(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】最適経路決定装置及び最適経路決定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20220609BHJP
G08G 1/0968 20060101ALI20220609BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20220609BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20220609BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20220609BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20220609BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0968
B65G61/00 544
G06Q50/10
G16Y10/40
G16Y40/60
(21)【出願番号】P 2021090229
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2021-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518064374
【氏名又は名称】株式会社オプティマインド
(74)【代理人】
【識別番号】100188662
【氏名又は名称】浅見 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100177895
【氏名又は名称】山田 一範
(72)【発明者】
【氏名】松原 彪
(72)【発明者】
【氏名】郭 岩松
(72)【発明者】
【氏名】深谷 皇紀
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-135118(JP,A)
【文献】特開2020-079730(JP,A)
【文献】特開2021-011334(JP,A)
【文献】特開2014-048683(JP,A)
【文献】特開平11-031294(JP,A)
【文献】特開2011-158393(JP,A)
【文献】特開2010-019650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 1/0968
B65G 61/00
G06Q 50/10
G16Y 10/40
G16Y 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を決定するための最適経路決定装置であって、
前記複数のサービスそれぞれについて、実行地点の情報と、対象の荷物の内容を定めた荷物情報とを含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得部と、
前記複数のサービスを実行する少なくとも1以上の車両の車種情報と、積載中荷物情報とを含む車両関連情報を取得する車両関連情報取得部と、
前記サービスの業種を示す業種情報を取得する業種情報取得部と、
前記車両関連情報に応じて決定されるコスト情報及び/又は前記荷物情報に応じて決定されるコスト情報を取得するコスト情報取得部と、
取得された前記サービス特定情報と前記コスト情報とに基づいて、複数の経路について移動に要する合計コスト値を算出し、合計コスト値を評価に用いて最適経路を決定する最適経路決定部とを備え、
前記コスト情報取得部は、前記業種情報に応じて決定されるコスト情報をさらに取得する
ことを特徴とする最適経路決定装置。
【請求項2】
前記車両関連情報に応じて決定されるコスト情報は、
前記車種情報が示す車両の車種ごとに、
車両による使用を回避させたい道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、
当該道路以外の道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が小さくなるように決定される
ことを特徴とする請求項1記載の最適経路決定装置。
【請求項3】
前記サービス特定情報に応じて決定されるコスト情報は、
前記荷物情報が示す荷物の内容ごとに、
荷物にとって車両による使用を回避させたい道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、
当該道路以外の道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が小さくなるように決定される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の最適経路決定装置。
【請求項4】
前記車両関連情報に応じて決定されるコスト情報は、
前記積載中荷物情報が示す荷物の内容ごとに、
荷物にとって車両による使用を回避させたい道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、
当該道路以外の道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が小さくなるように決定される
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうち何れかに記載の最適経路決定装置。
【請求項5】
前記複数のサービスを実行する地域の天候を示す天候情報を取得する天候情報取得部を備え、
前記コスト情報取得部は、前記天候情報に応じて決定されるコスト情報をさらに取得する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうち何れかに記載の最適経路決定装置。
【請求項6】
それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を決定するための最適経路決定プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記複数のサービスそれぞれについて、実行地点の情報と、対象の荷物の内容を定めた荷物情報とを含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得機能と、
前記複数のサービスを実行する少なくとも1以上の車両の車種情報と、積載中荷物情報とを含む車両関連情報を取得する車両関連情報取得機能と、
前記サービスの業種を示す業種情報を取得する業種情報取機能と、
前記車両関連情報に応じて決定されるコスト情報及び/又は前記荷物情報に応じて決定されるコスト情報を取得するコスト情報取得機能と、
取得された前記サービス特定情報と前記コスト情報とに基づいて、複数の経路について移動に要する合計コスト値を算出し、合計コスト値を評価に用いて最適経路を決定する最適経路決定機能とを
実現させ、
前記コスト情報取得機能では、前記業種情報に応じて決定されるコスト情報をさらに取得する機能を
実現させることを特徴とする最適経路決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を車両の車種や荷物の内容を考慮して決定可能な最適経路決定装置及び最適経路決定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、「組合せ最適化」という分野において、主に「現実社会の問題を組合せ最適化問題にモデル化する」「ある組合せ最適化問題に対する解法を考案する」ということが研究されている。そして、組合せ最適化問題の中に「配送計画問題(VRP:vehicle routing problem)」という問題がある。これは複数の車両と複数の訪問先が入力されたとき、すべての訪問先がいずれかの車両によりちょうど一度ずつ訪問されるような車両のルート(訪問先の順序)の中でルートの長さの総和が最小となるものを求める問題である。何十年も前からVRPに対して現実で現れる制約条件を取り込んだ問題がいくつも提案され、それらに対する近似解法も同時に研究されてきた。またVRPを一般化した問題として「PDP:pickup and delivery problem」という問題がある。これは荷物を積む訪問先とその荷物を降ろす訪問先の組が複数入力されたとき、各組に対して各訪問先を同じ車両が訪れ、さらに積んだあとに降ろすという順序を守った上ですべての訪問先がいずれかの車両によりちょうど一度ずつ訪問されるような車両のルートの中でルートの長さの総和が最小となるものを求める問題である。PDPもVRP同様に現実で現れる制約条件を取り込んだ問題がいくつも提案され、それらに対する近似解法も同時に研究されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、指定された物品を配送先へ運搬するための輸送車の分配の仕方を決定する配送計画を、サービス評価点と配送ルートごとの輸送車の車両数に関する目的関数を用いて立案するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、VRPおよびPDPを用いて複数の訪問先を訪問する最適最短経路を求める場合に総移動距離や所要時間が短いことが優先されていた。しかし、車両の車種や対象の荷物の内容によっては使用を避けたい道路があり、当該道路の回避は車両の運転者の判断に委ねられていた。つまり、配送計画により決定されたルート通りに通行すると、車両や荷物にとって好ましくない道路を通行することになってしまう場合があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を、車両の車種や荷物の内容を考慮して決定することが可能な最適経路決定装置及び最適経路決定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る最適経路決定装置は、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を決定するための最適経路決定装置であって、前記複数のサービスそれぞれについて、実行地点の情報と、対象の荷物の内容を定めた荷物情報とを含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得部と、前記複数のサービスを実行する少なくとも1以上の車両の車種情報と、積載中荷物情報とを含む車両関連情報を取得する車両関連情報取得部と、前記車両関連情報に応じて決定されるコスト情報及び/又は前記荷物情報に応じて決定されるコスト情報を取得するコスト情報取得部と、取得された前記サービス特定情報と前記コスト情報とに基づいて、複数の経路について移動に要する合計コスト値を算出し、合計コスト値を評価に用いて最適経路を決定する最適経路決定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る最適経路決定装置は、前記車両関連情報に応じて決定されるコスト情報が、前記車種情報が示す車両の車種ごとに、車両による使用を回避させたい道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、当該道路以外の道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が小さくなるように決定されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る最適経路決定装置は、前記サービス特定情報に応じて決定されるコスト情報が、前記荷物情報が示す荷物の内容ごとに、荷物にとって車両による使用を回避させたい道