(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法及び乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
B66B31/02 A
(21)【出願番号】P 2021015488
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】本田 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】大恵 淳
(72)【発明者】
【氏名】富永 保介
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-122119(JP,A)
【文献】特開2019-42704(JP,A)
【文献】特開平10-129972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部の内部に紫外線照射式のハンドレール除菌装置を備える乗客コンベアの、ハンドレール除菌装置の点検方法であって、
紫外線検知手段を遮蔽部の外部から内部に送り込み、ハンドレール除菌装置の紫外線出射領域に配置する配置工程と、
ハンドレール除菌装置を所定時間ONにするON工程と、
紫外線検知手段を遮蔽部から排出する排出工程と、
紫外線検知手段における紫外線検知状況を確認する確認工程とを備える
乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法。
【請求項2】
ハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間に対して遮蔽部の外部からアクセス可能となる開口が遮蔽部に形成される乗客コンベアの、ハンドレール除菌装置の点検方法であって、
配置工程は、開口を介して紫外線検知手段をハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間に送り込み、ハンドレール除菌装置の紫外線出射領域に配置する工程であり、
排出工程は、開口を介して紫外線検知手段を遮蔽部から排出する工程である
請求項1に記載の乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法。
【請求項3】
開口が遮蔽部の傾斜部の内面であって踏段が通過する領域に形成される乗客コンベアの、ハンドレール除菌装置の点検方法であって、
配置工程に先立ち、隣り合う踏段間に開口が位置するように踏段の位置を調整する調整工程を備える
請求項2に記載の乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法。
【請求項4】
配置工程に先立ち、紫外線検知手段をハンドレールの遮蔽部から出た部分に取り付ける取付工程を備え、
配置工程は、ハンドレールを循環移動して紫外線検知手段をハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間に送り込み、ハンドレール除菌装置の紫外線出射領域に配置する工程であり、
排出工程は、ハンドレールを循環移動して紫外線検知手段を遮蔽部から排出する工程である
請求項1に記載の乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法。
【請求項5】
排出工程では、配置工程とは逆方向にハンドレールを循環移動する
請求項4に記載の乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法。
【請求項6】
互いに連動して循環駆動される無端搬送体及びハンドレールを備える搬送部と、
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部と、
遮蔽部の内部に設けられる紫外線照射式のハンドレール除菌装置と、
遮蔽部に形成され、ハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間に対して遮蔽部の外部からアクセス可能となる開口とを備える
乗客コンベア。
【請求項7】
遮蔽部は、搬送部の傾斜部に対応して傾斜部を備え、
ハンドレール除菌装置は、遮蔽部の傾斜部の内部に設けられ、
開口は、遮蔽部の傾斜部に形成される
請求項6に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
乗客コンベアは、エスカレータであり、
無端搬送体は、複数の踏段が無端状に連結されるものであり、
開口は、遮蔽部の傾斜部の内面であって踏段が通過する領域に形成され、隣り合う踏段の一方の踏段の踏面と他方の踏段の垂下面との間に収まる幅に形成される
