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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】血小板の採取システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20220608BHJP
【FI】
A61M1/02 125
A61M1/02 121
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020088795
(22)【出願日】2020-05-21
(62)【分割の表示】P 2017537801の分割
【原出願日】2016-08-25
(65)【公開番号】P2020121219
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2015169618
(32)【優先日】2015-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 政嗣
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-503966(JP,A)
【文献】特表2013-514863(JP,A)
【文献】特表2001-504748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供血者から採取した全血を収容する第1チャンバ(44)を有し、前記全血を、血小板を多く含む第1血液成分と残りの成分とに遠心分離する1次分離部(16A)と、
前記1次分離部(16A)から移送された前記第1血液成分を収容する第2チャンバ(50)を有し、前記第1血液成分を血小板含有成分と第2血液成分とに遠心分離する2次分離部(40)と、
前記2次分離部(40)から移送された前記血小板含有成分を収容する第3チャンバ(52)を有し、前記血小板含有成分を血小板と他の成分とに遠心分離する3次分離部(42)と、
前記1~3次分離部(16A、40、42)に遠心力を付与する遠心力付与部(14)と、を備える血小板の採取システム(10、10A)であって、
前記1次分離部(16A)と、前記2次分離部(40)の遠心方向外端と、前記3次分離部(42)の遠心方向外端とは、前記遠心力の遠心中心に向かって順に配置されており、
前記3次分離部(42)は、
遠心方向に厚い第1領域(54)と、
遠心方向に薄い第2領域(56)と、
前記2次分離部(40)と連通する流入ポート(77)と、
血小板を流出させる流出ポート(78)と、
血小板を回収する回収ポート(79)と、
前記第1領域(54)及び前記第2領域(56)の遠心中心側を覆う天井部(74)と、
前記第1領域(54)に設けられ、前記天井部(74)から遠心方向に向かって離れた第1底部(60)と、
前記第2領域(56)に設けられ、前記天井部(74)から遠心方向に向かって前記第1底部(60)よりも小さく離れた第2底部(62)と、を有し、
前記流入ポート(77)及び前記回収ポート(79)は、前記第1領域(54)に設けられるとともに、
前記流入ポート(77)の前記天井部(74)を起点に遠心方向に突出する突出端及び前記回収ポート(79)の前記天井部(74)を起点に遠心方向に突出する突出端は、前記第1底部(60)の近傍であって前記第2底部(62)よりも遠心方向に突出した位置に配置され、
前記流出ポート(78)は前記第2領域(56)に設けられる、
ことを特徴とする血小板の採取システム(10、10A)。
【請求項2】
供血者から採取した全血を収容する第1チャンバ(44)を有し、前記全血を、血小板を多く含む第1血液成分と残りの成分とに遠心分離する1次分離部(16A)と、
前記1次分離部(16A)から移送された前記第1血液成分を収容する第2チャンバ(50)を有し、前記第1血液成分を血小板含有成分と第2血液成分とに遠心分離する2次分離部(40)と、
前記2次分離部(40)から移送された前記血小板含有成分を収容する第3チャンバ(52)を有し、前記血小板含有成分を血小板と他の成分とに遠心分離する3次分離部(42)と、
前記1~3次分離部(16A、40、42)に遠心力を付与する遠心力付与部(14)と、を備える血小板の採取システム(10、10A)であって、
前記1次分離部(16A)は、前記全血を前記第1チャンバ(44)に流入させる1次分離部側流入ポートを有し、
前記2次分離部(40)は、前記第1血液成分を前記第2チャンバ(50)に流入させる2次分離部側流入ポートを有し、
前記3次分離部(42)は、前記血小板含有成分を前記第3チャンバ(52)に流入させる3次分離部側流入ポート(77)を有し、
前記1次分離部側流入ポートと、前記2次分離部側流入ポートと、前記3次分離部側流入ポート(77)とは、前記遠心力の遠心中心に向かって順に配置されており、
前記3次分離部(42)は、
遠心方向に厚い第1領域(54)と、
遠心方向に薄い第2領域(56)と、
前記2次分離部(40)と連通する流入ポート(77)と、
血小板を流出させる流出ポート(78)と、
血小板を回収する回収ポート(79)と、
前記第1領域(54)及び前記第2領域(56)の遠心中心側を覆う天井部(74)と、
前記第1領域(54)に設けられ、前記天井部(74)から遠心方向に向かって離れた第1底部(60)と、
前記第2領域(56)に設けられ、前記天井部(74)から遠心方向に向かって前記第1底部(60)よりも小さく離れた第2底部(62)と、を有し、
前記流入ポート(77)及び前記回収ポート(79)は、前記第1領域(54)に設けられるとともに、
前記流入ポート(77)の前記天井部(74)を起点に遠心方向に突出する突出端及び前記回収ポート(79)の前記天井部(74)を起点に遠心方向に突出する突出端は前記第1底部(60)の近傍であって前記第2底部(62)よりも遠心方向に突出した位置に配置され、
前記流出ポート(78)は前記第2領域(56)に設けられる、
