(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】硬化剤組成物、水系塗料組成物、塗膜、物品及び硬化剤組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/06 20060101AFI20220608BHJP
C09D 175/00 20060101ALI20220608BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220608BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20220608BHJP
C08K 5/26 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
C09D201/06
C09D175/00
C09D5/02
C08L101/02
C08K5/26
(21)【出願番号】P 2020557704
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2019045981
(87)【国際公開番号】W WO2020111000
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】P 2018222334
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】印南 雄
(72)【発明者】
【氏名】山内 豊昭
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/053342(WO,A1)
【文献】特開2020-033467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D201
C09D175
C09D5
C08L101
C08K5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を有するイソシアネート化合物(a1)及びヒドラジンから誘導されるセミカルバジド化合物(A1)と、
前記イソシアネート化合物(a1)とは異なる構造であって、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物(b1)及びヒドラジンから誘導されるセミカルバジド化合物(B1)と、
を含み、
前記イソシアネート化合物(a1)と前記イソシアネート化合物(b1)との溶解性パラメータの差の絶対値が0.15以上2.10以下である、
硬化剤組成物。
【請求項2】
組成物中の前記イソシアネート化合物(b1)に由来する構成単位のモル数が、前記イソシアネート化合物(a1)に由来する構成単位のモル数に対して、0.1mol%以上20mol%以下である、請求項1に記載の
硬化剤組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物(a1)が、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物であり、且つ、
前記イソシアネート化合物(b1)が、分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物である、請求項1又は2に記載の
硬化剤組成物。
【請求項4】
分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物(a2)及びヒドラジンから誘導されるセミカルバジド化合物(A2)と、
分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物(b2)及びヒドラジンから誘導されるセミカルバジド化合物(B2)と、を含み、
組成物中の前記イソシアネート化合物(b2)に由来する構成単位のモル数が、前記イソシアネート化合物(a2)に由来する構成単位のモル数に対して、0.1mol%以上20mol%以下である、
硬化剤組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート化合物(b1)又は前記イソシアネート化合物(b2)の数平均分子量が270以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の
硬化剤組成物。
【請求項6】
前記イソシアネート化合物(a1)又は前記イソシアネート化合物(a2)が脂環族イソシアネートである、請求項1~5のいずれか一項に記載の
硬化剤組成物。
【請求項7】
前記イソシアネート化合物(b1)又は前記イソシアネート化合物(b2)が脂肪族イソシアネートである、請求項1~6のいずれか一項に記載の
硬化剤組成物。
【請求項8】
前記イソシアネート化合物(a1)又は前記イソシアネート化合物(a2)がイソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)-シクロヘキサン又は4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである、請求項1~7のいずれか一項に記載の
硬化剤組成物。
【請求項9】
前記イソシアネート化合物(b1)又は前記イソシアネート化合物(b2)がブタンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート又はリジンエステルトリイソシアネートである、請求項1~8のいずれか一項に記載の
硬化剤組成物。
【請求項10】
水を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の
硬化剤組成物。
【請求項11】
前記水の含有量が、前記
硬化剤組成物に含まれる揮発分の総質量に対して、70質量%以上である、請求項10に記載の
硬化剤組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の
硬化剤組成物と、カルボニル基含有樹脂(C)と、を含む、水系塗料組成物。
【請求項13】
前記カルボニル基含有樹脂(C)中のカルボニル基含有重合性単量体単位の含有量が、重合性単量体単位の総質量に対して、1質量%以上30質量%以下である、請求項12に記載の水系塗料組成物。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の水系塗料組成物を硬化させてなる、塗膜。
【請求項15】
請求項14に記載の塗膜を備える、物品。
【請求項16】
分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物(a2)及びヒドラジンを反応させて、セミカルバジド化合物(A2)を得る工程2-1と、
分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物(b2)及びヒドラジンを反応させて、セミカルバジド化合物(B2)を得る工程2-2と、
をこの順に含む、
硬化剤組成物の製造方法。
【請求項17】
前記分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物(a2)又は前記分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物(b2)とヒドラジンとの反応温度が、25℃以下である、請求項16に記載の
硬化剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セミカルバジド組成物、水系塗料組成物、塗膜、物品及びセミカルバジド組成物の製造方法に関する。本願は、2018年11月28日に、日本に出願された特願2018-222334号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料、塗装分野における有機溶媒の環境排出への規制や臭気等の観点から、従来の有機溶媒系塗料から水系塗料へ置き換える製品開発が盛んに行われている。水系樹脂組成物から得られる水系塗料は、有機溶媒系塗料に比べて、塗膜としたときの耐水性や塗膜強度、耐汚染性等の点で劣るため、塗膜の物性を向上させる目的で、水系樹脂組成物の樹脂中に官能基を導入して架橋可能とし、樹脂同士、又は、硬化剤と樹脂との架橋体からなる塗膜を形成させることが行われている。
【0003】
しかし、一般的に硬化剤は反応性に富むため架橋可能な官能基を有する樹脂と混合された時点で硬化反応が進み、使用可能な最長時間(ポットライフ)が短く、硬化剤と樹脂とを分けた状態で流通している。そのため、使用前に硬化剤と樹脂とを混合する工程が生じるだけでなく、混合後もすぐに使用する等の制約が発生する。
また、ポットライフ向上を目的に、硬化剤の反応性官能基を別の化合物で保護することで、樹脂と混合された状態で塗布後に加熱する等の工程を経て保護基が脱離し、硬化反応が進む手法が知られている。しかし、上記手法では保護基の脱離に相当の加熱が必要になるため、常温での硬化が求められる用途や、加熱温度を低温化することによるエネルギーコスト削減等の要求を満たすことは困難である。
【0004】
これら要求を満足する硬化反応として、ヒドラジン誘導体から得られる硬化剤とカルボニル基を有する樹脂との脱水縮合反応を利用したヒドラゾン架橋が注目されている。例えば、カルボニル基含有共重合体の水分散液に、硬化剤としてジカルボン酸ジヒドラジドを添加することにより、常温架橋性及び貯蔵安定性に優れた水系塗料が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
また、イソシアネートとヒドラジンとの反応生成物であるセミカルバジド化合物を硬化剤として用いて、カルボニル基含有樹脂と架橋反応させる水系塗料も提案されている(例えば、特許文献2等参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている架橋反応では、セバシン酸ジヒドラジドやアジピン酸ジヒドラジド等の親水性の高い化合物を用いているので、得られる架橋塗膜は耐水性が著しく劣るという欠点がある。
また、特許文献2に開示されているセミカルバジド化合物を用いる架橋反応においては、耐水性の課題は解決されているものの、嵩高い環状構造を分子内に有するため、成膜及び架橋工程において分子が拡散しにくく、常温では架橋反応に時間がかかる。そのため、架橋塗膜の成膜後に更に塗料を重ねて塗装する工程までに時間が要するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-287457号公報
【文献】特許第5990277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、塗料への溶解性及び分散性が良好であり、塗膜としたときの耐水性及び透明性に優れるセミカルバジド組成物及びその製造方法、並びに、前記セミカルバジド組成物を用いた水系塗料組成物、塗膜及び物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、構造が異なり、且つ、溶解性パラメータ(以下、「SP値」と略記する場合がある)の差の絶対値が特定の範囲である2種類のイソシアネート化合物とヒドラジンとから誘導されるセミカルバジド化合物を含有しているセミカルバジド組成物を用いることで、常温において短時間でも硬化性が高く、且つ、塗膜としたときの耐水性及び硬度に優れるセミカルバジド組成物を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る硬化剤組成物は、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物(a1)及びヒドラジンから誘導されるセミカルバジド化合物(A1)と、前記イソシアネート化合物(a1)とは異なる構造であって、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物(b1)及びヒドラジンから誘導されるセミカルバジド化合物(B1)と、を含み、前記イソシアネート化合物(a1)と前記イソシアネート化合物(b1)との溶解性パラメータ(SP値)の差の絶対値が0.15以上2.10以下である。
組成物中の前記イソシアネート化合物(b1)に由来する構成単位のモル数が、前記イソシアネート化合物(a1)に由来する構成単位のモル数に対して、0.1mol%以上20mol%以下であってもよい。
前記イソシアネート化合物(a1)が、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物であり、且つ、前記イソシアネート化合物(b1)が、分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物であってもよい。
【0010】
本発明の第2態様に係る硬化剤組成物は、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物(a2)及びヒドラジンから誘導されるセミカルバジド化合物(A2)と、
分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物(b2)及びヒドラジンから誘導されるセミカルバジド化合物(B2)と、を含み、
組成物中の前記イソシアネート化合物(b2)に由来する構成単位のモル数が、前記イソシアネート化合物(a2)に由来する構成単位のモル数に対して、0.1mol%以上20mol%以下である。
【0011】
前記イソシアネート化合物(b1)又は前記イソシアネート化合物(b2)の数平均分子量が270以下であってもよい。
前記イソシアネート化合物(a1)又は前記イソシアネート化合物(a2)が脂環族イソシアネートであってもよい。
前記イソシアネート化合物(b1)又は前記イソシアネート化合物(b2)が脂肪族イソシアネートであってもよい。
