(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】イレーザー
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20190101AFI20220609BHJP
B43L 19/00 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
G02F1/167
B43L19/00 Z
(21)【出願番号】P 2018003917
(22)【出願日】2018-01-15
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】301032735
【氏名又は名称】プラス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋一
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6213886(JP,B1)
【文献】特許第6179788(JP,B1)
【文献】米国特許第05317340(US,A)
【文献】中国実用新案第205058953(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/165-1/19
B43L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセル磁気泳動表示シートの表示面に記載された文字等を消去するために前記表示面上を摺動させるイレーザーにおいて、
利用者によって把持されるケースと、
該ケースの底面に形成された凹部に回転可能に取付けられたボールと、
前記ケースの凹部に取付けられ、
前記マイクロカプセル磁気泳動表示シートの表
示面に対して並行に360度回転する回転機構と、
前記ケースの凹部に前記ボールの回転に従って回転し、前記回転機構に取付けられた磁石と、を備え、
前記ボールの回転に従って前記磁石が回転すると共に、前記ボールの回転方向の変化に従って前記磁石の回転方向が変化する事を特徴とするイレーザー。
【請求項2】
前記回転機構は、前記ケースの凹部を形成する天面に回転可能に取付けられている事を特徴とする請求項1に記載のイレーザー。
【請求項3】
前記磁石は、円柱形状の磁石からなり、円周上で磁極が異なるように磁化されている事を特徴とする請求項1に記載のイレーザー。
【請求項4】
前記磁石の円柱形状をなす直径の長さが、前記ボールの中点を通る直径の長さに比べて短い事を特徴とする請求項3に記載のイレーザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル磁気泳動表示シートの表面に表示された文字を表面から消去可能なイレーザーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からマイクロカプセル磁気泳動表示シートの表面に表示された文字を表面から消去できるイレーザーは知られている。例えば、特許文献1には、マイクロカプセル磁気泳動表示シートと磁石との間にクリアランスを設けるために磁石に非磁性体を配置し、磁石を固定して磁力線を変化させないイレーザーが開示されている。このイレーザーの磁石の磁力線が、マイクロカプセル磁気泳動表示シート内のマイクロカプセルに水平に作用させることができる。これにより、表面側に集まったマイクロカプセル内の黒色の磁性粒子を泳動させ、分散させ、白色顔料の非磁性粒子を表面に多く集めることで、表面に表示された文字を消去させることができる。
【0003】
また、特許文献2には、筐体内部にモータと磁石とを備え、磁石を回転可能にして磁力線を変化させるイレーザーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-122989号公報
【文献】特許第6213886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のイレーザーは、水平の磁力線のみをマイクロカプセルに作用させるには、クリアランスを大きく取る必要があり、マイクロカプセルと磁石とのクリアランスが大きくなればなるほど、マイクロカプセルに作用させる磁力線が弱まり、表面に表示された文字を完全に消去できない事があった。
【0006】
また、引用文献2のイレーザーは、モータを駆動するためにバッテリーを必要とし、使用したいときにバッテリー切れで使用できない事があった。
【0007】
また、本出願人は、モータ及びバッテリーを使用しない方法でマイクロカプセルに作用させる磁力線を変化させることで黒色の磁性粒子を大きく泳動させることを見出した。
【0008】