請求項7に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
開口は、ハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間の側方における遮蔽部の内面に形成される
請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項10】
開口を開閉自在に閉鎖する閉鎖体をさらに備える
請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法及びハンドレール除菌装置を備える乗客コンベアに関する。なお、除菌とは、細菌の除菌ないし殺菌、ウイルスの不活性化を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアのハンドレールは、移動手摺とも呼ばれ、利用者が手で掴む部分である。利用者は不特定多数であり、ハンドレールの表面には種々の細菌やウイルスが付着する。特に、昨今は、いかにして新型コロナウイルスの感染を予防できるかが関心事となっている。対策の一つとして、紫外線照射式のハンドレール除菌装置が提案されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-193319号公報
【文献】特開2019-052021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのハンドレール除菌装置は、ハンドレールの下辺部(復路部分)を遮蔽する遮蔽部の内部に設けられる。このため、ハンドレール除菌装置が適正に紫外線を照射するか否かを点検するためには、遮蔽部を分解した上で、ハンドレール除菌装置を取り外す必要がある。しかし、ハンドレール除菌装置の取外作業及び点検完了後の取付作業は面倒である。特に、ハンドレール除菌装置が遮蔽部の狭い内部空間の奥まった箇所に設置される場合は、作業性が悪く、作業時間がかかる、という問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、紫外線照射式のハンドレール除菌装置が適正に紫外線を照射するか否かの点検を容易に行うことができる乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法及び乗客コンベアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法は、
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部の内部に紫外線照射式のハンドレール除菌装置を備える乗客コンベアの、ハンドレール除菌装置の点検方法であって、
紫外線検知手段を遮蔽部の外部から内部に送り込み、ハンドレール除菌装置の紫外線出射領域に配置する配置工程と、
ハンドレール除菌装置を所定時間ONにするON工程と、
紫外線検知手段を遮蔽部から排出する排出工程と、
紫外線検知手段における紫外線検知状況を確認する確認工程とを備える
乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法である。
【0007】
ここで、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法の一態様として、
ハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間に対して遮蔽部の外部からアクセス可能となる開口が遮蔽部に形成される乗客コンベアの、ハンドレール除菌装置の点検方法であって、
配置工程は、開口を介して紫外線検知手段をハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間に送り込み、ハンドレール除菌装置の紫外線出射領域に配置する工程であり、
排出工程は、開口を介して紫外線検知手段を遮蔽部から排出する工程である
との構成を採用することができる。
【0008】
また、この場合、
開口が遮蔽部の傾斜部の内面であって踏段が通過する領域に形成される乗客コンベアの、ハンドレール除菌装置の点検方法であって、
配置工程に先立ち、隣り合う踏段間に開口が位置するように踏段の位置を調整する調整工程を備える
との構成を採用することができる。
【0009】
また、本発明に係る乗客コンベアのハンドレール除菌装置の点検方法の他態様として、
配置工程に先立ち、紫外線検知手段をハンドレールの遮蔽部から出た部分に取り付ける取付工程を備え、
配置工程は、ハンドレールを循環移動して紫外線検知手段をハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間に送り込み、ハンドレール除菌装置の紫外線出射領域に配置する工程であり、
