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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-07
(45)【発行日】2022-06-15
(54)【発明の名称】ポンプ容量制御装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/26 20060101AFI20220608BHJP
   F04B 1/22 20060101ALI20220608BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20220608BHJP
   F04B 49/12 20060101ALI20220608BHJP
【FI】
F04B1/26
F04B1/22
F04B49/06 321Z
F04B49/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021508235
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2020005639
(87)【国際公開番号】W WO2020195299
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2019055068
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩名地 哲也
(72)【発明者】
【氏名】久保井 宏暁
(72)【発明者】
【氏名】松田 倫太朗
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-116294(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1510397(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/26
F04B 1/22
F04B 49/06
F04B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの容量を制御するポンプ容量制御装置であって、
前記ポンプの傾転角を変更するサーボピストンと、
入力圧に応じて変位する流量制御スプールと、
前記ポンプの吐出圧に応じて変位する馬力制御スプールと、
前記流量制御スプールの変位及び前記馬力制御スプールの変位に応じて、前記サーボピストンを制御する制御圧を調節する制御圧調節スプールと、
前記サーボピストン及び前記制御圧調節スプールに連結され、前記サーボピストンの変位を前記制御圧調節スプールにフィードバックするフィードバックレバーと、を備え、
前記フィードバックレバーが前記流量制御スプールと前記馬力制御スプールのうちいずれか一方のスプールに直接当接することにより、前記制御圧が調節されるポンプ容量制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ容量制御装置であって、
前記フィードバックレバーは、
前記流量制御スプールの段部に当接する第1当接部と、
前記第1当接部とは反対側に設けられ前記馬力制御スプールの段部に当接する第2当接部と、を有し、
前記流量制御スプール及び前記馬力制御スプールは、それぞれ前記サーボピストンと平行となるように、かつ前記フィードバックレバーを挟んで互いに対向するように配置されているポンプ容量制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のポンプ容量制御装置であって、
前記制御圧調節スプールは、前記流量制御スプール及び前記馬力制御スプールのうち前記ポンプの容量を小さくする方のスプールの変位に応じて、前記制御圧を調節するポンプ容量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ容量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量型ポンプの傾転角を変化させることにより、ポンプの容量を制御するポンプ容量制御装置が知られている(JPH01-116294A参照)。JPH01-116294Aに記載のポンプ容量制御装置は、サーボシリンダ機構と、サーボシリンダ機構を駆動するスプール弁機構と、流量制御用パイロットスプール機構と、馬力制御用パイロットスプール機構と、を備える。
【0003】
流量制御用パイロットスプール機構は、外部パイロット圧に基づいてポンプの容量を制御する流量制御を行うための機構である。馬力制御用パイロットスプール機構は、馬力制御を行うための機構であって、ポンプの吐出圧が増加するほどポンプの容量を減少させる。なお、馬力制御とは、ポンプの駆動に必要な動力が、ポンプの駆動源であるエンジンの出力を超えないようにポンプの容量を制御して、エンジンストールを防止する制御である。
【0004】
また、JPH01-116294Aに記載のポンプ容量制御装置は、流量制御と馬力制御のうち、小容量になる方の制御が優先して行われるように、制御の選択が可能なリンク機構を備えている。リンク機構は、流量制御用パイロットスプール機構のスプールの動作をフィードバックレバーを介してスプール弁機構のスプールに伝達する流量制御用レバーと、馬力制御用パイロットスプール機構のスプールの動作をフィードバックレバーを介してスプール弁機構のスプールに伝達する馬力制御用レバーと、を備える。
【発明の概要】
【0005】
JPH01-116294Aに記載のポンプ容量制御装置では、流量制御スプールの動作及び馬力制御スプールの動作が、流量制御用レバー及び馬力制御用レバーを含むリンク機構を介してスプール弁機構のスプールに伝達される。したがって、JPH01-116294Aに記載のポンプ容量制御装置では、リンク機構のガタや摩擦に起因する伝達遅れによってスプール弁機構のスプールの作動応答性が悪くなるおそれがある。その結果、ポンプの容量を適切に制御することが難しいという問題がある。また、リンク機構が複雑で、部品点数が多いため、ポンプ容量制御装置のコストが高くなるという問題もある。
【0006】
本発明は、ポンプの容量を適切に制御することができる低コストのポンプ容量制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明のある態様によれば、ポンプの容量を制御するポンプ容量制御装置は、前記ポンプの傾転角を変更するサーボピストンと、入力圧に応じて変位する流量制御スプールと、前記ポンプの吐出圧に応じて変位する馬力制御スプールと、前記流量制御スプールの変位及び前記馬力制御スプールの変位に応じて、前記サーボピストンを制御する制御圧を調節する制御圧調節スプールと、前記サーボピストン及び前記制御圧調節スプールに連結され、前記サーボピストンの変位を前記制御圧調節スプールにフィードバックするフィードバックレバーと、を備え、前記フィードバックレバーが前記流量制御スプールと前記馬力制御スプールのうちいずれか一方のスプールに直接当接することにより、前記制御圧が調節される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るポンプ容量制御装置を備えたポンプ装置の構成を示す油圧回路図である。
