(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】軟骨細胞適用のための脂肪細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20220608BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20220608BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20220608BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20220608BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220608BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
C12N5/077
A61K35/32
A61K35/35
A61L27/36 420
A61L27/38 112
A61L27/38 300
A61P19/02
(21)【出願番号】P 2020119475
(22)【出願日】2020-07-10
(62)【分割の表示】P 2016521475の分割
【原出願日】2014-06-13
【審査請求日】2020-08-11
(32)【優先日】2013-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508238060
【氏名又は名称】スパイナルサイト, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オヒーロン、ピート
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-528075(JP,A)
【文献】Journal of Cellular Physiology,2008年,Vol. 215,p. 210-222
【文献】哺乳類の生殖腺の性分化-SryからMis/テストステロン分泌まで-,日本比較内分泌学会ニュース,2002年,2002巻106号,p. 14-21,全体、p. 15右欄
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪細胞に間欠的静水圧をかけるステップを含み、
前記間欠的静水圧をかけるステップが、in vitroまたはex vivoで行われる、
脂肪細胞の軟骨細胞様細胞への脱分化を誘導する方法。
【請求項2】
前記脂肪細胞の軟骨細胞様細胞への脱分化が、Sox-9タンパク質、アグリカン、II型コラーゲン、軟骨結合タンパク質、ペルレカン、およびその組合せからなる群より選択される少なくとも1種の分子の分泌を測定することにより評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪細胞が、白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、またはその混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記間欠的静水圧をかけるステップがin vitroで行われる場合、前記細胞を足場と組み合わせて、細胞/足場組成物を産生する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞/足場組成物が、成長因子、マトリックス分子、またはその組合せを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記間欠的静水圧をかけるステップがex vivoで行われる場合、前記細胞に、軟骨を生成するための条件が提供され、
前記条件が、低酸素、機械的応力、またはその組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記軟骨が、所望の形状の形態で配置される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所望の形状が、耳または鼻の少なくとも一部である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所望の形状の鋳型を作製するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記所望の形状が、個体の身体の1つまたは複数の領域で軟骨を置換または修復するために用いられ、ここで該領域は結合組織を必要とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
軟骨修復を必要とするか、または軟骨修復を必要とすることが疑われる個体の身体の一部を画像化するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
軟骨修復を必要とする個体の身体の一部を画像化するステップと、所望の形状の軟骨の鋳型をそれから作製するステップとをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
個体の身体の一部を画像化するステップであって、該一部は修復を必要としない、ステップと、該画像を使用して、修復を必要とする領域を置換または修復するために軟骨を成長させるための鋳型を作製するステップとをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体が参照により本明細書に組込まれる2013年6月19日に出願された米国仮特許出願第61/836,975号の優先権を主張する。
【0002】
本開示の分野は、少なくとも医学、外科学、解剖学、生物学、細胞生物学および/または分子生物学の分野を含む。ある特定の実施形態においては、本開示の分野は、例えば、軟骨または軟骨細胞を必要とする身体部分または組織と関連する医学的状態の処置のための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
軟骨は、哺乳動物において、少なくとも骨と骨の間の関節、胸郭、耳、鼻、気管支および椎間板などの様々な位置に存在する柔軟な結合組織であり、筋肉よりも柔軟性が低い堅い材料である。軟骨は血管を含まないため、その成長および修復速度は他の結合組織よりも遅い。その代わり、軟骨細胞は、関節軟骨の圧迫または弾性軟骨の屈曲により生じるポンプ作用により助けられる拡散により供給される。さらに、軟骨細胞は骨小腔中に結合し、損傷領域に移動できないため、軟骨損傷は治癒するのが難しい。本開示は、少なくとも、軟骨修復の当業界における必要性のための解決法を提供するものである。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、例えば、弾性軟骨、硝子軟骨、または線維軟骨の修復を含む、軟骨修復を必要とする個体の処置を含む、それを必要とする個体の処置のためのシステム、方法、および組成物に関する。本開示は、例えば、椎間軟骨および関節軟骨を含む、任意の種類の軟骨の生物学的修復のための方法および組成物に関する。特定の態様において、本開示は、関節軟骨修復などの軟骨修復の分野に関する。より特には、本開示の実施形態は、in vivo、ex vivo、またはin vitroでそうすることを含む、機械的応力下で細胞を軟骨細胞様細胞に成長させる、増殖させる、および/または分化させるための方法を含む。
【0005】
本開示は、それを必要とする個体のために軟骨を生成する軟骨操作のための方法および組成物に関する。特定の実施形態においては、本開示は、軟骨欠損の処置のための細胞および組織に関する。軟骨を修復および/または再生するための方法を提供することが本開示の例示的な目的である。本開示の方法は、主成分の相対量が異なる弾性軟骨、硝子軟骨および/または線維軟骨を含む任意の種類の軟骨を生成する。
【0006】
特定の実施形態は、軟骨細胞様細胞に分化するような機械的ひずみ下での脂肪細胞の使用と関連する方法および組成物に関する。ある特定の態様において、本開示は、例えば、脂肪細胞などから、in vivo、ex vivo、またはin vitroで天然組織を生成する。より特には、ただしこれらに限定されないが、本開示は、例えば、哺乳動物(ヒトなど)脂肪細胞を軟骨細胞様細胞に成長および分化させるための方法に関する。ある特定の実施形態においては、これらの細胞は、自己または同種異系またはその混合物であってもよい。
