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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】保護膜形成用複合シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220608BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220608BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
C09J7/38
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020169117
(22)【出願日】2020-10-06
(62)【分割の表示】P 2016189658の分割
【原出願日】2016-09-28
(65)【公開番号】P2021007168
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】稲男 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小橋 力也
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027888(WO,A1)
【文献】特開2014-189564(JP,A)
【文献】特開2011-046963(JP,A)
【文献】特開2016-015456(JP,A)
【文献】特開2014-055206(JP,A)
【文献】特開2014-063802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持シート上にエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムが設けられてなる保護膜形成用複合シートであって、
前記保護膜形成用複合シートは、前記保護膜形成用フィルム上に半導体ウエハが設けられてなり、前記半導体ウエハの内部には改質層が形成されている積層構造体を形成する積層構造体形成工程と、
前記積層構造体形成工程後に、記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記保護膜を形成後の前記積層構造体を、常温下、又は前記保護膜を加熱しながら、前記保護膜の表面方向にエキスパンドして、前記保護膜を切断するとともに、前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し、複数個の保護膜付き半導体チップを得るエキスパンド工程と、を有する、保護膜付き半導体チップの製造方法で用いるためのものであり、
前記支持シートが、基材上に粘着剤層が設けられたものであり、
CD方向の長さが22mm、MD方向の長さが110mmの、前記基材の試験片について、前記MD方向の両端部のうちの一方において、前記試験片を吊り下げ、他方に荷重0.1g/mmを加えて、130℃、30%RHの条件で、前記試験片を2時間加熱し、23℃まで冷却したとき、前記試験片のMD方向の伸縮率が100~250%となり、
MD方向の長さが22mm、CD方向の長さが110mmの、前記基材の試験片について、前記CD方向の両端部のうちの一方において、前記試験片を吊り下げ、他方に荷重0.1g/mmを加えて、130℃、30%RHの条件で、前記試験片を2時間加熱し、23℃まで冷却したとき、前記試験片のCD方向の伸縮率が100~150%となり、
15mm×140mmの大きさの前記基材の試験片について、JIS K7127:1999に準拠して、23℃における引張弾性率を測定したとき、前記試験片のMD方向及びCD方向の引張弾性率が、ともに100~400MPaとなる、保護膜形成用複合シート。
【請求項2】
記粘着剤層に、前記保護膜形成用フィルムが直接接触して設けられている、請求項に記載の保護膜形成用複合シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜付き半導体チップの製造方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を適用した半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路面上にバンプ等の電極を有する半導体チップが用いられ、前記電極が基板と接合される。このため、半導体チップの回路形成面とは反対側の裏面は剥き出しとなることがある。
【0003】
この剥き出しとなった半導体チップの裏面には、保護膜として、有機材料を含有する樹脂膜が形成され、保護膜付き半導体チップとして半導体装置に取り込まれることがある。保護膜は、ダイシング工程やパッケージングの後に、半導体チップにおいてクラックが発生するのを防止するために利用される。
【0004】
このような保護膜を形成するためには、例えば、硬化によって保護膜を形成するように構成された保護膜形成用フィルムが使用され、通常、保護膜形成用フィルムは、支持シート上に設けられ、保護膜形成用複合シートの状態とされて使用される。保護膜形成用複合シートにおいては、保護膜形成用フィルムが硬化によって保護膜を形成可能であり、さらに支持シートをダイシングシートとして利用可能であって、保護膜形成用フィルムとダイシングシートとが一体化されたものとすることが可能である。そして、保護膜形成用フィルムとしては、熱硬化性のもの、すなわち熱硬化によって保護膜を形成するものが知られている。
【0005】
図5は、熱硬化性の保護膜形成用フィルムを用いた場合の、保護膜付き半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
この製造方法では、まず、図5(a)に示すように、内部にあらかじめ改質層81’が形成されている半導体ウエハ8’を、保護膜形成用複合シート901の保護膜形成用フィルム931上に設けておく。保護膜形成用複合シート901は、支持シート10上に保護膜形成用フィルム931が設けられたものである。次いで、図5(b)に示すように、加熱によって保護膜形成用フィルム931を硬化させて保護膜931’とする。次いで、半導体ウエハ8’を、この保護膜931’を形成後の保護膜形成用複合シート901’ごと、保護膜931’の表面方向(図中、矢印Iで示す方向)にエキスパンドして、図5(c)に示すように、保護膜931’を切断するとともに、改質層81’の部位において半導体ウエハ8’を分割することで、複数個の保護膜付き半導体チップ8を得る。図5中、符号9310’は切断後の保護膜を示す。
ここで示すような、半導体ウエハの内部に改質層を形成し、この改質層の部位において半導体ウエハを分割する方法は、後述するように、従来汎用されているブレードダイシング等によって半導体ウエハを分割する方法よりも有利な点を有し、その幅広い活用が望まれているものである。
【0006】
しかし、この製造方法では、保護膜付き半導体チップ8を得る過程で、保護膜形成用フィルム931を熱硬化させるために、支持シート10として、耐熱性を有するものが必要であり、そのためには支持シート10の弾性率を高くする必要がある。ここでは、支持シート10として、基材11上に粘着剤層12が設けられたものを示しており、この場合には、特に基材11の弾性率を高くする必要がある。ところが、支持シート10の弾性率が高いと、支持シート10(保護膜形成用複合シート901’)はエキスパンドし難くなってしまうため、保護膜931’を十分に切断できなくなってしまう。
また、保護膜形成用フィルム931の加熱硬化時に、保護膜931’が硬化によって収縮し、半導体ウエハ8’の少なくとも一部で分割が先行して進行し(図示略)、半導体ウエハ8’の、支持シート10上での支持性が低下し、弛みが生じ易い。
【0007】
一方、半導体ウエハの分割によって半導体チップを得る方法としては、半導体チップを得るまでの過程で保護膜形成用フィルムを硬化させないものも考えられる。この方法では、保護膜付き半導体チップではなく、保護膜形成用フィルム付き半導体チップを製造することになる。このような場合にも、通常、保護膜形成用フィルムは、支持シート上に設けられ、保護膜形成用複合シートの状態とされて使用される。
図6は、このような保護膜形成用フィルム付き半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【0008】
この製造方法では、まず、上記と同様に、図6(a)に示すように、内部にあらかじめ改質層81’が形成されている半導体ウエハ8’を、保護膜形成用複合シート902の保護膜形成用フィルム932上に設けておく。保護膜形成用複合シート902は、支持シート10上に保護膜形成用フィルム932が設けられたものである。次いで、保護膜形成用フィルム932を硬化させることなく、半導体ウエハ8’を保護膜形成用複合シート902ごと、保護膜形成用フィルム932の表面方向(図中、矢印Iで示す方向)にエキスパンドして、図6(b)に示すように、未硬化の保護膜形成用フィルム932を切断するとともに、改質層81’の部位において半導体ウエハ8’を分割することで、複数個の保護膜形成用フィルム付き半導体チップ8を得る。図6中、符号9320は切断後の保護膜形成用フィルムを示す。なお、この製造方法では、保護膜形成用フィルム932は、硬化型及び非硬化型のいずれであってもよく、硬化型である場合には、例えば、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであってもよいが、硬化型の保護膜形成用フィルムは硬化させることなく用いる。
【0009】
この製造方法では、保護膜形成用フィルム932を硬化させないため、加熱工程は不要であり、支持シート10として耐熱性を有するものは不要であって、上述のような、支持シート10の弾性率を高くすることに伴う問題点を回避でき、半導体ウエハ8’の支持シート10上での支持性も低下しない。
この保護膜形成用フィルムのような、有機材料を含有する樹脂膜を硬化させずに切断する手法は、半導体ウエハへ貼付する樹脂膜としてダイボンドフィルムを用いた場合について開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2011-171588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述のように、保護膜形成用フィルムを硬化させずに切断するとともに、半導体ウエハを分割した場合には、得られた保護膜形成用フィルム付き半導体チップにおいて、保護膜形成用フィルムは未硬化であるために弾性率が低い。これによって、保護膜形成用フィルム付き半導体チップを、従来法に従って、ピンによる突き上げを行って支持シートから引き離し、ピックアップしたときに、保護膜形成用フィルムにはピンによる突き上げ痕が残存し易い。なお、このようなピンによる突き上げ痕は、弾性率が低い保護膜でも、残存し得る。このような観点では、ピックアップ時において半導体チップは、十分に硬化している保護膜を備えていることが望ましい。
【0012】
そこで本発明は、保護膜形成用フィルムの硬化によって形成され、目的の箇所で切断済みの保護膜を、半導体チップの裏面に備えた保護膜付き半導体チップの製造方法であって、エキスパンドによる保護膜又は保護膜形成用フィルムの切断性と、エキスパンド時に用いる支持シート上での半導体ウエハの支持性と、が良好で、ピンによる突き上げを行って保護膜付き半導体チップを支持シートから引き離したときに、保護膜でのピンによる突き上げ痕の残存を抑制できる、保護膜付き半導体チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、支持シート上にエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムが設けられ、前記保護膜形成用フィルム上に半導体ウエハが設けられてなり、前記半導体ウエハの内部には改質層が形成されている積層構造体を形成する積層構造体形成工程と、前記積層構造体形成工程後に、前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記保護膜を形成後の前記積層構造体を前記保護膜の表面方向にエキスパンドして、前記保護膜を切断するとともに、前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し、複数個の保護膜付き半導体チップを得るエキスパンド工程と、を有し、前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)と、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)と、充填材(d)と、を含有し、前記化合物(a2)は、前記エネルギー線硬化性基として(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物であり、前記重合体(b)はアクリル系重合体であり、前記保護膜形成用フィルムの前記化合物(a2)及び前記重合体(b)の合計含有量が、15~70質量%であり、前記保護膜形成用フィルムの前記充填材(d)の含有量が、7~78質量%であり、前記エキスパンド工程において、常温下、又は前記保護膜を加熱しながら、前記積層構造体をエキスパンドする、保護膜付き半導体チップの製造方法を提供する。
また、本発明の第2の態様は、支持シート上にエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムが設けられ、前記保護膜形成用フィルム上に半導体ウエハが設けられてなり、前記半導体ウエハの内部には改質層が形成されている積層構造体を形成する積層構造体形成工程と、前記積層構造体形成工程後に、前記積層構造体を前記保護膜形成用フィルムの表面方向にエキスパンドして、前記保護膜形成用フィルムを切断するとともに、前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し、複数個の半導体チップを得るエキスパンド工程と、切断後の前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成することで、保護膜付き半導体チップを得る保護膜形成工程と、を有するか、又は、前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記保護膜を形成後の前記積層構造体を前記保護膜の表面方向にエキスパンドして、前記保護膜を切断するとともに、前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し、複数個の保護膜付き半導体チップを得るエキスパンド工程と、を有し、前記支持シートが、基材上に粘着剤層が設けられたものであり、CD方向の長さが22mm、MD方向の長さが110mmの、前記基材の試験片について、前記MD方向の両端部のうちの一方において、前記試験片を吊り下げ、他方に荷重0.1g/mmを加えて、130℃、30%RHの条件で、前記試験片を2時間加熱し、23℃まで冷却したとき、前記試験片のMD方向の伸縮率が100~250%となり、MD方向の長さが22mm、CD方向の長さが110mmの、前記基材の試験片について、前記CD方向の両端部のうちの一方において、前記試験片を吊り下げ、他方に荷重0.1g/mmを加えて、130℃、30%RHの条件で、前記試験片を2時間加熱し、23℃まで冷却したとき、前記試験片のCD方向の伸縮率が100~150%となり、15mm×140mmの大きさの前記基材の試験片について、JIS K7127:1999に準拠して、23℃における引張弾性率を測定したとき、前記試験片のMD方向及びCD方向の引張弾性率が、ともに100~400MPaとなる、保護膜付き半導体チップの製造方法を提供する。
【0014】
本発明の、第1の態様及び第2の態様の、保護膜付き半導体チップの製造方法は、前記積層構造体形成工程の前に、さらに、前記保護膜形成用フィルムが設けられる前の半導体ウエハに対して、その内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射して、前記半導体ウエハの内部に前記改質層を形成する改質層形成工程を有することが好ましい。
本発明の、第1の態様及び第2の態様の、保護膜付き半導体チップの製造方法においては、前記支持シートが、基材上に粘着剤層が設けられたものであり、前記粘着剤層に、前記保護膜形成用フィルムが直接接触して設けられていることが好ましい。
また、本発明の第3の態様は、前記第1の態様又は第2の態様の、保護膜付き半導体チップの製造方法により、保護膜付き半導体チップを得た後、前記保護膜付き半導体チップを、前記支持シートから引き離す引き離し工程を有する、半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保護膜形成用フィルムの硬化によって形成され、目的の箇所で切断済みの保護膜を、半導体チップの裏面に備えた保護膜付き半導体チップの製造方法であって、エキスパンドによる保護膜又は保護膜形成用フィルムの切断性と、エキスパンド時に用いる支持シート上での半導体ウエハの支持性と、が良好で、ピンによる突き上げを行って保護膜付き半導体チップを支持シートから引き離したときに、保護膜でのピンによる突き上げ痕の残存を抑制できる、保護膜付き半導体チップの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