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、当該道路以外の道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が小さくなるように決定されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る最適経路決定装置は、前記車両関連情報に応じて決定されるコスト情報が、前記積載中荷物情報が示す荷物の内容ごとに、荷物にとって車両による使用を回避させたい道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、当該道路以外の道路については前記最適経路決定部により算出されるコスト値が小さくなるように決定されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る最適経路決定装置は、前記複数のサービスを実行する地域の天候を示す天候情報を取得する天候情報取得部を備え、前記コスト情報取得部が、前記天候情報に応じて決定されるコスト情報をさらに取得することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る最適経路決定装置は、前記サービスの業種を示す業種情報を取得する業種情報取得部を備え、前記コスト情報取得部が、前記業種情報に応じて決定されるコスト情報をさらに取得することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る最適経路決定プログラムは、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を決定するための最適経路決定プログラムであって、前記コンピュータに、前記複数のサービスそれぞれについて、実行地点の情報と、対象の荷物の内容を定めた荷物情報とを含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得機能と、前記複数のサービスを実行する少なくとも1以上の車両の車種情報と、積載中荷物情報とを含む車両関連情報を取得する車両関連情報取得機能と、前記車両関連情報に応じて決定されるコスト情報及び/又は前記荷物情報に応じて決定されるコスト情報を取得するコスト情報取得機能と、取得された前記サービス特定情報と前記コスト情報とに基づいて、複数の経路について移動に要する合計コスト値を算出し、合計コスト値を評価に用いて最適経路を決定する最適経路決定機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を、車両の車種や荷物の内容を考慮して決定することが可能な最適経路決定装置及び最適経路決定プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る最適経路決定装置を実現するためのシステム全体の構成を表したブロック図である。
【
図2】本発明に係る最適経路決定装置(サーバ装置)10の構成の一例を表した説明図である。
【
図3】本発明に係る最適経路決定装置10における最適経路決定処理の流れを表したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、第1の実施の形態に係る最適経路決定装置の例について説明する。
図1は、本発明に係る最適経路決定装置を実現するためのシステム全体の構成を表したブロック図である。なお、最適経路決定装置10は、専用マシンとして設計した装置であってもよいが、一般的なコンピュータやサーバ装置によって実現可能なものであるものとする。この場合に、最適経路決定装置10は、一般的なコンピュータやサーバ装置が通常備えているであろうCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)、GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)、メモリ、ハードディスクドライブ等のストレージを具備しているものとする(図示省略)。また、これらの一般的なコンピュータやサーバ装置を本例の最適経路決定装置10として機能させるためにプログラムよって各種処理が実行されることは言うまでもない。
【0017】
図1に示すように、最適経路決定装置を実現するためのシステム全体の構成は、サーバ装置10と、サービス実行者端末201~20n(以下、これら総称してサービス実行者端末20と表現する場合を含む)と、本部端末30とが、通信ネットワーク40を介して相互に接続可能に構成されている。このうち、本部端末30は、サービス提供主体の本部において使用することを想定した端末装置であるが、必須の構成ではない。以下においては、サーバ装置10が本例の最適経路決定装置10として機能する場合を例として説明を行う。
【0018】
図2は、本発明に係る最適経路決定装置(サーバ装置)10の構成の一例を表した説明図である。この
図2に示すように、最適経路決定装置10は、サービス特定情報取得部11と、車両関連情報取得部12と、コスト情報取得部13と、最適経路決定部14と、記憶部15とを少なくとも備えている。
【0019】
サービス特定情報取得部11は、複数のサービスそれぞれについて、実行地点の情報と、対象の荷物の内容を定めた荷物情報とを含むサービス特定情報を取得する機能を有する。
【0020】
ここで、本例においてサービスとは、車両等の移動体を停車(停止)して作業を行う必要のある業務の切り分け単位のことをいう。一例として、荷物をある地点で集荷して他の地点まで配送する業務の場合には、集荷サービス(ピックアップサービス)と配送サービス(デリバリーサービス)とがそれぞれ必要なサービスとなる。
【0021】
また、サービス特定情報とは、集荷、配送など各サービスの種別情報、各サービスに関する実行地点情報、各サービスで扱う荷物情報などを含め各サービスの内容を特定するために必要な情報のことをいう。