排出工程は、ハンドレールを循環移動して紫外線検知手段を遮蔽部から排出する工程である
との構成を採用することができる。
【0010】
また、この場合、
排出工程では、配置工程とは逆方向にハンドレールを循環移動する
との構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明に係る乗客コンベアは、
互いに連動して循環駆動される無端搬送体及びハンドレールを備える搬送部と、
ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部と、
遮蔽部の内部に設けられる紫外線照射式のハンドレール除菌装置と、
遮蔽部に形成され、ハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間に対して遮蔽部の外部からアクセス可能となる開口とを備える
乗客コンベアである。
【0012】
ここで、本発明に係る乗客コンベアの一態様として、
遮蔽部は、搬送部の傾斜部に対応して傾斜部を備え、
ハンドレール除菌装置は、遮蔽部の傾斜部の内部に設けられ、
開口は、遮蔽部の傾斜部に形成される
との構成を採用することができる。
【0013】
また、この場合、
乗客コンベアは、エスカレータであり、
無端搬送体は、複数の踏段が無端状に連結されるものであり、
開口は、遮蔽部の傾斜部の内面であって踏段が通過する領域に形成され、隣り合う踏段の一方の踏段の踏面と他方の踏段の垂下面との間に収まる幅に形成される
との構成を採用することができる。
【0014】
また、本発明に係る乗客コンベアの他態様として、
開口は、ハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間の側方における遮蔽部の内面に形成される
との構成を採用することができる。
【0015】
また、本発明に係る乗客コンベアの別の態様として、
開口を開閉自在に閉鎖する閉鎖体をさらに備える
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハンドレール除菌装置が適正に紫外線を照射するか否かの点検に際し、ハンドレール除菌装置を取り外す必要はない。このため、本発明によれば、点検を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るエスカレータの概略断面側面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1のA-A線における遮蔽部の断面正面図である。
図2(b)は、
図2(a)のB部拡大図である。
【
図3】
図3(a)は、
図2(a)のC矢視図である。
図3(b)は、閉鎖体を取り外した状態の
図2(a)のC矢視図である。
【
図4】
図4(a)及び(b)は、ハンドレール除菌装置の第1の点検方法の説明図である。
【
図5】
図5(a)及び(b)は、同じくハンドレール除菌装置の第1の点検方法の説明図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、それぞれ閉鎖体の別例の説明図である。
【
図7】
図7(a)及び(b)は、ハンドレール除菌装置の第2の点検方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る第1実施形態として、乗客コンベアの一つであり、ハンドレール除菌装置を備えるエスカレータ、及びハンドレール除菌装置の第1の点検方法について、
図1ないし
図5を参酌して説明する。
【0019】
図1に示すように、エスカレータ1は、搬送部2を備える。搬送部2は、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。搬送部2は、無端搬送体20と、ハンドレール22と、欄干パネル23とを備える。無端搬送体20は、複数の踏段(ステップ)21,…が無端状に連結されたもので、循環駆動される。ハンドレール22は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、無端搬送体20と連動して循環駆動される。欄干パネル23は、下辺部がトラス3に支持され、ハンドレール22を循環移動可能に支持する。ハンドレール22及び欄干パネル23は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0020】
ハンドレール22の下辺部(復路部分)及び欄干パネル23の下辺部は、遮蔽部4により遮蔽される。遮蔽部4は、トラス3に支持される。
図1及び