前記イソシアネート化合物(a1)又は前記イソシアネート化合物(a2)がイソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)-シクロヘキサン又は4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートであってもよい。
前記イソシアネート化合物(b1)又は前記イソシアネート化合物(b2)がブタンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート又はリジンエステルトリイソシアネートであってもよい。
上記第1態様又は上記第2態様に係る硬化剤組成物は、水を更に含んでもよい。
前記水の含有量が、前記硬化剤組成物に含まれる揮発分の総質量に対して、70質量%以上であってもよい。
【0012】
本発明の第3態様に係る水系塗料組成物は、上記第1態様又は上記第2態様に係る硬化剤組成物と、カルボニル基含有樹脂(C)と、を含む。
前記カルボニル基含有樹脂(C)中のカルボニル基含有重合性単量体単位の含有量が、重合性単量体単位の総質量に対して、1質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0013】
本発明の第4態様に係る塗膜は、上記第3態様に係る水系塗料組成物を硬化させてなる。
【0014】
本発明の第5態様に係る物品は、上記第4態様に係る塗膜を備える。
【0015】
本発明の第6態様に係る硬化剤組成物の製造方法は、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物(a2)及びヒドラジンを反応させて、セミカルバジド化合物(A2)を得る工程2-1と、分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物(b2)及びヒドラジンを反応させて、セミカルバジド化合物(B2)を得る工程2-2と、をこの順に含む。
前記分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物(a2)又は前記分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物(b2)とヒドラジンとの反応温度が、25℃以下であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記態様のセミカルバジド組成物及びその製造方法によれば、塗料への溶解性及び分散性が良好であり、塗膜としたときの耐水性及び透明性に優れるセミカルバジド組成物を提供することができる。上記態様の水系塗料組成物は、塗膜としたときの耐水性及び透明性に優れる。上記態様の塗膜及び物品は、耐水性及び透明性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0018】
≪セミカルバジド組成物≫
<第1実施形態>
本実施形態のセミカルバジド組成物は、セミカルバジド化合物(A1)と、セミカルバジド化合物(B1)と、を含む。セミカルバジド化合物(A1)は、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物(a1)(以下、単に「イソシアネート化合物(a1)」と称する場合がある)及びヒドラジンから誘導される化合物、すなわち、イソシアネート化合物(a1)及びヒドラジンの反応物である。セミカルバジド化合物(B1)は、前記イソシアネート化合物(a1)とは異なる構造であって、イソシアネート基を有するイソシアネート化合物(b1)(以下、単に「イソシアネート化合物(b1)」と称する場合がある)及びヒドラジンから誘導される化合物、すなわち、イソシアネート化合物(b1)及びヒドラジンの反応物である。イソシアネート化合物(a1)とイソシアネート化合物(b1)との溶解性パラメータ(SP値)の差の絶対値が0.15以上2.10以下であり、0.16以上2.02以下が好ましく、0.32以上1.82以下がより好ましく、0.50以上1.49以下がさらに好ましい。SP値の差の絶対値が上記下限値以上であることで、塗料への溶解性及び分散性を良好なものとすることができ、上記上限値以下であることで塗膜としたときの透明性を優れたものとすることができる。
【0019】
なお、SP値は公知の方法により求めることが可能である。例えば「旭化成コーティング時報 No.193」に記載されているFedorsの方法により計算することができる。具体的には、Fedorsの方法では、凝集エネルギー密度とモル分子容の両方が置換基の種類及び数に依存していると考え、以下の式と表1に示す定数を用いて、分子構造からSP値を推算する。以下の式において、ΣEcohは各構造単位の凝集エネルギーの総和を、ΣVは各構造単位のモル分子容の総和を示す。
【0020】
【0021】
【0022】
また、本実施形態のセミカルバジド組成物中のイソシアネート化合物(b1)に由来する構成単位のモル数は、イソシアネート化合物(a1)に由来する構成単位のモル数に対して、0.1mol%以上20mol%以下が好ましく、0.5mol%以上18mol%以下がより好ましく、1.0mol%以上15mol%以下がさらに好ましく、1.5mol%以上10mol%以下が特に好ましい。
イソシアネート化合物(a1)に由来する構成単位のモル数に対するイソシアネート化合物(b1)に由来する構成単位のモル数(以下、「(b1)/(a1)モル比」と略記する場合がある)が上記下限値以上であることで、室温での成膜工程における立体障害の影響が少なくより短時間で硬化し、さらには得られる塗膜において、特に樹脂間を結ぶ架橋点の疎水性がより高まるため、塗膜の耐水性がより優れる。一方、(b1)/(a1)モル比が上記上限値以下であることで、得られる塗膜の硬度がより優れる。
【0023】
イソシアネート化合物(a1)は、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物であり、且つ、イソシアネート化合物(b1)は、分子内に環状構造を有しないイソシアネート化合物であることが好ましい。すなわち、セミカルバジド化合物(A1)は、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物とヒドラジンとの反応物であり、且つ、セミカルバジド化合物(B1)は分子内に環状構造を有しないイソシアネート化合物とヒドラジンとの反応物であり、セミカルバジド化合物(A1)及びセミカルバジド化合物(B1)は別々の化合物であることが好ましい。分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物と分子内に環状構造を有しないイソシアネート化合物とヒドラジンとから誘導される1種のセミカルバジド化合物(分子内に異なる構造のイソシアネート化合物に由来する構造単位を有するセミカルバジド化合物)を配合するよりも、上記異なる構造のイソシアネート化合物に由来する構造単位をそれぞれ有する2種のセミカルバジド化合物を組み合わせて配合することで、貯蔵安定性をより良好なものとすることができる。
なお、ここでいう「環状構造」とは共有結合で閉じられた環を指し、水素結合等の共有結合以外で環状構造になり得る分子等は除外される。また、公知であるイソシアネート基のブロック剤、例えばイミダゾール類やピラゾール類等、塗料配合や成膜工程において架橋剤から解離し、架橋剤の分子骨格に残らない官能基等も除外する。
【0024】
本実施形態のセミカルバジド組成物は、上記構成を有することで、塗料への溶解性及び分散性が良好であり、塗膜としたときの耐水性及び透明性に優れる。
本実施形態のセミカルバジド組成物に含まれる各構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0025】
<セミカルバジド化合物>
一般に、「セミカルバジド化合物」は、イソシアネート化合物及びヒドラジンから誘導される化合物、すなわち、イソシアネート化合物及びヒドラジンの反応物である。
本実施形態のセミカルバジド組成物は、セミカルバジド化合物として、セミカルバジド化合物(A1)及びセミカルバジド化合物(B1)を含む。本実施形態のセミカルバジド組成物において、セミカルバジド化合物(A1)及びセミカルバジド化合物(B1)は、それらの異性体が存在していてもよく、分子末端の官能基がセミカルバジド基以外の官能基であってもよい。
【0026】
[イソシアネート化合物]
セミカルバジド化合物(A1)及びセミカルバジド化合物(B1)の製造に用いられるイソシアネート化合物としては、それぞれイソシアネート化合物(a1)及びイソシアネート化合物(b1)が挙げられる。イソシアネート化合物(b1)は、イソシアネート化合物(a1)と異なる構造であって、イソシアネート基を有するものである。イソシアネート化合物(a1)とイソシアネート化合物(b1)とのSP値の差の絶対値は0.15以上2.10以下である。
【0027】
イソシアネート化合物(a1)及びイソシアネート化合物(b1)として用いられるイソシアネート化合物としては、特別な限定はなく、上記SP値の差の絶対値となる組み合わせの化合物を適宜選択して使用することができる。このようなイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族イソシアネートモノマー、脂環族イソシアネートモノマー、芳香族イソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーを重合させてなるポリイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
脂肪族イソシアネートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族トリイソシアネートとしては、例えば、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(TTI)、リジンエステルトリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。
【0029】
脂環族イソシアネートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
芳香族イソシアネートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。
【0031】
上述したイソシアネートモノマーを重合させてなるポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、以下の(1)~(8)に示すポリイソシアネート等が挙げられる。
(1)2つのイソシアネート基を環化二量化して得られるウレトジオン基を有するポリイソシアネート;
(2)3つのイソシアネート基を環化三量化して得られるイソシアヌレート基又はイミノオキサジアジンジオン基を有するポリイソシアネート;
(3)3つのイソシアネート基と1つの水分子とを反応させて得られるビウレット基を有するポリイソシアネート;
(4)2つのイソシアネート基と1分子の二酸化炭素とを反応させて得られるオキサダイアジントリオン基を有するポリイソシアネート;
(5)1つのイソシアネート基と1つの水酸基を反応させて得られるウレタン基を複数有するポリイソシアネート;
(6)2つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させて得られるアロファネート基を有するポリイソシアネート;
(7)1つのイソシアネート基と1つのカルボキシル基とを反応させて得られるアシル尿素基を有するポリイソシアネート;
(8)1つのイソシアネート基と1つの1級又は2級アミンとを反応させて得られる尿素基を有するポリイソシアネート
【0032】
これらのイソシアネート化合物は、一部のイソシアネート基がブロック剤で保護されていてもよく、アルコール化合物やアミン化合物等で変性されていてもよい。
【0033】
イソシアネート化合物(a1)は、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物(a1)は、環状構造を分子内に有することで、同程度の分子量を有する鎖状イソシアネート化合物と比較して、誘導されるセミカルバジド化合物の水溶性が増すだけでなく、得られる塗膜の硬度が向上する。なお、環状構造としては、例えば、4員環、5員環、6員環等、いずれの形状であってもよい。
好ましいイソシアネート化合物(a1)としては、例えば、脂環族イソシアネートモノマー、芳香族イソシアネートモノマー、及びそれらモノマーを重合させてなるポリイソシアネート、並びに、上述したイソシアネートモノマーから誘導されるイソシアヌレート環やウレトジオン環等を有するポリイソシアネート等が挙げられる。これらイソシアネート化合物(a1)は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、イソシアネート化合物(a1)としては、脂環族イソシアネートモノマー、及び当該モノマーを重合させてなる脂環族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上の脂環族イソシアネートが特に好ましい。環状構造が脂環状であることで、耐候性に優れるだけでなく、誘導されるセミカルバジド化合物の水溶性が向上する。このようなイソシアネート化合物(a1)としては、脂環族ジイソシアネートが好ましく、IPDI、1,3-ビス(イソシアネートメチル)-シクロヘキサン又は4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートがより好ましく、IPDIがさらに好ましい。
【0034】
また、イソシアネート化合物(b1)は、分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物(b1)は、環状構造を分子内に有さないことで、成膜工程での立体障害が起きにくく、硬化剤の官能基(セミカルバジド基)と樹脂の官能基とが反応しやすいため、常温における短時間での硬化性に優れる。なお、イソシアネート基の形状は、環状構造を有さなければよく、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
