(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20220609BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20220609BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
H05K13/08 N
H05K13/04 B
H01L21/60 311T
(21)【出願番号】P 2018140141
(22)【出願日】2018-07-26
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000149011
【氏名又は名称】株式会社大橋製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 尚克
(72)【発明者】
【氏名】砂川 靖史
(72)【発明者】
【氏名】北川 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】川越 裕史
(72)【発明者】
【氏名】大西 公平
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-172315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
H05K 13/04
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降移動可能に設けられ第1部材に対して第2部材を実装する実装ヘッドと、
前記実装ヘッドを駆動する駆動手段と、
前記駆動手段によって駆動する際の所定時刻での前記実装ヘッドの位置情報、該実装ヘッドの速度情報、及び該実装ヘッドに作用する反力情報
を把握する情報把握手段と、
前記情報把握手段によって把握された前記位置情報、前記速度情報、及び前記反力情報
を、予め取得した前記実装ヘッドの基準位置情報、該実装ヘッドの基準速度情報、及び該実装ヘッドに作用する基準反力情報
と比較して許容範囲か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記許容範囲を超えると判定した場合に警告を発する警告手段と、
を備える実装装置。
【請求項2】
前記実装ヘッドの位置を検出する位置検出手段を有し、
前記情報把握手段は、前記位置検出手段から出力された所定時刻での位置信号に基づいて、同時刻での前記位置情報、前記速度情報、及び前記反力情報を算出するよう構成され、
前記位置検出手段を、リニアスケールとしてなる請求項1に記載の実装装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、シャフトモータである請求項1又は2に記載の実装装置。
【請求項4】
前記第1部材に対して前記第2部材を実装する毎に、前記位置情報、前記速度情報、及び前記反力情報
を記録する情報記録手段を備える請求項1~
3の何れか一項に記載の実装装置。
【請求項5】
昇降移動可能に設けられ、第1部材との間に接合部材を介在させた第2部材を熱圧着により実装する実装ヘッドと、
熱圧着時において、前記実装ヘッドを所定の推力で駆動する駆動手段と、
熱圧着時において、前記駆動手段によって駆動する際の所定時刻での前記実装ヘッドに作用する反力情報を把握する情報把握手段と、を備え、
前記情報把握手段は、熱圧着時において前記実装ヘッドの推力を一時的に変化させることによって得られる所定時刻での前記反力情報に基づき、前記接合部材の硬化具合を把握するよう構成される、実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱圧着による基板と電子部品との接続や、供給部に収容された電子部品を吸着して基板へ搭載することが可能な実装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されているように、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含んだ異方性導電フィルム(ACF)や異方性導電ペースト(ACP)などの接合部材を介して基板と電子部品(例えばFPC)とを接続した接続構造体が知られている。このような接続構造体は、接続構造体を載置する圧着台と、この圧着台に対して昇降移動可能に設けられる実装ヘッドとを備える実装装置によって製造することができる。具体的には、圧着台に載置された接続構造体が下降した実装ヘッドによって加圧されながら加熱されることにより、基板と電子部品とを導電性粒子によって電気的に接続しつつ、熱硬化性樹脂を硬化させてこれらを相互に固着させている。