図2】ポンプ装置の断面図であり、ポンプの容量が最小である状態を示す。
図3図2のポンプ容量制御装置を拡大して示す図である。
図4A図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図4B図4Aの部分拡大図であり、馬力制御スプールの第2ピースを示す。
図5図2のV-V線に沿う断面図である。
図6】流量制御状態におけるポンプ容量制御装置の動作を説明する図であり、レバー操作開始直後の状態を示す。
図7図6のVII-VII線に沿う断面図である。
図8】流量制御状態のおけるポンプ容量制御装置の動作を説明する図であり、フィードバックレバーによりサーボピストンの変位が制御圧調節スプールにフィードバックされる動作を示す。
図9】ポンプ装置の断面図であり、ポンプの容量が最大である状態を示す。
図10図9のX-X線に沿う断面図である。
図11】馬力制御状態におけるポンプ容量制御装置の動作を説明する図である。
図12】本実施形態の変形例に係るポンプ容量制御装置を備えたポンプ装置の構成を示す油圧回路図である。
図13】本実施形態の変形例に係るポンプ容量制御装置の図5に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るポンプ容量制御装置について説明する。
【0010】
ポンプ容量制御装置は、可変容量型ポンプの傾転角を変更することにより、ポンプの容量(押しのけ容積)を制御する装置である。
【0011】
図1は、本実施形態に係るポンプ容量制御装置100を備えたポンプ装置1の構成を示す油圧回路図である。図1に示すように、ポンプ装置1は、可変容量型のポンプ10と、ポンプ10の容量(押しのけ容積)を制御するポンプ容量制御装置100と、を備える。ポンプ10の容量とは、ポンプ10の1回転当たりの作動流体の吐出量のことをいう。以下、ポンプ10の容量を「ポンプ容量」とも記す。
【0012】
本実施形態に係るポンプ装置1では、作動流体として作動油が用いられる。なお、作動油に代えて、作動水、水溶性代替液等の他の作動流体を用いてもよい。ポンプ装置1は、例えば、油圧ショベル等の建設機械に搭載される油圧機器の圧力源として設けられる。
【0013】
ポンプ10は、斜板15の傾転角に応じて容量を変更可能な斜板式のピストンポンプであり、駆動源としてのエンジン5によって回転駆動される。ポンプ10は、タンク19に貯留される作動油を吸い込み、加圧した作動油(圧油)を吐出通路11に吐出する。ポンプ10から吐出された作動油は、図示しない建設機械の油圧機器に供給される。建設機械の油圧機器の例としては、油圧ショベルのブーム、アーム、バケットを駆動する油圧シリンダ、油圧ショベルのクローラを駆動する油圧モータ等がある。
【0014】
建設機械には、建設機械の各部を制御するコントローラ20が搭載される。コントローラ20には、オペレータにより操作される操作レバーの操作量を検出する検出装置としての操作センサ22が接続される。
【0015】
コントローラ20は、操作センサ22の検出結果に基づいて電磁比例制御弁21を制御する。電磁比例制御弁21は、コントローラ20からの制御電流に応じて油圧源18から供給される作動油の圧力を減圧し、ポンプ容量制御装置100に出力する。電磁比例制御弁21は、例えば、ソレノイドを励磁する制御電流が大きくなるほど、大きな2次圧を出力する正比例型の電磁比例制御弁である。以下、電磁比例制御弁21から出力され、ポンプ容量制御装置100に入力される2次圧を入力圧Piと記す。
【0016】
コントローラ20は、操作センサ22で検出された操作レバーの操作量に基づいて、ポンプ容量を制御する。コントローラ20の記憶部には、操作レバーの操作量に対する制御電流値のデータテーブルが記憶されている。コントローラ20は、データテーブルを参照し、操作レバーの操作量に対する制御電流値を演算する。コントローラ20は、操作センサ22で検出された操作レバーの操作量が大きくなるほど、電磁比例制御弁21に対する制御電流値を大きくする。つまり、コントローラ20は、操作レバーの操作量が大きくなるほど、ポンプ容量が大きくなるように、すなわち入力圧Piが大きくなるように電磁比例制御弁21を制御する。
【0017】
ポンプ容量制御装置100は、入力圧Piに基づいてポンプ10の容量を制御する流量制御を実行可能に構成されている。流量制御状態では、ポンプ容量制御装置100は、入力圧Piが大きくなるほどポンプ10の容量が大きくなるように、ポンプ10の斜板15の傾転角を制御する。
【0018】
また、ポンプ容量制御装置100は、ポンプ10の吐出圧P1及びエンジン5により駆動される別のポンプの吐出圧P2に基づいてポンプ10の容量を制御する馬力制御を実行可能に構成されている。なお、馬力制御とは、ポンプ(本実施形態では、エンジン5により駆動されるポンプ10及びポンプ10とは別のポンプ)の駆動に必要な動力が、エンジン5の出力を超えないようにポンプの容量を制御して、エンジンストールを防止する制御である。馬力制御状態では、ポンプ容量制御装置100は、吐出圧P1,P2が大きくなるほどポンプ10の容量が小さくなるように、ポンプ10の斜板15の傾転角を制御する。
【0019】
ポンプ容量制御装置100は、流量制御及び馬力制御のうち、ポンプ10の容量が小さくなる制御を選択し、実行する。つまり、ポンプ容量制御装置100は、ポンプ10の容量が小容量となる制御を優先して実行する。このため、流量制御が実行されているときに負荷圧が増加した場合、流量制御に代えて馬力制御を実行し、ポンプ10の傾転角を減少させることにより、エンジン5の過負荷を防止することができる。以下、ポンプ容量制御装置100について詳しく説明する。
【0020】
ポンプ容量制御装置100は、ポンプ10の斜板15に連結されポンプ10の傾転角を変更するサーボピストン110と、サーボピストン110の変位を制御する制御圧Pcを調節する制御圧調節弁120と、入力圧Piに基づいてポンプ10の容量を制御する流量制御を行うための流量制御機構130と、吐出圧P1,P2に基づいてポンプ10の容量を制御する馬力制御を行うための馬力制御機構140と、を備える。
【0021】
制御圧調節弁120は、制御圧調節スプール121と、制御圧調節スプール121を収容する収容孔175(図3参照)と、を有する。制御圧調節弁120は、吐出通路11に接続されるポンプポート123と、ドレン通路を介してタンク19に接続されるタンクポート124と、制御圧通路12を介して後述する大径側室113に接続される制御圧ポート125と、を有する。
【0022】
制御圧調節弁120は、ポンプ連通位置と、遮断位置と、タンク連通位置と、を有する。ポンプ連通位置は、ポンプポート123と制御圧ポート125とが連通し、タンクポート124と制御圧ポート125との連通が遮断される位置である。タンク連通位置は、タンクポート124と制御圧ポート125とが連通し、ポンプポート123と制御圧ポート125との連通が遮断される位置である。遮断位置は、ポンプポート123と制御圧ポート125との連通が遮断されるとともに、タンクポート124と制御圧ポート125との連通が遮断される位置である。