図2】バックグラインドテープが貼付されている半導体ウエハを模式的に示す断面図である。
図3】本発明の製造方法の他の実施形態を模式的に説明するための断面図である。
図4】本発明の半導体装置の製造方法における、引き離し工程の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
図5】熱硬化性の保護膜形成用フィルムを備えた保護膜形成用複合シートを用いた場合の、従来の保護膜付き半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
図6】非硬化型の保護膜形成用フィルムを備えた保護膜形成用複合シートを用いた場合の、従来の保護膜形成用フィルム付き半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の保護膜付き半導体チップの製造方法は、支持シート上にエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムが設けられ、前記保護膜形成用フィルム上に半導体ウエハが設けられてなり、前記半導体ウエハの内部には改質層が形成されている積層構造体を形成する積層構造体形成工程と、前記積層構造体形成工程後に、
前記積層構造体を前記保護膜形成用フィルムの表面方向にエキスパンドして、前記保護膜形成用フィルムを切断するとともに、前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し、複数個の半導体チップを得るエキスパンド工程と、切断後の前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成することで、保護膜付き半導体チップを得る保護膜形成工程と、を有する(本法を本明細書においては「製造方法(1)」と称することがある)か、又は、
前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記保護膜を形成後の前記積層構造体を前記保護膜の表面方向にエキスパンドして、前記保護膜を切断するとともに、前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し、複数個の保護膜付き半導体チップを得るエキスパンド工程と、を有する(本法を本明細書においては「製造方法(2)」と称することがある)。
本発明の製造方法(1)と製造方法(2)とでは、エキスパンドと、保護膜の形成と、の順序が、互いに異なる。
以下、本発明の保護膜付き半導体チップの製造方法について、製造方法ごとに詳細に説明する。
【0018】
◎保護膜付き半導体チップの製造方法(製造方法(1))
本発明の保護膜付き半導体チップの製造方法(製造方法(1))は、支持シート上にエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムが設けられ、前記保護膜形成用フィルム上に半導体ウエハが設けられてなり、前記半導体ウエハの内部には改質層が形成されている積層構造体を形成する積層構造体形成工程と、前記積層構造体を前記保護膜形成用フィルムの表面方向にエキスパンドして、前記保護膜形成用フィルムを切断するとともに、前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し、複数個の半導体チップを得るエキスパンド工程と、切断後の前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成することで、保護膜付き半導体チップを得る保護膜形成工程と、を有する。
【0019】
本発明の製造方法(1)によれば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性であるため、保護膜の形成に加熱は不要であり、支持シートとして耐熱性を有しない、弾性率が低いものを使用できる。したがって、支持シートはエキスパンドが容易であり、保護膜形成用フィルムを十分に切断できる。また、保護膜の形成に加熱が不要であることで、半導体ウエハの支持シート上での支持性の低下(弛みの発生)が抑制される。
【0020】
また、本発明の製造方法(1)によれば、前記積層構造体形成工程において、後述するように、あらかじめ改質層を形成済みの半導体ウエハを、保護膜形成用フィルム及び支持シート上に設けることが可能である。この場合、改質層を形成するために、支持シート及び保護膜形成用フィルムを透過させて、半導体ウエハにレーザー光を照射する必要が無く、使用できる支持シート及び保護膜形成用フィルムの種類が限定されることがない。また、レーザー光の透過性を高めるために、支持シートの保護膜形成用フィルムが設けられている側とは反対側の最表層の面(例えば、基材の露出面)について、平滑度を向上させる必要がないため、支持シートの保管時におけるブロッキングの発生を抑制できる。
【0021】
一方、従来汎用されているブレードダイシング等によって半導体ウエハを分割する方法では、例えば、半導体ウエハの一部を削り取るため、削り取った分だけ半導体ウエハの損失が生じ、1枚の半導体ウエハから得られる半導体チップの数が少なくなる。これに対して、本発明の製造方法(1)における、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割する方法は、半導体ウエハの一部を削り取ることがないため、上記のような問題点を回避できる点で有利である。
【0022】
なお、本明細書においては、製造方法(1)における前記エキスパンド工程、前記保護膜形成工程を、後述する製造方法(2)におけるエキスパンド工程、保護膜形成工程と区別するために、それぞれ、エキスパンド工程(E1)、保護膜形成工程(C1)と称することがある。そして、製造方法(2)におけるエキスパンド工程、保護膜形成工程を、それぞれ、エキスパンド工程(E2)、保護膜形成工程(C2)と称することがある。
【0023】
また、本明細書において、半導体ウエハ及び半導体チップの「裏面」とは、半導体ウエハ及び半導体チップの「回路が形成されている面(回路面)とは反対側の面」を意味する。また、「保護膜付き半導体チップ」とは、「切断後の保護膜を裏面に備えた半導体チップ」を意味する。
以下、製造方法(1)について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下で説明する各構成要素の組成及び構成材料については、別途詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の製造方法(1)の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0025】
○積層構造体形成工程
製造方法(1)の前記積層構造体形成工程においては、図1(a)に示すように、支持シート10上にエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルム13が設けられ、保護膜形成用フィルム13上に半導体ウエハ8’が設けられてなり、半導体ウエハ8’の内部には改質層81’が形成されている積層構造体101を形成する。
【0026】
ここに示す支持シート10は、基材11上に粘着剤層12が設けられたものであり、保護膜形成用フィルム13は粘着剤層12に直接接触して設けられ、半導体ウエハ8’は保護膜形成用フィルム13に直接接触して設けられている。
すなわち、積層構造体101は、より具体的には、基材11の一方の表面11aに粘着剤層12が設けられ、粘着剤層12の一方の表面12aに保護膜形成用フィルム13が設けられ、保護膜形成用フィルム13の一方の表面13aに半導体ウエハ8’が設けられてなる。保護膜形成用フィルム13は、未切断の1枚のフィルムである。
【0027】
半導体ウエハ8’の一方の表面8a’は回路形成面であり、この回路形成面8a’とは反対側の面である裏面8b’は、後述するように研削されて生じた研削面となり得る。
【0028】
基材11は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。基材11が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0029】
なお、本明細書においては、基材11の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0030】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~100μmであることがより好ましい。基材11の厚さがこのような範囲であることで、支持シート10(後述する保護膜形成用複合シート)の可撓性と、半導体ウエハ8’又は後述する半導体チップ8への貼付性がより向上する。
本明細書において、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0031】
基材11は、その上に設けられる層(ここでは、例えば、粘着剤層12)との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面11aに施されたものであってもよい。
また、基材11は、表面11aがプライマー処理を施されたものであってもよい。
また、基材11は、帯電防止コート層、半導体加工用シートを重ね合わせて保存する際に、基材11が他のシートに接着することや、基材11が吸着テーブルに接着することを防止する層等を有するものであってもよい。
【0032】
基材11の光学特性は、本発明の効果を損なわない範囲内において、特に限定されないが、基材11はレーザー光又はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0033】
基材11は、柔軟性が高いものが好ましい。このような基材11を用いることにより、支持シート10は弾性率が低くなり、エキスパンドが容易となって、保護膜形成用フィルムを十分に切断するのに有利である。また、支持シート10の弾性率が低い場合には、実施例で後述するように、エキスパンド工程によって支持シートにおいて生じた弛みが、エキスパンド工程後の加熱によって解消され、良好な支持シートの復元性(ヒートシュリンク性)を示す。
【0034】
このような観点から、基材11は、後述する実施例に記載の方法で測定した、MD(Machine Direction)方向の伸縮率が50~300%であり、かつCD(Cross Direction)方向の伸縮率が50~300%であるものが好ましく、MD方向の伸縮率が100~250%であり、かつCD方向の伸縮率が100~150%であるものがより好ましい。
なお、本明細書において、「MD方向」とは、基材11の製造のライン方向を意味し、「CD方向」とは、MD方向と直交する方向、すなわち基材11の製造の幅方向を意味する。
【0035】
また、基材11は、柔軟性が高いことにより、後述する保護膜付き半導体チップのピックアップがより容易となる。このような観点から、基材11は、後述する実施例に記載の方法で測定した、23℃におけるMD方向及びCD方向の引張弾性率が、ともに50~500MPaであるものが好ましく、ともに100~400MPaであるものがより好ましい。
【0036】
基材11は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材11は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0037】
粘着剤層12は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を、容易に調節できる。
【0038】
粘着剤層12は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。粘着剤層12が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0039】
粘着剤層12の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
本明細書において、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0040】
粘着剤層12の光学特性は、本発明の効果を損なわない範囲内において、特に限定されないが、粘着剤層12はレーザー光又はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0041】
粘着剤層12は、後述する粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。
【0042】
保護膜形成用フィルム13はエネルギー線硬化性である。
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。
紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0043】
保護膜形成用フィルム13は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。保護膜形成用フィルム13が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0044】
保護膜形成用フィルム13の厚さは、特に限定されないが、1~50μmであることが好ましく、3~40μmであることがより好ましい。保護膜形成用フィルム13の厚さが前記下限値以上であることで、保護膜形成用フィルム13の被着体(半導体ウエハ8’)に対する接着力がより高くなる。また、保護膜形成用フィルム13の厚さが前記上限値以下であることで、後述するエキスパンド工程において、保護膜形成用フィルム13をより容易に切断できる。
ここで、「保護膜形成用フィルム13の厚さ」とは、保護膜形成用フィルム13全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成用フィルム13の厚さとは、保護膜形成用フィルム13を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0045】
保護膜形成用フィルム13は、その構成材料を含有する、後述する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。
【0046】
前記積層構造体形成工程においては、例えば、基材11、粘着剤層12及び保護膜形成用フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる保護膜形成用複合シート1を用い、その保護膜形成用フィルム13を、内部に改質層81’を形成済みの半導体ウエハ8’の裏面8b’に貼付することで、積層構造体101を形成できる。
また、例えば、保護膜形成用フィルム13を、内部に改質層81’を形成済みの半導体ウエハ8’の裏面8b’に貼付した後、その保護膜形成用フィルム13の半導体ウエハ8’への貼付面(前記一方の表面)13aとは反対側の面(露出面、裏面)13bに、支持シート10の粘着剤層12を貼付し、保護膜形成用複合シート1を構成するようにしても、積層構造体101を形成できる。
これらはいずれも、半導体ウエハ8’の内部に改質層81’を形成してから、この半導体ウエハ8’に保護膜形成用複合シート1が貼付された状態とする方法である。
【0047】
一方、前記積層構造体形成工程においては、例えば、保護膜形成用複合シート1を用い、その保護膜形成用フィルム13を半導体ウエハ8’の裏面8b’に貼付した後、半導体ウエハ8’の内部に改質層81’を形成することで、積層構造体101を形成できる。
また、例えば、保護膜形成用フィルム13を半導体ウエハ8’の裏面8b’に貼付した後、その保護膜形成用フィルム13の裏面13bに、支持シート10の粘着剤層12を貼付し、保護膜形成用複合シート1を構成した後、半導体ウエハ8’の内部に改質層81’を形成することでも、積層構造体101を形成できる。
これらはいずれも、半導体ウエハ8’ に保護膜形成用複合シート1が貼付された状態としてから、この半導体ウエハ8’の内部に改質層81’を形成する方法である。
【0048】
これらの中でも、製造方法1では、前記積層構造体形成工程において、半導体ウエハ8’の内部に改質層81’を形成してから、この半導体ウエハ8’に保護膜形成用複合シート1が貼付された状態とすることが好ましい。これは、後述するように、改質層81’の形成には、レーザー光の照射が必要だからである。上記のようにあらかじめ改質層81’を形成済みの半導体ウエハ8’を、保護膜形成用フィルム13及び支持シート10上に設けることで、改質層81’を形成するために、支持シート10及び保護膜形成用フィルム13を透過させて、半導体ウエハ8’にレーザー光を照射する必要がない。したがって、支持シート10及び保護膜形成用フィルム13として、レーザー光の透過性を有するものに限定されず、レーザー光の透過性を有しないものも使用でき、使用するものの種類が限定されることがない。
また、レーザー光の透過性を高めるために、支持シート10の保護膜形成用フィルム13が設けられている側とは反対側の最表層の面(裏面)10b(換言すると、ここでは、基材11の露出面、裏面11b)について、平滑度を向上させる必要がないため、支持シート10の保管時におけるブロッキングの発生を抑制できる。
【0049】
積層構造体101は、例えば、従来のダイシングシート等の場合と同様に、支持シート10においてリングフレーム等に固定化することが好ましい。