ことを特徴とする血小板の採取システム(10、10A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離により血液から血小板を採取する血小板の採取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血小板製剤の輸血時には、患者が輸血副作用を発症する可能性がある。この副作用は、血小板製剤に含まれる血漿が原因の1つと考えられている。そのため、輸血現場においては、血漿含有率が低い血小板(洗浄血小板:Washed Platelet Concentrateともいわれる)が要望されている。
【0003】
特表2013-514863号公報には、供血者から取り出した全血を遠心分離して、血小板を採取する血液アフェレーシスシステムが開示されている。この特表2013-514863号公報に開示のシステムは、遠心分離時に、血小板含有成分と同時に血小板添加溶液をチャンバに流入させて、洗浄血小板を得る構成となっている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上記の血小板を採取する技術に関連してなされたものであって、血漿含有率が充分に低い洗浄血小板を、より確実且つ効率的に得ることができる血小板の採取システムを提供することを目的とする。
【0025】
前記の目的を達成するために、本発明は、供血者から採取した全血を収容する第1チャンバを有し、前記全血を、血小板を多く含む第1血液成分と残りの成分とに遠心分離する1次分離部と、前記1次分離部から移送された前記第1血液成分を収容する第2チャンバを有し、前記第1血液成分を血小板含有成分と第2血液成分とに遠心分離する2次分離部と、前記2次分離部から移送された前記血小板含有成分を収容する第3チャンバを有し、前記血小板含有成分を血小板と他の成分とに遠心分離する3次分離部と、前記1~3次分離部に遠心力を付与する遠心力付与部と、を備える血小板の採取システムであって、前記1次分離部と、前記2次分離部の遠心方向外端と、前記3次分離部の遠心方向外端とは、前記遠心力の遠心中心に向かって順に配置されており、前記3次分離部は、遠心方向に厚い第1領域と、遠心方向に薄い第2領域と、前記2次分離部と連通する流入ポートと、血小板を流出させる流出ポートと、血小板を回収する回収ポートと、前記第1領域及び前記第2領域の遠心中心側を覆う天井部と、前記第1領域に設けられ、前記天井部から遠心方向に向かって離れた第1底部と、前記第2領域に設けられ、前記天井部から遠心方向に向かって前記第1底部よりも小さく離れた第2底部と、を有し、前記流入ポート及び前記回収ポートは、前記第1領域に設けられるとともに、前記流入ポートの前記天井部を起点に遠心方向に突出する突出端及び前記回収ポートの前記天井部を起点に遠心方向に突出する突出端は、前記第1底部の近傍であって前記第2底部よりも遠心方向に突出した位置に配置され、前記流出ポートは前記第2領域に設けられることを特徴とする。
【0026】
また前記の目的を達成するために、本発明は、供血者から採取した全血を収容する第1チャンバを有し、前記全血を、血小板を多く含む第1血液成分と残りの成分とに遠心分離する1次分離部と、前記1次分離部から移送された前記第1血液成分を収容する第2チャンバを有し、前記第1血液成分を血小板含有成分と第2血液成分とに遠心分離する2次分離部と、前記2次分離部から移送された前記血小板含有成分を収容する第3チャンバを有し、前記血小板含有成分を血小板と他の成分とに遠心分離する3次分離部と、前記1~3次分離部に遠心力を付与する遠心力付与部と、を備える血小板の採取システムであって、前記1次分離部は、前記全血を前記第1チャンバに流入させる1次分離部側流入ポートを有し、前記2次分離部は、前記第1血液成分を前記第2チャンバに流入させる2次分離部側流入ポートを有し、前記3次分離部は、前記血小板含有成分を前記第3チャンバに流入させる3次分離部側流入ポートを有し、前記1次分離部側流入ポートと、前記2次分離部側流入ポートと、前記3次分離部側流入ポートとは、前記遠心力の遠心中心に向かって順に配置されており、前記3次分離部は、遠心方向に厚い第1領域と、遠心方向に薄い第2領域と、前記2次分離部と連通する流入ポートと、血小板を流出させる流出ポートと、血小板を回収する回収ポートと、前記第1領域及び前記第2領域の遠心中心側を覆う天井部と、前記第1領域に設けられ、前記天井部から遠心方向に向かって離れた第1底部と、前記第2領域に設けられ、前記天井部から遠心方向に向かって前記第1底部よりも小さく離れた第2底部と、を有し、前記流入ポート及び前記回収ポートは、前記第1領域に設けられるとともに、前記流入ポートの前記天井部を起点に遠心方向に突出する突出端及び前記回収ポートの前記天井部を起点に遠心方向に突出する突出端は前記第1底部の近傍であって前記第2底部よりも遠心方向に突出した位置に配置され、前記流出ポートは前記第2領域に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る血小板の採取システムによれば、血漿含有率が充分に低い洗浄血小板を、より確実且つ効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る採取システムの全体構成を示す説明図である。
図2図1の採血回路セットの回路構成例を概略的に示すブロック図である。
図3図1の採血回路セットの1次分離バッグ、2次分離器及び3次分離器の配置例を示す平面図である。
図4図1の3次分離器を示す斜視図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6図1の採血システムによる血小板の採取方法のフローチャートである。
図7】成分採血時の採血回路セットの動作を示す第1説明図である。
図8図8Aは、図7に続く採血回路セットの動作を示す第2説明図であり、図8Bは、図8A中の3次分離器の状態を概略的に示す断面図である。
図9図9Aは、図8Aに続く採血回路セットの動作を示す第3説明図であり、図9Bは、図9A中の3次分離器の状態を概略的に示す断面図である。
図10図10Aは、図9Aに続く採血回路セットの動作を示す第4説明図であり、図10Bは、図10A中の3次分離器の状態を概略的に示す断面図である。
