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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】脳活動計測装置及び脳活動計測システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20220609BHJP
   A61B 5/369 20210101ALI20220609BHJP
【FI】
A61B5/256 100
A61B5/369
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2017192328
(22)【出願日】2017-10-02
(65)【公開番号】P2019063290
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-07-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「ニューロテイラーメイド」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 義雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 靖夫
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0055903(US,A1)
【文献】特開2018-094054(JP,A)
【文献】特開2006-006667(JP,A)
【文献】特表2013-509906(JP,A)
【文献】特表2012-525910(JP,A)
【文献】国際公開第93/002616(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0255127(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0360990(US,A1)
【文献】実開平06-034603(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に装着されるフレーム部材と、
前記フレーム部材の内側に配設され、前記フレーム部材側から自立して内方に向かって立ち上がる弾性を有する支持体と、
前記支持体の頂上部に配置された頭部に当接させるための1又は複数の電極と、
を有し、前記電極と前記支持体の間に頭部側に当接させる面を有する当接体が配設されていることを特徴とする脳活動計測装置。
【請求項2】
頭部に装着されるフレーム部材と、
前記フレーム部材の内側に配設され、前記フレーム部材側から自立して内方に向かって立ち上がる弾性を有する支持体と、
前記支持体の頂上部に配置された頭部に当接させるための1又は複数の電極と、
を有し、前記支持体には頭部側に当接させる面を有する当接体が形成されていることを特徴とする脳活動計測装置。
【請求項3】
頭部に装着されるフレーム部材と、
前記フレーム部材の内側に配設され、前記フレーム部材側から自立して内方に向かって立ち上がる弾性を有する支持体と、
前記支持体の頂上部に配置された頭部に当接させるための1又は複数の電極と、
頭部側に当接させる面を有する当接体と、
を有し、前記当接体は前記支持体の外方に張り出していることを特徴とする脳活動計測装置。
【請求項4】
頭部に装着されるフレーム部材と、
前記フレーム部材の内側に配設され、前記フレーム部材側から自立して内方に向かって立ち上がる弾性を有する支持体と、
前記支持体の頂上部に配置された頭部に当接させるための1又は複数の電極と、
頭部側に当接させる面を有する当接体と、
を有し、前記当接体は前記フレーム部材には接していないことを特徴とする脳活動計測装置。
【請求項5】
前記当接体は伸縮しない素材で構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の脳活動計測装置。
【請求項6】
前記支持体の頂上部には複数の電極が配置されており、前記支持体は1つであることを特徴とする請求項~5のいずれかに記載の脳活動計測装置。
【請求項7】
前記支持体は複数であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の脳活動計測装置。
【請求項8】
前記電極は前記支持体の頂上部に配置された状態で前記支持体の外周よりも内側に配置されていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の脳活動計測装置。
【請求項9】
頭部に装着されるフレーム部材と、
前記フレーム部材の内側に配設され、前記フレーム部材側から自立して内方に向かって立ち上がる弾性を有する支持体と、
前記支持体の頂上部に配置された頭部に当接させるための1又は複数の電極と、
を有し、
前記電極は1つずつ1つの前記支持体の頂上部に配置され、ある1つの前記支持体は他の前記支持体と連結部材によって連結されていることを特徴とする脳活動計測装置。
【請求項10】
前記電極が1つだけ配置された1つの前記支持体は間隔を空けて一列に配置された配置列を形成することを特徴とする請求項に記載の脳活動計測装置。
【請求項11】
前記連結部材は前記フレーム部材には接していないことを特徴とする請求項9又は10に記載の脳活動計測装置。
【請求項12】
前記連結部材は前記支持体と前記電極の間に挟まれて頭部側に当接させる面を有することを特徴とする請求項10又は11に記載の脳活動計測装置。
【請求項13】
前記連結部材は前記支持体間に配置されて頭部側に当接させる面を有することを特徴とする請求項9~12のいずれかに記載の脳活動計測装置。
【請求項14】
前記連結部材は伸縮しない素材で構成されていることを特徴とする請求項19~12のいずれかに記載の脳活動計測装置。
【請求項15】
前記支持体は内部が空洞化していることを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の脳活動計測装置。
【請求項16】
前記フレーム部材は馬蹄形状をなし、左右の脚部は内外に揺動することを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の脳活動計測装置。
【請求項17】
頭部に装着されるフレーム部材と、
前記フレーム部材の内側に配設され、前記フレーム部材側から自立して内方に向かって立ち上がる弾性を有する支持体と、
前記支持体の頂上部に配置された頭部に当接させるための複数の電極と、
を有し、
複数の前記電極はその配置状態において間隔を空けて一列に配置された電極配置列を形成し、
前記支持体が変形する際の可動範囲は、前記電極配置列の中央においては25~35mmであり、前記配置列の端においては5~15mmであることを特徴とする脳活動計測装置。
【請求項18】
前記電極配置列は前記フレーム部材の長手方向に沿って配置されていることを特徴とする特徴とする請求項17に記載の脳活動計測装置。
【請求項19】
前記電極配置列は列の端寄り部分が傾いて立ち上がり、列の中央方向を向いていることを特徴とする請求項17又は18に記載の脳活動計測装置。
【請求項20】
前記フレーム部材の内部には電気的な構成が内蔵されていることを特徴とする請求項1~19のいずれかに記載の脳活動計測装置。
【請求項21】
前記フレーム部材の脚部は、第2のフレーム部材の脚部と連結されており、前記第2のフレーム部材の内方は弾性を備えたシート状支持体を有し、前記シート状支持体に電極が保持されていることを特徴とする請求項1~20のいずれかに記載の脳活動計測装置。
【請求項22】
前記シート状支持体の電極保持部周辺には、スリットが設けられていることを特徴とする請求項21に記載の脳活動計測装置。
【請求項23】
請求項1~22のいずれかに記載の脳活動計測装置によって得られた脳活動信号に基づいて脳活動を計測する脳活動計測システム
【請求項24】