中でも、イソシアネート化合物(b1)としては、例えば、脂肪族イソシアネートモノマー、及び当該モノマーを重合させてなるポリイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上の脂肪族イソシアネートが特に好ましい。イソシアネート化合物(b1)として、脂肪族イソシアネートを用いることで、塗膜の耐候性に優れる。これらイソシアネート化合物(b1)は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、イソシアネート化合物(b1)は、数平均分子量が270以下であるイソシアネート化合物が好ましく、260以下であるイソシアネート化合物がより好ましい。数平均分子量が上記上限値以下であることで、硬化中における分子の流動性に優れるため、常温における短時間での硬化性をより良好なものとすることができる。イソシアネート化合物(b1)の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエ―ションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することができる。
このようなイソシアネート化合物(b1)としては、脂肪族イソシアネートモノマーが好ましく、ブタンジイソシアネート(数平均分子量:140)、HDI(数平均分子量:168)、PDI(数平均分子量:154)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(数平均分子量:210)、TTI(数平均分子量:251)又はLTI(数平均分子量:267)がより好ましく、HDIがさらに好ましい。
【0035】
[ヒドラジン]
セミカルバジド化合物の製造に用いられるヒドラジンとしては、例えば、ヒドラジン(NH2NH2)、モノアルキル置換ヒドラジン化合物、エチレン-1,2-ジヒドラジン、プロピレン-1,3-ジヒドラジン、ブチレン-1,4-ジヒドラジン等が挙げられる。モノアルキル置換ヒドラジン化合物としては、例えば、モノメチルヒドラジン、モノエチルヒドラジン、モノブチルヒドラジン等が挙げられる。中でも、生成されたセミカルバジド基と樹脂のカルボニル基との反応性が優れる観点から、ヒドラジン(NH2NH2)が好ましい。ヒドラジンは無水物及び一水和物のいずれも用いることができるが、製造上の安全性から、ヒドラジン一水和物(NH2NH2・H2O)を用いることが好ましい。
【0036】
本実施形態のセミカルバジド組成物は、ヒドラジンを含有していてもよい。本実施形態のセミカルバジド組成物に含まれるヒドラジンは、セミカルバジド化合物(A1)及びセミカルバジド化合物(B1)の製造後の原料由来の未反応物(残留物)であってもよく、意図的に各セミカルバジド化合物の製造後に添加したものであってもよい。ヒドラジンの含有量は、セミカルバジド組成物の総質量に対して、500質量ppm未満が好ましく、450質量ppm未満がより好ましく、400質量ppm未満がさらに好ましい。ヒドラジンの含有量を上記上限値未満とすることで、得られる塗膜、特に低温及び短時間で硬化した塗膜の耐水性がより向上し、且つ、硬化直後の塗膜において、塗膜に残留したヒドラジン由来の刺激臭がより低減される。
一方、ヒドラジンの含有量の下限値としては、0質量ppm(不含)が望ましいが、当該濃度まで除去するためには過度な減圧下の蒸留や、幾度の活性炭による吸着処理等、生産性とその効果との兼ね合いから困難であるため、0.1質量ppm等、若干量が含まれている状態が好ましい。
【0037】
<その他構成成分>
本実施形態におけるセミカルバジド組成物は、上記セミカルバジド化合物に加えて、溶媒を更に含有してもよい。溶媒を含有する場合、本実施形態のセミカルバジド組成物は、液体組成物である。溶媒としては、水であってもよく、有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、二硫化炭素、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0038】
環境面から、溶媒として、有機溶媒を含まないことが望ましいが、当該濃度まで除去するためには過度な減圧下の蒸留等、生産性とその効果との兼ね合いから困難であるため、水の含有量がセミカルバジド組成物に含まれる揮発分の総質量に対して70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、85質量%以上が特に好ましい。水の含有量は、セミカルバジド組成物に含まれる揮発分を加熱方式により分析後、得られた揮発分に含まれる水の量をカールフィッシャー法により分析することで測定することができる。なお、加熱方式による揮発分の分析方法として具体的には、まず、セミカルバジド組成物を試料として、アルミニウム製カップの質量(W0g)を精秤し、試料約1gを入れて、加熱乾燥前のカップ質量(W1g)を精秤する。上記試料を入れたカップを105℃の乾燥機中で3時間加熱する。上記加熱後のカップを室温まで冷却した後、再度カップの質量(W2g)を精秤する。試料中の加熱前後での減少分の質量%を揮発分として、以下の式から揮発分を算出することができる。
【0039】
揮発分(質量%) = (W1-W2)/(W1-W0)×100%
【0040】
また、本実施形態のセミカルバジド組成物は、上記セミカルバジド化合物に加えて、当該組成物が奏する効果を逸しない範囲で、その他添加剤を含有してもよい。その他添加剤としては、例えば、増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、樹脂等が挙げられる。
【0041】
<第2実施形態>
本実施形態のセミカルバジド組成物は、セミカルバジド化合物(A2)と、セミカルバジド化合物(B2)と、を含む。セミカルバジド化合物(A2)は、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物(a2)及びヒドラジンから誘導される化合物、すなわち、イソシアネート化合物(a2)及びヒドラジンの反応物である。セミカルバジド化合物(B2)は、分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物(b2)及びヒドラジンから誘導される化合物、すなわち、イソシアネート化合物(b2)及びヒドラジンの反応物である。また、セミカルバジド化合物(A2)及びセミカルバジド化合物(B2)は別々の化合物である。
なお、ここでいう「環状構造」とは共有結合で閉じられた環を指し、水素結合等の共有結合以外で環状構造になり得る分子等は除外される。また、公知であるイソシアネート基のブロック剤、例えばイミダゾール類やピラゾール類等、塗料配合や成膜工程において架橋剤から解離し、架橋剤の分子骨格に残らない官能基等も除外する。
【0042】
また、本実施形態のセミカルバジド組成物中のイソシアネート化合物(b2)に由来する構成単位のモル数は、イソシアネート化合物(a2)に由来する構成単位のモル数に対して、0.1mol%以上20mol%以下であり、0.5mol%以上18mol%以下が好ましく、1.0mol%以上15mol%以下がより好ましく、1.5mol%以上10mol%以下がさらに好ましい。
イソシアネート化合物(a2)に由来する構成単位のモル数に対するイソシアネート化合物(b2)に由来する構成単位のモル数(以下、「(b2)/(a2)モル比」と略記する場合がある)が上記下限値以上であることで、室温での成膜工程における立体障害の影響が少なくより短時間で硬化し、さらには得られる塗膜において、特に樹脂間を結ぶ架橋点の疎水性がより高まるため、塗膜の耐水性がより優れる。一方、(b2)/(a2)モル比が上記上限値以下であることで、得られる塗膜の硬度がより優れる。
【0043】
本実施形態のセミカルバジド組成物は、上記構成を有することで、常温において短時間でも十分な硬化性を示し、且つ、塗膜としたときの耐水性及び硬度に優れる。
本実施形態のセミカルバジド組成物に含まれる各構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0044】
<セミカルバジド化合物>
一般に、「セミカルバジド化合物」は、イソシアネート化合物及びヒドラジンから誘導される化合物、すなわち、イソシアネート化合物及びヒドラジンの反応物である。
本実施形態のセミカルバジド組成物は、セミカルバジド化合物として、セミカルバジド化合物(A2)及びセミカルバジド化合物(B2)を含む。本実施形態のセミカルバジド組成物において、セミカルバジド化合物(A2)及びセミカルバジド化合物(B2)は、それらの異性体が存在していてもよく、分子末端の官能基がセミカルバジド基以外の官能基であってもよい。
【0045】
[イソシアネート化合物]
セミカルバジド化合物(A2)及びセミカルバジド化合物(B2)の製造に用いられるイソシアネート化合物としては、それぞれイソシアネート化合物(a2)及びイソシアネート化合物(b2)が挙げられる。
【0046】
イソシアネート化合物(a2)は、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物である。イソシアネート化合物(a2)は、環状構造を分子内に有することで、同程度の分子量を有する鎖状イソシアネート化合物と比較して、誘導されるセミカルバジド化合物の水溶性が増すだけでなく、得られる塗膜の硬度が向上する。なお、環状構造としては、例えば、4員環、5員環、6員環等、いずれの形状であってもよい。
好ましいイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、脂環族イソシアネートが挙げられる。環状構造が脂環状であることで、耐候性に優れるだけでなく、誘導されるセミカルバジド化合物の水溶性が向上する。脂環族イソシアネートとしては、例えば、脂環族ジイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアネート化合物から誘導されるイソシアヌレート環やウレトジオン環等を有するポリイソシアネート等が挙げられる。これらイソシアネート化合物(a2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、イソシアネート化合物(a2)は、一部のイソシアネート基がブロック剤で保護されていてもよく、アルコール化合物やアミン化合物等で変性されていてもよい。
中でも、イソシアネート化合物(a2)としては、脂環族ジイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアネートメチル)-シクロヘキサン又は4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートがより好ましく、IPDIがさらに好ましい。
【0047】
イソシアネート化合物(b2)は、分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物である。イソシアネート化合物(b2)は、環状構造を分子内に有さないことで、成膜工程での立体障害が起きにくく、硬化剤の官能基(セミカルバジド基)と樹脂の官能基とが反応しやすいため、常温における短時間での硬化性に優れる。なお、イソシアネート基の形状は、環状構造を有さなければよく、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
好ましいイソシアネート化合物(b2)としては、例えば、脂肪族イソシアネートが挙げられる。イソシアネート化合物(b2)として、脂肪族イソシアネートを用いることで、塗膜の耐候性に優れる。脂肪族イソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族トリイソシアネートとしては、例えば、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(TTI)、リジンエステルトリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、上記脂肪族ジイソシアネート又は上記脂肪族トリイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート等が挙げられる。これらイソシアネート化合物(b2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、イソシアネート化合物(b2)は、一部のイソシアネート基がブロック剤で保護されていてもよく、アルコール化合物やアミン化合物等で変性されていてもよい。
中でも、イソシアネート化合物(b2)としては、脂肪族イソシアネートが好ましく、ブタンジイソシアネート、HDI、PDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、TTI又はLTIがより好ましく、HDIがさらに好ましい。
【0048】
[ヒドラジン]
セミカルバジド化合物の製造に用いられるヒドラジンとしては、例えば、ヒドラジン(NH2NH2)、モノアルキル置換ヒドラジン化合物、エチレン-1,2-ジヒドラジン、プロピレン-1,3-ジヒドラジン、ブチレン-1,4-ジヒドラジン等が挙げられる。モノアルキル置換ヒドラジン化合物としては、例えば、モノメチルヒドラジン、モノエチルヒドラジン、モノブチルヒドラジン等が挙げられる。中でも、生成されたセミカルバジド基と樹脂のカルボニル基との反応性が優れる観点から、ヒドラジン(NH2NH2)が好ましい。ヒドラジンは無水物及び一水和物のいずれも用いることができるが、製造上の安全性から、ヒドラジン一水和物(NH2NH2・H2O)を用いることが好ましい。
【0049】