図11】変形例に係る採血システムの回路構成例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る血小板の採取システムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
本発明に係る採取システムは、供血者(献血者や患者等)の血液を体外で遠心分離して、その中の血液成分である血小板を採取する血液アフェレーシスシステムとして構成される。以下では、供血者から全血を連続的に取り出して遠心分離を行い、血液成分の一部を供血者に戻す成分採血用の採取システムについて説明する。なお、採取システムは、適宜の改変を施すことにより、全血の採血を行うシステムにも適用可能である。
【0033】
図1に示すように、採取システム10は、血液成分を貯留及び流動するための採血回路セット12(回収装置)と、採血回路セット12に遠心力を付与する遠心分離装置14(遠心力付与部)とを含む。
【0034】
採血回路セット12は、汚染防止や衛生のため、1回の使用毎に使い捨てにされる。採血回路セット12は、複数のバッグ16と、これらのバッグ16に繋がる複数のチューブ18と、所定の経路に形成され複数のチューブ18が保持又は接続されるカセット20とを備える。これら採血回路セット12の各構成については後述する。
【0035】
一方、遠心分離装置14は、成分採血において繰り返し使用される機器であり、医療施設や採血用車両等に備えられる。遠心分離装置14は、高さ方向に比較的長く形成された箱状の装置本体22と、装置本体22内に回転自在に収容されるロータ24とを備える。
【0036】
装置本体22は、採血回路セット12の各バッグ16を内部に収容する又は外部に保持するとともに、採血回路セット12に取り込まれた血液の遠心分離を制御する機能を有している。この装置本体22は、血液の遠心分離を行う際の操作や表示を行う表示操作装置26と、採血回路セット12のカセット20を取り付けるための取付部28と、ロータ24を収容する収容空間30とを備える。
【0037】
装置本体22の取付部28は、装置本体22の上部側にフレーム状に形成され、その内側にカセット20を嵌め込み保持するように構成される。また、取付部28は、図2に示す複数のポンプ32及び複数のクランプ34を所定位置に備えるとともに、図示しない複数のセンサを備える。取付部28へのカセット20の取り付けに伴い、採血回路セット12のチューブ18やカセット20が構成する経路上には、ポンプ32、クランプ34及びセンサが配置される。
【0038】
装置本体22の収容空間30は、上記の取付部28の下方に設けられ、装置本体22の上下方向に沿って延在する円筒状に形成される。収容空間30の底部には、ロータ24を取り付けて回転させる図示しない回転駆動源が設けられる。
【0039】
遠心分離装置14のロータ24は、装置本体22から取出自在に構成され、採血回路セット12を容易に取付可能としている。このロータ24は、上下方向に長尺な軸部36と、軸部36の上端部に設けられた導管ハウジング38とを有する。収容空間30に対するロータ24の収容状態では、軸部36の下端部が回転駆動源に連結固定される。
【0040】
導管ハウジング38は、軸部36よりも大きな外径を有する円環状に形成される。導管ハウジング38の外周面には、採血回路セット12の第1分離部である1次分離バッグ16Aが周方向に沿って装着される。また、導管ハウジング38内には、採血回路セット12の2次分離器40(2次分離部)、3次分離器42(3次分離部、分離器)が収容される幾つかの空洞部38aが設けられている(図3参照)。導管ハウジング38は、装置本体22の制御下に軸部36と一体的に回転する。
【0041】
次に、図2を参照して、採血回路セット12の各バッグ16及び各チューブ18の接続状態について説明する。採血回路セット12は、上記の複数のバッグ16として、1次分離バッグ16A、ACD液保存バッグ16B、補助バッグ16C、添加溶液保存バッグ16D、PPP用バッグ16E、廃棄用バッグ16F及びWPC用バッグ16Gを有する。ACD液保存バッグ16Bには、血液の抗凝固剤であるACD液が予め貯留され、添加溶液保存バッグ16Dには、血小板添加溶液102が予め貯留される。その一方で、1次分離バッグ16A、補助バッグ16C、PPP用バッグ16E、廃棄用バッグ16F及びWPC用バッグ16Gは、流体を収容可能な空洞を有している。
【0042】
1次分離バッグ16Aは、図1に示すように帯状の袋に形成されている。この1次分離バッグ16Aの内部には、供血者の全血が供給される第1チャンバ44が設けられる。1次分離バッグ16Aは、採血回路セット12の取付時に、導管ハウジング38の外周面に巻き付けられる。あるいは、導管ハウジング38は、その外周寄りに図示しないポケットを備え、1次分離バッグ16Aを収納する構成でもよい。1次分離バッグ16Aの一端部と他端部は、導管ハウジング38の装着時に図示しない連結体(紐等)により連結される。
【0043】
1次分離バッグ16Aの一端部側には、導入チューブ19aが連結されている。導入チューブ19aは、図1に示す束ねチューブ46内を通ってカセット20に保持され、さらにカセット20内の所定経路を通って外部に露出され、供血者の図示しない血液出入部に接続される。血液出入部は、例えば、供血者の血管に挿入及び留置される留置針等により構成される。図2に示すように、導入チューブ19aの途中位置には、血液出入部から血液を吸引するポンプ32aが設けられる。また、導入チューブ19aには、ACD液保存バッグ16Bの供給チューブ19cが接続される。供給チューブ19cの途中位置には、ACD液保存バッグ16BからACD液を吸引するポンプ32bが設けられ、これにより採取システム10は、導入チューブ19aにACD液を供給して全血の凝固を抑える。
【0044】
導入チューブ19aが接続する一端部から第1チャンバ44に流入した全血は、1次分離バッグ16Aの帯状に沿って導管ハウジング38の外周を周方向に流動して他端部に向かう。そして、全血は、ロータ24(導管ハウジング38)の回転に伴う遠心力を受けることで、その流動中に遠心分離がなされる。
