(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 69/00 20060101AFI20220609BHJP
A01D 69/03 20060101ALI20220609BHJP
A01D 69/06 20060101ALI20220609BHJP
A01D 69/08 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A01D69/00 302F
A01D69/03
A01D69/06
A01D69/08 Z
(21)【出願番号】P 2020162805
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-021963(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 69/00
A01D 69/03
A01D 69/06
A01D 69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方に脱穀装置(4)を設けたコンバインにおいて、
前記脱穀装置(4)の扱胴軸の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)以下の低トルクである場合には、前記エンジンから出力される回転速度は、該回転速度を増減速する無段変速装置(27)と、該無段変速装置(27)から出力される回転速度を増減速するトランスミッション(28)を介して、前記走行装置(2)と刈取装置(3)に伝動され、
前記脱穀装置(4)の扱胴軸の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)超の高トルクである場合には、前記エンジンから出力される回転速度は、前記無段変速装置(27)とトランスミッション(28)を介して、前記走行装置(2)に伝動され、前記無段変速装置(27)の入力軸(31)に支持された第1プーリ(60)と、前記トランスミッション(28)
の回転軸(55)に支持された第2プーリ(61)に巻回されたベルト(62)を介して、前記刈取装置(3)に伝動され
、
前記トランスミッション(28)の出力軸(35)と回転軸(55)の間にクラッチ(54)を設け、
前記脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)以下の低トルクである場合には、前記クラッチ(54)は接続されて、前記ベルト(62)の後方に設けたテンションアーム(63)をベルト(62)から後退させてベルト(62)の張力は弛緩され、
前記脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)超の高トルクである場合には、前記クラッチ(54)の接続は解除されて、前記テンションアーム(63)をベルト(62)に向かって前進させてベルト(62)の張力は緊張され、
前記クラッチ(54)の接続が解除された場合に、前記脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が、前記第1設定トルク(T1)と、前記第1設定トルク(T1)よりも低トルクの第2設定トルク(T2)の間のトルクの場合には、前記クラッチ(54)の接続の解除と、前記ベルト(62)の張力の緊張が維持される構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記第1設定トルク(T1)と第2設定トルク(T2)は、圃場に植立する穀稈の種対に応じて設定することができる請求項
1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が高トルクである場合に、前記刈取装置(3)内に脱穀装置(4)に搬送する穀稈が有る場合には、前記クラッチ(54)の接続は解除されて、前記ベルト(62)の張力の緊張が維持される請求項
1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記クラッチ(54)をワンウエイクラッチとした請求項
1~3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置の走行速度と刈取装置の駆動速度の増減速を行う無段変速装置を備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインにおいて、走行装置の走行速度が低速域では刈取装置を一定の駆動速度で駆動し、走行装置の走行速度が高速域では走行装置の走行速度に刈取装置の駆動速度を追従させて作業性を向上させる技術が知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、無段変速装置に要求される最大出力が大きくなり大型の無段変速装置を搭載する必要が有り、無段変速装置がエンジンの周辺の空間を過度に占有する恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、高い作業効率を維持しつつ、無段変速装置がエンジンの周辺の空間を占有する領域を抑制することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジンを搭載した機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方に脱穀装置(4)を設けたコンバインにおいて、