本実施形態のセミカルバジド組成物は、ヒドラジンを含有していてもよい。本実施形態のセミカルバジド組成物に含まれるヒドラジンは、セミカルバジド化合物(A2)及びセミカルバジド化合物(B2)の製造後の原料由来の未反応物(残留物)であってもよく、意図的に各セミカルバジド化合物の製造後に添加したものであってもよい。ヒドラジンの含有量は、セミカルバジド組成物の総質量に対して、500質量ppm未満が好ましく、450質量ppm未満がより好ましく、400質量ppm未満がさらに好ましい。ヒドラジンの含有量を上記上限値未満とすることで、得られる塗膜、特に低温及び短時間で硬化した塗膜の耐水性がより向上し、且つ、硬化直後の塗膜において、塗膜に残留したヒドラジン由来の刺激臭がより低減される。
一方、ヒドラジンの含有量の下限値としては、0質量ppm(不含)が望ましいが、当該濃度まで除去するためには過度な減圧下の蒸留や、幾度の活性炭による吸着処理等、生産性とその効果との兼ね合いから困難であるため、0.1質量ppm等、若干量が含まれている状態が好ましい。
【0050】
<その他構成成分>
本実施形態におけるセミカルバジド組成物は、上記セミカルバジド化合物に加えて、溶媒を更に含有してもよい。溶媒を含有する場合、本実施形態のセミカルバジド組成物は、液体組成物である。溶媒としては、水であってもよく、有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、二硫化炭素、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0051】
環境面から、溶媒として、有機溶媒を含まないことが望ましいが、当該濃度まで除去するためには過度な減圧下の蒸留等、生産性とその効果との兼ね合いから困難であるため、水の含有量がセミカルバジド組成物に含まれる揮発分の総質量に対して70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、85質量%以上が特に好ましい。水の含有量は、セミカルバジド組成物に含まれる揮発分を加熱方式により分析後、得られた揮発分に含まれる水の量をカールフィッシャー法により分析することで測定することができる。なお、加熱方式による揮発分の分析方法として具体的には、まず、セミカルバジド組成物を試料として、アルミニウム製カップの質量(W0g)を精秤し、試料約1gを入れて、加熱乾燥前のカップ質量(W1g)を精秤する。上記試料を入れたカップを105℃の乾燥機中で3時間加熱する。上記加熱後のカップを室温まで冷却した後、再度カップの質量(W2g)を精秤する。試料中の加熱前後での減少分の質量%を揮発分として、以下の式から揮発分を算出することができる。
【0052】
揮発分(質量%) = (W1-W2)/(W1-W0)×100%
【0053】
また、本実施形態のセミカルバジド組成物は、上記セミカルバジド化合物に加えて、当該組成物が奏する効果を逸しない範囲で、その他添加剤を含有してもよい。その他添加剤としては、例えば、増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、樹脂等が挙げられる。
【0054】
≪セミカルバジド組成物の製造方法≫
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るセミカルバジド組成物の製造方法(以下、単に「本実施形態の製造方法」と称する場合がある)は、以下の工程1-1と工程1-2とをこの順に含む。
イソシアネート化合物(a1)及びヒドラジンを反応させて、セミカルバジド化合物(A1)を得る工程1-1;
イソシアネート化合物(b1)及びヒドラジンを反応させて、セミカルバジド化合物(B1)を得る工程1-2
【0055】
本実施形態の製造方法において、イソシアネート化合物(a1)は、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物であり、且つ、イソシアネート化合物(b1)は、分子内に環状構造を有しないイソシアネート化合物であることが好ましい。
本実施形態の製造方法は、工程1-1の後に、工程1-2を含むことで、未反応のヒドラジンの残留を抑制できる効果がある。これは、イソシアネート化合物(b1)が環状構造を有さないことから分子骨格由来の立体障害が少ないため、ヒドラジンとの反応性に富んでいるためであると推定される。そのため、得られる組成物のpHを中性領域に保つことができ、合成されたセミカルバジド化合物の加水分解をより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の製造方法は、工程1-1の後に、工程1-2を含むことで、工程1-1で得られるセミカルバジド化合物(A1)が有するセミカルバジド基と、工程1-2で用いられるイソシアネート化合物(b1)が有するイソシアネート基とは反応性が低いため、セミカルバジド化合物の多量化やゲル化が抑えられる。
これらのことから、本実施形態の製造方法を用いることで、得られるセミカルバジド組成物の貯蔵安定性を良好なものとすることができる。
【0056】
本実施形態の製造方法において、任意の溶媒を用いることができるが、イソシアネート化合物(a1)及びイソシアネート化合物(b1)の各イソシアネート化合物と、ヒドラジンとの両物質に対して高い溶解性を示す溶媒の選択は難しい。そのため、本実施形態の製造方法においては、2種類以上の溶媒を併用することが好ましい。
ヒドラジンを溶解させる溶媒として具体的には、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これら溶媒を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、ヒドラジンの分散性が良好となり、またイソシアネート化合物とヒドラジンとの反応性が向上し、さらに比熱が高く製造時に温度が安定しやすいため発熱反応による過剰な反応、即ちセミカルバジド化合物の多量化を抑制しやすいという効果を発揮できる観点から、ヒドラジンを溶解させる溶媒としては、水を含むことが好ましい。
各イソシアネート化合物を溶解させる溶媒として具体的には、例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、二硫化炭素、酢酸ブチル等が挙げられる。これら溶媒を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、イソシアネート化合物の溶解性が高いことから、各イソシアネート化合物を溶解させる溶媒としては、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン又はトルエンが好ましい。
【0057】
工程1-1及び工程1-2における各イソシアネート化合物及びヒドラジンの反応温度は、25℃以下であることが好ましい。反応温度を上記上限値以下にすることで、適切な反応速度に抑えることができ、セミカルバジド基とイソシアネート基との副反応、又は、イソシアネート基とアミン基との副反応による多量体の含有量をより効果的に減らすことができる。
反応温度の下限値は、溶媒が凝固しない範囲であれば特に限定されないが、5℃が好ましく、8℃がより好ましい。反応温度を上記下限値以上することで、各イソシアネート化合物及びヒドラジンの反応性がより向上する。
【0058】
反応工程において、各イソシアネート化合物及びヒドラジンの反応が終了後、反応液からセミカルバジド化合物を抽出する工程や、セミカルバジド化合物が含まれる溶液を分液する工程等により、目的とするセミカルバジド組成物を得ることができる。特に、セミカルバジド組成物中の多量体の含有量をより効果的に抑えられるため、減圧蒸留等の操作によりセミカルバジド化合物の固形物を得る工程を含まないことが好ましい。また、得られたセミカルバジド組成物中に含まれる多量体やヒドラジン、有機溶媒等を必要に応じて精製するために、カラムクロマトグラフィーや減圧蒸留、活性炭処理等の操作を行ってもよい。その際、セミカルバジド化合物の過剰な分解を抑制できるため、室温以下の温度で操作することが好ましい。
【0059】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るセミカルバジド組成物の製造方法(以下、単に「本実施形態の製造方法」と称する場合がある)は、以下の工程2-1と工程2-2とをこの順に含む。
イソシアネート化合物(a2)及びヒドラジンを反応させて、セミカルバジド化合物(A2)を得る工程2-1;
イソシアネート化合物(b2)及びヒドラジンを反応させて、セミカルバジド化合物(B2)を得る工程2-2
【0060】
本実施形態の製造方法は、工程2-1の後に、工程2-2を含むことで、未反応のヒドラジンの残留を抑制できる効果がある。これは、イソシアネート化合物(b2)が環状構造を有さないことから分子骨格由来の立体障害が少ないため、ヒドラジンとの反応性に富んでいるためであると推定される。
また、本実施形態の製造方法は、工程2-1の後に、工程2-2を含むことで、工程2-1で得られるセミカルバジド化合物(A2)が有するセミカルバジド基と、工程2-2で用いられるイソシアネート化合物(b2)が有するイソシアネート基とは反応性が低いため、セミカルバジド化合物の多量化やゲル化が抑えられる。
【0061】
本実施形態の製造方法において、任意の溶媒を用いることができるが、イソシアネート化合物(a2)及びイソシアネート化合物(b2)の各イソシアネート化合物と、ヒドラジンとの両物質に対して高い溶解性を示す溶媒の選択は難しい。そのため、本実施形態の製造方法においては、2種類以上の溶媒を併用することが好ましい。
ヒドラジンを溶解させる溶媒として具体的には、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これら溶媒を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、ヒドラジンの分散性が良好となり、またイソシアネート化合物とヒドラジンとの反応性が向上し、さらに比熱が高く製造時に温度が安定しやすいため発熱反応による過剰な反応、即ちセミカルバジド化合物の多量化を抑制しやすいという効果を発揮できる観点から、ヒドラジンを溶解させる溶媒としては、水を含むことが好ましい。
各イソシアネート化合物を溶解させる溶媒として具体的には、例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、二硫化炭素、酢酸ブチル等が挙げられる。これら溶媒を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、イソシアネート化合物の溶解性が高いことから、各イソシアネート化合物を溶解させる溶媒としては、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン又はトルエンが好ましい。
【0062】
工程2-1及び工程2-2における各イソシアネート化合物及びヒドラジンの反応温度は、25℃以下であることが好ましい。反応温度を上記上限値以下にすることで、適切な反応速度に抑えることができ、セミカルバジド基とイソシアネート基との副反応、又は、イソシアネート基とアミン基との副反応による多量体の含有量をより効果的に減らすことができる。
反応温度の下限値は、溶媒が凝固しない範囲であれば特に限定されないが、5℃が好ましく、8℃がより好ましい。反応温度を上記下限値以上することで、各イソシアネート化合物及びヒドラジンの反応性がより向上する。
【0063】
反応工程において、各イソシアネート化合物及びヒドラジンの反応が終了後、反応液からセミカルバジド化合物を抽出する工程や、セミカルバジド化合物が含まれる溶液を分液する工程等により、目的とするセミカルバジド組成物を得ることができる。特に、セミカルバジド組成物中の多量体の含有量をより効果的に抑えられるため、減圧蒸留等の操作によりセミカルバジド化合物の固形物を得る工程を含まないことが好ましい。また、得られたセミカルバジド組成物中に含まれる多量体やヒドラジン、有機溶媒等を必要に応じて精製するために、カラムクロマトグラフィーや減圧蒸留、活性炭処理等の操作を行ってもよい。その際、セミカルバジド化合物の過剰な分解を抑制できるため、室温以下の温度で操作することが好ましい。
【0064】
≪水系塗料組成物≫
本実施形態の水系塗料組成物は、上記第1実施形態又は第2実施形態に係るセミカルバジド組成物と、カルボニル基含有樹脂(C)と、を含有する。
本実施形態の水系塗料組成物において、セミカルバジド組成物とカルボニル基含有樹脂(C)(以下、単に「樹脂(C)」と略記する場合がある)との含有比は、任意に調整可能であるが、硬化性と得られる塗膜の物性バランスが良好であることから、カルボニル基のモル数に対する、セミカルバジド基のモル数の比が0.5以上1.5以下となるように配合されていることが好ましい。
【0065】
<カルボニル基含有樹脂(C)>
カルボニル基含有樹脂(C)は、アルデヒド基又はケト基を1つの分子骨格内に2つ以上有する、水溶性又は水分散性の樹脂である。樹脂(C)としては、ポリウレタン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリ(メタ)アクリレート系重合体、ポリビニルアセテート系重合体、ポリブタジエン系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体、塩素化ポリプロピレン系重合体、ポリエチレン系重合体、フッ素系重合体、ポリスチレン系重合体、ポリスチレン-(メタ)アクリレート系共重合体、ロジン系誘導体、スチレン-無水マレイン酸共重合体及び該アルコール付加物、セルロース系樹脂等の従来公知のポリカルボニル化合物が挙げられる。これらポリカルボニル化合物を1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0066】
樹脂(C)は、分子中に少なくとも1つのアルデヒド基又はケト基を有する重合性単量体を、他の単量体と共重合する、又は、付加重合することにより得ることができる。なお、アルデヒド基及びケト基は、重合反応後、カルボニル基として架橋反応に関与すると考えられる。
【0067】