【0045】
1次分離バッグ16Aの他端部側には、図1及び図2に示すように、第1~第3チューブ18a~18cが連結される。第1チューブ18aは、1次分離バッグ16Aの他端部の下側に連結され、束ねチューブ46内を通ってカセット20内に設けられたリザーバ48に接続される。第1チューブ18aは、第1チャンバ44の遠心分離により生成された濃縮赤血球(残りの成分)をリザーバ48に流出させる。
【0046】
第2チューブ18bは、1次分離バッグ16Aの他端部の上側に連結される。この第2チューブ18bは、束ねチューブ46内及びカセット20内の所定経路を通り、分岐点α1においてPPP用バッグ16Eに接続される第4チューブ18dと、リザーバ48に接続される第5チューブ18eとに分岐する。第2チューブ18bの途中位置には、ポンプ32cが設けられ、このポンプ32cは、全血の遠心分離により生成された血漿成分(乏血小板血漿:Platelet Poor Plasma)を流出又は流入させる。また、第4チューブ18dにはクランプ34bが設けられ、第5チューブ18eにはクランプ34aが設けられる。
【0047】
第3チューブ18cは、1次分離バッグ16Aの他端部の上下方向中間部に連結される。第3チューブ18cの反対側の端部は、導管ハウジング38内の2次分離器40に接続される。第3チューブ18cは、全血の遠心分離により生成されたバフィーコート(第1血液成分)を流出させる。バフィーコートには、白血球成分と多血小板血漿(血小板含有成分)が含まれる。すなわち、バフィーコートは、血小板を多量に有している。
【0048】
2次分離器40は、バフィーコートを一時収容する第2チャンバ50を有し、導管ハウジング38から遠心力が付与されることで、バフィーコートをさらに遠心分離する。2次分離器40は、円錐状に形成され、図3に示すように、導管ハウジング38の取付状態で、その頂部が遠心中心から遠い側に配置され、その底面が遠心中心に近い側に配置される。2次分離器40の頂部には第3チューブ18cが接続され、底面には第6チューブ18f(第1流路部)が接続される。また、2次分離器40は、テーパ状の側面に複数の段差を有することで、バフィーコートを遠心分離すると、比重が重い白血球成分(第2血液成分)を各段差で掴まえ、比重が軽い血漿及び血小板を含む血小板含有成分100(図8Bも参照)を遠心中心に寄せる。そして、第6チューブ18fから血小板含有成分100を流出させる。
【0049】
第6チューブ18fは、2次分離器40から束ねチューブ46内を通ってカセット20に接続され、カセット20内の合流点β1で第7チューブ18g(第2流路部)と合流し、第8チューブ18hに接続する。第6チューブ18fの途中位置には、クランプ34c(第1クランプ)が設けられている。第7チューブ18gは、添加溶液保存バッグ16Dに繋がり、その途中位置にはクランプ34d(第2クランプ)が設けられている。第8チューブ18hは、合流点β1と分岐点α2の間を延在し、その途中位置にポンプ32dを備える。そして、分岐点α2においてリザーバ48に接続される第9チューブ18iと、3次分離器42に接続される第10チューブ18jとに分岐する。また、第9チューブ18iには、クランプ34eが設けられ、第10チューブ18jには、クランプ34fが設けられる。
【0050】
第10チューブ18jの分岐点α2と反対側の端部は、3次分離器42の流入ポート77に接続されている。3次分離器42は、導管ハウジング38内に収容され、第6チューブ18fから流入する血小板含有成分100、及び第7チューブ18gから流入する血小板添加溶液102を一時的に貯留する第3チャンバ52を有する。そして、3次分離器42は、遠心力が付与されることで、血小板含有成分100を血漿(他の成分)と血小板とに分離する。この3次分離器42の構成については後に詳述する。3次分離器42には、束ねチューブ46を通ってカセット20内に延在する2つのチューブ(第11及び第12チューブ18k、18l)が接続される。
【0051】
第11チューブ18kは、3次分離器42から主に血漿を流出させる管であり、第12チューブ18lは、3次分離器42から主に血小板を流出させる管である。第11及び第12チューブ18k、18lにはクランプ34g、34hがそれぞれ設けられ、また互いの端部は合流点β2で合流して第13チューブ18mに接続される。第13チューブ18mは、その下流の分岐点α3においてリザーバ48に接続される第14チューブ18nと、第15チューブ18oとに分かれる。第14チューブ18nには、クランプ34iが設けられている。さらに、第15チューブ18oは、分岐点α4にて廃棄用バッグ16Fに接続される第16チューブ18pと、WPC用バッグ16Gに接続される第17チューブ18qとに分かれる。そして、第16及び第17チューブ18p、18qには、クランプ34j、34kがそれぞれ設けられる。
【0052】
また、カセット20に設けられるリザーバ48は、供血者に返血する血液成分を一時的に貯留する。リザーバ48には、第1、第5、第9及び第14チューブ18a、18e、18i、18nの他に、補助バッグ16Cに接続される第18チューブ18rと、供血者の血液出入部に接続される導出チューブ19bとが連結されている。なお、導入チューブ19a、導出チューブ19b、供給チューブ19cは、3連チューブとしてカセット20に接続される。導出チューブ19bの途中位置には、供血者に返血する血液成分を流動させるためのポンプ32eが設けられる。なお、本実施形態では、血液出入部の1つの留置針に導入チューブ19aと導出チューブ19bを接続し、採血と返血を同じ針により行う構成としているが、採取システム10は、2以上の針を用いて採血と返血を別々の経路で行う構成でもよい。
【0053】
採血回路セット12は、遠心分離装置14に取り付けられることにより、以上のように構成される。そして、採血回路セット12は、遠心分離装置14の駆動時に、導管ハウジング38、ポンプ32及びクランプ34が適宜のタイミングで動作することで、供血者の全血の遠心分離を行う。
【0054】
