(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/24 20060101AFI20220609BHJP
A47K 13/30 20060101ALI20220609BHJP
G01V 3/08 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A47K13/24
A47K13/30 A
G01V3/08 D
(21)【出願番号】P 2018055728
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】岡本 賢一
(72)【発明者】
【氏名】安形 壮史
【審査官】池谷 香次郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-080703(JP,A)
【文献】特開2006-201129(JP,A)
【文献】特開2013-190405(JP,A)
【文献】特開平06-138247(JP,A)
【文献】特開平10-071105(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1266474(KR,B1)
【文献】国際公開第97/047976(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
E03D 9/00- 9/06
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と
、着座部と
、前記着座部の内周側から下方に延びる側壁部と、前記着座部と前記側壁部との間に位置する湾曲部と、内表面と
、を有する中空の便座と、
前記便座の前記内表面の前記着座部側に設けられ前記便座に着座する使用者を検知する第1の検知電極と、前記第1の検知電極から上下方向に離間した位置に設けられ前記第1の検知電極と容量結合する第2の検知電極と、を有する静電センサと、
を備え、
前記第1の検知電極は、
前記第2の検知電極と重なる第1部分と、
前記第1部分と前記開口部との間に
おいて前記湾曲部の内表面に沿って設けられ、前記第1部分と重ならない第2部分と、
を有し、
前記第2部分は、前記第1部分と電気的に接続されていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記静電センサは、前記第2の検知電極からの検知信号を出力する回路部と、前記第2の検知電極及び前記回路部を覆うケースと、をさらに有することを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記第1部分の面積は、前記第2の検知電極の面積よりも広いことを特徴とする請求項1
又は2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記内表面に設けられ、前記便座を内側から加熱するヒータと、
前記ヒータの熱を前記便座の前記内表面に伝達する金属膜と、
をさらに備え、
前記金属膜は、前記第1部分及び前記第2の検知電極と重なる第1の切り欠き部と、前記第2部分と重なる第2の切り欠き部と、前記第1の切り欠き部と前記第2の切り欠き部との間に位置する介在部と、
を有することを特徴とする請求項1~
3のいずれか1つに記載の便座装置。
【請求項5】
前記第2部分は、前記第1部分と離間しており、
前記第1の検知電極は、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、前記第1部分と前記第2部分とを電気的に接続する配線部を有し、
前記第1部分と前記第2部分とが並ぶ方向に直行する方向において、前記配線部の幅は、前記第1部分の幅よりも小さく、前記第2部分の幅よりも小さいことを特徴とする請求項
4記載の便座装置。
【請求項6】
前記ヒータの少なくとも一部は、前記第1の切り欠き部と前記第2の切り欠き部との間に配置されることを特徴とする請求項
4又は5に記載の便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便座装置の便座の内部に、人体の着座を検知する静電センサを設けることが知られている(特許文献1)。静電センサは、電極を有し、人体が電極に近づくことにより形成される静電容量に基づいて、人体を検知することができる。
【0003】
静電センサは、電極が設置されている以外の部分に使用者が着座すると人体を検知できない。そのため、例えば、小さい子供が使用する際や、着座姿勢が悪い人が使用する際、静電センサの設置個所よりも便座の開口部側に着座すると人体を検知できない。この問題を解決する手段として、例えば、便座を温めるヒータの熱を伝達するための金属膜を電極として使用することが考えられる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-008831号公報
