(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】検出装置の検出方法、制御システム、検出システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20220608BHJP
G01N 30/00 20060101ALI20220608BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N30/00 B
G01N27/00 J
(21)【出願番号】P 2020535790
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030916
(87)【国際公開番号】W WO2020032029
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2018149789
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「超高感度有害低分子センシングシステムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 厚夫
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-017427(JP,A)
【文献】特開2016-090257(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079174(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047041(WO,A1)
【文献】特表2010-513895(JP,A)
【文献】実用新案登録第2570102(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0090197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/22,
G01N 27/00,27/12,
G01N 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスが流れる流路の一部を形成する検出室と、
前記検出室内に配置され、前記試料ガスに含まれる化学物質を吸着する吸着部と、
前記検出室内に配置され、前記試料ガスに含まれる前記化学物質を検出するセンサと、
を有した検出装置の検出方法であって、
当該検出方法は、
前記化学物質の含有量が前記試料ガスに比べて小さい低濃度ガスを前記センサから前記吸着部に向かう方向に沿って流した状態で、前記センサのキャリブレーションを行うキャリブレーションモード
を実行するステップと、
前記キャリブレーションモードの後に、前記試料ガスを前記センサから前記吸着部に向かう方向に沿って流した状態で、前記センサで前記試料ガスに含まれる前記化学物質を検出する第1検出モード
を実行するステップと、
前記第1検出モードの実行期間の少なくとも一部と重複する期間を含む実行期間に、前記吸着部で前記化学物質の吸着を行う第1吸着モード
を実行するステップと、
前記第1吸着モードの後に、前記試料ガスを前記吸着部から前記センサに向かう方向に沿って流した状態で、前記吸着部で前記化学物質の吸着を行う第2吸着モード
を実行するステップと、
前記第1吸着モードと前記第2吸着モードにて吸着された前記化学物質を前記吸着部から脱離させ、前記センサで前記化学物質を検出する第2検出モード
を実行するステップと、を有する、
検出装置の検出方法。
【請求項2】
前記第1検出モードの検出結果に基づいて、前記第2吸着モードと前記第2検出モードに移行するか否かを決定する、
請求項1に記載の検出装置の検出方法。
【請求項3】
前記検出室の、前記吸着部から前記センサに向かう方向に直交する断面積は、前記吸着部から前記センサに向けて広くなる、
請求項1又は2に記載の検出装置の検出方法。
【請求項4】
前記第2検出モードにおいては、前記第1検出モードに比較して、前記検出室内における前記試料ガスの流速を低くする、
請求項1~3のいずれか1項に記載の検出装置の検出方法。
【請求項5】
前記第2検出モードの後に、前記センサから前記吸着部に向かう方向に沿ってガスを流すリフレッシュモード
を実行するステップを、更に有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の検出装置の検出方法。
【請求項6】
試料ガスが流れる流路の一部を形成する検出室と、
前記検出室内に配置され、前記試料ガスに含まれる化学物質を吸着する吸着部と、
前記検出室内に配置され、前記試料ガスに含まれる前記化学物質を検出するセンサと、
を有した検出装置を制御する制御システムであって、
当該制御システムは、動作モードとして、
前記化学物質の含有量が前記試料ガスに比べて小さい低濃度ガスを前記センサから前記吸着部に向かう方向に沿って流した状態で、前記センサのキャリブレーションを行うキャリブレーションモードと、
前記キャリブレーションモードの後に、前記試料ガスを前記センサから前記吸着部に向かう方向に沿って流した状態で、前記センサで前記試料ガスに含まれる前記化学物質を検出する第1検出モードと、
前記第1検出モードの実行期間の少なくとも一部と重複する期間を含む実行期間に、前記吸着部で前記化学物質の吸着を行う第1吸着モードと、
前記第1吸着モードの後に、前記試料ガスを前記吸着部から前記センサに向かう方向に沿って流した状態で、前記吸着部で前記化学物質の吸着を行う第2吸着モードと、
前記第1吸着モードと前記第2吸着モードにて吸着された前記化学物質を前記吸着部から脱離させ、前記センサで前記化学物質を検出する第2検出モードと、を有する、
制御システム。
【請求項7】
前記検出装置に応じて、前記動作モードを実行させるための制御プログラムを書き換え可能に構成されている、
請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の制御システムと、
前記検出装置と、
前記検出室に繋がる経路の開閉を行うバルブと、
を備え、
前記制御システムは、前記バルブの開閉制御を行い、前記検出室内における前記試料ガス及び前記低濃度ガスの流れを制御する、
検出システム。
【請求項9】
コンピュータシステムに、請求項1~5のいずれか1項に記載の検出装置の検出方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、検出装置の検出方法、制御システム、検出システム、及びプログラムに関する。本開示は、より詳細には、ガス中に存在する化学物質を検出する検出装置の検出方法、当該検出装置を制御する制御システム、当該検出装置を備える検出システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特許文献1に記載の匂い検知装置を例示する。この匂い検知装置は、匂い物質に応じて固有の信号を出力する匂いセンサと、サンプルガスの吸脱着を行う吸脱着部と、吸脱着部で脱着されたガスを、匂いセンサに導く流路手段と、備えている。この匂い検知装置において、吸脱着部と匂いセンサとは、互いに独立して配置され、流路(配管)及び切換弁によって接続されている。
【0003】