前記脱穀装置(4)の扱胴軸の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)以下の低トルクである場合には、前記エンジンから出力される回転速度は、該回転速度を増減速する無段変速装置(27)と、該無段変速装置(27)から出力される回転速度を増減速するトランスミッション(28)を介して、前記走行装置(2)と刈取装置(3)に伝動され、前記脱穀装置(4)の扱胴軸の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)超の高トルクである場合には、前記エンジンから出力される回転速度は、前記無段変速装置(27)とトランスミッション(28)を介して、前記走行装置(2)に伝動され、前記無段変速装置(27)の入力軸(31)に支持された第1プーリ(60)と、前記トランスミッション(28)の回転軸(55)に支持された第2プーリ(61)に巻回されたベルト(62)を介して、前記刈取装置(3)に伝動され、前記トランスミッション(28)の出力軸(35)と回転軸(55)の間にクラッチ(54)を設け、前記脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)以下の低トルクである場合には、前記クラッチ(54)は接続されて、前記ベルト(62)の後方に設けたテンションアーム(63)をベルト(62)から後退させてベルト(62)の張力は弛緩され、前記脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)超の高トルクである場合には、前記クラッチ(54)の接続は解除されて、前記テンションアーム(63)をベルト(62)に向かって前進させてベルト(62)の張力は緊張され、前記クラッチ(54)の接続が解除された場合に、前記脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が、前記第1設定トルク(T1)と、前記第1設定トルク(T1)よりも低トルクの第2設定トルク(T2)の間のトルクの場合には、前記クラッチ(54)の接続の解除と、前記ベルト(62)の張力の緊張が維持される構成としたことを特徴とするコンバインである。
【0007】
【0008】
【0009】
請求項2記載の発明は、前記第1設定トルク(T1)と第2設定トルク(T2)は、圃場に植立する穀稈の種対に応じて設定することができる請求項1記載のコンバインである。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が高トルクである場合に、前記刈取装置(3)内に脱穀装置(4)に搬送する穀稈が有る場合には、前記クラッチ(54)の接続は解除されて、前記ベルト(62)の張力の緊張が維持される請求項1又は2記載のコンバインである。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記クラッチ(54)をワンウエイクラッチとした請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、脱穀装置(4)の扱胴軸の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)以下の低トルクである場合には、エンジンから出力される回転速度は、回転速度を増減速する無段変速装置(27)と、無段変速装置(27)から出力される回転速度を増減速するトランスミッション(28)を介して、走行装置(2)と刈取装置(3)に伝動され、脱穀装置(4)の扱胴軸の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)超の高トルクである場合には、エンジンから出力される回転速度は、無段変速装置(27)とトランスミッション(28)を介して、走行装置(2)に伝動され、無段変速装置(27)の入力軸(31)に支持された第1プーリ(60)と、トランスミッション(28)の回転軸(55)に支持された第2プーリ(61)に巻回されたベルト(62)を介して、刈取装置(3)に伝動され、トランスミッション(28)の出力軸(35)と回転軸(55)の間にクラッチ(54)を設け、脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)以下の低トルクである場合には、クラッチ(54)は接続されて、ベルト(62)の後方に設けたテンションアーム(63)をベルト(