本発明は、モータ及びバッテリーを使用せずに、マイクロカプセル磁気泳動表示シートの表面に表示された文字を完全に消去できるイレーザーを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係るイレーザーは、マイクロカプセル磁気泳動表示シートの表示面に記載された文字等を消去するために前記表示面上を摺動させるイレーザーにおいて、利用者によって把持されるケースと、該ケースの底面に形成された凹部に回転可能に取付けられたボールと、前記ケースの凹部に取付けられ、前記マイクロカプセル磁気泳動表示シートの表示面に対して並行に360度回転する回転機構と、 前記ケースの凹部に前記ボールの回転に従って回転し、前記回転機構に取付けられた磁石と、を備え、前記ボールの回転に従って前記磁石が回転すると共に、前記ボールの回転方向の変化に従って前記磁石の回転方向が変化する。
【0010】
請求項2に記載の発明に係るイレーザーにおいて、前記回転機構は、前記ケースの凹部を形成する天面に回転可能に取付けられている。
【0011】
請求項3に記載の発明に係るイレーザーにおいて、前記磁石は、円柱形状の磁石からなり、円周上で磁極が異なるように磁化されている。
【0012】
請求項4に記載の発明に係るイレーザーにおいて、前記磁石の円柱形状をなす直径の長さが、前記ボールの中点を通る直径の長さに比べて短い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ケースは、利用者によって把持される。ボールは、該ケースの底面に形成された凹部に回転可能に取付けられる。回転機構は、前記ケースの凹部に取付けられ、マイクロカプセル磁気泳動表示シートの表面に対して並行に360度回転する。磁石は、前記ケースの凹部に前記ボールの回転に従って回転し、前記回転機構に取付けられる。前記ボールの回転に従って前記磁石が回転すると共に、前記ボールの回転方向の変化に従って前記磁石の回転方向が変化する。この結果、モータ及びバッテリーを使用せずに、マイクロカプセル磁気泳動表示シートの表面に表示された文字を完全に消去できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るイレーザーの全体形状図である。
【
図2】本実施形態に係るイレーザーの
図1のA-A断面図である。
【
図3】本実施形態における回転機構を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るイレーザーの
図1のB-B断面図であり上方向に摺動した状態を示す図である。
【
図5】本実施形態に係るイレーザーの
図1のB-B断面図であり右斜め上方向に摺動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のイレーザーに係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
[実施形態]
本発明の実施形態に係るイレーザーについて、説明する。イレーザーを説明するために、
図1に示す矢印Yの上方向を「上」及び下方向を「下」と、矢印Xの左方向を「左」及び右方向を「右」と、表現して説明する。
【0017】
図1に示すように、イレーザーは、ケース1とボール2とを備え、ボール2が備えられた下側の面が、マイクロカプセル磁気泳動表示シートの表示面に配置される。このケース1を利用者が手で掴み、表示面に記載された文字等を消去するために、ボール2の回転によりイレーザーを摺動させる。
【0018】
図2は、
図1のA-A断面図であり、
図2を用いて、イレーザーを詳細に説明する。
【0019】
イレーザーは、ケース1と、ボール2と、底面蓋3と、回転機構4と、磁石5と、を備える。
【0020】
ケース1は、プラスチック等の非磁性材料である材質から形成されており、筐体を兼ねている。ケース1の上の部分は、利用者が手で持つ部分であり、利用者が握りやすい形状が望ましい。ケース1の下側に位置する底面には、開口を有する凹部が形成されている。この凹部を形成する4つの側面及び天面のうち、天面には回転機構4が回転可能に取付けられている。
【0021】
ボール2は、球形状を有し、表面が滑りにくい材質で形成されている。
【0022】
底面蓋3は、プラスチック等の非磁性材料である材質から形成されており、ケース1の凹部の開口を塞ぐ大きさを有している。また底面蓋3の中央には、ボール2の中点を通る直径の長さに比べ、短い直径の円形の貫通孔が形成されている。底面蓋3により、ボール2がケース1の凹部内に保持され、円形の貫通孔からボール2の一部が露出する。
【0023】
回転機構4は、プラスチック等の非磁性材料である材質から形成されている。回転機構4は、