図2(a)に示すように、遮蔽部4は、デッキカバー40と、スカートガード41と、外装板42と、インレットガード43とで構成される。デッキカバー40は、上面側に配置され、内デッキカバー40Aと、外デッキカバー40Bとを備える。内デッキカバー40Aは、欄干パネル23及びスカートガード41の上縁間の開放部を閉鎖するように脱着自在に取り付けられる。外デッキカバー40Bは、欄干パネル23及び外装板42の上縁間の開放部を閉鎖するように脱着自在に取り付けられる。スカートガード41は、通路に接する側に配置され、遮蔽部4の内面を構成する。外装板42は、スカートガード41と反対側に配置され、遮蔽部4の外面を構成する。インレットガード43は、長手方向の両端部(ハンドレール22の下辺部(復路部分)が出入りする部分)を覆うように配置される。遮蔽部4は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
【0021】
図2に示すように、エスカレータ1は、ハンドレール除菌装置5を備える。ハンドレール除菌装置5は、遮蔽部4の内部においてハンドレール22の下辺部(復路部分)に対して設けられる。ハンドレール除菌装置5は、ハンドレール22の表面に紫外線を照射して、ハンドレール22の表面に付着した種々の細菌やウイルスを除菌する。ハンドレール除菌装置5は、ハンドレール22が循環移動している間に限り、ハンドレール22に紫外線を照射する。すなわち、利用者がいない待機状態では運転を停止する仕様のエスカレータでは、ハンドレール22の停止に伴い、ハンドレール除菌装置5も紫外線の照射を停止する。ただし、ハンドレール除菌装置5は、ハンドレール22の動作と関係なく、メンテナンス用として、照射のON-OFFのスイッチを備える。
【0022】
ハンドレール除菌装置5は、ベース50と、紫外線源51とを備える。ベース50は、板状であり、ハンドレール22の下方にハンドレール22(の中央部)と所定の間隔を有して対向配置される。紫外線源51は、ベース50の上面に実装される。本実施形態においては、紫外線源51は、ピーク波長が100nm以上280nm以下の範囲内の深紫外光を照射する紫外線LED(UV-LED)である。
【0023】
ところで、ハンドレール22の下辺部(復路部分)は、ハンドレール22の内部に挿入されるハンドレールガイド31により支持される。ハンドレールガイド31は、取付部材30を介してトラス3又はトラス3に取り付けられるフレーム等に取り付けられ、支持される。他方、ハンドレール除菌装置5は、取付部材52を介して取付部材30に取り付けられ、支持される。このため、ハンドレール22及びハンドレール除菌装置5は、ハンドレール22の移動方向と直交する方向(幅方向や上下方向)において、相対的に位置決めされる。これにより、ハンドレール22の表面と紫外線源51との距離は、安定的に維持される。この点で、ハンドレール除菌装置5は、紫外線源51及びハンドレール22の表面の相対位置関係を定める位置決め手段として、ハンドレールガイド31を備える。
【0024】
ハンドレール除菌装置5は、紫外線出射面とハンドレール22の表面との間に所定の隙間Gが形成されるように配置される。これにより、紫外線の拡散、反射及び散乱が有効に作用し、ハンドレール22の表面の紫外線照射対象領域全域に十分な照射強度で紫外線が照射される。本実施形態においては、隙間Gは5mmないし20mm程度である。
【0025】
図2(b)及び
図3に示すように、隙間Gの側方におけるスカートガード41の領域には、開口41aが形成される。開口41aは、スカートガード41の外部(踏段21のある通路)から隙間Gにアクセス可能とするためのものである。開口41aは、遮蔽部4の傾斜部の内面であるスカートガード41に形成され、遮蔽部4の傾斜部の傾斜方向に沿って斜めに形成される。本実施形態においては、開口41aは、遮蔽部4の傾斜部の傾斜方向に沿って横長のスリット状であり、ハンドレール除菌装置5の紫外線出射領域よりも幅広に形成される。
【0026】
開口41aは、ハンドレール22及び踏段21,…の高さ位置の関係上、スカートガード41のうち、踏段21,…が通過する領域に形成される。このため、開口41aは、隣り合う踏段21,21の一方の踏段21の踏面と他方の踏段21の垂下面との間に収まる幅に形成される。
【0027】
開口41aは、通常時は、遮蔽部4の内部への異物侵入防止を目的として、閉鎖体41bによって閉鎖される。閉鎖体41bは、遮蔽部4の傾斜部の傾斜方向に沿って斜めに配置される。閉鎖体41bは、隣り合う踏段21,21の一方の踏段21の踏面と他方の踏段21の垂下面との間に収まる幅に形成される。これにより、閉鎖体41bは、スカートガード41の外部(踏段21のある通路)から取外作業及び取付作業が可能である。ただし、閉鎖体41bは、循環移動する踏段21と干渉しないよう、スカートガード41の外面からの突出量が小さい。本実施形態においては、閉鎖体41bは、遮蔽部4の傾斜部の傾斜方向に沿って横長の長方形状であり、スカートガード41の外面側から開口41aを覆う薄板であり、たとえばビス止めされる。
