約13Pa)、前記ガラス溶融槽内の前記還元雰囲気の前記圧力より高いものである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ガラス溶融組成物を前記ガラス溶融槽から排出する工程の後に、第2のガラス溶融組成物を該ガラス溶融槽に導入するものである、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ガラス溶融組成物を前記ガラス溶融槽から排出する間、モリブデンを含む前記少なくとも1つの電極に電流が供給されないものである、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のガラス溶融組成物が前記ガラス溶融槽に導入される前に、ガラスカレットが、該ガラス溶融槽に導入されるものである、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
前記清澄槽、または、該清澄槽と流体連通した流路の一部を前記ガラス溶融組成物の軟化点以下の温度に維持することによって、ガラス栓部を、該清澄槽内、または、該清澄槽と流体連通した前記流路内に、確立する工程を、
更に含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項15】
前記清澄槽から排出される前記溶融ガラスの少なくとも一部は、前記ガラス溶融槽を通って排出されるものである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下、2017年6月6日出願の米国仮特許出願第62/515、796号の優先権の利益を主張し、その内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、ガラス製造システムの再調整方法に関し、特に、中断時間および費用を削減したガラス製造システムの再調整方法に関する。
【背景技術】
【0003】
テレビ、並びに、電話およびタブレットなどの手に持つ装置を含む、表示装置用のガラスシートなどのガラス物品の製造において、典型的には、原料は、溶融されて、溶融ガラスになり、次に、形成冷却されて、意図するガラス物品が製作される。場合によっては、例えば、1つの製品の販売が減少しているが、他の製品の販売が増加している場合、ガラス溶融システムを通って処理されている溶融ガラスの組成を変化させるのが望ましいことがありうる。
【0004】
ガラス溶融システムを通って処理されている溶融ガラスの組成を変化させる1つの方法は、システムが空となるように排出せずに、異なるバッチ組成物の間で、徐々に移行する工程を含む。例えば、中間の溶融ガラス組成物を処理することから、安定性を考慮するので、そのような転換処理は、かなりの時間が掛かり、更に、いくつかの状況では、例えば、中間の組成物と何らかの処理構成要素との間での不適合により、不可能なことがありうる。更に、そのような中間の組成物は、典型的には、販売できないものである。
【0005】
ガラス溶融システムを通って処理されている溶融ガラスの組成を変化させる他の方法は、新しい組成物を導入する前に、古い組成物をシステムから排出する工程を含む。そのような転換は、状況に応じては、上記のように2つの異なるバッチ組成物の間で徐々に行われるものより、急速に行われうるものである。しかしながら、そのような転換は、排出後のシステムと適合しない処理器具に犠牲を生じうる。この不適合性により、システムが新しい組成物で再び満たされるまで、代わりの処理器具がシステムに導入されないことがあり、それは、典型的には、時間、費用、および、複雑な処理を必要としうる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示の実施形態は、ガラス製造システムの再調整方法を含む。その方法は、ガラス溶融槽内に、還元雰囲気を確立する工程を含む。方法は、還元雰囲気がガラス溶融槽に存在する間に、ガラス溶融組成物をガラス溶融槽から排出する工程も含む。ガラス溶融槽内の還元雰囲気の圧力は、ガラス溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高い。更に、ガラス溶融槽内に還元雰囲気を確立する工程は、ガラス溶融槽内の少なくとも1つの燃焼バーナーを、燃料豊富条件で運転する工程を含む。
【0007】
本明細書に開示の実施形態は、ガラス溶融槽が、清澄槽を含む下流側ガラス製造装置と流体連通した実施形態も含みうる。ガラス溶融組成物をガラス溶融槽から排出する工程の間、清澄槽内の雰囲気の圧力は、ガラス溶融槽内の還元雰囲気の圧力より高い。
【0008】
本明細書に開示の実施形態は、ガラス溶融槽が、モリブデンを含む少なくとも1つの電極を含み、清澄槽が、白金または、その合金を含む実施形態を、更に含みうる。
【0009】
本明細書に開示の実施形態の更なる特徴および利点を、次の詳細な記載に示し、それは、当業者には、その記載から明らかであるか、または、次の詳細な記載、請求項、および、添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって分かるだろう。
【0010】
ここまでの概略的記載および次の詳細な記載の両方が、請求した実施形態の本質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図すると、理解すべきである。添付の図面は、更なる理解のために含められたものであり、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本開示の実施形態を示し、明細書の記載と共に、それらの原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例示的なフュージョンダウンドローガラス製造装置および処理の概略図である。
【
図2】