次に、上述した3次分離器42の構成について具体的に説明する。3次分離器42は、図3に示すように、導管ハウジング38の内側寄りに形成された空洞部38aに固定配置される。これにより3次分離器42には、導管ハウジング38の回転に伴い、1次分離バッグ16A及び2次分離器40にかかる遠心力よりも弱い遠心力が付与される。また、遠心分離装置14は、遠心分離時に導管ハウジング38の回転を安定化させるため、導管ハウジング38に取り付けられた1次分離バッグ16Aの両端部と遠心中心を挟んで反対側位置に3次分離器42を配置している。なお、3次分離器42の配置位置は、自由に設計してよく、例えば、2次分離器40の配置位置付近に3次分離器42を置いてもよい。
【0055】
図4及び図5に示すように、3次分離器42は、血小板含有成分100及び血小板添加溶液102を貯留可能な容器58(本体部)に構成されている。容器58は、遠心中心から見た正面視で、略長方形状に形成されている。また、容器58は、長手方向(矢印A方向)中央部から一方側に延在し平面視で遠心方向(矢印B1方向)に厚い第1領域54と、長手方向の他方側に延在し平面視で遠心方向に薄い第2領域56とを有する。第1領域54と第2領域56は、短手方向の幅が等しく設定されて相互に連なっている。第1領域54の長手方向一方側は、正面視で、曲率半径の大きな丸角を有する側辺に形成されている。第2領域56の長手方向他方側は、正面視で、曲率半径の小さな丸角を有する側辺に形成されている。
【0056】
第1領域54は、遠心中心側の天井部74から遠心方向に向かって大きく離れた第1底部60を有することで、その内側に大きな容積の第1空間52aを構築している。第2領域56は、天井部74から遠心方向に向かって小さく離れた第2底部62を有することで、その内側に小さな容積の第2空間52bを構築している。つまり、第1底部60は、第2底部62よりも遠心中心から離れた位置にある。なお、第1領域54と第2領域56の天井部74は面一に連続している。第1空間52aと第2空間52bは、長手方向に連通して第3チャンバ52を構成している。
【0057】
また、容器58は、上記の第3チャンバ52を有し遠心方向と反対方向(反遠心方向:矢印B2方向)に第3チャンバ52の開口部64を有する器部66と、器部66の開口部64に取り付けられる蓋部68とに分割可能に構成される。
【0058】
器部66は、上記の第1及び第2底部60、62と、各底部60、62から反遠心方向に向かって突出する側壁70とを有する。側壁70は、第1及び第2底部60、62を周方向に包囲して第3チャンバ52を形成している。また、器部66は、第1底部60と第2底部62の相互の深さ(高さ)が異なることで、その境界に段差壁72を有している。
【0059】
段差壁72は、正面視で、上下方向中央部が第2領域56側に向かって凹んだ形状を呈している。第1底部60、段差壁72、及び第1底部60から段差壁72と同じ高さまでの側壁70は、その内側に、遠心分離に伴い血小板を収容する(溜める)収容部54aを構成する。換言すれば、収容部54aは、第1空間52aの第1底部60寄り部分(矢印B1方向側)に設定される空間である。
【0060】
段差壁72は、図5に示す断面視で、第1及び第2底部60、62に対し直交する壁に形成されることで、血小板をより溜め易くしている。さらに、段差壁72の高さ(第1底部60から第2底部62までの反遠心方向の間隔)は、血小板含有成分100が血小板と血漿とに遠心分離された際の分離境界面の高さ以上に設定されることが好ましい。これにより、血小板が段差壁72を乗り越えることが大幅に抑制されるので、第3チャンバ52から血小板の流出を抑えて、血漿をより確実に排出することができる。
【0061】
一方、蓋部68は、器部66の側壁70の正面形状と一致する平板状の天井部74を有し、この天井部74は、接着等の適宜の取付手段により器部66の開口部64を閉塞する。蓋部68の天井部74には、3次分離器42に接続するチューブ18を取り付けるための複数の取付ポート76が設けられている。
【0062】
複数の取付ポート76は、筒状に形成され、天井部74の面方向と直交する方向(矢印B方向)に延在している。各取付ポート76の軸心部には、軸方向に沿って連通路76aが貫通形成されている。各取付ポート76の連通路76aの径は、同一に設定されてもよく、流動予定の流体に応じて相互に異なっていてもよい。各取付ポート76は、一対の流入ポート77と、流出ポート78と、回収ポート79とで構成される。
【0063】
一対の流入ポート77は、採血回路セット12の第10チューブ18jが接続されることで、血小板含有成分100及び血小板添加溶液102を第3チャンバ52に流入させる。すなわち、第10チューブ18jは、図2中の分岐点α2から3次分離器42に至る途中位置で2股に分岐し、この分岐チューブが一対の流入ポート77に各々装着される。
【0064】
なお、採血回路セット12は、上記のような血小板含有成分100及び血小板添加溶液102を共通の流入ポート77から流入させる回路以外にも、種々の回路を構成し得る。例えば、第6チューブ18fを一方の流入ポート77に接続し、第7チューブ18gを他方の流入ポート77に接続することで、血小板含有成分100と血小板添加溶液102を別々に流入させる構成でもよい。また、流入ポート77は、1つ又は3つ以上設けてもよいことは勿論である。
【0065】
一対の流入ポート77は、図4に示すように、第1領域54の長手方向一方側寄り、且つ短手方向に互いに離間した位置に形成されている。また、各流入ポート77は、図5に示すように、天井部74を基点に遠心方向及び反遠心方向(矢印B2方向)に突出している。各流入ポート77の遠心方向に突出する突出端は、第3チャンバ52の第1底部60近く(収容部54a内)に配置され、連通路76aと第3チャンバ52を連通させる流入部77αを有する。この場合、流入部77αは、一対の流入ポート77の2つの開口77aにより構成される。なお、流入部77αは、1つ又は3つ以上の開口77aで構成されてもよい。これらの開口77aは、平面視で、第1空間52a(収容部54a)内に配置されている。一方、各流入ポート77の反遠心方向に突出する突出端には、第10チューブ18jの流体を連通路76aに流入させる開口77bが設けられる。
