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特許7085026ポリマーセパレータ及びその製造方法と応用、並びにリチウムイオン電池及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】ポリマーセパレータ及びその製造方法と応用、並びにリチウムイオン電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/457 20210101AFI20220608BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220608BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220608BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20220608BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20220608BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20220608BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220608BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20220608BHJP
【FI】
H01M50/457
H01M50/403 D
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/426
H01M50/434
H01M50/489
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020564304
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2019074196
(87)【国際公開番号】W WO2019154275
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-10-02
(31)【優先権主張番号】201810119665.2
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】金▲麗▼娜
(72)【発明者】
【氏名】宣博文
(72)【発明者】
【氏名】曹▲暁▼▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼金祥
(72)【発明者】
【氏名】▲単▼▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】胡▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】何▲龍▼
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-100635(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047576(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/457
H01M 50/403
H01M 50/414
H01M 50/417
H01M 50/42
H01M 50/426
H01M 50/434
H01M 50/489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、親水性ブロック層と、多孔質極性ポリマー接着層とを含み、前記親水性ブロック層が前記多孔質基材と前記多孔質極性ポリマー接着層との間に設けられ、前記多孔質極性ポリマー接着層における孔壁がノジュール構造を有する、ポリマーセパレータ。
【請求項2】
前記親水性ブロック層の水との接触角は40°以下である、請求項1に記載のポリマーセパレータ。
【請求項3】
前記親水性ブロック層は、バインダーと、前記バインダーによって互いに接着される親水性無機粒子とを含有し、
前記親水性無機粒子は、親水性Al、親水性SiO、親水性SnO、親水性ZrO、親水性TiO、親水性SiC、親水性Si、親水性CaO、親水性MgO、親水性ZnO、親水性BaTiO、親水性LiAlO及び親水性BaSOのうちの少なくとも1種である、請求項1に記載のポリマーセパレータ。
【請求項4】
前記親水性無機粒子は、親水性Al及び親水性SiOからなる群の内の一つ又は組み合わせである、請求項3に記載のポリマーセパレータ。
【請求項5】
前記親水性無機粒子の粒径は1nm~10μmであるか、または、前記親水性無機粒子の比表面積は10~600m/gである、請求項3に記載のポリマーセパレータ。
【請求項6】
前記バインダーは、アクリレート系ポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、アクリロニトリル-アクリレートコポリマー、塩化ビニル-アクリレートコポリマー及びブタジエン-スチレンコポリマーのうちの少なくとも1種である、請求項3に記載のポリマーセパレータ。
【請求項7】
前記親水性無機粒子の含有量は、前記親水性ブロック層の全量を基準として、50~95重量%であり、
前記親水性ブロック層の厚さは0.1~3μmである、請求項3に記載のポリマーセパレータ。
【請求項8】
前記多孔質極性ポリマー接着層は、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、及びフッ化ビニリデンとアクリレートとのコポリマーのうちの少なくとも1種である極性ポリマーを含有し、
前記多孔質極性ポリマー接着層の厚さは0.1~10μmである、請求項1に記載のポリマーセパレータ。
【請求項9】
前記多孔質極性ポリマー接着層の厚さは0.8~1.5μmである、請求項に記載のポリマーセパレータ。
【請求項10】
前記多孔質基材は多孔質ポリマー層を含有し、
前記多孔質ポリマー層は、多孔質ポリエチレン層、多孔質ポリプロピレン層、及び多孔質ポリエチレンと多孔質ポリプロピレンとの複合層のうちの少なくとも1種であり、
前記多孔質ポリマー層の厚さは1~50μmである、請求項1に記載のポリマーセパレータ。
【請求項11】
前記多孔質基材は、多孔質ポリマー層とセラミック層とを含み、前記セラミック層は前記多孔質ポリマー層の一表面に接して配置され、
前記親水性ブロック層は、前記多孔質ポリマー層から離れて前記セラミック層の表面に配置されるか、前記親水性ブロック層は、前記セラミック層の無い多孔質ポリマー層の表面に配置されるか、または、前記親水性ブロック層は、前記多孔質ポリマー層から離れた前記セラミック層の表面と、前記セラミック層の無い多孔質ポリマー層の表面との両方に配置されている、請求項1に記載のポリマーセパレータ。
【請求項12】
前記多孔質基材は、多孔質ポリマー層とセラミック層とを含み、前記セラミック層は前記多孔質ポリマー層の両表面に接して配置され、
前記親水性ブロック層は、少なくとも一つの前記セラミック層の、前記多孔質ポリマー層から離れた表面に配置されている、請求項1に記載のポリマーセパレータ。
【請求項13】
前記ポリマーセパレータの厚さは8~30μmであり、
前記ポリマーセパレータのGurley値は100~900Sec/100mLである、請求項1に記載のポリマーセパレータ。
【請求項14】
前記多孔質極性ポリマー接着層は、多層のスクリーン交絡構造であり、前記親水性ブロック層の一部の表面は、前記多層のスクリーン交絡構造を介して露出して見られる、請求項1に記載のポリマーセパレータ。
【請求項15】
分散媒と、前記分散媒中に分散された親水性無機粒子及びバインダーとを含有する親水性ブロックスラリーを、多孔質基材の少なくとも1つの表面にコーティングして親水性ブロックコーティング層を形成するステップ(1)と、
有機溶媒と、前記有機溶媒中に溶解された極性ポリマーバインダー及び造孔剤とを含有する極性ポリマーバインダー溶液を、前記親水性ブロックコーティング層又は前記親水性ブロック層の表面にコーティングして極性ポリマーバインダーコーティング層を形成するステップ(2)と、
前記親水性ブロックコーティング層及び前記極性ポリマーバインダーコーティング層を乾燥させて親水性ブロック層及び多孔質極性ポリマー接着層を形成するか、又は前記極性ポリマーバインダーコーティング層を乾燥させて多孔質極性ポリマー接着層を形成するステップ(3)とを含む、ポリマーセパレータの製造方法。
【請求項16】
前記ステップ(1)において、さらに、前記親水性ブロックコーティング層を乾燥させて親水性ブロック層を形成することを含み、
前記親水性ブロックスラリーにおいて、前記親水性無機粒子の含有量は50~95重量%であり、
前記親水性無機粒子100重量部に対して、前記バインダーの含有量は1~30重量部であり、
前記バインダーは、アクリレート系ポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、アクリロニトリル-アクリレートコポリマー、塩化ビニル-アクリレートコポリマー及びブタジエン-スチレンコポリマーのうちの少なくとも1種である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記極性ポリマーバインダー溶液において、極性ポリマーの濃度は1~30重量%であるか、または、前記極性ポリマーバインダー溶液において、極性ポリマーの濃度は臨界濃度であり、
前記極性ポリマーバインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、及びフッ化ビニリデンとアクリレートとのコポリマーのうちの少なくとも1種であり、
前記有機溶媒は、リン酸トリエチル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドのうちの少なくとも1種であり、
前記造孔剤は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテルのうちの少なくとも1種であり、
前記有機溶媒と前記造孔剤との重量比は1:0.01~1である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(2)において、前記乾燥は、120℃以下の温度で行われ、前記乾燥の持続時間は0.1~36時間である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
正極と、負極と、請求項1~14のいずれか1項に記載のポリマーセパレータとを含む、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマーセパレータ及びその製造方法と応用に関し、さらに、該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、主に正/負極材料、電解質、セパレータ及び電池ケース包装材料で構成される。セパレータは、リチウムイオン電池の重要な構成要素であり、正、負極を分離し、電池の内部短絡を防止するためのものであり、セパレータは、電解質イオンが自由に通過することを可能にして、電気化学的な充放電を完了する。セパレータの性能は、電池の界面構造、内部抵抗などを決め、電池のレート性能、サイクル性能及び安全性能(耐高温性能)などの特性に直接的に影響を及ぼし、性能に優れたセパレータは、電池の総合性能の向上に対して重要な役割を果たす。
【0003】
原料の価格が低く、製造プロセスが簡単であり、機械的強度が高く、電気化学的安定性が高いなどの特徴を有するため、機械的延伸プロセスによって製造されたポリエチレン、ポリプロピレン微多孔膜は、現在、主な商用のリチウムイオン電池のセパレータである。しかし、商用の微多孔膜は、溶融温度付近でシャットダウン収縮して電池の短絡を引き起こすことにより、電池が高温で燃焼し爆発するおそれがあり、それ以外に、ポリオレフィンセパレータの電解液に対する吸着性が低く、充放電過程におけるリチウムイオンの伝導に不利である。
【0004】
現在、ポリオレフィン微多孔膜の両側に、ポリエーテル系(例えば、ポリオキシエチレン)、ポリアクリロニトリル系、ポリアクリレート系(例えば、ポリメチルメタクリレート及びそのコポリマー)、ポリフッ化ビニリデン系(ポリフッ化ビニリデン、及びフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーを含む)などの極性ポリマーをコーティングすることは、セパレータの電解液吸着性を向上させるとともに、微多孔膜の溶融温度付近での収縮率を低減することができる主な方法である。転相法とは、多孔質膜を製造するための主な方法の1つであり、主に、(1)溶媒蒸発沈殿による相分離法、(2)浸漬沈殿による相分離法という2種類の形態を含む。
【0005】