分子中に少なくとも1つのアルデヒド基又はケト基を有する重合性単量体として具体的には、例えば、アセトンジカルボン酸、ジヒドロキシアセトン、モノヒドロキシアセトン、ジヒドロキシベンズアルデヒド、分子中に少なくとも1つのアルデヒド基又はケト基を有するエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。これら単量体を1種単独で又は2種以上組み合わせて付加重合することで、樹脂(C)を得ることができる。
【0068】
また、分子中に少なくとも1つのアルデヒド基又はケト基を有するエチレン性不飽和単量体として具体的には、例えば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレートアセチルアセテート等が挙げられる。これら単量体を1種又は2種以上と、これら以外のエチレン性不飽和単量体とを含むエチレン性不飽和単量体混合物を共重合することにより、樹脂(C)、すなわちポリカルボニル化合物を得ることができる。但し、ここでいう「分子中に少なくとも1つのアルデヒド基又はケト基を有するエチレン性不飽和単量体」では、カルボン酸及びエステル類が有するカルボニル基を含有するエチレン性不飽和単量体を除外する。
【0069】
さらに、樹脂(C)は、セミカルバジド基と架橋反応する結合の他にも、他の官能基と架橋反応を示す官能基を含有してもよい。このような架橋反応により形成される架橋構造としては、例えば、シラノール縮合によるシロキサン架橋、水酸基とイソシアネート基とによるウレタン架橋、水酸基とメラミンとによる架橋、オキサゾリンとカルボキシル基とによるアミドエステル架橋、カルボキシル基とカルボジイミド基とによるアシルウレア架橋、カルボキシル基やアミノ基とエポキシ基とによる架橋等が挙げられる。
【0070】
架橋性官能基を有する単量体として具体的には、例えば、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシシクロヘキシル、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、ケイヒ酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、グリシジルノルボルネニルエステル、グリシジルノルボルネニルエーテル等が挙げられる。これら単量体を1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0071】
樹脂(C)の製造に用いられる重合性単量体混合物において、分子中に少なくとも1つのアルデヒド基又はケト基を有する重合性単量体の含有量は、重合性単量体混合物の総質量に対して1.0質量%以上が好ましく、1.0質量%以上30質量%以下がより好ましい。
すなわち、樹脂(C)中のカルボニル基含有重合性単量体単位の含有量が、重合性単量体単位の総質量に対して、1.0質量%以上が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
重合性単量体混合物中のアルデヒド基又はケト基を有する重合性単量体の含有量(樹脂(C)中のカルボニル基含有重合性単量体単位の含有量)が上記下限値以上であると、架橋点が多くなり、塗膜としたときの性能がより充分なものとなる。一方で、重合性単量体混合物中のアルデヒド基又はケト基を有する重合性単量体の含有量(樹脂(C)中のカルボニル基含有重合性単量体単位の含有量)が上記上限値以下であると、樹脂(C)の分子量やガラス転移温度(Tg)等を他の重合性単量体成分でより調節しやすくなる。
【0072】
[(C)カルボニル基を有する樹脂の製造方法]
(C)カルボニル基含有樹脂は、公知の技術で製造することが可能だが、粒子径や分子量等の各種物性を制御しやすいことから、乳化重合、ミニエマルション重合又は溶液重合により製造することが好ましい。
【0073】
<その他構成成分>
本実施形態の水系塗料組成物は、上記セミカルバジド組成物及び上記カルボニル基含有樹脂(C)に加えて、その効果を逸しない範囲で、セミカルバジド基以外の硬化剤や、それらと架橋する合成樹脂やエマルジョン粒子、消泡剤、着色剤、増粘剤、チクソ化剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調製剤等のその他の成分が含まれていてもよい。セミカルバジド化合物以外の硬化剤としては、例えば、イソシアネート、ブロックイソシアネート、カルボジイミド、オキサゾリン、メラミン、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0074】
≪塗膜≫
本実施形態の塗膜は、上記水系塗料組成物を硬化させてなるものであり、耐水性及び硬度に優れる。
塗膜の形成方法としては、上記水系塗料組成物を公知の方法で基材や塗膜上へ塗布し、水が蒸発して乾燥することで、セミカルバジド基とカルボニル基との反応が促進し、硬化塗膜が得られる。硬化温度条件は、例えば23℃程度の常温でもよく、70℃以上80℃以下程度の低温で焼き付けてもよく、120℃以上140℃以下程度の高温で焼き付けてもよい。また、加熱時間は5分以上10分以下程度の短時間でもよく、1時間以上、又は、2時間以上加熱してもよい。
【0075】
≪物品≫
本実施形態の物品は、上記塗膜を備え、耐水性及び硬度に優れる。
具体的には、本実施形態の物品は、被塗物上に上記塗膜を備えるものである。また、被塗物と塗膜との間には、その他の塗料を硬化させてなる層又はコーティング層を備えていてもよい。
被塗物の材質としては、例えば、非金属の無機物、金属、高分子化合物、合成ゴム、天然ゴム、繊維、木材等が挙げられる。非金属の無機物としては、例えば、ガラス、石膏、石等が挙げられる。金属としては、例えば、鉄、ステンレス、アルミ、銅等が挙げられる。高分子化合物としては、例えば、アクリル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。繊維としては、例えば、綿、絹、麻、ナイロン等が挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下の、製造例、実施例、及び比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、以下の製造例や実施例で用いられる各原料の秤量値は、特に記載の無いものは全て質量部を表す。
【0077】
<塗膜の評価方法>
実施例及び比較例で得られた水系塗料組成物を用いた塗膜の評価方法は、以下に示す方法により実施した。
【0078】
[評価1]
(貯蔵安定性)
実施例及び比較例で得られたセミカルバジド組成物に水を添加して、固形分量が50質量%である水溶液を調製し、50℃で2週間静置した。2週間後、pHを測定し、下記評価基準に従い、貯蔵安定性を評価した。
【0079】
(評価基準)
良好:pHが8.5以下
許容:pHが8.6以上8.8以下
不良:pHが8.8超
【0080】
[評価2]
(塗料への溶解性及び分散性)
水:10gに、実施例及び比較例で得られたセミカルバジド組成物:1gを添加して、スターラーで攪拌した。攪拌後の溶液を観察し、下記評価基準に従い、塗料への溶解性及び分散性を評価した。
【0081】
(評価基準)
○:1分以内で溶解又は分散した
△:1分超5分以下で溶解又は分散した
×:5分超で溶解若しくは分散した、又は目視可能な沈殿が見られた
【0082】
[評価3]
(短時間硬化性)
実施例及び比較例で得られた水系塗料組成物をポリプロピレン(PP)板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。塗装後のPP板を温度23℃、湿度50%にて24時間乾燥した。次いで、塗膜をPP板から膜状に剥がし、剥がした塗膜をアセトン内に23℃、24時間浸漬した際の残膜率(ゲル分率)を測定した。下記評価基準に従い、硬化性を評価した。
【0083】
(評価基準)
〇:ゲル分率が88質量%以上
△:ゲル分率が83質量%以上88質量%未満
×:ゲル分率が83質量%未満
【0084】
[評価4]
(耐水性)
実施例及び比較例で得られた水系塗料組成物をガラス板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。塗装後のガラス板を温度23℃、湿度50%にて24時間乾燥した。得られた塗膜に直径2cmのゴム製リングを置き、その中に水を滴下した。その上部に揮発防止の目的で時計皿を被せ、23℃で1日静置した。1日後、ゴム製リングと水分を除去し、塗膜の状態を目視で観察し、下記評価基準に従い、耐水性を評価した。
【0085】
(評価基準)
〇:ほぼブリスターの発生が無く、塗膜が透明
△:ブリスターがわずかに発生
×:ブリスターが多数発生、又は、塗膜が白化
【0086】
[評価5]
(ケーニッヒ硬度)
実施例及び比較例で得られた水系塗料組成物をガラス板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。塗装後のガラス板を温度23℃、湿度50%にて24時間乾燥した。得られた硬化塗膜のケーニッヒ硬度をBYK Chemie社の振り子式硬度計により、23℃下で測定した。下記評価基準に従い、硬度を評価した。
【0087】
(評価基準)
〇:ケーニッヒ硬度が25以上
△:ケーニッヒ硬度が20以上25未満
×:ケーニッヒ硬度が20未満
【0088】
[評価6]
(透明性)
実施例及び比較例で得られた水系塗料組成物をガラス板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。塗装後のガラス板を温度23℃、湿度50%にて24時間乾燥した。得られた塗膜のヘイズをスガ試験機社製 直読ヘイズコンピューター「HGM-2DP」(商品名)を用いて測定し、下記評価基準に従い、塗膜の透明性を評価した。
【0089】
(評価基準)
良好:ヘイズが2.0未満
不良:ヘイズが2.0以上
【0090】
<カルボニル基含有樹脂(C)の製造>
[製造例1]
(カルボニル基含有樹脂C-1の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水:514.5gと界面活性剤(商品名:Newcol707SF、日本乳化剤(株)製、アニオン性界面活性剤、不揮発分30質量%)を30質量%含有する水溶液:12.0gとを投入した。次いで、反応容器中の温度を80℃に上げた後、メタクリル酸:12.6g、アクリル酸:5.4g、アクリル酸ブチル:334.8g、ダイアセトンアクリルアミド:54.0g、メタクリル酸メチル:423g、メタクリル酸ブチル:70.2g、ドデシルメルカプタン:9.0g、イオン交換水:456g、Newcol707SF:30g、スピノマーNass(東ソー・ファインケム(株)製、p-スチレンスルホン酸ソーダ):4.5g、及び、過硫酸アンモニウム:1.2gの混合液を反応容器中へ滴下槽より3時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして1時間30分保った。その後、反応液を室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を添加してpHを9.0に調整した。次いで、pH調整後の溶液を100メッシュの金網で濾過し、イオン交換水を適量添加して、カルボニル基含有樹脂C-1を得た。得られたカルボニル基含有樹脂C-1において、固形分:40.0質量%、平均粒径:110nmであった。なお、平均粒径はレーザー回折式の粒度分布計UPA EX-150(マイクロトラック・ベル社製)にて測定した体積平均粒子径を平均粒径とした。
【0091】
[製造例2]
(カルボニル基含有樹脂C-2の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水:514.5gと界面活性剤(商品名:Newcol707SF、日本乳化剤(株)製、アニオン性界面活性剤、不揮発分30質量%)を30質量%含有する水溶液:12.0gとを投入した。次いで、反応容器中の温度を80℃に上げた後、メタクリル酸:12.6g、アクリル酸:5.4g、アクリル酸ブチル:433.8g、ダイアセトンアクリルアミド:100.8g、メタクリル酸メチル:337.5g、メタクリル酸ブチル:70.2g、ドデシルメルカプタン:9.0g、イオン交換水:456g、Newcol707SF:30g、スピノマーNass(東ソー・ファインケム(株)製、p-スチレンスルホン酸ソーダ):4.5g、及び、過硫酸アンモニウム:1.2gの混合液を反応容器中へ滴下槽より3時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして1時間30分保った。その後、反応液を室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を添加してpHを9.0に調整した。次いで、pH調整後の溶液を100メッシュの金網で濾過し、イオン交換水を適量添加して、カルボニル基含有樹脂C-2を得た。得られたカルボニル基含有樹脂C-2において、固形分:40.0質量%、平均粒径:114nmであった。なお、平均粒径はレーザー回折式の粒度分布計UPA EX-150(マイクロトラック・ベル社製)にて測定した体積平均粒子径を平均粒径とした。
【0092】
[製造例3]