特許文献1に記載の匂い検知装置における流路構造は、吸脱着部及び匂いセンサの間に、流路(配管)及び切換弁を有した構造であるため、流路構造が複雑となっている。またサンプルガス中の匂い物質(化学物質)を吸脱着部へ濃縮させるには、ある程度の時間を要する可能性があり、化学物質の濃縮に要する時間の短縮が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、ガスの流路を簡素化しつつ、化学物質の濃縮に要する時間の短縮を図ることができる、検出装置の検出方法、制御システム、検出システム、及びプログラムを提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る検出装置の検出方法は、試料ガスが流れる流路の一部を形成する検出室と、吸着部と、センサと、を有する検出装置の検出方法である。前記吸着部は、前記検出室内に配置され、前記試料ガスに含まれる化学物質を吸着する。前記センサは、前記検出室内に配置され、前記試料ガスに含まれる前記化学物質を検出する。前記検出方法は、キャリブレーションモードを実行するステップと、第1検出モードを実行するステップと、第1吸着モードを実行するステップと、第2吸着モードを実行するステップと、第2検出モードを実行するステップと、を有する。前記キャリブレーションモードにて、前記化学物質の含有量が前記試料ガスに比べて小さい低濃度ガスを前記センサから前記吸着部に向かう方向に沿って流した状態で、前記センサのキャリブレーションを行う。前記第1検出モードにて、前記キャリブレーションモードの後に、前記試料ガスを前記センサから前記吸着部に向かう方向に沿って流した状態で、前記センサで前記試料ガスに含まれる前記化学物質を検出する。前記第1吸着モードにて、前記第1検出モードの実行期間の少なくとも一部と重複する期間を含む実行期間に、前記吸着部で前記化学物質の吸着を行う。前記第2吸着モードにて、前記第1吸着モードの後に、前記試料ガスを前記吸着部から前記センサに向かう方向に沿って流した状態で、前記吸着部で前記化学物質の吸着を行う。前記第2検出モードにて、前記第1吸着モードと前記第2吸着モードにて吸着された前記化学物質を前記吸着部から脱離させ、前記センサで前記化学物質を検出する。
【0007】
本開示の一態様に係る制御システムは、検出装置を制御する。前記検出装置は、試料ガスが流れる流路の一部を形成する検出室と、吸着部と、センサと、を有する。前記吸着部は、前記検出室内に配置され、前記試料ガスに含まれる化学物質を吸着する。前記センサは、前記検出室内に配置され、前記試料ガスに含まれる前記化学物質を検出する。前記制御システムは、動作モードとして、キャリブレーションモードと、第1検出モードと、第1吸着モードと、第2吸着モードと、第2検出モードと、を有する。前記キャリブレーションモードにて、前記化学物質の含有量が前記試料ガスに比べて小さい低濃度ガスを前記センサから前記吸着部に向かう方向に沿って流した状態で、前記センサのキャリブレーションを行う。前記第1検出モードにて、前記キャリブレーションモードの後に、前記試料ガスを前記センサから前記吸着部に向かう方向に沿って流した状態で、前記センサで前記試料ガスに含まれる前記化学物質を検出する。前記第1吸着モードにて、前記第1検出モードの実行期間の少なくとも一部と重複する期間を含む実行期間に、前記吸着部で前記化学物質の吸着を行う。前記第2吸着モードにて、前記第1吸着モードの後に、前記試料ガスを前記吸着部から前記センサに向かう方向に沿って流した状態で、前記吸着部で前記化学物質の吸着を行う。前記第2検出モードにて、前記第1吸着モードと前記第2吸着モードにて吸着された前記化学物質を前記吸着部から脱離させ、前記センサで前記化学物質を検出する。
【0008】
本開示の一態様に係る検出システムは、上記制御システムと、前記検出装置と、前記検出室に繋がる経路の開閉を行うバルブと、を備える。前記制御システムは、前記バルブの開閉制御を行い、前記検出室内における前記試料ガス及び前記低濃度ガスの流れを制御する。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、上記検出方法を実行させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る検出方法(使用方法)の対象となる検出装置の断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る検出システムのブロック構成図である。
【
図3】
図3Aは、同上の検出装置における筐体の上カバーを外した状態の上面図である。
図3Bは、同上の検出装置の斜視図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、同上の検出システムにおけるガスの経路を説明するための図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、同上の検出装置の検出方法(使用方法)を説明するための図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、同上の検出装置の検出方法(使用方法)の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
本実施形態に係る検出方法は、検出装置1の検出方法である。検出装置1は、
図1に示すように、ガス(試料ガス)の流路の一部(流路L1)を形成する検出室10を有している。検出装置1は、検出室10内において、ガス中に存在する化学物質を検出するように構成されている。すなわち、検出装置1は、検出室10内に配置され、試料ガスに含まれる化学物質を検出するセンサ11を更に有している。また検出装置1は、検出室10内に配置され、化学物質を吸着する吸着部12を更に有している。
【0013】
検出室10内には、化学物質に応じた信号を出力するセンサ11と、化学物質を吸着する吸着部12とが配置される。つまり、ガスが通り得る検出室10内に、センサ11と吸着部12の両方が配置される。
【0014】
ここで、検出装置1の検出方法(以下、使用方法と呼ぶ場合もある)は、第1検出モードと濃縮モード(以下、「第2吸着モード」と呼ぶこともある)と第2検出モードとを少なくとも有している。以下では、一例として、制御システム2(
図2参照)が、第1検出モードと濃縮モードと第2検出モードとを、動作モードとして、有していることを想定する。ただし、これらのモードのうちの少なくとも一部が、ユーザ(例えば検出装置1を用いてガス中の化学物質を測定する測定者)の手動操作により実行されてもよい。
【0015】
第1検出モードは、ガス(試料ガス)の少なくとも一部が検出室10内をセンサ11、吸着部12の順の方向(
図1では左から右へ)に沿って流れている状態で、センサ11からの出力信号に基づき、化学物質を検出するモードである。以下では、一例として、第1検出モードが、センサ11のキャリブレーションを行う、キャリブレーションモードに相当することを想定する。
【0016】
ここで言う「ガスの少なくとも一部」とは、検出室10中の全体的なガスの流れにおいて、比較的多くの量のガスを意味する。すなわち、ガスの流れ(流体)の方向性は、検出室10内で、少なからず一定ではなく、ある程度に乱れも存在し得るが、第1検出モードでは、その方向性が、概ねセンサ11、吸着部12の順の方向である。つまり、第1検出モードは、試料ガス(の少なくとも一部)をセンサ11から吸着部12に向かう方向に沿って流した状態で、センサ11で化学物質を検出するモードである。ここでは制御システム2は、第1検出モードの実行期間の少なくとも一部と重複する期間を含む実行期間に、吸着部12で化学物質の吸着を行う第1吸着モードを有している。具体的には、第1検出モードの実行期間と、第1吸着モードの実行期間とは、少なくとも一部に互いに重複する期間があれば、互いの実行タイミング、及び互いの実行期間の長さは一致していなくてもよい。第1吸着モードは、第1検出モードが開始するタイミングよりも先に開始してもよいし、第1検出モードが開始するタイミング以降に開始してもよい。また第1吸着モードは、第1検出モードが終了するタイミングよりも先に終了してもよいし、第1検出モードが終了するタイミング以降に終了してもよい。第1吸着モードの実行期間は、第1検出モードの実行期間より長くてもよいし短くてもよい。
【0017】
制御システム2が第1検出モードとは別にキャリブレーションモードを有する場合、第1検出モードは、キャリブレーションモードの後に、試料ガスをセンサ11から吸着部12に向かう方向に沿って流した状態で、センサ11で化学物質を検出するモードとなる。
【0018】
濃縮モード(第2吸着モード)は、化学物質を吸着部12へ吸着させて、化学物質の濃縮を行うモードである。すなわち、ガス中に含まれる分子(化学物質)を吸着部12で捕集するモードである。ここでは、濃縮モードは、第1検出モードの後に、実行される。特に濃縮モードは、ガスの少なくとも一部が検出室10内を吸着部12、センサ11の順の方向に沿って流れている状態で、化学物質を吸着部12へ吸着させて、化学物質の濃縮を行うモードである。言い換えると、濃縮モード(第2吸着モード)は、第1吸着モードの後に、試料ガス(の少なくとも一部)を吸着部12からセンサ11に向かう方向に沿って流した状態で、吸着部12で化学物質の吸着を行うモードである。
