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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】一体型メンブレンフィルター構造体
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/06 20060101AFI20220608BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20220608BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
B01D63/06
B01D69/10
B01D69/12
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020529634
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 FR2018053044
(87)【国際公開番号】W WO2019106306
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】1761432
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】310009890
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ドゥ ルシェルシェ エ デトゥードゥ ユーロペン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン パンソン
(72)【発明者】
【氏名】ポール ルプレー
(72)【発明者】
【氏名】マルテ メーラー
(72)【発明者】
【氏名】ロナルト ノイフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ファーバー
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/177476(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/097661(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/103473(WO,A1)
【文献】特表2018-505770(JP,A)
【文献】特表2017-521235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を有する、液体をフィルター処理するための一体型のメンブレンタイプのフィルター構造体:
- 透過率Kの多孔性無機材料から形成されている支持体、前記支持体は、主軸、上流基部、下流基部、内部部分を画定している周縁壁を有する、チューブ状の全体的な形状を有している、
- 前記支持体の前記内部部分に形成されている、前記支持体の前記主軸に平行な、複数の流路、前記流路は、多孔性無機材料でできている内部壁によって、互いに分離されている、
- すべての前記流路は、前記液体が循環する方向において、それらの上流側端部又は下流側端部において開かれており、
- フィルター処理された液体は、前記周縁壁を介して除去され、
- 透過率K及び平均厚みtのメンブレンが、前記流路の内部表面を覆っており、
前記支持体の透過率K 及び前記メンブレンの透過率K は、K=(PO ×D 50 )/[180×(1-PO) ]によって定義され、POは、開放細孔率であり、D 50 は、細孔のメジアン直径であり、
前記支持体のPO及びD 50 は、規格ISO15901-1.2005パート1に従って、水銀ポロシメトリーによって決定され、前記メンブレンの開放細孔率及びD 50 は、走査型電子顕微鏡を用いて決定され、
前記フィルター構造は、その外部水力学的直径φが、下記の関係(1)を満たすことを特徴とする:
φ=α×[A+B×log10(K×t/K)] (1)
ここで、αは、0.85と1.15との間の係数であり、かつ、
【数1】
であり、
は、前記流路の平均の水力学的直径であり、
intは、前記流路の間の前記内部壁の最小厚みであり、
extは、フィルターの前記周縁壁の最小厚みであり、
、φ、eint、eext、及びDは、メートルで表され、かつK及びKは、mで表される。
【請求項2】
比K×t/Kが、0.01mと10mとの間である、請求項1に記載のフィルター構造体。
【請求項3】
前記支持体の前記外部水力学的直径φが、30mmと100mmとの間である、請求項1又は2に記載のフィルター構造体。
【請求項4】
前記流路の平均の水力学的直径dが、0.5mmと7mmとの間である、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項5】
前記支持体の前記内部壁の最小厚みeintが、0.3mmと3mmとの間である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項6】
前記支持体が、正方形、六角形、又は円形の基部を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項7】
すべての前記流路が、同一の水力学的直径を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項8】
少なくとも2つの前記流路が、異なる水力学的直径を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項9】
前記フィルターの前記周縁壁の最小厚みeextが、0.5mmと4mmとの間であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項10】
前記支持体の透過率K、1.0×10-14と1.0×10-11との間であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項11】
前記メンブレンの透過率K、1.0×10-19と1.0×10-14との間であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項12】
前記メンブレンの平均厚みtが、0.1μm~300μmの範囲である、ことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項13】
前記メンブレンが、10%と70%との間である開放細孔率を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項14】
前記支持体の細孔のメジアン直径が、20μmと50μmとの間であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項15】
前記流路が、円形又は多角形の断面を有することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
【請求項16】
下記を有する、フィルター処理装置:
請求項1~15のいずれか一項に記載の前記フィルター構造体、
- 前記フィルター構造体の周りを封止する包囲体、この包囲体は、下記を有する:
- フィルター処理される液体を導入するための、前記フィルター構造体の前記上流面において前記流路に流体的に接続している、手段、
- 前記フィルター構造体の周縁において透過液を除去するための、前記フィルター構造体の前記周縁壁に流体的に接続している、手段、
- 前記フィルター構造体の前記下流面における残留分又は濃縮物を除去するための、手段。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のフィルター構造体、又は、請求項16に記載のフィルター処理装置の、液体の精製及び/又は分離のための、化学、医薬、食品、若しくは農食品の産業における、バイオリアクターにおける、又は、シェールからの石油若しくはガスの抽出における、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機材料でできており液体をフィルター処理することが意図されているフィルター構造体の分野、特には、液体、より特には水、特にはシェールからの石油又はガスの抽出によってもたらされる製造水から、粒子又は分子を分離するためのメンブレンでコーティングされている多孔性の構造体の分野に関する。本発明は、また、種々の工業的方法において液体を精製及び/又は分離するための、化学、医薬、食品、又は農食品産業における用途も有する。
【背景技術】
【0002】
種々の液体、特には汚染された水をフィルター処理する、セラミック、あるいはメンブレンを用いるフィルターが、知られている。
【発明の概要】
【0003】
フィルターは、一般には、チューブ状の支持体から製造され、この支持体は、多孔性無機材料でできており、支持体の軸に平行な長さ方向の流路を画定する壁から、形成されている。流路の内部表面は、分離メンブレンで覆われている。このメンブレンは、材料、通常は無機材料、を含有し、この材料の性質及び形状が、混入している分子又は粒子のサイズが上述のメンブレンの細孔のメジアン径の程度である限りは、それらを押し止めることに適している。
【0004】
正面方向フィルター処理として知られる第1の技術が知られており、この技術は、処理される液体を、フィルター媒体の表面に垂直な方向で、フィルター媒体に通過させることを含む。正面方向フィルターは、典型的には、それらの正面に差し込まれている流路部分、及び、それらの背面に差し込まれている流路部分を有しており、そのようにして、フィルター処理される液体が通過するフィルター壁によって分離されている流入流路及び流出流路が、形成されている。この液体は、壁及びメンブレンを超えて通過するときに、その分子又は粒子を失い、そのようにして、流入流路に蓄積される残留分を形成し、一方で、精製された液体が、流出流路を介して、又は、フィルターの周縁が妨げられていない場合には、フィルターの周縁部を介して部分的に、外に出る。この技術は、粒子の蓄積及びフィルター媒体の表面におけるケーキの形成によって、制限される。通常は、流入流路は、フィルターの上流面(又は正面)において、フィルター処理される液体の流路に、フィルター処理される液体が循環する方向に対して、開いている。これらの流入流路は、液体の循環の方向において、上述のフィルターの下流面(又は対向面)において、塞がれていることができる。他方では、それを介してフィルター処理された液体が除去される流路、又は流出流路が、フィルターの上流面において塞がれていてよく、かつ、フィルターの下流面において開いていてよい。
【0005】
本発明が同様に関係している別の技術によれば、接線方向フィルター処理(タンジェンシャルフィルター処理)が用いられ、この方法では、他方で、メンブレンの表面における、液体の長さ方向の循環に起因して、粒子の蓄積を制限することができる。粒子は、循環する流れに保持され、それに対して、液体は、圧力差の影響下で、メンブレンを通過することができる。この技術は、性能及びフィルター処理のレベルにおいて、安定性を確保する。これは、粒子及び/又は分子を非常に多く有している液体をフィルター処理するために、より特に推奨されている。
【0006】
したがって、接線方向フィルター処理の利点は、実施の容易性、上述のフィルター処理を実施するためにその多孔度が適合されているメンブレンの使用に起因する信頼性、及び、連続的な作動である。
【0007】
接線方向フィルター処理は、助剤をほとんど又は全く必要とせず、2つの分離された液体を供給する。これらの液体は、有益な使用に供されうる:すなわち、(残留分、リテンテートとしても言及される)濃縮物、及び、(透過液、パーミエートとしても言及される)ろ液である。これは、クリーンな方法であり、環境にやさしい方法である。
【0008】
そのようなフィルターのフィルター処理原理及び効率は、多孔性の壁を超えて液体を通過させることを可能にするための、構造体内における圧力差の適用に、依存している。しかしながら、液体の流れ抵抗が、得られるろ液の流れを制限する。
【0009】
そのようなメンブレンフィルターの機能特性を改善するために、種々の形状が提案されている。例えば、米国特許第4069157号は、複数流路構造体を開示しており、この構造体の表面領域、流路密度、及び支持体の多孔度が、最適化されており、それによって、フィルターのサイズ(すなわち直径)を最小化しつつ、同時に、流れを増加させる。フィルターの流れ抵抗を低減するために、スロット又は排出流路に異なる形状を備えさせることが、提案されている(米国特許第4781831号明細書、米国特許第5855781号明細書、米国特許第6077436号明細書、欧州特許第1457243号明細書、欧州特許第1607129号明細書)。スロットは、米国特許出願公開第2001/0020756号明細書によってさらに具体的に提案されているように、硬化後又は押出の間に、フィルターを機械処理することによって、作ることができる。
【0010】
多孔性の壁を通る液体の通過に起因する流れ抵抗性の問題は、最も中心側の流路を通過する液体が、フィルターの最も周縁側の流路を通過する液体よりも、はるかに効率悪くフィルター処理される、大きい直径の接線方向フィルターの場合に、特に生じる。
【0011】
この問題を緩和するために、国際公開第2017/103473号は、排出スロットが構造体の中心にまで形成されており、かつ特定の流路が塞がれており、それによりフィルターの中央部分からの透過液がフィルターの周縁の方向でさらに容易に回収され得るようになっている構造体を、記載している。この公報に係るフィルターは、本発明とは異なり、液体を回収し、かつその液体を、フィルターにおいて側方的に形成されたスロットを介して抽出するための、除去流路を得るために、流路のうちのいくつかを、それらの上流側末端及び下流側末端の両方において塞ぐ必要がある(図1参照)。
【0012】