実際の生産では、ポリフッ化ビニリデン系(PVdF)コーティング技術が広く応用されている。ポリフッ化ビニリデン系(PVdF)コーティング技術は、溶媒蒸発沈殿による相分離法を用いてポリオレフィン微多孔膜の表面に造孔してPVdF多孔質膜を得ることであり、その具体的な操作プロセスは以下のとおりである。ポリフッ化ビニリデンをアセトンに溶解するか又は分散し、一定量のポロゲンDMC(ジメチルカーボネート)を添加してスラリーを形成し、かつ該スラリーをポリオレフィン微多孔膜の表面にコーティングして乾燥させる。乾燥過程では、まず共溶媒アセトンを揮発除去し、そしてポロゲンDMCを蒸発除去することにより孔隙を残す。
【発明の概要】
【0006】
従来のポリフッ化ビニリデン系(PVdF)コーティング技術は、低沸点アセトンを溶媒として採用するため、作業安全性を向上させる必要がある。本開示の発明者は、検討の過程において、アセトンの代わりに高沸点溶媒を採用すると、作業安全性を向上させることができるが、高沸点溶媒を採用してポリフッ化ビニリデン系ポリマー溶液を調製して製造されたリチウムイオン電池の性能が顕著に低下することを見出し、検討した結果、おそらく、以下の原因によるものと考えられる。高沸点溶媒を用いて調製されたポリフッ化ビニリデン系ポリマー溶液は、浸透性が非常に高く、ポリマー溶液は、セパレータを容易に透過してコーティング面に対向する他方の表面に到達することにより、ポリフッ化ビニリデン系ポリマーをもセパレータの孔隙に持ち込み、ポリフッ化ビニリデン系ポリマーの流動性及び浸透性が有機溶媒よりもはるかに低いため、有機溶媒により持ち込まれてセパレータに入ったポリフッ化ビニリデン系ポリマーは、通常、セパレータの孔隙に留まり、セパレータを閉塞し、セパレータの通気性及び空隙率に悪影響を及ぼし、ポリマーセパレータのバルクインピーダンスを向上させ、イオン伝導度を低下させ、最終的に製造されたリチウムイオン電池の性能に悪影響を及ぼす。通常、従来のポリオレフィンセパレータの表面には、セパレータの熱安定性を向上させ、電解液を吸着する能力を向上させるために、セラミック層が形成されるが、このようなセラミック層を有するポリオレフィンセパレータであっても、ポリマー溶液がセパレータを透過することを阻止することは困難である。
【0007】
高沸点溶媒を採用してポリフッ化ビニリデン系ポリマー溶液を調製する場合の問題に対して、本開示の発明者は、鋭意検討した結果、以下を見出した。高沸点溶媒を採用してポリフッ化ビニリデン系ポリマー溶液を調製する場合、多孔質基材(すなわち、セラミック層を有するか又はセラミック層を有しないポリオレフィン多孔質膜)とポリフッ化ビニリデン系ポリマーとの間に親水性ブロック層を設けると、ポリフッ化ビニリデン系ポリマー溶液が親水性ブロック層を透過して多孔質基材に入ることを効果的に抑制することにより、多孔質基材に入ったポリフッ化ビニリデン系ポリマーの量を効果的に低減し、ポリマーセパレータの通気性及び空隙率を向上させ、ポリマーセパレータのバルクインピーダンスを低減し、ポリマーセパレータのイオン伝導度を向上させ、製造されたリチウムイオン電池の性能を良好に保つことができる。これに基づいて、本開示を完成した。
【0008】
本開示の第1の態様によれば、本開示は、多孔質基材と、親水性ブロック層と、多孔質極性ポリマー接着層とを含み、前記親水性ブロック層が前記多孔質基材と前記多孔質極性ポリマー接着層との間に設けられ、前記多孔質極性ポリマー接着層における孔壁がノジュール構造を有する、ポリマーセパレータを提供する。
【0009】
本開示の第2の態様によれば、本開示は、
分散媒と、前記分散媒中に分散された親水性無機粒子及びバインダーとを含有する親水性ブロックスラリーを、多孔質基材の少なくとも1つの表面にコーティングして親水性ブロックコーティング層を形成し、好ましくは、前記親水性ブロックコーティング層を乾燥させて親水性ブロック層を形成するステップ(1)と、
有機溶媒と、前記有機溶媒中に溶解された極性ポリマーバインダー及び造孔剤とを含有する極性ポリマーバインダー溶液を、前記親水性ブロックコーティング層又は前記親水性ブロック層の表面にコーティングして極性ポリマーバインダーコーティング層を形成するステップ(2)と、
前記親水性ブロックコーティング層及び前記極性ポリマーバインダーコーティング層を乾燥させて親水性ブロック層及び多孔質極性ポリマー接着層を形成するか、又は前記極性ポリマーバインダーコーティング層を乾燥させて多孔質極性ポリマー接着層を形成するステップ(3)とを含む、ポリマーセパレータの製造方法を提供する。
【0010】
本開示の第3の態様によれば、本開示は、本開示の第2の態様に係る方法で製造されたポリマーセパレータを提供する。
【0011】
本開示の第4の態様によれば、本開示は、本開示の第1の態様又は第3の態様に係るポリマーセパレータのリチウムイオン電池における応用を提供する。
【0012】
本開示の第5の態様によれば、本開示は、正極と、負極と、本開示の第1の態様又は第3の態様に係るポリマーセパレータとを含む、リチウムイオン電池を提供する。
【0013】
本開示の第6の態様によれば、本開示は、
本開示の第2の態様に係る方法でポリマーセパレータを製造するステップS1と、
前記ポリマーセパレータを正極と負極との間に設けて、電池のセルを形成した後に封止するステップS2とを含む、リチウムイオン電池の製造方法を提供する。
【0014】
本開示に係るポリマーセパレータをリチウムイオン電池に用いて、リチウムイオン電池の正極及び負極としっかり接着することができ、正極及び負極との接着力が強いため、リチウムイオン電池は高い硬度を有する。本開示に係るポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池は、良好な性能を示す。
【0015】
本開示に係るポリマーセパレータの製造方法は、極性ポリマーバインダー溶液を調製する場合、従来のプロセスにおける低沸点溶媒(例えば、アセトン)を採用してもよく、作業安全性の高い高沸点溶媒を採用してもよく、低沸点溶媒と高沸点溶媒との混合物を採用してもよい。高沸点溶媒を採用すると、作業安全性を向上させるだけでなく、リチウムイオン電池の性能を顕著に低減することはない。
【0016】
本開示の付加的な態様及び利点は、一部が以下の説明に示され、一部が以下の説明に明らかになるか又は本開示の実践により把握される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A及び図1Bは、実施例1-1で製造されたポリマーセパレータの親水性ブロック層の表面SEMトポグラフィー像であり、図1Aは500倍に拡大した写真であり、図1Bは5000倍に拡大した写真である。
図2A及び図2Bは、実施例2-5Aで製造されたポリマーセパレータの表面SEMトポグラフィー像であり、図2Aは500倍に拡大した写真であり、図2Bは5000倍に拡大した写真である。
図3A及び図3Bは、実施例2-4Aで製造されたポリマーセパレータの表面SEMトポグラフィー像であり、図3Aは500倍に拡大した写真であり、図3Bは5000倍に拡大した写真である。
図4A及び図4Bは、実施例2-4Bで製造されたポリマーセパレータの表面SEMトポグラフィー像であり、図4Aは500倍に拡大した写真であり、図4Bは5000倍に拡大した写真である。
図5A及び図5Bは、比較例2で製造されたポリマーセパレータの表面SEMトポグラフィー像であり、図5Aは500倍に拡大した写真であり、図5Bは5000倍に拡大した写真である。
図6A及び図6Bは、比較例3で製造されたポリマーセパレータの表面SEMトポグラフィー像であり、図6Aは500倍に拡大した写真であり、図6Bは5000倍に拡大した写真である。
図7A及び図7Bは、実施例2-4Bで製造されたポリマーセパレータを正極接着接触面から剥離した後のポリマーセパレータ側(図7A)及び正極側(図7B)のSEMトポグラフィー像である。
図8A及び図8Bは、実施例2-4Bで製造されたポリマーセパレータを負極接着接触面から剥離した後のポリマーセパレータ側(図8A)及び負極側(図8B)のSEMトポグラフィー像である。
図9A及び図9Bは、それぞれ実施例2-4B(図9A)及び比較例2(図9B)で製造されたリチウムイオン電池の正極とポリマーセパレータの剥離強度試験の曲線グラフである。
図10A及び図10Bは、それぞれ実施例2-4B(図10A)及び比較例2(図10B)で製造されたリチウムイオン電池の負極とポリマーセパレータの剥離強度試験の曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に開示されている範囲の端点及び任意の値は、該正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解されるべきである。数値範囲に対して、各範囲の端点値同士、各範囲の端点値と単独の点値との間、及び単独の点値同士を互いに組み合わせて1つ以上の新たな数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書において具体的に開示されているものと見なされるべきである。
【0019】
本開示の第1態様によれば、本開示は、多孔質基材と、親水性ブロック層と、多孔質極性ポリマー接着層とを含み、上記親水性ブロック層が上記多孔質基材と上記多孔質極性ポリマー接着層との間に設けられる、ポリマーセパレータを提供する。
【0020】
上記親水性ブロック層は、親水性を有するブロック層である。本開示に係るポリマーセパレータは、上記親水性ブロック層の水との接触角が40°以下、例えば1°、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°、13°、14°、15°、16°、17°、18°、19°、20°、21°、22°、23°、24°、25°、26°、27°、28°、29°、30°、31°、32°、33°、34°、35°、36°、37°、38°、39°、又は40°であってよい。好ましくは、上記親水性ブロック層の水との接触角は20°以下である。上記親水性ブロック層の水との接触角が20°以下であるとき、ポリマーセパレータの性能をより顕著に向上させ、例えば、ポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度をより顕著に向上させることができることにより、該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池がより優れた性能を示す。より好ましくは、上記親水性ブロック層の水との接触角は2~15°であり、好ましくは5~10°である。上記接触角は、GB/T30693-2014におけるプラスチック膜の水との接触角の測定に規定される方法で測定される。
【0021】
上記親水性ブロック層は、バインダーと、上記バインダーによって互いに接着される親水性無機粒子とを含有する。
【0022】
上記親水性無機粒子は、親水性Al、親水性SiO、親水性SnO、親水性ZrO、親水性TiO、親水性SiC、親水性Si、親水性CaO、親水性MgO、親水性ZnO、親水性BaTiO、親水性LiAlO及び親水性BaSOのうちの少なくとも1種であり、例えば、上記親水性無機粒子は、好ましくは、親水性Al、親水性SiO、親水性SnO、親水性ZrO、親水性TiO、親水性SiC、親水性Si、親水性CaO、親水性MgO、親水性ZnO、親水性BaTiO、親水性LiAlO及び親水性BaSOのうちの1種又は2種以上である。より好ましくは、上記親水性無機粒子は、親水性Al及び/又は親水性SiOである。さらに好ましくは、上記親水性無機粒子は、気相法によって得られる親水性SiO、沈殿法によって得られる親水性SiO及び気相法によって得られる親水性Alのうちの少なくとも1種であり、例えば、上記親水性無機粒子は、気相法によって得られる親水性SiO、沈殿法によって得られる親水性SiO及び気相法によって得られる親水性Alのうちの1種又は2種以上である。
【0023】
上記親水性無機粒子の粒径は1nm~10μmであってよく、好ましくは1nm~5μm、より好ましくは1nm~2μmである。ポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度、並びに該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池の性能のさらなる向上の観点から、上記親水性無機粒子の粒径は、より好ましくは10nm~1μm、さらに好ましくは20nm~800nm、さらにより好ましくは50nm~350nmである。上記粒径は、体積平均粒径であり、レーザー粒度計で測定される。
【0024】
上記親水性無機粒子の比表面積は、10~600m/gであってよい。ポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度、並びに該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池の性能のさらなる向上の観点から、上記親水性無機粒子の比表面積は、好ましくは100~500m/g、より好ましくは150~400m/g、さらに好ましくは200~400m/g、さらにより好ましくは250~390m/g、特に好ましくは300~380m/gである。上記比表面積は、GB/T19587-2004におけるガス吸着BET法による固形物の比表面積の測定に規定される方法で測定される。