【0019】
第2検出モードは、濃縮モードにて濃縮された化学物質(捕集した多数の分子)を吸着部12から脱離させた状態で、上記信号に基づき化学物質を検出する。「脱離」は、例えば、吸着部12への加熱により行われる。言い換えると、第2検出モードは、第1吸着モードと第2吸着モードにて吸着された化学物質を吸着部12から脱離させ、センサ11で化学物質を検出するモードである。
【0020】
ここで本実施形態においては、第1検出モード中に、濃縮モードにおける化学物質の吸着(第2吸着モード)に先行して、化学物質の吸着(第1吸着モード)を行う。すなわち、ガスの少なくとも一部が、センサ11、吸着部12の順の方向に沿って流れている状態で、吸着部12にて化学物質の吸着を行う。
【0021】
この構成によれば、ガス(試料ガス)の流路の一部(流路L1)を形成する検出室10内にセンサ11と吸着部12とが配置された検出装置1を使用しているため、特許文献1に記載の匂い検知装置における流路構造とは異なり、流路L1が簡素化されている。また第1検出モード中に、濃縮モードにおける化学物質の吸着に先行して、化学物質の吸着を行うため、濃縮モードにおける、化学物質の濃縮に要する時間の短縮を図ることができる。つまり、第1吸着モードで先行して化学物質の吸着が行われるため、第2吸着モードにおける化学物質の吸着に要する時間の短縮を図ることができる。特に第2吸着モード(濃縮モード)中におけるガスの流れる方向は、吸着部12からセンサ11に向かう方向であるため、化学物質の吸着に要する時間の短縮を図ることができる。
【0022】
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る検出装置1を備えた検出システム100の全体構成について詳しく説明する。検出システム100は、上述した検出装置1に加えて、制御システム2、複数のバルブ3(
図1では5個)、及びポンプ4等を備えている。
【0023】
(2.2)検出装置
検出装置1は、上述の通り、ガス(試料ガス)の流路L1となる検出室10内においてガス中に存在する化学物質を検出するように構成されている。ここで言う「化学物質」の例は、揮発性有機化合物、及び無機化合物を含む。揮発性有機化合物の例は、ケトン類、アミン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、アルデヒド類、エステル類、有機酸、メチルメルカプタン、及びジスルフィドを含む。無機化合物の例は、硫化水素、二酸化硫黄、及び二硫化炭素を含む。
【0024】
検出装置1は、
図1に示すように、上述したセンサ11と吸着部12に加えて、筐体13、基板14、温湿度センサ15、及びシール部材16等を備えている。
【0025】
筐体13は、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂によって、矩形の箱状に形成されている。筐体13は、
図3Bに示すように、例えば、上カバー131と下ケース132とを備えており、縦割りの構造を有している。上カバー131と下ケース132とは、例えば、それらの四隅を4本の六角穴付きネジ17で、ネジ止めすることで互いに組み付けられる。
【0026】
上カバー131は、下ケース132と対向する面において、下ケース132から離れる方向に凹んだ凹所134(
図1参照)を有している。また下ケース132は、上カバー131と対向する面において、上カバー131から離れる方向に凹んだ凹部135(
図1参照)を有している。凹部135内には、基板14が収容され得る。凹部135は、その底に、貫通孔として孔部136を有している。
【0027】
凹所134は、上カバー131と下ケース132とが組み付けられることで、凹部135内の基板14と共に、ガスの流路L1となる空間を形成し得る。当該空間が、検出室10に相当する。なお、ガスが上カバー131と下ケース132との隙間から、筐体13の外部に漏れ出すことを抑制するために、シール部材16(例えばOリング)が、凹所134の内周面に沿って嵌め込まれている。シール部材16は、凹所134内にある状態で基板14に押し当たり、上記隙間が封止されている。
【0028】
また上カバー131は、検出室10へのガスの流入及び流出が可能な、2つの流路口(以下、第1流路口P1及び第2流路口P2と呼ぶ)を有している。各流路口は、凹所134と空間的に繋がっている。ここでは、第1流路口P1が、
図1における左側の流路口であり、第2流路口P2が、
図1における右側の流路口である。第1流路口P1及び第2流路口P2の各々は、(後述する)制御システム2の動作モードに応じて、ガスの入口にも出口にもなり得る。第1流路口P1及び第2流路口P2の各々は、5個のバルブ3が配設された経路L2に接続されている。なお、経路L2は、配管チューブ等により構成されている。
【0029】
また上カバー131は、
図1に示すように、凹所134内において、突出リブ133を有している。ただし、突出リブ133については、後の「(2.6)突出リブ」の欄で詳細に説明する。
【0030】
基板14は、例えばエポキシ樹脂製のプリント配線基板である。基板14は、
図3Aに示すように、平面視(上から見て)円形状に形成されている。基板14は、表面上にパターン形成された導体部を有している。温湿度センサ15、センサ11、及び吸着部12は、基板14の実装面(
図1では上面)において、左側からこの順番に、一列に並ぶように表面実装されている。言い換えると、センサ11は、基板14の実装面の略中央に配置され、温湿度センサ15と吸着部12とが、センサ11を左右方向に挟むように配置されている。この他にも、基板14には、種々の電子部品が実装されてもよい。
【0031】
基板14は、その実装面が検出室10の側を向くように、下ケース132の凹部135に嵌め込まれている。また基板14の裏面(
図1では下面)の一部は、凹部135の底にある孔部136を介して、外部に露出している。第1流路口P1の、凹所134側における開口端は、温湿度センサ15と対向している。第2流路口P2の、凹所134側における開口端は、吸着部12と対向している。
【0032】
センサ11は、平面視(上から見て)矩形状に形成された、チップ型の部位である。センサ11は、基板14の実装面に実装された状態で、検出室10内に配置されている。センサ11は、1又は複数のセンサ素子110を有している。本開示では、一例として、
図3Aに示すように、16個のセンサ素子110が、4×4のマトリックス状に配置されている。要するに、センサ11は、一例として、複数のセンサ素子110で構成されたセンサアレイである。
【0033】
センサ11は、検出室10内におけるガス中の化学物質を検知して、化学物質に応じた信号(検知信号)を出力する。各センサ素子110は、例えば、互いに異なる検出特性を有している。検知信号は、複数のセンサ素子110がそれぞれ出力する複数の個別信号を含む。
【0034】
センサ11の種類は、特に限定されない。センサ11は、例えば、半導体式センサ、電気化学式センサ、表面弾性波素子、電界効果トランジスタバイオセンサ(FETバイオセンサ)、又は光学センサ等を用いることができる。
【0035】
なお、センサ11の検知信号(電気信号)は、基板14の裏面側から、孔部136を介して、基板14の導体部に電気的に接続される信号線(不図示)によって、検出装置1の外部に送出される。
【0036】
吸着部12は、平面視(上から見て)矩形状に形成された、チップ型の部位である。吸着部12は、例えば、吸着材及びガス透過層を有している。
【0037】
吸着材は、化学物質と接触すると化学物質を吸着し、加熱されると化学物質を脱離させる性質を有している。吸着材は、一例として、導電性を有するナノワイヤの集合体である。吸着材は、例えば複数本のナノワイヤを、ナノワイヤ間に隙間があくように束ねることで構成される。ナノワイヤ間の隙間に化学物質が入り込んでナノワイヤに吸着しやすくなる。
【0038】
ナノワイヤは、少なくとも一種類の化学物質を吸着する性質を有するならば、その材質に制限はない。ナノワイヤは、例えばSnO2、ZnO、In2O3、In2-xSnxO3(例えば、0.1≦x≦0.2)、NiO、CuO、TiO2、SiO2といった金属酸化物、Al、Ag、Au、Pd、Ptといった金属、カーボン、又はシリコンを含有する。ナノワイヤがカーボンを含有する場合、ナノワイヤは例えばカーボンナノチューブである。