62)から後退させてベルト(62)の張力は弛緩され、脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が第1設定トルク(T1)超の高トルクである場合には、クラッチ(54)の接続は解除されて、テンションアーム(63)をベルト(62)に向かって前進させてベルト(62)の張力は緊張され、クラッチ(54)の接続が解除された場合に、脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が、第1設定トルク(T1)と、第1設定トルク(T1)よりも低トルクの第2設定トルク(T2)の間のトルクの場合には、クラッチ(54)の接続の解除と、ベルト(62)の張力の緊張が維持される構成としたので、無段変速装置(27)に要求される最大出力を低減して、小型の無段変速装置(27)に代替することができ、無段変速装置(27)とトランスミッション(28)に占有されるエンジンの周辺の空間を抑制することができる。また、走行装置(2)の走行速度(V)が低速である場合には、走行装置(2)の走行速度(V)に刈取装置(3)の駆動速度を追従させて穀稈を効率良く刈取って収穫することができる。
【0013】
また、エンジンの出力回転を刈取装置(3)に伝達する構成の切替えを簡易に形成することができる。
【0014】
さらに、クラッチ(54)とベルト(62)の状態を頻繁に変更するのを防止してクラッチ(54)とベルト(62)の耐久性を向上させることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、第1設定トルク(T1)と第2設定トルク(T2)は、圃場に植立する穀稈の種対に応じて設定することができるので、圃場に植立する穀稈の種類に応じて刈取装置(3)の伝動方法の切替えを調整することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、脱穀装置(4)の負荷トルク(T)が高トルクである場合に、刈取装置(3)内に脱穀装置(4)に搬送する穀稈が有る場合には、クラッチ(54)の接続は解除されて、ベルト(62)の張力の緊張が維持されるので、刈取装置(3)から脱穀装置(4)に搬送されてくる穀稈を迅速に脱穀処理することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、クラッチ(54)をワンウエイクラッチとしたので、クラッチ(54)の構成を簡易に形成することができる。また、ベルト(62)を介して回転軸(55)に伝動されたエンジンの回転速度は出力軸(35)に伝動されないので誤作動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~3に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取装置3が設けられている。また、刈取装置3の後方左側部に刈取装置3で収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側部に操縦者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0020】
操縦部5の下側には、エンジンを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には、脱穀装置4で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7に連結された排出オーガ(図示省略)によって外部に排出される。
【0021】
操縦部5の操縦席の前方には、フロントパネル10が設けられ、操縦席の左方には、サイドパネル11が設けられている。
【0022】
フロントパネル10の左部には、走行装置2の走行速度V等の表示と後述する走行装置2の設定速度V1、V2や脱穀装置4の設定トルクT1、T2等の入力を行うタッチパネル式のモニタ21が設けられ、右部には、走行装置2の旋回や刈取装置3の昇降を操作する操作レバー22が設けられている。
【0023】
サイドパネル11の前部には、エンジンから出力された回転速度の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置27を操作する主変速レバー25が設けられ、主変速レバー25の後側には、無段変速装置27から出力された回転速度の増減速を行うトランスミッション28を操作する副変速レバー26が設けられている。また、主変速レバー25の操作角度は、主変速レバー25の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ25Aで測定され、副変速レバー26の操作角樋は、副変速レバー26の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ26Aで測定されている。なお、角度センサ25A,26Aに替えてリミットセンサを使用することもできる。