【0028】
本実施形態に係るエスカレータ1は、以上の構成からなる。次に、ハンドレール除菌装置5の点検方法について説明する。
【0029】
ハンドレール除菌装置5の点検方法は、ハンドレール除菌装置5が適正に紫外線を照射するか否か、すなわち、紫外線源51である紫外線LEDが適正に点灯するか否かを点検する方法である。
図3及び
図4に示すように、ハンドレール除菌装置5の点検方法は、i)隣り合う踏段21,21間に開口41a及び閉鎖体41bが位置するように踏段21,…の位置を調整する工程、ii)閉鎖体41bを取り外す工程、iii)開口41aを介して紫外線検知シート6をハンドレール22及びハンドレール除菌装置5間の隙間Gに送り込み、ハンドレール除菌装置5の紫外線出射領域に配置する工程、iv)ハンドレール除菌装置5を所定時間ONにする工程、すなわち、紫外線源51である紫外線LEDを所定時間点灯する工程、v)開口41aを介して紫外線検知シート6を遮蔽部4から排出する工程、vi)紫外線検知シート6における紫外線検知状況を確認する工程、を備える。
【0030】
工程i)では、踏段21,…が低速で循環移動され、隣り合う踏段21,21間に開口41a及び閉鎖体41bが位置すると、循環移動が停止される。工程ii)では、スカートガード41の外部(踏段21のある通路)から閉鎖体41bが取り外される。閉鎖体41bがビス止めされている場合は、ビスが緩められて、閉鎖体41bが取り外される。閉鎖体41bが取り外されると、隣り合う踏段21,21間のスカートガード41上に開口41aが露出するとともに、開口41aを介して隙間Gが露出する。
【0031】
工程iii)は、前工程として、紫外線検知シート6を支持部材60に取り付ける工程を備える。前工程では、紫外線検知シート6の検知面の反対面が帯板状の支持部材60の表面に取り付けられる。紫外線検知シート6は、接着剤、粘着剤、テープ等の公知の固定手段により支持部材60の表面に取り付けられる。そして、工程iii)の本工程では、紫外線検知シート6の検知面がハンドレール除菌装置5と対向する向きにして支持部材60が開口41aに挿入される。これにより、紫外線検知シート6は、ハンドレール除菌装置5の紫外線出射領域に配置される。なお、紫外線検知シート6が十分な長さを有している場合は、支持部材60を用いることなく(前工程を備えることなく)、紫外線検知シート6を直接持って開口41aに挿入するようにしてもよい。
【0032】
支持部材60(又は紫外線検知シート6)が奥まで挿入されると、先端がハンドレール除菌装置5の取付部材52に当接する。この状態で、紫外線検知シート6がハンドレール除菌装置5の紫外線出射領域に対して適正な位置に位置決めされる。隙間Gは、遮蔽部4の狭い内部空間の奥まった箇所に位置し、奥行方向の距離感を把握しにくい。距離感を正しく把握できないと、紫外線検知シート6がハンドレール除菌装置5の紫外線出射領域に対してずれた位置に位置決めされてしまう。これを防止するために、支持部材60は、紫外線検知シート6の奥行方向の位置決め手段として機能する。
【0033】
紫外線検知シート6は、紫外線が照射されると、不可逆的に色が変化する感材タイプのものや、紫外線が照射されると、可逆的に色が変化するフォトクロミックタイプのものが用いられる。あるいは、紫外線検知シート6は、これら以外の公知のものを用いることもできる。
【0034】
図5は、ハンドレール除菌装置5の紫外線源51からハンドレール22の方向を見た図である。
図5(a)に示すように、紫外線源51が複数ある場合、紫外線検知シート6は、各紫外線源51の紫外線出射領域を包含する一つの全体的な紫外線出射領域に対応した大きさの1枚のシートが用いられる。あるいは、
図5(b)に示すように、紫外線検知シート6は、各紫外線源51の紫外線出射領域に対応した大きさの複数枚のシートが用いられる。前者の場合は、紫外線検知シート6の支持部材60への取付作業が楽になる。後者の場合は、紫外線検知シート6の無駄なロスが無くなる。
【0035】
工程iv)では、ハンドレール除菌装置5のメンテナンス用のスイッチが用いられて、ハンドレール除菌装置5が所定時間ONにされる。ON時間は、紫外線検知シート6の感度によって異なり、紫外線検知シート6の種類に応じて適宜定められる。
【0036】
工程v)では、支持部材60が開口41aから引き抜かれ、感光後の紫外線検知シート6が遮蔽部4から排出される。そして、工程vi)では、紫外線検知シート6における紫外線検知状況が確認される。ハンドレール除菌装置5が適正に紫外線を照射している場合、紫外線検知シート6における変色は、紫外線源51の配置に対応したパターンとなる。他方、ハンドレール除菌装置5が適正に紫外線を照射していない場合、紫外線検知シート6における変色は、紫外線源51の配置に対応したパターンとならない。たとえば、寿命等により点灯しない紫外線LEDがある場合、その紫外線出射領域に対応する紫外線検知シート6の部分は、無反応で変色しない。これにより、ハンドレール除菌装置5が適正に紫外線を照射するか否かを点検することができる。