【0007】
特定の実施形態においては、本開示は、ある特定の細胞の軟骨細胞様細胞への分化を用いる。特定の実施形態においては、例えば、脂肪細胞は、特定の条件下で軟骨細胞様細胞に分化される。脂肪細胞の軟骨細胞または軟骨細胞様細胞への分化は、細胞の埋込み後のin vivoでの分化または埋込み前のin vitroもしくはex vivoでの分化を含む、任意の好適な様式で起こってもよい。分化した細胞を、細胞として、または細胞から生成された組織として、またはその混合物として個体に送達することができる。
【0008】
特定の実施形態においては、本開示は、椎間板、肘、膝、肩、臀部、顎関節などの関節のin vivoでの再生のための方法を提供する。いくつかの実施形態においては、鼻または耳のための軟骨組織を生成することができる。
【0009】
ある特定の実施形態においては、本開示の適用の焦点である軟骨は、椎間板軟骨である。本開示の特定の態様において、本開示において用いられる細胞は、in vivoでの機械的ひずみおよび軟骨形成性分化のための椎間板に見出される他の条件にかけられる。
【0010】
本開示の1つの目的においては、変性した椎間板を修復する、例えば、椎間板解剖学を復元する、およびその機能を改善するための方法が提供される。本開示の特定の態様においては、1つまたは複数の損傷した円板を修復するための方法が提供される。本開示の一実施形態においては、本開示による脂肪細胞を、個体の対応する関節(椎間板など)に送達することを含む、個体の関節(椎間板など)における損傷した軟骨を修復する方法がある。本開示の特定の実施形態においては、脂肪細胞(またはin vitroおよび/もしくはex vivoで軟骨細胞様細胞に分化した脂肪細胞)を、変性した円板の一部または全部を除去することなく椎間板に送達する。機械的応力下で、提供される細胞は、例えば、中心部分では核細胞および末梢では環状細胞(annulus cell)の特徴を獲得する。
【0011】
本開示の実施形態は、機械的応力下で、または後に個体中のin vivoに入れられるex vivoでの軟骨の産生のための椎間板腔に見出される他の条件下で、細胞を軟骨細胞様細胞に成長させる、増殖させる、および/または分化させるための方法を含む。本開示の特定の態様において、本開示において用いられる細胞は、軟骨形成性分化のために、機械的ひずみ、低酸素(例えば、5%未満)、またはその両方にかけられる。いくつかの実施形態においては、ex vivoでヒト脂肪細胞を軟骨細胞様細胞に分化させる方法がある。
【0012】
本開示のある特定の態様において、細胞は軟骨細胞または軟骨細胞様細胞に分化し、ここで、例えば、軟骨細胞または軟骨細胞様細胞はアグリカン、II型コラーゲン、Sox-9タンパク質、軟骨結合タンパク質、ペルレカン、およびその組合せからなる群から選択される分子を分泌する。特定の場合、細胞は、脂肪細胞から分化し、脂肪細胞の例としては、白色脂肪細胞または褐色脂肪細胞が挙げられる。
【0013】
特定の実施形態においては、骨形態形成タンパク質2(BMP-2)、BMP-4、BMP-6、BMP-7、軟骨由来形態形成タンパク質(CDMP)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、インスリン成長因子1(IGF-I)、線維芽細胞成長因子(FGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、FGF-2、血小板由来成長因子(PDGF)、およびその混合物を含む、それを必要とする個体へのin vivoでそれに由来する細胞または組織の送達の前、間、または後に、細胞に提供される成長因子がある;代替的な実施形態においては、これらの、またはその他の成長因子は、それを必要とする個体へのin vivoでそれに由来する細胞または組織の送達の前、間、または後に細胞に提供されない。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態においては、それを必要とする個体中のin vivoの部位への脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞の送達に関する方法および組成物がある。特定の実施形態においては、前記部位は、in vivoにあり、軟骨を必要とするなど、軟骨細胞を必要とする。例えば、軟骨細胞を必要とする部位としては、関節、例えば、軟骨性関節(例えば、椎骨)が挙げられる。いくつかの実施形態においては、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞は、軟骨を必要とする個体から得られる。特定の実施形態においては、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞は、個体中の少なくとも1つの椎間板に送達される。いくつかの場合、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞は、それらがそれを必要とする個体から入手されるかどうか、またはそれらが例えば、第三者から、もしくは商業的に入手されるかどうかに拘らず、入手された後に操作される。脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞を、培養物中で拡大させてもよい。ある特定の実施形態においては、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞は、椎骨への埋込みの前、または間、または後に、成長因子、マトリックス分子、機械的ひずみ、またはその組合せを提供されない。
【0015】
いくつかの実施形態においては、円板中に脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞と、軟骨性細胞の両方が存在する。いくつかの実施形態においては、in vivoで送達される全てではない脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞は、円板中で軟骨細胞に分化するが、それにも拘らず、円板中で産生される組織は円板高および生物機械的機能の改善において有用である。
【0016】
いくつかの実施形態においては、ヒト脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞をin vivoで軟骨細胞様細胞に分化させる方法であって、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞を個体の関節に送達するステップを含み、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞を送達する前に、成長因子、マトリックス分子、機械的ひずみ、またはその組合せにかけられない、前記方法がある;しかしながら、代替的な実施形態においては、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞は、成長因子、マトリックス分子、機械的ひずみ、またはその組合せにかけられる。特定の場合、個体は、椎間板疾患を有する。いくつかの場合、関節は椎間板である。
【0017】
いくつかの実施形態においては、円板中の未分化の脂肪細胞および分化した軟骨細胞様細胞のいくらかは、線維性マトリックス分子、軟骨性マトリックス分子、またはその両方を産生する細胞とさらに定義される。ある特定の態様において、軟骨細胞様細胞は、コラーゲンI、コラーゲンII、プロテオグリカン、またはその組合せなどのマトリックス分子を産生する細胞とさらに定義される。特定の実施形態においては、コラーゲンは、I型およびII型コラーゲンを含む。いくつかの場合、プロテオグリカンの1つは、アグリカンである。
【0018】