【0025】
本開示に係るポリマーセパレータは、上記親水性無機粒子の含有量が上記親水性ブロック層の全量を基準として、50~95重量%であってよく、好ましくは70~95重量%、より好ましくは80~95重量%、さらに好ましくは85~95重量%である。
【0026】
上記バインダーは、親水性無機粒子を接着固定する一方で、ポリマーセパレータの電解液吸着能力をさらに向上させることができる。上記バインダーは、アクリレート系ポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、アクリロニトリル-アクリレートコポリマー、塩化ビニル-アクリレートコポリマー及びブタジエン-スチレンコポリマーのうちの少なくとも1種であり、好ましくは、アクリレート系ポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、アクリロニトリル-アクリレートコポリマー、塩化ビニル-アクリレートコポリマー及びブタジエン-スチレンコポリマーのうちの1種又は2種以上である。
【0027】
本開示に係るポリマーセパレータは、上記親水性ブロック層の厚さが0.1~3μm、例えば、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、又は3μmであってよい。好ましくは、上記親水性ブロック層の厚さは0.1~1μmであり、より好ましくは0.3~0.8μmである。
【0028】
本開示に係るポリマーセパレータは、上記多孔質基材が液体電解液に膨潤してリチウムイオンを輸送できるための多孔質ポリマー層を含有する。好ましくは、上記多孔質ポリマー層は多孔質ポリオレフィン層であり、例えば、上記多孔質ポリマー層は、多孔質ポリエチレン層、多孔質ポリプロピレン層、及び多孔質ポリエチレンと多孔質ポリプロピレンとの複合層のうちの少なくとも1種であり、好ましくは、多孔質ポリエチレン(PE)層、多孔質ポリプロピレン(PP)層、及び多孔質ポリエチレンと多孔質ポリプロピレンとの複合層のうちの1種又は2種以上である。上記多孔質ポリエチレンと多孔質ポリプロピレンとの複合層はPE/PP/PE複合基材層であってよい。
【0029】
本開示に係るポリマーセパレータは、上記多孔質ポリマー層の厚さが1~50μm、例えば1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、21μm、22μm、23μm、24μm、25μm、26μm、27μm、28μm、29μm、30μm、31μm、32μm、33μm、34μm、35μm、36μm、37μm、38μm、39μm、40μm、41μm、42μm、43μm、44μm、45μm、46μm、47μm、48μm、49μm、50μmであってよく、好ましくは5~20μm、より好ましくは8~15μmである。
【0030】
本開示に係るポリマーセパレータは、上記多孔質基材が多孔質ポリマー層の熱安定性、機械的性質及び電解液吸着能力を向上させるためのセラミック層を含有してもよい。上記セラミック層中のセラミック粒子は、Al、SiO、SnO、ZrO、TiO、SiC、Si、CaO、MgO、ZnO、BaTiO、LiAlO及びBaSOから選択される少なくとも1種を焼結することにより形成されるセラミック粒子であってよく、好ましくは、Al、SiO、SnO、ZrO、TiO、SiC、Si、CaO、MgO、ZnO、BaTiO、LiAlO及びBaSOから選択される1種又は2種以上を焼結することにより形成されるセラミック粒子である。一般的には、上記セラミック層の厚さは1~5μm、例えば1μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、3μm、3.1μm、3.2μm、3.3μm、3.4μm、3.5μm、3.6μm、3.7μm、3.8μm、3.9μm、4.0μm、4.1μm、4.2μm、4.3μm、4.4μm、4.5μm、4.6μm、4.7μm、4.8μm、4.9μm、5.0μmであってよく、好ましくは1.5~3μmである。好ましくは、上記セラミック層の厚さは、上記親水性ブロック層の厚さよりも大きい。
【0031】
本開示に係るポリマーセパレータがセラミック層を含有する場合、セラミック層多孔質ポリマー層親水性ブロック層との間に設けられてもよく、多孔質ポリマー層がセラミック層親水性ブロック層との間に設けられてもよく、上記2つの態様の組み合わせであってもよい。つまり、多孔質基材は、多孔質ポリマー層とセラミック層を含み、親水性ブロック層は、多孔質ポリマー層から離れてセラミック層の表面に配置されるか、親水性ブロック層は、セラミック層の無い多孔質ポリマー層の表面に配置されるか、または、親水性ブロック層は、多孔質ポリマー層から離れたセラミック層の表面と、セラミック層の無い多孔質ポリマー層の表面との両方に配置されていてもよい。または、多孔質基材は、多孔質ポリマー層とセラミック層を含み、セラミック層は、多孔質ポリマー層の両表面に配置され、親水性ブロッキング層は、少なくとも一つのセラミック層の、多孔質ポリマー層から離れた表面に配置されていてもよい。
【0032】
本開示に係るポリマーセパレータは、上記多孔質極性ポリマー接着層が多孔質基材の溶融温度付近での収縮率を低減するとともに、接着の役割を果たし、ポリマーセパレータと電池の正極又は負極とを接着し、さらに多孔質基材の電解液吸着能力を向上させることができる。上記多孔質極性ポリマー接着層中の極性ポリマーは、上記機能を実現できる極性ポリマーであってよく、その具体的な例は、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、及びフッ化ビニリデンとアクリレートとのコポリマーのうちの少なくとも1種を含み得るが、これらに限定されず、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、及びフッ化ビニリデンとアクリレートとのコポリマーのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されず、より好ましくは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(P(VdF-HFP))、及びフッ化ビニリデンとアクリレートとのコポリマーのうちの1種又は2種以上を含む。
【0033】
上記多孔質極性ポリマー接着層の厚さは0.1~10μmであってよく、好ましくは0.2~5μm、より好ましくは0.7~3μm、さらに好ましくは0.8~1.5μmである。
【0034】
本開示に係るポリマーセパレータは、上記多孔質極性ポリマー接着層における孔壁がノジュール構造を有し、すなわち、多孔質極性ポリマー接着層において、孔間の孔壁にノジュール構造を有する。上記ノジュール構造におけるノジュールは、孔壁に隆起してもよく(すなわち、孔壁面に対して突出する)、孔壁に隆起しなくてもよい(すなわち、孔壁面に対して突出しない)。なお、本明細書における「ノジュール構造」とは、図4Bに示す網状構造であると理解することができ、その網壁は、全て球状粒子で構成されるか、又は一部が球状粒子で構成され、その本質は、PVDFが溶媒中に均一に溶解した後、何らかの特定の温湿度などの条件に応じて変化し、二次析出して形成されるペレットである(該ペレットは、市販品PVDF粒子自体のペレットとは異なる)。図6Bを参照すると、それは一般的な網状構造であり、網壁は滑らかであり、球状粒子がなく、ノジュール構造ではない。
【0035】
本開示に係るポリマーセパレータは、上記親水性ブロック層及び上記多孔質極性ポリマー接着層が多孔質基材の片面に設けられてもよく、多孔質基材の両面に設けられてもよい。好ましくは、上記多孔質極性ポリマー接着層は、上記親水性ブロック層の表面に付着する。
【0036】
本開示に係るポリマーセパレータは、1つの実施形態では、多孔質ポリマー層である多孔質基材と、親水性ブロック層と、多孔質極性ポリマー接着層とで構成される。上記親水性ブロック層は、上記多孔質基材の表面に付着し、上記多孔質極性ポリマー接着層は、上記親水性ブロック層の表面に付着する。該実施形態によれば、多孔質基材の1つの表面に上記親水性ブロック層及び上記多孔質極性ポリマー接着層を順に設けてもよく(すなわち、ポリマーセパレータは、多孔質ポリマー層|親水性ブロック層|多孔質極性ポリマー接着層という構造を有する)、多孔質基材の2つの対向する表面にそれぞれ、上記親水性ブロック層及び上記多孔質極性ポリマー接着層を順に設けてもよい(すなわち、ポリマーセパレータは、多孔質極性ポリマー接着層|親水性ブロック層|多孔質ポリマー層|親水性ブロック層|多孔質極性ポリマー接着層という構造を有する)。
【0037】
本開示に係るポリマーセパレータは、別の実施形態では、多孔質ポリマー層及びセラミック層からなる多孔質基材と、親水性ブロック層と、多孔質極性ポリマー接着層とで構成される。該実施形態によれば、一例において、上記セラミック層は上記多孔質ポリマー層の表面に付着し、上記親水性ブロック層は上記セラミック層の表面に付着し、上記多孔質極性ポリマー接着層は上記親水性ブロック層の表面に付着する(すなわち、ポリマーセパレータは、多孔質ポリマー層|セラミック層|親水性ブロック層|多孔質極性ポリマー接着層という構造を有する)。別の例において、上記多孔質ポリマー層は上記セラミック層の表面に付着し、上記親水性ブロック層は上記多孔質ポリマー層の表面に付着し、上記多孔質極性ポリマー接着層は上記親水性ブロック層の表面に付着する(すなわち、ポリマーセパレータは、セラミック層|多孔質ポリマー層|親水性ブロック層|多孔質極性ポリマー接着層という構造を有する)。さらに別の例において、上記セラミック層は上記多孔質ポリマー層の表面に付着し、上記セラミック層と上記多孔質ポリマー層の他方の表面にそれぞれ、親水性ブロック層と多孔質極性ポリマー接着層が順に付着する(すなわち、ポリマーセパレータは、多孔質極性ポリマー接着層|親水性ブロック層|セラミック層|多孔質ポリマー層|親水性ブロック層|多孔質極性ポリマー接着層という構造を有する)。
【0038】
本開示に係るポリマーセパレータは、その総厚が一般的な選択であってよく、一般的に5~50μmであってよく、好ましくは8~30μm、より好ましくは10~20μmである。
【0039】
本開示に係るポリマーセパレータは、高い通気性を有する。一般的には、本開示に係るポリマーセパレータは、Gurley値が100~900Sec/100mL、好ましくは120~600Sec/100mL、より好ましくは120~500Sec/100mLである。さらに好ましくは、上記ポリマーセパレータのGurley値は150~350Sec/100mL、例えば200~300Sec/100mLである。
【0040】
従来のポリマーセパレータにおける、セパレータの熱安定性及び電解液吸着能力を向上させるためのセラミック層に比べて、本開示に係るポリマーセパレータにおける親水性ブロック層は、親水性がより高く、製造過程において極性ポリマーが多孔質基材に入ることを効果的に阻止することができる。従来のポリマーセパレータと比べて、本開示に係るポリマーセパレータは、多孔質極性ポリマー接着層における細孔の孔径がより大きく(従来のポリマーセパレータにおける多孔質極性ポリマー接着層の孔径は、一般的に0.5~1μmであり、本開示に係るポリマーセパレータにおける多孔質極性ポリマー接着層の孔径は3μm以上であってよく、一般的に3~10μmである)、多孔質極性ポリマー接着層は、多層のスクリーン交絡構造であり、上記親水性ブロック層の一部の表面は、上記多層のスクリーン交絡構造を介して露出して見られ、しかしながら、従来のポリマーセパレータにおける多孔質極性ポリマー接着層は、より緻密であり、ハニカム状を呈する。
【0041】
本開示の第2の態様によれば、本開示は、
親水性ブロックスラリーを多孔質基材の少なくとも1つの表面にコーティングして親水性ブロックコーティング層を形成し、好ましくは、上記親水性ブロックコーティング層を乾燥させて親水性ブロック層を形成するステップ(1)と、
極性ポリマーバインダー溶液を上記親水性ブロックコーティング層又は上記親水性ブロック層の表面にコーティングして極性ポリマーバインダーコーティング層を形成するステップ(2)と、
上記親水性ブロックコーティング層及び上記極性ポリマーバインダーコーティング層を乾燥させて親水性ブロック層及び多孔質極性ポリマー接着層を形成するか、又は上記極性ポリマーバインダーコーティング層を乾燥させて多孔質極性ポリマー接着層を形成するステップ(3)とを含む、ポリマーセパレータの製造方法を提供する。
【0042】