【0023】
制御圧調節弁120は、制御圧調節スプール121をポンプ連通位置からタンク連通位置に切り換える方向に付勢する付勢部材としてのスプリング126と、フィードバックレバー150に連結される連結部127と、をさらに有する。
【0024】
サーボピストン110は斜板15に連結され、サーボピストン110が移動することにより斜板15の傾転角が変更される。サーボピストン110は、軸方向一端側に形成される大径部111と、軸方向他端側に形成される小径部112と、を有する。大径部111の外径は、小径部112の外径よりも大きい。
【0025】
ポンプハウジング30(図2参照)には、サーボピストン110の大径部111が臨む圧力室である大径側室113と、サーボピストン110の小径部112が臨む圧力室である小径側室114と、が形成される。大径側室113の圧力が作用するサーボピストン110の受圧面積は、小径側室114の圧力が作用するサーボピストン110の受圧面積よりも大きい。大径側室113は制御圧通路12を介して制御圧調節弁120の制御圧ポート125に接続され、小径側室114はポンプ10の吐出通路11に接続される。
【0026】
制御圧調節弁120がポンプ連通位置に切り換えられている場合、制御圧調節弁120を通じて大径側室113に作動油が導かれ、大径側室113の圧力が上昇する。制御圧調節弁120がタンク連通位置に切り換えられると、制御圧調節弁120を通じて大径側室113から作動油がタンク19に排出され、大径側室113の圧力が低下する。制御圧調節弁120が遮断位置に切り換えられると、大径側室113の圧力が一定の圧力に保持される。
【0027】
大径側室113の圧力が所定の圧力よりも大きくなると、サーボピストン110が一方(図示+X方向)へ移動する。これにより、ポンプ10の傾転角が小さくなる。すなわち、ポンプ10の容積が小さくなる。大径側室113の圧力が所定の圧力よりも小さくなると、サーボピストン110が他方(図示-X方向)へ移動する。これにより、ポンプ10の傾転角が大きくなる。すなわち、ポンプ10の容積が大きくなる。つまり、サーボピストン110は、大径側室113の圧力によって制御される。したがって、以下、制御圧調節スプール121の変位によって調節される「大径側室113の圧力」を「制御圧Pc」と称する。
【0028】
ポンプ容量制御装置100は、サーボピストン110及び制御圧調節スプール121に連結されるフィードバックレバー150をさらに備える。フィードバックレバー150は、サーボピストン110の変位を制御圧調節スプール121にフィードバックする。
【0029】
サーボピストン110はフィードバックレバー150を介して制御圧調節スプール121に連結されている。このため、ポンプ容量制御装置100では、流量制御または馬力制御が行われるとともに、ポンプ10の傾転角に応じて制御圧調節弁120の変位が調節されるフィードバック制御が行われる。
【0030】
図2に示すように、ポンプ10は、エンジン5(図1参照)によって回転駆動されるシリンダブロック32と、シリンダブロック32に設けられる複数のシリンダ34内を往復動するピストン33と、ピストン33が追従する斜板15と、を備える。
【0031】
シリンダブロック32及び斜板15は、ポンプハウジング30内に収容される。ポンプハウジング30は、筒状の本体部38と、本体部38の一端側の開口を塞ぐポンプベース37と、本体部38の他端側の開口を塞ぐポンプカバー39と、を有する。
【0032】
シリンダブロック32にはシャフト31が固定されている。シャフト31の基端部31aは、エンジン5(図1参照)の出力軸に連結される。シャフト31の先端部はポンプベース37に軸受2を介して回転自在に支持され、シャフト31の中央部はポンプカバー39に軸受3を介して回転自在に支持される。
【0033】
斜板15はポンプハウジング30に傾転軸受9を介して揺動自在に支持される。本実施形態に係るポンプ10では、斜板15の傾転角が変わることにより、ピストン33のシリンダ34に対するストロークが変わり、ポンプ容量が変わる。
【0034】
図2図5を参照して、ポンプ容量制御装置100の構造について詳しく説明する。以下、説明の便宜上、図示するように、X軸、Y軸及びZ軸を定義する。X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。また、X軸に平行な方向をX軸方向、Y軸に平行な方向をY軸方向、Z軸に平行な方向をZ軸方向と記す。X軸は、シリンダブロック32の回転中心軸C0と平行な軸である。Y軸は、斜板15の揺動中心軸と平行な軸である。なお、ポンプベース37側からポンプカバー39側に向かうX軸方向一方を+X方向と記し、その反対方向であるX軸方向他方を-X方向と記す。
【0035】
図2に示すように、ポンプハウジング30の本体部38には、サーボピストン110を摺動自在に収容するピストン収容部118が形成される。サーボピストン110は、X軸と平行に配置され、ピストン収容部118内をX軸方向に摺動する。サーボピストン110には、連結部材115が取り付けられている。連結部材115は、サーボピストン110にねじ締結される筒状の締結部115aと、締結部115aからZ軸方向一方(図示下方)に突出する突出部115bと、突出部115bとは反対側に設けられる連結溝115cと、を有する。
【0036】
突出部115bは、斜板15に形成された連結溝15aに対して摺動かつ回動自在に連結される。このため、サーボピストン110がX軸方向に摺動すると、サーボピストン110の駆動力が突出部115bを介して斜板15に伝達されて斜板15が揺動し、斜板15の傾転角が変化する。
【0037】
図3に示すように、連結部材115の連結溝115cには、フィードバックレバー150の一端部が摺動かつ回動自在に連結される。フィードバックレバー150は、制御圧調節スプール121の連結部127に連結されているため、サーボピストン110が移動すると、サーボピストン110の駆動力がフィードバックレバー150を介して制御圧調節スプール121に伝達され、制御圧調節スプール121も移動する。フィードバックレバー150の構造の詳細については、後述する。
【0038】
ポンプ容量制御装置100は、ポンプハウジング30の本体部38に取り付けられるレギュレータハウジング170を備える。レギュレータハウジング170には、流量制御機構130、馬力制御機構140(図4A参照)及び制御圧調節弁120が設けられる。
【0039】
図3及び図4Aに示すように、レギュレータハウジング170は、直方体形状の本体部170aと、本体部170aの両端に取り付けられる矩形平板状のカバー(第1カバー170b及び第2カバー170c)と、を有する。図3図4A及び図5に示すように、本体部170aには、ポンプハウジング30の取付面に開口する収容室179と、複数の収容部(第1収容孔171、第2収容孔172、第3収容孔173、第4収容孔174及び第5収容孔175)と、が形成される。
【0040】