【0066】
流出ポート78は、採血回路セット12の第11チューブ18kが接続され、主に血漿106及び血小板添加溶液102を第3チャンバ52から流出させる。流出ポート78は、正面視で、第2領域56の上側角部の近接位置に設けられる。また、流出ポート78は、天井部74から反遠心方向に突出している一方で、遠心方向には突出していない。天井部74の流出ポート78の形成箇所と反対面には、流出ポート78の連通路76aに流体を流出させる開口78a(流出部)が設けられる。すなわち、開口78aは、平面視で、第2領域56内に配置されている。なお、流出部は、1つの開口78aに限定されず、2以上の開口78a(流出ポート78)で構成されてもよい。流出ポート78の反遠心方向に突出する突出端には、連通路76aの流体を第11チューブ18kに流出させる開口78bが設けられる。
【0067】
回収ポート79は、採血回路セット12の第12チューブ18lが接続され、洗浄血小板及び血小板添加溶液102を第3チャンバ52から流出させる。回収ポート79は、天井部74の長手方向中央部(第1領域54)、且つ上下方向中央部に形成されている。この回収ポート79は、流入ポート77と同様に、天井部74から遠心方向と反遠心方向の両方に突出している。回収ポート79の遠心方向に突出する突出端には、第3チャンバ52の流体を連通路76aに流入させる開口79a(回収部)が設けられる。すなわち、開口79aは、流出ポート78の開口78aよりも遠心中心から離れた位置(開口77aと同程度の位置)に配置されている。なお、回収部も、1つの開口79aに限定されず、2以上の開口79a(回収ポート79)で構成されてもよい。回収ポート79の反遠心方向に突出する突出端には、連通路76aの流体を第12チューブ18lに流出させる開口79bが設けられる。
【0068】
なお、3次分離器42は、上記構成に限定されず、種々の応用例や変形例をとり得る。例えば、3次分離器42は、流出ポート78や回収ポート79を2以上設けてもよく、あるいは流入ポート77、流出ポート78又は回収ポート79を器部66に設けてもよい。さらに、3次分離器42は、流入ポート77と回収ポート79の幅方向の設置位置を交換して、長手方向中央部付近に血小板含有成分100及び血小板添加溶液102を供給する構成でもよい。
【0069】
また例えば、3次分離器42は、高さの異なる第1底部60と第2底部62を備えずに、流出ポート78の開口78aから遠心方向に向かって充分に離れた面一の底部(収容部54a)を有する構成でもよい。つまり、3次分離器42は、第3チャンバ52にて血小板と血漿を遠心分離して血漿を流出させ得ればよく、その形状やポートの開口の位置について特に限定されるものではない。第1及び第2底部60、62は、平面断面視で平坦状に形成されず、凹状や凸状等に形成されてもよい。
【0070】
本実施形態に係る採取システム10は、基本的には、以上のように構成され、以下、その作用効果について説明する。
【0071】
採取システム10の準備時に、医師や看護師等の医療従事者は、チューブ18がカセット20に適宜配線された採血回路セット12を、遠心分離装置14に取り付ける。この際、医療従事者は、導管ハウジング38の外周面に1次分離バッグ16Aを巻き付け、ロータ24を遠心分離装置14の収容空間30に収容する。また、遠心分離装置14の取付部28にカセット20を装着して、他のバッグ16B~16Gを図示しないスタンド等に吊り下げる。カセット20の装着に伴い、チューブ18の所定位置には、クランプ34、ポンプ32及びセンサが配置される。
【0072】
医療従事者は、成分採血において、先ず供血者に留置針を穿刺するとともに、採血回路セット12の導入チューブ19a、導出チューブ19bのコネクタを留置針に接続して血液出入部を構築する。そして、採取システム10の動作を開始させる。採取システム10は、遠心分離装置14内に設けられる制御部(図示せず)の制御に基づき、図6に示すフローチャートの手順に沿って、血液成分を体外処理して血小板を採取する。
【0073】
この場合、採取システム10は、1次分離バッグ16Aの第1チャンバ44に供血者の全血を収容し(ステップS1)、1次分離バッグ16Aを回転して全血を遠心分離する(ステップS2)。次に、第1チャンバ44から2次分離器40の第2チャンバ50に、全血の遠心分離により分離されたバフィーコートを移送し(ステップS3)、2次分離器40を回転してバフィーコートを遠心分離する(ステップS4)。次に、第2チャンバ50から3次分離器42の第3チャンバ52に、バフィーコートの遠心分離により分離された血小板含有成分100を移送し(ステップS5)、3次分離器42を回転して血小板含有成分100を遠心分離する(ステップS6)。さらに、第3チャンバ52に血小板添加溶液102を導入して、血小板含有成分100の遠心分離により分離された血漿と血小板添加溶液102とを置換する(ステップS7)。そして、第3チャンバ52内に残る血小板を血小板添加溶液102とともに採取する(ステップS8)。以下、この血小板の採取方法について、さらに詳しく説明していく。
【0074】
図7に示すように、採取システム10は、ステップS1において、導入チューブ19aのポンプ32aを駆動して、供血者に形成された血液出入部から全血WBを吸引し、1次分離バッグ16Aの第1チャンバ44に全血WBを流入させる。全血WBの流動速度は、例えば、60~120mL/minであることが好ましい。この際、ポンプ32bを駆動してACD液保存バッグ16BからACD液を供給し、全血WBの凝固を抑制する。全血WBは、第1チャンバ44に連続的に供給され、導入チューブ19aが接続されている帯状の一端側から他端側に向かって流動する(図1も参照)。
【0075】
この流動時に、遠心分離装置14はステップS2を実施する。すなわち、ロータ24を所定の回転速度で回転させて、1次分離バッグ16Aに遠心力を付与する。これにより全血WBは、他端側に流動した際に、成分の比重に応じて濃縮赤血球、乏血小板血漿及びバフィーコートBCに分離される。