国際公開第2017/085551号から知られているのが、好ましくは実質的に平行に配置されている複数の一体型セラミックハニカムフィルター要素のアセンブルから製造されており、それぞれの要素が、複数の平行ダクトを有している、フィルター処理装置である。このような構成は、用いられるフィルター構造体の個々のサイズを制限することを可能とし、そのため、それぞれのユニット内における最大限のフィルター処理効率を保証することを可能にする。そのような構成によって、機械処理に頼ることなく大きいサイズのフィルターを得ることが可能となり、究極的には、そこを介して透過液が除去される周縁表面領域を、増加させることが可能となる。しかしながら、そのような構成は、多くの欠点を有する。まず何よりも、この装置は、比較的多くの数の封止剤を必要とし、かつ、フィルター処理される液体が透過液へ漏洩又は移動するリスクが増加するという影響を有する。さらには、同一のサイズ(又は同一の合計体積)を有する一体型のフィルター構造体と比較して、複数の小さい個々のフィルター構造体をアセンブルすることに依存しているそのような解決策は、上述のユニットそれぞれの間に必要とされる空間に起因して、フィルターの全体的なフィルター体積における大幅な損失をもたらす。さらには、アセンブルされたフィルター又は複数フィルター要素の解決策のコストは、一体型フィルターのコストよりもはるかに高いことが証明されている。
【0013】
国際公開第2015/177476号及び国際公開第2016/097661号は、チューブ状形状の接線方向フィルターを記載しており、これは、一群の平行流路を区切っている要素を有しており、平行流路の内のいくつかが、分離層で覆われている。しかしながら、下記の例示において報告しているように、出願人の会社は、これらの公報において提供されているデータに基づいて、これらの公報に記載されている要素の直径は、最終的に得られるフィルターの最高の性能を得るためには最適ではないことを、明らかに示すことができた。
【0014】
したがって、現在、液体の接線方向フィルター処理のためのメンブレンを有する一体型のフィルター構造体、すなわち、単一の多孔性支持体を有しており、この支持体の壁にフィルターメンブレンが適用されているフィルター構造体であって、最大のフィルター処理効率を有しており、すなわち、支持体の壁及びメンブレンの同一サイズ、及び同一の本質的な特徴に関して最適化されておりかつ最大化されているろ液の流れを有する、フィルター構造体が、必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、共通のフィルター構造体の全体図を示す。
図2図2は、本発明に従って計測されるパラメータの計測のやり方を説明する、フィルター構造体の上流面の図である。
図3図3は、流入流路及び流出流路が円状の断面である、フィルター処理フィルターの上流面の正面図である。
図4図4は、本発明に係るフィルターの正面の完全な構成を描写している。この図では、寸法はmmで表現される。
図5図5は、本発明に係るフィルターの正面の完全な構成を描写している。この図では、寸法はmmで表現される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一体型の構造体によって意味されているのは、フィルター処理される液体の全てを、1つのフィルター内で処理することを可能にする単一の多孔性支持体から形成されている、構造体である。対照的に、非一体型又は複数要素フィルターは、複数の支持体を有する複数体から形成されていることができ、したがって、それぞれの支持体は、別個のフィルター構造体を構成しており、液体のフィルター処理は、部分的に、これらのユニットそれぞれにおいて行われる。国際公開第2017/085551号は、このような複数要素フィルターを記載している。
【0017】
特には、出願人の会社は、このような方法でのろ液の流れの最適化は、一体型フィルター構造体を形作っている種々の要素の統合された適合に依存していることを見出した。換言すると、最大限のフィルター処理効率を得るためには、支持体の物理的特性とメンブレンの物理的特性とが一緒に調節される必要があるということが、見出された。
【0018】
したがって、フィルターの幾何学的な特徴のみを考慮している種々の構成を提案している従来の解決策とは異なり、本発明は、メンブレンの一定の本質的な特徴と、上述の幾何学的な特徴との間の相関関係を確立するという原則に依拠しており、それによって、フィルター構造体の最適な構成を決定する。そのような相関関係は、これまでに記載されたことがない。
【0019】
したがって、本件発明者らは、同等のサイズに関して、複数要素構造体、すなわちフィルター要素を複数有する構造体と比較して、一体型の構造体、又は接線方向フィルター単一要素の、フィルター処理された透過液の流れを、最大化することが可能であったことを、見出した。
【0020】
さらに具体的には、本件発明者らは、支持体及びメンブレンの幾何学特性及び物理特性を考慮することによって決定することができる、一体型フィルター構造体の最適な直径があることを見出し、その下では、一体型の解決策が、複数要素の解決策よりも良好に作動することを見出した。したがって、本発明を適用することによって、一体型のフィルター構造体が、流れの観点において最適な解決策であり、一方で同時に、複数の要素をアセンブルすることから得られるフィルターよりも複雑性が低くかつ実施が高価でないままである、定義域を、選択することが可能となる。
【0021】
さらに具体的には、本発明は、下記を有する、接線方向でフィルター処理される液体のための一体型メンブレンタイプのフィルター構造体に関する:
- 透過率Kの多孔性無機材料から形成される支持体、この支持体は、主軸、上流基部、下流基部、内部部分を画定する周縁壁、を有する、チューブ状の全体的な形状を有しており、
- 支持体の内部部分に形成されている、支持体の主軸に平行な、複数の流路、この流路は、多孔性無機材料でできている内部壁によって、互いに分離されている、
- 流路は、上述の液体が循環する方向において、それらの上流側端部又は下流側端部において開かれており、有利には、上流側端部及び下流側端部において開かれており、
- フィルター処理された液体は、上述の周縁壁を介して除去され、
- 透過率K及び平均厚tのメンブレンが、流路の内部表面を覆っており、
上述のフィルター構造体の外部水力学的直径φが、下記の関係(1)を満たすことを、特徴とする:
φ=α×[A+B×log10(K×t/K)] (1)
αは、0.85と1.15との間の係数であり、かつ、
【0022】
【数1】
【0023】
であり、
は、流路の平均の水力学的直径であり、
intは、流路の間の内部壁の最小厚みであり、
extは、フィルターの周縁壁の最小厚みであり、
、φ、eint、eext、及びDは、メートルで表され、かつK及びKは、mで表される。
【0024】
上述の式において、下記の定義が与えらえる:
支持体の水力学的直径φfは、チューブ状構造体の部分Pの任意の横断平面において、上述の支持体の断面の表面積Sf、及びその外周Pfから、上述の部分の平面において、下記の慣用的な表現を適用することによって、算出される:
φf=4×Sf/Pf
【0025】
流路の水力学的直径Dは、チューブ状構造体の部分Pの任意の横断平面において、上述の流路の断面の表面積Sc及びその外周Pcから、上述の部分の平面において、下記の慣用的な表現を適用することによって、算出される。
=4×Sc/Pc
【0026】
周縁壁の最小厚みeextは、周縁壁の外側の外周と、最も近い流路の端部との間において、図1に見られるような、チューブ状構造体の部分Pの任意の横断平面において、計測される。
【0027】
最小厚みeintは、共通の壁を有している2つの流路の端部の間において、図1に見られるような、チューブ状構造体の部分Pの任意の横断平面において、計測される、最小距離である。