【文献】特開平5-196744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような金属膜は便座の内表面の全体に広く設けられているため、検知範囲が広すぎて誤検知が発生しやすいという問題がある。また、金属膜がアースに接続されるような便座では、金属膜を電極として使用できないという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、便座に設けられた静電センサを有する便座装置において、誤検知を抑制しつつ、静電センサの検知範囲を広くすることができる便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、開口部と着座部と内表面とを有する中空の便座と、前記便座の前記内表面の前記着座部側に設けられ前記便座に着座する使用者を検知する第1の検知電極と、前記第1の検知電極から上下方向に離間した位置に設けられ前記第1の検知電極と容量結合する第2の検知電極と、を有する静電センサと、を備え、前記第1の検知電極は、前記第2の検知電極と重なる第1部分と、前記第1部分と前記開口部との間に設けられ、前記第1部分と重ならない第2部分と、を有し、前記第2部分は、前記第1部分と電気的に接続されていることを特徴とする便座装置である。
【0008】
この便座装置によれば、便座の開口部側に第1の検知電極の一部(第2部分)を配置することで、静電センサの検知範囲を広くすることができる。これにより、子供などが使用する際に着座する可能性の高い便座の開口部側においても、着座を検知しやすい。一方で、例えば、便座を温めるヒータの熱を伝達するための金属膜を電極として使用する場合とは異なり、検知範囲が広くなりすぎるのを抑制できるため、誤検知を抑制することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記静電センサは、前記第2の検知電極からの検知信号を出力する回路部と、前記第2の検知電極及び前記回路部を覆うケースと、をさらに有することを特徴とする便座装置である。
【0010】
この便座装置によれば、ケースを設けることで、水滴などによる腐食から回路部及び第2の検知電極を保護できる。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記便座は、前記着座部の内周側から下方に延びる側壁部と、前記着座部と前記側壁部との間に位置する湾曲部と、を有し、前記第2部分は、前記湾曲部の内表面に沿って設けられることを特徴とする便座装置である。
【0012】
この便座装置によれば、子供などの人体が便座の開口部に落ち込んだ際に触れやすい湾曲部の内表面に第1の検知電極の一部(第2部分)を配置することで、より確実に子供などの着座を検知することができる。また、第1の検知電極の第2部分を湾曲部の内表面に沿って配置することで、便座の内表面と第2部分との間に隙間が空くことによる検知精度の低下を抑制することができる。
【0013】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記第1部分の面積は、前記第2の検知電極の面積よりも広いことを特徴とする便座装置である。
【0014】
この便座装置によれば、第1部分の面積が第2の検知電極の面積よりも広いため、第2の検知電極を配置する際に、第1部分から第2の検知電極がずれにくい。これにより、第1部分と第2の検知電極とをより確実に容量結合させることができるため、検知精度を高くできる。
【0015】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記内表面に設けられ、前記便座を内側から加熱するヒータと、前記ヒータの熱を前記便座の前記内表面に伝達する金属膜と、をさらに備え、前記金属膜は、前記第1部分及び前記第2の検知電極と重なる第1の切り欠き部と、前記第2部分と重なる第2の切り欠き部と、前記第1の切り欠き部と前記第2の切り欠き部との間に位置する介在部と、を有することを特徴とする便座装置である。
【0016】
この便座装置によれば、ヒータ及び金属膜により便座を温めることができる。また、第1の切り欠き部と第2の切り欠き部との間に金属膜の一部(介在部)を設けることで、金属膜が大きく切り欠かれることを抑制できる。これにより、使用者が便座の冷たさを感じることを抑制することができる。
【0017】
第6の発明は、第5の発明において、前記第2部分は、前記第1部分と離間しており、前記第1の検知電極は、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、前記第1部分と前記第2部分とを電気的に接続する配線部を有し、前記第1部分と前記第2部分とが並ぶ方向に直行する方向において、前記配線部の幅は、前記第1部分の幅よりも小さく、前記第2部分の幅よりも小さいことを特徴とする便座装置である。
【0018】