特定の場合、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞は、椎間板の間に送達される。ある特定の場合、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞は、髄核と線維輪内部の亀裂との間、またはその中に送達される。
【0019】
本開示の方法のいくつかの態様は、個体または他の場所から脂肪細胞を取得することを含む。取得は、身体からの脂肪細胞の除去を包含するか、または例えば、第三者などから、例えば、商業的に、もしくは保管場所から、既に取得された脂肪細胞を回収することを包含してもよい。脂肪細胞が身体から除去される場合、それは大腿部、臀部、尻、腹部、腰、上腕、背部、膝の内側、胸部、頬、顎、首、ふくらはぎ、および/または足首に由来するものであってもよい。
【0020】
ある特定の態様において、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞を、例えば少なくとも1日拡大させる。いくつかの場合、得られる脂肪細胞を、例えば、2回以上継代する。特定の態様において、脂肪細胞の拡大と継代の両方が行われる。
【0021】
いくつかの実施形態においては、個体の関節中で軟骨細胞組織を産生する方法であって、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞を関節に送達するステップを含み、脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞が関節への送達の前、または間に、または後に、in vitroで成長因子、マトリックス分子、機械的ひずみ、またはその組合せに曝露されていないが、代替的な実施形態においては、細胞が関節への送達の前、または間に、または後に、in vitroで成長因子、マトリックス分子、機械的ひずみ、またはその組合せに曝露される、前記方法がある。特定の実施形態においては、軟骨細胞組織は、I型とII型の両方のコラーゲンならびに/または例えば、軟骨性組織および他の組織中に見出されるいくつかのプロテオグリカンなどの、特定の生化学マーカーを有する細胞を含む。
【0022】
本開示のある特定の実施形態においては、個体の関節に送達する前および/または送達した後の、脂肪細胞および/もしくは再分化した脂肪細胞の存在ならびに/または脂肪細胞および/もしくは再分化した脂肪細胞の死は、1つまたは複数の細胞からの応答を誘発する。特定の場合、脂肪細胞および/もしくは再分化した脂肪細胞の存在ならびに/または脂肪細胞および/もしくは再分化した脂肪細胞の死は、関節中の他の細胞からの応答を誘発し、他の細胞は、軟骨細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、円板幹細胞などの、個々の内因性細胞を含む任意の種類のものであってもよい。特定の態様において、内因性細胞応答は、例えば、少なくともいくつかの脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞が関節中で死ぬ時の成長の刺激を含む。したがって、特定の実施形態においては、細胞死の際の脂肪細胞および/もしくは再分化した脂肪細胞の単なる存在ならびに/または細胞内因子の放出は、円板中の存在する細胞からの細胞成長応答を刺激し得る。特定の場合、細胞成長応答は、円板の再成長(または関節の修復)をもたらす。
【0023】
本開示の特定の実施形態においては、関節への脂肪細胞および/または再分化した脂肪細胞の送達の間接的または直接的結果として、瘢痕組織が関節中で形成し得る。少なくとも特定の場合、そのような瘢痕組織形成は、例えば、関節が円板である場合、輪の亀裂の安定性、強度、クッション、密封などを提供することにより、関節にとって有益である。
【0024】
したがって、ある特定の態様において、本開示は、例えば、脂肪細胞などから、ex vivoで天然組織を生成する。より特には、これらに限定されないが、本開示は、ヒト脂肪細胞を、例えば、軟骨細胞様細胞(または軟骨細胞と同じ能力で機能する細胞)に成長および分化させるための方法に関する。これらの細胞は、ある特定の実施形態においては、自己または同種異系であるか、またはその混合物であってもよい。
【0025】
特定の実施形態においては、本開示は、軟骨細胞様細胞または軟骨細胞と同じ能力で機能する細胞へのある特定の細胞の分化を用いる。特定の実施形態においては、例えば、ヒト脂肪細胞を、特定の条件下で軟骨細胞様細胞に分化させる。軟骨細胞または軟骨細胞様細胞への細胞の分化は、商業的に、または生きている個体または細胞もしくは組織バンクからなどの、脂肪細胞の調達後、ex vivoなどで任意の好適な様式で行うことができる。例示的な脂肪細胞を、例えば、生検または脂肪吸引から収獲することができる。いくつかの実施形態においては、脂肪細胞は、軟骨を必要とする個体から取得される。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態においては、軟骨組織は、脂肪細胞から生成される。軟骨は、軟骨修復を必要とするか、または軟骨修復を必要とすることが疑われる個体中で画像化することができる。軟骨は、通常のin vivo条件下でx線を吸収しないが、染料を滑膜関節中に注入し、その染料によりx線を吸収させることができる。骨とメニスカスとの間のx線撮影用フィルム上で得られる空隙は、軟骨である。軟骨を画像化する他の手段は、磁気共鳴画像化(MRI)によるものである。本開示の実施形態においては、所望の形状の軟骨組織の生成を容易にするために、個体の一部から画像を撮影する。少なくとも特定の実施形態において、画像は三次元である。画像化は、それが所望の軟骨形状の生成を可能にするのに好適である限り、任意の種類のものであってもよい。特定の実施形態においては、当業者であれば、修復されることが望ましいか、または修復を容易にするために画像化されることが望ましい身体の位置における軟骨の、MRIまたはコンピュータ断層撮影(CTスキャン)などの画像化を用いることができる。例えば、耳または膝が修復を必要とする場合、当業者であれば、対応する健康な耳または膝の画像を撮影し、それの所望の軟骨組織の画像(耳の場合、鏡像)を作製することができる。
【0027】
軟骨修復を必要とする個体は、個体中に任意の種類の軟骨組織の検出可能な欠損がある限り、任意の種類のものであってもよい。特定の実施形態においては、軟骨欠損は、軟骨損失を含む。軟骨修復を要する個体は、傷害、疾患、出生異常、環境化学物質曝露、美容整形手術に関する要望、過剰なおよび/または低水準の整形手術、肥満、突然の外傷、反復的な外傷、摩耗および断裂により引き起こされる変性の効果、股関節異形成、薬物の乱用、アレルギー反応の結果、またはその組合せのため、それを必要としてもよい。傷害がある場合、傷害は、例えば、戦闘、格闘、スポーツ、運動、および/または長時間動かないことに由来するものなどの、任意の種類のものであってもよい。必要性が疾患の結果である場合、その疾患は、遺伝性の変形性関節症、軟骨無形成、再発性多発性軟骨炎などの、任意の種類のものであってもよい。出生異常は、例えば、小耳症(無耳症)などの、任意の種類のものであってもよい。それを必要とする個体は、骨折した鼻を有してもよい。
【0028】
本開示のある特定の態様において、細胞は軟骨細胞または軟骨細胞様細胞に分化し、例えば、軟骨細胞または軟骨細胞様細胞は、アグリカン、II型コラーゲン、Sox-9タンパク質、軟骨結合タンパク質、ペルレカン、およびその組合せからなる群から選択される分子を分泌する。特定の場合、細胞は、脂肪細胞から分化される。
【0029】