【0003】
また、供給部に収容された電子部品を吸着して基板へ搭載することが可能な実装装置としては、例えば特許文献2に示される装置が知られている。この実装装置には、電子部品が収容された供給部と基板が載置される実装部との間を移動可能であって、且つ昇降移動可能な実装ヘッドが設けられていて、実装ヘッドを下降させて供給部の電子部品を吸着した後、基板上まで移動させ、再度実装ヘッドを下降させて吸着した電子部品を基板に搭載する。
【0004】
このような実装装置において、電子部品を基板に熱圧着させる工程や電子部品を基板に搭載する工程では、ACFやACPに含まれる導電性粒子が基板や電子部品に対して電気的に確実に接続されるように、また電子部品を搭載する際に基板や電子部品に過剰な力が加わらないように、実装ヘッドが所定の推力で駆動するように構成することが一般的である。そのためこのような実装装置では、実装ヘッドを昇降移動させる駆動機構として、実装ヘッドを駆動させるエアシリンダーを電空レギュレータによって所定の圧力で動かすようにしたものや、駆動源としてサーボモータを採用するとともにロードセルで検出される実装ヘッドの反力をサーボアンプにフィードバックできるように構成し、サーボモータの出力トルクが一定になるようにサーボアンプからサーボモータに駆動指令を出力するようにしたものが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-82582号公報
【文献】特開平5-63398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、接続構造体を熱圧着する実装装置において、例えば圧着台に設けた位置決め用の凹所に接続構造体をセットするようにしていた場合、接続構造体の外周面が凹所の内周面に接触してこれが斜めに載置されると、実装ヘッドで所定の推力を加えていても接続構造体には局所的に力が加わり、圧着が不十分な部分が生じるおそれがある。また、実装ヘッドで押圧している最中に斜めに載置された接続構造体が凹所に収まるように動き、その際に接続構造体が圧着台と擦れて傷付くおそれもある。更に、基板や電子部品が若干反っていると、接続構造体が圧着台に正しくセットされていても、圧着不足の部分が局所的に生じてしまう懸念がある。このように従来の実装装置においては、実装ヘッドが所定の推力で駆動されている状態でも不具合が生じることがあり、またそのような不具合が生じたとしても、実装ヘッドで圧着している最中で把握することは困難であった。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであり、電子部品を基板に実装する工程において正常状態とは異なる挙動を把握することが可能であって、これにより、実装工程で不具合が発生してもこれを早期に掴むことができる実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における実装装置は、昇降移動可能に設けられ第1部材に対して第2部材を実装する実装ヘッドと、前記実装ヘッドを駆動する駆動手段と、前記駆動手段によって駆動する際の所定時刻での前記実装ヘッドの位置情報、該実装ヘッドの速度情報、及び該実装ヘッドに作用する反力情報を把握する情報把握手段と、前記情報把握手段によって把握された前記位置情報、前記速度情報、及び前記反力情報を、予め取得した前記実装ヘッドの基準位置情報、該実装ヘッドの基準速度情報、及び該実装ヘッドに作用する基準反力情報と比較して許容範囲か否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記許容範囲を超えると判定した場合に警告を発する警告手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような実装装置は、前記実装ヘッドの位置を検出する位置検出手段を有し、前記情報把握手段は、前記位置検出手段から出力された所定時刻での位置信号に基づいて、同時刻での前記位置情報、前記速度情報、及び前記反力情報を算出するよう構成され、前記位置検出手段を、リニアスケールとすることが好ましい。
【0010】
また前記駆動手段は、シャフトモータであることが好ましい。