(カルボニル基含有樹脂C-3の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水:514.5gと界面活性剤(商品名:Newcol707SF、日本乳化剤(株)製、アニオン性界面活性剤、不揮発分30質量%)を30質量%含有する水溶液:12.0gとを投入した。次いで、反応容器中の温度を80℃に上げた後、メタクリル酸:12.6g、アクリル酸:5.4g、アクリル酸ブチル:424.8g、ダイアセトンアクリルアミド:162.0g、メタクリル酸メチル:225.0g、メタクリル酸ブチル:70.2g、ドデシルメルカプタン:9.0g、イオン交換水:456g、Newcol707SF:30g、スピノマーNass(東ソー・ファインケム(株)製、p-スチレンスルホン酸ソーダ):4.5g、及び、過硫酸アンモニウム:1.2gの混合液を反応容器中へ滴下槽より3時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして1時間30分保った。その後、反応液を室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を添加してpHを9.0に調整した。次いで、pH調整後の溶液を100メッシュの金網で濾過し、イオン交換水を適量添加して、カルボニル基含有樹脂C-3を得た。得られたカルボニル基含有樹脂C-3において、固形分:40.0質量%、平均粒径:114nmであった。なお、平均粒径はレーザー回折式の粒度分布計UPA EX-150(マイクロトラック・ベル社製)にて測定した体積平均粒子径を平均粒径とした。
【0093】
[製造例4]
(カルボニル基含有樹脂C-4の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水:514.5gと界面活性剤(商品名:Newcol707SF、日本乳化剤(株)製、アニオン性界面活性剤、不揮発分30質量%)を30質量%含有する水溶液:12.0gとを投入した。次いで、反応容器中の温度を80℃に上げた後、メタクリル酸:12.6g、アクリル酸:5.4g、アクリル酸ブチル:442.8g、ダイアセトンアクリルアミド:54.0g、メタクリル酸メチル:315.0g、メタクリル酸ブチル:70.2g、ドデシルメルカプタン:9.0g、イオン交換水:456g、Newcol707SF:30g、スピノマーNass(東ソー・ファインケム(株)製、p-スチレンスルホン酸ソーダ):4.5g、及び、過硫酸アンモニウム:1.2gの混合液を反応容器中へ滴下槽より3時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして1時間30分保った。その後、反応液を室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を添加してpHを9.0に調整した。次いで、pH調整後の溶液を100メッシュの金網で濾過し、イオン交換水を適量添加して、カルボニル基含有樹脂C-4を得た。得られたカルボニル基含有樹脂C-4において、固形分:40.0質量%、平均粒径:111nmであった。なお、平均粒径はレーザー回折式の粒度分布計UPA EX-150(マイクロトラック・ベル社製)にて測定した体積平均粒子径を平均粒径とした。
【0094】
[製造例5]
(水酸基含有樹脂OHEmの製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水:514.5gと界面活性剤(商品名:Newcol707SF、日本乳化剤(株)製、アニオン性界面活性剤、不揮発分30質量%)を30質量%含有する水溶液:12.0gとを投入した。次いで、反応容器中の温度を80℃に上げた後、メタクリル酸:18g、アクリル酸ブチル:425.3g、メタクリル酸ヒドロキシエチル:125.6g、メタクリル酸メチル:261.0g、メタクリル酸ブチル:70.2g、ドデシルメルカプタン:9.0g、イオン交換水:456g、Newcol707SF:30g、及び、過硫酸アンモニウム:1.2gの混合液を反応容器中へ滴下槽より3時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして1時間30分保った。その後、反応液を室温まで冷却し、25質量%アンモニア水溶液を添加してpHを9.0に調整した。次いで、pH調整後の溶液を100メッシュの金網で濾過し、イオン交換水を適量添加して、水酸基含有樹脂OHEmを得た。得られた水酸基含有樹脂OHEmにおいて、固形分:40.0質量%、平均粒径:115nmであった。なお、平均粒径はレーザー回折式の粒度分布計UPA EX-150(マイクロトラック・ベル社製)にて測定した体積平均粒子径を平均粒径とした。
【0095】
<セミカルバジド組成物の製造>
[実施例1]
(セミカルバジド組成物S-a1の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:40g、イソプロパノール:100g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を25℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとイソホロンジイソシアネート(IPDI):100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を25℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:14.4gと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI):0.5gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:80gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a1を得た。
【0096】
[実施例2]
(セミカルバジド組成物S-a2の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:40g、イソプロパノール:100g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとイソホロンジイソシアネート:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:14.4gと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート:1.1gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:80gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a2を得た。
【0097】
[実施例3]
(セミカルバジド組成物S-a3の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:128.8gとヒドラジン一水和物:42.7gとを投入し、反応容器中の温度を10℃に保ちながら撹拌した。その後、シクロヘキサン:381gとイソホロンジイソシアネート:100gとの混合物を3時間かけて攪拌しながら滴下し、温度を10℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、シクロヘキサン:14.4gと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート:3.8gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、1晩静置後に分離した2相のうち、下相の水溶液を取り出し、セミカルバジド組成物S-a3を得た。
【0098】
[実施例4]
(セミカルバジド組成物S-a4の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:90g、イソプロパノール:50g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、シクロヘキサン:381gとイソホロンジイソシアネート:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、シクロヘキサン:14.4gと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート:11.2gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a4を得た。
【0099】
[実施例5]
(セミカルバジド組成物S-a5の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:90g、イソプロパノール:50g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を5℃に保ちながら撹拌した。その後、シクロヘキサン:381gとイソホロンジイソシアネート:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を5℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、シクロヘキサン:14.4gと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート:14.4gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a5を得た。
【0100】
[実施例6]
(セミカルバジド組成物S-a6の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:110g、テトラヒドロフラン:30g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、シクロヘキサン:381gとイソホロンジイソシアネート:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、シクロヘキサン:14.4gと1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI):6.3gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているテトラヒドロフランを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a6を得た。
【0101】
[実施例7]
(セミカルバジド組成物S-a7の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:128.8gとヒドラジン一水和物:42.7gとを投入し、反応容器中の温度を10℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとイソホロンジイソシアネート:100gとの混合物を3時間かけて攪拌しながら滴下し、温度を10℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:14.4gと4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(TTI):4.0gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、1晩静置後に分離した2相のうち、下相の水溶液を取り出し、セミカルバジド組成物S-a7を得た。
【0102】
[実施例8]
(セミカルバジド組成物S-a8の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:110g、テトラヒドロフラン:30g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を10℃に保ちながら撹拌した。その後、シクロヘキサン:381gとイソホロンジイソシアネート:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を10℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、シクロヘキサン:14.4gとリジンエステルトリイソシアネート(LTI):8.3gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているテトラヒドロフランを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a8を得た。
【0103】
[実施例9]
(セミカルバジド組成物S-a9の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:40g、イソプロパノール:100g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとイソホロンジイソシアネート:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:14gと旭化成製HDIベースビウレット型ポリイソシアネート(以下、「24A」と称する場合がある):3gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a9を得た。
【0104】
[実施例10]
(セミカルバジド組成物S-a10の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:40g、メタノール:50g、及び、ヒドラジン一水和物:19.8gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gと旭化成製HDIベースイソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「WT31」と称する場合がある):100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:14.4gと24A:3gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているメタノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a10を得た。
【0105】
[実施例11]