特定の実施形態においては、骨形態形成タンパク質2(BMP-2)、BMP-4、BMP-6、BMP-7、軟骨由来形態形成タンパク質(CDMP)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、インスリン成長因子1(IGF-I)、線維芽細胞成長因子(FGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、FGF-2、血小板由来成長因子(PDGF)、およびその組合せなどの成長因子を含む、脂肪細胞に提供される成長因子は存在しない。しかしながら、代替的な実施形態においては、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、CDMP、TGF-β、IGF-I、FGF、bFGF、FGF-2、PDGF、およびその組合せを含む、脂肪細胞、軟骨細胞、および/または軟骨組織に提供されるものなどの成長因子が、本開示の方法において用いられる。他の成長因子を用いてもよい。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態においては、それを必要とする個体中、in vivoの部位への軟骨の送達に関する方法および組成物であって、軟骨が本開示の方法を用いて生成された、前記方法および組成物がある。特定の実施形態においては、送達部位は、in vivoであり、軟骨を必要とするなどの、軟骨細胞を必要とする。例えば、軟骨細胞を必要とする部位としては、耳、鼻、肩、肘、および結合組織が存在するか、または必要とされる身体の他の領域が挙げられる。いくつかの場合、軟骨は関節のためのものであるが、他の場合、軟骨は関節のためのものではない。
【0031】
いくつかの実施形態においては、脂肪細胞は、軟骨を必要とする個体から得られる。特定の実施形態においては、脂肪細胞から生成される得られる軟骨細胞は、個体中の少なくとも1つの位置に送達される。いくつかの場合、脂肪細胞は、例えば、それらがそれを必要とする個体から得られるかどうか、またはそれらが第三者から、もしくは商業的に得られるかどうかに関係なく、得られた後に操作される。脂肪細胞は、培養物中で拡大させることができる。ある特定の実施形態においては、脂肪細胞は、個体中への埋込みの前、または間、または後に、成長因子、マトリックス分子、機械的ひずみ、またはその組合せを提供されないが、代替的な実施形態においては、脂肪細胞は、個体中への埋込みの前、または間、または後に、成長因子、マトリックス分子、機械的ひずみ、またはその組合せを提供される。
【0032】
軟骨を、脂肪細胞が誘導された個体にとって好適な条件下で保存することができるが、いくつかの場合、軟骨は脂肪細胞が誘導されなかった個体にとって好適な条件下で保存される。当業者であれば、軟骨が最終的に誘導される個体が、元の脂肪細胞が得られた同じ個体ではない状況において、1つまたは複数のステップを行って、宿主の身体による組織拒絶を防止することができることを認識できる。
【0033】
いくつかの実施形態においては、軟骨中には脂肪細胞と軟骨細胞との両方が存在する。いくつかの実施形態においては、軟骨組織は、ex vivoで生成されるが、1つまたは複数の脂肪細胞を依然として保持する。そのような組織を、依然としてin vivoで送達することができる。
【0034】
したがって、特定の実施形態においては、当業者であれば、膝、肩、肘、鼻、耳などの軟骨の高解像度/高分解能MRIもしくはCTスキャンまたは他の診断画像化モダリティ画像を生成することができる。いくつかの実施形態においては、MRI画像を用いて、所望の軟骨形状の三次元鋳型を作製することができる。いくつかの実施形態においては、鋳型に、本開示によるヒト脂肪細胞を播種する。したがって、鋳型は、脂肪細胞からの軟骨細胞の生成を容易にする条件にかけられ、特定の実施形態においては、その条件は、低酸素、機械的応力、または軟骨細胞もしくは軟骨細胞様細胞、もしくはその組合せへの脂肪細胞の分化を最適化することができる任意の他の大気圧条件もしくは生物学的条件を含む。特定の実施形態においては、軟骨細胞に分化される脂肪細胞は、軟骨細胞分化にとって好適な条件を提供するチャンバに曝露される。この環境内で、当業者であれば、脂肪細胞からの軟骨細胞分化をもたらし、鋳型中で軟骨組織を産生させることができる。組織が生成されれば、それを身体中の適切な位置に置くことができる。特定の実施形態においては、少なくとも1つの支持体を用いて、軟骨を支持する;特定の実施形態においては、支持体は再吸収性であるが、いくつかの実施形態においては、支持体は再吸収性ではなく、個体にとって効率的に持続的である。いくつかの場合、チタン、ポリマー、または別の材料を用いて、軟骨を支持する。
【0035】
本開示のある特定の態様において、個体は、本開示の方法に加えて、別の療法を提供される。例えば、脂肪細胞の送達の前、間、および/または後に、個体は、1つまたは複数の抗生物質を受けてもよい。例示的な術後療法としては、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、簡単な痛み止め(鎮痛剤)、および/または必要に応じて筋弛緩剤が挙げられ、その後、例えば、術後第1週、第2週、第3週またはそれ以上後などの術後的に機能的リハビリテーションを行ってもよい。特定の実施形態においては、個体に、1つまたは複数の抗生物質、抗真菌剤、または抗ウイルス剤を提供してもよい。
【0036】
本開示のある特定の態様において、個体は、本開示の方法に加えて、別の療法を提供される。例えば、脂肪細胞または再分化した脂肪細胞の送達の前、間、および/または後に、個体は、抗生物質、痛み止めなどの1つまたは複数の薬物を受けてもよい。例示的な術後療法としては、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、簡単な痛み止め(鎮痛剤)、および/または必要に応じて筋弛緩剤が挙げられ、その後、例えば、術後第1週、第2週、第3週またはそれ以上後などの、術後的に機能的リハビリテーションを行ってもよい。特定の実施形態においては、個体に、1つまたは複数の抗生物質、抗真菌剤、または抗ウイルス剤を提供してもよい。
【0037】
さらなる実施形態においては、1つまたは複数の好適な容器中に保管された脂肪細胞を含むキットがある。特定の実施形態においては、キットは、脂肪細胞から軟骨細胞または軟骨細胞様細胞へのin vitro、in vivo、ex vivoでの分化を増強するのに好適な1つまたは複数の試薬をさらに含む。いくつかの実施形態においては、本開示のキットは、個体への組織または細胞(軟骨組織を含む)の送達のための1つまたは複数の装置を含む。いくつかの場合、キットは、ex vivoで生成された軟骨のin
vivoでの送達の際の軟骨の安定化のための1つまたは複数の支持体を含む。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態においては、脂肪細胞に機械的ひずみをかけるステップを含む、脂肪細胞の軟骨細胞様細胞への脱分化を誘導する方法がある。特定の実施形態においては、かけるステップは、in vitroもしくはex vivoもしくはin vivoで、またはその組合せで行われる。ある特定の場合、機械的ひずみは、低酸素圧、間欠的静水圧、流体剪断応力、in vivoで存在する軟骨に与えられる任意の他の機械的力もしくはひずみ力、またはその組合せを含む。脂肪細胞は、白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、またはその混合物であってもよい。
【0039】
本開示の態様において、脂肪細胞にin vitroで機械的ひずみをかける場合、細胞を足場と組み合わせて、細胞/足場組成物を産生する。いくつかの場合、細胞/足場組成物は、成長因子、マトリックス分子、薬物、またはその組合せを含む。細胞/足場組成物が、個体に、例えば個体の関節に、送達されてもよい。特定の実施形態においては、関節は、椎間板である。ある特定の場合、個体は、椎間板疾患を有する。
【0040】
本開示の態様において、脂肪細胞にex vivoで機械的ひずみをかける場合、細胞に、軟骨を生成するのに好適な条件が提供される。特定の実施形態においては、その条件は、低酸素、機械的応力、またはその組合せを含む。いくつかの場合、軟骨は、所望の形状の形態で配置される。所望の形状は、例えば、耳または鼻の少なくとも一部であってもよい。いくつかの態様において、前記方法は、所望の形状の鋳型を作製するステップをさらに含む。いくつかの場合、前記方法は、軟骨修復を必要とする個体に軟骨を提供するステップをさらに含む。特定の実施形態においては、所望の形状は、個体の身体の1つまたは複数の領域で軟骨を置換または修復するために用いられ、ここで該領域は結合組織を必要とする。ある特定の実施形態においては、前記方法は、軟骨修復を必要とするか、または軟骨修復を必要とすることが疑われる個体の身体の一部を画像化するステップをさらに含む。いくつかの場合、前記方法は、軟骨修復を必要とする個体の身体の一部を画像化するステップと、所望の形状の軟骨の鋳型をそれから作製するステップとをさらに含む。ある特定の実施形態においては、前記方法は、個体の身体の一部を画像化するステップであって、該一部は修復を必要としない、ステップと、その画像を使用して、修復を必要とする領域を置換または修復するために軟骨を成長させるための鋳型を作製するステップとをさらに含む。