【0012】
そして、前記第1部材に対して前記第2部材を実装する毎に、前記位置情報、前記速度情報、及び前記反力情報を記録する情報記録手段を備えることが好ましい。
【0013】
また本発明は、昇降移動可能に設けられ、第1部材との間に接合部材を介在させた第2部材を熱圧着により実装する実装ヘッドと、熱圧着時において、前記実装ヘッドを所定の推力で駆動する駆動手段と、熱圧着時において、前記駆動手段によって駆動する際の所定時刻での前記実装ヘッドに作用する反力情報を把握する情報把握手段と、を備え、前記情報把握手段は、熱圧着時において前記実装ヘッドの推力を一時的に変化させることによって得られる所定時刻での前記反力情報に基づき、前記接合部材の硬化具合を把握するよう構成される、実装装置でもある。
【発明の効果】
【0014】
このような構成になる本発明の実装装置によれば、所定時刻での実装ヘッドの位置情報、実装ヘッドの速度情報、及び実装ヘッドに作用する反力情報のうち少なくとも2つを、予め取得した実装ヘッドの基準位置情報、実装ヘッドの基準速度情報、及び実装ヘッドに作用する基準反力情報のうちの対応する少なくとも2つと比較して許容範囲か否かを検出することができる。すなわち、例えば本発明を適用した接続構造体を熱圧着する実装装置において、実装ヘッドに作用する反力が正常な状態よりも高い位置で上昇し始めると、接続構造体が圧着台に斜めに載置されていたり、基板や電子部品に反りが生じていたりする不具合が生じていることが予想できる。また、実装ヘッドを所定の推力で駆動して接続構造体を加圧している最中に実装ヘッドの速度が変化すると、圧着台に対して斜めに載置されていた接続構造体が、圧着工程中に動いたことが予想できる。従って、圧着工程において何らかの不具合が生じても、これを早期に掴むことができる。
【0015】
また、実装ヘッドの位置を検出する位置検出手段を設け、情報把握手段を、位置検出手段から出力された所定時刻での位置信号に基づいて、同時刻での位置情報、速度情報、及び反力情報を算出するよう構成する場合は、反力情報を得るために従来必須であったロードセルのような力センサが不要になる。すなわち、比較的高価な力センサを省略できるため、装置の費用を削減することができる。また、このような力センサを用いた場合においては、力センサから出力されるアナログ信号が微小であることに起因して信号ノイズの影響を受けやすくなり、また力センサの固有周波数によって測定可能周波数帯域が狭くなり、更に力センサの慣性や力センサの剛性の低さによって、応答性が低くなるという問題があるが、力センサが不要になることによって、高い応答性が得られるようになる。また、位置検出手段としてリニアスケールを使用する場合は、実装ヘッドの位置が正確に掴めるうえ、位置情報の正確さから速度情報及び反力情報も正確に算出できる。
【0016】
また、実装ヘッドの駆動手段としては、例えばボールねじとサーボモータとの組み合わせでもよいが、この場合は、ボールねじの送りねじとナットとの摺動抵抗が実装ヘッドに作用する反力情報に影響を及ぼすおそれがある。一方、実装ヘッドの駆動手段としてシャフトモータを使用する場合は、シャフトモータを構成する可動子とシャフトは非接触であるため、実装ヘッドの反力情報をより正確に掴むことができる。
【0017】
そして、検出手段によって上述した許容範囲を超えると判断した場合に警告を発する警告手段を設ける場合は、不具合が生じたときにはすぐに分かるため、必要な対応を直ちに実施して不良の部品を最小限に抑えることができ、生産性を向上させることができる。
【0018】
また、第1部材に対して第2部材を実装する毎に、上述した位置情報、速度情報、及び反力情報のうちの少なくとも2つを記録する情報記録部を備える場合は、情報記録部で蓄積した情報を解析することによって、不良発生の予兆を検出することも可能になる。
【0019】
また実装装置を、昇降移動可能に設けられ、第1部材との間に接合部材を介在させた第2部材を熱圧着により実装する実装ヘッドと、熱圧着時において、実装ヘッドを所定の推力で駆動する駆動手段と、熱圧着時において、駆動手段によって駆動する際の所定時刻での実装ヘッドに作用する反力情報を把握する情報把握手段と、を備え、情報把握手段は、熱圧着時において実装ヘッドの推力を一時的に変化させることによって得られる所定時刻での前記反力情報に基づき、前記接合部材の硬化具合を把握するよう構成する場合は、熱圧着によって硬化する接合部材の硬化時間を最適化することが可能になり、これによって硬化時間を短縮して生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に従う実装装置に関し、基板と電子部品とを熱圧着によって接続する装置の一実施形態を示したブロック図である。