【0039】
ナノワイヤは、ワイヤ状のコアと、コアを被覆する膜であるシェルとを備えてもよい。この場合、シェルが、少なくとも一種類の化学物質を吸着する性質を有することが好ましい。コアは、上記のような金属酸化物、金属、カーボン、又はシリコンを含んでもよく、樹脂を含んでもよい。シェルは、例えば上記のような金属酸化物を含有する。
【0040】
吸着部12の吸着特性は、吸着材の材質、詳しくはナノワイヤ全体の材質又はシェルの材質、に依存する。すなわち、ナノワイヤ全体の材質又はシェルの材質を変更することで、吸着部12に吸着する化学物質の種類を変更できる。
【0041】
吸着部12のガス透過層は、吸着材の少なくとも一部を覆う。ガス透過層は、吸着材におけるガス透過層で覆われた部分の、水分による吸着性能の影響を低減できる。ガス透過層の材質は、ガス透過性を有するならば、特に制限はない。ガス透過層は、例えばガス透過性を有する樹脂を含有する。
【0042】
また吸着部12は、第1電極、第2電極及び導電層を有している。第1電極及び第2電極は、導電層を介して吸着材と電気的に接続されている。これらの電極を用いて、導電性を有する吸着材に電流を流すことで、吸着材はジュール熱を発する。吸着材は、ジュール熱により自己加熱を生じ得る。吸着部12に吸着した化学物質は、吸着材の発する熱により、吸着材から脱離可能となる。要するに、吸着部12の吸着材は、化学物質を吸着する機能と、熱により化学物質を脱離させる機能の両方を有している。
【0043】
吸着部12の吸着材への電流は、制御システム2の制御部21の制御下で、供給部22よって供給される。供給部22は、給電線により、基板14の裏面側の孔部136を介して、基板14の導体部に電気的に接続されている。
【0044】
温湿度センサ15は、平面視(上から見て)矩形状に形成された、チップ型の部位である。温湿度センサ15は、基板14の実装面に実装された状態で、検出室10内に配置されている。温湿度センサ15は、検出室10内におけるガスの温度及び湿度を検知して、温度及び湿度に応じた信号(電気信号)を出力する。温湿度センサ15からの電気信号は、基板14の裏面側から孔部136を介して、基板14の導体部に電気的に接続される信号線(不図示)によって、検出装置1の外部に送出される。
【0045】
制御システム2の制御部21は、温湿度センサ15からの電気信号に基づいて、温度及び湿度に関する情報を取得し、例えば、吸着部12における発熱に関する制御を行ってもよい。すなわち、制御部21は、温度及び湿度に関する情報を監視して、供給部22からの電流供給量をフィードバック制御してもよい。
【0046】
(2.3)ガスの経路とバルブ
ここで検出装置1が繋がれている経路L2、複数(5個)のバルブ3、及びポンプ4について
図4A及び
図4Bを参照しながら説明する。本開示の検出システム100では、一例として、リファレンスガスRF1、第1試料(ガス)G1及び第2試料(ガス)G2が、予め経路L2に繋がれているものとする。そして、これらのガスは、各バルブ3の開閉制御により、選択的に検出装置1の検出室10内に流入することが可能な構成となっている。すなわち、バルブ3は、検出室10に繋がる経路L2の開閉を行う。
【0047】
なお、
図1、
図4A及び
図4Bでは、第1試料G1及び第2試料G2が図示されているが、これらのガスが互いに関係性を有しているという意図ではなく、種類の異なるガスの切り換えがバルブの開閉で容易に行えることを説明するためである。第1試料G1及び第2試料G2は、例えば、大気に近い成分のガスを想定するが、特に限定されない。第1試料G1は、例えば道路又は建物内のある所定空間内における空気(環境ガス)かもしれない。第2試料G2は、例えば人間等の生体の呼気かもしれない。
【0048】
以下では、第1試料G1及び第2試料G2に最も近い側にあるバルブ3を、第1バルブ31と呼び、第1バルブ31とリファレンスガスRF1との間にあるバルブ3を、第2バルブ32と呼ぶこともある。また、第2バルブ32から経路L2が二股に分かれており、検出装置1の第1流路口P1側にあるバルブ3を、第3バルブ33と呼び、検出装置1の第2流路口P2側にあるバルブ3を、第4バルブ34と呼ぶこともある。またポンプ4に最も近い側にあるバルブ3を、第5バルブ35と呼ぶこともある。
【0049】
各バルブ3は、一例として、互いに同じ構成を有しており、ガスの流路方向の切り換えが可能な、三方の電磁バルブ(三方向の電磁弁)である。これらのバルブ3は、経路L2に配置されて、経路L2内におけるガスの流路方向を切り換える。各バルブ3は、ノーマリクローズ(常時閉)のポート(以下、NCポート)と、ノーマリオープン(常時開)のポート(以下、NOポート)と、コモンポート(以下、COMポート)とを有している。
【0050】
例えば、第1バルブ31に関して、NCポートは、第1試料G1に繋がり、NOポートは、第2試料G2に繋がり、COMポートは、第2バルブ32に繋がる。第2バルブ32に関して、NCポートは、リファレンスガスRF1に繋がり、NOポートは、第1バルブ31に繋がり、COMポートは、第3バルブ33及び第4バルブ34に繋がる。
【0051】
第3バルブ33に関して、NCポートは、第2バルブ32に繋がり、NOポートは、第5バルブ35に繋がり、COMポートは、検出装置1の第1流路口P1に繋がる。第4バルブ34に関して、NCポートは、第2バルブ32に繋がり、NOポートは、第5バルブ35に繋がり、COMポートは、検出装置1の第2流路口P2に繋がる。第5バルブ35に関して、NCポートは、第3バルブ33及び第4バルブ34に繋がり、NOポートは、未使用の状態にあり、COMポートは、ポンプ4に繋がる。
【0052】
そして本開示では、各バルブ3は、制御システム2と電気的に接続されており、各バルブ3のNCポートとNOポートとの開閉の切り換え制御が、制御システム2にて行われる。なお、各バルブ3は、上述の通り、電磁弁であるが、特に限定されず、複数のバルブ3のうちの1つ以上が電動弁でもよいし、手動弁でもよい。手動弁の場合、化学物質の測定者が、手動により適宜のタイミングで開閉の切り換え作業を行なってもよい。
【0053】
また
図4A及び
図4Bに示す経路L2の構造は、単なる一例であり、バルブ3の数、及びその配置等は、特に限定されない。また、リファレンスガス及び試料ガスの種類、並びにその種類数も、特に限定されない。例えば、化学物質の測定者が、手動により、第1試料(ガス)G1又は第2試料(ガス)G2を、第2バルブ32のNOポートに対して選択的に繋ぎ変えてもよい。この場合、第1バルブ31は、省略されてもよい。
【0054】
本開示におけるポンプ4は、吸引式のポンプである。ポンプ4は、検出室10内のガスを吸引するように動作する。言い換えると、ポンプ4は、検出室10に対して負圧を与える。そのため、流路L1に、気流を発生させ得る。なお、ポンプ4は、吸引式に限らない。ポンプ4は、加圧式でもよく、この場合ポンプ4が経路L2の上流側に配置されて、ガスを検出室10に送るように、経路L2が構成されてもよい。また、流路L1に、気流を発生させるものであれば、ポンプに限定されず、ポンプの代わりに、例えば送風ファンが用いられてもよい。
【0055】
(2.4)制御システム
制御システム2は、5個のバルブ3の開閉制御を行い、検出装置1の検出室10内におけるガスの流れを制御するように構成されている。また制御システム2は、検出装置1(センサ11、吸着部12及び温湿度センサ15等)、並びにポンプ4の動作制御を行うように構成されている。制御システム2は、センサ11の検知信号を受信すると、化学物質の分析を行う分析機能を有している。なお、制御システム2は、別途設けられた分析装置にセンサ11の検知信号に基づく情報を送信して、分析を指示してもよい。
【0056】
制御システム2は、
図2に示すように、制御部21及び供給部22を備えている。制御システム2における制御部21及び供給部22の機能は、全てが1の筐体内に収められた1つの装置により構成されてもよいし、複数の装置に分散して構成されてもよい。
【0057】