【0050】
保護膜形成用複合シート1を構成している保護膜形成用フィルム13、又は保護膜形成用複合シート1を構成していない保護膜形成用フィルム13、の貼付対象である半導体ウエハ8’のうち、前記回路形成面8a’には、バックグラインドテープが貼付されていることが好ましい。このようにバックグラインドテープが貼付されている半導体ウエハ8’は、たとえ、その厚さが薄くても(半導体ウエハ8’が薄型ウエハであっても)、保護膜形成用フィルム13を貼付するまでの取り扱い時において、割れや欠け等の破損の発生が抑制される。
バックグラインドテープは、例えば、後述するように、半導体ウエハ8’の裏面を研削するときに使用される。
【0051】
図2は、このようにバックグラインドテープが貼付されている半導体ウエハ8’を模式的に示す断面図である。ここに示す半導体ウエハ8’の回路形成面8a’には、バックグラインドテープ7が貼付されている。
【0052】
半導体ウエハ8’の回路形成面8a’に貼付されているバックグラインドテープは、積層構造体101の形成後、後述するエキスパンド工程を行う前に、半導体ウエハ8’から取り除く(剥離させる)ことが好ましい。積層構造体101の形成後であれば、バックグラインドテープを取り除くとき及び取り除いた後のいずれにおいても、半導体ウエハ8’の破損が抑制される。
【0053】
○改質層形成工程
半導体ウエハ8’において改質層81’は、例えば、半導体ウエハ8’の内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射することで形成できる。
すなわち、製造方法(1)は、前記積層構造体形成工程の前に、さらに、保護膜形成用フィルム13が設けられる前の半導体ウエハ8’に対して、その内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射して、半導体ウエハ8’の内部に改質層81’を形成する改質層形成工程を有することが好ましい。
【0054】
照射するレーザー光は、赤外域のレーザー光であることが好ましい。
改質層81’の形成時には、例えば、レーザー光の照射によって半導体ウエハ8’の表面や表面近傍の領域が受けるダメージを最小限にしながら、改質層81’を形成するために、開口度(NA)の大きなレーザー光を照射することが好ましい。
【0055】
改質層81’の形成対象である半導体ウエハ8’(換言すると、改質層81’の形成前の半導体ウエハ8’)の厚さは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、5~500μmであることが好ましく、10~400μmであることがより好ましい。半導体ウエハ8’の厚さが前記下限値以上であることで、半導体ウエハ8’の割れや欠け等の破損の発生がより抑制される。また、半導体ウエハ8’の厚さが前記上限値以下であることで、後述するエキスパンド工程において、半導体ウエハ8’がより容易に半導体チップ8へと分割される。
【0056】
半導体ウエハ8’の厚さは、例えば、半導体ウエハ8’の回路形成面8a’とは反対側の面を、グラインダーを用いる方法等、公知の方法で研削することで調節できる。このように半導体ウエハ8’が研削された場合、最終的に保護膜形成用フィルム13の貼付対象となる半導体ウエハ8’の前記裏面8b’は、研削面となる。
【0057】
○エキスパンド工程(エキスパンド工程(E1))
前記エキスパンド工程(エキスパンド工程(E1))においては、積層構造体101を保護膜形成用フィルム13の表面13a方向(図中、矢印Iで示す方向)にエキスパンドして、図1(b)に示すように、保護膜形成用フィルム13を切断するとともに、改質層81’の部位において半導体ウエハ8’を分割し、複数個の半導体チップ8を得る。
ここでは、切断後の保護膜形成用フィルム13を、符号131を付して示している。なお、本明細書においては、切断後の保護膜形成用フィルムを単に「保護膜形成用フィルム」と称することがある。
また、「保護膜形成用フィルム13の表面13a方向」とは、例えば、基材11の一方の表面11a又は粘着剤層12の一方の表面12aに対して平行な方向と同義である。
【0058】
積層構造体101をエキスパンド、すなわち、拡張させることで、基材11及び粘着剤層12(換言すると支持シート10)とともに保護膜形成用フィルム13がエキスパンドされ、保護膜形成用フィルム13が切断される。また、このとき同時に、半導体ウエハ8’に力が加えられることによって、改質層81’の部位において半導体ウエハ8’が分割され、複数個の半導体チップ8となる。保護膜形成用フィルム13は、結果的に、半導体チップ8の外形に沿って、目的とする箇所で切断される。
【0059】
保護膜形成用フィルム13はエネルギー線硬化性であるため、本工程以降において保護膜を形成するために、保護膜形成用フィルム13の加熱は不要である。したがって、支持シート10(例えば、基材11)として耐熱性を有しない、弾性率が低いものを使用できる。このように、弾性率が低い支持シート10を用いることで、支持シート10を容易にエキスパンドでき、保護膜形成用フィルム13を目的とする箇所で十分に切断できる。
【0060】
前記エキスパンド工程においては、保護膜形成用フィルム13を冷却しながら、積層構造体101をエキスパンドして、保護膜形成用フィルム13を切断することが好ましい。このようにすることで、保護膜形成用フィルム13を容易に切断できる。
エキスパンド時の保護膜形成用フィルム13の冷却温度は、特に限定されないが、保護膜形成用フィルム13をより容易に切断できる点から、-15~10℃であることが好ましい。
【0061】
前記エキスパンド工程における、積層構造体101(保護膜形成用フィルム13)のエキスパンド速度(拡張速度)は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限定されないが、0.5~100mm/secであることが好ましく、1~60mm/secであることがより好ましい。エキスパンド速度がこのような範囲であることで、効率よく、工程異常を伴うことなく、保護膜形成用フィルム13を切断できる効果がより高くなる。特に、エキスパンド速度が前記上限値以下であることで、半導体チップ8がよりダメージを受け難くなり、切断後の保護膜形成用フィルム131の、切断箇所における欠け等の異常の発生がより抑制される。
【0062】
○保護膜形成工程(保護膜形成工程(C1))
前記保護膜形成工程(保護膜形成工程(C1))においては、切断後の保護膜形成用フィルム131にエネルギー線を照射して保護膜131’を形成することで、図1(c)に示すように、保護膜付き半導体チップ8(裏面8bに保護膜131’を備えた半導体チップ8)を得る。本工程により、目的とする複数個の保護膜付き半導体チップ8が一気に得られる。図1(c)においては、このような、支持シート10上に複数個の保護膜付き半導体チップ8を備えた状態の、加工後の積層構造体を、符号101’を付して示している。
【0063】
本工程においては、このように、保護膜131’の形成に加熱が不要である。したがって、保護膜131’の収縮の影響による、支持シートの支持性の低下(弛みの発生)が抑制される。
【0064】
保護膜形成用フィルム131を硬化させて、保護膜131’を形成するときの、エネルギー線の照射条件(硬化条件)は、保護膜131’が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、例えば、保護膜形成用フィルム131の種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、保護膜形成用フィルム131の硬化時における、エネルギー線の照度は、4~280mW/cmであることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、3~1000mJ/cmであることが好ましい。
【0065】
製造方法(1)において、積層構造体は、ここに示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、積層構造体101において一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0066】
例えば、支持シートとして、図1においては、基材上に粘着剤層が設けられたものを示したが、支持シートは基材上に粘着剤層以外の他の層が設けられたものであってもよい。
本発明において、支持シートは、基材上に粘着剤層が設けられたものが好ましく、基材に粘着剤層が直接接触して設けられたものがより好ましい。
【0067】
また、ここまでは、製造方法(1)の一実施形態として、前記積層構造体形成工程、エキスパンド工程(E1)及び保護膜形成工程(C1)、並びに必要に応じて前記改質層形成工程を有する保護膜付き半導体チップの製造方法について説明したが、製造方法(1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、これら3工程又は4工程以外のその他の工程を有していてもよい。
前記その他の工程は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0068】
製造方法(1)において、積層構造体101以外の積層構造体を用いる場合や、製造方法(1)が前記その他の工程を有する場合には、上述の実施形態において、このような積層構造体を形成するための工程や、前記その他の工程を、それぞれ適したタイミングで追加して行うことにより、製造方法(1)における他の実施形態の保護膜付き半導体チップの製造方法とすることができる。
【0069】
◎保護膜付き半導体チップの製造方法(製造方法(2))
本発明の保護膜付き半導体チップの製造方法(製造方法(2))は、支持シート上にエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムが設けられ、前記保護膜形成用フィルム上に半導体ウエハが設けられてなり、前記半導体ウエハの内部には改質層が形成されている積層構造体を形成する積層構造体形成工程と、前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記保護膜を形成後の前記積層構造体を前記保護膜の表面方向にエキスパンドして、前記保護膜を切断するとともに、前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し、複数個の保護膜付き半導体チップを得るエキスパンド工程と、を有する。
【0070】
本発明の製造方法(2)は、保護膜を形成する工程と、積層構造体をエキスパンドする工程と、を行う順序が、上述の製造方法(1)の場合とは逆になったものである。
本発明の製造方法(2)は、上述の製造方法(1)と同様の効果を奏する。
【0071】
すなわち、本発明の製造方法(2)によれば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性であるため、保護膜の形成に加熱は不要であり、支持シートとして耐熱性を有しない、弾性率が低いものを使用できる。したがって、支持シートはエキスパンドが容易であり、保護膜を十分に切断できる。また、保護膜の形成に加熱が不要であることで、半導体ウエハの支持シート上での支持性の低下(弛みの発生)が抑制される。
【0072】
また、本発明の製造方法(2)によれば、前記積層構造体形成工程において、後述するように、あらかじめ改質層を形成済みの半導体ウエハを、保護膜形成用フィルム及び支持シート上に設けることが可能である。この場合、改質層を形成するために、支持シート及び保護膜形成用フィルムを透過させて、半導体ウエハにレーザー光を照射する必要が無く、使用できる支持シート及び保護膜形成用フィルムの種類が限定されることがない。また、レーザー光の透過性を高めるために、支持シートの保護膜形成用フィルムが設けられている側とは反対側の最表層の面(例えば、基材の露出面)について、平滑度を向上させる必要がないため、支持シートの保管時におけるブロッキングの発生を抑制できる。
【0073】
さらに、本発明の製造方法(2)は、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割する方法を採用することにより、ブレードダイシングのような、半導体ウエハの一部を削り取ることにより問題点を回避できる点で有利である。
【0074】
以下、製造方法(2)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、本発明の製造方法(2)の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
【0075】
○積層構造体形成工程
製造方法(2)の前記積層構造体形成工程においては、図3(a)に示すように、支持シート10上にエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルム13が設けられ、保護膜形成用フィルム13上に半導体ウエハ8’が設けられてなり、半導体ウエハ8’の内部には改質層81’が形成されている積層構造体101を形成する。
製造方法(2)における積層構造体形成工程は、上述の製造方法(1)における積層構造体形成工程と同じである。
【0076】
例えば、本工程においては、半導体ウエハ8’の内部に改質層81’を形成してから、この半導体ウエハ8’に保護膜形成用複合シート1が貼付された状態とすることが好ましい。
また、保護膜形成用複合シート1を構成している保護膜形成用フィルム13、又は保護膜形成用複合シート1を構成していない保護膜形成用フィルム13、の貼付対象である半導体ウエハ8’のうち、前記回路形成面8a’には、バックグラインドテープが貼付されていることが好ましい。この場合、バックグラインドテープは、積層構造体101の形成後、後述するエキスパンド工程を行う前に、半導体ウエハ8’から取り除く(剥離させる)ことが好ましい。
また、積層構造体101は、例えば、従来のダイシングシート等の場合と同様に、支持シート10においてリングフレーム等に固定化することが好ましい。
製造方法(2)における積層構造体形成工程の詳細については、説明を省略する。
【0077】
○改質層形成工程
半導体ウエハ8’において改質層81’は、例えば、半導体ウエハ8’の内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射することで形成できる。
すなわち、製造方法(2)は、前記積層構造体形成工程の前に、さらに、保護膜形成用フィルム13が設けられる前の半導体ウエハ8’に対して、その内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射して、半導体ウエハ8’の内部に改質層81’を形成する改質層形成工程を有することが好ましい。
製造方法(2)における改質層形成工程は、上述の製造方法(1)における改質層形成工程と同じであり、その詳細については、説明を省略する。
【0078】
○保護膜形成工程(保護膜形成工程(C2))
前記保護膜形成工程(保護膜形成工程(C2))においては、図3(b)に示すように、保護膜形成用フィルム13にエネルギー線を照射して、保護膜132を形成する。
保護膜132は、切断されていない点以外は、上述の製造方法(1)における保護膜131と同じである。
また本工程は、硬化の対象物として、切断済みの保護膜形成用フィルムに代えて、未切断の保護膜形成用フィルムを用いる点以外は、上述の製造方法(1)における保護膜形成工程(保護膜形成工程(C1))と同じ方法で行うことができる。より具体的には、以下のとおりである。
【0079】
保護膜形成用フィルム13を硬化させて、保護膜132を形成するときの、エネルギー線の照射条件(硬化条件)は、保護膜132が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、例えば、保護膜形成用フィルム13の種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、保護膜形成用フィルム13の硬化時における、エネルギー線の照度は、4~280mW/cmであることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、3~1000mJ/cmであることが好ましい。
本工程においては、このように、保護膜132の形成に加熱が不要である。
【0080】
なお、本発明においては、保護膜形成用フィルムが硬化した(保護膜が形成された)後であっても、支持シート、保護膜形成用フィルムの硬化物(すなわち保護膜)、及び半導体ウエハの積層構造が維持されている限り、この積層構造物を「積層構造体」と称する。図3(b)においては、このような保護膜形成用フィルムが硬化した(保護膜を形成した)後の積層構造体を、符号102を付して示している。
【0081】
○エキスパンド工程(エキスパンド工程(E2))
前記エキスパンド工程(エキスパンド工程(E2))においては、保護膜132を形成後の積層構造体102を保護膜132の表面132a方向(図中、矢印Iで示す方向)にエキスパンドして、図3(c)に示すように、保護膜132を切断するとともに、改質層81’の部位において半導体ウエハ8’を分割し、複数個の保護膜付き半導体チップ8(裏面8bに保護膜132’を備えた半導体チップ8)を得る。ここでは、切断後の保護膜132を、符号132’を付して示している。なお、本明細書においては、切断後の保護膜を単に「保護膜」と称することがある。