【0041】
脂肪細胞に由来する軟骨または組織を個体に提供する場合、いくつかの場合において、それらは1つまたは複数の支持体を用いて個体に提供することができる。特定の実施形態においては、支持体は、再吸収性である。いくつかの態様において、支持体は、軟骨形成中および/またはその機能が完了した後に、個体の身体により再吸収される材料から構成される。特定の場合、支持体は、非再吸収性である。ある特定の実施形態においては、支持体は、体内に残存し、軟骨の形状および機能を維持するための足場として作用し得る、金属または1つもしくは複数の他の材料から構成される。
【0042】
脂肪細胞に由来する軟骨または組織を身体の鼻、耳、膝、肩、肘または他の領域に送達する場合、それは、個体にとって結合組織が必要とされる場所で行うことができる。いくつかの場合、脂肪細胞に由来する軟骨または組織は、関節に送達されない。特定の実施形態においては、軟骨組織は、椎間板に送達されない。
【0043】
本開示の態様において、脂肪細胞にin vivoで機械的ひずみをかける場合、in vivoでのかけるステップの前に、成長因子、マトリックス分子、機械的ひずみ、またはその組合せを脂肪細胞にかけない。特定の実施形態においては、脂肪細胞は、個体の関節に送達される。いくつかの場合、個体は、椎間板疾患を有する。特定の実施形態においては、細胞は、椎間板に送達される。いくつかの実施形態においては、関節への送達後、関節中に脂肪細胞と軟骨細胞様細胞との混合物が存在する。軟骨細胞様細胞は、コラーゲンI、コラーゲンII、プロテオグリカン(アグリカンなど)、またはその組合せなどのマトリックス分子を産生する細胞とさらに定義されてもよい。コラーゲンは、I型およびII型コラーゲンを含んでもよい。
【0044】
脂肪細胞を個体に送達する場合、それは椎間板の間であってもよい。特定の態様において、脂肪細胞を、髄核と線維輪内部の亀裂の間、またはその中に送達する。
【0045】
本開示の方法は、個体から脂肪細胞を取得することをさらに含んでもよい。いくつかの場合、得られた脂肪細胞を、例えば、少なくとも1日間拡大させる。いくつかの場合、得られた脂肪細胞を、例えば、2回以上継代するなど、継代する。
【0046】
ある特定の実施形態においては、個体の関節に脂肪細胞を送達した後、複数の脂肪細胞が死滅する。特定の実施形態においては、脂肪細胞の死滅は、個体の内因性関節細胞からの細胞応答をもたらす。いくつかの実施形態においては、細胞応答は、個体の内因性関節細胞の成長の刺激を含む。ある特定の態様において、個体の関節に脂肪細胞を送達した後、関節中に瘢痕組織の発達が起こる。
【0047】
本開示の実施形態において、脂肪細胞は個体にとって自己または同種異系である。
【0048】
上記は、以下の発明の詳細な説明をより良好に理解するために本発明の特徴および技術的利点をむしろ広く概略したものである。本発明の請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴および利点を以後説明する。当業者であれば、開示される概念および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を実行するために他の構造を改変または設計するための基礎として容易に用いることができることを理解するべきである。また、当業者であれば、そのような等価な構築物が添付の請求の範囲に記載されるような本発明の精神および範囲から逸脱しないことを理解するべきである。本発明の特徴であると考えられる新規特徴は、その構成および操作方法の両方に関して、さらなる目的および利点と一緒になって、添付の図面と共に考えた場合、以下の説明からより良好に理解されるであろう。しかしながら、それぞれの図面は例示および説明のためだけに提供されるものであり、本発明の限定の定義として意図されるものではないことが明示的に理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本明細書で用いられる場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1または複数を意味する場合がある。単語「含む(comprising)」と共に用いられる場合、請求の範囲で用いられる単語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1または1より多いことを意味する場合がある。本明細書で用いられる「別の」は、少なくとも第2またはそれ以上を意味する場合がある。特定の実施形態においては、本開示の態様は、例えば、本開示の1または複数の要素またはステップ「から本質的になる」または「からなる」であってもよい。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1または複数の要素、方法ステップ、および/または方法からなるか、またはから本質的になってもよい。本明細書に記載の任意の方法または組成物を、本明細書に記載の任意の他の方法または組成物に関して実行することができることが企図される。
【0050】
本明細書で用いられる用語「脂肪細胞」(アジポサイトまたはリポサイトまたはファットセルと称する場合もある)は、脂肪の大きな小球を合成、含有することができる結合組織細胞を指す。2つの型の脂肪細胞は、以下のもの:1)大きな脂肪液滴、少量の細胞質、および扁平な、非中心に位置する核を有する白色脂肪細胞と、2)異なるサイズの脂肪液滴、大量の細胞質、いくつかのミトコンドリア、および丸い、中心に位置する核を有する褐色脂肪細胞とを含む。脂肪細胞の脂肪の主要な化学的構成要素は、グリセロールと、ステアリン酸、オレイン酸、またはパルミチン酸などの1つまたは複数の脂肪酸とから作られるエステルであるトリグリセリドを含む。
【0051】
本明細書で用いられる用語「軟骨細胞様細胞」とは、原発性の軟骨細胞ではないが、例えば、脂肪細胞から誘導される細胞を指す。これらの軟骨細胞様細胞は、軟骨細胞の形状(例えば、多角形および/もしくは菱形の細胞)などの軟骨細胞(軟骨の細胞)の表現型を有する、ならびに/または凝集し、例えば、硫酸化プロテオグリカンおよびII型コラーゲンなどの、軟骨マトリックス成分を産生することができる。したがって、軟骨細胞様細胞の例示的マーカーとしては、硫酸コンドロイチンおよび硫酸ケラタンプロテオグリカンであるアグリカン、II型コラーゲン、Sox-9タンパク質、軟骨結合タンパク質、ならびに例えば、硫酸ヘパランプロテオグリカンであるペルレカンのうちの1つまたは複数を含む。
【0052】
本明細書で用いられる用語「関節」は、骨格の2つの骨が連結する身体中の領域を指す。
【0053】
本明細書で用いられる用語「再分化した脂肪細胞」は、軟骨細胞様細胞になるような条件にかけられた脂肪細胞を指す。その条件は、任意の好適な種類のものであってよいが、特定の実施形態においては、機械的条件は、静水圧(定常的または間欠的など)、低酸素、流体剪断応力などを含む。
【0054】
用語「流体剪断応力」とは、剪断応力の生成をもたらす、表面上での流体の運動を指す。剪断応力は、応力が表面に対して平衡である応力状態である。マイクロ流体足場は、マイクロチャンネル中での流体流動を可能にする。この流体流動は、足場中に播種している細胞上での流体剪断応力を誘導する。
【0055】
本明細書で用いられる用語「密封」とは、例えば、融合または密閉などにより、液密にされることを指す。特に、密封膜は、内部の液体を膜から外に出ないようにするが、酸素および二酸化炭素は膜を通過することができる(酸素は膜に進入し、二酸化炭素は膜から出るなど)。
【0056】