請求項1~22のいずれかに記載の脳活動計測装置によって得られた脳波信号に基づいて脳活動を計測する脳活動計測システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脳活動を計測するために使用される脳活動計測装置及び脳活動計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳活動の計測とその利用は、非侵襲の脳活動イメージング技術の発展に伴い盛んになってきている。非侵襲の脳活動イメージング計測方法としては、例えば機能的磁気共鳴画像法(Functional magnetic resonance imaging:fMRI)、脳磁計(Magnetoencephalograph:MEG)、機能的近赤外分光法(Functional near infrared spectroscopy:fNIRS)、脳波計(Electroencephalogram:EEG)等が現状における代表的(一般的)な手法である。
fMRIとMEGは大型装置であり、分析力は高いものの磁気シールドルーム等の特殊な実験室環境を必要とし、装置価格、装置維持価格も高価である。大型装置のため、一般的に被験者の頭部を大型装置の内部に静置固定して計測するため、計測時に被験者は頭部を一切動かさないことが求められる。測定時に、位置決めのマーカーを被験者に装着することがあるが、一般的に、このような装置では被験者の頭部に検出素子を直接装着しなくても計測できるものである。
fNIRSとEEGは、中型~小型装置であり、上記の大型装置ほどの分析はできないものの、特殊な実験室環境ではなく、通常の環境でも計測可能で携帯して持ち運ぶこともできる装置もあり、量産化、小型化、簡易化も見込めるため産業的に期待が大きい。また、ある程度被験者が動いても計測できるという特徴がある。これら装置は、大型装置のように装置内部に被験者の頭部を静置固定するのではなく、被験者の頭部に脳活動を検出するための素子を直接装着するものである。脳活動を検出するための素子を被験者の頭部に直接装着する際には、ヘッドキャップやヘッドセットにより装着されるのが一般的である。
近年、大型装置であるfMRI、MEGについても、小型化・簡易化の研究開発が進められており、中型~小型装置になった場合には、装置内部に被験者頭部を静置固定するのではなく、被験者に検出素子を直接装着する技術も必要となる。
被験者の頭部に脳活動を検出するための素子を直接装着する際には、検出素子(例えば電極や光受光部、光発光部)を頭皮に直接当接させる必要がある。例えば、EEGやfNIRSで検出素子を頭皮へ当接させる際には、頭皮への当接具合が強すぎても被験者が痛みを感じることとなり、弱すぎても計測時にノイズが増大してしまうこととなり、丁度よい圧力で検出素子が頭皮に当接するように当接具合を調整する必要がある。頭部形状は、年齢(例えば子供か大人か)、性別(男性、女性)、人種(例えば日本人か欧米人か)、身長、体型等でも大きく異なり、更に、同じ年齢、性別、人種でも個人差が大きく、後頭部が絶壁の形状であったり、卵型の形状であったりする違い等も考慮する必要がある。
学術研究の脳科学実験では、ヘッドキャップ等を用い、1つ1つの検出素子の当接具合を被験者に合わせて調整して装着をしているが、それは大きな手間になっている。そのため、特に産業用途において、あるいは学術研究においても、なるべく簡便な構造、かつ取扱いのしやすい構造の脳活動検出用の頭部装着装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-221144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1に示すような脳活動検出用の頭部装着装置が存在する。特許文献1の技術は、略半円状の外殻と、電極を備える帯状体と、複数の第一の弾性体を有し、当該複数の第一の弾性体のうちの各一端を当該外殻の両端にそれぞれ接続することで、様々な人の頭部の形状にフィットさせるようにしている。この構成では、外殻と電極を備える帯状体を組み合わせる事により様々な人の頭部の形状にフィットさせるということを実現しているものであるが、外殻に対して帯状体の両端を接続するようにしているため、装置装着時に帯状体が下に垂れてしまい、手で持ち上げて直す必要があり、使いにくいという課題がある。また、帯状体の裏面にから電極コードが剥き出しになっている構造のため、耐久性と防水性に課題がある。また、外殻に対して帯状体の両端を接続するようにした構造であるため、帯状体の長さをある程度以上長く確保できないと、様々な人の頭部形状に追随することができず、また、装着時に直接外郭フレームに力が伝わるため、外郭フレームの変形を抑えるために外郭フレームを強固にする必要があることが想定され、装置設計の自由度が低いという課題がある。すなわち、装置としての実用性、取り扱いのしやすさ、及び装置設計上の自由度に課題がある。また、脳活動検出用の頭部装着装置において、簡便な構造、かつ取扱いのしやすい構造を両立して実現するという点において、従来技術には課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために第1の手段では、脳活動計測装置において、頭部に装着されるフレーム部材と、前記フレーム部材の内側に配設され、前記フレーム部材側から自立して内方に向かって立ち上がる弾性を有する支持体と、前記支持体の頂上部に配置された頭部に当接させるための1又は複数の電極と、を有するようにした。
これによって、自立して内方に向かって立ち上がる支持体は重力で垂れることなく保持され、かつ弾性を有するため脳活動計測装置を装着した際に頭部の形状に応じて変形し、支持体の頂上部に配置された電極が丁度よい当て具合にて当接することとなる。そのため、このような脳活動計測装置は装着作業の上手下手や頭部の形状の相違にあまり左右されずに頭皮に電極を正確に当接させることができることとなり、結果として装着作業が容易となる。
【0006】
ここに、「脳活動」は一般に外部から電流が流れることで発生する磁場や異なる位置での電位差(電圧差)、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化へもグロビン等の吸光による近赤外線の光量差として計測できる生体活動である。
「フレーム部材」は人の頭部に装着するベースとなるものであって、素材や形状は限定されない。フレーム部材は頭部に装着するものであるので、頭部から容易に脱落しないような形状や機能を備えることがよい。例えば頭部を挟んだり、頭部に被さったりできることがよい。素材として例えば、プラスチック製でもゴム製でも木製でも金属製でもよい。
「支持体」はフレーム部材の内側に配設されるが、配設状態が内側であれば直接フレーム部材に固定されても別部材を介して固定されてもどちらでもよい。支持体は自立して内方に向かって立ち上がることができ、かつ弾性を有し、頂上部に電極が配置可能であれば素材や形状は限定されるものではない。支持体は頭部形状に追随する頭皮形状追随部としての役割を有する。「内方」とは脳活動計測装置を装着する際の頭部方向になる。また、電極の配線をするために内部に空洞があることがよいが、なくともよい。素材としては、自立してかつ弾性を有することが可能なもの、例えば、シリコーン、エラストマー、ポリウレタン、ポリエチレン、発泡性のスポンジ等の合成樹脂素材がよい。「自立」するとは、装置を手で持つなどして空中に浮かせた時、支持体が重力により変形しない、もしくは、変形量がごくわずかであることを意味する。これにより被験者に装置装着をする際に、支持体を装着者(被験者自身であることも含む)が保持したり、支持体が重力で垂れているのを持ち上げるなどの必要が無くなる。「弾性を有する」とは、外力を加えた際に反発性を有しながら変形し、変形後、元の形状に戻ろうとする性質を持つことである。弾性を有する支持体は、脳活動計測装置を装着した際に頭部の形状に応じて変形することになるが、頭部に装着後、頭皮への当接具合が自動的に調節されることとなり、電極の当たりが強ければ脳活動計測装置を頭皮から遠ざかる方向に力を伝え、電極の当たりが弱ければ、電極を頭皮に近づける方向に力を伝えることになる。これにより、支持体の頂上部に配置された電極が丁度よい当接具合にて当接することとなる。