【0028】
適切な場合には互いに組み合わせることができる本発明の好ましい実施態様によれば:
- K×t/Kの比が、0.01mと10mとの間である;
- 支持体の外側の水力学的直径φが、30mmと100mmの間であり、好ましくは、40mm超であり又はさらには50mm超であり、かつ80mm未満である;
- 流路の平均の水力学的直径Dが、フィルター構造体の主軸に対して垂直な平面Pにおいて、0.5mm~7mm、好ましくは1mm~5mm、より好ましくは1.5mm~4mm、さらにより好ましくは、1.5mm~3.5mmである;
- αが、0.90と1.10との間であり、さらに好ましくは、αは、0.95と1.05との間である;
- 支持体の内部壁の最小の厚みeintが、0.3mmと3mmとの間であり、好ましくは0.7mmと2mmの間である;
- 支持体が、正方形、六角形、又は円形の基部を有しており、好ましくは円形の基部を有している;
- 構造体が、200mm~1500mmの長さを有しており、より好ましくは、500mmと1100mmとの間の長さを有している;
- 全ての流路が、同一の水力学的直径を有している;
- 少なくとも2つの流路が、異なる水力学的直径を有している;
- 周縁壁の最小厚みeextが、0.5mmと4mmの間、好ましくは1mmと2mmの間である;
- 支持体を構成する材料の透過率Kが、好ましくは、1.0×10-14と1.0×10-11との間であり、好ましくは、1.0×10-13と1.0×10-11との間である;
- メンブレンの透過率Kが、好ましくは、1.0×10-19と1.0×10-14との間であり、好ましくは、1.0×10-17と1.0×10-15との間である;
- メンブレンの平均厚みtが、0.1μmと300μmとの間であり、好ましくは10μmと70μmとの間である;
- メンブレンが、50nmと1500nmとの間、好ましくは100nmと1000nmの間のメジアン細孔直径を有している;
- メンブレンが、10%と70%との間、好ましくは30%と50%の間の開放細孔率を有している;
- 支持体の細孔のメジアン直径が、5μmと50μmとの間、好ましくは15μmと40μmとの間、さらに好ましくは20μmと30μmとの間である;
- 支持体の多孔度が、20%と60%との間であり、より好ましくは、メンブレンの多孔度よりも、少なくとも10%大きい;
- 流路が、円形又は多角形の断面、特には、正方形、六角形、又は八角形の断面、特には、正方形の断面、を有する;
【0029】
本発明は、また、下記を有するフィルター処理装置にも関する:
- 上述のフィルター構造体
- 上述のフィルター構造体の周囲を封止する包囲体、この包囲体は、下記を有する:
- フィルター処理される液体を導入するための、上述のフィルター構造体の上流面において流路と流体的に接続している、手段、
- フィルター構造体の周縁における透過液を除去するための、上述のフィルター構造体の周縁壁と流体的に接続している、手段、
- 上述のフィルター構造体の下流面における残留分又は濃縮物を除去するための、手段。
【0030】
本発明によれば、上述の複数のフィルター処理装置を、特には、直列で、かつ/又は並列で、使用することができる。
【0031】
さらには、本発明は、上述のフィルター構造体の、液体の精製及び/又は分離のための、化学、医薬、食品、又は農食品産業における、バイオリアクターにおける、又は、シェールからのオイル若しくはガスの抽出における、使用、を含む。
【0032】
最後に、本発明は、一体型フィルター構造体のサイズを最適化することを可能にする方法を記載する。これまでに記載されていない方法で、本発明の方法は、フィルター処理支持体の内在的なパラメータだけではなく、支持体の壁に適用されるフィルターメンブレンの特定の内在的なパラメータも、考慮することを提案する。
【0033】
関係式(1)において、大きさは、慣用的な方法で、SIシステムの単位で、表現される;すなわち、t、φ、p、p、eint、eext、及びDの大きさの場合には、メートル(m)で、又は、K及びK,S及びSの大きさの場合には、平方メートル(m)で、表現される。
【0034】
支持体の透過率K及びメンブレンの透過率Kは、コゼニー-カルマン関係に基づいて、以下の式によって、定義される:K=(PO×D50 )/[180×(1-PO)]、POは、開放細孔率であり、D50は、細孔のメジアン直径である。
【0035】
本発明に係る支持体の開放細孔率及び細孔のメジアン直径は、水銀ポロシメトリーによって既知の方法で決定される。多孔度は、細孔体積に対応しており、水銀圧入によって、2000barで、水銀ポロシメータ、例えば、MicromeriticsのAutoporeIVシリーズ9500ポロシメータによって、支持体のブロックから取った1cmの試験試料で、計測される。試料領域は、典型的にはブロックの表面の下500μmにまで延在している表層を除く。関係する規格は、ISO15901-1.2005、パート1である。高圧への圧力の増加によって、ますます小さいサイズの細孔に、水銀が「押し込まれる」ことになる。水銀の圧入は、慣用的には、2つの段階で起こる。第1段階では、水銀圧入を、44psia(約3bar)以下の低圧で空気圧によって実施して、水銀を、最も大きい細孔(4μm超)に導入する。第2段階では、高圧圧入を、30000psia(約2000bar)の最大圧力以下で、オイルによって実施する。規格ISO15901-1.2005パート1に記載のワッシュバーン法則によれば、このようにして、水銀ポロシメータは、細孔サイズの分布を体積で確定することを可能にする。支持体のメジアン細孔直径は、体積での、母集団の50%のしきい値に対応する。
【0036】
メンブレンにおける細孔の合計体積に対応する、メンブレンの多孔度、及び、メンブレンのメジアン細孔直径は、有利には、本発明に従って、走査型電子顕微鏡によって、決定される。本発明に関して、この方法によってメンブレンに関して得られる多孔度は、開放細孔率に近似し得ると考えられる。典型的には、支持体の壁の部分を、断面で取得し、それにより、コーティングの厚みの全体を、少なくとも1.5cmの累積的な長さにわたって、観察する。画像取得は、少なくとも50グレイン、好ましくは少なくとも100グレインの試料で、実施される。それぞれの細孔の表面積及び相当直径を、写真から、慣用的な画像分析技術によって、随意に、画像のコントラストを向上させる目的で画像を二値化した後に、取得する。このようにして、相当直径の分布を導出し、これから、平均細孔直径を抽出する。メンブレンの多孔度は、相当細孔直径分布曲線を統合することによって、得る。同様に、この方法は、メンブレン層を形成している粒子に関するメジアンサイズを決定するために用いることができる。メンブレン層を形成している粒子のメジアン細孔直径又はメジアンサイズを決定する1つの例は、例示として、本分野において慣用的である、下記の一連の工程を含む:
【0037】
メンブレン層を有している支持体の、一連のSEM画像を、断面で観察されたものとして(すなわち、壁の厚み全体にわたって)、取得する。鮮明度をさらに大きくするために、写真は、材料の、研磨された部分において取得する。画像取得を、少なくとも1.5cmの、メンブレン層の累積的な長さにわたって実行し、それによって、試料全体を代表する値を、得る。