(セミカルバジド組成物S-a11の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:10g、メタノール:160g、及び、ヒドラジン一水和物:51.4gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとキシレンジイソシアネート(XDI):100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、シクロヘキサン:14.4gとHDI:6gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:50gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているメタノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a11を得た。
【0106】
[実施例12]
(セミカルバジド組成物S-a12の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:10g、メタノール:160g、及び、ヒドラジン一水和物:51.1gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとキシレンジイソシアネート(XDI):100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、シクロヘキサン:14.4gとPDI:7gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:50gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているメタノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a12を得た。
【0107】
[実施例13]
(セミカルバジド組成物S-a13の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:10g、メタノール:160g、及び、ヒドラジン一水和物:51.1gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとキシレンジイソシアネート(XDI):100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:10gと24A:3gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:40gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているメタノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a13を得た。
【0108】
[実施例14]
(セミカルバジド組成物S-a14の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:55g、イソプロパノール:20g、及び、ヒドラジン一水和物:17.9gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gと旭化成製HDI及びIPDIベースビウレット型ポリイソシアネート(以下、「V3000」と称する場合がある):100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:10gとTTI:0.8gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a14を得た。
【0109】
[実施例15]
(セミカルバジド組成物S-a15の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:40g、イソプロパノール:100g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を25℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとIPDI:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を25℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:10gとXDI:3gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:40gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a15を得た。
【0110】
[実施例16]
(セミカルバジド組成物S-a16の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:105g、及び、ヒドラジン一水和物:26.9gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gと24A:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:10gとHDI:1.4gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、1晩静置後に分離した2相のうち、下相の水溶液を取り出し、セミカルバジド組成物S-a16を得た。
【0111】
[実施例17]
(セミカルバジド組成物S-a17の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:30g、イソプロパノール:120g、及び、ヒドラジン一水和物:45.8gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとナフタレンジイソシアネート(NDI):100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:10gとTTI:2.5gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a17を得た。
【0112】
[実施例18]
(セミカルバジド組成物S-a18の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:90g、メタノール:50g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、シクロヘキサン:381gとIPDI:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:10gとジフェニルメタンジイソシアネート(MDI):1gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているメタノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a18を得た。
【0113】
[実施例19]
(セミカルバジド組成物S-a19の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:128.8gとヒドラジン一水和物:42.7gとを投入し、反応容器中の温度を10℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:14.4gとTTI:4.0gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。次いで、トルエン:381gとイソホロンジイソシアネート:100gとの混合物を3時間かけて攪拌しながら滴下し、温度を10℃に保ちながら30分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、1晩静置後に分離した2相のうち、下相の水溶液を取り出し、セミカルバジド組成物S-a19を得た。
【0114】
[実施例20]
(セミカルバジド組成物S-a20の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:90g、イソプロパノール:50g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を5℃に保ちながら撹拌した。その後、シクロヘキサン:381gとIPDI:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を5℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、シクロヘキサン:14.4gとHDI:15.3gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-a20を得た。
【0115】
[比較例1]
(セミカルバジド組成物S-b1の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:40g、イソプロパノール:100g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を25℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとIPDI:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を25℃に保ちながら30分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:80gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-b1を得た。
【0116】
[比較例2]
(セミカルバジド組成物S-b2の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:128.8gとヒドラジン一水和物:42.7gとを投入し、反応容器中の温度を10℃に保ちながら撹拌した。その後、シクロヘキサン:14.4gとHDI:3.8gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。次いでシクロヘキサン:381gとIPDI:100gとの混合物を3時間かけて攪拌しながら滴下し、温度を10℃に保ちながら撹拌したが溶液全体がゲル化し、セミカルバジド組成物S-b2を得ることができなかった。
【0117】
[比較例3]
(セミカルバジド組成物S-b3の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:40g、イソプロパノール:50g、及び、ヒドラジン一水和物:19.6gを投入し、反応容器中の温度を20℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとWT31:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を20℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:10gとV3000:3gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:40gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-b3を得た。
【0118】
[比較例4]
(セミカルバジド組成物S-b4の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:80g、メタノール:80g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を5℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとIPDI:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を5℃に保ちながら30分間撹拌した。次いで、トルエン:10gとNDI:7gとの混合物を10分間かけて滴下し、滴下終了後は20分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:30gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているメタノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-b4を得た。
【0119】
[比較例5]
(セミカルバジド組成物S-b5の製造)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する2Lの反応器に、窒素を1L/分で流入しながら、イオン交換水:40g、イソプロパノール:100g、及び、ヒドラジン一水和物:42.7gを投入し、反応容器中の温度を25℃に保ちながら撹拌した。その後、トルエン:381gとHDI:100gとの混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後は温度を25℃に保ちながら30分間撹拌した。その後、得られた溶液を分液ロートへ移し、イオン交換水:80gを加えて抽出操作を行った。次いで、水溶液に残留しているイソプロパノールを室温下で減圧蒸留により留去した。次いで、イオン交換水を適量加えて固形分50質量%に調製して、セミカルバジド組成物S-b5を得た。
【0120】
実施例及び比較例で得られたセミカルバジド組成物の物性、及びセミカルバジド組成物を試料とした評価の結果を表2~6に示す。表2~6において、略称で示されたイソシアネート化合物の種類、及び25℃におけるSP値は以下のとおりである。SP値は、Fedorsの方法を用いて、以下の式と上述した表1に示す定数を用いて、分子構造から推算された値である。以下の式において、ΣEcohは凝集エネルギーを、ΣVはモル分子容を示す。
【0121】
【0122】