【0082】
「保護膜132の表面132a方向」とは、例えば、基材11の一方の表面11a又は粘着剤層12の一方の表面12aに対して平行な方向と同義である。
本工程により、目的とする複数個の保護膜付き半導体チップ8(裏面8bに保護膜132’を備えた半導体チップ8)が一気に得られる。図3(c)においては、このような、支持シート10上に複数個の保護膜付き半導体チップ8を備えた状態の、加工後の積層構造体を、符号102’を付して示している。
【0083】
本工程は、エキスパンドの対象物である積層構造体として、保護膜形成用フィルムに代えて、その硬化物である保護膜を備えているものを用いる点以外は、上述の製造方法(1)におけるエキスパンド工程(エキスパンド工程(E1))と同じ方法で行うことができる。より具体的には、以下のとおりである。
【0084】
積層構造体102をエキスパンド、すなわち、拡張させることで、基材11及び粘着剤層12(換言すると支持シート10)とともに保護膜132がエキスパンドされ、保護膜132が切断される。また、このとき同時に、半導体ウエハ8’に力が加えられることによって、改質層81’の部位において半導体ウエハ8’が分割され、複数個の半導体チップ8となる。保護膜132は、結果的に、半導体チップ8の外形に沿って、目的とする箇所で切断される。
【0085】
保護膜形成用フィルム13はエネルギー線硬化性であるため、本工程以前において保護膜を形成するために、保護膜形成用フィルム13の加熱は不要である。したがって、支持シート10(例えば、基材11)として耐熱性を有しない、弾性率が低いものを使用できる。このように、弾性率が低い支持シート10を用いることで、支持シート10を容易にエキスパンドでき、保護膜132を目的とする箇所で十分に切断できる。
【0086】
前記エキスパンド工程においては、保護膜132を冷却しながら、積層構造体102をエキスパンドして、保護膜132を切断することができる。このようにすることで、保護膜132を容易に切断できる。
エキスパンド時の保護膜132の冷却温度は、特に限定されないが、保護膜132をより容易に切断できる点から、-15~10℃であることが好ましい。
なお、製造方法(1)の場合とは異なり、保護膜132は、場合によっては冷却せずに、常温下、又は加熱しながらエキスパンドしてもよい。
【0087】
前記エキスパンド工程における、積層構造体102(保護膜132)のエキスパンド速度(拡張速度)は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限定されないが、0.5~100mm/secであることが好ましく、1~60mm/secであることがより好ましい。エキスパンド速度がこのような範囲であることで、効率よく、工程異常を伴うことなく、保護膜132を切断できる効果がより高くなる。特に、エキスパンド速度が前記上限値以下であることで、半導体チップ8がよりダメージを受け難くなり、切断後の保護膜132’の、切断箇所における欠け等の異常の発生がより抑制される。
【0088】
切断後の保護膜132’は、図1(c)に示す切断後の保護膜131’と実質的に同じものであり、加工後の積層構造体102’は、図1(c)に示す加工後の積層構造体101’と実質的に同じものである。
【0089】
製造方法(1)の場合と同様に、製造方法(2)においても、積層構造体は、ここに示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、積層構造体102において一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0090】
例えば、支持シートとして、図3においては、基材上に粘着剤層が設けられたものを示したが、支持シートは基材上に粘着剤層以外の他の層が設けられたものであってもよい。
本発明において、支持シートは、基材上に粘着剤層が設けられたものが好ましく、基材に粘着剤層が直接接触して設けられたものがより好ましい。
【0091】
また、ここまでは、製造方法(2)の一実施形態として、前記積層構造体形成工程、保護膜形成工程(C2)及びエキスパンド工程(E2)、並びに必要に応じて前記改質層形成工程を有する保護膜付き半導体チップの製造方法について説明したが、製造方法(2)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、これら3工程又は4工程以外のその他の工程を有していてもよい。
前記その他の工程は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0092】
製造方法(2)において、積層構造体102以外の積層構造体を用いる場合や、製造方法(2)が前記その他の工程を有する場合には、上述の実施形態において、このような積層構造体を形成するための工程や、前記その他の工程を、それぞれ適したタイミングで追加して行うことにより、製造方法(2)における他の実施形態の保護膜付き半導体チップの製造方法とすることができる。
【0093】
先の説明のように、製造方法(1)と製造方法(2)とでは、保護膜を形成する工程と、積層構造体をエキスパンドする工程と、を行う順序が逆である。いずれの製造方法を選択するかは任意であり、目的に応じて選択すればよい。通常、保護膜よりも保護膜形成用フィルムの方が、被着体に対する接着力が大きいため、保護膜形成用フィルムを備えた積層構造体をエキスパンドする製造方法(1)の方が、半導体チップの飛散(所謂チップ飛び)を抑制する効果が高い。
【0094】
次に、上述の本発明の製造方法における、各構成要素の組成及び構成材料について、詳細に説明する。
【0095】
◇基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0096】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
【0097】
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0098】
基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い基材を構成するのに使用可能な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0099】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0100】
◇粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0101】
なお、本発明において、「粘着性樹脂」とは、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方を含む概念であり、例えば、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含む。
【0102】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものでもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものでもよい。
【0103】
<<粘着剤組成物>>
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤層のより具体的な形成方法は、他の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。粘着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0104】
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0105】
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、粘着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0106】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性粘着剤を含有する粘着剤組成物、すなわち、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0107】
<粘着剤組成物(I-1)>
前記粘着剤組成物(I-1)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
【0108】
[粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
前記アクリル系樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。
前記アクリル系樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0109】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル等が挙げられる。
【0110】
粘着剤層の粘着力が向上する点から、前記アクリル系重合体は、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有することが好ましい。そして、粘着剤層の粘着力がより向上する点から、前記アルキル基の炭素数は、4~12であることが好ましく、4~8であることがより好ましい。また、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0111】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することで、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0112】
官能基含有モノマー中の前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
すなわち、官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0113】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0114】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0115】
官能基含有モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0116】
前記アクリル系重合体を構成する官能基含有モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0117】
前記アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましく、2~32質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。
【0118】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0119】
前記アクリル系重合体を構成する前記他のモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0120】
前記アクリル系重合体は、上述の非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)として使用できる。
一方、前記アクリル系重合体中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基(エネルギー線重合性基)を有する不飽和基含有化合物を反応させたものは、上述のエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)として使用できる。
【0121】
粘着剤組成物(I-1)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0122】
粘着剤組成物(I-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合(すなわち、粘着剤層の粘着性樹脂(I-1a)の含有量)は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0123】
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物は、分子量が比較的大きく、粘着剤層の貯蔵弾性率を低下させにくいという点では、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0124】
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0125】
前記粘着剤組成物(I-1)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0126】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0127】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士を架橋するものである。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
粘着剤の凝集力を向上させて粘着剤層の粘着力を低下させる点、及び入手が容易である等の点から、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0128】
粘着剤組成物(I-1)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0129】
前記粘着剤組成物(I-1)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0130】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0131】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0132】
粘着剤組成物(I-1)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0133】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5量部であることが特に好ましい。
【0134】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するものである。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0135】
粘着剤組成物(I-1)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0136】
粘着剤組成物(I-1)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0137】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
【0138】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0139】
前記溶媒としては、例えば、粘着性樹脂(I-1a)の製造時に用いたものを粘着性樹脂(I-1a)から取り除かずに、そのまま粘着剤組成物(I-1)において用いてもよいし、粘着性樹脂(I-1a)の製造時に用いたものと同一又は異なる種類の溶媒を、粘着剤組成物(I-1)の製造時に別途添加してもよい。
【0140】
粘着剤組成物(I-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0141】
粘着剤組成物(I-1)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0142】
<粘着剤組成物(I-2)>
前記粘着剤組成物(I-2)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)を含有する。
【0143】
[粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0144】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0145】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0146】
粘着剤組成物(I-2)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0147】
粘着剤組成物(I-2)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合(すなわち、粘着剤層の粘着性樹脂(I-2a)の含有量)は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、10~90質量%であることが特に好ましい。