各収容孔171~175は、X軸方向に貫通するように形成される。つまり、各収容孔171~175は、収容室179に開口するとともに、本体部170aの端面に開口する。第1収容孔171及び第2収容孔172は、後述する流量制御スプール131が収容される収容部であって、それぞれ同心の円形断面を有する。第3収容孔173及び第4収容孔174は、後述する馬力制御スプール141が収容される収容部であって、それぞれ同心の円形断面を有する。第5収容孔175は、制御圧調節スプール121が収容される収容部である。収容室179は、フィードバックレバー150が収容される収容部である。なお、各収容孔171~175における本体部170aの端面の開口は、カバー170b,170c、プラグ等により閉塞される。
【0041】
図3に示すように、本体部170aの収容室179は、サーボピストン110の連結溝115cに対向するように形成される。別の言い方をすれば、本体部170aの収容室179は、サーボピストン110を挟んで、斜板15(図2参照)に対向するように形成される。
【0042】
図3及び図4Aに示すように、本体部170aにおける収容室179よりも-X方向側の部分を第1ブロック176と称し、収容室179よりも+X方向側の部分を第2ブロック177と称する。このように、本体部170aは収容室179によって第1ブロック176と第2ブロック177とに分けられ、第1ブロック176と第2ブロック177とは連結ブロック178によって連結されている。
【0043】
流量制御機構130は、入力圧通路13を介して電磁比例制御弁21(図1参照)からの入力圧Piが導かれる圧力室133と、入力圧Piに応じて変位する流量制御スプール131と、圧力室133の圧力に抗して流量制御スプール131を付勢する付勢部材としてのスプリング132と、を有する。
【0044】
流量制御スプール131は、X軸と平行に配置される。流量制御スプール131の一端側(図示左端側)は、レギュレータハウジング170の第1ブロック176に形成される第1収容孔171内に摺動自在に収容される。流量制御スプール131の他端側(図示右端側)は、レギュレータハウジング170の第2ブロック177に形成される第2収容孔172内に摺動自在に収容される。第2収容孔172には、スプリング132が配置される。
【0045】
圧力室133は、第1収容孔171と、第1カバー170bと、流量制御スプール131と、によって形成される。流量制御スプール131は、軸方向一端部(図示左端部)が圧力室133に臨むように配置される。したがって、流量制御スプール131の一端部(図示左端部)には、電磁比例制御弁21から出力される入力圧Piが作用する。
【0046】
流量制御スプール131は、その軸方向に第1ピース136と第2ピース137とに分割されている。第1ピース136は、第1収容孔171内を摺動するランド部136aと、ランド部136aから第2ピース137に向かって軸方向に延在する円柱部136bと、を有する。
【0047】
第2ピース137は、スプリング132の端部が当接するばね受け部137aと、ばね受け部137aから第1ピース136に向かって軸方向に延在する円柱部137bと、を有する。
【0048】
第1ピース136は、圧力室133の作動油の圧力(入力圧Pi)によって、+X方向へ付勢される。第2ピース137は、スプリング132の弾性力によって、-X方向へ付勢される。第2収容孔172には、ばね受け部137aに当接する段部が設けられ、第2ピース137の-X方向への移動を規制する。流量制御スプール131は、第1ピース136の円柱部136bと第2ピース137の円柱部137bとが当接した状態を維持しながら軸方向に移動する。
【0049】
図4Aに示すように、第1ピース136の円柱部136bの外径は、第2ピース137の円柱部137bの外径よりも小さい。このため、円柱部136bと円柱部137bとの間には段部138が形成される。この段部138は、後述するフィードバックレバー150の第1当接部151aに当接する部分である。
【0050】
図4A及び図4Bに示すように、馬力制御機構140は、ポンプ10の吐出圧P1が導かれる第1圧力室143と、ポンプ10とは別のポンプ(不図示)の吐出圧P2が導かれる第2圧力室144と、吐出圧P1及び吐出圧P2に応じて変位する馬力制御スプール141と、第1圧力室143及び第2圧力室144の圧力に抗して馬力制御スプール141を付勢する付勢部材としてのスプリング142a,142bと、を有する。
【0051】
図4Aに示すように、馬力制御スプール141は、X軸と平行に配置される。馬力制御スプール141の一端側(図示左端側)は、レギュレータハウジング170の第1ブロック176に形成される第3収容孔173内に摺動自在に収容される。馬力制御スプール141の他端側(図示右端側)は、レギュレータハウジング170の第2ブロック177に形成される第4収容孔174に取り付けられるスリーブ181内に摺動自在に収容される。第3収容孔173には、スプリング142a,142bが配置される。
【0052】
図4Bに示すように、馬力制御スプール141は、大径部147aと、大径部147aよりも外径が小さい小径部147bと、を有する。大径部147aと小径部147bとの間には段部141cが形成される。スリーブ181には、大径部147aが摺動する摺動孔と、小径部147bが摺動する摺動孔と、が形成される。第1圧力室143は、スリーブ181と、段部141cと、小径部147bと、によって形成される。第2圧力室144は、スリーブ181と、小径部147bと、によって形成される。
【0053】
馬力制御スプール141は、段部141cが第1圧力室143に臨み、小径部147bが第2圧力室144に臨むように配置される。したがって、馬力制御スプール141の大径部147aと小径部147bとの間の段部141cには、ポンプ10の吐出圧P1が作用する。また、馬力制御スプール141の小径部147bには、ポンプ10とは別のポンプ(不図示)の吐出圧P2が作用する。
【0054】
図4Aに示すように、馬力制御スプール141は、その軸方向に第1ピース146と第2ピース147とに分割されている。第1ピース146は、第3収容孔173内を摺動する摺動部146aと、摺動部146aから第2ピース147に向かって軸方向に延在する円柱部146bと、スプリング142a,142bの端部が当接するばね受け部146cと、を有する。
【0055】
第2ピース147は、収容室179に配置される円板部147cと、円板部147cから+X方向に向かって延在する大径部147aと、大径部147aから+X方向に向かって延在する小径部147bと、を有する。
【0056】
円板部147cの外径は、スリーブ181の開口径よりも大きい。円板部147cは、スリーブ181の端部に当接することにより、第2ピース147の+X方向への移動を規制する。
【0057】
第2ピース147は、第1圧力室143の作動油の圧力(吐出圧P1)及び第2圧力室144の作動油の圧力(吐出圧P2)によって、-X方向へ付勢される。第2ピース137は、スプリング142a,142bの弾性力によって+X方向へ付勢される。なお、第3収容孔173には、ばね受け部146cに当接する段部が設けられ、第1ピース146の+X方向への移動を規制する。馬力制御スプール141は、第1ピース146の円柱部146bと第2ピース147の円板部147cとが当接した状態を維持しながら軸方向に移動する。
【0058】