図1の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す概略図であり、ガラス溶融槽および清澄槽が運転状態である。
【
図3】
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す概略図であり、ガラス溶融槽および清澄槽が、本明細書に開示の実施形態による第1の再調整状態である。
【
図4】
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す概略図であり、ガラス溶融槽および清澄槽が、本明細書に開示の実施形態による第2の再調整状態である。
【
図5】
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す概略図であり、ガラス溶融槽および清澄槽が、本明細書に開示の実施形態による第3の再調整状態である。
【
図6】
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す概略図であり、ガラス溶融槽および清澄槽が、本明細書に開示の実施形態による第4の再調整状態である。
【
図7】
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す概略図であり、ガラス溶融槽および清澄槽が、本明細書に開示の実施形態による第5の再調整状態である。
【
図8】
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す概略図であり、ガラス溶融槽および清澄槽が、運転状態に戻っている。
【
図9】本明細書に開示の実施形態による排出および注入手順中の電極の直径を、電極の最上部からの距離の関数として示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本開示の好適な実施形態を詳細に記載し、その例を、添付の図面に示している。全図を通して、同じ、または、類似の部分を指すには、可能な限り同じ参照番号を用いている。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で実施しうるものであり、本明細書に示した実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0013】
本明細書において、範囲を、「約」1つの特定の値から、および/または、「約」他の特定の値までと表しうる。そのような範囲を表す場合には、他の実施形態は、その1つの特定の値から、および/または、他方の特定の値までの範囲を含む。同様に、値を、例えば、「約」を前に付けて、概数で表す場合には、その特定の値が他の実施形態を形成することが、理解されよう。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関係でと、他方の端点とは独立にとの両方で、重要であることが理解されよう。
【0014】
本明細書において用いる、例えば、上に、下に、右、左、前、後ろ、最上部、底部などの方向を表す用語は、示した図面に関する記載であり、全体的な向きを意味することを意図しない。
【0015】
別段の記載がない限りは、本明細書に示した、いずれの方法も、工程が特定の順序で行われることを要するとも、いずれの装置も、特定の向きであることを要すると解釈されることを意図しない。したがって、方法の請求項が、工程の行われる順序を実際に記載しないか、若しくは、いずれの装置の請求項も、個々の構成要素の順序も向きも実際に記載しないか、若しくは、そうではなく、請求項または明細書の記載で、工程は特定の順序に限定されるとも、装置の構成要素の具体的な順序も向きも記載しない場合には、いかなる点でも、順序も向きも推測されることを全く意図しない。このことは、記載がないことに基づく、いずれの解釈にも当てはまり、そのような解釈は、工程の配列についての論理的事項、動作フロー、構成要素の順序、または、構成要素の向き、文法構造または句読点に由来する単なる意味、並びに、明細書に記載された実施形態の数または種類を含む。
【0016】
本明細書において用いるように、原文の英語で単数を表す不定冠詞および定冠詞は、文脈から、そうでないことが明らかでない限りは、複数のものを含む。したがって、例えば、不定冠詞を付けた構成要素は、文脈から、そうでないことが明らかでない限りは、そのような構成要素を2つ以上有する態様を含む。
【0017】
本明細書において用いるように、「ガラス溶融組成物」という用語は、ガラス物品を、それから製作する組成物を称するものであり、組成物は、略固体状態と、略液体状態を含む、それらの間の状態で存在しうるもので、原料の状態と、溶融ガラスの状態を含む、それらの間の状態など、部分的に任意の程度に溶融した状態を含むものである。
【0018】
本明細書において用いるように、「溶融運転」という用語は、ガラス溶融組成物が、略固体状態から略液体状態まで加熱されて、原料を溶融ガラスに変換する運転を称する。
【0019】
本明細書において用いるように、「ガラス製造システムの再調整」という用語は、ガラス溶融組成物をガラス溶融槽から排出する工程を含む処理を称するものであり、最初のガラス溶融組成物が、ガラス溶融槽から、完全に、または、部分的に排出された後に、ガラス溶融槽は、少なくとも1つの同じ、または、異なるガラス溶融組成物で再び満たされうる。任意で、ガラス溶融組成物がガラス溶融槽から排出された後に、ガラス溶融槽は、ガラス溶融組成物で再び満たされなくてもよい。
【0020】
本明細書において用いるように、「ガラス溶融槽内の雰囲気」という用語は、ガラス溶融槽内の気体雰囲気のことを称し、ガラス溶融槽内の溶融ガラスの上の気体雰囲気などである。
【0021】
本明細書において用いるように、「清澄槽内の雰囲気」という用語は、清澄槽内の気体雰囲気のことを称し、清澄槽内の溶融ガラスの上の気体雰囲気などである。
【0022】