用語「静水圧」とは、休止時に液体(例えば、水)により示されるか、または伝達される圧力を指す。椎間板は、様々な負荷運動中に様々な円板内静水圧に曝露され、横たわるか、またはリラックスして座っている間にはその最小値(約0.25MPa)にあり、背中を丸めて重いものを持ち上げている間には最大値(約2.5~5MPa)にある。これらの異なる負荷規模は、その規模に応じた円板マトリックス代謝回転の変化により、椎間板に影響する。in vitroでの細胞の軟骨形成性分化を誘導するために細胞に対してin vivoで適用される間欠的静水圧(IHP)に関する最良のレジメンを決定するためのいくつかの試験が行われた。様々なレジメンが試験された。これらの試験において、適用されたIHPは、0.5MPa~約5MPaの振幅範囲内にあり、0.01Hz~1Hzの周波数範囲内にある。特定の実施形態においては、カプセル封入装置は、細胞マトリックス構築物にin vivoで静水圧を伝達するように設計される。液体(媒体)を充填された外部エンベロープは、様々な負荷運動の間に圧縮される;この圧縮下で、いくらかの液体媒体は半透過性の内膜を通って拡散し、細胞マトリックス構築物のかん流を可能にし、細胞マトリックス構築物内で静水圧を生成する。このシステムにおいて、適切な生理学的静水圧が細胞マトリックス構築物に印加され、これは細胞の軟骨形成性分化にとって有用である。
【0057】
本明細書で用いられる用語「低酸素状態」とは、酸素の欠乏を指す。特定の態様において、それは約20%未満である酸素圧を指す。
【0058】
本明細書で用いられる用語「関節」は、骨格の2つの骨が連結する身体中の領域を指す。
【0059】
I.一般的実施形態
本開示の方法によって、任意の軟骨組織などの、任意の組織を少なくとも一部修復することができるが、特定の例示的実施形態においては、椎間板軟骨または関節軟骨が修復される。本開示の一般的実施形態は、椎間板のための新しい軟骨を操作するための細胞供給源として脂肪細胞を使用することである。本開示は、これらの細胞の軟骨細胞様細胞への分化を包含する。
【0060】
本開示の特定の実施形態においては、脂肪細胞を、ex vivo、in vitro、および/またはin vivoなどの、様々な方法の1つにおいて軟骨細胞様細胞に分化させることができる。特定の実施形態においては、例えば、以下のもの:1)三次元性;2)低酸素圧;および3)機械的応力;4)間欠的静水圧;5)流体剪断応力;および/または6)軟骨形成性分化に貢献する他の外部条件などの、ex vivoでの脂肪細胞からの軟骨細胞の分化を容易にするための特定の条件が用いられる。
【0061】
II.本開示において用いられる細胞
本開示のある特定の実施形態においては、細胞が軟骨細胞または軟骨細胞様細胞に分化することができる限り、任意の細胞を用いることができる。しかしながら、特定の実施形態においては、前記細胞は、例えば、脂肪細胞である。自己細胞を用いることができるが、代替的な実施形態においては、同種異系細胞が用いられる;特定の実施形態においては、同種異系細胞は、疾患についてアッセイされており、ヒトへの伝達にとって好適であると考えられる。本開示のある特定の態様においては、前記細胞または複数の細胞は自己であるが、代替的な実施形態においては、細胞は同種異系である。細胞が自己ではない場合、本開示における使用の前に、当業界で標準的な手段によって細胞をプロセッシングして、潜在的に有害な材料、病原体などを除去することができる。
【0062】
脂肪細胞を、例えば、外科的切除または脂肪吸引を用いて収獲することができる。
【0063】
特定の態様において、ヒト脂肪細胞の軟骨細胞様分化を、機械的ひずみを用いることにより容易にすることができる。本開示の特定の実施形態においては、脂肪細胞からの分化の際に、in vivoで得られる細胞は、I型およびII型コラーゲンならびにプロテオグリカンを示すある特定の生化学マーカーの発現を含む。
【0064】
特定の態様において、ヒト脂肪細胞の軟骨細胞様分化は、in vivoで起こってもよく、椎間板の微小環境が軟骨細胞分化に貢献する。静水負荷、低酸素状態、円板中に存在する軟骨細胞との細胞間相互作用および椎間板中の他の生化学的環境は、特定の実施形態において、脂肪細胞から軟骨細胞への分化を容易にしてもよい。本開示の特定の実施形態においては、細胞移植後の椎間板中の細胞は、I型とII型の両方のコラーゲンならびに/または軟骨性および線維性組織中に見出されるいくつかのプロテオグリカンの生化学マーカーと共に、脂肪組織と軟骨細胞組織の両方を産生する脂肪細胞と軟骨細胞の組合せである。
【0065】
いくつかの実施形態において、脂肪細胞を、軟骨細胞分化および軟骨産生の前および/または間にマトリックス中に播種することができる。マトリックス(足場と称する場合もある)を用いる実施形態においては、マトリックスは、材料の表面に細胞を結合させ、三次元組織を形成させる材料から構成されていてもよい。この材料は、非毒性、生体適合性、生分解性、再吸収性、またはその組合せであってもよい。いくつかの実施形態においては、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL)、ポリアミノ酸、ポリアンヒドリド、ポリオルトエステルなどの有機ポリマー;コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギネート、アガロース、キトサンなどの天然ヒドロゲル;ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(プロピレンフマレート-コ-エチレングリコール)[P(PF-コ-EG)およびそのコポリマーなどの合成ヒドロゲルを用いることができる。ある特定の場合、アルギネートビーズを足場として用いることができる。いくつかの実施形態においては、例えば、一時的または持続的な構造支持体を必要とするある特定の場合、足場としてヒドロキシアパタイトおよび/またはリン酸三カルシウム(TCP)などのセラミック材料を用いることができる。ある特定の場合、コラーゲン材料を足場として用いることができる。
【0066】
細胞を、天然マトリックスを模倣するためなど、1つまたは複数の生物ポリマーから作られるマトリックス中に入れることができる。足場をin vitroまたはex vivoで播種し、ある特定の態様においては、成長因子を細胞、マトリックス、またはその両方に提供する。足場を、媒体のかん流のためのシステムであってもよいチャンバ中に入れ、足場への機械的力および/または特定の低酸素条件の適用を可能にすることができる。力の送達の後、特に、軟骨の生成のために、細胞の分化を援助する。いくつかの実施形態においては、マトリックスを鋳型中で細胞と共に使用する(セメントのための鉄筋と同様)、および/またはマトリックスを、鋳型挿入の前に脂肪細胞と共に用いることができる。
【0067】
本開示のいくつかの態様において、軟骨細胞を生成し、軟骨を特定の条件を有するチャンバ中で産生させる。チャンバは、1つまたは複数の以下のパラメータ:例えば、温度、媒体のpH、気体の交換、機械的刺激、pO2、PCO2、湿度、および栄養素の拡散を調節することができる。かん流システムは、特定の実施形態においては、栄養素の定常的供給を提供し、老廃物を効率的に除去するために、チャンバ中に存在してもよい。例えば、細胞および組織の変形、圧縮力および剪断力、液体流動、および静水圧の変化などの間欠的なものなどに基づいて、機械的応力の1つまたは複数の組合せを提供することができる。ある特定の態様においては、これらの条件を、チャンバ中にもたらすことができる。
【0068】
脂肪細胞を、ドナー供給源(同種異系)または自己皮膚生検から取得することができる。身体からの細胞の単離および培養物中でのそれらの拡大を用いることができ、ある特定の場合、細胞を操作しないか、または最小限に操作する(例えば、血清、抗生物質などに曝露する)。これらの細胞を、デバイス(例えば、単層培養に由来する媒体中に再懸濁された細胞を有するシリンジ)中に入れ、個体に注入することができる。複製のために細胞に供給するのに用いられる血清を、DMEMなどの媒体を用いて洗浄除去して、外来の血清が個体に注入されるのを回避することができる。このシステムの実施形態においては、アルギネートなどのマトリックスを用いない。本開示の実施形態においては、例えば、当業者は、細胞のみ(または注入のために細胞を懸濁するための最少量の液体)を注入し、媒体を注入しない。細胞を含有する液体懸濁液は、DMEMの成分であるバッファー、アミノ酸、塩、グルコースおよび/またはビタミンを含まなくてもよい。本開示の方法ステップにおいて用いられない細胞操作のための例示的マトリックス分子としては、ポリマー(例えば、PGA、PLGA、およびPCLなど);例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギネート、アガロース、キトサンなどの天然ヒドロゲル;ならびにPEO、PVA、PAAなどの合成ヒドロゲルが挙げられる。