第1ピース146の円柱部146bの外径は、第2ピース147の円板部147cの外径よりも小さい。このため、円柱部146bと円板部147cとの間には段部148が形成される。この段部148は、後述するフィードバックレバー150の第2当接部151bに当接する部分である。
【0059】
図3に示すように、制御圧調節弁120の制御圧調節スプール121は、X軸と平行に配置される。制御圧調節スプール121は、レギュレータハウジング170の第1ブロック176に形成される第5収容孔175内に摺動自在に収容される。第5収容孔175の第1カバー170b側の端部には、リテーナ182が取り付けられる。リテーナ182と制御圧調節スプール121との間には、スプリング126が配置される。制御圧調節スプール121は、スプリング126によって収容室179に向かう方向(+X方向)に付勢される。
【0060】
制御圧調節弁120は、タンク19と連通するドレン室129を有する。ドレン室129は、制御圧調節スプール121の-X方向側端部と、第5収容孔175と、リテーナ182と、によって形成される。上記スプリング126は、このドレン室129に収容される。
【0061】
本実施形態では、制御圧調節スプール121にタンクポート124が形成されている。ドレン室129は、制御圧調節スプール121のタンクポート124を介して収容室179に連通している。収容室179は、ポンプハウジング30に形成されるドレン通路(不図示)を介してタンク19に連通する。
【0062】
制御圧調節スプール121は、第5収容孔175内を摺動する第1ランド部121a及び第2ランド部121bを有する。第1ランド部121aは、制御圧ポート125を閉塞可能な大きさに形成される。第2ランド部121bは、第1ランド部121aよりも収容室179側に形成され、第1ランド部121aと第2ランド部121bとの間には環状溝121cが形成される。
【0063】
制御圧調節スプール121が移動することにより、制御圧ポート125に対してポンプポート123またはタンクポート124が選択的に連通し、大径側室113の制御圧Pcが調節される。
【0064】
制御圧調節スプール121は、第2ランド部121bから収容室179側に向かって軸方向に延在する連結部127を有する。連結部127は、第2ランド部121bから収容室179に突出し、その突出端部がフィードバックレバー150に回動自在に連結される。
【0065】
図3図4A及び図5に示すように、フィードバックレバー150は、軸状部材である本体部152と、連結ピン153と、当接ピン151と、を有し、本体部152に連結ピン153と当接ピン151とが固定されてなる。フィードバックレバー150の本体部152の軸方向一端部(図5に示す下端部)には、サーボピストン110の連結溝115cに連結される連結部152aが形成される。また、フィードバックレバー150の本体部152の軸方向他端部(図5に示す上端部)には、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141に選択的に当接する当接部としての当接ピン151が固定される。さらに、フィードバックレバー150の本体部152の軸方向中央部には、制御圧調節スプール121に連結される連結部としての連結ピン153が固定される。
【0066】
フィードバックレバー150の本体部152の軸方向中央部にはX軸方向に貫通し、制御圧調節スプール121の連結部127が挿通される挿通孔152bが形成される。連結ピン153は、フィードバックレバー150をY軸方向に貫通する貫通孔に挿着される。制御圧調節スプール121の連結部127は、先端が二股に分かれたU字状に形成され、その凹部に連結ピン153が回動自在に連結される。
【0067】
当接ピン151は、フィードバックレバー150の本体部152をY軸方向に貫通する貫通孔に挿着され、フィードバックレバー150の一部を構成する。当接ピン151は、貫通孔から流量制御スプール131側に突出する第1当接部151aと、貫通孔から馬力制御スプール141側に突出する第2当接部151bと、を有する。
【0068】
第1当接部151aは、その外周面(側面)が流量制御スプール131の段部138に対向するように配置される。第2当接部151bは、第1当接部151aとは反対側に設けられ、その外周面(側面)が馬力制御スプール141の段部148に対向するように配置される。
【0069】
流量制御スプール131と馬力制御スプール141とは、サーボピストン110と平行となるように、かつ、サーボピストン110に直交する方向(Y軸方向)においてフィードバックレバー150の軸方向他端部(図5に示す上端部)を挟んで互いに対向するように配置されている。別の言い方をすれば、ポンプ容量制御装置100をY軸方向から見たときに、流量制御スプール131と、フィードバックレバー150の軸方向他端部(図5に示す上端部)と、馬力制御スプール141とが重なるように配置されている。
【0070】
このように、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141が、それぞれサーボピストン110と平行となるように、かつフィードバックレバー150を挟んで径方向で互いに対向するように配置されているので、流量制御スプール131と馬力制御スプール141とが同心となるように、各スプール131,141が一直線上に配置される場合に比べて、ポンプ容量制御装置100の軸方向の小型化を図ることができる。
【0071】
流量制御スプール131は、入力圧Piの作動油によって+X方向に押される力と、スプリング132によって-X方向に押される力によって、その位置が設定される。入力圧Piが所定の圧力よりも低い場合、流量制御スプール131は、図3及び図4Aに示すように、ばね受け部137aが第2収容孔172の段部に当接した初期位置に位置している。
【0072】
このとき、流量制御スプール131の段部138にはフィードバックレバー150の第1当接部151aが当接している。このため、フィードバックレバー150は、流量制御スプール131によって-X方向へ押されている。上述したように、フィードバックレバー150には制御圧調節スプール121が連結され、制御圧調節スプール121はスプリング126によって+X方向へ押されている。したがって、フィードバックレバー150は、流量制御スプール131によって-X方向へ押されるとともに、制御圧調節スプール121によって+X方向へ押される。
【0073】
馬力制御スプール141は、吐出圧P1の作動油及び吐出圧P2の作動油によって-X方向に押される力と、スプリング142a,142bによって+X方向に押される力によって、その位置が設定される。吐出圧P1及び吐出圧P2が、それぞれ所定の圧力よりも低い場合、馬力制御スプール141は、図4Aに示すように、ばね受け部146cが第3収容孔173の段部に当接した初期位置に位置している。
【0074】
このとき、馬力制御スプール141の段部148とフィードバックレバー50の第2当接部151bとは距離X1(0<X1)だけ離間している。つまり、馬力制御スプール141の段部148に、フィードバックレバー150の第2当接部151bは当接していない。
【0075】