【0076】
ステップS3において、遠心分離装置14は、ポンプ32dを駆動して、第3チューブ18cを介して2次分離器40にバフィーコートBCを流動させる。また、遠心分離装置14は、第1チューブ18aを介してリザーバ48に濃縮赤血球を流動させる。さらに遠心分離装置14は、ポンプ32cを駆動するとともに、クランプ34aを開放しクランプ34bを閉塞することで、第2、第5チューブ18b、18eを介してリザーバ48に乏血小板血漿を流動させる。
【0077】
2次分離器40は、導管ハウジング38の回転に伴い遠心力が付与されることで、ステップS4を実施する。つまり、第2チャンバ50内で、バフィーコートBCが白血球と血小板含有成分100とに遠心分離する。そして、遠心分離装置14は、クランプ34c、34eを開放し、クランプ34d、34fを閉塞することで、血小板含有成分100をリザーバ48に一旦流動させる。
【0078】
その後、遠心分離装置14は、ステップS5を実施する。すなわち、遠心分離装置14は、図8Aに示すように、クランプ34eを閉塞し、クランプ34fを開放することにより、2次分離器40から3次分離器42に血小板含有成分100を流動させる。この際、クランプ34dが閉じていることで、血小板添加溶液102の流動は規制されている。また、遠心分離装置14は、クランプ34aを閉塞し、クランプ34bを開放することで、PPP用バッグ16Eに乏血小板血漿を貯留していく。
【0079】
ステップS5の開始にともない、3次分離器42には、第6、第8及び第10チューブ18f、18h、18jを介して血小板含有成分100が流入する(図8B参照)。流入ポート77の開口77aは、第1底部60に近接しているため、血小板含有成分100は、第1底部60に近い位置から第1空間52aに供給される。また、流入ポート77の開口77aは、容器58に複数設けられることで、血小板含有成分100を1箇所に集中させずに均等的に流入させる。
【0080】
そして、遠心分離装置14は、導管ハウジング38の回転に伴い遠心力が付与されることで、ステップS6を実施する。つまり、第3チャンバ52の第1空間52a内において、血小板含有成分100は、血小板104と血漿106とに遠心分離する。この際、血小板104は、血漿106よりも遠心方向(すなわち、第1空間52aの収容部54a)に移動する。そして血小板104は、段差壁72により第2空間52b側に移動することが抑制される。これに対し、血漿106は、反遠心方向に集まり、血小板含有成分100の連続的な流入に伴い第1空間52aから第2空間52bに容易に流動する。そして、血漿106は、流出ポート78の開口78aに流入して、3次分離器42の外部に流出する。そのため、収容部54aには、血小板104が徐々に溜まり濃縮していく。
【0081】
図8Aに示すように、遠心分離装置14は、クランプ34g、34iを開放し、クランプ34hを閉塞することで、流出ポート78から流出した血漿106をリザーバ48に案内する。リザーバ48に貯留された血液成分(濃縮赤血球、血漿等)は、ポンプ32eの駆動下に、導出チューブ19bを介して供血者の血液出入部に流動して返血される。そして、遠心分離装置14は、PPP用バッグ16Eに乏血小板血漿が充分貯留されるまで、図8A及び図8Bに示す状態を維持(すなわち、ステップS1~S6の実施を継続)する。PPP用バッグ16Eの貯留が終わると、クランプ34bを閉塞するとともにクランプ34aを開放し、乏血小板血漿をリザーバ48に流動させる(図9A参照)。
【0082】
遠心分離装置14は、第3チャンバ52で血小板104の濃縮が進んだ後、図9Aに示すように、クランプ34c、34eを閉塞して、クランプ34d、34fを開放する。これにより、遠心分離装置14は、血小板添加溶液102を3次分離器42に供給する。
【0083】
つまり、遠心分離装置14は、ステップS7を実施し、図9Bに示すように、流入ポート77から第3チャンバ52内に血小板添加溶液102を流入させる。血小板添加溶液102は、血小板104よりも比重が軽いことで、導管ハウジング38から遠心力を受けると反遠心方向に移動する。そして、血小板添加溶液102は、流入ポート77から連続的に供給されることで、第3チャンバ52の血漿106を押し出しつつ流出ポート78側に流動して、3次分離器42から排出される。そのため、第3チャンバ52内では、血小板104が残ったまま、血漿106が血小板添加溶液102に置換される。
【0084】
図9Aに戻り、遠心分離装置14は、3次分離器42への血小板添加溶液102の供給に伴い、クランプ34iを閉塞して、クランプ34jを開放する。これにより、血漿106及び血小板添加溶液102が廃棄用バッグ16Fに流動することになり、リザーバ48及び血液出入部を介した供血者への血小板添加溶液102の流入が防止される。
【0085】
遠心分離装置14は、図9A及び図9Bに示す状態をある程度継続した後、図10Aに示すように、ポンプ32cを駆動して、PPP用バッグ16Eに取り込んだ乏血小板血漿の一部を1次分離バッグ16Aに戻す。そして、1次分離バッグ16Aからリザーバ48に乏血小板血漿を流動させることで、これらの血液成分は、導出チューブ19bを介して供血者に返血される。
【0086】
その後は、ロータ24の回転を停止することで、1次分離バッグ16A、2次分離器40及び3次分離器42に対する遠心力の付与を停止する。そして、遠心分離装置14は、ステップS8を実施するため、ポンプ32dの駆動下に血小板添加溶液102の流速(導入速度)を上げて、血小板添加溶液102を第3チャンバ52に勢いよく供給する。例えば、血小板添加溶液102の導入速度は、ステップS7において5mL/min程度であるのに対し、ステップS8において100mL/min程度にする。
【0087】
これにより、血小板添加溶液102は、図10Bに示すように、第3チャンバ52内の血小板104に強くぶつかり血小板104の凝集を壊して、血小板104と血小板添加溶液102が混ざり合った洗浄血小板108を回収ポート79から流出させる。この際、クランプ34hが開放され、クランプ34gが閉塞されていることで、流出ポート78からの洗浄血小板108の流出が防止される。洗浄血小板108は、血漿106が血小板添加溶液102に置換されていることで、血漿含有率が5%以下になっている。