本明細書において用いるように、「還元雰囲気」という用語は、ガラス溶融槽内の約1000百万分率(ppm)未満の濃度の酸素を含む雰囲気などの雰囲気を称し、約0ppmから約500ppmの酸素濃度の全範囲、および、それの間の部分範囲などであり、例えば、約10ppmから約300ppm、約20ppmから約200ppmなど、約300ppm未満の酸素濃度を含み、更に、酸素を実質的に含まない雰囲気も含む。
【0023】
本明細書において用いるように、「燃焼バーナーを燃料豊富条件で運転する」という用語は、ガラス溶融槽内の燃焼バーナーなどの燃焼バーナーを、燃料(例えば、天然ガス、プロパンなど)の酸素に対する理論混合比を超えた状態で運転することを称する。
【0024】
図1は、例示的なガラス製造装置10の概略図である。いくつかの例において、ガラス製造装置10は、溶融槽14を含みうるガラス溶融炉12を含みうる。溶融槽14に追加で、ガラス溶融炉12は、任意で、原料を加熱して、原料を溶融ガラスに変換する加熱要素(例えば、燃焼バーナーまたは電極)などの1つ以上の更なる構成要素を含みうる。更なる例において、ガラス溶融炉12は、溶融槽の近傍からの熱損失を削減する熱管理装置(例えば、断熱要素)を含みうる。更なる例において、ガラス溶融炉12は、原料をガラス溶融物へと溶融され易くする電子装置および/または電気機械装置を含みうる。更に、ガラス溶融炉12は、支持構造物(例えば、支持台、支持部材など)、または、他の構成要素を含みうる。
【0025】
ガラス溶融槽14は、典型的には、耐火セラミック材料、例えば、アルミナまたはジルコニアを含む耐火セラミック材料などの耐火材料を含む。いくつかの例において、ガラス溶融槽14は、耐火セラミック煉瓦から構成されうる。以下に、ガラス溶融槽14の具体的な実施形態を、より詳細に記載する。
【0026】
いくつかの例において、ガラス溶融炉は、ガラス製造装置の構成要素として組み込まれて、ガラス基板、例えば、連続した長さのガラスリボンを製作しうる。いくつかの例において、本開示のガラス溶融炉は、スロットドロー装置、フロートバス装置、フュージョン処理などのダウンドロー装置、アップドロー装置、プレスローリング装置、管引出し装置、または、本明細書に開示の態様の利益を享受しうる任意の他のガラス製造装置を含むガラス製造装置の構成要素として組み込まれうる。例として、
図1は、ガラス溶融炉12を、次の処理で個々のガラスシートにするためのガラスリボンを溶融して引き出すフュージョンダウンドローガラス製造装置10の構成要素として、概略的に示している。
【0027】
ガラス製造装置10(例えば、フュージョンダウンドロー装置10)は、任意で、ガラス溶融槽14に対して上流側に配置された上流側ガラス製造装置16を含みうる。いくつかの例において、上流側ガラス製造装置16の一部または全体が、ガラス溶融炉12の一部として組み込まれうる。
【0028】
図示した例に示すように、上流側ガラス製造装置16は、保存容器18、原料送出装置20、および、原料送出装置に接続されたモータ22を含みうる。保存容器18は、矢印26が示すようにガラス溶融炉12の溶融槽14に供給しうる大量の原料24を保存するように構成されうる。原料24は、典型的には、1つ以上のガラス形成金属酸化物、および、1つ以上の改質剤を含む。いくつかの例において、原料送出装置20は、モータ22によって動力を与えられて、原料送出装置20が所定の量の原料24を、保存容器18から溶融槽14に送出するようにしうる。更なる例において、モータ22は、原料送出装置20に動力を与えて、原料24を、溶融槽14の下流側で検出された溶融ガラス面の高さに基づいて制御された速度で、導入しうる。その後、溶融槽14内の原料24は加熱されて、溶融ガラス28を形成しうる。
【0029】
ガラス製造装置10は、任意で、ガラス溶融炉12に対して下流側に位置する下流側ガラス製造装置30も含みうる。いくつかの例において、下流側ガラス製造装置30の一部は、ガラス溶融炉12の一部として組み込まれうる。いくつかの場合において、以下に記載する第1の接続路32、または、下流側ガラス製造装置30の他の部分を、ガラス溶融炉12の一部として組み込みうる。第1の接続路32を含む、下流側ガラス製造装置の要素を、貴金属から形成しうる。適した貴金属は、白金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、および、パラジウム、若しくは、それらの合金からなる金属の群から選択される白金族金属を含む。例えば、ガラス製造装置の下流側構成要素は、約70質量%から約90質量%の白金、および、約10質量%から約30質量%のロジウムを含む白金ロジウム合金から形成されうる。しかしながら、他の適した金属は、モリブデン、パラジウム、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、および、それらの合金を含みうる。
【0030】
下流側ガラス製造装置30は、溶融槽14の下流側に位置して、溶融槽14に上記第1の接続路32を通って連結された清澄槽34などの第1の調整(つまり、処理)槽を含みうる。いくつかの例において、溶融ガラス28は、溶融槽14から清澄槽34へ、第1の接続路32を通って重力送りされうる。例えば、重力が、溶融ガラス28を、溶融槽14から清澄槽34へ、第1の接続路32の内側経路を通過させうる。しかしながら、他の調整槽を、溶融槽14の下流側、例えば、溶融槽14と清澄槽34の間に配置しうると理解すべきである。いくつかの実施形態において、調整槽を、溶融槽と清澄槽の間に採用して、主要な溶融槽からの溶融ガラスを、清澄槽に入る前に、更に加熱して溶融処理を継続するか、または、溶融槽内の溶融ガラスの温度より低い温度に冷却しうる。
【0031】