この便座装置によれば、配線部と、これと重なる金属膜の介在部と、の容量結合を抑制し、第1の検知電極による着座の検知をより確実に行うことができる。
【0019】
第7の発明は、第5又は第6の発明において、前記ヒータの少なくとも一部は、前記第1の切り欠き部と前記第2の切り欠き部との間に配置されることを特徴とする便座装置である。
【0020】
この便座装置によれば、第1の切り欠き部と第2の切り欠き部との間をヒータで加熱することができるため、使用者が便座の冷たさを感じることをより抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、便座に設けられた静電センサを有する便座装置において、誤検知を抑制しつつ、静電センサの検知範囲を広くすることができる便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る便座装置を例示する平面図である。
【
図2】実施形態に係る便座装置を例示する断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態に係る便座装置を例示する断面図及び平面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、実施形態に係る静電センサの回路構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0024】
図1は、実施形態に係る便座装置を例示する平面図である。
図2は、実施形態に係る便座装置を例示する断面図である。
図2は、
図1に示すA1-A1線断面を表す。
図1は、
図2に示す矢印Aに沿って見た、便座装置100及びその内部の一部を表す。
実施形態に係る便座装置100は、図示を省略した便器(洋式腰掛便器)の上に設けられる便座装置である。
図1に示すように、便座装置100は、使用者が着座する便座10を有する。便座10は、便器に対して開閉可能に軸支される。この例では、便器のボウル上に配置される貫通孔状の開口部11が形成された、いわゆるO型の便座10を示している。便座10は、O型に限ることなく、U字型などでもよい。開口部11は、貫通孔状に限ることなく、切り欠き状でもよい。便座10の材料には、樹脂など非金属材料が用いられる。例えば、便座10の材料には、ポリプロピレンなどの樹脂が用いられる。
【0025】
ここで、本願明細書においては、便座10に座った使用者からみて上方を「上方」とし、便座10に座った使用者からみて下方を「下方」とする。また、便器に対して便座10を軸支する軸支部に背を向けて便座10に座った使用者からみて前方を「前方」とし、後方を「後方」とし、右側を「右側方」とし、左側を「左側方」とする。
【0026】
図2に示すように、便座10は、中空であり、内表面12を有する。便座10は、使用者が着座する着座部13aと、着座部13aの内周側から下方に延びる側壁部13bと、着座部13aと側壁部13bとの間に位置する湾曲部13cと、を有する。便座10の内表面12の上側(着座部13a側)には、ヒータ15と、金属膜17と、静電センサ30(着座センサ)と、が設けられている。なお、ヒータ15及び金属膜17は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0027】
ヒータ15は、便座10の内表面12に設けられ、便座10(着座部13a)を内側から加熱して暖めるものである。ヒータ15は、便座10の開口部11の周りに沿って設けられている。ヒータ15に通電が行われることで、便座10が暖められる。ヒータ15としては、例えば、チュービングヒータや、シーズヒータ、ハロゲンヒータ、カーボンヒータなどが用いられる。ヒータ15は、例えば、アルミニウムや銅などの金属部材で構成される。また、ヒータ15の金属部材の形状には、シート状やワイヤ状、メッシュ状など、種々の形状を採用することができる。
【0028】
金属膜17は、例えば、金属箔(例えばアルミ箔)である。金属膜17は、1枚の金属箔で構成されていてもよいし、複数の金属箔で構成されていてもよい。金属膜17の一部17aは、ヒータ15と内表面12との間に位置し、ヒータ15及び内表面12のそれぞれと接する。金属膜17の別の一部(介在部)17bは、ヒータ15と静電センサ30の一部との間に位置し、ヒータ15及び静電センサ30の一部のそれぞれと接する。これらにより、金属膜17は、ヒータ15の熱を便座10(着座部13a)に伝達する。
【0029】
静電センサ30は、使用者の便座10への着座(及び離座)を検知することができる。静電センサ30は、接着体40によって、内表面12に取り付けられている。言い換えれば、接着体40は、内表面12と静電センサ30との間に設けられ、静電センサ30を内表面12に接着する。静電センサ30の一部は、湾曲部13cの内表面に沿って設けられている。
【0030】