【0148】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0149】
粘着剤組成物(I-2)における前記架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0150】
前記粘着剤組成物(I-2)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0151】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-2)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-2)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0152】
粘着剤組成物(I-2)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0153】
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0154】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-2)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0155】
粘着剤組成物(I-2)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0156】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-2)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-2)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0157】
<粘着剤組成物(I-3)>
前記粘着剤組成物(I-3)は、上述の様に、前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
【0158】
粘着剤組成物(I-3)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合(すなわち、粘着剤層の粘着性樹脂(I-2a)の含有量)は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0159】
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー及びオリゴマーが挙げられ、粘着剤組成物(I-1)が含有するエネルギー線硬化性化合物と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0160】
前記粘着剤組成物(I-3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましく、0.03~200質量部であることがより好ましく、0.05~100質量部であることが特に好ましい。
【0161】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-3)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0162】
粘着剤組成物(I-3)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0163】
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0164】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-3)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0165】
粘着剤組成物(I-3)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0166】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-3)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-3)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-3)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0167】
<粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物>
ここまでは、粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)及び粘着剤組成物(I-3)について主に説明したが、これらの含有成分として説明したものは、これら3種の粘着剤組成物以外の全般的な粘着剤組成物(本明細書においては、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物」と称する)でも、同様に用いることができる。
【0168】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物としては、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物以外に、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物も挙げられる。
非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)が挙げられ、アクリル系樹脂を含有するものが好ましい。
【0169】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、1種又は2種以上の架橋剤を含有することが好ましく、その含有量は、上述の粘着剤組成物(I-1)等の場合と同様とすることができる。
【0170】
<粘着剤組成物(I-4)>
粘着剤組成物(I-4)で好ましいものとしては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)と、架橋剤と、を含有するものが挙げられる。
【0171】
[粘着性樹脂(I-1a)]
粘着剤組成物(I-4)における粘着性樹脂(I-1a)としては、粘着剤組成物(I-1)における粘着性樹脂(I-1a)と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0172】
粘着剤組成物(I-4)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合(すなわち、粘着剤層の粘着性樹脂(I-1a)の含有量)は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0173】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0174】
粘着剤組成物(I-4)における架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0175】
前記粘着剤組成物(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0176】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0177】
粘着剤組成物(I-4)において、その他の添加剤の含有量は特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0178】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-4)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-4)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-4)において、溶媒の含有量は特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0179】
<<粘着剤組成物の製造方法>>
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)や、粘着剤組成物(I-4)等の粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0180】
◇保護膜形成用フィルム
前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線の照射によって硬化し、保護膜となる。この保護膜は、半導体ウエハ又は半導体チップの裏面(回路形成面とは反対側の面)を保護するためのものである。保護膜形成用フィルムは、軟質であり、貼付対象物に容易に貼付できる。
前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性であることにより、熱硬化性の保護膜形成用フィルムよりも、短時間での硬化によって保護膜を形成できる。
保護膜形成用フィルムを支持シートに設けることで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
【0181】
なお、本明細書において、「保護膜形成用フィルム」とは硬化前のものを意味し、「保護膜」とは、保護膜形成用フィルムを硬化させたものを意味する。
【0182】
前記保護膜形成用フィルムとしては、例えば、後述するエネルギー線硬化性成分(a)を含有するものが挙げられる。
エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0183】
保護膜形成用フィルムは、後述する保護膜形成用組成物を、保護膜形成用フィルムの形成対象面に塗工し、必要に応じて乾燥させることで製造できる。
【0184】
例えば、保護膜形成用フィルムがその両面に剥離フィルムを備えたものである場合には、保護膜形成用組成物の塗工面は、これら剥離フィルムのいずれか一方の表面(好ましくは剥離処理面)とすることができる。一方、保護膜形成用フィルムが支持シート上に設けられたものである場合には、保護膜形成用組成物の塗工面は、前記支持シートの表面とすることができる。
【0185】
<<保護膜形成用組成物>>
保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成用フィルムの形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に保護膜形成用フィルムを形成できる。保護膜形成用組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成用フィルムの前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0186】
保護膜形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0187】
保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましく、この場合、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0188】
<保護膜形成用組成物(IV-1)>
保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)を含有する保護膜形成用組成物(IV-1)等が挙げられる。
【0189】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が、後述する架橋剤(f)によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
なお、本明細書において、重量平均分子量とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
【0190】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が重合してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0191】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、半導体ウエハや半導体チップ等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0192】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリル系モノマーと、前記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0193】
前記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0194】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0195】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0196】
前記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0197】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0198】
前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0199】
また、前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0200】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0201】
前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する前記非アクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0202】
前記アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル系重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル系樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節可能となる。
【0203】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル系重合体(a11)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0204】
保護膜形成用組成物(IV-1)において、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量は、1~40質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。
【0205】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0206】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
【0207】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0208】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0209】
前記アクリル系樹脂(a1-1)において、前記アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、硬化により形成された保護膜の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0210】
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
【0211】
前記重合体(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤(f)によって架橋されたものである場合、前記重合体(a1)は、前記アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤(f)と反応する基を有するモノマーが重合して、前記架橋剤(f)と反応する基において架橋されたものであってもよいし、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、前記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
【0212】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0213】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が有するエネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0214】