「電極」は、例えば、脳の神経活動に伴う電流変化(電位差の変化)を計測する脳波計測用の電極や、脳活動に伴う電流の変化を磁場の変化として計測する脳磁界(脳磁場)計測用の電極(素子)や、脳活動に伴う脳の血流(酸素カヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン量等)の変化を近赤外線の受光量の変化として計測する近赤外分光計測用のプローブ(受光プローブと発光プローブ)である。特に、脳活動を電位差(電圧差)として記録する場合(脳波計測)においては、例えばドライ電極であることが被験者への計測負担を減らすことができるため好ましい。また、ドライ電極の近傍には、例えばプリアンプを配置することが、計測ノイズを減少させることができることからよい。ドライ電極としては、表面を金や銀、銀/塩化銀でメッキまたはコートした金属電極、カーボン含有の導電性樹脂、導電性の有機素材を用いた樹脂電極等を用いることがよいが、素材や形状は限定されるものではない。電極は装着時に毛髪の影響を避けるため、ある程度の高さと面積を持った形状をしていることがよい。
「脳活動計測装置」は、脳活動検出用の「頭部装着装置」である。頭部装着装置には、差動アンプ等の回路を内蔵していてもよく、内蔵していなくてもよい。
【0007】
また、第2の手段として、前記電極と前記支持体の間に頭部側に当接させる面を有する当接体が配設されているようにした。
また、第3の手段として、前記支持体には頭部側に当接させる面を有する当接体が形成されているようにした。
自立する支持体の頂上部にある電極は、通常、一定の面積と高さ(電極先端から支持体までの距離)を有する。脳活動計測装置を装着者(被験者自身である時も含む)が被験者に装着する時、被験者頭部からの電極への反力が電極の高さ方向に対して斜めや横方向(電極の倒れる方向)に伝わってしまうと、脳活動計測装置の装着時に支持体が折れ曲がり、電極が倒れてしまう可能性がある。このように構成することで、脳活動計測装置を頭部に装着する際に、電極を頭皮に当接させるのに伴って当接体の「面」が頭部側の頭皮や毛髪等で形成される「面」に接触することで、電極の倒れる方向へ大きな力がかかることを防ぐことができ、電極の倒れを防止できる。また、「当接体」は様々な方向から頭部側の頭皮や毛髪等で形成される「面」に接触して反力を分散させることとなり、装着作業途中で例えば電極の一部が強く頭皮に押し戻されることによる必要ではないような変形をしてしまうことが防止できる。「当接体」は電極倒れ防止部としての役割を持つとともに、支持体の変形量を適度に調整する。
装着者(作業者)がどのような方向からどのような向きで脳活動計測装置を頭部に装着するか不明であるため、当接体は必ずしも電極に近い位置だけに形成するものではない。例えば電極からかなり離れる支持体側面に当接体が形成されていてもよい。当接体は複数として存在してもよい。当接体の解釈は以下の説明でも同様である。「頭部側に当接させる面を有する」とあるのは、当接体のすべてが頭部側と当接しなければならないわけではなく、支持体の不要な変形を防止する機能を有する面を当接体が有していればよいことを意味している。
当接体は支持体と同じ素材であっても、異なる素材であってもどちらでもよい。いずれの素材であっても当接体と支持体とを2色成形等で一体的に成形することがよい。または、当接体をシート状として、支持体と電極との間や支持体と支持体の間に挟むことがよい。当接体の素材としては例えば、シリコーン、エラストマー、ポリウレタン、ポリエチレン等の合成樹脂素材がよい。成型条件や形状を変更することにより弾性を持たせたり、非伸縮性としたりすることができ、特に素材によって限定されるものではない。また、当接体の面積を大きくすることでより頭部に押しつけた際の反力を受ける領域を広くすることができる。
また、第4の手段として、前記当接体は前記支持体の外方に張り出しているようにした。
支持体の外方に張り出していることで、脳活動計測装置を頭部に装着する際に頭部側の頭皮や毛髪等に接触する機会が増えるため電極の倒れをより効率的に防止できる。
また、第5の手段として、前記当接体は前記フレーム部材には接していないようにした。
当接体がフレーム部材に接していると、当接体の動きが規制されてしまい、様々な頭部形状の被験者に対して電極を当接させることが困難になるためである。「接していない」とは当接体がフレーム部材に連結されていないことである。「フレーム部材に接していない」とは直接フレーム部材に接していないことはもちろん、支持体以外のフレーム部材に配設された部材等にも接していないことを意味する。
【0008】
また第6の手段として、前記当接体は伸縮しない素材で構成されているようにした。
これによって装着作業時に頭部側と接して、例えば当接体を介して押動されて支持体が変形するような力をけた際に、その力が逃げずに伝達されることとなるため、頭部側に様々な方向から接触した際の反力を他の支持体側に分散させることができる。当接体の素材としては例えば、ポリカーボネートやポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂素材がよい。当接体は支持体と別体でも一体に成形されてもよい。
また、第7の手段として、前記支持体の頂上部には複数の電極が配置されており、前記支持体は1つであるようにした。
つまり、電極は複数でもそれらは1つの支持体の頂上部にまとめて配置されることを確認的にクレームしたものである。このような構成であれば、電極毎に支持体を設ける必要がなく、作業性とコストの点で有利となる。また、複数の電極が支持体で連結されることになるため、装置装着時に電極が倒れにくくなる。
また、第8の手段として、前記支持体は複数であるようにした。
つまり、支持体は1つだけでもよく、二つ以上であってもよいことを確認的にクレームしたものである。支持体の素材や形状や配置位置や装着する電極の形状や重さ等種々の条件によっては複数の支持体で構成するほうが好適なことがあるためである。
【0009】
また、第9の手段として、前記電極は前記支持体の頂上部に配置された状態で前記支持体の外周よりも内側に配置されているようにした。
これによって、電極の周囲の頂上部にスペースが生まれ、それが脳活動計測装置を装着する際に頭部側に当接する領域となり、その領域が頭部側の頭皮や毛髪等に様々な方向から接触して反力を分散させることとなり、装着作業途中で例えば電極の一部が強く頭皮に押し戻され支持体が必要以上に変形してしまうようなことが防止できる。
【0010】
また、第10の手段として、前記電極は1つずつ1つの前記支持体の頂上部に配置されているようにした。
このような構成であると、支持体は個々の電極の頭部への当接状態に応じて個別に変形することができ、頭部形状によく応じた繊細な脳活動計測装置の装着が可能となる。また、フレーム部材の形状が機種によって異なる場合に電極の位置を機種毎に変更するような対応も、電極の位置や間隔を個別に変更することができるため対応しやすくなる。すなわち、この手段を用いれば支持体と電極の形状大きく変えなくても様々な電極配置や固定方法のヘッドセットを設計することができ、設計コスト、製造コストを抑えることができる。
また、第11の手段として、前記電極が1つだけ配置された1つの前記支持体は間隔を空けて一列に配置された配置列を形成するようにした。
電極が一列に配置された配置列を形成するような配置であると、広範囲の脳活動を計測でき、また、頭部形状が異なる被験者に装着した時に各電極を比較的同一の脳活動が反映される計測位置に装着できるためである。
【0011】
また、第12の手段として、複数の前記電極が1つだけ配置された1つの前記支持体は連結部材によって連結されているようにした。
脳活動計測装置を頭部に装着する際に、電極を頭皮に当接させるのに伴って支持体が反力によって押し戻されて変形することになるが、支持体が連結部材によって連結されているため単独で自立する場合に比べて相互に補完しあい、頭部側に様々な方向から接触した際の反力を分散させることができ、支持体が必要以上に変形をしてしまうことや装着動作の際に頭部に当たって不自然に変形してしまう等の不具合が防止できる。また、連結部材の面積を大きくすることでより頭部に押しつけた際の反力を受ける領域を広くすることができる。連結部材は複数の支持体を連結して上記の当接体と同様の機能を発揮させる部材である。