制御部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを主構成とするマイクロコントローラにて構成されている。言い換えれば、制御部21は、CPU及びメモリを有するコンピュータにて実現されており、CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータが制御部21として機能する。プログラムは、ここではメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0058】
制御部21は、電磁弁である各バルブ3に対して駆動信号を送出して、各バルブ3における開閉を行わせる。バルブ3は、駆動信号を受けることでオンになると、NCポートが開状態となり、代わりにNOポートが閉状態となる。またバルブ3は、オフになると、NCポートが元の閉状態になり、NOポートが元の開状態になる。
【0059】
供給部22は、電源回路等を備えており、制御部21は、供給部22を制御して、検出装置1に動作電源を供給する。特に、制御部21は、上述の通り、供給部22を制御して吸着部12の吸着材に電流を流すことで、吸着材を加熱させて、化学物質を脱離させる。
【0060】
ところで、本開示の制御システム2は、第1検出モードと第1吸着モードと濃縮モード(第2吸着モード)と第2検出モードとリフレッシュモードとを、動作モードとして、有している。具体的には、制御部21は、各モードにおいて、5個のバルブ3の開閉制御、及びポンプ4の動作制御を行うことで、検出装置1の検出室10内のガスの気流を制御する。
【0061】
第1検出モードは、センサ11のキャリブレーション(較正)を行う、キャリブレーションモード(以下、CBモード)に相当する。センサ11は、例えば、経年劣化又は製造誤差等により、センサ11の検知信号(測定値)に誤差が生じ得る。そのため、制御システム2でセンサ11単体の能力を特定するために、キャリブレーションが必要とされる。特に、試料ガス中の化学物質の濃度が十分に低い場合、当該試料ガスを化学物質が含まないガスと見なして、キャリブレーションを行うことができる。つまり、第1検出モードの測定値を基に、センサ11のゼロ点補正を行う。キャリブレーションを行うことで、センサ11単体における、試料ガスに関する検量線(例えば濃度と強度の関係)を得ることができる。CBモードで使用するガスは、後の変形例で説明するように測定対象となる化学物質を含まない純粋なガス(例えば窒素ガス)又は含んでいても僅かであるリファレンスガスRF1でもよいが、ここでは第1試料G1を使用する。これは、測定前から第1試料G1中の化学物質の濃度が極めて低いと予想があるという観点の基で、第1試料G1を、キャリブレーション用のガスとして用いる。要するに、ここでは、測定対象となる化学物質を含んだ第1試料G1が、第1検出モード(CBモード)でも使用され、さらに第2検出モードでも使用される。
【0062】
制御部21は、第1検出モードにおいて、第1試料G1を検出室10内に流入した状態におけるセンサ11の検知信号に基づいて、キャリブレーションを行う(補正値の決定)。ここでガス(の少なくとも一部)が検出室10内をセンサ11、吸着部12の順の方向に沿って流れている状態で、キャリブレーションを行う。具体的には、制御部21は、第1試料G1が、
図4Aにおける第1順路RT1に沿って、ポンプ4に向かって流れるように、バルブ3の開閉及びポンプ4の動作を制御する。また制御部21は、第1検出モードの実行期間の少なくとも一部と重複する期間を含む実行期間に、吸着部12で化学物質の吸着を行う第1吸着モードを実行する。
【0063】
濃縮モード(第2吸着モード)は、化学物質を吸着部12へ吸着させて、化学物質の濃縮を行うモードである。すなわち、ガス中に含まれる分子(化学物質)を吸着部12で捕集するモードである。ここでは、濃縮モードは、第1検出モードと第1吸着モードの後に、実行される。
【0064】
制御部21は、濃縮モードにおいて、第1試料G1を検出室10内に流入させる。ただし、ガスの流入する方向が、第1検出モードとは異なる。すなわち、ガス(の少なくとも一部)が検出室10内を吸着部12、センサ11の順の方向に沿って流れている状態で、濃縮を行う。具体的には、制御部21は、第1試料G1が、
図4Bにおける第2順路RT2に沿って、ポンプ4に向かって流れるように、バルブ3の開閉及びポンプ4の動作を制御する。
【0065】
第2検出モードは、濃縮モードにて濃縮された化学物質(捕集した多数の分子)を脱離させた状態で、センサ11の検知信号に基づき化学物質を検出(測定)する。
【0066】
制御部21は、第2検出モードにおいて、第1試料G1の検出室10内への流入を停止させる。具体的には、制御部21は、例えば、第3バルブ33と第4バルブ34と第5バルブ35とをオフ状態に、すなわちこれらのNCポートを閉状態に切り換える。また制御部21は、ポンプ4を停止させる。これにより、検出室10は、略密閉された閉空間となる。さらに制御部21は、第2検出モードにおいて、供給部22からの電流供給によって、吸着部12への加熱を行い、吸着部12で捕集されていた化学物質を脱離させる。その結果、検出室10内における第1試料G1中の化学物質の濃度を高めることができる。
【0067】
リフレッシュモードは、第1試料G1の測定の終了後、すなわち第2検出モードの後に、センサ11、吸着部12の順の方向に沿ってガスを流して、吸着部12のリフレッシュ(洗浄)を行うモードである。制御部21は、リフレッシュモードにおいて、リファレンスガスRF1を検出室10内に流入させる。リフレッシュモードでは、第2バルブ32より下流におけるガスの流入する方向は、第1検出モードにおける方向(
図4A中の第1順路RT1を参照)と概ね共通する。ただし、使用するガスは、第1検出モードと異なり、リファレンスガスRF1である。
【0068】
また制御部21は、リフレッシュモードにおいても、供給部22からの電流供給によって、吸着部12への加熱を行う。すなわち、吸着部12への加熱を行いつつ、上記の方向でリファレンスガスRF1を流す。その結果、センサ11への化学物質の付着を抑制しつつ、吸着部12のリフレッシュを行うことができる。
【0069】
なお、第1試料G1中の化学物質の濃度が比較的低い場合、リフレッシュモードにおいても、使用するガスは、第1試料G1であってもよい。
【0070】
(2.5)検出装置の使用方法
以下、検出装置1の使用方法について、
図5A及び5Bを参照しながら説明する。以下では、第1試料G1を測定対象に用いた例を説明する。
【0071】
検出装置1の使用方法は、第1検出モード(CBモード)を有している(
図5A:ステップST1)。まず第1検出モードにて、第1試料G1を第1順路RT1に沿って流す。すなわち、第1バルブ31、第3バルブ33、及び第5バルブ35をオンにして、さらにポンプ4を動作させる。第2バルブ32及び第4バルブ34はオフとする。その結果、第1試料G1は、
図5Bの一番上の模式図に示すように、センサ11、吸着部12の順の方向に沿って流れる。この状態で、センサ11のキャリブレーションが行われる。さらに第1検出モードでは、吸着部12にて、第1試料G1中の化学物質の吸着も行われることになる。言い換えると、第1検出モードの実行期間の少なくとも一部と重複する期間を含む実行期間に、吸着部12で化学物質の吸着を行う第1吸着モードが実行される。なお、第1検出モードに要する時間は、例えば、約120秒である。
【0072】
また検出装置1の使用方法は、濃縮(捕集)モードを有している(
図5A:ステップST2)。濃縮モードにて、第1試料G1を第2順路RT2に沿って流す。すなわち、第1バルブ31、第4バルブ34、及び第5バルブ35をオンにして、さらにポンプ4を動作させる。第2バルブ32及び第3バルブ33はオフとする。その結果、第1試料G1は、
図5Bの上から二番目の模式図に示すように、吸着部12、センサ11の順の方向に沿って流れる。この状態で、第1試料G1中の化学物質を吸着部12へ吸着させて、化学物質の濃縮を行う。なお、濃縮モードに要する時間は、例えば、約180秒である。
【0073】
また検出装置1の使用方法は、第2検出モードを有している(
図5A:ステップST3)。第2検出モードにて、第1試料G1の気流を止める。すなわち、第3バルブ33、第4バルブ34、及び第5バルブ35をオフにして、ポンプ4を停止させる。その結果、検出室10は、