図3に示すように、凹部を形成する天面に上側の端部が回転可能に取付けられる回転支持軸41と、この回転支持軸41の下側の端部から下側方向かつ拡径方向に形成された2本の脚42と、この脚42の端部に磁石を囲う回転枠43と、回転枠から内側方向に突出した2つの磁石支持軸44と、を備える。天面に回転支持軸41が回転可能に取付けられていることにより、磁石支持軸44に取付けられた磁石5がマイクロカプセル磁気泳動表示シートの表面に対して並行に360度回転する事ができる。
【0024】
磁石5は、円柱形状の磁石で、円周上で磁極が異なるように磁化されている。この磁石5は、回転機構4の磁石支持軸44によって、回転可能に取付けられている。また、磁石5の円周上の表面は、ボール2の球面と接触し、ボール2の回転に従って磁石5も回転する。これにより、ボール2の回転に従って、磁石5が回転し、マイクロカプセル磁気泳動表示シートに面する磁石5の磁極が、N極からS極を経てN極へと変化し、マイクロカプセルに作用させる磁力線を変化させることができる。
【0025】
さらに磁石5の円柱形状をなす直径の長さが、ボール2の中点を通る直径の長さに比べて短い。これにより、ボール2が1回転する間に、磁石5が1回転よりも多く回転する事が可能となり、マイクロカプセルに作用させる磁力線をより多く変化させることができる。
【0026】
<本実施形態の使用形態>
次に、本実施形態の使用形態について、
図4及び
図5を用いて説明する。本使用形態は、イレーザーの摺動方向を変化させたときの使用形態である。
【0027】
利用者が、マイクロカプセル磁気泳動表示シートに記載された文字のうち、消したい文字の部分に、本実施形態のイレーザーを配置し、消したい文字の表示面上を、ボール2の回転により摺動させる。
図4に示すように、利用者が上方向にイレーザーを摺動させると、ボール2が上方向に回転し、そのボール2の回転に従って、磁石5が回転する。これにより、磁石5が回転すると、マイクロカプセル磁気泳動表示シートに面する磁石5の磁極が、N極からS極を経てN極へと変化し、磁力線を変化させることができる。
【0028】
次に、
図5に示すように、利用者が右斜め上方向にイレーザーを摺動させると、右斜め上方向にボール2の回転方向が変化し、そのボール2の回転方向の変化に従って、右斜め上方向に磁石5の回転方向が変化する。
【0029】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、モータ等で駆動させる必要がないために、バッテリーが不要となる事から、利用者は使用したいときにバッテリー切れ等を気にする事なく、本発明のイレーザーを使用する事ができる
【0030】
本実施形態によれば、ボール2の回転に従って、磁石が回転するとともに、ボール2の回転方向の変化に対応して磁石の回転方向が変化する。これにより、利用者がイレーザーを摺動する方向に磁石の回転方向が変化するため、利用者が摺動方向に束縛されず、自由にイレーザーを摺動する事ができる。
【0031】
本実施形態によれば、磁石5の円柱形状をなす直径の長さが、ボール2の中点を通る直径の長さに比べて短い。これにより、ボール2が1回転する間に、磁石5が1回転よりも多く回転する事が可能となり、マイクロカプセル磁気泳動表示シートのマイクロカプセル内の磁性粒子に、磁力線の変化を多く与える事が可能となる。マイクロカプセル内の磁性粒子に、磁力線の変化を多く与える事で、マイクロカプセル内で磁性粒子の動きが活発となり、表面から遠ざかる方向に磁性粒子が動き、消去性を高めることができる。
【0032】
本発明の実施形態について以上説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、当業者であれば種々の変更を加える事ができる。
【0033】
(変形例1)
本実施形態において、磁石5の円柱形状をなす直径の長さが、ボール2の中点を通る直径の長さに比べて短い。この実施形態に代えて、磁石5の円柱形状をなす直径の長さが、ボール2の中点を通る直径の長さと同一であっても良い。
【0034】
(変形例2)
本実施形態において、磁石5は1つ備える。この実施形態に代えて、磁石の数は幾つでも良く、複数の磁石で構成しても良い。
【0035】
(変形例3)
本実施形態において、磁石5は、円柱形状の磁石で、円周上で磁極が異なるように磁化されている。この実施形態に代えて、磁石5の形状は、直方体、棒状、角柱形状等、どのような形状であっても良い。この場合、ボール2の回転に従って磁石が回転するように、磁石を内蔵した円柱形状のローラーを備える。ボール2の回転に従って、ローラーが回転し、ローラーに内蔵した磁石も回転することで同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・ケース、2・・・ボール、3・・・底面蓋、4・・・回転機構、41・・・回転支持軸、42・・・脚、43・・・回転枠、44・・・磁石支持軸、5・・・磁石