【0038】
写真を、好ましくは、画像処理技術において良く知られている二値化技術に供し、それによって、粒子又は細孔の輪郭のコントラストを増加させる。
【0039】
メンブレン層を形成しているそれぞれの粒子又はそれぞれの細孔について、その面積を計測する。相当細孔直径又は粒径を決定する;これは、上述の粒子又は上述の細孔に関して計測された表面積と同一の表面積の完全な円盤の直径に、対応する(この操作は、潜在的には、専用のソフトウェア、特にはNoesisによって市販されているVisilog(商標)によって実行することができる)。このようにして、粒子サイズ、若しくはグレインサイズ、又は細孔直径の分布を、数によって分布を与える慣用的な曲線に従って取得し、メンブレン層を形成している、粒子のメジアンサイズ及び/又は細孔のメジアン直径を、決定する;このメジアンサイズ又はメジアン直径は、それぞれ、上述の分布を、このメジアンサイズ以上の相当直径の粒子又は細孔のみを有する第1群と、及び、このメジアンサイズ又はこのメジアン直径未満の相当直径の粒子のみを有する第2群とに、分割する相当直径に、対応する。
【0040】
支持体の形状は、図2で示されているように、封止材の有無の誤差はあるとして(封止材17)、フィルター構造体の全体的な形状及びそのサイズを、規定する。これは、主軸に沿って伸びているチューブ状の形状を有しており、上流側基部、下流側基部、周縁表面、及び内部部分を有する。同一の形状及びサイズである上流側基部及び下流側基部は、形状において種々のものであってよく、例えば、正方形、六角形、又は円形であってよい。これらは、好ましくは、円形である。下流面(又は下流側基部)は、液体(フィルター処理される液体)の流入する流れに面して位置することが意図されており、上流面(又は上流側基部)は、流入する液体の流れとは反対側に位置することが意図されている。
【0041】
支持体の主軸に平行な複数の流路が、支持体の内部部分に、形成されている。これらの流路は、フィルター流路としても言及され、液体の流れの方向における両端部において、開いている。
【0042】
流路の形状は、制限されず、これは、多角形、特には六角形、又は正方形、又は八角形/正方形、又は代替的には、円形の断面を有してよく、好ましくは、円形又は正方形の断面を有している。流路の平均の水力学的直径Dは、上述した。フィルターは、フィルターの寸法に適合するために切断されうる周縁的な流路は別として、複数のカテゴリーの流路を含むことができる。流路のカテゴリーは、+/-5%以内で同一の形状及び同一の水力学的直径を有している一群の流路によって、規定される。好ましくは、非周縁的な流路が、円状であり、かつ同一カテゴリーである。例えば、フィルターは、フィルターの周縁表面の近くに位置する流路によって形成される流路の第1カテゴリー、及び、フィルターの中央に位置する流路から形成される第2カテゴリーを含んでよく、第1カテゴリーの流路が、第2カテゴリーの流路よりも、比較的大きい水力学的直径を有することができる。しかしながら、好ましくは、フィルターは、ただ1つの単一の流路のカテゴリーを有する。
【0043】
流路は、支持体の多孔性無機材料によって形成される内部壁によって、互いに離されている。内部壁の平均厚みは、典型的には、0.3mm~3mm、好ましくは0.7mmと2mmの間、又はさらには0.4mmと1.4mmの間である。
【0044】
例えば、周縁壁の平均厚みは、1mmと5mmとの間、好ましくは1.5mmと3mmの間である。
【0045】
支持体は、多孔性無機材料、特には、非酸化物セラミック材料、例えば、SiC、特には、再結晶化SiC、Si、SiON、SiAlON、BN、又はこれらの組み合わせから形成されている。その多孔度は、典型的には、20%~70%、好ましくは40%~50%であり、メジアン細孔直径が、5nm~50μm、好ましくは100nm~40μm、より好ましくは5μm~30μm、好ましくは20μm~40μmである。支持体の透過率Kは、好ましくは、1.0×10-14と1.0×10-11との間、好ましくは、1.0×10-13と1.0×10-12との間である。
【0046】
本発明に係る一体型フィルター構造体は、流路の内側表面を覆うメンブレンも、有する。これは、多孔性の無機材料、特には、非酸化物セラミック材料、例えば、SiC、特には、再結晶化SiC、Si、SiON、SiAlON、BN、又はこれらの組み合わせから形成されている。その多孔度は、典型的には、10%~70%であり、メジアン細孔直径が、10nm~5μmである。メンブレンの透過率Kは、好ましくは、10-19と10-14との間、好ましくは、1.0×10-17と1.0×10-16との間である。メンブレンは、典型的には、0.1μm~300μm、好ましくは1μm~200μm、より好ましくは10μm~70μmの平均厚みtを有する。
【0047】
本発明に係るフィルター構造体は、当業者に知られている任意の技術によって得ることができる。慣用的な製造方法は、一般に、支持体を製造する主要工程、そして、メンブレンを堆積する主要工程を、含む。
【0048】
支持体は、好ましくは、ダイを通してペーストを押出し、その後に、乾燥及び焼成を行い、それによって、支持体の材料を焼結し、用途のために必要とされる多孔度及び機械的強度を得ることによって、得られる。例えば、再結晶化SiCでできている支持体の場合には、特には下記の製造工程に従って、得ることができる:
【0049】
- 純度98%超の炭化ケイ素の粒子を含有し、粒子の75質量%が30μm超の直径を有するような粒子サイズ分布を有し、レーザーグラニュロメトリーによって計測したこの粒子サイズ画分の、質量でのメジアン直径が300μm未満である、混合物を、混錬すること。混合物は、セルロースから誘導されるタイプの有機バインダーも含有する。水を加え、押出が可能な可塑性を有する均一なペーストが得られるまで、混合物を混錬する。ダイを、本発明に係る一体物が得られるように、構成する。
【0050】
- 化学的に結合していない水の含有量を1質量%未満にまで低減するのに十分な長さにわたって、未加工一体物を、マイクロ波を用いて乾燥させる。
【0051】
- 1900℃以上2400℃未満の温度にまで焼成すること。この温度を、典型的には、1時間以上、好ましくは3時間以上にわたって維持する。得られる材料は、20体積%~70体積%、好ましくは40体積%~50体積%の開放細孔率を有し、約10nm~50μm、好ましくは10nm~40μm、より好ましくは20μm~30μmのメジアン細孔直径を有する。
【0052】