接着体(接着体40並びに後述する接着体41及び42)には、少なくとも表面の一部に接着性又は粘着性を有し、2つのものを繋ぐことができる種々の材料を用いることができる。接着体として、接着剤、粘着剤、両面テープなどを用いることができる。接着体の材料は、例えば、アクリル系などの樹脂であり、金属を含まないことが望ましい。
【0031】
静電センサ30は、例えば、便座10の前方側に設けられる。また、静電センサ30は、例えば、開口部11の右側方側又は左側方側に設けられる。
図1に示すように、この例では、静電センサ30は、便座10の前方側において開口部11の左側方側に設けられている。この位置であれば、大人が着座した場合も、子供が着座した場合も、静電センサ30の上に人体が触れやすい。
【0032】
便座装置100は、機能部を有していてもよい。機能部は、便器の後部の上に配置される。機能部は、人体の局部(例えば「おしり」など)を洗浄する局部洗浄機能や、人体局部を乾燥させる乾燥機能を有する。すなわち、便座装置100は、例えば、衛生洗浄装置であってもよい。
【0033】
機能部は、洗浄水を吐出するノズルや、ノズルへ供給される水を加熱する熱交換器や、温風ヒータなどを有する。また、便座装置100は、ヒータ15、静電センサ30、ノズル、熱交換器、温風ヒータなどの動作を制御する制御部51(制御回路)を有する。例えば、制御部51は、ヒータ15の通電を制御したり、静電センサ30を動作させて、その検知結果を受信したりする。
【0034】
例えば、静電センサ30が使用者の着座を検知している状態で、使用者がリモコンなどを操作して制御部51に信号を送ることにより、使用者は、ノズルから洗浄水を吐出させることができる。なお、実施形態において、機能部(ノズル、熱交換器、温風ヒータなど)は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0035】
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態に係る便座装置を例示する断面図及び平面図である。
図3(a)は、
図2に示した静電センサ30の近傍を拡大して表す断面図である。
図3(b)は、下方から静電センサ30の近傍を見た平面図である。また、
図3(b)では、見易さのため一部の要素を省略している。
【0036】
図3(a)に示すように、静電センサ30は、ケース31(保護ケース)と、基板32と、第1の検知電極33aと、第2の検知電極33bと、シールド電極34と、回路部35と、絶縁フィルム36a及び36bと、モールド材37と、を有する。
【0037】
第1の検知電極33aは、2つの絶縁フィルム36a及び36bの間に位置する。2つの絶縁フィルム36a及び36bに挟まれた第1の検知電極33aは、接着体40を介して内表面12に接着されている。
【0038】
基板32、第2の検知電極33b、シールド電極34、及び回路部35は、ケース31に覆われるようにして、ケース31の内部に収納されている。ケース31は、樹脂等のモールド材37により封止されている。また、ケース31の材料には、例えば樹脂が用いられる。ケース31は、接着体41によって、絶縁フィルム36bに接着されている。
【0039】
第2の検知電極33b、シールド電極34、及び回路部35は、基板32に設けられている。この例では、基板32の上面に第2の検知電極33b及びシールド電極34が接続されており、基板32の下面に回路部35が接続されている。第2の検知電極33b、シールド電極34、及び回路部35が設けられた基板32は、接着体42によって、ケース31の内部に接着されている。
【0040】
第1の検知電極33aは、便座10に着座する使用者を検知するための電極である。第1の検知電極33aと便座10に着座した使用者の人体とが容量結合することで、便座10に着座する使用者を検知することができる。
【0041】
第1の検知電極33aは、第1部分38aと、第2部分38bと、配線部38cと、を有する。第1部分38aは、第2の検知電極33bから上下方向に離間している。つまり、第1部分38aは、下面視において、第2の検知電極33bと重なる。この例では、第1部分38aは、内表面12の着座部13a側と第2の検知電極33bとの間に設けられている。第2部分38bは、第1部分38aと開口部11との間に設けられている。この例では、第2部分38bは、第1部分38aから開口部11に向かう方向に離間した位置に設けられている。なお、第2部分38bは、第1部分38aから連なるように設けられていてもよい。第2部分38bは、下面視において、第1部分38aと重ならない。第1部分38aと第2部分38bとは、電気的に接続されている。この例では、第1部分38aと第2部分38bとの間に設けられた配線部38cにより、第1部分38aと第2部分38bとが電気的に接続されている。配線部38cは、第2部分38bの左側端から第1部分38aの右側端に向かって左側方に延びている。
【0042】