【
図2】
図1に示した実装装置の実装ヘッドについて示した斜視図((a)は左側面が視認できる向きからの斜視図であり、(b)は右側面が視認できる向きからの斜視図)である。
【
図3】
図1に示した実装装置における熱圧着工程を示した図である。
【
図4】熱圧着工程が良好に行われた際の実装ヘッドの位置、実装ヘッドに作用する反力、実装ヘッドの速度、及び実装ヘッド先端部の温度の一例について示した図である。
【
図5】
図1の実装装置における他の実施形態について示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に従う実装装置の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の実装装置1は、基板と電子部品とを熱圧着によって接続するものである。具体的には、例えば実装装置1の前工程で製造される、予め基板にACFを貼り付けるとともに電子部品(例えばFPC)を位置合わせしながらACF上に載置した接続構造体に対し、熱圧着を行う装置である。
【0022】
本実施形態の実装装置1は、指令部2と、駆動制御部3と、駆動部4と、実装ヘッド5と、位置検出部6と、演算・制御部7と、情報記録部8と、判定部9と、警告部10とを備えている。
【0023】
指令部2は、実装装置1の各部に対して指令を送り、これら各部を所定動作させるものであって、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)によって構成される。
【0024】
駆動制御部3は、指令部2からの指令に基づいて駆動部4を駆動させるものであり、例えばサーボアンプによって構成される。また駆動部4は、実装ヘッド5を駆動させるものであって、例えばサーボモータとボールねじとを使用し、サーボモータによって送りねじを回転させてナットを進退移動させるようにしたものや、シャフトに対して可動子が非接触で進退移動するシャフトモータ等によって構成される。なお、本実施系形態の駆動制御部3は、3つの制御方法(実装ヘッド5が目標とする位置に移動するように制御する位置制御、実装ヘッド5が目標とする速度で移動するように制御する速度制御、又は実装ヘッド5が目標とする推力で移動するように制御する推力制御)で駆動部4を駆動させることができるものであって、指令部2からの指令に基づいて、これら3つの制御方法の何れか1つによって駆動部4を駆動する。
【0025】
本実施形態の実装ヘッド5は、接続構造体を載置した圧着台に対して昇降移動可能に設けられていて、駆動部4によって駆動されることにより、圧着台に対して下降又は上昇する。
【0026】
位置検出部6は、上下動する実装ヘッド5の所定時刻での位置(高さ)を検出し、位置信号として出力するものである。位置検出部6として、例えばリニアスケールを利用する場合は、実装ヘッド5の位置を直接的に検出することができる。また駆動部4としてサーボモータを採用する場合には、サーボモータに内蔵されたエンコーダを位置検出部6として利用することによって、実装ヘッド5の位置を間接的に検出することも可能である。
【0027】
ここで、駆動部4、実装ヘッド5、及び位置検出部6の具体的な構成について
図2を参照しながら説明する。本実施形態の駆動部4は、シャフトモータを使用していて、上下方向に延在するシャフト11と、シャフト11に沿って上下動するとともにシャフト11とは非接触の可動子12とで構成されている。シャフト11の上端部と下端部は、上ブラケット13と下ブラケット14を介してベース15に支持されている。また実装ヘッド5は、4本の支持シャフト16を介して可動子12に保持されている。そして実装ヘッド5の下端部には、接続構造体を加熱するためのパルスヒータ17が設けられている。更に、ベース15と実装ヘッド5との間には、ベース15に対して実装ヘッド5を上下方向に摺動可能に支持するリニアガイド18が設けられている。また本実施形態の位置検出部6は、リニアスケールを使用していて、実装ヘッド5の側面に設けられたスケール本体19と、ベース15に対してスケール本体19に対向する位置に設けられ、且つスケール本体19とは非接触になる走査ヘッド20とで構成されている。
【0028】
そして