そして、フィルター支持体を、メンブレンでコーティングする。メンブレンは、当業者に知られる種々の技術を用いて適用してよく、懸濁液又はスラリー、化学気相堆積(CVD)又は熱スプレー堆積、例えばプラズマスプレーによって、堆積してよい。好ましくは、メンブレン層を、スラリー又は懸濁液から、コーティング処理によって適用する。複数の一連の層を適用することによって、メンブレンを得てもよい。メンブレンは、一般には、プライマー層として言及される第1層を含み、これは、基材と直接に接触して適用される。プライマーは、キーコートとして機能する。プライマーを適用するために用いられるスラリーは、好ましくは、30重量%と100重量%の間の、1μm~30μmのメジアン直径を有するSiCの粒子を含有し、補充物は、例えば、金属ケイ素の粉末、シリカ及び/又は炭素の粉末である。この粉末の混合物に、粉末の合計質量の80%~120%に対応する質量の脱イオン水を添加する。メンブレンは、プライマー層に適用される分離層も含む。フィルターにその選択性を付与するために多孔度が制御されるのは、この分離層においてである。分離層を適用するために用いられるスラリーは、30重量%~70重量%の、0.5μm~20μmのメジアン直径を有するSiCの粒子、又は、合計で30重量%~70重量%の、金属ケイ素、シリカ、及び炭素の混合物、を含有することができ、補充物は脱イオン水である。特定の添加剤、例えば、増粘剤、バインダー及び/又は分散剤などを、スラリーに添加してよく、それによって、特にスラリーのレオロジーを制御する。スラリーの粘度は、典型的には、規格DIN-53019-1:2008に従って22℃においてせん断勾配1s-1で計測したときに、0.01Pa.s~0.8Pa.s、好ましくは0.05Pa.s~0.7Pa.sである。スラリーは、典型的には、水の質量の0.1%~1%の、好ましくはセルロース誘導体から選択される増粘剤を、含有してよい。スラリーは、典型的には、SiC粉末の質量の0.1%~5%の、好ましくはポリ(ビニルアルコール)(PVA)又は及びアクリルの誘導体から選択されるバインダーを含有してよい。スラリーは、また、SiC粉末の質量の0.01%~1%の、好ましくはポリアンモニウムメタクリレートから選択される分散剤を含有してもよい。1又は複数の層のスラリーを適用して、メンブレンを形成してもよい。スラリーの層の適用は、典型的には、0.1μm~80μmの厚みのメンブレンを得ることを可能にするが、スラリーの複数の一連の層を適用することによって、典型的には、100μm~300μmの比較的厚いメンブレンを得ることができる。
【0053】
このようにしてコーティングされた支持体を、典型的には30分間以上にわたって周囲雰囲気温度で乾燥させ、そして、60℃で24時間以上にわたって乾燥させる。このようにして乾燥された支持体を、典型的には1000℃~2200℃である焼成温度で、非酸化性雰囲気において、好ましくはアルゴン下において、焼結し、そのようにして、画像分析によって計測したしたときに10体積%~70体積%であるメンブレン多孔度、及び、画像分析によって計測したときに10nm~5μmであるメジアン相当細孔直径を、得る。
【0054】
本発明に係るフィルター構造体は、液体を精製する種々の用途、及び/又は、液体の粒子若しくは分子を分離する種々の用途に、使用することができる。本発明に係るフィルター構造体は、本発明に従って液体を精製する種々の用途に用いることができる。これによれば、フィルター処理される液体の粘度とは独立に、ろ液の流れを最大化することができる。例えば0.1mPa.s~20mPa.s又はさらには0.1mPa.s~50mPa.sの動的粘度を有する液体をフィルター処理するために、用いることができる。フィルター処理される液体の動的粘度は、規格DIN53019-1:2008に従って、20℃で1s-1のせん断勾配のもとで、計測することができる。本発明は、特には、上述のフィルター構造体の、シェールからの石油又はガスの抽出から派生する製造水を精製するための使用に関する。本発明は、また、液体の精製及び/又は分離のための、化学、医薬、食品、又は農食品の産業における、又はバイオリアクターにおける、水泳プール水における、種々の工業的なプロセスにおいて、用途が見いだされる。
【0055】
添付の図面は、より詳細に、本願の特定の態様を説明する。しかしながら、下記の情報は、本発明の範囲を、図面に記載されている発明のいずれかの態様に限定するものと考えられるべきではない。
【0056】
図1は、接線方向フィルター構造体であり、これは、主軸(X)を有する円筒形状の支持体1、フィルター処理される液体が循環する方向に従って、上流面2、及び下流面3、を有する。主軸(X)に平行に、複数の流路4が、支持体の内部部分8に形成されており、多孔性の内部壁5によって、互いに分離されている。周縁壁7が、支持体の内部部分8に位置する流路を、外部から分離する。流路4は、フィルター処理される液体が循環する方向において、上流面及び下流面において、開かれている。流路4は、その内部表面において、(明確さのために図1では1つの流路のみについて描写されている)メンブレン6によって、覆われている。作動時には、液体が下流面に送られ、流路4を介して構造体を通過する。接線方向フィルター処理の原理によれば、液体の一部が構造体1の多孔性の壁5を通過し、壁に適用されているメンブレン6を介して、フィルター処理される。フィルター処理された液体(ろ液)は、周縁壁7を通過した後に、フィルターの周縁において、それ自体知られている(図1には図示されていない)回収手段、例えば、国際公開第2017/085551号に記載されているタイプの回収手段を介して、回収される。流路に残っている液体(残留分)は、構造体の上流側において除去され、例えば、同一タイプの他のフィルター処理ユニットの方に送られる。
【0057】
一般的な法則として、図2で見られるように、上述のフィルター構造体は、上述のフィルター構造体の周りを封止する包囲体11を含むフィルター処理装置10に、挿入される。この包囲体は、特には、図2で見られるように、フィルター処理される液体15を導入するための、上述のフィルター構造体の上流面において流路と流体的に接続している、手段12、フィルター構造体の周縁において透過液9を除去するための、上述のフィルター構造体の周縁壁に流体的に接続している、手段13、及び、上述のフィルター構造体の下流面における残留分又は濃縮物14を除去するための、手段16、並びに、封止材17を、有している。
【0058】
図3は、流入流路及び流出流路が円状の断面であるフィルター処理フィルターの上流面の正面図である。図3は、上述のパラメータeint(流路間の内部壁の最小厚み)、eext(フィルターの周縁壁の最小厚み)、t及びDを、描写している。
【0059】
本発明を、添付の図1図5とともに、下記の非制限的な例示を用いて、説明する。
【実施例
【0060】
≪A:第1の一連の例≫
本発明に係る構造体(実施例1)及び比較構造体(C11~C16)の第1の一連の例を、下記の方法に従って、準備した。
【0061】
<実施例(発明)>
支持体を、当業者に既知の技術に従って、炭化ケイ素のハニカムを形成することによって、製造した。これを行うために、下記を、混合器において混合した:
- 約60μmのメジアン直径を有する粒子の第1粉末75重量%、及び、約2.0μmのメジアン直径を有する粒子の第2粉末25重量%を含有する、純度98%超の炭化ケイ素の粒子の2つの粉末の混合物3000g、

- セルロース誘導体タイプの有機バインダー300g。
【0062】
SiC及び有機バインダーの質量に対して約25重量%の水を添加し、混合物を混合して、40%の多孔度を有する支持体を得るための押出を可能にする可塑性を有する、均一なペーストを、形成した。
【0063】
ダイを用いてこのペーストから支持体を押出し、それによって、51mmの直径及び300mmの長さを有する円筒状の未加工一体型ブロックを得た。これの内部部分は、円状断面の複数の流路を有していた。ダイの形状は、図4のような、3mmの水力学的直径を有する円状断面の流路、及び1200μmの最小厚みを有する内部壁を得るために適していた。