また、第13の手段として、前記連結部材は前記フレーム部材には接していないようにした。
連結部材がフレーム部材に接していると、動きが規制されてしまい、本来の支持体を変形させることで当接具合を調整するという目的に反することになるためである。「接していない」とは連結部材がフレーム部材に連結されている場合である。「フレーム部材に接していない」とは直接フレーム部材に接していないことはもちろん、支持体を除きフレーム部材に配設された部材等にも接していないことを意味する。
また、第14の手段として、前記連結部材は前記支持体と前記電極の間に挟まれて頭部側に当接させる面を有するようにした。
支持体と前記電極の間に配置させることで両者で連結部材を挟み込むだけで固定することができ、連結部材の装着作業が容易である。また、電極に近い位置で支持体の不要な変形を防止することとなるため、頭部側に押動された電極の先端方向が大きく向きを変えてしまうこともない。「頭部側に当接させる面を有する」とあるのは、連結部材のすべてが頭部側と当接しなければならないわけではなく、支持体の不要な変形を防止する機能を有する面を連結部材が有していればよいことを意味している。
また、第15の手段として、前記連結部材は前記支持体間に配置されて頭部側に当接させる面を有するようにした。
支持体の自由な位置に連結部材を配設して支持体の不要な変形を防止することとなるため、支持体の形状に応じた好適な位置で支持体の不要な変形を防止することができる。また、二色成形等を用いて一体的に成型することが可能となるため製造・組立コストを抑えることができる。
【0012】
また、第16の手段として、前記連結部材は伸縮しない素材で構成されているようにした。
これによって装着作業時に頭部側と接触して、連結部材を介してある支持体が押動されて変形した際に他の支持体にその力が逃げずに伝達されることとなるため、頭部側に様々な方向から接触した際の反力を他の支持体側に分散させることができる。また、支持体間の位置の関係性を比較的維持できることとなるため、1つの支持体のみ倒れるということを防止できることになる。連結部材の素材としては例えば、ポリカーボネートやポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂素材がよい。素材については、伸縮しない素材であることが重要であり、素材の伸縮性は成形条件や形状により制御することができるため、素材によって限定されるものではない。
また、第17の手段として、前記支持体は内部が空洞化しているようにした。
内部が空洞化することによって電極用の配線を外から見えないように空洞内に配設することができるため、配線が損傷しにくくなる。また、脳活動計測装置の装着時に装用者(被験者)が不用意に配線に接触して断線等の不具合を起こすことがなくなる。また、支持体を防水素材で構成すれば水にも強くなる。更に、このような形状により、支持体の強度と弾性を両立することができるようになり、支持体を弾性を持たせつつ自立させることができることとなる。このとき、支持体の外部が一繋ぎとなっていることが支持体の弾性と自立を両立するためによい。
また、第18の手段として、前記フレーム部材は馬蹄形状をなし、左右の脚部は内外に揺動するようにした。
脳活動計測装置の装着時にフレーム部材に左右の脚部を外方に撓ませて頭部に配置し、脚部を原位置に復帰させることで頭部を挟んで装着させるような態様が可能となる。本手段は、装置装着時の反力を支持体により逃がせることにより、フレーム部材に強固な素材を使う必要が生じないことから実現できるものである。
【0013】
また、第19の手段として、前複数の前記電極はその配置状態において間隔を空けて一列に配置された電極配置列を形成するようにした。
電極が一列に配置された電極配置列を形成するような配置であると、脳活動を計測する広範囲をカバーでき、また、頭部形状が異なる被験者に装着した時に各電極を比較的同一の脳活動が反映される計測位置に装着できるためである。
また、第20の手段として、前記電極配置列は前記フレーム部材の長手方向に沿って配置されているようにした。
このような構成であると、フレーム部材に沿って電極を配置できるケースが多くなり、ランダムな配置の場合に比べて、被験者頭部への装置装着時の反力が支持体からフレーム部材に分散しやすくなるためである。また、フレーム部材をコンパクトにすることができるためである。
また、第21の手段として、前記電極配置列は列の端寄り部分が傾いて立ち上がり、列の中央方向を向いているようにした。
これによって様々な異なる頭部の形状に追随させやすくなる。様々な頭部形状に追随させる場合、頭部形状が大きく扁平な形状と、頭部形状が小さく湾曲した形状の主として2つの異なる方向性の頭部形状に対応することが必要になる。その他の頭部形状は、この2つの頭部形状の間の形状となるためである。本手段によれば、頭部形状が大きく扁平な形状に対しては、電極配置列の端の電極が後ろに下がることで一直線に並んだ電極位置になり、頭部形状が大きく扁平な形状に対して無理なく当接することができる。また、頭部形状が小さく湾曲した形状に対しては、電極配置列の中央部分が大きく押し返されて湾曲した形状となり、頭部形状が小さく湾曲した形状に沿うことができることとなる。以上より、どのような頭部形状に対しても、小さな電極の移動距離で電極を当接させることができることとなる。
【0014】
また、第22の手段として、前記支持体が変形する際の可動範囲は、前記電極配置列の中央においては25~35mmであり、前記配置列の端においては5~15mmであるようにした。
このような可動範囲であると頭部に装着する際の脳活動計測装置の支持体の変形量としては妥当なものとなり、様々な頭部形状の被験者に対して無理なく装着できることとなる。また、電極配置列の端と中央それぞれについて、支持体の弾性と自立を両立することができる。
また、第23の手段として、前記フレーム部材の内部には電気的な構成が内蔵されているようにした。
電気的な構成とは具体的には例えばプリアンプ、差動アンプ、電池、通信回路等である。これらを選択的に含むことがよく、これら以外の電気的な部材を含んでいてもよい。これらをフレーム部材の内部に内蔵させることによって容易にアクセスできなくなるため、これらへの接触が原因となる不具合が生じにくい。また、外観的にもこれらがフレーム部材の外側に露出するよりもシンプルでデザイン的にも優れる。また、本出願の構成では装置装着時に支持体で反力を逃がすことでフレーム部材へ過度の力が伝わらないため、フレーム部材の内部に電気的な構成を内蔵したとしても、装置装着が原因の電気的な構成の不具合を防止することができる。ここで、プリアンプは各電極の近くに設置されていることが好ましい。
また、第24の手段として、前記フレーム部材の脚部は、第2のフレーム部材の脚部と連結されており、前記第2のフレーム部材の内方は弾性を備えたシート状支持体を有し、前記シート状支持体に電極が保持されているようにした。
つまり、第2のフレーム部材は「内方に向かって立ち上がる支持体」ではなく立ち上がらない扁平なシート状の支持体に電極が配設されている構造である。具体的には例えば第1の実施の形態の脳活動計測装置のような形態が相当する。このような頭部の離れた二箇所に電極を配置する際には、第2のフレーム部材側を後から頭部に当接させるようにする。先に頭部に当接させた「内方に向かって立ち上がる支持体」は、その支持体の弾性による反力が装着と逆方向に発生することになるが、第2のフレーム部材の支持体をシート状とすることで、「内方に向かって立ち上がる支持体」による反力を相殺することができ、電極の頭皮への当接具合をソフトにすることができるようになる。
また、第25の手段として、前記シート状支持体の電極保持部周辺には、スリットが設けられていることを特徴とするようにした。