【0088】
図10Aに示すように、洗浄血小板108は、クランプ34jが閉塞して、クランプ34kが開放していることで、WPC用バッグ16Gに貯留されていく。そして、WPC用バッグ16Gに目的量の洗浄血小板108が貯留されると、クランプ34jを閉塞して、洗浄血小板108の採取が終了する。
【0089】
以上のように、本実施形態に係る血小板の採取方法及び採取システム10によれば、第3チャンバ52に移送した血小板含有成分100を血小板104と血漿106に遠心分離し、血漿106を血小板添加溶液102と置換することで、洗浄血小板108を得ている。これにより、血小板含有成分100から血漿106を容易に除去して、血漿含有率が充分に低い洗浄血小板108をより確実且つ効率的に得ることが可能となる。そして、生成された洗浄血小板108は、輸血副作用の低減を期待することができる。
【0090】
この場合、血小板104の採取時には、第3チャンバ52の遠心分離において、第1及び第2チャンバ44、50とは異なる遠心力を付与することで、血小板含有成分100を血小板104と血漿106とに良好に分離することが可能となる。また、第1チャンバ44と第2チャンバ50が相互に連通し、且つ第2チャンバ50と第3チャンバ52が相互に連通していることで、血液成分が流動自在となり、全血WBから血小板104を採取する回路が簡単且つ衛生的に構成される。さらに、第2チャンバ50において白血球を分離することで、第3チャンバ52に供給する血小板含有成分100に白血球が混合するのを抑制することができ、白血球が殆ど含まれない洗浄血小板108を得ることができる。
【0091】
そして、採取システム10の第3チャンバ52は、遠心分離時に、血小板含有成分100を導入しつつ血漿106を流出させることで、血小板含有成分100の遠心分離を継続的に行って、第3チャンバ52内で血小板104を濃縮していくことができる。また、第3チャンバ52で遠心分離した血漿106の流動先を選択的に変更することにより、血小板添加溶液102を供血者に流入させることを防止して、血漿106を良好に返血することができる。さらに、血小板添加溶液102を血小板含有成分100とは異なる第7チューブ18gから流入させることで、第3チャンバ52へ円滑に流入させることができ、血小板添加溶液102への置換をより迅速且つ安定的に行うことができる。
【0092】
またさらに、血小板104の採取方法及び採取システム10では、血小板添加溶液102の導入時に血小板添加溶液102のみが流入することで、分離された血漿106と血小板添加溶液102の置換がスムーズに行われる。この際、採取システム10は、クランプ34c、34dの開閉を切り換えることで、第3チャンバ52への血小板含有成分100の供給と、血小板添加溶液102の供給とを容易に切り換えることができる。さらにまた、血小板104の採取時には、血小板添加溶液102の導入速度を速めることで、第3チャンバ52内において凝集した血小板104を血小板添加溶液102によって壊しつつ、洗浄血小板108として回収することができる。
【0093】
また、本発明に係る血小板104の3次分離器42及び採血回路セット12は、収容部54aを有することで、遠心分離された血小板104を収容しつつ、遠心分離された血漿106を反遠心方向に寄せて流出ポート78の開口78aから流出させることができる。これにより、3次分離器42は、回収ポート79の開口79aから血漿含有率の低い洗浄血小板108をより確実且つ効率的に回収することが可能となる。この際、3次分離器42は、第1底部60と第2底部62の間に段差壁72を有するので、血小板104が第1底部60に安定的に留まって、血漿106を第3チャンバ52から良好に流出させることができる。
【0094】
また、3次分離器42は、収容部54aが第1領域54に設けられることで、遠心分離された血小板104を収容部54aに凝集していくことができる。さらに、流入ポート77の開口77aが第1領域54内にあることで、3次分離器42は、血小板含有成分100を流入した付近で遠心分離を行って、収容部54aに血小板104を留めることができる。よって、第2領域56には血小板104が殆ど流れず、第2領域56内にある流出ポート78の開口78bは、血小板104が含まれない血漿106を良好に流出させる。
【0095】
またさらに、回収ポート79の開口79aが流出ポート78の開口78aよりも遠心中心から離れた位置に配置されていることで、3次分離器42は、血漿106よりも比重が重い血小板104(洗浄血小板108)を円滑に回収することができる。この際、採取システム10は、血漿含有率の低い洗浄血小板108を血小板添加溶液102とともに、WPC用バッグ16Gに直ちに貯留していくことができる。
【0096】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。例えば、図11に示す変形例に係る採取システム10A(採血回路セット12A)のように、1次分離バッグ16Aから濃縮赤血球以外の血液成分(血漿、血小板、白血球を含む成分)を2次分離器40に流出させる構成としてもよい。この場合、2次分離器40では、受け入れた血液成分を、白血球と血小板含有成分100とに遠心分離し、3次分離器42では、血小板含有成分100を血小板104と血漿106とに遠心分離する。そして、3次分離器42の下流において、先ず、PPP用バッグ16Eに血漿106(乏血小板血漿)を貯留する。その後、3次分離器42に血小板添加溶液102を供給して、第3チャンバ52内で血漿106と血小板添加溶液102を置換し、血漿106が少なくなった洗浄血小板108を血小板添加溶液102とともにWPC用バッグ16Gに貯留する。このように構成しても、血漿含有率が5%以下の洗浄血小板108を良好に採取することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11