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0215】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート)、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0216】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分(h)を構成する樹脂にも該当するが、本発明においては前記化合物(a2)として取り扱う。
【0217】
前記化合物(a2)は、重量平均分子量が100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0218】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0219】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
前記重合体(b)は、その少なくとも一部が架橋剤(f)によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0220】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ブチラール樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0221】
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0222】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
【0223】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0224】
前記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0225】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0226】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0227】
少なくとも一部が架橋剤(f)によって架橋された、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、前記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤(f)と反応したものが挙げられる。
前記反応性官能基は、架橋剤(f)の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤(f)がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤(f)がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、半導体ウエハや半導体チップの回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0228】
前記反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも前記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、前記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、前記反応性官能基を有するものを用いればよい。例えば、反応性官能基として水酸基を有する前記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0229】
反応性官能基を有する前記重合体(b)において、これを構成する構成単位の全量に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~25質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0230】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、保護膜形成用組成物(IV-1)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。
【0231】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0232】
保護膜形成用組成物(IV-1)としては、前記重合体(a1)及び前記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、保護膜形成用組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに前記(a1)を含有することも好ましい。また、保護膜形成用組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0233】
保護膜形成用組成物(IV-1)が、前記重合体(a1)、前記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0234】
保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムの前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量)は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、15~70質量%であることが特に好ましい。前記合計含有量の割合がこのような範囲であることで、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0235】
保護膜形成用組成物(IV-1)が前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、前記重合体(b)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a)の含有量100質量部に対して、3~160質量部であることが好ましく、6~130質量部であることがより好ましい。前記重合体(b)の前記含有量がこのような範囲であることで、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0236】
保護膜形成用組成物(IV-1)は、エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)以外に、目的に応じて、光重合開始剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、着色剤(g)、熱硬化性成分(h)、硬化促進剤(i)、及び汎用添加剤(z)からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)及び熱硬化性成分(h)を含有する保護膜形成用組成物(IV-1)を用いることにより、形成される保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、この保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の強度も向上する。
【0237】
[光重合開始剤(c)]
光重合開始剤(c)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;ベンゾフェノン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のベンゾフェノン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、光重合開始剤(c)としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0238】
保護膜形成用組成物(IV-1)が含有する光重合開始剤(c)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0239】
光重合開始剤(c)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、光重合開始剤(c)の含有量は、エネルギー線硬化性化合物(a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0240】
[充填材(d)]
保護膜形成用フィルムが充填材(d)を含有することにより、保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、この保護膜を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、保護膜形成用フィルムが充填材(d)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
充填材(d)としては、例えば、熱伝導性材料からなるものが挙げられる。
【0241】
充填材(d)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0242】
充填材(d)の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01~20μmであることが好ましく、0.1~15μmであることがより好ましく、0.3~10μmであることが特に好ましい。充填材(d)の平均粒子径がこのような範囲であることで、保護膜の形成対象物に対する接着性を維持しつつ、保護膜の光の透過率の低下を抑制できる。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
【0243】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する充填材(d)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0244】
充填材(d)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する充填材(d)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムの充填材(d)の含有量)は、5~83質量%であることが好ましく、7~78質量%であることがより好ましい。充填材(d)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0245】
[カップリング剤(e)]
カップリング剤(e)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(e)を用いることで、保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0246】
カップリング剤(e)は、エネルギー線硬化性成分(a)、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0247】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(e)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0248】
カップリング剤(e)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(e)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(e)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(d)の樹脂への分散性の向上や、保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(e)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(e)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0249】
[架橋剤(f)]
架橋剤(f)を用いて、上述のエネルギー線硬化性成分(a)やエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)架橋することにより、保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0250】
架橋剤(f)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0251】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味し、その例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
【0252】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0253】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0254】
架橋剤(f)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、エネルギー線硬化性成分(a)又はエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(f)がイソシアネート基を有し、エネルギー線硬化性成分(a)又はエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)が水酸基を有する場合、架橋剤(f)とエネルギー線硬化性成分(a)又はエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)との反応によって、保護膜形成用フィルムに架橋構造を簡便に導入できる。
【0255】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(f)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0256】
架橋剤(f)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、架橋剤(f)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(f)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(f)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(f)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(f)の過剰使用が抑制される。
【0257】
[着色剤(g)]
着色剤(g)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0258】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色等が挙げられる。
【0259】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0260】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する着色剤(g)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0261】
着色剤(g)を用いる場合、保護膜形成用フィルムの着色剤(g)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、着色剤(g)の含有量を調節し、保護膜の光透過性を調節することにより、印字視認性を調節する場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する着色剤(g)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムの着色剤(g)の含有量)は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.4~7.5質量%であることがより好ましく、0.8~5質量%であることが特に好ましい。着色剤(g)の前記含有量が前記下限値以上であることで、着色剤(g)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、着色剤(g)の前記含有量が前記上限値以下であることで、着色剤(g)の過剰使用が抑制される。
【0262】
[熱硬化性成分(h)]
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(h)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0263】