シート状支持体はそれ自体が弾性を備えているため外力に対して撓み性を有するが、電極の周囲にスリットを有することで個々の電極が更にシート状支持体に対して揺動することを許容することとなり、頭部形状に対する追随性が向上する。スリットはシート状支持体に切れ込み等で透孔として形成してもよく、透孔とならずにスリットに沿って膨出した袋部を有するようにスリットを形成するようにしてもよい。
【0015】
また、第26の手段として、脳活動を計測する脳活動計測システムであって、第1~第25のいずれかの手段の脳活動計測装置によって得られた脳活動信号に基づいて脳活動を計測するようにした。
また、第27の手段として、脳活動を計測する脳活動計測システムであって、第1~第25のいずれかの手段の脳活動計測装置によって得られた脳波信号に基づいて脳活動を計測するようにした。
これらのようにすることで、装用者(被験者)に電極を装着する手間を低減することができ、計測準備時間を短縮した脳活動計測システムを提供することができる。「脳活動計測システム」とは、例えば「頭部装着装置」、頭部装着装置に内蔵(または外部接続)されている回路部、回路部から無線や有線通信を通じて脳活動データを記録する記録デバイス(コンピュータやタブレット、携帯電話等)、デバイス内部にて脳活動データを記録する記録ソフトウエア、脳活動データを解析する脳活動解析ソフトウエアを含むことがよい。また、外部刺激と計測データの時間的同期を得るため、例えば外部から刺激に伴うトリガー信号送信、頭部装着装置に内蔵(または外部接続)されている回路部、または記録デバイスにてトリガー信号受信を「脳活動計測システム」に含むことがよい。「脳活動」としては、例えば脳波(EEG)や脳血流(fNIRS)を計測することがよく、特に本発明はドライ電極を用いた脳活動計測システムに適用することができる。
上述した第1~第27の手段の各発明は、任意に組み合わせることができる。特に、第1の手段の構成を備えて、第2~第27の手段の各発明の少なくともいずれか1つの構成と組み合わせを備えると良い。第1~第27の手段の各発明の任意の構成要素を抽出し、他の構成要素と組み合わせてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記発明では、装着作業の上手下手や頭部の形状の相違にあまり左右されずに頭皮に電極を正確に、すなわち、丁度よい当て具合にて当接させることができることとなる。また、脳活動検出用の頭部装着装置において、簡便な構造、かつ取扱いのしやすい構造を両立して提供することができる。このことにより、コスト上のメリットが得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施の形態のヘッドセットの(a)は第2のフレーム体側から見た斜視図、(b)は第1のフレーム体側から見た斜視図。
図2】第1の実施の形態において第1のフレーム体側の内部構造を模式的に説明する説明図。
図3】第1の実施の形態において(a)は第2のフレーム体側の電極を取り付ける直前、(b)及び(c)は電極の取り付け後の状態を説明する説明図。
図4】第1の実施の形態のヘッドセットの使用状態を説明する説明図。
図5】第2の実施の形態のヘッドバンドの(a)は平面図、(b)は斜視図。
図6】第2の実施の形態のヘッドバンドの使用状態を説明する説明図。
図7】第3の実施の形態のヘッドバンドの(a)は平面図、(b)は斜視図。
図8】第4の実施の形態のヘッドバンドの(a)は平面図、(b)は斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に示すのはドライ電極である電極15よりなる脳波計測システムである。
図1図3に示すように、第1の実施の形態の脳活動計測装置としてのヘッドセット1は内部が中空に構成された全体として外側に凸となるように湾曲された第1のフレーム体2と第2のフレーム体3の2つのメインのフレーム体によって外形が構成されている。第1のフレーム体2と第2のフレーム体3はプラスチック材料、具体的にはここでは一例としてポリウレタン素材から構成されている。第1のフレーム体2及び第2のフレーム体3は共に硬質で非弾性であるが全体として若干の撓み性を有している。
まず、第1のフレーム体2側の構成について説明する。
第1のフレーム体2は外観が馬蹄形状に構成されている。第1のフレーム体2の長手方向に沿った断面形状では外周が凸となり、内周は内に凹となる。
第1のフレーム体2は馬蹄形状の中央寄り部分2Aが上下幅が幅広に構成され、中央寄り部分2Aに対して両端寄り部分2Bは上下幅が幅狭に構成されている。図2に示すように、中央寄り部分2Aには後述するコネクタ5によって覆われる開口部6が形成されている。両端寄り部分2Bは中央寄り部分2Aを基部として内外に揺動可能な撓み性を備えている。両端寄り部分2Bを外方に拡開させると内部エネルギーとして付勢力が発生し、その付勢力によって拘束が解放された両端寄り部分2Bは自動的に原位置に復帰する。
【0019】
第1のフレーム体2の中央寄り部分2Aの内面にはコネクタ5が配設されている。図1(a)及び図2に示すように、コネクタ5は第1のフレーム体2の中央寄り部分2Aの凹状の内面形状に対応する凸形状の外面を有する三日月形状の外観となる第1のフレーム体2に附属するサブのフレーム体である。コネクタ5は第1のフレーム体2と同じ材質であり硬質体である。コネクタ5には第1のフレーム体2の開口部6に対応する開口部7が形成されている。開口部7周縁には複数の係止用爪8が形成されている。図2に示すように、第1のフレーム体2の開口部6内に進出したコネクタ5の係止用爪8が開口部6の縁に係合されており、この作用によってコネクタ5は第1のフレーム体2の内面に固着される。コネクタ5は係止用爪8の係脱によって第1のフレーム体2に対して着脱可能とされている。コネクタ5内には差動アンプ10、通信回路11及び蓄電池12が収容されている。これら電気的な構成の詳細は後述する。
コネクタ5の内面(前面)には支持体としての1つのクッション体13が接着剤によって固着されている。クッション体13の固着手段としては、必ずしも接着剤に拠らなくてもよく、例えばコネクタ部5の開口部7と係止用爪8と同様の連結構造により固着したり、ネジで固着したりするようにしてもよい。クッション体13はコネクタ5を介してヘッドセット1の内面に配置されている。クッション体13はシリコーン製の袋状の中空体である。クッション体13は袋状の中空体を開口部側をコネクタ5の内面の湾曲面に沿って固定し自立させた弾性体である。クッション体13は全体としては一定の幅を持った横長の壁状の外観を呈している。クッション体13はコネクタ5の内面の湾曲面に沿った逆の湾曲面で接する直線部の長いサーキット形状の外郭を有する底部13aと、底部13aの全周囲から立ち上がる壁部13bと、壁部13b上部を塞ぐ頂上部13cとによって構成されている。頂上部13cは中央寄り領域が湾曲した第1のフレーム体2に対して弦方向となる横方向に平らに延びて構成された第1の面13Aとされ、左右両側の第2の面13Bは内側を面が向くように面13Aに対して傾斜状に構成されている。図2に示すように、クッション体13内の頂上部13cの裏面位置にはプリアンプ14が配設されている。プリアンプ14はドーナツ状の扁平体の外形とされ、中央の透孔内周には雌ネジ14aが形成されている。プリアンプ14の電気的な構成の詳細は後述する。
【0020】
図1図2及び図4に示すように、クッション体13の頂上部13cには一枚の連結シート16を介して複数の電極15が配設されている。より具体的には本実施の形態1では5つの電極15がクッション体13内の頂上部13cに頂上部13cの長手方向に沿って連結シート16上に一直線状に配置されている。