図1に示す演算・制御部7は、位置検出部6から出力された所定時刻での位置信号に基づいて演算を行い、実装ヘッド5が目標とする推力情報に従って所定の推力で移動するように、駆動制御部3に対して推力指令を出力するものである。具体的には、特許第4696307号に示されているように、位置検出部6が出力する位置信号と駆動部4への加速度指令信号である駆動信号から、実装ヘッド5が受ける反力を求め、また指令部2が出力する位置指令信号と位置検出部6が出力する位置信号との偏差を求め、この偏差を第1の加速度信号に変換し、更に前述の反力と指令部2が出力する推力指令信号との和を求め、この和を第2の加速度信号に変換し、これら第1の加速度信号と第2の加速度信号を加算して、駆動部4への駆動信号となる加速度指令信号を駆動制御部3に出力する。このように本技術を利用した演算・制御部7によれば、ロードセルのような力センサを使用せずとも実装ヘッド5を所定の推力で移動させることが可能であるため、実装装置1の費用を削減することができるという利点がある。また、力センサを用いる場合には、力センサから出力されるアナログ信号が微小であることに起因して信号ノイズの影響を受けやすくなり、また力センサの固有周波数によって測定可能周波数帯域が狭くなり、更に力センサの慣性や力センサの剛性の低さによって、応答性が低くなる。一方、本技術を利用した演算・制御部7によれば、高い応答性が得られるため、実装ヘッド5の推力を意図した通りに追従させることができる。
【0029】
また演算・制御部7では、位置検出部6から出力された所定時刻での位置信号に基づいて、実装ヘッド5の位置情報を算出することが可能である。また、この位置信号に基づいて上述した演算を行うことにより、実装ヘッド5の同時刻での速度情報、及び実装ヘッド5に作用する反力情報も算出することができる。なお、このような演算・制御部7は、例えばCPUや各種の電子回路、プログラムを格納したメモリなどを搭載した制御ボードによって構成することができる。
【0030】
そして演算・制御部7で把握される実装ヘッド5の所定時刻での位置情報、速度情報、及び反力情報は、情報記録部8に出力される。情報記録部8は、例えば磁気ディスクや光ディスク、半導体メモリなどによって構成することができ、演算・制御部7から出力された実装ヘッド5の所定時刻での位置情報、速度情報、及び反力情報を記録する。本実施形態では、これらの情報に加え、パルスヒータ17を設けた実装ヘッド5の先端部における温度情報も記録している。また情報記録部8には、接続構造体の圧着工程が良好であると判断できる基準となる実装ヘッド5の位置情報、速度情報、及び反力情報(それぞれ基準位置情報、基準速度情報、基準反力情報と称する)、及び実装ヘッド5の先端部の温度情報が記録されている(
図4参照)。更に情報記録部8には、基準位置情報、基準速度情報、基準反力情報に対して許容される範囲の情報も記録されている。なお演算・制御部7は、情報記録部8に記録したこれらの情報を読み出すことも可能である。
【0031】
判定部9は、演算・制御部7によって把握された所定時刻での実装ヘッド5の位置情報、速度情報、反力情報を、情報記録部8から読み出された基準位置情報、基準速度情報、及び基準反力情報と比較して、許容範囲か否かを判定するものである。判定部9は、例えば上述した演算・制御部7の制御ボードに含めて構成することができる。
【0032】
警告部10は、判定部9で許容範囲を超えると判定した場合に警告を発するものである。警告は音や光などによって発せられ、圧着工程において不具合が生じたことを作業者に伝えることができる。警告部10としては、例えばブザーやランプの他、異常であることを表示可能な各種の表示装置によって構成することができる。
【0033】
このような構成になる実装装置1を使用して接続構造体に熱圧着を施すにあたっては、例えば
図3に示す手順で進めることができる。
図3に示す熱圧着工程では、まず位置h0にある実装ヘッド5を圧着台に対して下降させる(工程1)。この工程1において指令部2は、実装ヘッド5が位置制御で駆動され、且つ高速で移動するように指令を出す。なお
図3に示す熱圧着工程において、実装ヘッド5の所定時刻での位置情報、速度情報、及び反力情報は、随時、演算・制御部7で把握され、情報記録部8に記録される。
【0034】