【0064】
得られた未加工支持体を、乾燥し、それによって、化学的に結合していない水の含有量を、1重量%未満にし、そして、アルゴン下で、2100℃の温度にまで焼成し、この温度を5時間にわたって維持した。得られた支持体は、水銀ポロシメトリーによって測定したときに、開放細孔率40%、及び約25μmのメジアン細孔直径を有していた。
【0065】
そして、フィルター処理メンブレンを、流路の内部表面に適用した。メンブレンは、スラリーコーティングによって適用した。これを行うために、スラリーから、メンブレンキーイングプライマーを、まず形成した。このスラリーの無機配合は、約20μmのメジアン直径D50を有する黒色SiCの粒子の粉末50重量%、及び、脱イオン水50%を含有していた。
【0066】
そして、約1μmのメジアン直径を有するSiCの粒子50重量%及び脱イオン水50%を含有するスラリーから、分離層を、プライマー層に適用した。スラリーの粘度は、規格DINC33-53019-1:2008に従って22℃においてせん断勾配1s-1で計測したときのスラリーの粘度を、当業者に既知の添加剤を用いて、0.1Pa.sに調節した。
【0067】
プライマー及びメンブレンは、同じ方法で適用した。スラリーは、20回転/分で攪拌しつつタンクに導入された。攪拌を維持したまま、わずかな吸引下、典型的には25mbarにおける空気除去段階の後に、貯留容器を約+1barのわずかな過圧下で配置し、それにより、支持体の内部が、底部から上部にまでコーティングされうるようにした。この操作は、300mmの長さの支持体に関して、ほんの数秒しか要しない。スラリーは、フィルター要素の流路の内部壁をコーティングし、そして、余分は、堆積の直後に重力下で除去した。
【0068】
そして、コーティングされた支持体を、30分間にわたって周囲雰囲気で乾燥させ、そして、60℃で30時間にわたって乾燥させた。そして、このようにして乾燥させたコーティングされた支持体を、4時間にわたってアルゴンの周囲雰囲気下で1400℃の温度で焼結させ、それによって、250nmのメジアン細孔直径を有する多孔度40%のメンブレンを得た。
【0069】
このようにして得られたフィルター構造体は、添付の表1に報告する特徴を有していた。その直径φは、本発明に係る関係式(1)を満たす。
【0070】
<比較例C11及びC12>
本発明に係る実施例とは異なり、ダイを修正して、比較的小さい直径の支持体を得て、実施例1に係るフィルターと同一の直径φを有する複数要素フィルターを、形成した。他の構造体パラメータは、すべて、そのままであった。3つのユニットを、国際公開第2017/085551号に記載の原則に従ってアセンブルして、比較例C11に係るフィルターを構成した;4つのユニットを、国際公開第2017/085551号に記載の原則に従ってアセンブルして、比較例C12に係るフィルターを構成した。アセンブルされたフィルターにおけるそれぞれのユニットの間の間隔は、3mmであった。
【0071】
<比較例C13及びC14>
支持体及びメンブレンを、本発明に係る例と同様にして製造した。本発明に係る実施例1とは異なり、ダイを修正して、それぞれ40mm及び62mmの直径φを有する例C13及びC14に係る一体型支持体を得た。他の構造体パラメータは、すべてそのままであった。したがって、これらの2つの構造体の直径は、本願において本発明に係る式(1)によって定義されている範囲の、それぞれ下限及び上限の、外にある。
【0072】
<比較例C15及びC16>
比較例C15及びC16に係るフィルターは、比較例C14と同一の直径を有しているが、国際公開第2017/085551号に記載の原則に従って、ユニットをアセンブルし、それによって、C14に係る一体型フィルター構造体と同一の直径φを有する複数要素フィルターを作り出すことによって、形成された。他の構造体パラメータは、この例に対して変更しないままであった。アセンブルされたフィルターにおけるそれぞれのユニットの間の間隔は、3mmであった。
【0073】
実施例1及びC11~C16に関して得られた全てのデータ及び結果を、下記の表1に報告する。
【0074】
<B:第2の一連の例>
この第2の一連の例では、本発明に係る構造体(実施例2)及び比較構造体(C21~C26)を、下記に記載のものと同一の方法及び原則を用いて、準備した。この第2の一連の例では、支持体の透過率Kが変更されていた。
【0075】
<本発明に係る実施例2>
実施例1とは異なる、透過率Kに関する別の値を得るために、この第2の一連の例では、支持体を、約11μmのメジアン直径を有する粒子の第1粉末70重量%、及び、約0.5μmのメジアン直径を有する粒子の第2粉末30重量%を含有する、純度98%超の炭化ケイ素の粒子の2つの粉末の混合物から、製造した。
【0076】
そして、得られた未加工支持体を乾燥させて、化学的に結合していない水の含有量を、1重量%未満にし、そして、アルゴン下で2150℃の温度にまで焼成し、この温度を5時間にわたって維持した。得られた支持体は、水銀ポロシメトリーで計測したときに、40%の開放細孔率、及び、約15μmのメジアン細孔直径を有していた。
【0077】
このようにして得られた支持体の透過率は、表2で報告されるように、第1の一連の例において計測されたものよりも、低かった。そして、例示のために用いられた方法と同一の手順を使用して、実施例1に係る構造体と同一のプライマーとともに、同一のメンブレンを、適用した。
【0078】
<比較例C21~C26>
比較例C21~C26は、それぞれ、C11~C16に対応しており、これらの例では、実施例2に係る比較的低い透過率の支持体を用いてフィルターを形成した点が、異なっている。
【0079】
得られた全てのデータ及び結果を、下記の表2に報告する。
【0080】
<テスト及び結果の表>
これらの一体型又は複数要素のフィルター構造体のそれぞれに関して、Φ/Φmaxを決定した。Φは、対象のフィルター構造体の特性流であり、Φmaxは、第1の一連の例に関して本発明に係る実施例1に係るフィルター構造体について計測した流れ、又は、第2の一連の例に関して本発明に係る実施例2に係るフィルター構造体について計測した流れであり、100%の効率が与えられている。フィルターの特性流は、下記の方法を用いて評価した:25℃の温度において、脱塩水から形成される液体を、評価対象のフィルターに、0.5barのメンブレン間圧力、及び2m/sの流路方向流速で、供給する。透過液を、フィルターの周縁で回収する。フィルターの特性流の計測を、20時間のフィルター処理の後で、L/h/m/barで表す。得られた結果を、このようにして得られたフィルターの関連する寸法特性と一緒に、下記の表1にまとめる。
【0081】
<結果の解釈>
(第1の一連の例(本発明に係る実施例1、及びC11~C16)について)
表1に記載の流れの比によって示されているように、例C11及びC12に係る複数要素のフィルターは、本発明に係る実施例1に係る一体型構造体よりも劣るフィルター処理能力を有する。
【0082】
例C13に係る一体型フィルター構造体は、本発明に従った直径を有しておらず、参照構造体と比較して大幅に劣る流れを示す。
【0083】