上記多孔質基材は、多孔質ポリマー膜であってもよく、多孔質ポリマー膜とセラミックス膜との複合膜であってもよい。上記多孔質ポリマー膜は、好ましくは多孔質ポリオレフィン膜であり、例えば、上記多孔質ポリマー層は、多孔質ポリエチレン層、多孔質ポリプロピレン層、及び多孔質ポリエチレンと多孔質ポリプロピレンとの複合層のうちの少なくとも1種であり、好ましくは、多孔質ポリエチレン(PE)膜、多孔質ポリプロピレン(PP)膜、及び多孔質ポリエチレンと多孔質ポリプロピレンとの複合膜のうちの1種又は2種以上である。上記多孔質ポリエチレンと多孔質ポリプロピレンとの複合膜はPE/PP/PE複合膜であってよい。上記セラミック膜中のセラミックは、Al、SiO、SnO、ZrO、TiO、SiC、Si、CaO、MgO、ZnO、BaTiO、LiAlO及びBaSOから選択される少なくとも1種を焼結することにより形成されるセラミック粒子であってよく、好ましくは、Al、SiO、SnO、ZrO、TiO、SiC、Si、CaO、MgO、ZnO、BaTiO、LiAlO及びBaSOから選択される1種又は2種以上を焼結することにより形成されるセラミック粒子である。上記複合膜において、上記多孔質ポリマー膜の厚さは1~50μm、例えば1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、21μm、22μm、23μm、24μm、25μm、26μm、27μm、28μm、29μm、30μm、31μm、32μm、33μm、34μm、35μm、36μm、37μm、38μm、39μm、40μm、41μm、42μm、43μm、44μm、45μm、46μm、47μm、48μm、49μm、50μmであってよく、好ましくは5~20μm、より好ましくは8~15μmである。上記セラミック膜の厚さは1~5μmであってよく、好ましくは1.5~3μmである。
【0043】
ステップ(1)において、上記親水性ブロックスラリーは、分散媒と、上記分散媒中に分散された親水性無機粒子及びバインダーとを含有する。
【0044】
上記親水性無機粒子の粒径は1nm~10μmであってよく、好ましくは1nm~5μm、より好ましくは1nm~2μmである。最終的に製造されたポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度、並びに該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池の性能のさらなる向上の観点から、上記親水性無機粒子の粒径は、より好ましくは1nm~2μm、さらに好ましくは10nm~1μm、さらにより好ましくは20nm~800nm、特に好ましくは50nm~350nmである。
【0045】
上記親水性無機粒子の比表面積は、10~600m/gであってよい。最終的に製造されたポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度、並びに該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池の性能のさらなる向上の観点から、上記親水性無機粒子の比表面積は、好ましくは100~500m/g、より好ましくは150~400m/g、さらに好ましくは200~400m/g、さらにより好ましくは250~390m/g、特に好ましくは300~380m/gである。
【0046】
上記親水性無機粒子は、親水性Al、親水性SiO、親水性SnO、親水性ZrO、親水性TiO、親水性SiC、親水性Si、親水性CaO、親水性MgO、親水性ZnO、親水性BaTiO、親水性LiAlO及び親水性BaSOのうちの少なくとも1種であり、例えば、上記親水性無機粒子の具体的な例は、親水性Al、親水性SiO、親水性SnO、親水性ZrO、親水性TiO、親水性SiC、親水性Si、親水性CaO、親水性MgO、親水性ZnO、親水性BaTiO、親水性LiAlO及び親水性BaSOのうちの1種又は2種以上を含むが、これらに限定されない。好ましくは、上記親水性無機粒子は、親水性Al及び/又は親水性SiOである。より好ましくは、上記親水性無機粒子は、気相法によって得られる親水性SiO、沈殿法によって得られる親水性SiO及び気相法によって得られる親水性Alのうちの少なくとも1種であり、例えば、上記親水性無機粒子は、気相法によって得られる親水性SiO、沈殿法によって得られる親水性SiO及び気相法によって得られる親水性Alのうちの1種又は2種以上である。
【0047】
上記親水性ブロックスラリーにおいて、上記バインダーは、アクリレート系ポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、アクリロニトリル-アクリレートコポリマー、塩化ビニル-アクリレートコポリマー及びブタジエン-スチレンコポリマーのうちの少なくとも1種であり、好ましくは、アクリレート系ポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、アクリロニトリル-アクリレートコポリマー、塩化ビニル-アクリレートコポリマー及びブタジエン-スチレンコポリマーのうちの1種又は2種以上である。
【0048】
上記親水性ブロックスラリーにおいて、分散媒は、親水性無機粒子及びバインダーが均一で安定したスラリーになるように、親水性無機粒子及びバインダーの種類に応じて選択することができる。上記分散媒の具体的な例は、水、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン及びクロロホルムのうちの少なくとも1種を含み得るが、これらに限定されず、好ましくは、水、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン及びクロロホルムのうちの1種又は2種を含むが、これらに限定されない。
【0049】
上記親水性ブロックスラリーにおいて、親水性無機粒子の含有量は、50~95重量%、例えば50重量%、52重量%、55重量%、57重量%、60重量%、62重量%、65重量%、67重量%、70重量%、72重量%、75重量%、77重量%、80重量%、82重量%、85重量%、87重量%、90重量%、92重量%、95重量%であってよく、好ましくは70~95重量%、より好ましくは80~95重量%、さらに好ましくは85~95重量%である。バインダーの使用量は、親水性無機粒子を接着固定できるように、親水性無機粒子の使用量に応じて選択することができる。一般的には、上記親水性ブロックスラリーにおいて、上記バインダーの含有量は、親水性無機粒子100重量部に対して、1~30重量部、例えば1重量部、2重量部、5重量部、7重量部、10重量部、12重量部、15重量部、17重量部、20重量部、22重量部、25重量部、27重量部、30重量部であってよく、好ましくは2~25重量部、より好ましくは5~20重量部である。
【0050】
上記親水性ブロックスラリーは、親水性ブロックスラリーの安定性をさらに向上させるように、分散剤を含有してもよい。上記分散剤は、一般的に、無機粒子の液体媒体への分散性を促進できる物質であってよく、その具体的な例は、ポリビニルアルコール(PVA)及び/又はポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)を含むが、これらに限定されない。上記分散剤の使用量は、一般的な選択であってよい。一般的には、親水性無機粒子100重量部に対して、上記分散剤の使用量は、0.1~10重量部、例えば0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.5重量部、0.7重量部、1.0重量部、1.2重量部、1.5重量部、1.7重量部、2.0重量部、2.2重量部、2.5重量部、2.7重量部、3.0重量部、3.2重量部、3.5重量部、3.7重量部、4.0重量部、4.2重量部、4.5重量部、4.7重量部、5.0重量部、5.2重量部、5.5重量部、5.7重量部、6.0重量部、6.2重量部、6.5重量部、6.7重量部、7.0重量部、7.2重量部、7.5重量部、7.7重量部、8.0重量部、8.2重量部、8.5重量部、8.7重量部、9.0重量部、9.2重量部、9.5重量部、9.7重量部、10.0重量部であってよく、好ましくは0.2~5重量部、より好ましくは0.3~2重量部である。
【0051】
上記親水性ブロックスラリーは、親水性ブロックスラリーのコーティング性をさらに向上させるように、増粘剤を含有してもよい。上記増粘剤は、セルロース型増粘剤及び/又はポリアクリレート系アルカリ膨潤型増粘剤(例えば、BASF LatekollD増粘剤)であってよい。親水性無機粒子100重量部に対して、上記増粘剤の使用量は0.1~10重量部、例えば0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、1.0重量部、1.2重量部、1.5重量部、1.7重量部、2.0重量部、2.2重量部、2.5重量部、2.7重量部、3.0重量部、3.2重量部、3.5重量部、3.7重量部、4.0重量部、4.2重量部、4.5重量部、4.7重量部、5.0重量部、5.2重量部、5.5重量部、5.7重量部、6.0重量部、6.2重量部、6.5重量部、6.7重量部、7.0重量部、7.2重量部、7.5重量部、7.7重量部、8.0重量部、8.2重量部、8.5重量部、8.7重量部、9.0重量部、9.2重量部、9.5重量部、9.7重量部、10.0重量部であってよく、好ましくは0.5~5重量部、より好ましくは0.8~2重量部である。
【0052】
好ましくは、上記親水性ブロックスラリーのpH値をアルカリ性に調整し、好ましくは8~10、例えば8、8.2、8.5、8.7、9.0、9.2、9.5、9.7、10.0である。
【0053】
上記親水性ブロックスラリーの固形分は、好ましくは2~30重量%、例えば2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、7重量%、10重量%、12重量%、15重量%、17重量%、20重量%、22重量%、25重量%、27重量%、30重量%であり、より好ましくは5~25重量%である。
【0054】
上記親水性ブロックスラリーの上記多孔質基材表面へのコーティング量は、所望の親水性ブロック層の厚さに応じて選択することができる。一般的には、上記親水性ブロックスラリーは、上記親水性ブロック層の厚さが0.1~3μm、例えば0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、又は3μmになるようにコーティングされる。好ましくは、上記親水性ブロックスラリーは、上記親水性ブロック層の厚さが0.1~1μm、より好ましくは0.3~0.8μmになるようにコーティングされる。
【0055】
ステップ(1)において、親水性ブロックコーティング層を乾燥させて親水性ブロック層を形成した後に極性ポリマーバインダー溶液をコーティングしてもよく、親水性ブロックコーティング層を乾燥させずにそのまま親水性ブロックコーティング層の表面に極性ポリマーバインダー溶液をコーティングしてもよい。好ましくは、親水性ブロックコーティング層を乾燥させて親水性ブロック層を形成した後に極性ポリマーバインダー溶液をコーティングすることにより、最終的に製造されたポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度をさらに向上させ、かつ該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池の性能をさらに向上させることができる。
【0056】
ステップ(1)において、上記乾燥の温度は10~120℃であってよい。好ましくは、上記乾燥の温度は100℃以下である。より好ましくは、上記乾燥の温度は80℃以下、例えば10~80℃であり、具体的には、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、又は80℃であってよい。好ましくは、上記乾燥の温度は40~60℃、例えば50~60℃である。ステップ(1)において、上記乾燥は、常圧下で行われても減圧下で行われてもよい。好ましくは、上記乾燥は常圧下で行われる。上記乾燥は送風乾燥機中で行うことができる。ステップ(1)において、上記乾燥の持続時間は、乾燥の温度及び採用する分散剤の種類に応じて選択することができる。一般的には、ステップ(1)における上記乾燥の持続時間は0.1~24時間、例えば0.1時間、0.2時間、0.5時間、0.7時間、1時間、1.2時間、1.5時間、1.7時間、2.0時間、2.2時間、2.5時間、2.7時間、3.0時間、3.2時間、3.5時間、3.7時間、4.0時間、4.2時間、4.5時間、4.7時間、5.0時間、5.2時間、5.5時間、5.7時間、6.0時間、6.2時間、6.5時間、6.7時間、7.0時間、7.2時間、7.5時間、7.7時間、8.0時間、8.2時間、8.5時間、8.7時間、9.0時間、9.2時間、9.5時間、9.7時間、10.0時間、10.5時間、11時間、11.5時間、12時間、12.5時間、13時間、13.5時間、14時間、14.5時間、15時間、15.5時間、16時間、16.5時間、17時間、17.5時間、18時間、18.5時間、19時間、19.5時間、20.0時間、20.5時間、21時間、21.5時間、22時間、22.5時間、23時間、23.5時間、24時間であってよく、好ましくは5~18時間、より好ましくは8~12時間である。