なお、この例では、第1部分38aは、内表面12の着座部13a側と第2の検知電極33bとの間に設けられているが、第2の検知電極33bが内表面12の着座部13a側と第1部分38aとの間に設けられていてもよい。換言すれば、第1部分38aは、第2の検知電極33bから下方向に離間した位置に設けられていてもよい。この場合、例えば、内表面12に設けられた第2部分38bと、第2の検知電極33bよりも下方に設けられた第1部分38aと、が配線部38cによって電気的に接続される。配線部38cは、例えば、第2部分38bの左側端から第1部分38aの右側端に向かって左斜め下方に延びてもよい。あるいは、配線部38cは、例えば、第2部分38bの左側端からケース31の右側端まで左側方に延び、ケース31の右側端から第1部分38aの右側端までケース31の側壁に沿って下方に延びてもよい。
【0043】
絶縁フィルム36a及び36bは、それぞれ、第1の検知電極33aの上方及び下方に設けられている。絶縁フィルム36aは、接着体40と第1の検知電極33aとの間に位置し、第1の検知電極33aの上側(着座部13a側)の面を絶縁している。絶縁フィルム36bは、接着体41と第1の検知電極33aとの間に位置し、第1の検知電極33aの下側(介在部17b側)の面を絶縁している。
【0044】
第1の検知電極33a、絶縁フィルム36a及び36bは、例えば、湾曲可能であることが望ましい。2つの絶縁フィルム36a及び36bに挟まれた第1の検知電極33aは、例えば、フレキシブル基板である。この場合、例えば、フレキシブル基板のカバーレイ及びポリイミドなどの基材層がそれぞれ絶縁フィルム36a及び36bに相当し、これらの間に設けられる銅箔などの金属層が第1の検知電極33aに相当する。第1の検知電極33a、絶縁フィルム36a及び36bが湾曲可能であれば、例えば、便座10の湾曲部13cの内表面に沿って第1の検知電極33aの第2部分38bを設けることができる。なお、第1の検知電極33aは、これに限らず、導電性を有する金属箔などであればよい。また、絶縁フィルム36a及び36bは、これに限らず、樹脂などの絶縁可能な材料であればよい。
【0045】
図3(b)に示すように、第1部分38a及び第2部分38bは、下面視において、略矩形状(例えば、略正方形状)である。配線部38cは、下面視において、第1部分38aから開口部11に向かう方向に長い略長方形状である。第1部分38aと第2部分38bとが並ぶ方向に直行する方向において、配線部38cの幅W3は、第1部分38aの幅W1よりも小さい。配線部38cの幅W3は、第2部分38bの幅W2よりも小さい。また、この例では、第1部分38aの幅W1は、第2部分38bの幅W2よりも大きい。また、第1部分38aの面積は、第2部分38bの面積よりも広い。また、第1部分38aの面積は、第2の検知電極33bの面積よりも広い。
【0046】
第2の検知電極33bは、第1の検知電極33aと容量結合し、第1の検知電極33aの第1部分38aから検知信号を受け取るための電極である。第2の検知電極33bは、第1の検知電極33aの第1部分38aから上下方向に離間した位置に設けられる。この例では、第2の検知電極33bは、第1の検知電極33aの第1部分38aから下方向に離間した位置に設けられている。第2の検知電極33bは、回路部35と電気的に接続されており、第1の検知電極33aの第1部分38aから受け取った検知信号を回路部35に伝える。
【0047】
シールド電極34は、
図3(b)に示すように、第2の検知電極33bの周囲を囲む電極である。シールド電極34によって、第1の切り欠き部18aを小さくした場合でも、静電センサ30の検知精度が低下することを抑制することができる。
【0048】
回路部35は、定電流回路やスイッチング回路等を含み、第2の検知電極33bと電気的に接続されている。回路部35は、第2の検知電極33bの電位の変化などに伴い、使用者の着座や離座を判定する。回路部35は、制御部51と電気的に接続されており、制御部51へ検知結果を送信(出力)する。
【0049】
また、
図3(b)に示すように、金属膜17は、静電センサ30の近傍に、第1の切り欠き部18aと、第2の切り欠き部18bと、を有する。第1の切り欠き部18aは、下面視において、第1部分38a及び第2の検知電極33bと重なる。換言すれば、第1の切り欠き部18aは、第1部分38a及び第2の検知電極33bが設けられる位置において金属膜17が切り欠かれた部分である。第2の切り欠き部18bは、下面視において、第2部分38bと重なる。換言すれば、第2の切り欠き部18bは、第2部分38bが設けられる位置において金属膜17が切り欠かれた部分である。
【0050】
なお、本願明細書において、「切り欠き部」とは、金属膜17が形成されていない部分をいう。例えば、第1の切り欠き部18a及び第2の切り欠き部18bは、金属膜17に設けられた開口(孔)、又は切れ込みである。第1の切り欠き部18a及び第2の切り欠き部18bの形成方法は、任意であり、必ずしも金属膜17を切り欠く(切り取る)ことによって形成されなくてもよい。