【0037】
以上のとおり、本実施形態によれば、遮蔽部4を分解する(内デッキカバー40Aを取り外し、スカートガード41を取り外す)必要も、ハンドレール除菌装置5を取り外す必要もない。このため、本実施形態によれば、ハンドレール除菌装置5の点検を容易にかつ短時間で行うことができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、点検作業の窓口となる開口41aは、スカートガード41に設けられる。このため、本実施形態によれば、点検作業を踏段21,…上という安定した広い作業環境で安全に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、点検作業の窓口となる開口41aは、ハンドレール除菌装置5との最短距離の箇所に設けられる。このため、本実施形態によれば、点検作業の動作範囲が狭くて済み、点検作業を迅速に手際よく行うことができる。しかも、本実施形態によれば、開口41aの先は、遮蔽部4の内部空間、すなわち、紫外線の迷光がない遮蔽空間である。このため、本実施形態によれば、紫外線検知シート6が不必要に感光して誤った紫外線検知状況となり、ひいては誤点検となるのを好適に防止することができる。
【0040】
なお、開口41aの閉鎖体41bは、上記のものに限定されない。たとえば、
図6に示す閉鎖体41bであってもよい。
図6(a)に示す閉鎖体41bは、スカートガード41の内面側又は外面側から開口41aを覆い、自身が有するヒンジ部又は別体のヒンジ(図示しない)により開口41aを開閉自在とするものである。
図6(b)に示す閉鎖体41bは、ゴム等の弾性部材で形成され、スカートガード41の外面側から開口41aに嵌め込まれるものである。
【0041】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態として、ハンドレール除菌装置5の第2の点検方法について、
図7を参酌して説明する。なお、第2の点検方法が対象とするエスカレータは、開口41aを必要としない点で、第1実施形態に記載したエスカレータと異なる。この点以外については、両者は同じである。そこで、エスカレータ自体の説明については、第1実施形態についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0042】
図7に示すように、ハンドレール除菌装置5の点検方法は、i)紫外線検知シート6をハンドレール22の遮蔽部4から出た部分に取り付ける工程、ii)ハンドレール22を循環移動して紫外線検知シート6をハンドレール22及びハンドレール除菌装置5間の隙間Gに送り込み、ハンドレール除菌装置5の紫外線出射領域に配置する工程、iii)ハンドレール除菌装置5を所定時間ONにする工程、すなわち、紫外線源51である紫外線LEDを所定時間点灯する工程、iv)ハンドレール22を循環移動して紫外線検知シート6を遮蔽部4から排出する工程、v)紫外線検知シート6における紫外線検知状況を確認する工程、を備える。
【0043】
工程i)では、紫外線検知シート6の検知面の反対面がハンドレール22(の中央部)の表面に取り付けられる。紫外線検知シート6は、接着剤、粘着剤、テープ等の公知の固定手段によりハンドレール22の表面に取り付けられる。紫外線検知シート6が紫外線源51の数に対応して複数枚用いられる場合は、紫外線検知シート6は、紫外線源51の配置に対応した配置でハンドレール22の表面に取り付けられる。なお、紫外線検知シート6は、可視光に感光するものではないため、ハンドレール22の遮蔽部4から出たどの部分に取り付けても、不必要に感光するものではない。しかし、全く感光しないわけではないので、紫外線検知シート6は、遮蔽部4のインレットガード43の近傍におけるハンドレール22、すなわち、ハンドレール22の折返し端部に取り付けるのが好ましい。
【0044】
工程ii)は、前工程として、内デッキカバー40Aを取り外す工程を備える。内デッキカバー40Aは、通常、長手方向に複数に分割されているので、前工程では、ハンドレール除菌装置5が設置される箇所における内デッキカバー40Aが取り外される。そして、工程ii)の本工程では、踏段21,…及びこれに伴ってハンドレール22が低速で循環移動され、内デッキカバー40Aを取り外した開放部を介して見て紫外線検知シート6がハンドレール除菌装置5の設置箇所に到達したことが確認されると、循環移動が停止される。これにより、紫外線検知シート6は、ハンドレール除菌装置5の紫外線出射領域に配置される。