(イソシアネート化合物)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(SP値:10.53(cal/cm3)1/2)
WT31:旭化成製HDIベースイソシアヌレート型ポリイソシアネート(SP値:11.87(cal/cm3)1/2)
XDI:キシレンジイソシアネート(SP値:12.35(cal/cm3)1/2)
V3000:旭化成製HDI及びIPDIベースビウレット型ポリイソシアネート(SP値:12.01(cal/cm3)1/2)
NDI:ナフタレンジイソシアネート(SP値:13.27(cal/cm3)1/2)
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート(SP値:12.55(cal/cm3)1/2)
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(SP値:11.14(cal/cm3)1/2)
PDI:ペンタメチレンジイソシアネート(SP値:11.38(cal/cm3)1/2)
LTI:リジンエステルトリイソシアネート(SP値:12.21(cal/cm3)1/2)
TTI:4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(SP値:11.48(cal/cm3)1/2)
24A:旭化成製HDIベースビウレット型ポリイソシアネート(SP値:12.03(cal/cm3)1/2)
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
表2~6から、SP値の差の絶対値が0.16以上2.02以下である2種類のイソシアネート化合物を用いたセミカルバジド組成物S-a1~S-a20(実施例1~20)では、貯蔵安定性、並びに、塗料への溶解性及び分散性がいずれも良好であった。
また、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物及び分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物を組み合わせて用いたセミカルバジド組成物S-a1~S-a14及びS-a17(実施例1~14及び17)では、貯蔵安定性が特に良好であった。
また、SP値の差の絶対値が0.53以上である2種類のイソシアネート化合物を用いたセミカルバジド組成物S-a1~S-a9、S-a11~S-a12、及びS-a14~S-a20(実施例1~9、11~12及び14~20)では、塗料への溶解性及び分散性が特に良好であった。
【0129】
一方、1種類のイソシアネート化合物を用いたセミカルバジド組成物S-b1及びS-b5(比較例1及び5)では、貯蔵安定性、並びに、塗料への溶解性及び分散性がいずれも不良であった。
また、SP値の差の絶対値が0.15未満である2種類のイソシアネート化合物を用いたセミカルバジド組成物S-b3(比較例3)では、貯蔵安定性、並びに、塗料への溶解性及び分散性がいずれも不良であった。
また、SP値の差の絶対値が2.10超である2種類のイソシアネート化合物を用いたセミカルバジド組成物S-b4(比較例4)では、塗料への溶解性及び分散性は良好であったが、貯蔵安定性が不良であった。
【0130】
<水系塗料組成物の製造>
[実施例21]
(水系塗料組成物T-a1の製造)
製造例1で製造したカルボニル基含有樹脂C-1:50g、実施例1で製造したセミカルバジド組成物S-a1:1.9g、及び、ブチルセロソルブ:5gを室温下で撹拌しながら混合し、水系塗料組成物T-a1を製造した。
【0131】
[実施例22~43及び比較例6~8、10]
(水系塗料組成物T-a2~T-a23及びT-b1~T-b3、T-b5の製造)
カルボニル基を含有樹脂及びセミカルバジド組成物の種類及び配合量を表7~12に示す通りとした以外は、実施例21と同様の方法を用いて、水系塗料組成物T-a2~T-a23及びT-b1~T-b3、T-b5を製造した。
【0132】
[比較例9]
(水系塗料組成物T-b4の製造)
製造例1で製造したカルボニル基含有樹脂C-1:50g、アジピン酸ヒドラジド(ADH):0.5g、及び、ブチルセロソルブ:5gを室温下で撹拌しながら混合し、水系塗料組成物T-b4を製造した。
【0133】
実施例及び比較例で得られた水系塗料組成物を用いて、上記に記載の方法に従い、各種評価を行った。結果を表7~12に示す。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
セミカルバジド組成物S-a1~S-a20を用いた水系塗料組成物T-a1~T-a23(実施例21~43)では、塗膜としたときの耐水性及び透明性がいずれも良好であった。
【0141】
また、分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物及びヒドラジンにより誘導されたセミカルバジド化合物を含むセミカルバジド組成物S-a1~S-a14、S-a16~S-a17及びS-a19~S-a20を用いた水系塗料組成物T-a1~T-a17、T-a19~T-a20及びT-a22~T-a23(実施例21~37、39~40、及び42~43)では、常温における短時間での硬化性が特に良好であった。
【0142】
また、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物及びヒドラジンにより誘導されたセミカルバジド化合物を含むセミカルバジド組成物S-a1~S-a15及びS-a17~S-a20を用いた水系塗料組成物T-a1~T-a18及びT-a20~T-a23(実施例21~38、及び40~43)では、塗膜としたときの耐水性及び硬度が特に良好であった。
【0143】
また、分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物に由来する構造単位のモル数が、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物に由来する構造単位のモル数に対して、20mol%以下であるセミカルバジド組成物S-a1~S-a5を用いた水系塗料組成物T-a1~T-a5(実施例21~25)は、分子内に環状構造を有さないイソシアネート化合物に由来する構造単位のモル数が、分子内に環状構造を少なくとも一つ有するイソシアネート化合物に由来する構造単位のモル数に対して、20mol%超であるセミカルバジド組成物S-a20を用いた水系塗料組成物T-a23(実施例43)と比較して、塗膜としたときの硬度が特に良好であった。
【0144】
また、SP値の差の絶対値が1.50未満である2種類のイソシアネート化合物を用いたセミカルバジド組成物S-a1~S-a7、S-a10~S-a14、S-a16及びS-a19~20を用いた水系塗料組成物T-a1~Ta7、T-a10~T-a17、T-a19、及びT-a22~T-a23(実施例21~27、29~37、39及び42~43)では、塗膜としたときの透明性が特に良好であった。
【0145】
一方で、IPDIとヒドラジンから誘導されたセミカルバジド化合物のみ含有するセミカルバジド組成物S-b1を用いた水系塗料組成物T-b1(比較例6)では、塗膜としたときの耐水性、硬度及び透明性は優れていたが、常温における短時間での硬化性が劣っていた。
また、HDIとヒドラジンから誘導されたセミカルバジド化合物のみ含有するセミカルバジド組成物S-b5を用いた水系塗料組成物T-b5(比較例10)では、常温における短時間での硬化性及び塗膜としたときの透明性は優れていたが、塗膜としたときの耐水性及び硬度が劣っていた。
【0146】
また、SP値の差の絶対値が0.15未満である2種類のイソシアネート化合物を用いたセミカルバジド組成物S-b2を用いた水系塗料組成物T-b2(比較例7)では、塗膜としたときの耐水性、硬度及び透明性は優れていたが、常温における短時間での硬化性が劣っていた。
また、SP値の差の絶対値が2.10超である2種類のイソシアネート化合物を用いたセミカルバジド組成物S-b3を用いた水系塗料組成物T-b3(比較例8)では、塗膜としたときの耐水性及び硬度は優れていたが、常温における短時間での硬化性及び塗膜としたときの透明性が劣っていた。
【0147】
また、硬化剤成分として、セミカルバジド化合物の代わりに、アジピン酸ヒドラジドを用いた水系塗料組成物T-b4(比較例9)では、常温における短時間での硬化性及び塗膜としたときの透明性は優れていたが、塗膜としたときの耐水性及び硬度が劣っていた。
【0148】
[実施例44]
(水系塗料組成物T-a24の製造)
製造例4で製造したカルボニル基含有樹脂C-4:50g、実施例9で製造したセミカルバジド組成物S-a9:1.9g、及び、ブチルセロソルブ:5gを室温下で撹拌しながら混合し、水系塗料組成物T-a24を製造した。
【0149】
[試験例1]
(ポットライフの評価)
実施例3で得られたセミカルバジド組成物S-a3の官能基当たりの分子量は153g/molであった。また、実施例9で得られたセミカルバジド組成物S-a9の官能基当たりの分子量は158g/molであった。なお、官能基当たりの分子量は特許第5990277号公報に記載のLC/MSを用いた方法にて求めた。次いで、セミカルバジド組成物S-a3(実施例3)を用いた水系塗料組成物T-a13(実施例33)、及びセミカルバジド組成物S-a9(実施例9)を用いた水系塗料組成物T-a24(実施例44)を40℃雰囲気下で10日間保存し粘度変化を測定した。その結果、水系塗料組成物T-a13、及びT-a24はいずれも粘度変化が無く良好なポットライフを示した。
【0150】
[比較例11]
(水系塗料組成物T-b6の製造)
製造例4で製造したカルボニル基含有樹脂C-4:50g、アジピン酸ヒドラジド(ADH):0.5g、及び、ブチルセロソルブ:5gを室温下で撹拌しながら混合し、水系塗料組成物T-b6を製造した。
【0151】
[比較例12]
(水系塗料組成物T-b7の製造)
製造例5で製造した水酸基含有樹脂OHEm:50g、WT31-100(旭化成製HDIベースイソシアヌレート型ポリイソシアネート、NCO%=17.4%):7.5g、ブチルセロソルブ:5gを室温下で撹拌しながら混合し、水系塗料組成物T-b7を製造した。
【0152】
[試験例2]
(塗膜の硬化性の評価)
水系塗料組成物T-a13、T-a24、T-b6、及びT-b7をPP板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。塗装後のPP板を温度23℃、湿度50%にて7日間、もしくは70℃にて5分間乾燥した。次いで、塗膜をPP板から膜状に剥がし、剥がした塗膜をアセトン内に23℃、24時間浸漬した際の残膜率(ゲル分率)を測定した。各条件でのゲル分率を表13に示す。
【0153】
【0154】
表13から、水系塗料組成物T-a13(実施例33)及びT-a24(実施例44)から得られた塗膜はいずれの条件下においても、水系塗料組成物T-b6(比較例11)及びT-b7(比較例12)よりも高いゲル分率を示した。
【0155】
[試験例3]
(塗膜の耐溶剤性の評価)
水系塗料組成物T-a13、T-a24、T-b6、及びT-b7をPP板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。塗装後のPP板を温度23℃、湿度50%にて7日間乾燥した。次いで、得られた塗膜上にキシレンを0.1mL滴下し、時計皿を被せて23℃の温度を保ち1晩静置した。翌日、時計皿を外して塗膜外観を観察した。その結果、水系塗料組成物T-b6(比較例11)から得られた塗膜のみ膨れが見られたが、水系塗料組成物T-a13(実施例33)、T-a24(実施例44)及びT-b7(比較例12)においては液跡のみであり、良好な耐溶剤性を示した。
【0156】
[試験例4]
(塗膜の機械強度の評価)
水系塗料組成物T-a13、T-a24、T-b6、及びT-b7をPP板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。塗装後のPP板を温度23℃、湿度50%にて7日間乾燥した。次いで、得られた塗膜から幅1cm、長さ4cmの塗膜片を切り出した。塗膜片を23℃50%RHの雰囲気下にて20mm/minの速度で引っ張り、応力と伸度を測定した。塗膜が5%伸びた応力から弾性率を求め、得られた弾性率と破断時の伸度を表14に示す。
【0157】
【0158】
表14から、水系塗料組成物T-a13(実施例33)及びT-a24(実施例44)から得られた塗膜は弾性率、破断点伸度共に水系塗料組成物T-b6(比較例11)及びT-b7(比較例12)よりも高い値を示した。
【0159】
[試験例5]
(塗膜の基板に対する密着性の評価)
水系塗料組成物T-a13、T-a24、T-b6、及びT-b7をポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂板、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂板、及びアルミ板の各基板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。塗装後の各基板を温度23℃、湿度50%にて7日間乾燥した。得られた硬化塗膜へカッターで切れ込みを入れ、1mm角×100マスの碁盤目を得た。その上にセロハンテープを張り、碁盤目上から指でこすった後、素早くテープを剥がし、基板上に残った塗膜のマス数を数えた。各基板の結果を表15に示す。
【0160】
【0161】
水系塗料組成物T-a13(実施例33)及びT-a24(実施例44)から得られた塗膜は、いずれの基板に対しても、水系塗料組成物T-b6(比較例11)及びT-b7(比較例12)よりも良好な密着性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本実施形態のセミカルバジド組成物は、建築外装用塗料、内装材、自動車用塗料、接着剤等の硬化剤として好適である。