【0024】
主変速レバー25を中立姿勢にした場合には、無段変速装置27から出力される回転速度はゼロになる。主変速レバー25を中立姿勢から前側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置27から出力される回転方向はエンジンから伝動された回転方向と同じ正回転となり、前側傾斜姿勢の傾斜角度が大きくなると無段変速装置27から出力される回転速度が速くなり、前側傾斜姿勢の傾斜角度が小さくなると無段変速装置27から出力される回転速度が遅くなる。主変速レバー25を中立姿勢から後側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置27から出力される回転方向はエンジンから伝動された回転方向と逆さの逆回転となり、後側傾斜姿勢の傾斜角度が大きくなると無段変速装置27から出力される回転速度が速くなり、後側傾斜姿勢の傾斜角度が小さくなると無段変速装置27から出力される回転速度が遅くなる。
【0025】
副変速レバー26を低速位置に傾斜させた場合には、無段変速装置27から伝動された回転速度はトランスミッション28で減速されて走行装置2や刈取装置3に伝動され、中速位置に傾斜させた場合には、無段変速装置27から伝動された回転速度は増減速されず走行装置2や刈取装置3に伝動され、高速位置に傾斜させた場合には、無段変速装置27から伝動された回転速度は増速されて走行装置2や刈取装置3に伝動される。
【0026】
図4に示すように、エンジンから出力された回転速度は、プーリ30を介して無段変速装置27の入力軸31に伝動される。入力軸31に伝動された回転速度は、無段変速装置27内で増減速等された後に、出力軸32に出力される。
【0027】
出力軸32に出力された回転速度は、出力軸32の固定されたギヤ33を介してギヤ34に伝動される。なお、ギヤ34は、出力軸35に回転自在に固定されている。ギヤ34に伝動された回転速度は、ギヤ36を介してカウンタ軸37に伝動される。
【0028】
カウンタ軸37に伝動された回転速度は、ギヤ40を介してギヤ41に伝動される。ギヤ41に伝動された回転速度は、ギヤ42を介して出力軸43に伝動される。出力軸43に伝送された回転速度は、走行装置2に伝動されて走行装置2を駆動する。
【0029】
カウンタ軸37に伝動された回転速度は、カウンタ軸37に固定されたギヤ50又はギヤ51を介してギヤ52に連動され、ギヤ52に伝動された回転速度は、キー(図示省略)を介して出力軸35に伝動される。
【0030】
ギヤ52は、ピッチ径が異なるギヤを併設して形成されている。本実施形態では、ギヤ52は、ギヤ50に係合するギヤ52Aと、ギヤ51に係合するギヤ52Aよりもピッチ径が大きいギヤ52Bが併設されている。また、ギヤ52は、副変速レバー26で操作されるシフタ53を介して出力軸35上を左右方向に移動する。これにより、トランスミッション28の左右方向の長さを抑制することができ、無段変速装置27とトランスミッション28からなる伝動装置を小型化することができる。
【0031】
出力軸35に伝動された回転速度は、クラッチ54を介して回転軸55に伝動される。回転軸55に伝動された回転速度は、回転軸55に固定されたプーリ56、ベルト(図示省略)を介して刈取装置3に伝動されて刈取装置3を駆動する。これにより、出力軸35に伝動された回転速度を回転軸55に簡易な構造で伝動、又は、伝動を遮断することができる。なお、クラッチ54としては、出力軸35に伝動された回転速度は回転軸55に伝動可能であるが、回転軸55に伝動された回転速度は出力軸35に伝動することができないワンウエイクラッチを使用するのが好ましい。
【0032】
プーリ30の左部には、プーリ(請求項の「第1プーリ」)60が設けられ、回転軸55におけるプーリ56の右側にはプーリ(請求項の「第2プーリ」)61が設けられている。プーリ60とプーリ61には、ベルト62が巻回され、ベルト62の後方にはベルト62の張力の緊張と弛緩を行うテンションアーム63が設けられている。なお、本実施形態では、プーリ60とプーリ61の径を同一径に形成しているが、プーリ60とプーリ61による増速比が、無段変速装置とトランスミッションからなる伝動装置の最大増速比よりも大きくなるように生成するのが好ましい。
【0033】
脱穀装置4の扱胴軸の負荷トルクTが設定された設定トルク(請求項の「第1設定トルク」)T1以下の低トルクの場合には、テンションアーム63はベルト62から後退してベルト62の張力は弛緩して、エンジンから出力された回転速度は無段変速装置27とトランスミッション28を介して刈取装置3に伝動される。また、この場合には、クラッチ54は接続され、出力軸35の回転速度は、クラッチ54を介して、回転軸55に伝動される。これにより、刈取装置3を走行装置2と同期させて駆動することができ。圃場に植立している穀稈を効率良く刈取って収穫することができる。
【0034】