【0057】
本開示の方法によれば、上記親水性ブロック層の水との接触角は、40°以下、例えば1°、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°、13°、14°、15°、16°、17°、18°、19°、20°、21°、22°、23°、24°、25°、26°、27°、28°、29°、30°、31°、32°、33°、34°、35°、36°、37°、38°、39°、又は40°であってよい。好ましくは、上記親水性ブロック層の水との接触角は20°以下である。上記親水性ブロック層の水との接触角が20°以下であるとき、ポリマーセパレータの性能をより顕著に向上させ、例えば、ポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度をより顕著に向上させることができることにより、該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池がより優れた性能を示す。より好ましくは、ステップ(1)において形成される親水性ブロック層の水との接触角は2~15°であり、より好ましくは5~10°である。
【0058】
ステップ(2)において、上記極性ポリマーバインダー溶液は、有機溶媒と、上記有機溶媒中に溶解された極性ポリマーバインダー及び造孔剤とを含有する。
【0059】
上記極性ポリマーバインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、及びフッ化ビニリデンとアクリレートとのコポリマーのうちの少なくとも1種であってよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、及びフッ化ビニリデンとアクリレートとのコポリマーのうちの1種又は2種以上であってよい。
【0060】
上記有機溶媒は、低沸点有機溶媒(沸点が60℃よりも低い有機溶媒)、例えばアセトンであってもよく、高沸点溶媒、例えば沸点が60℃以上の溶媒であってもよく、さらに低沸点溶媒と高沸点溶媒との混合物であってもよい。低沸点溶媒と高沸点溶媒との混合物に対して、作業安全性のさらなる向上の観点から、好ましくは、低沸点溶媒の含有量は、爆発する安全閾値以下に制御される。
【0061】
1つの実施形態では、上記有機溶媒は低沸点溶媒であり、好ましくはアセトンである。該実施形態によれば、好ましい条件で製造されたポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池は、より優れた性能を示し、特に該ポリマーセパレータを用いて製造されたリチウムイオン電池は、顕著に向上した高レート放電性能及び高温性能を示す。上記好ましい条件は、以下を含む。上記親水性無機粒子の粒径は、好ましくは1nm~2μm、より好ましくは10nm~1μm、さらに好ましくは20nm~800nm、さらにより好ましくは50nm~350nmであり、上記親水性ブロック層の水との接触角は、好ましくは20°以下であり、ステップ(2)における上記乾燥は、60℃以下の温度で行われる。
【0062】
別の実施形態では、上記有機溶媒は、高沸点溶媒、例えば、沸点が60℃以上の有機溶媒(例えば60~260℃)であり、好ましくは沸点が120℃以上の有機溶媒(例えば120~260℃)、より好ましくは沸点が140℃以上の有機溶媒(例えば140~260℃)である。さらに好ましくは、上記有機溶媒の沸点は145~260℃、例えば150~230℃である。上記有機溶媒の具体的な例は、リン酸トリエチル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドのうちの少なくとも1種を含み得るが、これらに限定されず、より好ましくは、リン酸トリエチル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドのうちの1種又は2種以上を含むが、これらに限定されない。該実施形態によれば、作業安全性を向上させることができる。
【0063】
さらに別の実施形態では、上記有機溶媒は、低沸点溶媒と高沸点溶媒との混合物である。上記低沸点溶媒と上記高沸点溶媒は、それぞれ前述と同様である。該実施形態では、上記有機溶媒の全量を基準として、高沸点溶媒の含有量は0.1~99.9重量%であってよく、低沸点溶媒の含有量は0.1~99.9重量%であってよい。
【0064】
上記造孔剤は、好ましくは有機造孔剤である。上記造孔剤の沸点は、好ましくは上記有機溶媒の沸点よりも高く、このように乾燥するとき、有機溶媒が先に揮発し、造孔剤が後に揮発することにより造孔効果を向上させる。好ましくは、上記有機造孔剤の沸点は61~261℃、例えば61℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃、200℃、205℃、210℃、215℃、220℃、225℃、230℃、235℃、240℃、245℃、250℃、255℃、260℃、261℃である。上記造孔剤は、カーボネート系化合物及び/又はアルコールエーテル系化合物であってよく、その具体的な例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテルのうちの少なくとも1種を含み得るが、これらに限定されず、好ましくは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテルのうちの1種又は2種以上を含むが、これらに限定されない。
【0065】
上記極性ポリマーバインダー溶液において、上記有機溶媒と上記造孔剤との重量比は1:0.01~1、例えば1:0.01、1:0.05、1:0.1、1:0.15、1:0.2、1:0.25、1:0.3、1:0.35、1:0.4、1:0.45、1:0.5、1:0.55、1:0.6、1:0.65、1:0.7、1:0.75、1:0.8、1:0.85、1:0.9、1:0.95、1:0.1、1:0.15、1:0.2、1:0.25、1:0.3、1:0.35、1:0.4、1:0.45、1:0.5、1:0.55、1:0.6、1:0.65、1:0.7、1:0.75、1:0.8、1:0.85、1:0.9、1:0.95、又は1:1であってよい。好ましくは、上記極性ポリマーバインダー溶液において、上記有機溶媒と上記造孔剤との重量比は1:0.02~0.5である。より好ましくは、上記極性ポリマーバインダー溶液において、上記有機溶媒と上記造孔剤との重量比は1:0.03~0.3である。さらに好ましくは、上記極性ポリマーバインダー溶液において、上記有機溶媒と上記造孔剤との重量比は1:0.05~0.1である。
【0066】
ステップ(2)において、上記極性ポリマーバインダー溶液における極性ポリマーバインダーの濃度は1~30重量%、例えば2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%であり、好ましくは2~25重量%である。最終的に製造されたポリマーセパレータの性能、及び該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池の性能のさらなる向上の観点から、上記極性ポリマーバインダー溶液における極性ポリマーバインダーの濃度は、より好ましくは5~20重量%である。さらに好ましくは、上記極性ポリマーバインダー溶液における極性ポリマーバインダーの濃度は、臨界濃度である(一般的に8~15重量%、好ましくは10~12重量%である)。上記臨界濃度とは、極性ポリマーバインダー溶液が多孔質基材を透過する濃度であり、25℃、1気圧かつ相対湿度がRH45%~55%の環境下で、極性ポリマーバインダー溶液を多孔質基材の1つの表面にコーティングし、極性ポリマーバインダー溶液が1時間内に多孔質基材を透過するか否かを観察し、多孔質基材を透過する濃度と多孔質基材を透過しない濃度との間にある濃度を臨界濃度とすることができる。上記極性ポリマーバインダーの濃度が臨界濃度であるとき、極性ポリマーバインダーが溶液中で微視的にゲル状を呈し、単分子が流動拡散しにくくなり、このように、極性ポリマー分子同士の相互作用を向上させることができ、溶媒蒸発過程で理想的な物理的架橋ネットワーク構造を形成することにより、ポリマーセパレータがより優れた通気性及びイオン伝導度を有し、該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池がより優れた性能を有する。
【0067】
上記極性ポリマーバインダー溶液のコーティング量は、所望の極性ポリマー接着層の厚さに応じて選択することができる。上記極性ポリマーバインダー溶液は、最終的に形成される多孔質極性ポリマー接着層の厚さが0.1~10μm、例えば0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1.0μm、1.2μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、2.0μm、2.2μm、2.5μm、2.7μm、3.0μm、3.2μm、3.5μm、3.7μm、4.0μm、4.2μm、4.5μm、4.7μm、5.0μm、5.2μm、5.4μm、5.7μm、6.0μm、6.2μm、6.5μm、6.7μm、7.0μm、7.2μm、7.5μm、7.7μm、8.0μm、8.2μm、8.5μm、8.7μm、9.0μm、9.2μm、9.4μm、9.7μm、10μmになり、好ましくは0.2~5μm、より好ましくは0.7~3μm、さらに好ましくは0.8~1.5μmになるようにコーティングすることができる。
【0068】
ステップ(3)において、上記乾燥は、120℃以下の温度で行うことができる。好ましくは、上記乾燥は60℃以下で行われ、10~60℃、例えば、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、又は60℃で行われてよい。60℃以下の温度で乾燥することにより、極性ポリマー接着層がより優れた孔構造を有し、最終的に製造されたポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度をさらに向上させ、かつ該ポリマーセパレータを用いたリチウムイオン電池の性能をさらに向上させることができる。より好ましくは、上記乾燥は、20~55℃の温度で行われる。さらに好ましくは、上記乾燥は、30~45℃の温度で行われる。上記乾燥の持続時間は、乾燥の温度に応じて選択することができる。具体的には、上記乾燥の持続時間は0.1~36時間であってよく、好ましくは5~30時間、より好ましくは10~24時間、さらに好ましくは15~24時間である。
【0069】
ステップ(1)及びステップ(2)において、一般的なコーティング方法、例えばロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法及びスクリーン印刷法のうちの1種又は2種以上の組み合わせなどを採用することができる。
【0070】
本開示の方法によれば、製造されたポリマーセパレータにおいて、多孔質基材の片面に親水性ブロック層及び多孔質極性ポリマー接着層を形成してもよく、多孔質基材の両面に親水性ブロック層及び多孔質極性ポリマー接着層を形成してもよい。
【0071】
本開示の方法によれば、1つの実施形態では、最終的に製造されたポリマーセパレータは、多孔質基材と、親水性ブロック層と、多孔質極性ポリマー接着層とで構成され、上記多孔質基材は、多孔質ポリマー膜であり、上記親水性ブロック層は、上記多孔質基材の表面に付着し、上記多孔質極性ポリマー接着層は、上記親水性ブロック層の表面に付着する。該実施形態によれば、多孔質基材の1つの表面に上記親水性ブロック層及び上記多孔質極性ポリマー接着層を順に設けてもよく(すなわち、ポリマーセパレータは、多孔質ポリマー膜|親水性ブロック層|多孔質極性ポリマー接着層という構造を有する)、多孔質基材の2つの対向する表面にそれぞれ、上記親水性ブロック層及び上記多孔質極性ポリマー接着層を順に設けてもよい(すなわち、ポリマーセパレータは、多孔質極性ポリマー接着層|親水性ブロック層|多孔質ポリマー膜|親水性ブロック層|多孔質極性ポリマー接着層という構造を有する)。
【0072】