当接体としての連結シート16は非伸縮性かつ可撓性のあるプラスチック材料、具体的にはここでは一例としてポリカーボネート素材から構成されている。連結シート16はクッション体13の頂上部13cの第1の面13Aと面13Bの形状に沿って屈曲形成されるとともに、頂上部13cの長手方向に沿って頂上部13cを完全にカバーする長尺のシート体である。連結シート16は頂上部13cの第1の面13Aと面13Bに密着させられている。連結シート16はクッション体13の頂上部13cから若干はみ出すようなクッション体13の外周形状の相似形状(つまり、直線部の長いサーキット形状の外郭を有する形状)とされ、配設状態で周囲の第1のフレーム体2やその他の部分に接することはない。本実施の形態では連結シート16の横幅は170mmとされている。また、配設状態で連結シート16の周縁は頂上部13cの縁(つまり、壁部13bの面)から7mmはみ出ている。ここで、連結シート16の周縁がはみ出す量は、あまりに少なくても当接体としての働きが低下することになり、大きすぎても取り扱いがしにくくなってしまうため5~15mm程度が適当である。
電極15は円板状の本体17と接地部としての複数の(本実施の形態1では12本の)突起部18と、本体17中心から下方に突出する横断面円形形状の支持軸19から構成されている。突起部18は本体17の前面外周寄りに等間隔で立設されている。支持軸19外周には雄ネジ19aが形成されている。電極15の本体17の径は13mmとされ、連結シート16の横幅の方が広いため電極15の本体17の周囲には連結シート16の周縁まで連結シート16のシート面が露出しており、ヘッドセット1装着時に頭髪等を収容できる領域が電極15周囲にも形成されることとなる。
中央の3つの電極15は連結シート16を介して第1の面13A上に配置され、左右の2つの電極15は連結シート16を介して第2の面13B上に配置されている。そのため、図示されるように中央の3つの電極15に対して左右の2つの電極15は第2の面13Bの傾斜角度によって内側を向くように配置され、中央の3つの電極15の突起部18の延長線に対して左右の2つの電極15の突起部18の延長線は交差するような位置関係となる。これにより、頭部形状が大きく後頭部が扁平ないわゆる絶壁形状の被験者に対しても、また、頭部形状が小さく後頭部が卵型形状の被験者に対してもヘッドセット1は無理なく装着し、電極15を被験者の頭皮に当接することができる。
電極15はプリアンプ14と協働してクッション体13に対して固定されている。すなわち、図2に示すように電極15の支持軸19はクッション体13の頂上部13cに形成された透孔20からクッション体13内に挿入され、支持軸19の雄ネジ19aとプリアンプ14の透孔内周の雌ネジ14aとが螺合することでクッション体13内の頂上部13cに固定される。一方、プリアンプ14もこのように電極15によって頂上部13cの裏面に吊り下げ状に固定される。
連結シート16には電極15の支持軸19の位置に対応した透孔21が形成されている。透孔21の位置はクッション体13に形成された透孔20と一致する。電極15の支持軸19が透孔20、21に挿通され、上記のように電極15の固定とともに電極15とクッション体13に挟まれて固定されている。
【0021】
次に第2のフレーム体3側の構成を説明する。
第2のフレーム体3は第1のフレーム体2よりも全長の短いアーチ状の外形で構成されている。第2のフレーム体3は第1のフレーム体2と同じポリウレタン素材で形成されており、長手方向にかけて同幅に構成されている。第2のフレーム体3の長手方向に沿った縦断面は外周が凸となり、内周は内に凹となる。第2のフレーム体3は第1のフレーム体2とそれぞれの先端寄り同士で連結されている。具体的には第2のフレーム体3の両端が第1のフレーム体2の両端寄り部分2Bの先端に形成された取り付けプレート25に対して軸周りに回動可能に取着されている。第2のフレーム体3は第1のフレーム体2より全長が短いため第1のフレーム体2よりも若干弱い可撓性を備えている。
図1図3及び図4に示すように、第2のフレーム体3の前面には開口部27が形成されており、開口部27を塞ぐようにシート状支持体としての弾性プレート28が固着されている。弾性プレート28は合成ゴム製の弾性と可撓性を備えた薄板体である。弾性プレート28は第2のフレーム体2の内側に長い側の端部がはめ込まれて固定され、短い側の端部は固定されず開放されている。短い側の端部が固定されていないため、弾性プレート28の動きの裕度が向上し、開放位置から第1のフレーム体2側への配線の引き出しも可能となる。
複数の電極15は弾性プレート28に固着されている。より具体的には3つの電極15が弾性プレート28の長手方向に沿って一直線状に配置されている。弾性プレート28は第2のフレーム体3の凹に湾曲した内面に沿って同様に凹に湾曲しているため左右位置の電極15は内側を向くこととなって、3つの電極15の突起部18の延長線はヘッドセット1の内側の一点で交差するような位置関係となる。電極15は上記と同様プリアンプ14と協働することで弾性プレート28に対して固定されている。
弾性プレート28には各電極15近傍に透孔となるスリット29が形成されている。スリット29は電極15を取り囲む位置に複数形成されている。本実施の形態では電極15を挟むように二箇所に形成されている。
【0022】
次に、このように構成されたヘッドセット1の電気的構成の概要を説明する。
各電極15はそれぞれプリアンプ14に螺合されることで電気的に導通されている。第1のフレーム体2のプリアンプ14と第2のフレーム体3のプリアンプ14からの導線31はそれぞれコネクタ5内の差動アンプ10に接続されている。差動アンプ10と通信回路11とプリアンプ14は蓄電池12から電力を供給されている。差動アンプ10からヘッドセット1外に図示しないグラウンド電極と基準電極が出ている。装置装着時にはグラウンド電極とリファレンス電極(基準電極)は装用者の体、例えば右耳朶にクリップで固定される。各電極15はプリアンプ14と導線31を介して差動アンプ10内に接続され、差動アンプ10は通信回路11に接続されている。プリアンプ14は各電極15ごとに装着され、取得したその位置での脳波電圧を増幅する。差動アンプ10は差動増幅回路を備え、図示しないリファレンス電極から得られた脳波電圧と電位差を算出し増幅する。差動アンプ10で増幅された電位データは通信回路11によって外部に無線送信される。図示しない受信装置によって受信された電位データは検出対象データとしてコンピュータに出力され、解析が行われる。
このように構成されたヘッドセット1を頭部に装着する際には、まずヘッドセット1の第1のフレーム体2側の両端寄り部分2Bを拡開させる。両端寄り部分2Bを拡開するとそれにつられて第2のフレーム体3も拡開される。このように拡げたヘッドバンド1を第1のフレーム体2側の両端寄り部分2Bが側頭部に配置させ、第1のフレーム体2の電極15が後頭部の水平方向沿って配置され、第2のフレーム体3の電極15が前頭部の横方向に沿って配置されるように取り付ける。取り付ける主体は装用者でも装用者ではない者でもよい。ヘッドセット1は第1のフレーム体2側の両端寄り部分2Bが自身の付勢力で内側に戻って頭部を挟み、第1のフレーム体2と第2のフレーム体3が電極15を介して頭部に当接させられてヘッドバンド1は頭部に固定される。図4はヘッドセット1が取り付けられた一例である。
【0023】
上記のように構成される第1の実施の形態のヘッドセット1によって次のような効果が奏される。
(1)ヘッドセット1を図4のように装着する際の装着作業において頭部に電極15が接近することになるが、その際に装用者ごとに頭部形状に違いがあっても適宜クッション体13と弾性プレート28が撓んで変形するため、頭部形状に違いがあっても装用者の頭部にヘッドセット1を装着させることができる。特にクッション体13は前方(つまり頭部方向)に張り出しているため頭部形状に様々に対応させることができ、かつ弾性を有するため単に撓むだけではなくその弾性で頭部に反発力を持って当接するため、電極15が頭皮に適度な当たり具合で接触することになり、脳波電圧をもれなく取得することができる。また、装置装用時の痛みもクッション体13と弾性プレート28の変形によって発生することはなく、例えば装用者が歩いたり首を振るなどしてもヘッドセット1がずれない。