一方、脱穀装置4の扱胴軸の負荷トルクTが設定された設定トルク(請求項の「第1設定トルク」)T1超の高トルクの場合には、テンションアーム63はベルト62に向かった前進してベルト62の張力は緊張して、エンジンから出力された回転速度は無段変速装置27とトランスミッション28を介することなく、プーリ60と、ベルト62と、プーリ61を介して刈取装置3に伝動される。また、この場合には、クラッチ54の接続は解除される。これにより、無段変速装置27に要求される最大出力を低減して、小容量の無段変速装置27に代替することができ、無段変速装置27とトランスミッション28からなる伝動装置を小型化することができる。
【0035】
<コントローラの接続図>
図5に示すように、コンバインのコントローラ15は、CPU等からなる処理部16と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部17から形成されている。
【0036】
処理部16は、走行装置2の走行速度Vが設定された設定速度V1や、脱穀装置4の扱胴軸の負荷トルクTが設定された設定トルクT1と比較して、クラッチ54の接続又は接続解除と、テンションアーム63をベルト62に対して前進又は後退させるか判断する。
【0037】
記憶部17には、フロントパネル10に設けられたモニタ20を介して入力された設定速度V1と、設定速度V1よりも低速な設定速度V2、設定トルクT1と、設定トルクT1よりも小さな設定トルク(請求項の「第2設定トルク」)T2が保存されている。
【0038】
コントローラ15の入力側には、走行装置2の走行速度Vを測定する速度センサ2Aと、刈取装置3内の刈取穀稈の有無を測定する穀稈センサ3Aと、脱穀装置4の扱胴軸の負荷トルクTを測定する負荷センサ4Aと、脱穀装置4の揺動棚上の穀粒を層厚を測定する層厚センサ4Bと、設定速度V1,V2や設定トルクT1,T2等を入力するモニタ20と、主変速レバー25の傾斜角度を測定する角度センサ25Aと、主変速レバー25に設けられた伝動方法の切替えを行う切替スイッチ25Bと、副変速レバー26の傾斜角度を測定する角度センサ26Aが所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0039】
コントローラ15の出力側には、出力軸35と回転軸55の接続又は接続の解除を行うクラッチ54と、ベルト62の張力の緊張と弛緩を行うテンションアーム63が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0040】
<刈取装置にエンジンの回転速度を伝動する第1伝動方法>
図6に示すように、ステップS1で、コントローラ15の処理部16は、速度センサ2Aから入力される走行装置2の走行速度Vを読込んでステップS2に進む。
【0041】
ステップS2で、処理部16は、走行速度Vと設定速度V1を比較して、走行速度Vが設定速度V1以下で低速の場合にはステップS3に進み、走行速度Vが設定速度V1超で高速の場合にはステップS6に進む。
【0042】
なお、本実施形態においては、走行速度Vと設定速度V1を比較しているが、角度センサ25Aから入力される主変速レバー25の傾斜角度と予め設定される設定角度を比較することもできる。
【0043】
ステップS3では、処理部16は、ベルト62からテンションアーム63を後退させてベルト62の張力を弛緩させて、ステップS4に進む。これにより、エンジンの回転速度は、入力軸31を介して無段変速装置27に伝動され、走行装置2の走行速度Vに同期させて刈取装置3の駆動速度を増減速することができ、圃場に植立する穀稈を効率良く刈取ることができる。
【0044】
ステップS4では、処理部16は、クラッチ54を接続して、ステップS5に進む。これにより、トランスミッション28の出力軸35に伝動されたエンジンの回転速度を回転軸55に伝動して刈取装置3を駆動することができる。
【0045】
ステップS5では、処理部16は、刈取装置3の駆動速度を高速に切替える切替スイッチ25Bが入力されているか否か判断し、切替スイッチ25Bが入力されていると判断した場合にはステップS6に進み、切替スイッチ25Bが入力されていないと判断した場合にはステップS1に戻る。
【0046】
ステップS6では、処理部16は、ベルト62に向かってテンションアーム63を前進させてベルト62の張力を緊張させて、ステップS7に進む。これにより、エンジンの回転速度は、ベルト62を介して回転軸55に伝動されて刈取装置3を駆動することができるので、無段変速装置27に要求される最大出力を低減して小容量の無段変速装置27に代替することができる。
【0047】
ステップS7では、処理部16は、クラッチ54の接続を解除して、ステップS8に進む。これにより、回転軸55に伝動されたエンジンの回転速度が出力軸35に伝動されるのを防止して、トランスミッション28の破損を防止することができる。
【0048】
ステップS8では、処理部16は、速度センサ2Aから入力される走行装置2の走行速度Vを読込んでステップS9に進む。