熱硬化性成分(h)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0264】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(h1)及び熱硬化剤(h2)からなる。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0265】
・エポキシ樹脂(h1)
エポキシ樹脂(h1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0266】
エポキシ樹脂(h1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜を用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
【0267】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0268】
エポキシ樹脂(h1)の数平均分子量は、特に限定されないが、保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(h1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~800g/eqであることがより好ましい。
【0269】
エポキシ樹脂(h1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0270】
・熱硬化剤(h2)
熱硬化剤(h2)は、エポキシ樹脂(h1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(h2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0271】
熱硬化剤(h2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(h2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(以下、「DICY」と略記することがある)等が挙げられる。
【0272】
熱硬化剤(h2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(h2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(h2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0273】
熱硬化剤(h2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(h2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0274】
熱硬化剤(h2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(h2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0275】
熱硬化剤(h2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0276】
熱硬化性成分(h)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(h2)の含有量は、エポキシ樹脂(h1)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
【0277】
熱硬化性成分(h)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(h)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(h1)及び熱硬化剤(h2)の総含有量)は、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の含有量100質量部に対して、1~500質量部であることが好ましい。
【0278】
[硬化促進剤(i)]
硬化促進剤(i)は、保護膜形成用フィルムの硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(i)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0279】
硬化促進剤(i)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
硬化促進剤(i)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムの硬化促進剤(i)の含有量は、特に限定されず、併用する成分に応じて適宜選択すればよい。
【0280】
[汎用添加剤(z)]
汎用添加剤(z)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0281】
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(z)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
汎用添加剤(z)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(z)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0282】
[溶媒]
保護膜形成用組成物(IV-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する保護膜形成用組成物(IV-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
保護膜形成用組成物(IV-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0283】
保護膜形成用組成物(IV-1)が含有する溶媒は、保護膜形成用組成物(IV-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン又は酢酸エチル等であることが好ましい。
【0284】
<<保護膜形成用組成物の製造方法>>
保護膜形成用組成物(IV-1)等の保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0285】
◎半導体装置の製造方法
本発明の半導体装置の製造方法は、上述の本発明の保護膜付き半導体チップの製造方法により、保護膜付き半導体チップを得た後、前記保護膜付き半導体チップを、前記支持シートから引き離す引き離し工程を有する。
【0286】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、ピンによる突き上げを行って保護膜付き半導体チップを支持シートから引き離したとしても、保護膜でのピンによる突き上げ痕の残存を抑制できる。これは、半導体チップの裏面に設けられている保護膜の弾性率が高いことによる。
すなわち、本発明の半導体装置の製造方法は、前記引き離し工程において、前記保護膜付き半導体チップを、ピンによる突き上げを行って前記支持シートから引き離すのに好適なものである。
【0287】
図4は、本発明の半導体装置の製造方法における、引き離し工程の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。ここでは、図1に示す、加工後の積層構造体101’を用いた場合について説明する。なお、図4では、加工後の積層構造体101’に関わる構成のみ、断面表示している。
【0288】
前記引き離し工程においては、例えば、図4に示すように、半導体装置の製造装置における突き上げ部(図示略)からピン(突起)70を突出させ、ピン70の先端部により、支持シート10に対して、その基材11側から力を加える。このように、ピン70によって、支持シート10越しに保護膜付き半導体チップ8に力を加えることで、保護膜付き半導体チップ8突き上げる。さらに、半導体装置の製造装置における引き上げ手段71によって、保護膜付き半導体チップ8を引き上げることにより、保護膜付き半導体チップ8を支持シート10から引き離す(ピックアップする)。ここでは、保護膜付き半導体チップ8の引き上げ方向を矢印IIで示している。引き上げ手段71としては、例えば、真空コレットが挙げられる。
【0289】
ピン70の突出量(突き上げ量)、突出速度(突き上げ速度)、突出状態の保持時間(持ち上げ待ち時間)等の突き上げ条件は、適宜調節すればよく、特に限定されない。1個の保護膜付き半導体チップ8に対して突出させるピン70の数は特に限定されず、例えば、1本でもよいし、2本以上の複数本でもよく、適宜選択すればよい。
【0290】
本工程においては、ピン70により支持シート10越しに力を加えられる保護膜131’は、弾性率が高い。したがって、保護膜131’の支持シート10側の面131b’においては、ピン70による突き上げ痕の残存が抑制される。
【0291】
また、保護膜131’の弾性率が高いため、保護膜付き半導体チップ8は、その収納時において、収納部に対する、保護膜131’による付着が抑制される。
【0292】
ここでは、図1に示す加工後の積層構造体101’を用いた場合の引き離し工程について説明したが、例えば、図3に示すものなど、その他の加工後の積層構造体を用いた場合も、同様の方法で引き離し工程を行うことができる。
【0293】
本発明の半導体装置の製造方法においては、以降は従来法と同様の方法で、半導体装置を製造すればよい。例えば、引き離された(ピックアップされた)保護膜付き半導体チップを用い、これを基板の回路面にフリップチップ接続した後、半導体パッケージとする。そして、この半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置を作製すればよい。
【実施例
【0294】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0295】
保護膜形成用組成物の製造に用いた成分を以下に示す。
[エネルギー線硬化性成分(a)]
(a2)-1:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R-684」、2官能紫外線硬化性化合物、分子量304)
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
(b)-1:アクリル酸メチル(以下、「MA」と略記する)(85質量部)及びアクリル酸-2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」と略記する)(15質量部)を共重合してなるアクリル系樹脂(重量平均分子量400000、ガラス転移温度8℃)。
[光重合開始剤(c)]
(c)-1:2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン(BASF社製「Irgacure(登録商標)369」)
(c)-2:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(BASF社製「Irgacure(登録商標)OXE02」)
[充填材(d)]
(d)-1:シリカフィラー(アドマテックス社「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾されたもの、平均粒子径0.5μm)
[カップリング剤(e)]
(e)-1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(シランカップリング剤、信越化学工業社製「KBM403」、メトキシ当量12.7mmol/g、分子量236.3)
[着色剤(g)]
(g)-1:フタロシアニン系青色色素(Pigment Blue 15:3)32質量部と、イソインドリノン系黄色色素(Pigment Yellow 139)18質量部と、アントラキノン系赤色色素(Pigment Red 177)50質量部とを混合し、前記3種の色素の合計量/スチレンアクリル樹脂量=1/3(質量比)となるように顔料化して得られた顔料。
[熱硬化性成分(h)]
・エポキシ樹脂(h1)
(h1)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER828」、エポキシ当量184~194g/eq)
(h1)-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER1055」、エポキシ当量800~900g/eq)
(h1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量255~260g/eq)
・熱硬化剤(h2)
(h2)-1:ジシアンジアミド(熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、ADEKA社製「アデカハードナーEH-3636AS」、活性水素量21g/eq)
[硬化促進剤(i)]
(i)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
【0296】
基材の伸縮率は、以下の方法で測定した。
すなわち、まず基材を、短辺がCD方向、長辺がMD方向となるように、短辺22mm、長辺110mmの大きさに裁断して、これをMD方向の伸縮率測定用の試験片とした。長さ110mmのうち、長さ方向中央部の100mmを測定間距離として試験片にマーキングし、この試験片の長さ方向の両端部(端部の5mm部分)のそれぞれに、質量2.2gのクリップを取り付けた。
【0297】
次いで、一方のクリップを使用して、前記試験片をオーブン内に吊り下げた。このときの試験片に対する荷重は、下側のクリップの質量分、すなわち0.1g/mmであった。前記オーブン内で、130℃、30%RH(相対湿度)の条件で、試験片を2時間加熱した後、オーブン内から試験片を取り出し、23℃まで冷却した。次いで、試験片のマーキングした測定間距離を再度測定し、下記式に従って、基材のMD方向の伸縮率(%)を算出した。
伸縮率(%)=(加熱後の測定間距離/加熱前の測定間距離)×100
【0298】
別途、基材を、短辺がMD方向、長辺がCD方向となるように、短辺22mm、長辺110mmの大きさに裁断して、これをCD方向の伸縮率測定用の試験片とした。この試験片を用い、上記のMD方向の伸縮率測定用の試験片の場合と同様の方法で、基材のCD方向の伸縮率(%)を算出した。
【0299】
基材の引張弾性率は、以下の方法で測定した。
すなわち、まず基材を、15mm×140mmの大きさに裁断して、これを試験片とした。
次いで、JIS K7127:1999に準拠して、前記試験片の23℃における引張弾性率(ヤング率)を測定した。具体的には、前記試験片を、引張試験機(株式会社島津製作所製「オートグラフAG-IS 500N」)に設置して、チャック間距離を100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、引張弾性率(MPa)を測定した。引張弾性率の測定は、基材のMD方向及びCD方向の両方について行った。
【0300】
<保護膜形成用複合シートの製造>
[製造例1]
(保護膜形成用組成物(IV-1)の製造)
エネルギー線硬化性成分(a2)-1、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)-1、光重合開始剤(c)-1、光重合開始剤(c)-2、充填材(d)-1、カップリング剤(e)-1及び着色剤(g)-1を、これらの含有量(固形分量、質量部)が表1に示す値となるようにメチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、固形分濃度が50質量%である保護膜形成用組成物(IV-1)を調製した。なお、表1中の含有成分の欄の「-」との記載は、保護膜形成用組成物(IV-1)がその成分を含有していないことを意味する。
【0301】
(保護膜形成用フィルムの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されてなる剥離フィルムの、前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(IV-1)を塗工し、120℃で3分乾燥させることにより、厚さが15μmであるエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムを作製した。
【0302】
(粘着剤組成物(I-2)の製造)