(2)第1のフレーム体2側の電極15を頭皮に当接させる際には、電極15の周囲には面積の大きな連結シート16が拡がっているため、装着作業において頭部に電極15を接近させる際には連結シート16に頭皮や頭髪が同時に接触することとなる。そのため電極15のみが頭部側からの押圧力を受けるわけではなく、その外力は連結シート16にも分散されることとなる。そのため電極15のみが強く押され、例えば電極15を支持するクッション体13が部分的に大きく凹んでしまうような不具合が生じにくい。連結シート16はクッション体13の前方に配置された状態で第1のフレーム体2には連結していないため、変形の自由度が高く、クッション体13への外圧が分散されやすい。また、連結シート16が「面」になっているため、ヘッドセット1を装着する時に装用者の毛髪を含む頭皮面と接することとなり、装着作業時の電極15の倒れが防止できる。
(3)第1のフレーム体2側の電極15は中央の3つの電極15は平らな第1の面13A面状に並んでおり、一方左右両側の2つの電極15はそれらに対して内側を向くように配置されている。そのため、頭部形状の違いに追随しやすくなっている。
(4)連結シート16はクッション体13の前方で電極15に挟まれた構造である。そのため、クッション体13及び電極15とセットになって強固な構造体として構築されるため、頭部側からの押圧力に対する十分な反力を生じさせることができる。
また、連結シート16は非伸縮性であるため、連結シート16を介して押動されて支持体が変形するような力をけた際に、その力が逃げずに伝達されるため、列として配置している電極15の位置関係性を維持しつつクッション体13を適切な変形量とすることができる。連結シート16が伸縮性である場合には、装置装用時に一部の電極間のみが伸びる等することにより、複数の電極15の位置関係が崩れてしまい、装置の装着ごとに別の頭皮上の位置に電極が当接されることとなってしまう。
(5)ヘッドセット1の装着作業において、例えば第2のフレーム体3の電極15を前頭部側に押しつけることで弾性プレート28の弾性を利用することができ、第1のフレーム体2側の電極15が強く頭皮に当接することがなくなるためクッション体13の変形量が小さくなる。
(6)第2のフレーム体3の電極15を前頭部側に押しつける際に、弾性プレート28には電極15を取り囲む位置にスリット29が形成されているため、弾性プレート28自体の弾性だけではなく弾性プレート28に配設された電極15自体がスリット29があることによって撓みを有することになり、頭部に装着した際の追随性が向上する。
(7)ヘッドセット1のコネクタ5内に差動アンプ10、通信回路11、蓄電池12が内蔵され、中空であるクッション体13の内部にプリアンプ14と導線31が内蔵されていることにより、電気的構成に対して装置装用者が触れることがなく、装置の耐久性が高い。
【0024】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の脳活動計測装置としてのヘッドバンド41は第1の実施の形態と同じ構成の電極15を使用し、基本的に第1の実施の形態と同様の電気的構成によって電位データを取得するものである。そのため、ヘッドバンド41は電気的構成の説明は省略し、主として第1の実施の形態のヘッドバンド1との外観上の違いを説明する。また、第1の実施の形態と同じ部材については同じ番号を付して詳しい説明は省略する。
図5(a)(b)及び図6に示すように第2の実施の形態のヘッドバンド41は全体として外側に凸となるように湾曲されたフレーム体42によって外形が構成されている。フレーム体42はプラスチック材料、具体的にはここでは一例としてポリカーボネート素材から構成されている。フレーム体42は硬質で非弾性であるが全体として若干の撓み性を有している。
フレーム体42は外観が馬蹄形状に構成され内部は中空に構成されている。フレーム体42の長手方向に沿った断面形状では外周が凸となり、内周は内に凹となる。
フレーム体42は馬蹄形状の中央寄り部分42Aから両端寄り部分42Bにかけて上下幅は等幅に構成され、中央寄り部分42Aから両端寄り部分42Bにかけて厚みは徐々に薄肉となるように構成されている。両端寄り部分42Bは中央寄り部分42Aを基部として内外に揺動可能な撓み性を備えている。両端寄り部分42Bを外方に拡開させると内部エネルギーとして付勢力が発生し、その付勢力によって拘束が解放された両端寄り部分42Bは自動的に原位置に復帰する。
【0025】
フレーム体42の中央寄り部分42Aの内面(前面)には支持体としての複数の(本実施の形態では3つの)クッション体43が間隔を空けて固着されている。クッション体43はシリコーン製の袋状の中空体である。クッション体43は円筒形状の袋状の中空体を開口部側をフレーム体42の内面の湾曲面に沿って固定し自立させた弾性体である。クッション体43はフレーム体42の内面に形成された凹部44内に接着剤で固定されている。クッション体43は凹部44側が開口されフレーム体42内部と連通可能とされている。クッション体43は円形の外郭を形成する底部43aと、底部43aの全周囲から立ち上がる壁部43bと、壁部13b上部を塞ぐ円形な平面となる頂上部43cとによって構成されている。3つのクッション体43の先端、つまり頂上部43cの位置はフレーム体42の中央寄り部分42Aの弦方向となる方向の同一直線上に配置されている。
各クッション体43の頂上部43cには一枚の連結シート45を介して1つずつ電極15が配設されている。上記第1の実施の形態と同様に電極15はプリアンプ14と協働してクッション体43に対して固定されている。連結シート45には図示しない3つの透孔が形成されており、この透孔位置で連結シート45は各電極15の支持軸19に挿通されて電極15とクッション体43の間に挟まれている。電極15の本体17の外周位置は壁部43bの外周位置と一致する。つまり、電極15はクッション体43からはみ出ることはない。
連結部材としての連結シート45は非伸縮性かつ可撓性のあるプラスチック材料、具体的にはここでは一例としてポリカーボネート素材から構成されている。連結シート45は両端が半円形状とされた長尺のシート体である。連結シート45の外側部分は前方(内方)に若干屈折させられている。連結シート45はその配設状態で周囲のフレーム体42やその他の部分に接することはない。本実施の形態では連結シート45の横幅は240mとされている。連結シート45は電極15の本体17の径よりも幅広であるため、電極15の本体17から連結シート45の周縁までシート面が露出しており、ヘッドバンド1装着時に頭髪等を収容できる領域が電極15周囲にも形成されることとなる。
【0026】
このように構成されたヘッドバンド1を頭部に装着する際には、まずヘッドバンド41のフレーム体42側の両端寄り部分42Bを拡開させる。このように拡げたヘッドバンド1を両端寄り部分2Bが側頭部に配置させ、フレーム体42の電極15が前頭部の横方向に沿って配置されるように取り付ける。取り付ける主体は装用者でも装用者ではない者でもよい。ヘッドバンド41はフレーム体42の両端寄り部分42Bが自身の付勢力で内側に戻って頭部を挟み、電極15が頭部に当接させられてヘッドバンド41は頭部に固定される。図6はヘッドバンド41が取り付けられた一例である。
【0027】
上記のように構成される第2の実施の形態のヘッドバンド41は上記第1の実施の形態のヘッドバンド1と同様の構成については同様の効果が奏されるが、独自に次のような効果も奏される。
(1)クッション体43は電極15が頭部に当接した際に個別に頭部に当接することによる外力(押圧力)に応じて変形するため、頭部形状によく応じた繊細なヘッドバンド41の装着が可能となる。また、フレーム体42の形状が機種によって異なる場合に電極15の位置を機種毎に変更するような対応も、電極15の位置や間隔、クッション体43の形状を個別に変更することができるため対応しやすくなる。
(2)電極15の周囲には面積の大きな連結シート45が拡がっているため、装着作業において頭部に電極15を接近させる際には連結シート45に頭皮や頭髪が同時に接触することとなる。そのため電極15のみが頭部側からの押圧力を受けるわけではなく、その反力は連結シート45にも分散されることとなる。そのため電極15のみが強く押され、例えば電極15を支持するクッション体43が大きく凹んでしまうような不具合が生じにくい。連結シート45はクッション体43の前方に配置された状態で第1のフレーム体42には連結していないため、変形の自由度が高く、クッション体43への外圧が分散されやすい。