次いで、下降した実装ヘッド5が時間t1で位置h1に達すると(工程2)、指令部2は、実装ヘッド5が速度制御で駆動され、且つ低速で移動するように指令を出して、実装ヘッド5が接続構造体に接触する位置h2までこれを下降させる(工程3)。そして実装ヘッド5が接続構造体に接触することにより、ACFに含まれる熱硬化性樹脂が溶融し始める(工程4)。
【0035】
そして時間t2に達すると、指令部2は、実装ヘッド5が推力制御で駆動され、且つ低速のままで移動するように指令を出す。この指令に基づき演算・制御部7は、実装ヘッド5に作用する反力が一定に増加して時間t3でf1に達するように、駆動制御部3に対して推力指令を出力する。その結果、ACFに含まれる導電性粒子は、基板と電子部品の両方に接触する(工程5)。
【0036】
更に指令部2から出される、実装ヘッド5が推力制御で駆動され、且つ低速のままで移動する指令に基づき、演算・制御部7は、実装ヘッド5に作用する反力がf2に達するように駆動制御部3に対して推力指令を出力する。これにより導電性粒子は、実装ヘッド5の推力によって圧潰する(工程6)。
【0037】
そして実装ヘッド5に作用する反力がf2に達した後においても、演算・制御部7からの推力指令に基づき、実装ヘッド5は、反力がf2のまま保たれるように推力制御で駆動される。これにより一旦溶融した熱硬化樹脂は、実装ヘッド5によって加圧されながら加熱されて硬化する(工程7)。なお工程7は、時間t4に達するまで行われる。
【0038】
その後、指令部2は、実装ヘッド5が位置制御で駆動され、且つ高速で移動するように指令を出し、実装ヘッド5を、時間t5で位置h0に達するように復帰させる(工程8)。
【0039】
ところで情報記録部8には、
図4に示すように、接続構造体の圧着工程が良好に行われた際の実装ヘッド5の基準位置情報、基準速度情報、基準反力情報が記録されている。そして判定部9は、上述した工程1~8が行われる間、演算・制御部7で把握される所定時刻での実装ヘッド5の位置情報、速度情報、及び反力情報を、上述した基準位置情報、基準速度情報、基準反力情報と比較して、許容範囲か否かを判定する。例えば工程3において、実装ヘッド5に作用する反力は0である場合が正常であるが、演算・制御部7で把握された実装ヘッド5に作用する反力が許容範囲を超えて確認される場合には、例えば接続構造体が圧着台の所定位置にセットされていなかったり、基板や電子部品が若干反っていたりするおそれがある。また、工程7において、実装ヘッド5の位置はh4で変わらない場合が正常であるが、演算・制御部7で把握された実装ヘッド5の位置が許容範囲を超えて変化する場合は、例えば圧着工程中に接続構造体が動いたことが予想される。このように、演算・制御部7で把握された実装ヘッド5の位置情報、速度情報、及び反力情報が許容範囲を超える場合には、警告部10から警告を発することによって、圧着工程で何らかの不具合が生じたことを作業者に伝えることができるため、必要な対応を直ちに実施することができる。なお、警告部10での警告ととともに、実装装置1を自動的に停止させるようにしてもよい。
【0040】
また判定部9での判定は、正確性を高めるために実装ヘッド5の位置情報、速度情報、及び反力情報の全てに対して行ってもよいが、何れか2つの情報を選択して行ってもよい。またその際に演算・制御部7で把握される情報、及び情報記録部8に記録する情報は、これら2つの情報に絞ってもよい。
【0041】
なお、演算・制御部7で把握される所定時刻での実装ヘッド5の位置情報、速度情報、及び反力情報は、圧着工程を行う度に毎回記録することが好ましい。これにより、後に不良が見つかったときの圧着状況が確認できるうえ、AIなどを用いて蓄積した情報を解析することによって、不良発生の予兆を検出することも可能になる。
【0042】
ところで、本発明に従う実装装置は、
図5に示す実装装置21のように構成することも可能である。なお、実装装置21において上述した実装装置1と共通する部分については、図面に同一の符号を付している。実装装置21は、例えばロードセルの如き反力検出手段22を有するものであって、反力検出手段22から出力される反力信号を駆動制御部3に入力することにより、駆動部4を推力制御で駆動させるものである。また位置検出部23は、位置検出部6と同様にリニアスケールを利用するものでもよいし、駆動部4としてサーボモータを採用する場合には、サーボモータに内蔵されたエンコーダを利用するものでもよい。そして制御部24は、反力検出手段22から出力された反力信号を反力情報に変換するとともに、位置検出部23から出力された位置信号を位置情報及び速度情報に変換するものである。また制御部24は、前述の演算・制御部7と同様に、これらの情報を出力して情報記録部8に記録させるとともに、情報記録部8に記録した情報を読み出すことも可能である。このような実装装置21においても判定部9によって、制御部24で把握される所定時刻での実装ヘッド5の位置情報、速度情報、及び反力情報を、情報記録部8に記憶させた基準位置情報、基準速度情報、基準反力情報と比較して、許容範囲か否かを判定することができる。