清澄槽34内の溶融ガラス28から、気泡を、様々な技術によって除去しうる。例えば、原料24は、加熱された場合に化学還元反応を生じて酸素を放出する酸化スズなどの多価化合物(つまり、清澄剤)を含みうる。他の適した清澄剤は、限定するものではないが、ヒ素、アンチモン、鉄、および、セリウムを含む。清澄槽34は、溶融槽の温度より高い温度まで加熱され、それによって、溶融ガラスおよび清澄剤が加熱される。清澄剤の温度誘起化学還元により生成された酸素の気泡は、清澄槽内の溶融ガラスを通って上昇し、溶融炉内で生成された溶融ガラス内の気体は、拡散するか、または、清澄剤によって生成された酸素の気泡に合体する。次に、拡大した気泡は、清澄槽内の溶融ガラスの自由表面へ上昇し、その後、清澄槽から排気される。更に、酸素の気泡は、清澄槽内の溶融ガラスを機械的に混合させうる。
【0032】
下流側ガラス製造装置30は、溶融ガラスを混合する混合槽36など、他の調整槽を、更に含みうる。混合槽36は、清澄槽34の下流側に位置しうる。混合槽36を用いて、均一なガラス溶融組成物を提供し、それによって、清澄槽を出る清澄後の溶融ガラスに存在しうる帯状の化学的または熱的不均一部分を削減しうる。図示したように、清澄槽34は、第2の接続路38を通って、混合槽36に連結されうる。いくつかの例において、溶融ガラス28は、清澄槽34から混合槽36に、第2の接続路38を通って重力送りされうる。例えば、重力が、溶融ガラス28を、清澄槽34から混合槽36へ、第2の接続路38の内側経路を通過させうる。混合槽36を清澄槽34の下流側に示しているが、混合槽36は、清澄槽34の上流側に配置されうることに留意すべきである。いくつかの実施形態において、下流側ガラス製造装置30は、多数の混合槽、例えば、清澄槽34の上流側の混合槽、および、清澄槽34の下流側の混合槽を含みうる。これらの多数の混合槽は、同じ設計であるか、または、異なる設計でありうる。
【0033】
下流側ガラス製造装置30は、混合槽36の下流側に位置しうる送出槽40など、他の調整槽を更に含みうる。送出槽40は、下流側形成装置に供給されるべき溶融ガラス28を調整しうる。例えば、送出槽40は、蓄積部、および/または、流量制御部として作用して、溶融ガラス28を調節するか、および/または、溶融ガラスの一定の流れを、流出路44を通って形成体42に提供しうる。図示したように、混合槽36は、送出槽40に、第3の接続路46を通って連結されうる。いくつかの例において、溶融ガラス28は、混合槽36から送出槽40に、第3の接続路46を通って重力送りされうる。例えば、重力が、溶融ガラス28を、混合槽36から送出槽40へ、第3の接続路46の内側経路を通過させうる。
【0034】
下流側ガラス製造装置30は、上記形成体42、および、流入路50を含む形成装置48を、更に含みうる。流出路44は、溶融ガラス28を、送出槽40から、形成装置48の流入路50に送出するように配置されうる。例えば、流出路44は、流入路50内に入れ子状態で、その内面から離間して位置し、それによって、流出路44の外面と流入路50の内面の間に位置する溶融ガラスの自由表面を提供しうる。フュージョンダウンドローガラス製造装置内の形成体42は、形成体の上面に位置する桶部52、および、形成体の底縁部56に沿ってドロー方向に収束する収束形成面54を含みうる。形成体の桶部に、送出槽40、流出路44、および、流入路50を介して送出された溶融ガラスは、桶部の側壁部から溢れて、収束形成面54に沿って、溶融ガラスの別々の流れとして下降する。溶融ガラスの別々の流れは、下方で、底縁部56に沿って合流し、ガラスが冷却されて、ガラスの粘度が高まる時に、ガラスリボンの寸法を制御するように、ガラスリボンに、重力、縁部ロール72、および、引張ロール82などによる張力を加わることによって、底縁部56からドローまたは流れ方向60に引き出される単一のガラスリボンガラス58を生成する。こうして、ガラスリボン58は、粘弾性転移を生じて、ガラスリボン58に安定した寸法特性を与える機械的特性を取得する。いくつかの実施形態において、ガラスリボン58は、ガラス分離装置100によって、ガラスリボンの弾性領域で、個々のガラスシート62に分離されうる。次に、ロボット64が、把持具65を用いて、個々のガラスシート62を、搬送システムに転送し、その後、個々のガラスシートは、更に処理されうる。
【0035】
図2は、
図1の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示し、溶融槽14、および、清澄槽34が運転状態である。具体的には、
図2において、原料24が、溶融槽14に、原料送出装置20(例えば、スクリュー供給部)を介して連続して導入され、溶融槽14、第1の接続路32、清澄槽34、および、第2の接続路38が、溶融槽14、第1の接続路32、清澄槽34、および、第2の接続路38の間を連続して流れる溶融ガラス28を含むガラス溶融組成物で、運転レベルまで満たされる。
【0036】
運転状態において、溶融槽14、清澄槽34、並びに、第1および第2の接続路32、38内の温度は、溶融ガラス28を含むガラス溶融組成物の融点より高い、例えば、溶融槽14内の温度は、(
図2~8に、116a、116b、116cとして示したような)1つ以上の燃焼バーナーの運転を介して、および/または、(
図4~6に、122a、122b、122cとして示したような)1つ以上の電極の運転を介して維持され、更に、清澄槽34内の温度は、(
図2~8に、136a、136b、136cとして示したような)フランジの作用を介して維持されうる。第1および第2の接続路32、38内の温度も、例えば、フランジ(不図示)によって維持されうる。
図2~8は、3つの燃焼バーナー、および、3つのフランジを示し、
図4~6は、3つの電極を示しているが、本明細書に開示の実施形態は、それらに限定されず、任意の数の燃焼バーナー、フランジ、および、電極を含みうると理解すべきである。
【0037】
図2に示した運転状態において、溶融槽14の(
図4に、158として示したような)排出口は、栓部118で塞がれる。更に、運転状態において、溶融槽14内の電極は、溶融ガラス28を含むガラス溶融組成物内に完全に埋まっている。
【0038】