例C14~C16の比較が明らかにすることができるのは、支持体及びフィルターメンブレンの構造特性の組み合わせを考慮している、本発明に従って選択された一体型のフィルター構造体が、最適化されている流れ及びフィルター処理能力を示す、ということである。特に、複数のフィルターユニット(例C15及びC16)をアセンブルすることによって得られるフィルターに従って計測される流れは、同一の直径を有する一体型の構造体(例C14)に関する流れよりも、良好な性能を示す。このような場合には、複数要素のフィルターは、実施が比較的複雑ではあるが、比較的良好に機能する。
【0084】
実施例2が示すのは、本発明を適用することによって、比較的低い支持体透過率Kは、一体型フィルター構造体の比較的小さい直径φを要求する、ということである。
【0085】
第1の一連の例と同様に、本発明に係る同一の式(1)を適用することによって、支持体及びメンブレンの構造体パラメータに従って、フィルターの直径を最適化することができることが、見いだされる。
【0086】
同様に本願の会社の出願に係るものである国際公開第2015/177476号(D1)及び国際公開第2016/097661号(D2)で記載されている種々のフィルターも、評価した。テスト及び計算の結果を、下記の表3に報告する。これらの例で記載される構造体の直径の値は、最適ではなく、かつ、特には本願の特許請求の範囲に記載の本発明の要件を満たしていないことが、分かるであろう。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
本開示は、下記の態様を含む:
<態様1>
下記を有する、液体をフィルター処理するための一体型のメンブレンタイプのフィルター構造体:
- 透過率K の多孔性無機材料から形成されている支持体、前記支持体は、主軸、上流基部、下流基部、内部部分を画定している周縁壁を有する、チューブ状の全体的な形状を有している、
- 前記支持体の前記内部部分に形成されている、前記支持体の前記主軸に平行な、複数の流路、前記流路は、多孔性無機材料でできている内部壁によって、互いに分離されている、
- すべての前記流路は、前記液体が循環する方向において、それらの上流側端部又は下流側端部において開かれており、
- フィルター処理された液体は、前記周縁壁を介して除去され、
- 透過率K 及び平均厚みt のメンブレンが、前記流路の内部表面を覆っており、
前記フィルター構造は、その外部水力学的直径φ が、下記の関係(1)を満たすことを特徴とする:
φ =α×[A+B×log 10 (K ×t /K )] (1)
ここで、αは、0.85と1.15との間の係数であり、かつ、
【数1】
であり、
は、前記流路の平均の水力学的直径であり、
int は、前記流路の間の前記内部壁の最小厚みであり、
ext は、フィルターの前記周縁壁の最小厚みであり、
、φ 、e int 、e ext 、及びD は、メートルで表され、かつK 及びK は、m で表される。
<態様2>
比K ×t /K が、0.01mと10mとの間である、態様1に記載のフィルター構造体。
<態様3>
前記支持体の前記外部水力学的直径φ が、30mmと100mmとの間、好ましくは50mm超80mm未満である、態様1又は2に記載のフィルター構造体。
<態様4>
前記流路の平均の水力学的直径d が、0.5mmと7mmとの間、好ましくは1mmと5mmとの間、より好ましくは1.5mmと3.5mmとの間である、態様1~3のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様5>
前記支持体の前記内部壁の最小厚みe int が、0.3mmと3mmとの間、好ましくは0.7mmと2mmとの間である、態様1~4のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様6>
前記支持体が、正方形、六角形、又は円形の基部、好ましくは円形の基部を有することを特徴とする、態様1~5のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様7>
すべての前記流路が、同一の水力学的直径を有することを特徴とする、態様1~6のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様8>
少なくとも2つの前記流路が、異なる水力学的直径を有することを特徴とする、態様1~7のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様9>
前記フィルターの前記周縁壁の最小厚みe ext が、0.5mmと4mmとの間、好ましくは1mmと2mmとの間であることを特徴とする、態様1~8のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様10>
前記支持体の透過率K が、好ましくは、1.0×10 -14 と1.0×10 -11 との間であることを特徴とする、態様1~9のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様11>
前記メンブレンの透過率K が、好ましくは、1.0×10 -19 と1.0×10 -14 との間であることを特徴とする、態様1~10のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様12>
前記メンブレンの平均厚みt が、0.1μm~300μm、好ましくは10μm~70μmの範囲である、ことを特徴とする、態様1~11のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様13>
前記メンブレンが、10%と70%との間、好ましくは30%と50%との間である開放細孔率を有することを特徴とする、態様1~12のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様14>
前記支持体の細孔のメジアン直径が、20μmと50μmとの間であることを特徴とする、態様1~13のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様15>
前記流路が、円形又は多角形の断面を有し、特には、正方形、六角形、又は八角形の断面、特には、正方形の断面、を有することを特徴とする、態様1~14のいずれか一項に記載のフィルター構造体。
<態様16>
下記を有する、フィルター処理装置:
- 前記フィルター構造体、
- 前記フィルター構造体の周りを封止する包囲体、この包囲体は、下記を有する:
- フィルター処理される液体を導入するための、前記フィルター構造体の前記上流面において前記流路に流体的に接続している、手段、
- 前記フィルター構造体の周縁において透過液を除去するための、前記フィルター構造体の前記周縁壁に流体的に接続している、手段、
- 前記フィルター構造体の前記下流面における残留分又は濃縮物を除去するための、手段。
<態様17>
態様1~15のいずれか一項に記載のフィルター構造体、又は、態様16に記載のフィルター処理装置の、液体の精製及び/又は分離のための、化学、医薬、食品、若しくは農食品の産業における、バイオリアクターにおける、又は、シェールからの石油若しくはガスの抽出における、使用。
図1
図2
図3
図4
図5