図5Bの上から三番目の模式図に示すように、概ね封止された状態となる。そして、濃縮モードにて濃縮された化学物質を(加熱により)脱離させた状態で、センサ11の検知信号に基づき化学物質を検出する。つまり、第2検出モードにて、第1吸着モードと第2吸着モードにて吸着された化学物質を吸着部12から脱離させ、センサ11で化学物質を検出する。なお、第2検出モードに要する時間は、例えば、約10秒である。また加熱の目標温度は、例えば、200℃である。
【0074】
また検出装置1の使用方法は、リフレッシュ(洗浄)モードを有している(
図5A:ステップST4)。リフレッシュモードにて、リファレンスガスRF1を、第1順路RT1に沿って流す。すなわち、第2バルブ32、第3バルブ33、及び第5バルブ35をオンにして、さらにポンプ4を動作させる。第1バルブ31及び第4バルブ34はオフとする。その結果、リファレンスガスRF1は、
図5Bの一番下の模式図に示すように、センサ11、吸着部12の順の方向に沿って流れる。なお、リフレッシュモードに要する時間は、例えば、約10秒である。
【0075】
このように本開示の使用方法においては、第1検出モード中に、濃縮モードにおける化学物質の吸着に先行して、化学物質の吸着を行う。そのため、濃縮モードにおける、化学物質の濃縮に要する時間の短縮を図ることができる。つまり、第1吸着モードで先行して化学物質の吸着が行われるため、第2吸着モードにおける化学物質の吸着に要する時間の短縮を図ることができる。特に、濃縮モードは、他のモードに比べて最も長い時間を要する。そのため、CBモードという準備段階においても化学物質の吸着を行うことで、全体としての測定時間の短縮を効果的に図ることができる。
【0076】
また同一の検出室10内にセンサ11と吸着部12とが配置された検出装置1を使用しているため、特許文献1に記載の匂い検知装置における流路構造とは異なり、流路L1が簡素化されている。
【0077】
また第2検出モードにて、第1検出モードにおける検出結果(キャリブレーションの補正値結果)を用いて、化学物質を検出しているため、より信頼性の高い検出結果を得ることができる。特に第1検出モードでは、ガスがセンサ11、吸着部12の順の方向に沿って流れている状態で検出を行うため、キャリブレーションに適している。すなわち、ガスがセンサ11よりも先に吸着部12を通る方向に流れる場合に比べて、センサ11上を通過するガスの流れをより均一にすることができる。
【0078】
一方、濃縮モードでは、第1検出モードとは逆に、ガスが吸着部12、センサ11の順の方向に沿って流れている状態で濃縮を行うため、吸着部12への濃縮(吸着)をより効果的に行うことができる。すなわち、もしガスがセンサ11、吸着部12の順の方向に沿って流れている状態で濃縮を行うと、吸着部12に辿り着く前にセンサ11に付着してしまう化学物質が少なからず存在し得るためである。したがって、化学物質の濃縮に要する時間の更なる短縮を図ることができる。
【0079】
(2.6)突出リブ
ところで、本実施形態の筐体13は、流路L1の、吸着部12からセンサ11に向かう方向に直交する断面積S1(
図1参照)は、吸着部12からセンサ11に向けて広くなる構造を有している。ここでは、上記構造が、一例として、突出リブ133(
図1参照)によって実現されている。言い換えると、検出装置1は、突出リブ133を有している。
【0080】
突出リブ133は、上カバー131の凹所134の底面における、吸着部12と対向する領域から、吸着部12に近づくように、突出している。突出リブ133は、吸着部12側(下側)から見て、矩形状の扁平な基台となっている。突出リブ133の表面積は、吸着部12の表面積よりもやや大きいことが望ましいが、特に限定されない。上下方向における突出リブ133と吸着部12との間には、所定寸法の隙間が設けられている。なお、突出リブ133は、シール部材16よりも内側に配置されている。また第2流路口P2の開口端は、この突出リブ133に設けられている。
【0081】
例えば、突出リブ133の高さ寸法は、0.75mmであり、吸着部12の厚み寸法は、0.5mmであり、上記所定寸法は、0.25mmである。すなわち、検出室10内の上面及び下面間の寸法は、例えば1.5mmである。なお、これらの数値は、単なる一例であり、限定されるものではない。
【0082】
突出リブ133が設けられていることで、濃縮モードにおいて、
図5Bの上から二番目の図に示すように、ガスが第2流路口P2から吸着部12に向かって流入した時に、比較的狭い上記の隙間内で、ガスの乱流を引き起こす可能性が高くなる。すなわち、ガスの一部が当該隙間内で停留する時間が長くなり、化学物質の吸着がより促進される。したがって、化学物質の濃縮に要する時間の更なる短縮を図ることができる。
【0083】
なお、図示例では、突出リブ133によって流路L1の一部が高さ(上下方向)について狭くなることで、断面積S1が吸着部12からセンサ11に向けて広くなる構造を実現している。しかし、流路L1の一部が幅(
図1で言えば奥行方向)について狭くなることで、断面積S1が吸着部12からセンサ11に向けて広くなる構造を実現してもよい。
【0084】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係る検出装置1及び制御システム2と同様の機能は、検出装置1及び制御システム2の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0085】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0086】
本開示における制御システム2の制御部21は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御システム2の制御部21としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0087】
また、検出装置1及び制御システム2の各々における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは、検出装置1及び制御システム2の各々に必須の構成ではなく、これらの構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、検出装置1及び制御システム2の各々の少なくとも一部の機能、例えば、制御システム2の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、基本例のように、制御システム2の複数の機能が1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0088】
(3.1)キャリブレーションに関する変形例
基本例では、第1検出モードがCBモードに相当することを想定した。しかし、CBモードは、第1検出モードとは別にあってもよい。以下、本変形例について
図6A及び
図6Bを参照しながら説明する。
【0089】
本変形例では、検出装置1の検出方法(使用方法)が、第1検出モード、第1吸着モード、濃縮モード(第2吸着モード)、第2検出モード、及びリフレッシュモードに加えて、CBモードを更に有している。ただし、リフレッシュモードは、本開示において必須のモードではなく、検出装置1の検出方法は、リフレッシュモードを有していなくてもよい。
【0090】
本変形例では、CBモード(
図6A:ステップST11)が、第1検出モード(
図6A:ステップST12)の前に設定される。具体的には、制御システム2は、動作モードとして、CBモード、第1検出モード(第1吸着モードは、例えば第1検出モードの実行期間中に平行して実行)、濃縮モード(第2吸着モード)、第2検出モード、及びリフレッシュモードを、この順に行う。なお、化学物質の検出(測定)を繰り返して実行する場合、1回目のリフレッシュモードが2回目のCBモードに、以降も2回目のリフレッシュモードが3回目のCBモードに相当してもよい。要するに、リフレッシュモードがCBモードを兼ねていてもよい。
【0091】