更に、運転状態において、清澄槽34の少なくとも一部の温度は、溶融槽14内の温度より高い温度で維持されうる。例えば、清澄槽34の少なくとも一部の温度は、溶融槽14内の温度より、少なくとも50℃高く、更に、少なくとも100℃高くなど、少なくとも20℃高く維持されうるもので、約50℃から約150℃高くなど、約20℃から約200℃高く維持される場合を含みうる。例えば、ある実施形態において、運転状態における清澄槽34の少なくとも一部の温度は、約1420℃から約1670℃の範囲で、ガラス溶融組成物に応じて、変えうる。
【0039】
運転状態である例示的な実施形態において、溶融槽14内の雰囲気(MA)(つまり、溶融ガラス28を含むガラス溶融組成物の上方の気体組成物)、および/または、清澄槽34内の雰囲気(FA)は、溶融槽14および/または清澄槽34を囲む雰囲気と略同じ圧力を有しうる。更に、ある運転状態の例示的な実施形態において、溶融槽14内の雰囲気(MA)、および/または、清澄槽34内の雰囲気(FA)は、空気と略同じ酸素濃度を有しうる。溶融槽14は、溶融槽14内の雰囲気と流体連通した排気口114を含み、次に、それは、例えば、汚染削減システム(不図示)と流体連通しうる。同様に、清澄槽は、清澄槽34内の雰囲気と流体連通した排気口134を含み、次に、それは、例えば、汚染削減システム(不図示)と流体連通しうる。
【0040】
図3は、
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示し、溶融槽14、および、清澄槽34が、本明細書に開示の実施形態による第1の再調整状態である。
図3に示した実施形態において、原料送出装置20は、溶融槽14から切断されて、投入領域(不図示)は、栓部120で塞がれている。更に、清澄槽34の排気口134は、栓部138で部分的に塞がれ、更に、供給気体(FG)が、そこを通って清澄槽34に供給されうる気体流入管140が、部分的に詰められている。
【0041】
ある例示的な実施形態において、供給気体(FG)は、空気より低い酸素濃度を有しながら、窒素などの少なくとも1つの不活性ガスを含みうる。例えば、ある実施形態において、供給気体(FG)は、約0.01体積%から約1.0体積%の酸素、および、約0.05体積%から約0.5体積%の酸素など、約1.0体積%未満の酸素を含みうる。更に、ある例示的な実施形態において、約1.0体積%未満の酸素を含む供給気体(FG)は、約99.0体積%から約99.99体積%の窒素など、少なくとも約99体積%の窒素を含みうる。
【0042】
供給気体(FG)が清澄槽34に供給される間に、ガラス溶融槽内の少なくとも1つの燃焼バーナー(例えば、116a、116b、116cの少なくとも1つ)を燃料豊富条件で運転することによって、溶融槽14内に、還元雰囲気(MA’)が確立される。ある例示的な実施形態において、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)は、約10ppmから約300ppmの酸素、および、約20ppmから約200ppmの酸素など、約300ppm未満の酸素を含みうる。
【0043】
溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)の圧力は、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高くあるべきであり、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より、少なくとも約0.15水柱インチ(約37Pa)高いなど、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より、約0.15水柱インチ(約37Pa)から約0.3水柱インチ(約75Pa)高いものを含む。
【0044】
溶融槽14内の少なくとも1つの燃焼バーナーの燃料豊富条件での運転は、溶融槽14内の温度を、ガラス溶融組成物の融点より高い温度で維持し続けるように、それと同時に、溶融槽14内で約1000ppm未満の酸素濃度を有する還元雰囲気(MA’)を確立して維持し、溶融槽内の還元雰囲気の圧力は、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高いようにしながら、行われるべきである。適切な燃料豊富条件の燃料の酸素に対する比は、運転状態で用いる燃料の酸素に対する比から推定しうるもので、例えば、使用する燃料の種類、および、ガラス溶融槽の幾何学形状の関数でありうる。
【0045】
例えば、天然ガスを燃料として用いた場合、燃料の酸素に対するモル比は、運転状態において、約1:2.3から約1:2.5の範囲でありうるもので、本発明者は、燃料の酸素に対する比を、約1:1.8に調節した場合、そのような燃料豊富条件が、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高い圧力を有する溶融槽14内で還元雰囲気(MA’)の確立および維持を可能にすることを見出した。したがって、天然ガスを燃料として用いた場合、溶融槽14内の少なくとも1つの燃焼バーナーを運転して、運転状態に対して約30%から約40%の燃料豊富条件など、少なくとも約30%の燃料豊富条件で運転して、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高い圧力を有する溶融槽14内で還元雰囲気(MA’)の確立および維持を可能にしうる。
【0046】
本明細書に開示の例示的な実施形態において、供給気体(FG)を清澄槽34に供給して、清澄槽34内の雰囲気(FA’)の圧力が、溶融槽14内の還元雰囲気内の圧力より高くなるようにする。例えば、ある例示的な実施形態において、清澄槽34内の雰囲気(FA’)の圧力は、約0.05水柱インチ(約13Pa)から約0.10水柱インチ(約25Pa)など、少なくとも約0.05水柱インチ(約13Pa)、ガラス溶融槽14内の還元雰囲気の圧力より高くありうる。一方、清澄槽34内の雰囲気(FA’)は、例えば、約0.05体積%から約0.5体積%の酸素など、約0.01体積%から約1.0体積%の酸素を含みうる。