【0069】
本開示のいくつかの方法において、脂肪細胞を取得した後、細胞数を拡大させてもよいが、代替的な実施形態において、脂肪細胞は、事前にまったく拡大させずにそれを必要とする個体にin vivoで提供される。当業者であれば、培養物中の細胞が栄養素を必要とすることを認識でき、FBS(ウシ胎仔血清)などの、媒体を細胞に供給することができる。いくつかの場合、夾雑または感染を防止することができる(例えば、抗生物質を添加することにより)。個体への細胞の注入の前に、細胞をDMEM培地で洗浄して、例えば、FBSおよび抗生物質を除去し、懸濁液中の細胞を注入のために用いることができる。液体懸濁液は、例えば、バッファー、アミノ酸、塩、グルコースおよび/またはビタミンなどの、少量の培地を含有してもよい。脂肪細胞のin vitroでの成長は、in vivoで使用する前に成長のために少なくとも1日またはそれ以上の日数を含んでもよい。ある特定の場合、細胞をチェックまたはモニタリングして、少なくともいくつかの細胞が分裂していることを確保することができる。分裂していない細胞を除去することができる。
【0070】
III.脂肪細胞の機械的再分化およびその使用例
機械的応力/ひずみは、軟骨形成のための重要な因子である。本発明の方法は、1つまたは複数の機械的ひずみを用いる。脂肪細胞の軟骨形成性分化の誘導因子としての、間欠的静水圧(IHP)、低酸素圧、剪断流体応力、圧力負荷、またはその組合せなどの実施形態がある。本開示のいくつかの実施形態においては、細胞を、例えば、三次元マトリックス中で培養する。
【0071】
脂肪細胞に対する機械的応力を、in vitro、in vivo、ex vivo、in vitroの後にin vivo、またはその組合せで実施することができる。一実施形態においては、分化をin vitroで開始した後、in vivoで埋込み、成長および分化を継続する;いくつかの場合、軟骨細胞様細胞を、マトリックス中に播種する(およびマトリックスは不活性構造を含んでもよい)。マトリックスの不活性構造は、本開示の特定の態様において、細胞のin vivoでの分化を誘導する生理的負荷レジメンを提供することが意図される。
【0072】
本開示の特定の態様において、細胞は軟骨細胞または軟骨細胞様細胞への分化を受けるように誘導される。そのような分化は、足場上などでのin vivoでの送達の前に、および/またはin vivoでの送達に続いて起こってもよい。特定の実施形態においては、細胞を、軟骨細胞への分化を容易にする条件にかける。さらなる特定の実施形態においては、条件は機械的応力を含む。本開示の特定の実施形態においては、機械的応力は、脂肪細胞の軟骨形成性分化を刺激する。そのような機械的応力は任意の種類のものであってもよいが、特定の実施形態においては、それは静水圧および/または流体剪断応力を含む。さらなる特定の実施形態においては、応力は定常的または間欠的である。
【0073】
本開示において、周期的静水圧および剪断流体応力などの機械的応力は、三次元マトリックス中に播種された脂肪細胞の軟骨形成性分化を誘導する。軟骨形成性分化を刺激するための同時培養条件は、高細胞密度培養、BMP-2およびアスコルビン酸との培養、および/または低酸素圧での培養などの因子を用いることができる。
【0074】
方法は、個体の関節に脂肪細胞を送達するステップを含んでもよいが、代替的な実施形態においては、脂肪細胞を送達する前に、成長因子、マトリックス分子、機械的ひずみ、またはその組合せにかけない。脂肪細胞は、in vivoでの送達の前に低酸素条件に曝露しても、またはしなくてもよい。
【0075】
前記方法の実施形態は、in vivoでの機械的ひずみを使用し、特定の実施形態においては、脊椎からの固有の圧力を使用して、機械的ひずみを提供する。いくつかの実施形態においては、前記方法は、他の型の圧力の非存在下で、例えば、間欠的静水圧、剪断流体応力などの非存在下で行われる。いくつかの実施形態においては、前記方法は、固有の脊髄圧、低酸素圧、成長因子、マトリックス中での培養など以外の圧力の非存在下で行われる。いくつかの実施形態においては、脊椎からの圧力負荷は、他の細胞への脂肪細胞の分化を誘導するために用いられる。
【0076】
本開示の特定の態様においては、細胞を、軟骨細胞または軟骨細胞様細胞への分化を受けるように誘導する。そのような分化は、ある特定の実施形態においては、in vivoでの送達の後に起こる。細胞は任意の関節においてin vivoでの分化を受けてもよいが、特定の実施形態においては、関節は椎間板である。本開示の態様において、当業者であれば、円板サイズ、コラーゲン含量、および/またはある特定の生物分子のレベルを増加させることにより、円板のマトリックス生物力学および生物学を改善することができる。本開示の実施形態においては、円板中の細胞は、それらが空間の外へ漏れず、死滅しない限り、コラーゲン、プロテオグリカンなどのマトリックス分子を産生する。ある特定の態様において、生物分子は、圧縮/緊張負荷への抵抗などの有益な生物力学的特性を提供する。脊椎の通常の立位/歩行/屈曲を含む負荷にかけられた細胞は、in vivoで軟骨性細胞または軟骨細胞様細胞に分化する。円板中の脂肪細胞と軟骨細胞は両方とも、椎間板の高さおよび体積を改善し、生物力学的特性を増強することができる線維性および/または軟骨性のマトリックスまたは組織を産生することができる。
【0077】
ある特定の実施形態においては、埋込まれた細胞中で、円板高が改善される、および/またはある特定の生化学マーカーが示される。円板高は、例えば、療法の前後で比較する、単純X線写真を用いて測定することができる。少なくとも特定の場合、当業者であれば、磁気共鳴画像化(MRI)、生化学マーカーアッセイ、および/または組織学的分析を用いることもできる。円板高の回復は、脊椎を横断している脊髄神経のための空間を改善し、それは、その領域の円板生物力学および生物学の改善に加えて、この方法における間接的利益を有する。脂肪細胞の移植後の組織学的変化は、特定の実施形態においては、より豊富な組織のため、脂肪細胞と軟骨性細胞の組合せならびに円板高が増加したマトリックスを示すことができる。
【0078】
いくつかの実施形態においては、脂肪細胞または再分化した脂肪細胞は、脊椎または椎間板の間に注入され、髄核中の細胞は輪に関連する円板変性中の亀裂に移動し得る。これらの細胞は、髄核と線維輪の両方におけるマトリックス形成を増強し、修復および組織再生を助ける。髄核中の細胞は、より軟骨細胞に向かって分化し、線維輪中の細胞は、ある特定の実施形態においては、髄核および線維輪の機械的および生化学的環境のため、より脂肪細胞性である。
【0079】
いくつかの実施形態においては、脂肪細胞の分化は、in vivoでの埋込みまで開始せず、生物機械的および生化学的環境の変化のため、移植された細胞の全部が軟骨細胞性細胞に分化することができるわけではない。
【0080】
本開示の実施形態においては、当業者は、例えば、処置される個体から脂肪細胞を取得する、別の個体(例えば、死体もしくは生きているドナーなど)からそれらを取得する、または商業的にそれらを取得する。当業者であれば、脂肪生検を取得し、いくつかの実施形態においては、脂肪生検を操作することができる。例えば、当業者であれば、脂肪組織を一晩消化して、脂肪細胞を得て、細胞を培養して拡大させ、例えば、それらを個体に注入することなどにより、それらを個体に提供することができる。個体への送達の前に、必要とされる細胞数に応じて1回または複数回、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上、細胞を継代することができる。継代は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間、または1、2,3、4週間以上など、1日または複数日の経過にわたって行ってもよい。いくつかの実施形態においては、細胞を、例えば、5~7日間継代する。