ところで、例えば第1試料G1中の化学物質の濃度が比較的高いことが、測定前から予想される場合、第1試料G1を基本例のようにCBモードで流すことは、適切とは言えない場合がある。本変形例では、この点を考慮して、CBモードは、リファレンスガスRF1を用いて行われる。要するに、リファレンスガスRF1は、化学物質の含有量が試料ガスに比べて小さい低濃度ガスに相当する。
【0092】
一方、本変形例における第1検出モードは、濃縮モード後の「本検出」に相当する第2検出モードに対する、簡易的な検出モードに相当する。すなわち、制御システム2は、第1検出モードを、第2検出モードと同様に、第1試料G1(又は第2試料G2)を流して、センサ11の検知信号に基づき化学物質を検出(測定)する。ただし、第1検出モードは、第2検出モードとは異なり、脱離を行わない。また「簡易的な」検出として、例えば、第2検出モードで測定結果の分析で使用される濃度判定の閾値よりも低い閾値が用いられてもよい。なお、本変形例における第1検出モードのガスの順路については、基本例と同様に、第1順路RT1が適用される。したがって、第2順路RT2が適用される場合に比べて、すなわちガスがセンサ11よりも先に吸着部12を通る方向に流れる場合に比べて、化学物質がセンサ11で検出する前に吸着部12で捕集されてしまう可能性を低減できる。
【0093】
また基本例では、第1検出モードがCBモードに相当していたことに起因して、第1検出モードに要する時間が、例えば120秒であった。しかし、本変形例の第1検出モードは、第2検出モードと同様に、例えば10秒程度であってもよい。
【0094】
そして本変形例では、制御システム2の制御部21は、第1検出モードにおける検出結果に基づいて、濃縮モード(第2吸着モード)と第2検出モードに移行するか否かを決定するように構成されている。言い換えると、制御部21は、本検出に進む必要性の有無を判定する機能を有している。制御部21は、例えば、第1検出モードにより得られた測定データ(化学物質の濃度データ等)が、規定の閾値を超えていれば、本検出に進む必要性が無い、と判定する。
【0095】
制御システム2は、その判定結果を、ユーザ(測定者等)に提示する提示部(例えばディスプレイ等)を有していることが望ましい。制御部21は、例えば、本検出に進む必要性が無いと判定すると、その旨を上記の提示部より測定者に提示し、さらに、濃縮モードへの移行を行わずに、動作モードを停止又は保留状態にしてもよい。
【0096】
要するに、第1試料G1中の化学物質の濃度が比較的高い場合、濃縮モードを介した検出を行わなくても、CBモードと第1検出モードとの結果により、必要十分な測定データが得られる可能性がある。本変形例のように、制御システム2が上記の機能を有していることで、第1検出モードの結果次第で、濃縮モード及び第2検出モードに移行しない可能性もある。その結果、濃縮モード及び第2検出モードに費やす時間を省略できる可能性がある。また仮に本検出に進む必要性が有ると判定されたとしても、第1検出モードにおいて、先行して化学物質の吸着が行われているため、基本例と同様に、化学物質の濃縮に要する時間の短縮を図ることができる。
【0097】
以上の説明から分かるように、CBモード(ステップST11)、第1検出モード(ステップST12)、第2吸着モード(ステップST13)、第2検出モード(ステップST14)及びリフレッシュモード(ステップST15)が順に実行される(
図6A参照)。
【0098】
CBモードでは、
図6Bの一番上の模式図に示すように、リファレンスガスRF1(低濃度ガス)をセンサ11から吸着部12に向かう方向に沿って流した状態で、センサ11のキャリブレーションを行う。
【0099】
第1検出モードでは、
図6Bの上から二番目の模式図に示すように、試料ガス(第1試料G1又は第2試料G2)をセンサ11から吸着部12に向かう方向に沿って流した状態で、センサ11で化学物質を検出する。第1吸着モードでは、例えば、第1検出モードの実行期間中に平行して、吸着部12で化学物質の吸着を行う。
【0100】
第2吸着モードでは、
図6Bの上から三番目の模式図に示すように、試料ガス(第1試料G1又は第2試料G2)を吸着部12からセンサ11に向かう方向に沿って流した状態で、吸着部12で化学物質の吸着を行う。
【0101】
第2検出モードでは、
図6Bの上から四番目の模式図に示すように、第1吸着モードと第2吸着モードにて吸着された化学物質を吸着部12から脱離させ、センサ11で化学物質を検出する。
【0102】
リフレッシュモードでは、
図6Bの一番下の模式図に示すように、リファレンスガスRF1(低濃度ガス)をセンサ11から吸着部12に向かう方向に沿って流して、吸着部12のリフレッシュ(洗浄)を行う。
【0103】
なお、制御部21が本検出に進む必要性の有無を判定する機能を有する代わりに、ユーザ(測定者等)自身が、CBモードと第1検出モードとで得られた測定データに基づき、本検出に進む必要性の有無を判定してもよい。
【0104】
またCBモードと第1検出モードとは、それぞれ所定の回数(2回以上)だけ実行されてもよい。例えば、CBモードと第1検出モードとが交互に行われ、それぞれ所定の回数行なった上で、本検出に進む必要性の有無が判定されてもよい。
【0105】
(3.2)その他の変形例
基本例では、センサ11及び吸着部12の数は、それぞれ1個である。しかし、これらの数は特に限定されない。例えばセンサ11は複数あってもよい。またセンサ11及び吸着部12の位置関係についても、これらが、基板14上で一列に配置されることに限定されない。すなわち、第1検出モードにおいて、ガス(の少なくとも一部)が検出室10内をセンサ11、吸着部12の順の方向に沿って流れている状態となり得るものであれば、センサ11及び吸着部12の数、並びにそれらの配置は、特に限定されない。具体的には、例えば、1個の吸着部12が、基板14の実装面の略中央に配置され、2つ以上のセンサ11が、吸着部12の周囲を囲むように基板14の実装面に配置されてもよい。
【0106】
また基本例では、流路口の数が2つ(第1流路口P1と第2流路口P2)であるが、2つに限定されない。例えば、流路口が3つ以上あり、さらに口径が異なってもよい。
【0107】
基本例では、第2検出モード時に、検出室10を閉空間としている。しかし、第2検出モードにおいて、第1検出モードに比較して、検出室10内におけるガスの流速を低くしていればよく、検出室10を閉空間にしなくてもよい。第2検出モードにおけるガスの流速を、第1検出モードにおけるガスの流速(一例として、50~500ml/分)よりも低くすることで、流路L1における化学物質の濃度を効率良く高めることができる。ただし、基本例のように、第2検出モードにおけるガスの流速をほぼゼロ、すなわち検出室10を概ね密封された空間にすれば、センサ11が化学物質を検知する可能性が高くなり、さらに化学物質の濃度を効率良く高めることができる。
【0108】
基本例では、第2検出モードにおいて、ガスの気流を止めるために、ポンプ4を停止させて検出室10内を閉状態にしている。しかし、第2検出モードにおいて、例えばポンプ4又は別の吸引手段を動作させて、検出室10内を、少なくとも大気圧よりも低い状態(真空に近い状態が望ましい)にしてから、加熱を行って化学物質の脱離を行なってもよい。この場合、脱離した分子(化学物質)が、センサ11側へ均等に移動する可能性を高めることができる。
【0109】
リファレンスガスRF1は、例えば第1試料G1が環境ガスであれば第1試料G1をフィルタに通すことで得られたガスでもよいし、市販の純粋なガスでもよい。
【0110】
基本例の制御システム2は、検出装置1に応じて、動作モードを実行させるための制御プログラムを書き換え可能に構成されてもよい。すなわち、制御システム2に制御プログラムの更新を実行することで、センサ11及び吸着部12の種類に応じた、上述した動作モードの機能が付与されてもよい。書き換え用の制御プログラムは、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0111】
制御システム2の少なくとも一部の機能が、検出装置1内に設けられてもよい。例えば、キャリブレーション又は化学物質の分析に関する機能が、検出装置1にあってもよい。
【0112】
基本例では、リフレッシュモードが、第2検出モードの後に行われている。しかし、リフレッシュモードは、第1検出モードの前に行われてもよい。上欄「(3.1)」における変形例の場合であれば、リフレッシュモードが、CBモードの前に行われてもよい。またリフレッシュモードは、適宜に省略されてもよく、測定対象の環境ガスが変わる時だけ、又は所定の期間内に1回(例えば1日に1回)だけ行われてもよい。