上述したように、フィードバックレバー150は、流量制御スプール131によって-X方向に押されるため、制御圧調節スプール121がフィードバックレバー150により、-X方向に押される。これにより、制御圧調節スプール121は、図3に示すように、初期状態において、ポンプポート123と制御圧ポート125とが環状溝121cを介して連通するポンプ連通位置で保持される。
【0076】
制御圧調節スプール121がポンプ連通位置で保持された状態では、大径側室113の圧力(制御圧Pc)はポンプ10の吐出圧P1と同じになっている。このとき、サーボピストン110は、図2に示すように、小径部112がピストン収容部118の開口を塞ぐプラグ35に当接した初期位置に位置し、ポンプ容量が最小値となるように、斜板15の傾転角を設定する。
【0077】
流量制御が行われる場合のポンプ装置1の動作について説明する。
【0078】
図2に示すように、操作レバーが操作され、コントローラ20から電磁比例制御弁21のソレノイドに出力される制御電流が大きくなると、流量制御機構130の圧力室133に入力される入力圧Piが上昇する。入力圧Piが上昇すると、図6に示すように、圧力室133の作動油によって流量制御スプール131が初期位置(図3及び図4A参照)から+X方向へ押し動かされる。図7に示すように、流量制御スプール131は、入力圧Piの作動油によって+X方向に押される力と、スプリング132によって-X方向に押される力と、が釣り合う位置で停止する。
【0079】
ここで、制御圧調節スプール121はスプリング126によって+X方向に付勢されているので、流量制御スプール131が初期位置から+X方向に移動すると、図6に示すように、制御圧調節スプール121がスプリング126によって+X方向へ押し動かされる。つまり、制御圧調節スプール121は、流量制御スプール131の移動に追従して、+X方向に移動する。制御圧調節スプール121がフィードバックレバー150を+X方向に押すため、流量制御スプール131が+X方向に移動する際、連結部152aを支点としてフィードバックレバー150がR1方向(図示時計回り)に回動する。このとき、フィードバックレバー150の第1当接部151aと流量制御スプール131の段部138の当接状態は維持される。
【0080】
制御圧調節スプール121が+X方向に移動し、タンクポート124と制御圧ポート125とが連通するタンク連通位置に切り換えられると、大径側室113から作動油がタンク19に排出され、制御圧Pcが低下する。制御圧Pcが低下すると、図8に示すように、サーボピストン110が-X方向に移動し、斜板15の傾転角が増加する。つまり、ポンプ容量が増加する。
【0081】
サーボピストン110が-X方向に移動すると、フィードバックレバー150の第1当接部151aと流量制御スプール131の段部138との当接点である上側支点61(図7も参照)を中心に、フィードバックレバー150がR2方向(図示時計回り)に回動する。フィードバックレバー150がR2方向に回動すると、フィードバックレバー150によって制御圧調節スプール121が-X方向に押し動かされる。
【0082】
これにより、制御圧調節スプール121がポンプ連通位置に切り換わると、大径側室113の圧力(制御圧Pc)が増加し、サーボピストン110が再び+X方向に移動して、斜板15の傾転角が減少する。つまり、ポンプ容量が減少する。サーボピストン110は、ポンプ容量が操作レバーの操作量に対応する値(以下、目標値と記す)となるまで、ポンプ連通位置とタンク連通位置との間で切り換えられる動作が繰り返される。所定時間が経過すると、制御圧調節スプール121は遮断位置で保持され、ポンプ容量が目標値で維持される定常状態となる。
【0083】
図9及び図10は、ポンプ容量が最大になったときの状態を示している。本実施形態では、ポンプ容量が最大、すなわち斜板15の傾転角が最大角度になった状態において、吐出圧P1及び吐出圧P2が所定値よりも低いときには、フィードバックレバー150は馬力制御スプール141と当接していない。つまり、フィードバックレバー150の第2当接部151bと馬力制御スプール141の段部148とは距離X2(0<X2<X1)だけ離間している。
【0084】
次に、馬力制御が行われる場合のポンプ装置1の動作について説明する。例えば、ポンプ容量が最大の状態(図9及び図10参照)のときに、吐出圧P1及び/または吐出圧P2が所定値よりも高くなると、馬力制御スプール141が-X方向へ移動し、馬力制御スプール141の段部148がフィードバックレバー150の第2当接部151bに当接する。図11に示すように、馬力制御スプール141の段部148によってフィードバックレバー150が-X方向に押し動かされると、制御圧調節スプール121が-X方向に押し動かされる。また、流量制御スプール131とフィードバックレバー150の第1当接部151aとが離間する。
【0085】
制御圧調節スプール121が-X方向に移動し、ポンプポート123と制御圧ポート125とが連通するポンプ連通位置に切り換えられると、大径側室113の圧力(制御圧Pc)が増加し、サーボピストン110が+X方向に移動して、斜板15の傾転角が減少する。つまり、ポンプ容量が減少する。
【0086】
なお、フィードバックレバー150は、上記流量制御と同様、サーボピストン110の変位を制御圧調節スプール121にフィードバックする。
【0087】
このように、本実施形態では、フィードバックレバー150の一部を構成する第1当接部151aと流量制御スプール131の段部138とが当接した状態において流量制御が実行される。流量制御では、流量制御スプール131の変位がフィードバックレバー150を介して制御圧調節スプール121に伝達されることにより、流量制御スプール131の変位に応じて制御圧Pcが調節される。また、吐出圧P1,P2が増加した場合に、フィードバックレバー150の一部を構成する第2当接部151bと馬力制御スプール141の段部148が当接することにより、流量制御から馬力制御に切り換えられる。馬力制御では、馬力制御スプール141の変位がフィードバックレバー150を介して制御圧調節スプール121に伝達されることにより、馬力制御スプール141の変位に応じて制御圧Pcが調節される。馬力制御状態では、コントローラ20により設定される制御電流に対応するポンプ容量の目標値よりも低いポンプ容量となるように、斜板15の傾転角が制御される。
【0088】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0089】
(1)フィードバックレバー150が流量制御スプール131と馬力制御スプール141のうちいずれか一方のスプールに対して、レバー等の別部材を介することなく、直接当接することにより制御圧Pcが調節される。このため、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141の動作が、フィードバックレバー150を介して制御圧調節スプール121に速やかに伝達され、制御圧調節スプール121の作動応答性を向上することができる。その結果、ポンプ10の容量を適切に制御することができる。また、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141が、直接フィードバックレバー150に当接する簡素な構成であるので、ポンプ容量制御装置100のコストを低減することができる。つまり、本実施形態によれば、ポンプ10の容量を適切に制御することができる低コストのポンプ容量制御装置100を提供することができる。