【0081】
本開示の実施形態においては、椎間板疾患は、疾患に罹りやすい個体、例えば、高齢の個体を含む、それを必要とする個体に脂肪細胞をin vivoで提供することにより防止される。いくつかの実施形態においては、個体は、成体である。疾患のリスクがある個体は、運動選手(プロ選手もしくはアマチュア選手)、喫煙者、肥満の個体、および/または職業もしくは生活スタイルが、例えば、過剰の持ち上げなどの、肉体労働を必要とする人を含む。
【0082】
IV.支持体の実施形態
本開示の特定の実施形態においては、脂肪細胞または再分化した脂肪細胞を、1つまたは複数の支持体と共に個体に送達する。細胞が組織の形態にあり、いくつかの場合、組織が所望の形状のものである場合、細胞を支持体と共に送達することができる。
【0083】
いくつかの場合、本開示の方法により生成される軟骨を、軟骨のための1つまたは複数の支持体と一緒に個体にin vivoで提供する。支持体は、必要に応じて、生分解性もしくは非生分解性および/または再吸収性もしくは非再吸収性であってもよい。支持体が再吸収性である場合、支持体材料は、生体ポリマーなどの当業界における任意の種類のものであってもよい。ポリラクチドならびにグリコリドおよびε-カプロラクトンとのコポリマーなどの合成ポリエステルを含むラクチドに基づくポリマーが、再吸収性ポリマーの例である。支持体が非再吸収性である場合、支持体材料は、金属またはポリマーなどの当業界における任意の種類のものであってもよい。非再吸収性ポリマーとしては、ポリアセタール樹脂および/またはポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。セラミックおよびコラーゲンなどの遅延再吸収性材料を支持体のために用いることができる。
【0084】
軟骨形成細胞形成の目的のために用いられる埋込み可能なリザーバまたは容器によりin vivoで軟骨を生成することができ、軟骨が形成された後にリザーバを取り出すか、または軟骨形成の間および後に身体により再吸収される吸収性材料から容器を作ることができる。
【0085】
支持体は、いくつかの場合、軟骨の形状に順応する形状を含む、任意の形状のものであってもよい。支持体の形状は、支持体の実質的に同一の形状であってもよい。いくつかの場合、支持体は、軟骨形状に順応しないが、依然として機能において支持的である。いくつかの支持体形状としては、線状、丸形、管状、長方形、球状、ねじ状、円錐状、糸状、カップ型、箱型などが挙げられる。
【実施例】
【0086】
以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を実証するために含まれる。当業者であれば、以下の実施例に開示される技術が本開示の実施において良好に機能する本発明者によって発見された技術であり、したがって、その実施のための好ましい様式を構成すると考えられることを理解するべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示を考慮して、多くの変更を、開示される特定の実施形態において加えることができ、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、同様のまたは類似する結果をそれでもなお得ることができることを理解するべきである。
【0087】
実施例1
脂肪細胞の注入およびin vivoでの分化
本開示の実施形態においては、脂肪細胞を哺乳動物の脊椎に送達して、例えば、椎間板変性を改善する。いくつかの実施形態においては、脂肪細胞を哺乳動物の脊椎に送達して、軟骨細胞分化を誘導するか、または軟骨細胞分化を継続する。
【0088】
傷害の約4週間後に約70%の正常な高さまで円板高を減少させる(例えば、マトリックスの喪失および変性のため)、輪を穿刺することを含むウサギモデルが用いられる。このモデルにおける細胞移植を、輪穿刺の4週間後に実施し、円板高は、例えば、次の3~4週間にわたって徐々に増大する。注入された細胞は円板中に含有され、生存してより多くのマトリックス(脂肪および軟骨性組織)を作り、円板高を増大させる。より多くのマトリックスおよび円板高の増大は、個体にとってより良好な生物機械的機能およびより少ない疼痛をもたらす。ある特定の態様においては、生化学的分析は、I型およびII型コラーゲンが発現されることを示し、これは、軟骨性成分が存在することを示し、少なくともいくつかの場合、軟骨性組織が存在する(それが全て線維性であった場合(瘢痕組織)、II型コラーゲンを含まないI型コラーゲンが主に発現されるが、軟骨性組織はII型コラーゲンを発現する)ことを示す。
【0089】
上記で参照されたウサギモデルの操作の際に、円板高は脂肪細胞の移植後に増大する。
【0090】
実施例2
脂肪細胞からの軟骨のex vivoでの産生
軟骨を必要とするか、または軟骨を必要とすることが疑われる個体を、本開示の方法にかける。例えば、軟骨の欠損または欠陥を有するなどの軟骨を必要とする個体を、本開示の方法にかける。特定の実施形態においては、個体を、軟骨を必要とすると診断する。いくつかの実施形態においては、個体は、椎間板修復を必要としない。
【0091】
脂肪細胞を、別の個体から、または商業的に取得する。脂肪細胞を、取得した後に培養する。脂肪細胞を、低酸素、機械的応力、またはその組合せなどの、軟骨細胞分化を容易にする条件にかけることができる。
【0092】
いくつかの場合、欠陥軟骨または欠陥軟骨を表すもの(例えば、膝、型、もしくは耳における欠陥軟骨の鏡像など)を、例えば、MRIまたはCTスキャンなどの適切な方法を用いて画像化する。次いで、この画像を用いて、欠陥軟骨の所望の形状の鋳型を作製する。脂肪細胞を鋳型に提供し、鋳型/脂肪細胞を適切な条件にかけた場合、脂肪細胞は鋳型中で軟骨細胞に分化して、軟骨組織を産生する。しかしながら、特定の実施形態においては、脂肪細胞のみを適切な条件にかけて、鋳型に播種する前に軟骨細胞を産生させ、いくつかの場合、脂肪細胞を適切な条件にかけて、鋳型に播種する前および後に軟骨細胞を産生させる。鋳型自体が、必要な条件を生成することができるか、または鋳型を、これらの条件を生成する別の容器中に挿入することができる。
【0093】
得られる軟骨を、脂肪細胞が収獲された同じ個体および/または軟骨修復を必要とする別の個体を含む、それを必要とする個体に提供する。特定の実施形態においては、軟骨組織を、その所望の位置への軟骨の安全な配置を容易にするための1つまたは複数の支持体と、送達の前または送達の際に組み合わせるが、いくつかの場合、支持体は必要ではない。支持体は、所望の位置、軟骨の厚さなどに応じて、再吸収性であってもよいか、または再吸収性でなくてもよい。
【0094】
本発明およびその利点を詳細に説明してきたが、添付の請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換および変化を加えることができることが理解されるべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載のプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者であれば、本発明の開示から容易に理解できるため、本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、または実質的に同じ結果を達成する、元々存在するか、または後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、またはステップを、本発明に従って用いることができる。したがって、添付の請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、またはステップをその範囲内に含むことが意図される。