【0043】
なお、
図5に示す実装装置21において、駆動制御部3として利用するサーボアンプに制御部24、情報記録部8、判定部9の機能を組み込む(すなわち、サーボアンプ単体で実装ヘッド5の位置情報、速度情報、及び反力情報を記録し、またこれらの情報が読み出せるようにし、更に基準位置情報、基準速度情報、基準反力情報との比較を行って許容範囲か否かの判定を行うことができるようにする)ように構成してもよい。
【0044】
また、上述した実装装置1、21は接続構造体を熱圧着するものであったが、上述した技術は基板に電子部品を搭載する実装装置に応用することも可能である。これにより、基板への電子部品の搭載不良や、搭載時の電子部品の破損などを検出することができる。また、基板や電子部品も様々なものが使用可能である。例えば基板について例示すると、ガラエポ、セラミック、ガラス、FPC、ICウエハー、ピエゾ素子などが挙げられ、また電子部品について例示すると、IC、FPC、ピエゾ素子などが挙げられる。また、適用される熱圧着のプロセスにも制限はない。
【0045】
更に上述した実装装置1によれば、接続構造体に使用したACFなどに含まれる熱硬化性樹脂の硬化時間を最適化することも可能であり、これによって生産性を向上させることもできる。ACFなどの反応率(硬化率)は、ACF自身の品質劣化が進むと低くなる(硬化時間が長くなる)傾向があるため、十分な安全率を見込んだ硬化時間が設定されている。一方、接続構造体の圧着工程において、使用したACFが十分に硬化したことが確認できれば、硬化に要する時間を短縮しても問題はないと言える。
【0046】
ここで、実装装置1を使用して接続構造体におけるACFの硬化具合を確認するには、上述した工程7において、目標とする推力情報に従って実装ヘッド5を所定の推力で駆動させる際、その推力が一時的に減少又は増加するように(変化後はすぐに元の推力に戻るように)推力指令を出力させる。なお、実装ヘッド5の推力の変化量はわずかであって、実装ヘッド5が上昇したとしても、接続構造体には実装ヘッド5の推力が加わったままの状態となるようにする。このとき、演算・制御部7で算出される実装ヘッド5に作用する反力は、推力指令に基づく実装ヘッド5の推力の変化に応じてわずかに減少又は増加するが、ACFの熱硬化性樹脂が十分に硬化しているときには、実装ヘッド5の推力の変化に合わせてその反力も追従性よく応答する。一方、熱硬化性樹脂の硬化が十分に進んでいなければ、実装ヘッド5の推力の変化に対し、その反力は遅れて追従することになる。従って、演算・制御部7からの推力指令によって実装ヘッド5の推力を一時的に変化させたときの実装ヘッド5に作用する反力の変化量(実装ヘッド5に作用する反力の追従性)を算出することによって、ACFの硬化具合を確認することができる。なお情報記録部8に、接続構造体におけるACFの硬化具合が良好であると判断できる実装ヘッド5の標準反力情報の変化量を記憶させておき、判定部9によって、演算・制御部7で算出される実装ヘッド5の反力の変化量を、標準反力情報の変化量を比較して、許容範囲か否かを判定するようにしてもよい。ここで判定部9による判定は、実装ヘッド5によって所定の時間加圧した後に行って、ACFの硬化不良が生じていた場合に直ちに検出できるとする目的で行ってもよいし、生産性を向上させるべく、実装ヘッド5により加圧する工程の比較的早い段階から行って、ACFが十分に硬化していると判定される場合はその時点で実装ヘッド5の加圧を完了させるようにしてもよい。また、実装ヘッド5の推力を所定時間加えてもACFの硬化が不十分な場合には、警告部10から警告を発することによって、ACFの交換を促すようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1:実装装置
2:指令部
3:駆動制御部
4:駆動部(駆動手段)
5:実装ヘッド
6:位置検出部(位置検出手段)
7:演算・制御部(情報把握手段)
8:情報記録部(情報記録手段)
9:判定部(判定手段)
10:警告部(警告手段)