【0051】
第1の切り欠き部18aは、第2の切り欠き部18bと離間している。すなわち、第1の切り欠き部18aと第2の切り欠き部18bとの間には、介在部17bが設けられている。介在部17bは、金属膜17の一部である。介在部17bは、第1の検知電極33aの配線部38cよりも下に位置する。介在部17bは、下面視において、配線部38cと重なる。また、この例では、介在部17bの下にヒータ15が設けられている。換言すれば、第1の切り欠き部18aと第2の切り欠き部18bとの間に、ヒータ15の少なくとも一部が配置されている。これらにより、第1の切り欠き部18aと第2の切り欠き部18bとの間を加熱することができる。
【0052】
第1の切り欠き部18a及び第2の切り欠き部18bの形状は、任意であるが、例えば、それぞれ第1の検知電極33aの第1部分38a及び第2部分38bに合わせた形状が望ましい。この例では、矩形の第1部分38a及び第2部分38bに合わせて、第1の切り欠き部18a及び第2の切り欠き部18bの形状は、矩形である。これにより、第1の切り欠き部18a及び第2の切り欠き部18bが大きくなることが抑制される。
【0053】
図4(a)及び
図4(b)は、実施形態に係る静電センサの回路構成を例示する図である。
図4(a)及び
図4(b)を参照して、静電センサ30の回路構成の一例を説明する。
図4(a)は、使用者が便座10に座っていない場合を示し、
図4(b)は、使用者が便座10に座っている場合を示す。
【0054】
静電センサ30は、例えば、定電流源35aと、基準コンデンサ35bと、を有する。基準コンデンサ35bの一端は、定電流源35aに接続され、基準コンデンサ35bの他端は、接地電位に接続されている。第2の検知電極33bは、基準コンデンサ35bと並列に、定電流源35aに接続されている。第1の検知電極33aの第1部分38aは、第2の検知電極33bと容量結合する。第1の検知電極33aの第1部分38aと第2部分38bとは、配線部38cを介して電気的に接続されている。
【0055】
使用者が便座10に座っていない場合には、
図4(a)に示すように、第1の検知電極33aの第2部分38bは、例えばオープン状態である。
【0056】
使用者が便座10に座ると、静電センサ30の直上において、使用者の例えば太腿などが着座部13aに接する。例えば、第1の検知電極33aの第2部分38bで使用者の着座を検知した場合は、
図4(b)に示すように、人体(使用者)と第1の検知電極33aの第2部分38bとの間にコンデンサ61が形成される。コンデンサ61の人体側は、コンデンサ62(人体の容量)、コンデンサ63(使用者の履物の容量)を介して、接地電位に接続される。また、コンデンサ61の人体側は、コンデンサ64(便座や便器の容量)を介して、接地電位に接続される。コンデンサ64は、コンデンサ62、63と並列である。一方で、第2の検知電極33bと第1の検知電極33aの第1部分38aとは容量結合し、これらの間にコンデンサ60が形成される。なお、シールド電極34及び金属膜17は、それぞれ、接地電位に接続される。なお、金属膜17は、設置電位に接続されていなくてもよい。
【0057】
静電センサ30は、第1の検知電極33aの第1部分38a及び第2部分38bの両方で使用者の着座を検知することもできる。この場合、人体(使用者)と第1の検知電極33aの第2部分38bとの間にコンデンサが形成されるとともに、人体(使用者)と第1の検知電極33aの第1部分38aとの間にコンデンサが形成される。
【0058】
定電流源35aは電流を流し、基準コンデンサ35b及び第2の検知電極33b(コンデンサ60)に電荷を溜める。このとき、基準コンデンサ35bに生じる電圧は、使用者の着座の有無によって変化する。基準コンデンサ35bの電圧を測定することにより、使用者の着座や離座を検知することができる。
【0059】
このように、静電センサ30は、便座10に着座する使用者と第1の検知電極33aの第1部分38a及び/又は第2部分38bとの間に形成される静電容量を利用し、第2の検知電極33bに溜まる電荷の量に基づいて使用者の着座を検知する。
【0060】
以上、説明したように、実施形態においては、便座10の開口部11側に第1の検知電極33aの一部(第2部分38b)を配置する。これにより、第1の検知電極33aの第1部分38aだけでなく、第2部分38bにおいても、着座を検知することが可能となる。すなわち、静電センサ30の検知範囲を広くすることができる。これにより、子供などが使用する際に着座する可能性の高い便座10の開口部11側においても、着座を検知しやすい。一方で、例えば、便座10を温めるヒータ15の熱を伝達するための金属膜17を電極として使用する場合とは異なり、検知範囲が広くなりすぎることを抑制できるため、誤検知を抑制することができる。