【0047】
その間に、清澄槽34の温度は、運転状態の温度より低い温度、約1550℃以下の温度などに低下し、第2の接続路38、および/または、清澄槽34のうち第2の接続路38に最も近接した部分の温度は、ガラス溶融組成物の軟化点以下である、約970℃から約1000℃の温度など、約1000℃より低い温度に低下しうる。そのような温度変化は、例えば、フランジ(例えば、136a、136b、136c)に供給される電力を調節することによって可能でありうる。清澄槽34、および/または、清澄槽34と流体連通する第2の接続路38内の温度を、そのようにガラス溶融組成物の軟化点以下に維持することによって、ガラス栓部148を確立しうる。ガラス栓部148が確立されると、ガラス栓部148の下流側の溶融ガラス28を含むガラス溶融組成物は、ガラス製造装置10から、清澄槽34の下流側の下流側ガラス製造装置30の構成要素、例えば、流出路44などを通って排出されうる。
【0048】
図4は、
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示し、溶融槽14、および、清澄槽34が、本明細書に開示の実施形態による第2の再調整状態である。
図4に示した実施形態において、溶融槽14の排出口158は、栓部118を一時的に取り外すことによって、塞がれておらず、溶融ガラス28を含むガラス溶融組成物は、溶融槽28から、排出口158を通って排出される。清澄槽34、および、溶融槽14と流体連通した第1の接続路32内の溶融ガラス28を含むガラス溶融組成物も、ガラス製造装置10から、排出口158を通って排出される。一方、排出手順中に、電極122a、122b、122cへの電力供給は停止し、排出手順の少なくとも一部の間、ガラス溶融組成物が溶融槽14から完全に排出された時などに、溶融槽14内の温度を、例えば、運転状態の溶融槽14の温度より、少なくとも約100℃低く維持しうる。
【0049】
排出手順中、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)および清澄槽34内の雰囲気(FA’)は、
図3について記載したように維持される。具体的には、排出手順中、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)の圧力は、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高く、清澄槽34内の雰囲気(FA’)の圧力は、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)の圧力より高い。ある例示的な実施形態において、排出手順中、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)は、約10ppmから約300ppmの酸素を含み、清澄槽34内の雰囲気(FA’)は、約0.01体積%から約1.0体積%の酸素を含む。
図4に示した実施形態において、過度な加圧を防ぐために、栓部138は、排気口134から取り外れている。
【0050】
溶融ガラス28を含むガラス溶融組成物が、溶融槽14から排出されると、電極(例えば、122a、122b、122c)は、溶融槽内の還元雰囲気(MA’)に曝される。還元雰囲気(MA’)は、特に、ガラス溶融組成物の融点より高い温度などの高温で、電極が急速に酸化されてしまう場合に、電極を酸化から保護する。例えば、モリブデンから実質的に構成された電極など、モリブデンを含む電極は、非還元雰囲気内において、約400℃より高い温度で急速に酸化することが知られている。溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)を維持し、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)の圧力を、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高くすることで、排出手順中に、そのような電極を酸化から実質的に保護する。
【0051】
溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)が、モリブデン電極などの電極を酸化から実質的に保護しうる一方、そのような雰囲気は、白金または白金ロジウム合金など、貴金属、または、その合金を含むか、または、それから形成された清澄槽34など、ガラス製造装置10の任意の構成要素に悪影響を与えうる。例えば、モリブデン、または、SnO2などの他の金属の酸化物をある量で含む還元雰囲気は、白金と反応し易く、低融点の合金を形成し、それは、白金のシステムに孔を形成しうる。したがって、清澄槽34が、白金または白金ロジウム合金など、貴金属、または、その合金を含むか、または、それから形成された場合、排出手順中に、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)が清澄槽34内に実質的に流れ込むのを防ぐために、清澄槽34内の雰囲気(FA’)の圧力は、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)の圧力より高い。逆に、排出手順中に、溶融槽14内に流れ込んだ清澄槽34内の雰囲気(FA’)は、溶融槽14内の少なくとも1つの燃焼バーナー(例えば、116a、116b、116c)の燃料豊富条件での運転を介して、還元雰囲気に急速に変わり、それにより、例えば、白金を含む清澄槽34を、望ましくない合金化から同時に保護しながら、溶融槽の電極(例えば、122a、122b、122c)を、酸化から実質的に保護するのが可能になる。
【0052】
図5は、