本開示の方法によれば、別の実施形態では、最終的に製造されたポリマーセパレータは、多孔質基材と、親水性ブロック層と、多孔質極性ポリマー接着層とで構成され、上記多孔質基材は、多孔質ポリマー膜とセラミック膜との複合膜である。該実施形態によれば、一例において、上記セラミック膜は上記多孔質ポリマー膜の表面に付着し、上記親水性ブロック層は上記セラミック膜の表面に付着し、上記多孔質極性ポリマー接着層は上記親水性ブロック層の表面に付着する(すなわち、ポリマーセパレータは、多孔質ポリマー膜|セラミック膜|親水性ブロック層|多孔質極性ポリマー接着層という構造を有する)。別の例において、上記多孔質ポリマー膜は上記セラミック層の表面に付着し、上記親水性ブロック層は上記多孔質ポリマー膜の表面に付着し、上記多孔質極性ポリマー接着層は上記親水性ブロック層の表面に付着する(すなわち、ポリマーセパレータは、セラミック膜|多孔質ポリマー膜|親水性ブロック層|多孔質極性ポリマー接着層という構造を有する)。さらに別の例において、セラミック膜は多孔質ポリマー膜の表面に付着し、上記セラミック膜と上記多孔質ポリマー膜の他方の表面にそれぞれ、親水性ブロック層と多孔質極性ポリマー接着層が順に付着する(すなわち、ポリマーセパレータは、多孔質極性ポリマー接着層|親水性ブロック層|セラミック膜|多孔質ポリマー膜|親水性ブロック層|多孔質極性ポリマー接着層という構造を有する)。
【0073】
本開示の第3の態様によれば、本開示は、本開示の第2の態様に係る方法で製造されたポリマーセパレータを提供する。
【0074】
本開示の第2の態様に係る方法で製造されたポリマーセパレータは、総厚が一般的な選択であってよく、一般的に5~50μm、例えば5μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、15μm、18μm、20μm、23μm、25μm、28μm、30μm、32μm、35μm、38μm、40μm、42μm、44μm、46μm、48μm、50μmであってよく、好ましくは8~30μm、より好ましくは10~20μmである。
【0075】
本開示の第2の態様に係る方法で製造されたポリマーセパレータは、高い通気性を有する。一般的には、本開示の第2の態様に係る方法で製造されたポリマーセパレータは、Gurley値が100~900Sec/100mL、例えば100Sec/100mL、120Sec/100mL、150Sec/100mL、170Sec/100mL、190Sec/100mL、200Sec/100mL、220Sec/100mL、250Sec/100mL、270Sec/100mL、290Sec/100mL、300Sec/100mL、325Sec/100mL、350Sec/100mL、370Sec/100mL、390Sec/100mL、400Sec/100mL、425Sec/100mL、450Sec/100mL、480Sec/100mL、500Sec/100mL、520Sec/100mL、550Sec/100mL、575Sec/100mL、600Sec/100mL、625Sec/100mL、650Sec/100mL、675Sec/100mL、690Sec/100mL、700Sec/100mL、720Sec/100mL、740Sec/100mL、770Sec/100mL、790Sec/100mL、800Sec/100mL、825Sec/100mL、850Sec/100mL、875Sec/100mL、900Sec/100mLであり、好ましくは120~600Sec/100mL、より好ましくは120~500Sec/100mLである。さらに好ましくは、本開示の第2の態様に係る方法で製造されたポリマーセパレータのGurley値は150~350Sec/100mL、例えば200~300Sec/100mLである。
【0076】
従来のポリマーセパレータにおける、セパレータの熱安定性及び電解液吸着能力を向上させるためのセラミック層に比べて、本開示の第2の態様に係る方法で製造されたポリマーセパレータにおける親水性ブロック層は、親水性がより高く、製造過程において極性ポリマーが多孔質基材に入ることを効果的に阻止することができる。従来のポリマーセパレータと比べて、本開示の第2の態様に係る方法で製造されたポリマーセパレータは、多孔質極性ポリマー接着層における細孔の孔径がより大きく(従来のポリマーセパレータにおける多孔質極性ポリマー接着層の孔径は、一般的に0.5~1μmであり、本開示に係るポリマーセパレータにおける多孔質極性ポリマー接着層の孔径は3μm以上であってよく、一般的に3~10μmである)、多孔質極性ポリマー接着層は、多層のスクリーン交絡構造であり、上記親水性ブロック層の一部の表面は、上記多層のスクリーン交絡構造を介して露出して見られ、しかしながら、従来のポリマーセパレータにおける多孔質極性ポリマー接着層は、より緻密であり、ハニカム状を呈する。
【0077】
本開示の第2の態様に係る方法で製造されたポリマーセパレータの多孔質極性ポリマー接着層において、孔壁はノジュール構造を有してよく、すなわち、多孔質極性ポリマー接着層において、孔間の孔壁にノジュール構造を有してよい。上記ノジュール構造におけるノジュールは、孔壁に隆起してもよく(すなわち、孔壁面に対して突出する)、孔壁に隆起しなくてもよい(すなわち、孔壁面に対して突出しない)。
【0078】
本開示の第4の態様によれば、本開示は、本開示の第1の態様又は第3の態様に係るポリマーセパレータのリチウムイオン電池における応用を提供する。
【0079】
本開示の第5の態様によれば、本開示は、正極と、負極と、本開示の第1の態様又は第3の態様に係るポリマーセパレータとを含む、リチウムイオン電池を提供する。
【0080】
上記正極は、リチウムイオン電池に用いられる正極材料、導電剤及びバインダーで調製されたスラリーを、アルミニウム箔にコーティングして製造されたものである。使用される正極材料は、リチウムイオン電池に使用可能な任意の正極材料、例えば酸化コバルトリチウム(LiCoO)、酸化ニッケルリチウム(LiNiO)、酸化マンガンリチウム(LiMn)及びリン酸鉄リチウム(LiFePO)のうちの1種又は2種以上を含む。上記負極は、リチウムイオン電池に用いられる負極材料、導電剤及びバインダーで調製されたスラリーを、銅箔にコーティングして製造されたものである。使用される負極材料は、リチウムイオン電池に使用可能な任意の負極材料、例えば黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボンのうちの1種又は2種以上を含む。
【0081】
本開示に係るリチウムイオン電池は、電解液を含有しても含有しなくてもよい。上記電解液は、当業者に公知であり、リチウム塩及び有機溶媒を含有する。上記リチウム塩は、解離可能なリチウム塩であってよく、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)及び四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)から選択される1種又は2種以上であってよい。上記有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びビニレンカーボネート(VC)から選択される1種又は2種以上であってよい。好ましくは、上記電解液において、リチウム塩の濃度は0.8~1.5mol/Lである。
【0082】
本開示の第6の態様によれば、本開示は、
本開示の第2の態様に係る方法でポリマーセパレータを製造するステップS1と、
前記ポリマーセパレータを正極と負極との間に設けて、電池のセルを形成した後に封止するステップS2とを含む、リチウムイオン電池の製造方法を提供する。
【0083】
ステップS2は、リチウムイオン電池の製造の技術分野における一般的な方法を採用して行うことができ、本開示には特に限定されない。ステップS2において、電池のセルに電解液を充填してもよく、電解液を充填せずにそのまま封止してもよい。
【0084】
以下、実施例を参照して本開示を詳細に説明するが、本開示の範囲はそのように限定されるものではない。
【0085】
以下の実施例及び比較例は、以下の試験方法に関する:
(1)面密度は、重量法で測定され、
(2)親水性ブロック層の水との接触角は、GB/T30693-2014におけるプラスチック膜の水との接触角の測定に規定される方法で測定され、
(3)粒径は、レーザー粒度計で測定され、体積平均粒径であり、
(4)比表面積は、GB/T19587-2004におけるガス吸着BET法による固形物の比表面積の測定に規定される方法で測定される。
【0086】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示の内容はそのように限定されるものではない。
【0087】
実施例1-1~1-4は、本開示に係る親水性ブロック層を製造する。
(実施例1-1)
【0088】
気相法で製造された親水性シリカ(比表面積380m/g、粒径80nm、アラジンから購入)、アクリレート系接着剤(P1005、上海愛高化工有限公司から購入)、分散剤(PVA、アラジン社から購入)、分散剤(PAANa、日本昭和電工株式会社から購入)、及び増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC、日本ダイセル社から購入)を、スラリーの固形分92:8:0.4:0.4:1.2(重量比)で水に分散し、固形分を8重量%に制御し、スラリーのpH値を8に調節し、均一に撹拌して、親水性ブロックスラリーを形成した。親水性ブロックスラリーをグラビアロールコート法で、片面セラミックセパレータ(9μmPE+2μmセラミック層であり、セラミック層中のセラミック粒子がミクロンオーダーの酸化アルミニウムセラミック粒子であり、山東国磁から購入され、以下も同様である)の両側にコーティングし、60℃で12時間乾燥させて、親水性ブロック層を有するセパレータを得て、親水性ブロック層の厚さは0.5μmであり、親水性ブロック層の水との接触角は5°である。図1A及び図1Bは該親水性ブロック層のSEMトポグラフィー像を示す。
(実施例1-2)
【0089】
沈殿法で製造された親水性シリカ(比表面積370m/g、粒径150nm、アラジン社から購入)、アクリレート系接着剤(P1005、上海愛高化工有限公司から購入)、分散剤(PVA)、分散剤(PAANa)、及び増粘剤LatekollD(BASF社から購入)を、固形分90:10:0.4:0.4:1.2(重量比)で水に分散し、スラリーの固形分を8重量%に制御し、スラリーのpH値を10に調節し、均一に撹拌して、親水性ブロックスラリーを形成した。親水性ブロックスラリーをグラビアロールコート法で、片面セラミックセパレータの両側にコーティングし、60℃で10時間乾燥させて、親水性ブロック層を有するセパレータを得て、親水性ブロック層の厚さは0.7μmであり、親水性ブロック層の水との接触角は8°である。
(実施例1-3)
【0090】
気相法で製造された親水性酸化アルミニウム(比表面積350m/g、粒径200nm、アラジン社から購入)、アクリレート系接着剤(P2010、上海愛高化工有限公司から購入)、分散剤(PVA)、分散剤(PAANa)、及び増粘剤LatekollD(BASF社から購入)を、固形分85:15:0.2:0.3:1(重量比)で水に分散し、スラリーの固形分を20重量%に制御し、スラリーのpH値を10に調節し、均一に撹拌して、親水性ブロックスラリーを形成した。親水性ブロックスラリーをスプレーコート法で、片面セラミックセパレータの両側にコーティングし、50℃で8時間乾燥させて、親水性ブロック層を有するセパレータを得て、親水性ブロック層の厚さは0.6μmであり、親水性ブロック層の水との接触角は10°である。
(実施例1-4)
【0091】
気相法で製造された親水性酸化アルミニウム(比表面積320m/g、粒径320nm、アラジン社から購入)、アクリレート系接着剤(P2010、上海愛高化工有限公司から購入)、分散剤(PVA)、分散剤(PAANa)、及び増粘剤LatekollD(BASF社から購入)を、固形分95:5:0.4:0.4:1.2(重量比)で水に分散し、スラリーの固形分を17重量%に制御し、スラリーのpHを9に調節し、均一に撹拌して、親水性ブロックスラリーを形成した。親水性ブロックスラリーをグラビアロールコート法で、片面セラミックセパレータの両側にコーティングし、50℃で12時間乾燥させて、親水性ブロック層を有するセパレータを得て、親水性ブロック層の厚さは0.8μmであり、親水性ブロック層の水との接触角は8°である。
【0092】
以下の実施例は、本開示に係るポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造する。
(実施例2-1A)
【0093】
(1)P(VdF-HFP)粉末(Kynar powerflex LBG粉末であり、アルケマ社から購入され、以下も同様である)を、重量比1:0.05のN,N-ジメチルホルムアミドとプロピレンカーボネートとの混合液に溶解し、P(VdF-HFP)の濃度を臨界濃度(10重量%)に制御し、均一に撹拌して極性ポリマーバインダー溶液を得た。
【0094】
極性ポリマーバインダー溶液をグラビアロールコート法で、実施例1-1で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータの両側の親水性ブロック層の表面にコーティングし、35℃で20時間送風乾燥させ、多孔質極性ポリマー接着層を形成して、本開示に係るポリマーセパレータを得た。