【0061】
また、実施形態においては、静電センサ30に第2の検知電極33b及び回路部35を覆うケース31が設けられている。これにより、水滴などによる腐食から回路部35及び第2の検知電極33bを保護することができる。
【0062】
また、実施形態においては、子供などの人体が便座10の開口部11に落ち込んだ際に触れやすい便座10の湾曲部13cに第1の検知電極33aの一部(第2部分38b)を配置する。これにより、より確実に子供などの着座を検知することができる。また、実施形態においては、第1の検知電極33aの第2部分38bを湾曲可能な材料で構成し、湾曲部13cの内表面に沿って第2部分38bを配置する。これにより、湾曲部13cの内表面と第2部分38bとの間に隙間が空くことによる検知精度の低下を抑制することができる。
【0063】
また、静電センサ30の第2の検知電極33bを取り付ける際、第1の検知電極33aの第1部分38aを取り付けた位置から第2の検知電極33bがずれると、容量結合が起こりにくく、検知精度が低くなる恐れがある。これに対し、実施形態においては、第1部分38aの面積を第2の検知電極33bの面積よりも広くしている。これにより、第2の検知電極33bを配置する際に、第1の検知電極33aの第1部分38aを取り付けた位置から第2の検知電極33bがずれにくい。従って、第1の検知電極33aの第1部分38aと第2の検知電極33bとをより確実に容量結合させることができ、検知精度を高くすることができる。
【0064】
また、実施形態においては、便座10の内表面12にヒータ15及び金属膜17を設けることで、便座10を温めることができる。一方、第1の検知電極33aと内表面12との間に金属膜17があると、検知できない。そこで、実施形態においては、金属膜17において、第1の検知電極33aの第1部分38aに対応する位置に第1の切り欠き部18aを設け、第1の検知電極33aの第2部分38bに対応する位置に第2の切り欠き部18bを設ける。これにより、金属膜17による検知精度の低下を抑制し、第1の検知電極33aによる着座の検知をより確実に行うことができる。
【0065】
また、例えば、第1の切り欠き部18aと第2の切り欠き部18bとを繋げて設けた場合、ヒータ15の熱を伝える金属膜17が大きく切り欠かれることで、便座10が冷たくなりやすい。これに対し、実施形態においては、第1の切り欠き部18aと第2の切り欠き部18bとの間に金属膜17の一部(介在部)17bを配置する。これにより、金属膜17が大きく切り欠かれることを抑制し、便座10が冷たくなることを抑制することができる。
【0066】
一方で、介在部17bは、第1の検知電極33aの配線部38cの下に位置するため、配線部38cと介在部17bとが容量結合し、検知精度が低下する恐れがある。これに対し、実施形態においては、配線部38cの開口部11に沿う方向の幅W3を第1部分38a及び第2部分38bの開口部11に沿う方向の幅W1及び幅W2よりも小さくする。これにより、配線部38cと介在部17bとの容量結合を抑制し、第1の検知電極33aによる着座の検知をより確実に行うことができる。
【0067】
また、便座10のうち、第1の切り欠き部18a及び第2の切り欠き部18bが設けられた部分では、金属膜17がないためにヒータ15からの熱が伝わりにくい。従って、その部分の温度は、金属膜17で覆われた部分の温度よりも低くなりやすい。また、使用者の着座を精度よく検知するために、静電センサ30は、使用者の肌(太ももなど)が触れやすい位置に配置される。このため、第1の切り欠き部18a及び第2の切り欠き部18bが設けられた部分では、使用者が便座10の冷たさを感じやすい。これに対し、実施形態においては、第1の切り欠き部18aと第2の切り欠き部18bとの間にヒータ15を配置する。これにより、第1の切り欠き部18aと第2の切り欠き部18bとの間をヒータ15で加熱することができるため、使用者が冷たさを感じることをより抑制することができる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座装置が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0069】
10 便座、 11 開口部、 12 内表面、 13a 着座部、 13b 側壁部、 13c 湾曲部、 15 ヒータ、 17 金属膜、 17a 一部、 17b 介在部、 18a、18b 第1、第2の切り欠き部、 30 静電センサ、 31 ケース、 32 基板、 33a、33b 第1、第2の検知電極、 34 シールド電極、 35 回路部、 35a 定電流源、 35b 基準コンデンサ、 36a、36b 絶縁フィルム、 37 モールド材、 38a、38b 第1、第2部分、 38c 配線部、 40~42 接着体、 51 制御部、 60~64 コンデンサ、 100 便座装置、 W1~W3 幅