【0090】
(2)制御圧調節スプール121は、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141のうちポンプ10の容量を小さくする方のスプールの変位に応じて、サーボピストン110を制御する制御圧Pcを調節する。これにより、流量制御が実行されているときにポンプ10の吐出圧P1,P2が増加した場合、流量制御に代えて馬力制御が実行され、ポンプ10の傾転角が減少するので、ポンプ10の駆動源(エンジン5)の過負荷を防止することができる。
【0091】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0092】
<変形例1>
上記実施形態では、入力圧Piが高まるのに比例して、ポンプ10の容量を大きくする正流量制御を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。図12に示すように、入力圧Piが高まるのに比例してポンプ10の容量を小さくする負流量制御を行うようにしてもよい。この場合、流量制御スプール131を付勢するために設けられる圧力室133とスプリング132との配置関係を上記実施形態と逆にすればよい。つまり、上記実施形態の第1収容孔171にスプリング132を設け、上記実施形態の第2収容孔172に入力圧Piを導く構成とすればよい。
【0093】
より具体的には、上記実施形態(図1等参照)では、流量制御スプール131は、圧力室133の作動油の圧力(入力圧Pi)によって+X方向へ付勢され、スプリング132の弾性力によって-X方向へ付勢される構成であった。このため、ポンプ10の容量が最小である状態において、入力圧Piが上昇すると、流量制御スプール131が+X方向へ移動するとともに制御圧調節スプール121が+X方向へ移動し、制御圧調節弁120を通じて、大径側室113から作動油がタンク19に排出されて制御圧Pcが低下する。制御圧Pcが低下すると、サーボピストン110が-X方向に移動し、斜板15の傾転角が増加する。つまり、ポンプ容量が増加する。
【0094】
これに対し、本変形例では、図12に示すように、流量制御スプール131は、圧力室133の作動油の圧力(入力圧Pi)によって-X方向へ付勢され、スプリング132の弾性力によって+X方向へ付勢される構成である。このため、ポンプ10の容量が最小である状態において、入力圧Piが低下すると、流量制御スプール131が+X方向へ移動するとともに制御圧調節スプール121が+X方向へ移動し、制御圧調節弁120を通じて、大径側室113から作動油がタンク19に排出され、制御圧Pcが低下する。制御圧Pcが低下すると、サーボピストン110が-X方向に移動し、斜板15の傾転角が増加する。つまり、ポンプ容量が増加する。
【0095】
なお、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141は、上記実施形態と同様、それぞれサーボピストン110と平行となるように、かつフィードバックレバー150を挟んで互いに対向するように配置される。
【0096】
<変形例2>
上記実施形態では、ポンプ10が、斜板15の傾転角を制御することにより、ポンプ10の容量が規定される斜板式のピストンポンプである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ポンプ10は、斜軸の傾転角を制御することにより、ポンプ10の容量が規定される斜軸式のピストンポンプであってもよい。
【0097】
<変形例3>
上記実施形態では、コントローラ20が、電磁比例制御弁21を用いて入力圧Piを調節する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。オペレータのレバー操作量に応じて出力されるパイロット圧を入力圧Piとして用いてもよい。この場合、電磁比例制御弁21を省略することができる。
【0098】
<変形例4>
上記実施形態では、フィードバックレバー150に挿着される当接ピン151の一端部が第1当接部151aとされ、当接ピン151の他端部が第2当接部151bとされる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1当接部151a及び第2当接部151bを一体成形によりフィードバックレバー150に形成してもよい。つまり、第1当接部151aと第2当接部151bとを有するフィードバックレバー150を単一部品として形成してもよい。
【0099】
<変形例5>
また、第1当接部151aと第2当接部151bの配置関係は、上記実施形態に限定されない。例えば、第1当接部151aは、上記実施形態と同様、フィードバックレバー150の本体部152に直交するように設けるのに対し、第2当接部151bは、フィードバックレバー150の先端から軸方向に延在するように設けてもよい。ポンプ容量制御装置100は、フィードバックレバー150が流量制御スプール131と馬力制御スプール141のうちポンプ10の容量を小さくする方のスプールに直接当接する構成であればよく、スプールとフィードバックレバー150の当接部は、種々の位置に設定することができる。
【0100】
<変形例6>
上記実施形態では、エンジン5により駆動される2つのポンプ(ポンプ10及びポンプ10とは別のポンプ)の吐出圧P1,P2に基づいて馬力制御が実行される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。エンジン5により駆動されるポンプが、図1に示すポンプ10のみである場合、上記実施形態で説明した第2圧力室144を省略することができる。
【0101】
<変形例7>
上記実施形態では、図5に示されるように、制御圧調節スプール121を収容する第5収容孔175は、流量制御スプール131の一端を収容する第1収容孔171及び馬力制御スプール141の一端を収容する第3収容孔173に対して、Z軸方向において所定の距離だけ離れ、且つ、Y軸方向において、第1収容孔171と第3収容孔173との間のほぼ中央に位置するように設けられている。これに代えて、図13に示すように、第5収容孔175は、Y軸方向における位置が、第1収容孔171とほぼ一致するように設けられていてもよい。なお、図13は、上記実施形態の変形例を示す図面であって、図5に相当する断面を示している。
【0102】
この変形例におけるフィードバックレバー250は、軸状部材である本体部252と、連結ピン253と、当接ピン251と、を有し、本体部252の軸方向一端部(図13に示す下端部)には、サーボピストン110の連結溝115cに連結される連結部252aが形成され、本体部252の軸方向他端部(図13に示す上端部)には、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141に選択的に当接する当接部としての当接ピン251が固定され、本体部252の軸方向中央部には、制御圧調節スプール121に連結される連結部としての連結ピン253が固定される。