アクリル系重合体(100質量部、固形分)、3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネートD110N」)(6.6質量部、固形分)、及び光重合開始剤(2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、BASF社製「Irgacure(登録商標)127」)(3.0質量部、固形分)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有する、固形分濃度が30質量%のエネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)を調製した。前記アクリル系重合体は、アクリル酸-2-エチルヘキシル(以下、「2EHA」と略記する)(80質量部)、及びアクリル酸-2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」と略記する)(20質量部)を共重合してなるプレ共重合体に、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(21.4質量部、HEA中の水酸基100モル%に対してイソシアネート基が80モル%となる量)を反応させて得られた、重量平均分子量1100000のエネルギー線硬化性アクリル系重合体である。
【0303】
(支持シートの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されてなる剥離フィルムの、前記剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物(I-2)を塗工し、120℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ5μmのエネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。
次いで、この粘着剤層の露出面に、柔軟性ポリプロピレン製フィルム(厚さ80μm)を貼り合わせることで、支持シートを製造した。
【0304】
なお、ここで用いた柔軟性ポリプロピレン製フィルムの、MD方向の伸縮率は230%であり、CD方向の伸縮率は130%であった。また、MD方向の引張弾性率は160MPaであり、CD方向の引張弾性率は155MPaであった。
【0305】
(保護膜形成用複合シートの製造)
次いで、この支持シートの粘着剤層上の前記剥離フィルムを取り除き、露出した粘着剤層の表面に、上記で得られた保護膜形成用フィルムの露出面を貼り合わせて、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムが、これらの厚さ方向においてこの順に積層されてなる保護膜形成用複合シートを作製した。得られた保護膜形成用複合シートの構成を表2に示す。
【0306】
[製造例2]
(保護膜形成用組成物の製造)
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)-1、充填材(d)-1、カップリング剤(e)-1、着色剤(g)-1、エポキシ樹脂(h1)-1、エポキシ樹脂(h1)-2、エポキシ樹脂(h1)-3、熱硬化剤(h2)-1及び硬化促進剤(i)-1を、これらの含有量(固形分量、質量部)が表1に示す値となるようにメチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、固形分濃度が50質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物を調製した。
【0307】
(保護膜形成用フィルムの製造)
保護膜形成用組成物(IV-1)に代えて、上記で得られた熱硬化性の保護膜形成用組成物を用いた点以外は、製造例1と同じ方法で、熱硬化性の保護膜形成用フィルムを製造した。
【0308】
(粘着剤組成物及び支持シートの製造)
製造例1と同じ方法で、粘着剤組成物及び支持シートを製造した。
【0309】
(保護膜形成用複合シートの製造)
次いで、この支持シートの粘着剤層上の前記剥離フィルムを取り除き、露出した粘着剤層の表面に、上記で得られた熱硬化性の保護膜形成用フィルムの露出面を貼り合わせて、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムが、これらの厚さ方向においてこの順に積層されてなる保護膜形成用複合シートを作製した。保護膜形成用複合シートの構成を表2に示す。
【0310】
[製造例3]
(保護膜形成用組成物及び保護膜形成用フィルムの製造)
製造例2と同じ方法で、保護膜形成用組成物及び保護膜形成用フィルムを製造した。
【0311】
(粘着剤組成物(I-4)の製造)
アクリル系重合体(100質量部、固形分)、及び3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネートD110N」)(20質量部、固形分)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有する、固形分濃度が30質量%の非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)を調製した。前記アクリル系重合体は、2EHA(60質量部)、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と略記する)(30質量部)、及びHEA(10質量部)を共重合してなる、重量平均分子量が600000のものである。
【0312】
(支持シートの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されてなる剥離フィルムの、前記剥離処理面に、上記で得られた非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)を塗工し、120℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ5μmの非エネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。
次いで、この粘着剤層の露出面に、耐熱性ポリプロピレン製フィルム(厚さ80μm)を貼り合わせることで、支持シートを製造した。
【0313】
なお、ここで用いた耐熱性ポリプロピレン製フィルムの、MD方向の伸縮率は98.2%であり、CD方向の伸縮率は99.5%であった。また、MD方向の引張弾性率は470MPaであり、CD方向の引張弾性率は490MPaであった。
【0314】
(保護膜形成用複合シートの製造)
次いで、この支持シートの粘着剤層上の前記剥離フィルムを取り除き、露出した粘着剤層の表面に、上記で得られた保護膜形成用フィルムの露出面を貼り合わせて、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムが、これらの厚さ方向においてこの順に積層されてなる保護膜形成用複合シートを作製した。得られた保護膜形成用複合シートの構成を表2に示す。
【0315】
[実施例1]
<保護膜付き半導体チップの製造>
上述の製造方法(1)により、以下に示す手順により、保護膜付き半導体チップを製造した。
【0316】
(積層構造体形成工程)
回路形成面にバックグラインドテープが貼付され、前記回路形成面とは反対側の裏面が#2000研削面とされた12インチシリコンウエハ(厚さ300μm)に対して、前記研削面側から、レーザーソー(ディスコ社製「DFL7360」)を用いて、波長1064nmのレーザー光を照射し、シリコンウエハの内部に改質層を形成した。
次いで、テープマウンター(リンテック社製「ADWILL RAD-2700」)を用いて、製造例1で得られた保護膜形成用複合シートの保護膜形成用フィルムを70℃に加熱しながら、この保護膜形成用フィルムを介して保護膜形成用複合シートを前記シリコンウエハの研削面に貼付することで、積層構造体を形成した。
【0317】
(エキスパンド工程)
上記で得られた積層構造体にリングフレームをマウントした後、バックグラインドテープを取り除き、保護膜形成用フィルムを0℃で冷却しながら、エキスパンダー(ディスコ社製「DDS2300」)を用いて、突き上げ速度20mm/sec、突き上げ量20mmの条件でテーブルを突き上げることで、保護膜形成用フィルムの表面方向に積層構造体をエキスパンドした。これにより、保護膜形成用フィルムを切断するとともに、改質層の部位においてシリコンウエハを分割し、大きさが3mm×3mmの複数個の半導体チップを得た。
【0318】
(保護膜形成工程)
切断後の前記保護膜形成用フィルムに、照度230mW/cm、光量170mJ/cmの条件で紫外線を照射して保護膜を形成し、保護膜付き半導体チップとした。
【0319】
<支持シート及び保護膜付き半導体チップの評価>
(ヒートシュリンク性(支持シートの復元性))
上述のエキスパンド工程後、ドライヤーを用いて、温度220℃、回転速度5mm/°の条件で、熱風を支持シートの周縁部に吹き付けることで、この周縁部を加熱した。次いで、この加熱後の支持シートの周縁部を目視観察し、エキスパンドによって支持シートにおいて生じた弛みが、加熱による支持シートの収縮によって解消されているか否かを確認し、下記基準に従って評価した。結果を表2に示す。
○:弛みが解消されている。
×:弛みが解消されず、エキスパンド後の保護膜付き半導体チップ等の搬送又は収納が不可能である。
【0320】
(保護膜でのピンによる突き上げ痕の残存抑制)
上述のエキスパンド工程、及びヒートシュリンク性の評価時において、いずれも問題が認められなかった、加工後の積層構造体を用い、以下に示す手順により、保護膜付き半導体チップのピックアップを試みた。
すなわち、プッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング社製「MODEL-RE」)に、突き上げに用いるピンとして5号ニードルをセットした装置を用いて、突き上げ量を1.5mmとして、支持シート越しに保護膜付き半導体チップを突き上げた。そして、保護膜を目視観察し、ニードル痕の有無を確認し、下記基準に従って評価した。結果を表2に示す。
○:ニードル痕がない。
×:ニードル痕がある。
【0321】
[実施例2]
<保護膜付き半導体チップの製造>
(積層構造体形成工程)
実施例1と同じ方法で、積層構造体を形成した。
【0322】
(保護膜形成工程)
上記で得られた積層構造体の保護膜形成用フィルムに、照度230mW/cm、光量170mJ/cmの条件で紫外線を照射して、保護膜を形成した。
【0323】
(エキスパンド工程)
先に説明した、保護膜形成用フィルムを備えた積層構造体に代えて、上記で得られた、保護膜を形成後の積層構造体を用い、エキスパンド時に保護膜形成用フィルムを0℃で冷却するのに代えて、保護膜の温度を30℃とした点以外は、実施例1と同じ方法で、保護膜を切断するとともに、改質層の部位においてシリコンウエハを分割し、大きさが3mm×3mmの複数個の半導体チップとし、保護膜付き半導体チップを得た。
【0324】
<支持シート及び保護膜形成用フィルム付き半導体チップの評価>
(ヒートシュリンク性(支持シートの復元性)、及び保護膜形成用フィルムでのピンによる突き上げ痕の残存抑制)
実施例1と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0325】
[比較例1]
<保護膜形成用フィルム付き半導体チップの製造>
図6を参照して説明した従来法により、以下に示す手順により、保護膜形成用フィルム付き半導体チップを製造した。
【0326】
製造例1で得られた保護膜形成用複合シートに代えて、製造例2で得られた保護膜形成用複合シートを用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、積層構造体を形成した。
次いで、実施例1と同じ方法で、得られた積層構造体をエキスパンドし、保護膜形成用フィルムを切断するとともに、改質層の部位においてシリコンウエハを分割し、大きさが3mm×3mmの複数個の半導体チップを得た。
以上により、保護膜形成用フィルム付き半導体チップを得た。
【0327】
<支持シート及び保護膜形成用フィルム付き半導体チップの評価>
(ヒートシュリンク性(支持シートの復元性)、及び保護膜形成用フィルムでのピンによる突き上げ痕の残存抑制)
実施例1と同じ方法で評価した。なお、本比較例では、保護膜形成用フィルムを硬化させていないため、ピンによる突き上げ痕の残存抑制については、保護膜ではなく、保護膜形成用フィルムで行った。結果を表2に示す。
【0328】
[比較例2]
<保護膜付き半導体チップの製造>
図5を参照して説明した従来法により、以下に示す手順により、保護膜付き半導体チップを製造した。
【0329】
製造例1で得られた保護膜形成用複合シートに代えて、製造例3で得られた保護膜形成用複合シートを用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、積層構造体を形成した。
次いで、得られた積層構造体を、130℃で2時間加熱することで、保護膜形成用フィルムを硬化させて、保護膜を形成した。
次いで、保護膜形成用フィルムを硬化させる前の積層構造体に代えて、この保護膜形成用フィルムを硬化させた後の積層構造体を用いた点以外は実施例1と同じ方法で、この積層構造体をエキスパンドし、保護膜を切断するとともに、改質層の部位においてシリコンウエハを分割し、大きさが3mm×3mmの複数個の半導体チップを得た。
以上により、保護膜付き半導体チップを得た。
【0330】
<支持シート及び保護膜付き半導体チップの評価>
(ヒートシュリンク性(支持シートの復元性)、及び保護膜でのピンによる突き上げ痕の残存抑制)
実施例1と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。
【0331】
(支持シートの耐熱性)
積層構造体にリングフレームをマウントした後で、かつ上述の加熱による保護膜形成用フィルムの硬化前の段階で、保護膜形成用複合シートの配置位置を記録した。次いで、上述の加熱による保護膜形成用フィルムの硬化(保護膜の形成)を行い、保護膜形成用フィルムを冷却した後で、かつ積層構造体をエキスパンドする前の段階で、保護膜形成用複合シートの配置位置を記録した。そして、これら配置位置の記録から、保護膜形成用フィルムの硬化に伴う、保護膜形成用複合シートの沈み込み量(弛み量)を算出し、下記基準に従って評価した。結果を表2に示す。なお、表2中の評価結果の欄における「-」との記載は、その項目が未評価であることを意味する。
○:沈み込み量が0.5mm未満である。
×:沈み込み量が0.5mm以上である。
【0332】
【表1】
【0333】
【表2】
【0334】
上記結果から明らかなように、実施例1~2においては、保護膜形成用フィルムを熱硬化させず、エネルギー線照射で硬化させているので、硬化直後には支持シートに弛みが生じていなかった。一方、エキスパンド工程によって支持シートで生じた弛みは、上述の支持シート周縁部の加熱により解消されており、ヒートシュリンク性(支持シートの復元性)は良好であった。これは、柔軟性の基材を用いているためである。また、実施例1~2においては、保護膜の弾性率が高いことにより、ピンによる突き上げ痕の残存が抑制されていた。そして、実施例1においては、エキスパンド工程後、保護膜形成用フィルムは目的とする箇所で十分に切断され、半導体ウエハも良好に分割されていた。実施例2においては、エキスパンド工程後、保護膜は目的とする箇所で十分に切断され、半導体ウエハも良好に分割されていた。なお、実施例1~2では、保護膜形成用フィルムの熱硬化を行わないため、支持シート(基材)は耐熱性を有する必要性はなく、支持シートの耐熱性については未評価である。
【0335】
これに対して、比較例1においては、保護膜形成用フィルムを熱硬化させていないため、エキスパンド前の段階では、支持シートに弛みが生じていなかった。また、実施例1の場合と同様に、柔軟性の基材を用いているため、ヒートシュリンク性は良好であった。しかし、保護膜形成用フィルムを硬化させず、保護膜を形成しなかったため、弾性率が低い保護膜形成用フィルムにおいて、ピンによる突き上げ痕の残存を抑制できなかった。比較例1においては、エキスパンド後、保護膜形成用フィルムは目的とする箇所で十分に切断され、半導体ウエハも良好に分割されていた。なお、比較例1では、実施例1の場合と同様に、保護膜形成用フィルムの熱硬化を行わないため、支持シート(基材)は耐熱性を有する必要性はなく、支持シートの耐熱性については未評価である。
【0336】
比較例2においては、保護膜形成用フィルムを熱硬化させているが、耐熱性の基材を用いているため、硬化直後には支持シートに弛みが生じていなかった。一方、エキスパンドによって支持シートで生じた弛みは、上述の支持シート周縁部の加熱により解消されておらず、ヒートシュリンク性は不良であった。そして、これにより、以降の工程を行うことができず、保護膜でのピンによる突き上げ痕の残存抑制については、未評価である。なお、比較例2では、支持シートの耐熱性は良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0337】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0338】
10・・・支持シート、11・・・基材、11a・・・基材の一方の表面、12・・・粘着剤層、12a・・・粘着剤層の一方の表面、13・・・保護膜形成用フィルム、13a・・・保護膜形成用フィルムの一方の表面、131・・・切断後の保護膜形成用フィルム、131’,132・・・保護膜、132a・・・保護膜の表面、132’・・・切断後の保護膜、101・・・積層構造体、102・・・保護膜を形成後の積層構造体、8・・・半導体チップ、81’・・・半導体ウエハの改質層、8’・・・半導体ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6