【0095】
(2)LiCoO、PVDFバインダー及びカーボンブラックを、質量比100:0.8:0.5でスラリーに調製してアルミニウム箔にコーティングし、乾燥させて厚さ0.114mmのLiCoO正極を製造した。
【0096】
スチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを水に分散し、人造黒鉛及び導電剤との質量比2.5:1.5:90:6で室温(25℃)で3.5時間高速撹拌し、撹拌後の材料を銅箔にコーティングし、乾燥させて厚さ0.135mmの黒鉛製負極を製造した。
【0097】
(3)乾燥室内に、LiCoO正極、黒鉛製負極、及びステップ(2)で製造されたポリマーセパレータを巻回するように、CSL454187型LiCoO/黒鉛ポーチリチウムイオン電池のセルを製造し、電解液を充填した後にパッケージングしてリチウムイオン電池を得て、元のセラミック面は正極に向かい、電解液中の電解質は六フッ化リン酸リチウムであり、その濃度は1mol/Lであり、有機溶媒はEC、EMC及びDECを重量比1:1:1で混合して得られた混合液である。
(実施例2-1B)
【0098】
実施例2-1Bは、実施例2-1Aと同様の方法でリチウムイオン電池を製造したが、ステップ(1)において、極性ポリマーバインダー溶液をディップコート法で、実施例1-3で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータの両側の親水性ブロック層の表面にコーティングし、親水性ブロック層を有するセパレータが極性ポリマーバインダー溶液に30秒浸漬されたという点で異なる。
(実施例2-2A)
【0099】
実施例2-2Aは、実施例2-1Aと同様の方法でリチウムイオン電池を製造したが、以下の方法でポリマーセパレータを製造したという点で異なる。P(VdF-HFP)粉末を、重量比1:0.06のN-メチルピロリドンとプロピレンカーボネートとの混合液に溶解し、P(VdF-HFP)の濃度を臨界濃度(12重量%)に制御し、均一に撹拌して極性ポリマーバインダー溶液を得た。極性ポリマーバインダー溶液をグラビアロールコート法で、それぞれ実施例1-2で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータの両側の親水性ブロック層の表面にコーティングし、30℃で24時間送風乾燥させ、多孔質極性ポリマー接着層を形成して、本開示に係るポリマーセパレータを得た。
(実施例2-2B)
【0100】
実施例2-2Bは、実施例2-2Aと同様の方法でリチウムイオン電池を製造したが、ステップ(1)において、極性ポリマーバインダー溶液をディップコート法で、実施例1-4で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータの両側の親水性ブロック層の表面にコーティングし、親水性ブロック層を有するセパレータが極性ポリマーバインダー溶液に30秒浸漬されたという点で異なる。
(実施例2-3A)
【0101】
実施例2-3Aは、実施例2-1Aと同様の方法でリチウムイオン電池を製造したが、以下の方法でポリマーセパレータを製造したという点で異なる。P(VdF-HFP)粉末を、重量比1:0.1のリン酸トリエチルとプロピレンカーボネートとの混合液に溶解し、P(VdF-HFP)の濃度を臨界濃度(12重量%)に制御し、均一に撹拌して極性ポリマーバインダー溶液を得た。極性ポリマーバインダー溶液をグラビアロールコート法で、実施例1-2で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータの両側の親水性ブロック層の表面にコーティングし、40℃で18時間送風乾燥させ、多孔質極性ポリマー接着層を形成して、本開示に係るポリマーセパレータを得た。
(実施例2-3B)
【0102】
実施例2-3Bは、実施例2-3Aと同様の方法でリチウムイオン電池を製造したが、ステップ(1)において、極性ポリマーバインダー溶液をディップコート法で、実施例1-3で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータの両側の親水性ブロック層の表面にコーティングし、親水性ブロック層を有するセパレータが極性ポリマーバインダー溶液に30秒浸漬されたという点で異なる。
(実施例2-4A)
【0103】
実施例2-4Aは、実施例2-1Aと同様の方法でリチウムイオン電池を製造したが、以下の方法でポリマーセパレータを製造したという点で異なる。P(VdF-HFP)粉末を、重量比1:0.06のN,N-ジメチルホルムアミドと造孔剤としてのジプロピレングリコールジメチルエーテルとの混合液に溶解し、P(VdF-HFP)の濃度を臨界濃度(10重量%)に制御し、均一に撹拌して極性ポリマーバインダー溶液を得た。
極性ポリマーバインダー溶液をグラビアロールコート法で、実施例1-1で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータの両側の親水性ブロック層の表面にコーティングし、45℃で15時間送風乾燥させ、多孔質極性ポリマー接着層を形成して、本開示に係るポリマーセパレータを得た。
(実施例2-4B)
【0104】
実施例2-4Bは、実施例2-4Aと同様の方法でリチウムイオン電池を製造したが、ステップ(1)において、極性ポリマーバインダー溶液をディップコート法で、実施例1-3で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータの両側の親水性ブロック層の表面にコーティングし、親水性ブロック層を有するセパレータが極性ポリマーバインダー溶液に30秒浸漬されたという点で異なる。
(実施例2-5A)
【0105】
実施例2-5Aは、実施例2-1Aと同様の方法でリチウムイオン電池を製造したが、以下の方法でポリマーセパレータを製造したという点で異なる。P(VdF-HFP)粉末を、重量比1:0.08のN-メチルピロリドンとジプロピレングリコールジメチルエーテルとの混合液に溶解し、P(VdF-HFP)の濃度を臨界濃度(12重量%)に制御し、均一に撹拌して極性ポリマーバインダー溶液を得た。
【0106】
極性ポリマーバインダー溶液をスプレーコート法で、実施例1-1で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータの両側の親水性ブロック層の表面にコーティングし、45℃で15時間送風乾燥させ、多孔質極性ポリマー接着層を形成して、本開示に係るポリマーセパレータを得た。
(実施例2-5B)
【0107】
実施例2-5Bは、実施例2-5Aと同様の方法でリチウムイオン電池を製造したが、ステップ(1)において、極性ポリマーバインダー溶液をディップコート法で、実施例1-3で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータの両側の親水性ブロック層の表面にコーティングし、親水性ブロック層を有するセパレータが極性ポリマーバインダー溶液に30秒浸漬されたという点で異なる。
(比較例1)
【0108】
実施例2-1Aと同様の方法でポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造したが、ステップ(1)において、親水性ブロック層を有するセパレータの代わりに実施例1-1における片面セラミックセパレータ(9μmPE+2μmセラミック層)を採用し、すなわち極性ポリマーバインダー溶液を片面セラミックセパレータの両側面に直接コーティングし、かつN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに等重量のアセトンを採用し、ポリマーセパレータを得たという点で異なる。
(比較例2)
【0109】
実施例2-4Bと同様の方法でポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造したが、ポリマーセパレータを製造するとき、親水性ブロック層を有するセパレータの代わりに実施例1-3における片面セラミックセパレータ(9μmPE+2μmセラミック層)を採用し、すなわち極性ポリマーバインダー溶液を片面セラミックセパレータの両側面に直接コーティングし、かつN,N-ジメチルホルムアミドの代わりに等重量のアセトンを採用し、ポリマーセパレータ(該ポリマーセパレータは親水性ブロック層を有さない)を得たという点で異なる。
(比較例3)
【0110】
実施例2-4Bと同様の方法でポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造したが、極性ポリマーバインダー溶液が造孔剤を含まないという点で異なる。
(実施例3)
【0111】
実施例2-4Bと同様の方法でポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造したが、ステップ(1)において、45℃で15時間送風乾燥させることではなく、120℃で8時間送風乾燥させたという点で異なる。
(実施例4)
【0112】
実施例2-4Bと同様の方法でポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造したが、極性ポリマーバインダー溶液を調製する場合、P(VdF-HFP)の濃度を3.5重量%(非臨界濃度)に制御したという点で異なる。
(実施例5)
【0113】
実施例2-4Bと同様の方法でポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造したが、極性ポリマーバインダー溶液を調製する場合、P(VdF-HFP)の濃度を22重量%(非臨界濃度)に制御したという点で異なる。
(実施例6)
【0114】
実施例2-4Bと同様の方法でポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造したが、極性ポリマーバインダー溶液を調製する場合、N,N-ジメチルホルムアミドの代わりに等重量のアセトンを採用したという点で異なる。
(実施例7)
【0115】
実施例1-1と同様の方法で親水性ブロック層を有するセパレータを製造したが、ステップ(1)において、気相法によって得られる親水性シリカの代わりに石英(比表面積10m/g、粒径10μm)を採用し、親水性ブロック層を有するセパレータを得て、形成された親水性ブロック層の水との接触角が40°であるという点で異なり、実施例2-1Aと同様の方法でポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造したが、実施例7で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータを採用したという点で異なる。
(実施例8)
【0116】
実施例1-3と同様の方法で親水性ブロック層を有するセパレータを製造したが、気相法によって得られる親水性酸化アルミニウムの代わりにアルミニウムアルコキシド法によって得られる酸化アルミニウム(比表面積130m/g、粒径5μm)を採用し、親水性ブロック層を有するセパレータを得て、形成された親水性ブロック層の水との接触角が36°であるという点で異なり、実施例2-4Bと同様の方法でポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造したが、実施例8で製造された、親水性ブロック層を有するセパレータを採用したという点で異なる。
(実施例9)
【0117】
実施例2-5Aと同様の方法でポリマーセパレータ及びリチウムイオン電池を製造したが、実施例1-1と同様の方法で親水性ブロックスラリーを片面セラミックセパレータの両側にコーティングした後、乾燥させずにそのまま実施例2-5Aの方法で極性ポリマーバインダー溶液をスプレーコートした後、実施例2-5Aと同様の方法で乾燥させて、ポリマーセパレータを得たという点で異なる。
(試験例)
【0118】
(1)ポリマーセパレータの表面トポグラフィーの観察
【0119】
走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL、JSM-7600FE)を採用して、各実施例及び比較例で製造されたポリマーセパレータのミクロトポグラフィーを観察した。
【0120】