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す図であり、溶融槽14および清澄槽34が、本明細書に開示の実施形態による第3の再調整状態である。
図5に示した実施形態において、栓部120が取り外され、栓部118が再び挿入されて、原料送出装置20が溶融槽14に再接続されている。原料送出装置20は、ガラスカレット124を溶融槽14内に導入し、
図5に示したように、ガラスカレット124は、溶融ガラスカレット128状態で、電極122a、122b、122cを部分的に埋める。モリブデンを含む電極などの電極122a、122b、122cが、溶融ガラスカレット128内に、少なくとも部分的に埋められると、電極に電力が供給されうる。一方、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)、および、清澄槽34内の雰囲気(FA’)は、
図3について記載したように維持される。具体的には、
図5に示した実施形態において、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)の圧力は、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高く、清澄槽34内の雰囲気(FA’)の圧力は、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)の圧力より高い。
【0053】
図6は、
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す図であり、溶融槽14および清澄槽が、本明細書に開示の実施形態による第4の再調整状態である。
図6に示した実施形態において、更に、溶融ガラスカレット128の表面高さが、溶融槽14に最も近接した第1の接続路32の少なくとも一部をすっかり埋める高さとなるように、ガラスカレット124は溶融槽14内に導入される。この時点で、気体流入管140を排気口134から取り外して、清澄槽34内の雰囲気(FA)を、
図2について記載したように、運転状態に対応するものに戻しうる。一方、
図3について記載したように、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)は、維持される。具体的には、
図6に示した実施形態において、溶融槽14内の還元雰囲気(MA’)の圧力は、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高い。
【0054】
図7は、
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す図であり、溶融槽14および清澄槽34が、本明細書に開示の実施形態による第5の再調整状態である。
図7に示した実施形態において、更に、溶融ガラスカレット128の表面高さが、モリブデンを含む電極などの電極122a、122b、122cを完全に埋める高さとなるように、ガラスカレット124は、溶融槽14内に導入される。電極122a、122b、122cを溶融ガラスカレット128に完全に埋めた後に、第2のガラス溶融組成物に対応する原料24’を、溶融槽14内に導入しうる。第2のガラス溶融組成物は、元のガラス溶融組成物と同じであるか、または、異なりうる。更に、電極122a、122b、122cを完全に埋めた後に、燃焼バーナー116a、116b、116cを燃料豊富状態から運転状態に戻して、溶融槽内の雰囲気(MA)を、
図2について記載したように、運転状態に対応するものに戻しうる。一方、清澄槽34の温度は、
図2について記載したように、運転状態に戻り、ガラス栓部148を溶融させうる。
【0055】
図8は、
図2の例示的なガラス製造装置および処理の一部を示す図であり、溶融槽14および清澄槽34が、運転状態に戻っている。
図8に示すように、ガラス製造装置10が第2のガラス溶融組成物で再び満たされると、溶融ガラスカレット128は、最終的に、ガラス製造装置10から押し流されて、ガラス製造装置10は、
図2について記載したような運転状態に戻されるが、(元のガラス溶融組成物ではなく)溶融ガラス28’を含む第2のガラス溶融組成物が処理される点が異なる。
【0056】
上記実施形態は、ガラス溶融組成物を、溶融槽14および清澄槽34から排出する処理に関するが、本明細書に開示の実施形態は、ガラス製造装置10の少なくとも一部を、取り外して使用しない実施形態も含むと理解すべきであり、例えば、清澄槽34、第1の接続路32、および、第2の接続路38の少なくとも1つが、修理および/または交換のために、ガラス製造装置10から取り外されうる。そのような実施形態において、
図3~6に示したガラス栓部148と同様のガラス栓部を、例えば、溶融槽14と第1の接続路32の間に確立して、ガラス溶融組成物を溶融槽14から排出するのと共に、ガラス溶融組成物で満たされた清澄槽34および第1の接続路32を、ガラス製造装置10から取り外すようにしうる。
【0057】
図9は、本明細書に開示の実施形態による排出および注入手順中の電極の直径を、電極の最上部からの距離の関数として示すチャートである。
図2~8に対応する排出および注入手順において、ガラス溶融組成物は、モリブデン電極およびジルコニアの底部を含むガラス溶融槽から排出されて、還元雰囲気は、溶融槽を囲む雰囲気の圧力より、約0.25水柱インチ(約63Pa)高い圧力で維持された。約10ppmから約300ppmの酸素濃度を有する還元雰囲気は、溶融槽内の燃焼バーナーを、天然ガスに対する酸素の比を約1.8で運転することによって維持された。ガラス溶融組成物が溶融槽から排出されると、還元雰囲気を含む溶融槽は、ガラス溶融組成物が空の状態で、約84時間、約1500℃の温度で維持された。
図9から分かるように、いくつかの電極の溶解が、モリブデン電極の最上部近傍で生じたのが観察されたが、電極は、主に、破損しないままであった。これに対して、空気と略同じ酸素濃度を有する雰囲気などの非還元雰囲気において、そのようなモリブデン電極は、約84時間に亘って、約1500℃の温度の場合に、完全に腐食しうる。