特にクッション体43が個別に変形するので、第1の実施の形態に比較して大きく変形しやすいクッション体43の過剰な変形が防止される。
【0028】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態の脳活動計測装置としてのヘッドバンド51は第2の実施の形態のバリエーションである。そのため第2の実施の形態と共通する構成の詳しい説明は省略し、第2の実施の形態のヘッドバンド41とは異なる点を主として説明する。また、第1及び第2の実施の形態と同じ部材については同じ番号を付して詳しい説明は省略する。
図7に示すように、第3の実施の形態のヘッドバンド51は、第2の実施の形態のヘッドバンド41と同形状のフレーム体52によって外形が構成されている。中央寄り部分52Aと両端寄り部分52Bも第2の実施の形態のヘッドバンド41の中央寄り部分42Aと両端寄り部分42Bと同じ構成である。ヘッドバンド51の中央寄り部分52Aには第2の実施の形態のヘッドバンド41と同じ3つのクッション体43が配設されている。クッション体43は第2の実施の形態のヘッドバンド41と異なり連結シート53がクッション体43の中間位置に配設されている。連結部材としての連結シート53は上記連結シート45と同じ素材である。本実施の形態の連結シート53はクッション体43と2色成形によって同時に成形されておりクッション体43の壁部43bと連結シート53は一体化されている。
このようなヘッドバンド51では、連結シート53をよりクッション体43の基部に近い位置で連結することとなり、よりクッション体43の動きを拘束することができ、なるべくクッション体43を撓ませたくないようなケースには好適である。また、クッション体43の動きを拘束できるため、連結シート53の大きさが比較的小さくても電極の倒れが防止できることとなる。
【0029】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態の脳活動計測装置としてのヘッドバンド61は第1の実施の形態のバリエーションである。そのため第1の実施の形態と共通する構成の詳しい説明は省略し、第1の実施の形態のヘッドバンド1とは異なる点を主として説明する。また、第1の実施の形態と同じ部材については同じ番号を付して詳しい説明は省略する。
図8(a)(b)に示すように、第4の実施の形態のヘッドバンド61は全体として外側に凸となるように湾曲されたフレーム体62によって外形が構成されている。フレーム体62はプラスチック材料、具体的にはここでは一例としてポリカーボネート素材から構成されている。フレーム体62は硬質で非弾性であるが全体として若干の撓み性を有している。
フレーム体62は外観が馬蹄形状に構成され内部は中空に構成されている。フレーム体62の長手方向に沿った断面形状では外周が凸となり、内周は内に凹となる。フレーム体62は馬蹄形状の中央寄り部分62Aには一方に大きく台形に張り出した膨出部65が形成され、中央寄り部分62Aから両端寄り部分62Bにかけて厚みは徐々に薄肉となるように構成されている。
フレーム体62の中央寄り部分62Aの内面(前面)には支持体としての1つのクッション体63が接着剤によって固着されている。クッション体63はシリコーン製の袋状の中空体である。クッション体63は袋状の中空体を開口部側をフレーム体62の内面の湾曲面に沿って固定し自立させた弾性体である。
クッション体63はフレーム体62の中央寄り部分62Aの膨出部65の形状に対応して、中央部分が突出した壁状の外観を呈している。クッション体63には上下二段に電極15が配設されている。本実施の形態では上段に1つの電極15が配置され下段に5つの電極15が配置されている。下段の5つの電極15とクッション体63の間には第1の実施の形態の連結シート16と同様に一枚の当接体としての連結シート64が配設されている。上段の1つの電極15には連結シート64は配設されていない。連結シート64の外周はクッション体63外周からわずかにはみ出している。連結シート64はフレーム体62に接することはない。連結シート64の横幅の方が電極15の本体17の径よりも広いため電極15の本体17の周囲には連結シート64の周縁まで連結シート64のシート面が露出しており、ヘッドバンド61装着時に頭髪等が当接できる領域が電極15周囲にも形成されることとなる。
このようなヘッドバンド61でも第1の実施の形態のヘッドセット1と同様の効果が奏されることとなる。また、電極15の配置を一列ではなく上下二段の二列とすることでも本発明を適用可能なことを示す例である。実施例4に示す電極配置は国際10-20電極配置においてPO7、O1、Oz、O2、PO8、Pzとなっており、視覚野からの脳活動を腹側経路だけでなく背側経路も計測できる。このように、計測目的により、1列の電極配置列以外への本発明の適用は任意にすることができる。
【0030】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記各実施の形態におけるヘッドセット1、ヘッドバンド41、51、61の形状は上記は一例である。
・上記各実施の形態における電極15の形状は一例であって、他の形状でもよく、例えば突起部18の形状や数は上記以外でもよく、あるいは電極が上記のような突起部18を有していなくともよい。また、素材として非金属製であってもよい。
・電極15の数や位置は、上記各実施の形態における脳活動計測装置のフレーム体2、3、42、52、62の形状や脳活動計測装置が目的とする計測位置によって様々であるため、上記に限定されるものではない。
・当接体としての連結シート16、45、53、64の形状や素材は上記は一例である。連結シート16、45、53、64が支持体としてのクッション体13、43、63の外方に張り出している張り出し量は、例えば5~30mmがよい。クッション体が一体となっている場合や、連結シートが支持体の間にある場合には、クッション体の変形量が抑えられるため連結シートの外方への張り出し量は5~10mm程度でよい。
・クッション体13、43、63の形状は上記実施の形態は一例である。また、1つのフレーム体に配設するクッション体の数も上記に限定されるものではない。また、各クッション体に配設する電極15の数や位置も状況に応じて上記以外の態様で実施されることは当然であるため上記に限定されることはない。
・例えば、複数の当接体(あるいは連結部材)を離間させて複数枚数重ねて使用するようにしてもよい。
・第3の実施の形態のヘッドバンド51ではクッション体43に連結シート53が一体成形されていたが、連結シート53を別部材で構成してクッション体43に嵌め込むように装着してもよい。また、クッション体43に対する連結シート53の位置も他の位置にずらして配置するようにしてもよい。
・第4の実施の形態のヘッドバンド61の上下二段に電極15が配設されている場合の電極の数も上記のような構成は一例であり、上段も2つ以上の電極15で構成することは自由である。また、上段側に連結シートを配設するようにして電極15の周囲の面積を拡張してもよい。
・上記実施の形態では脳波計測システムにおける脳活動計測装置を記載したが、本発明は脳波(EEG)に限定されず、fNIRS、MEG、fMRI等にも適用可能であり、脳活動の計測原理により限定されない。磁気刺激装置(TMS)、直流刺激装置(tDCS)等の外部から脳に対して刺激を与える場合の装置固定方法としても本発明を適用してもよい。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【符号の説明】
【0031】
1…脳活動計測装置としてのヘッドセット、41、51、61…脳活動計測装置としてのヘッドバンド、2、3、42、52、62…フレーム部材としてのフレーム体、13、43、63…支持体としてのクッション体、15…電極。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8