【0113】
基本例では、導電性を有した吸着材への通電によって、吸着部12への加熱が実現されている。しかし、吸着部12への加熱手段として、ヒータが別途設けられてもよい。
【0114】
(4)利点
以上説明したように、第1の態様に係る検出装置(1)の検出方法(使用方法)は、試料ガスが流れる流路の一部(流路L1)を形成する検出室(10)と、吸着部(12)と、センサ(11)と、を有する検出装置(1)の検出方法である。吸着部(12)は、検出室(10)内に配置され、試料ガスに含まれる化学物質を吸着する。センサ(11)は、検出室(10)内に配置され、試料ガスに含まれる化学物質を検出する。検出方法は、キャリブレーションモードと、第1検出モードと、第1吸着モードと、第2吸着モードと、第2検出モードと、を有する。キャリブレーションモードにて、化学物質の含有量が試料ガスに比べて小さい低濃度ガスをセンサ(11)から吸着部(12)に向かう方向に沿って流した状態で、センサ(11)のキャリブレーションを行う。第1検出モードにて、キャリブレーションモードの後に、試料ガスをセンサ(11)から吸着部(12)に向かう方向に沿って流した状態で、センサ(11)で試料ガスに含まれる化学物質を検出する。第1吸着モードにて、第1検出モードの実行期間の少なくとも一部と重複する期間を含む実行期間に、吸着部(12)で化学物質の吸着を行う。第2吸着モードにて、第1吸着モードの後に、試料ガスを吸着部(12)からセンサ(11)に向かう方向に沿って流した状態で、吸着部(12)で化学物質の吸着を行う。第2検出モードにて、第1吸着モードと第2吸着モードにて吸着された化学物質を吸着部(12)から脱離させ、センサ(11)で化学物質を検出する。第1の態様によれば、試料ガスの流路の一部(流路L1)を形成する検出室(10)内にセンサ(11)と吸着部(12)とが配置された検出装置(1)を使用している。そのため、特許文献1に記載の匂い検知装置における流路構造とは異なり、流路(L1)が簡素化されている。また第1検出モード中に、第2吸着モード(濃縮モード)における化学物質の吸着に先行して、化学物質の吸着(第1吸着モード)を行うため、濃縮モードにおける、化学物質の濃縮に要する時間の短縮を図ることができる。特に第2吸着モード(濃縮モード)中におけるガスの流れる方向は、吸着部(12)からセンサ(11)に向かう方向であるため、化学物質の吸着に要する時間の短縮を図ることができる。またキャリブレーションモードが実行されるため、より信頼性の高い検出結果を得ることができる。
【0115】
第2の態様に係る検出装置(1)の検出方法は、第1の態様において、第1検出モードの検出結果に基づいて、第2吸着モードと第2検出モードに移行するか否かを決定することが好ましい。第2の態様によれば、例えば第1検出モードにおける検出結果のみで、化学物質の測定データが必要十分に得られた場合には、第2検出モードにおける検出結果を得る必要がなくなる。言い換えると、第1検出モードにおける検出結果次第で、第2吸着モード(濃縮モード)と第2検出モードに移行しない可能性もあるため、第2吸着モード(濃縮モード)及び第2検出モードに費やす時間を省略できる可能性がある。
【0116】
第3の態様に係る検出装置(1)の検出方法に関して、第1の態様又は第2の態様において、検出室(10)の、吸着部(12)からセンサ(11)に向かう方向に直交する断面積(S1)は、吸着部(12)からセンサ(11)に向けて広くなることが好ましい。第3の態様によれば、第2吸着モード(濃縮モード)において、例えば、ガスの乱流を引き起こす可能性が高められ、化学物質の吸着部(12)への濃縮(吸着)をより促進できる。したがって、化学物質の濃縮に要する時間の更なる短縮を図ることができる。
【0117】
第4の態様に係る検出装置(1)の検出方法に関して、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、第2検出モードにおいては、第1検出モードに比較して、検出室(10)内におけるガスの流速を低くすることが好ましい。第4の態様によれば、流路(L1)における化学物質の濃度を効率良く高めることができる。
【0118】
第5の態様に係る検出装置(1)の検出方法は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、第2検出モードの後に、センサ(11)から吸着部(12)に向かう方向に沿ってガスを流すリフレッシュモードを、更に有することが好ましい。第5の態様によれば、センサ(11)への化学物質の付着を抑制しつつ、吸着部(12)のリフレッシュ(洗浄)を行うことができる。
【0119】
第6の態様に係る制御システム(2)は、検出装置(1)を制御する。検出装置(1)は、試料ガスが流れる流路の一部(流路L1)を形成する検出室(10)と、吸着部(12)と、センサ(11)と、を有する。吸着部(12)は、検出室(10)内に配置され、試料ガスに含まれる化学物質を吸着する。センサ(11)は、検出室(10)内に配置され、試料ガスに含まれる化学物質を検出する。制御システム(2)は、動作モードとして、キャリブレーションモードと、第1検出モードと、第1吸着モードと、第2吸着モードと、第2検出モードと、を有する。キャリブレーションモードにて、化学物質の含有量が試料ガスに比べて小さい低濃度ガスをセンサ(11)から吸着部(12)に向かう方向に沿って流した状態で、センサ(11)のキャリブレーションを行う。第1検出モードにて、キャリブレーションモードの後に、試料ガスをセンサ(11)から吸着部(12)に向かう方向に沿って流した状態で、センサ(11)で試料ガスに含まれる化学物質を検出する。第1吸着モードにて、第1検出モードの実行期間の少なくとも一部と重複する期間を含む実行期間に、吸着部(12)で化学物質の吸着を行う。第2吸着モードにて、第1吸着モードの後に、試料ガスを吸着部(12)からセンサ(11)に向かう方向に沿って流した状態で、吸着部(12)で化学物質の吸着を行う。第2検出モードにて、第1吸着モードと第2吸着モードにて吸着された化学物質を吸着部(12)から脱離させ、センサ(11)で化学物質を検出する。第6の態様によれば、ガスの流路を簡素化しつつ、化学物質の濃縮に要する時間の短縮を図るが可能な制御システム(2)を提供できる。
【0120】
第7の態様に係る制御システム(2)は、第6の態様において、検出装置(1)に応じて、上記動作モードを実行させるための制御プログラムを書き換え可能に構成されていることが好ましい。第7の態様によれば、書き換えにより、検出装置(1)に応じた制御システム(2)の機能を付与できる。
【0121】
第8の態様に係る検出システム(100)は、第6の態様又は第7の態様における制御システム(2)と、検出装置(1)と、検出室(10)に繋がる経路(L2)の開閉を行うバルブ(3)と、を備える。制御システム(2)は、バルブ(3)の開閉制御を行い、検出室(10)内におけるガスの流れを制御する。第8の態様によれば、ガスの流路を簡素化しつつ、化学物質の濃縮に要する時間の短縮を図るが可能な検出システム(100)を提供できる。
【0122】
第9の態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、第1~第5の態様のいずれか1つにおける検出装置(1)の検出方法を実行させるためのプログラムである。第9の態様によれば、ガスの流路を簡素化しつつ、化学物質の濃縮に要する時間の短縮を図るが可能な機能を提供できる。なお、非一時的なコンピュータ可読媒体が、上記プログラムを記憶し、コンピュータシステムによる実行時に、当該コンピュータシステムに、第1~第5の態様のいずれか1つにおける検出装置(1)の検出方法を実行させてもよい。
【0123】
第2~5の態様に係る構成については、検出装置(1)の検出方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0124】
100 検出システム
1 検出装置
10 検出室
11 センサ
12 吸着部
2 制御システム
3 バルブ
RF1 リファレンスガス
S1 断面積