【0103】
具体的には、フィードバックレバー250の本体部252の軸方向中央部には、Y軸方向に貫通し、連結ピン253の一端部253aが挿着される貫通孔252bが形成される。制御圧調節スプール121の連結部127は、先端が二股に分かれたU字状に形成され、その凹部に、フィードバックレバー250の本体部252からY軸方向に突出した連結ピン253の他端部253bが回動自在に連結される。
【0104】
また、当接ピン251は、上記実施形態の当接ピン151と同様に、フィードバックレバー250の本体部252をY軸方向に貫通する貫通孔に挿着され、貫通孔から流量制御スプール131側に突出する第1当接部251aと、貫通孔から馬力制御スプール141側に突出する第2当接部251bと、を有する。
【0105】
このように、Y軸方向における第5収容孔175の位置を第1収容孔171とほぼ一致させ、制御圧調節スプール121の連結部127が連結する連結ピン253をフィードバックレバー250の本体部252から突出させた構成とした場合、フィードバックレバー250は、当接ピン251と連結ピン253とが本体部252に挿着された比較的簡素な形状となる。また、フィードバックレバー250には、上記実施形態のフィードバックレバー150のようにX軸方向に貫通する貫通孔152bを設ける必要がないことから、フィードバックレバー250の加工及び組み立てが容易となり、結果として、ポンプ容量制御装置100の製造コストを低減することができる。
【0106】
なお、この変形例では、連結ピン253の他端部253bが第1収容孔171側に向かって延びているため、第5収容孔175のY軸方向における位置は、第1収容孔171とほぼ一致している。これに代えて、連結ピン253の他端部253bを第3収容孔173側に向かって延ばし、第5収容孔175のY軸方向における位置を、第3収容孔173とほぼ一致させてもよい。
【0107】
換言すれば、Y軸方向において第5収容孔175が設けられる位置は、連結ピン253の延長線上であって、制御圧調節スプール121の連結部127が連結ピン253に連結可能であればどこであってもよい。ただし、第5収容孔175が設けられる位置がフィードバックレバー250の本体部252から離れると連結ピン253の他端部253bの長さが長くなり、制御圧調節スプール121の変位がフィードバックレバー250に正確に伝達されなくなるおそれがある。このため、第5収容孔175が設けられる位置は、フィードバックレバー250の本体部252に近い位置、例えば、Y軸方向において第1収容孔171と第3収容孔173との間であることが好ましい。
【0108】
このように、この変形例によれば、レギュレータハウジング170に形成される通路や収容孔のレイアウトに応じて、第5収容孔175の位置を適宜変更することも可能であり、ポンプ容量制御装置100の設計の自由度を向上させることができる。
【0109】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、および効果をまとめて説明する。
【0110】
ポンプ容量制御装置100は、ポンプ10の容量を制御するポンプ容量制御装置であって、ポンプ10の傾転角を変更するサーボピストン110と、入力圧Piに応じて変位する流量制御スプール131と、ポンプ10の吐出圧P1,P2に応じて変位する馬力制御スプール141と、流量制御スプール131の変位及び馬力制御スプール141の変位に応じて、サーボピストン110を制御する制御圧Pcを調節する制御圧調節スプール121と、サーボピストン110及び制御圧調節スプール121に連結され、サーボピストン110の変位を制御圧調節スプール121にフィードバックするフィードバックレバー150と、を備え、フィードバックレバー150が流量制御スプール131と馬力制御スプール141のうちいずれか一方のスプールに直接当接することにより、制御圧Pcが調節される。
【0111】
この構成では、フィードバックレバー150が、流量制御スプール131と馬力制御スプール141のうちいずれか一方のスプールに対して、レバー等の別部材を介することなく、直接当接する。このため、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141の動作が、フィードバックレバー150を介して制御圧調節スプール121に速やかに伝達され、制御圧調節スプール121の作動応答性を向上することができる。その結果、ポンプ10の容量を適切に制御することができる。また、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141が、直接フィードバックレバー150に当接する簡素な構成であるので、ポンプ容量制御装置100のコストを低減することができる。つまり、この構成によれば、ポンプ10の容量を適切に制御することができる低コストのポンプ容量制御装置100を提供することができる。
【0112】
ポンプ容量制御装置100は、フィードバックレバー150が、流量制御スプール131の段部138に当接する第1当接部151aと、第1当接部151aとは反対側に設けられ馬力制御スプール141の段部148に当接する第2当接部151bと、を有し、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141が、それぞれサーボピストン110と平行となるように、かつフィードバックレバー150を挟んで互いに対向するように配置されている。
【0113】
この構成では、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141が、それぞれサーボピストン110と平行となるように、かつフィードバックレバー150を挟んで互いに対向するように配置されているので、流量制御スプール131と馬力制御スプール141とが同心となるように配置される場合に比べて、ポンプ容量制御装置100の軸方向の小型化を図ることができる。
【0114】
ポンプ容量制御装置100は、制御圧調節スプール121が、流量制御スプール131及び馬力制御スプール141のうちポンプ10の容量を小さくする方のスプールの変位に応じて、制御圧Pcを調節する。
【0115】
この構成では、流量制御スプール131の変位に応じて制御圧Pcが調節される流量制御が実行されているときにポンプ10の吐出圧P1,P2が増加した場合、流量制御に代えて馬力制御スプール141の変位に応じて制御圧Pcが調節される馬力制御が実行され、ポンプ10の傾転角が減少するので、ポンプ10の駆動源(エンジン5)の過負荷を防止することができる。
【0116】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0117】
本願は2019年3月22日に日本国特許庁に出願された特願2019-55068に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
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図4B
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