【0058】
上記実施形態を、フュージョンダウンドロー処理について記載したが、そのような実施形態を、フロート処理、スロットドロー処理、アップドロー処理、管引出し処理、プレスローリング処理など、他のガラス形成処理に利用しうると理解すべきである。
【0059】
当業者には、本開示の精神および範囲を逸脱することなく、様々な変更および変形が可能なことが明らかだろう。したがって、本開示は、添付の請求項、および、それらの等価物の範囲内である限りは、そのような変更および変形を網羅することを意図する。
【0060】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0061】
実施形態1
ガラス製造システムの再調整方法において、
ガラス溶融槽内に還元雰囲気を確立する工程と、
前記還元雰囲気が前記ガラス溶融槽内に存在する間に、ガラス溶融組成物を該ガラス溶融槽から排出する工程と
を含み、
前記ガラス溶融槽内の前記還元雰囲気の圧力は、該ガラス溶融槽を囲む雰囲気の圧力より高く、
前記ガラス溶融槽内に前記還元雰囲気を確立する工程は、該ガラス溶融槽内の少なくとも1つの燃焼バーナーを燃料豊富条件で運転する工程を含むものである方法。
【0062】
実施形態2
前記ガラス溶融槽は、清澄槽を含む下流側ガラス製造装置と流体連通するものであり、前記ガラス溶融組成物を該ガラス溶融槽から排出する工程の間、前記清澄槽内の雰囲気の圧力は、該ガラス溶融槽内の前記還元雰囲気の前記圧力より高いものである、実施形態1に記載の方法。
【0063】
実施形態3
前記清澄槽内の前記雰囲気は、約0.1体積%から約1.0体積%の酸素を含むものである、実施形態2に記載の方法。
【0064】
実施形態4
約1.0体積%未満の酸素を含む気体を、前記清澄槽に供給する工程を、
含むものである、実施形態3に記載の方法。
【0065】
実施形態5
前記約1.0体積%未満の酸素を含む気体は、少なくとも約99体積%の窒素を含むものである、実施形態4に記載の方法。
【0066】
実施形態6
前記清澄槽は、白金または、その合金を含むものである、実施形態2に記載の方法。
【0067】
実施形態7
前記清澄槽は、白金ロジウム合金を含むものである、実施形態6に記載の方法。
【0068】
実施形態8
前記溶融槽は、モリブデンを含む少なくとも1つの電極を含むものである、実施形態1に記載の方法。
【0069】
実施形態9
前記還元雰囲気が前記ガラス溶融槽に存在し、かつ、前記清澄槽内の前記雰囲気の前記圧力が該ガラス溶融槽内の該還元雰囲気の前記圧力より高い間に、溶融ガラスを該清澄槽から排出する工程を、
更に含む、実施形態2に記載の方法。
【0070】
実施形態10
前記清澄槽から排出される前記溶融ガラスの少なくとも一部は、前記ガラス溶融槽を通って排出されるものである、実施形態9に記載の方法。
【0071】
実施形態11
前記ガラス溶融槽内の前記還元雰囲気の前記圧力は、少なくとも約0.25水柱インチ(約63Pa)、該ガラス溶融槽を囲む前記雰囲気の前記圧力より高いものである、実施形態2に記載の方法。
【0072】
実施形態12
前記清澄槽内の前記雰囲気の前記圧力は、少なくとも約0.05水柱インチ(約13Pa)、前記ガラス溶融槽内の前記還元雰囲気の前記圧力より高いものである、実施形態11に記載の方法。
【0073】
実施形態13
前記還元雰囲気は、約10ppmから約300ppmの酸素を含むものである、実施形態1に記載の方法。
【0074】
実施形態14
前記ガラス溶融組成物を前記ガラス溶融槽から排出する工程の後に、第2のガラス溶融組成物を該ガラス溶融槽に導入するものである、実施形態1に記載の方法。
【0075】
実施形態15
前記ガラス溶融組成物を前記ガラス溶融槽から排出する間、モリブデンを含む前記少なくとも1つの電極に電流が供給されないものである、実施形態8に記載の方法。
【0076】
実施形態16
前記第2のガラス溶融組成物が前記ガラス溶融槽に導入される前に、ガラスカレットが、該ガラス溶融槽に導入されるものである、実施形態15に記載の方法。
【0077】
実施形態17
前記ガラスカレットは、該ガラスカレットがモリブデンを含む前記少なくとも1つの電極を少なくとも部分的に埋めるまで、前記ガラス溶融槽に導入されるものであり、モリブデンを含む該少なくとも1つの電極は、該ガラスカレットによって少なくとも部分的に埋められた後に電流を供給されるものである、実施形態16に記載の方法。
【0078】
実施形態18
前記ガラスカレットは、該ガラスカレットがモリブデンを含む前記少なくとも1つの電極を少なくとも完全に埋めるまで、前記ガラス溶融槽に導入されるものであり、該少なくとも1つの電極が該ガラスカレットに完全に埋められた後に、第2のガラス溶融組成物が該ガラス溶融槽に導入されるものである、実施形態17に記載の方法。
【0079】
実施形態19
前記清澄槽、または、該清澄槽と流体連通した流路の一部を前記ガラス溶融組成物の軟化点以下の温度に維持することによって、ガラス栓部を、該清澄槽内、または、該清澄槽と流体連通した前記流路内に、確立する工程を、
更に含む、実施形態9に記載の方法。
【0080】
実施形態20
前記清澄槽から排出される前記溶融ガラスの少なくとも一部は、前記ガラス溶融槽を通って排出されるものである、実施形態19に記載の方法。
【符号の説明】
【0081】
10 ガラス製造装置
12 溶融炉
16 上流側ガラス製造装置
14 溶融槽
20 原料送出装置
22 モータ
30 下流側ガラス製造装置
32 第1の接続路
34 清澄槽
36 混合槽
38 第2の接続路
46 第3の接続路
114、134 排気口
116a、116b、116c 燃焼バーナー
118、120、138、148 栓部
122a、122b、122c 電極
136a、136b、136c フランジ
140 気体流入管