図2A及び図2Bは、実施例2-5Aで製造されたポリマーセパレータのSEMトポグラフィー像を示し、図3A及び図3Bは、実施例2-4Aで製造されたポリマーセパレータのSEMトポグラフィー像を示し、図4A及び図4Bは、実施例2-4Bで製造されたポリマーセパレータのSEMトポグラフィー像を示す。図2A図2B図3A図3B図4A及び図4Bから明らかなように、本開示の方法を用いて多孔性の高い多孔質極性ポリマー接着層を製造することができ、また製造された多孔質極性ポリマー接着層の孔壁にノジュールを有する。図5A及び図5Bは、比較例2で製造されたポリマーセパレータのSEMトポグラフィー像を示し、図6A及び図6Bは、比較例3で製造されたポリマーセパレータのSEMトポグラフィー像を示す。図4A及び図4B図5A及び図5Bと比較して明らかなように、本開示に係るポリマーセパレータの表面の多孔質極性ポリマー接着層における細孔の孔径がより大きく、多層のスクリーン交絡構造を呈し、上記親水性ブロック層の一部の表面は、上記多層のスクリーン交絡構造を介して露出して見られ、比較例2で製造されたポリマーセパレータにおける多孔質極性ポリマー接着層は緻密であり、ハニカム状を呈する。図4(A)及び図4(B)を図6(A)及び図6(B)と比較して明らかなように、本開示の方法で製造されたポリマーセパレータの多孔質極性ポリマー接着層における孔壁にノジュール構造を有し、これは、極性ポリマーバインダー溶液に造孔剤を添加することにより、極性ポリマーが析出して相分離することに起因する可能性がある。
【0121】
(2)ポリマーセパレータの通気性(Gurley値)と見掛け気孔率試験
【0122】
型番がGurley4110Nのデンソメーターを用いて試験を行った。100mLの空気が1気圧で面積が1.0平方インチのポリマーセパレータを通過する時間を測定した。ポリマーセパレータの通気性の試験結果を表1に示す。表1の結果から明らかなように、本開示に係るポリマーセパレータは高い通気性を示す。
【0123】
ポリマーセパレータの見掛け気孔率は、以下の式から算出することができる:
【数1】
上式中、ρMは見掛け密度であり、
ρfは面密度であり、
ρPは体密度であり、
dはポリマーセパレータの厚さである。
【0124】
表1のデータから明らかなように、本開示に係るポリマーセパレータは高い見掛け気孔率を有する。
【0125】
(3)ポリマーセパレータの熱収縮率試験
【0126】
90℃及び120℃の温度で、それぞれ恒温オーブンを用いてポリマーセパレータ(面積5mm×5mm)を2h及び1h等温熱処理して、ポリマーセパレータの耐熱性を表した。実験結果を表1に示し、表1の結果から明らかなように、本開示に係るポリマーセパレータは低い熱収縮率を有する。
【0127】
(4)ポリマーセパレータの引張強度試験
【0128】
GB/T13022-1991に規定される方法に従って、万能試験機を用いて測定した。実験結果を表1に示し、表1の結果から明らかなように、本開示に係るポリマーセパレータは高い引張強度を有する。
【0129】
(5)ポリマーセパレータの突刺強度試験
【0130】
GB/T1004-2008に規定される方法に従って、万能試験機を用いて測定し、鋼針の直径は1mmである。実験結果を表1に示し、表1から明らかなように、本開示に係るポリマーセパレータは高い突刺強度を有する。
【0131】
表1
【表1】
:ポリマーセパレータの厚さ :極性ポリマーコーティング層のポリマーセパレータの両面のうちの片面での面密度
【0132】
(6)ポリマーセパレータのイオン導電率試験
【0133】
交流インピーダンス法を用いて試験を行い、具体的な操作手順は以下のとおりである。
【0134】
ポリマーセパレータを直径17mmの円形に切断し、乾燥させた後、3層重ね、2つのステンレス鋼(SS)電極間に置き、十分な量の電解液(電解質は六フッ化リン酸リチウムであり、その濃度が1mol/Lであり、有機溶媒はEC、EMC及びDECを重量比1:1:1で混合して得られた混合液である)を吸収し、2016型ボタン電池に封入し、電気化学ワークステーション(上海辰華、CHI 660C)を用いて交流インピーダンス実験を行い、交流信号の周波数範囲を0.01Hz~1MHzとし、正弦波電位振幅を5mVとし、直線と実軸との交点をポリマーセパレータのバルクインピーダンスとし、以下の式を採用してポリマーセパレータのイオン伝導度を算出した:
σ=L/(A・R)
式中、Lはゲルポリマー電解質の厚さであり、
Aはステンレス鋼板とポリマーセパレータとの接触面積であり、
Rはポリマー電解質のバルクインピーダンスである。
【0135】
バルクインピーダンスとポリマーセパレータのイオン導電率を表2に示す。
【0136】
表2から明らかなように、本開示に係るポリマーセパレータは優れたイオン伝導度を示す。
【0137】
【表2】
【0138】
(7)ポリマーセパレータの正負極に対する粘性と剥離強度試験
【0139】
製造されたリチウムイオン電池(85℃、4h、1MPaの熱圧着後)を満充電状態で解剖し、万能試験機を用いてその剥離強度を測定し、測定標準についてGBT2792-2014における接着テープの剥離強度試験方法を参照し、得られた正負極とセパレータを撮影した。図7A及び図7B図8A及び図8Bは、それぞれ実施例2-4Bで製造されたリチウムイオン電池の正極及び負極とポリマーセパレータを剥離した後のSEMトポグラフィー像を示し、図9A及び図10Aは、それぞれ実施例2-4Bで製造されたリチウムイオン電池の正極と負極の剥離強度試験の曲線グラフを示し、図9B及び図10Bは、比較として、それぞれ比較例2で製造されたリチウムイオン電池の正極と負極の剥離強度試験の曲線グラフを示す。
【0140】
図7A及び図7B図8A及び図8Bから明らかなように、本開示に係るポリマーセパレータを用いて製造されたリチウムイオン電池を剥離した後、ポリマーセパレータの多孔質極性ポリマー接着層はいずれも正極材料に接着され、一部の負極材料はポリマーセパレータに接着される。
【0141】
図9A及び図9Bから明らかなように、本開示に係るポリマーセパレータは、リチウムイオン電池の正極に対する粘性が非常に大きい。図10A及び図10Bから明らかなように、本開示に係るポリマーセパレータは、負極に対する粘性もより高い接着強度を有する。
【0142】
(8)リチウムイオン電池の硬度試験
【0143】
試験結果を表3に示す。表3に示すように、本開示に係るリチウムイオン電池は高い硬度を有する。
【0144】
【表3】
【0145】
(9)電池の常温サイクル性能試験
【0146】
(広州蘭奇、BK6016)リチウムイオン電池性能試験キャビネットを用いて、実施例及び比較例で製造された容量選別後のリチウムイオン電池に対して25℃サイクル性能試験を行い、具体的な方法は以下のとおりである。
【0147】
電池をそれぞれ0.7C、0.2Cで4.40Vまで充電カットし、10min放置し、0.7C又は0.2Cで3.0Vまで放電し、このように循環した。表4の試験結果から明らかなように、本開示に係るリチウムイオン電池は、より優れたサイクル性能を示す。
【0148】
【表4】
【0149】
(10)電池の高温サイクル性能試験
【0150】
(広州蘭奇、BK6016)リチウムイオン電池性能試験キャビネットを用いて、実施例及び比較例で得られた容量選別後のリチウムイオン電池に対して45℃サイクル性能試験を行った。試験方法は以下のとおりである:電池を0.7Cで4.40Vまで充電カットし、10min放置し、0.7Cで3.0Vまで放電し、このように循環した。循環結果を表5に示す。
【0151】
試験結果から明らかなように、本開示に係るリチウムイオン電池は、より優れた高温サイクル性能を示す。以上より、本開示に係るポリマーセパレータは、電池の高温性能を向上させることに有利である。
【0152】
【表5】
【0153】
(11)電池のレート性能試験
【0154】
(広州蘭奇、BK6016)リチウムイオン電池性能試験キャビネットを用いて、実施例及び比較例で得られた容量選別後のリチウムイオン電池に対してレート放電性能試験を行った。具体的な試験方法は以下のとおりである。
【0155】
電池を0.5C(1C=2640mA)で4.40Vまで定電流定電圧充電し、カット電流を0.02Cとし、5min放置し、0.2C/0.5C/1C/2C/3C/4Cで3.0Vまで放電し、放電容量を記録した。
【0156】
レート放電試験結果を表6に示す。試験結果から明らかなように、本開示に係るリチウムイオン電池は、良好なレート放電性能を示す。
【0157】
【表6】
【0158】
(12)電池の高温貯蔵性能試験
【0159】
実施例及び比較例で得られたリチウムイオン電池に対して85℃で4hの貯蔵性能試験を行った。試験方法は以下のとおりである:
1)(広州蘭奇、BK6016)リチウムイオン電池性能試験キャビネットを用いて、電池を0.5Cで4.40V、0.02Cまで充電カットし、5min放置し、0.2Cで3.0Vまで放電し、貯蔵前放電容量を記録し、
2)電池を0.5Cで4.40V、0.02Cまで充電カットし、1h放置した後に貯蔵前電圧、内部抵抗、厚さを測定し、
3)電池を85℃のオーブンに入れて4h貯蔵し、
4)貯蔵直後に厚さを測定し、常温で2h放置した後、冷却厚さ、貯蔵後電圧、貯蔵後内部抵抗を測定し、
5)電池を0.2Cで3.0Vまで放電し、
6)0.5Cで満充電し、5min放置し、0.2Cで3.0Vまで放電し、回復容量を記録し、容量回復率を算出した(回復容量で貯蔵前容量を割る)。
【0160】
試験結果を表7に示す。表7から明らかなように、本開示に係るリチウムイオン電池は、高温貯蔵後の容量維持率と容量回復率がいずれもより良好である。以上より、本開示に係るポリマーセパレータは、電池の高温性能を向上させることに有利である。
【0161】
【表7】
【0162】
実施例2-1Aを比較例1と比較し、かつ実施例2-4Bを比較例2と比較して明らかなように、親水性ブロック層を設けることにより、高沸点溶媒を用いて極性ポリマー溶液を調製しても、製造されたリチウムイオン電池は、良好なレート放電性能を有し、特に高レート放電条件で顕著に向上した放電性能を示す。
【0163】
実施例2-4Bを実施例3と比較して明らかなように、極性ポリマーバインダーコーティング層を60℃以下の温度で乾燥させることにより、製造されたポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度を顕著に向上させ、最終的に製造されたリチウムイオン電池の各性能を顕著に向上させることができる。実施例2-4Bを実施例4及び5と比較して明らかなように、極性ポリマーバインダー溶液中の極性ポリマーの濃度を臨界濃度に制御することにより、製造されたポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度を顕著に向上させ、最終的に製造されたリチウムイオン電池の各性能を顕著に向上させることができる。実施例2-1A及び実施例2-4Bをそれぞれ実施例7及び8と比較して明らかなように、親水性ブロック層の水との接触角を20°以下にすることにより、最終的に製造されたリチウムイオン電池の各性能をさらに向上させることができる。実施例2-5Aを実施例9と比較して明らかなように、親水性ブロックコーティング層を乾燥させた後に極性ポリマーバインダー溶液をコーティングして、極性ポリマー接着層を形成することにより、製造されたポリマーセパレータの通気性及びイオン伝導度をさらに向上させ、最終的に製造されたリチウムイオン電池の各性能を向上させることができる。
【0164】
以上、本開示の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記実施形態の具体的な内容に限定されるものではなく、本開示の技術的構想範囲内に、本開示の技術手段に対して複数の簡単な変更を行うことができ、これらの簡単な変更がいずれも本開示の保護範囲に属する。
【0165】
なお、上記具体的な実施形態に説明された各具体的な技術的特徴は、矛盾しない場合に、いずれの適切な方式によって組み合わせることができ、不要な重複を回避するために、本開示は、可能なあらゆる組み合わせ方式を別途に説明しない。
【0166】
また、本開示の様々な実施形態は、任意に組み合わせることができ、本開示の思想から逸脱しない限り、同様に本開示に開示されている内容と見なすべきである。
【0167】
本明細書の説明において、用語「1つの実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体的な例」、又は「いくつかの例」などを参照した説明は、該実施例又は例と組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本開示の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語の例示的な表現は、必ずしも同じ実施例又は例を示すことではない。また、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性は、いずれか1つ又は複数の実施例又は例において適切に結合することができる。また、互いに矛盾しない場合、当業者は本明細書で説明された異なる実施例又は例、及び異なる実施例又は例の特徴を結合するか又は組み合わせることができる。
【0168】
本開示の実施例を示して説明したが、理解されるように、上記実施例が例示的なものであり、本開示を限定するものとして理解してはならず、当業者が本開示の範囲において上記実施例に対して変化、補正、切り替え及び変形を行うことができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B