【0045】
工程iii)では、ハンドレール除菌装置5のメンテナンス用のスイッチが用いられて、ハンドレール除菌装置5が所定時間ONにされる。ON時間は、紫外線検知シート6の感度によって異なり、紫外線検知シート6の種類に応じて適宜定められる。
【0046】
工程iv)では、工程ii)とは逆方向にハンドレール22が循環移動され、感光後の紫外線検知シート6が遮蔽部4から排出される。あるいは、工程iv)では、工程ii)と同方向にハンドレール22が循環移動され、感光後の紫外線検知シート6が遮蔽部4の反対側から排出される。そして、工程v)では、紫外線検知シート6における紫外線検知状況が確認される。
【0047】
以上のとおり、本実施形態によれば、スカートガード41を取り外す必要も、ハンドレール除菌装置5を取り外す必要もない。内デッキカバー40Aを取り外す必要はあるが、内デッキカバー40Aは、踏段21があるために取り外しにくいスカートガード41に比べ、簡単に取り外すことができる。このため、本実施形態によれば、第1実施形態と同様、ハンドレール除菌装置5の点検を容易にかつ短時間で行うことができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、点検作業をエスカレータ1の乗降口上及び踏段21,…上という安定した広い作業環境で安全に行うことができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
上記各実施形態においては、紫外線検知手段として、紫外線検知シートが用いられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。紫外線検知手段としては、紫外線検知器、紫外線検知センサ、シートではないフォトクロミックタイプの紫外線検知材、紫外線蛍光材、紫外線の照射により可視化されるインビジブルインクを用いた印刷物等、種々の公知の紫外線検知手段を用いることができる。
【0051】
また、上記第1実施形態においては、点検作業の窓口となる開口41aは、遮蔽部4のうち、通路(無端搬送体20)に面するスカートガード41に形成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。開口は、ハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間に対して遮蔽部の外部からアクセス可能でありさえすれば、遮蔽部の外装板等、スカートガードとは異なる箇所に形成されるようにしてもよい。
【0052】
また、上記第2実施形態においては、遮蔽部4に開口は形成されない。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、紫外線検知手段の送排用の開口ではなく、ハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間に対して遮蔽部の外部から視覚的にアクセス可能となる開口、すなわち、遮蔽部の外部からハンドレール及びハンドレール除菌装置間の隙間を見ることができる開口が遮蔽部に形成されるようにしてもよい。この開口を利用することにより、ハンドレール除菌装置の第2の点検方法の工程ii)の前工程は不要となり、遮蔽部を分解する必要が一切無くなる。このため、ハンドレール除菌装置5の点検をさらに容易にかつ短時間で行うことができる。
【0053】
また、上記実施形態においては、乗客コンベアは、エスカレータである。しかし、本発明は、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1…エスカレータ、2…搬送部、20…無端搬送体、21…踏段、22…ハンドレール、23…欄干パネル、3…トラス、30…取付部材、31…ハンドレールガイド、4…遮蔽部、40…デッキカバー、40A…内デッキカバー、40B…外デッキカバー、41…スカートガード、41a…開口、41b…閉鎖体、42…外装板、43…インレットガード、5…ハンドレール除菌装置、50…ベース、51…紫外線LED(紫外線源)、52…取付部材、6…紫外線検知シート(紫外線検知手段)、60…支持部材、G…隙間
【要約】
【課題】ハンドレールの復路部分を遮蔽する遮蔽部の内部に設けられる紫外線照射式のハンドレール除菌装置が適正に紫外線を照射するか否かの点検を容易に行うことができる点検方法を提供する。
【解決手段】点検方法は、紫外線検知手段6を遮蔽部41の外部から内部に送り込み、ハンドレール除菌装置5の紫外線出射領域に配置する配置工程と、ハンドレール除菌装置5を所定時間ONにするON工程と、紫外線検知手段6を遮蔽部41から排出する排出工程と、紫外線検知手段6における紫外線検知状況を確認する確認工程とを含む。
【選択図】
図4