【0049】
ステップS9では、処理部16は、走行速度Vと設定速度V2を比較して、走行速度Vが設定速度V2以下で低速の場合にはステップS10に進み、走行速度Vが設定速度V2超で高速の場合にはステップS6に戻る。これにより、クラッチ54とベルト62の状態を頻繁に変更するのを防止してクラッチ54とベルト62の耐久性を向上させることができる。なお、設定速度V1,V2は、圃場に植立する穀稈の種類に応じて変更することができる。これにより、圃場に植立する穀稈の種類に応じて刈取装置3の伝動方法の切替えを調整することができる。
【0050】
ステップS10では、処理部16は、刈取装置3内の穀稈を測定する穀稈センサ3Aの入力状況を判断し、刈取装置3内に脱穀装置4に搬送されてくる穀稈がなく穀稈センサ3Aの入力値がOFFの場合にはステップS1に戻り、刈取装置3内に脱穀装置4に搬送されてくる穀稈があり穀稈センサ3Aの入力値がONの場合にはステップS6に戻る。これにより、脱穀装置4に搬送されてくる穀稈を迅速に脱穀処理することができる。
【0051】
<刈取装置にエンジンの回転速度を伝動する第2伝動方法>
図7に示すように、ステップS1で、コントローラ15の処理部16は、負荷センサ4Aから入力される脱穀装置4の扱胴軸の負荷トルクTを読込んでステップS2に進む。
【0052】
ステップS2で、処理部16は、負荷トルクTと設定トルクT1を比較して、負荷トルクTが設定トルクT1以下で低トルクの場合にはステップS3に進み、負荷トルクTが設定トルクT1超で高トルクの場合にはステップS6に進む。
【0053】
なお、本実施形態においては、負荷トルクTと設定トルクT1を比較しているが、層厚センサ4Bから入力される揺動棚上を流下する穀粒の層厚と予め設定される設定層厚を比較することもできる。
【0054】
ステップS3では、処理部16は、ベルト62からテンションアーム63を後退させてベルト62の張力を弛緩させて、ステップS4に進む。これにより、エンジンの回転速度は、入力軸31を介して無段変速装置27に伝動され、走行装置2の走行速度Vに同期させて刈取装置3の駆動速度を増減速することができ、圃場に植立する穀稈を効率良く刈取ることができる。
【0055】
ステップS4では、処理部16は、クラッチ54を接続して、ステップS5に進む。これにより、トランスミッション28の出力軸35に伝動されたエンジンの回転速度を回転軸55に伝動して刈取装置3を駆動することができる。
【0056】
ステップS5では、処理部16は、刈取装置3の駆動速度を高速に切替える切替スイッチ25Bが入力されているか否か判断し、切替スイッチ25Bが入力されていないと判断した場合にはステップS1に戻り、切替スイッチ25Bが入力されていると判断した場合にはステップS6に進む。
【0057】
ステップS6では、処理部16は、ベルト62に向かってテンションアーム63を前進させてベルト62の張力を緊張させて、ステップS7に進む。これにより、エンジンの回転速度は、ベルト62を介して回転軸55に伝動されて刈取装置3を駆動することができるので、無段変速装置27に要求される最大出力を低減して小容量の無段変速装置27に代替することができる。
【0058】
ステップS7では、処理部16は、クラッチ54の接続を解除して、ステップS8に進む。これにより、回転軸55に伝動されたエンジンの回転速度が出力軸35に伝動されるのを防止して、トランスミッション28の破損を防止することができる。
【0059】
ステップS8では、処理部16は、負荷センサ4Aから入力される脱穀装置4の扱胴軸の負荷トルクTを読込んでステップS9に進む。
【0060】
ステップS9では、処理部16は、負荷トルクTと設定トルクT2を比較して、負荷トルクTが設定トルクT2以下で低トルクの場合にはステップS10に進み、負荷トルクTが設定トルクT2超で高トルクの場合にはステップS6に戻る。なお、設定トルクT1,T2は、圃場に植立する穀稈の種類に応じて変更することができる。これにより、圃場に植立する穀稈の種類に応じて刈取装置3の伝動方法の切替を調整することができる。
【0061】
ステップS10では、処理部16は、刈取装置3内の穀稈を測定する穀稈センサ3Aの入力状況を判断し、刈取装置3内に脱穀装置4に搬送されてくる穀稈がなく穀稈センサ3Aの入力値がOFFの場合にはステップS1に戻り、刈取装置3内に脱穀装置4に搬送されてくる穀稈があり穀稈センサ3Aの入力値がONの場合にはステップS6に戻る。
【符号の説明】
【0062】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
4 脱穀装置
27 無段変速装置
28 トランスミッション
31 入力軸
35 出力軸
54 クラッチ
55 回転軸
60 プーリ(第1プーリ)
61 プーリ(第2プーリ)
62 ベルト
63 テンションアーム
T 負荷トルク
T1 設定トルク(第1設定トルク)
T2 設定トルク(第2設定トルク)