【0022】
また、実行地点情報とは、サービスを実行する位置を特定するための情報のことをいう。例えば、住所で与えられる位置情報や、緯度経度によって指定される位置情報が挙げられる。本例において、サービスについての実行地点として取得する位置情報は、そのサービスを実行する場所を代表する1地点に関する位置情報であるものとする。本例における最適経路決定装置10は、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を決定することを前提としたものである。そのため、このサービス特定情報取得部11においては、連続的に処理する複数のサービスのそれぞれの実行地点の情報を取得する。また、この際に、出発地点の位置情報及び帰着地点の位置情報を併せて取得する。出発地点の位置情報として、車両の現在位置情報を取得するようにしてもよい。その場合、車両位置情報を取得することができればどのような手段であっても構わないが、例えば、車両のGPS情報、若しくは、車両に搭乗するサービス実行者が保持するサービス実行者端末20が備えるGPS機能に基づいて取得された位置情報を取得するようにしてもよい。
【0023】
また、荷物情報とは、本例のサービスにおいて車両に積載する荷物を特定するための情報のことをいう。荷物情報としては、例えば、荷物の名称、荷物の種類、荷物の特性など、荷物の内容を表す情報を少なくとも1つ含んでいる。荷物の名称の例には、荷物の製品名や型番がある。荷物の種類の例には、「書類」や「食品」、「電子機器」がある。荷物の特性の例には、「やわらかい」や「硬い」、「割れやすい」がある。なお、荷物の特性には、「特記無し」や「通常」のようにサービスの実行時に特別注意を要する事項が存在しないことを示すものが含まれてもよい。
【0024】
車両関連情報取得部12は、複数のサービスを実行する少なくとも1以上の車両の車種情報と、積載中荷物情報とを含む車両関連情報を取得する機能を有する。
【0025】
ここで、車両関連情報とは、複数のサービスを実行する際に利用する少なくとも1以上の車両の車種情報、積載中荷物情報など、複数のサービスを実行する車両に関連した必要な情報のことをいう。また、車種情報とは、車両を用途や型等で分けた種類の情報をいう。車種情報には、冷蔵車両や冷凍車両など用途を定める情報、4トントラックなどの車両の大きさを特定するための情報などが含まれる。また、積載中荷物情報とは、複数のサービスを実行する予定の各車両が積載中の荷物を特定するための情報をいう。ここでの「積載中の荷物」は、実行予定の複数のサービスの何れかにおいて作業対象となる荷物であってもよいし、最適経路を探索する時間枠においては作業対象ではないが車両に積載しておかなければならない荷物であってもよい。
【0026】
コスト情報取得部13は、車両関連情報に応じて決定されるコスト情報及び/又は荷物情報に応じて決定されるコスト情報を取得する機能を有する。
【0027】
ここで、コスト情報とは、複数のサービスを実行する際に利用する可能性のある道路のコスト値を算出するために用いられる情報のことをいう。コスト情報は、道路の所定区間単位、交差点単位、或いは、右折・左折・Uターンなど道路上の特定の場所での特定の行為単位などといったように、予め設定した所定の単位ごとに設定される。また、コスト情報は、各道路に設定されたベースとなるコスト値に対して乗算するための重み付けの情報であってもよいし、コスト値を表す数値を直接与えるものであってもよい。本例におけるコスト情報は、車両関連情報に応じて変化する可能性があり、また、荷物情報に応じて変化する可能性があることに特徴を有する。コスト情報の具体例については後述する。
【0028】
最適経路決定部14は、取得されたサービス特定情報とコスト情報とに基づいて、複数の経路について移動に要する合計コスト値を算出し、合計コスト値を評価に用いて最適経路を決定する機能を有する。
【0029】
ここで、本例における経路とは、複数のサービスを実行するために車両の通行可能性がある道路の集合を意味する。経路について移動に要する合計コスト値は、例えば、当該経路を構成する少なくとも1以上の道路のコスト値を合計することにより算出される。
【0030】
また、合計コスト値を評価に用いて最適経路を決定するとは、少なくとも合計コスト値によって複数の経路から最適経路を導くことをいう。例えば、最適経路決定部14は、複数の経路のうち、算出した合計コスト値が最小の経路を最適経路として決定してもよい。ここで、車両や荷物にとって好ましくない道路のコスト値が大きくなるようにコスト情報を設定することで、合計コスト値が小さい経路を選択することが好ましくない道路を避ける結果につながるため、合計コスト値が最小の経路が最適経路であるといえる。他方で、道路の条件に特段の差異が存在しないのであれば、移動距離が短い、所要時間が短いことが最適経路の条件であるといえる。
【0031】
また、最適経路決定部14は、算出した合計コスト値と、所定の目的関数の関数値の算出結果とを総合評価して最適経路を決定してもよい。所定の目的関数は、例えば、経路における合計通行所要時間及び/又は合計移動距離に関する関数である。このような関数の例には、合計通行所要時間が少ない及び/又は合計移動距離が短い経路ほど評価のための出力が大きく又は小さくなる関数とすることが考えられる。最適経路の決定において合計コスト値と所定の目的関数の何れを重視するかは適宜決定され得る。例えば、最適経路決定部14は、算出した合計コスト値と、所定の目的関数の関数値とのそれぞれに対応する重み情報を算出し、当該合計コスト値と当該関数値とに対しそれぞれ算出した重み情報を乗算する構成であってもよい。ここでの重み情報は、最適経路の決定に際して、コスト情報と目的関数の関数値とのどちらの影響を大きくするかにより適宜決定される。そして、最適経路決定部14は、重み情報をそれぞれ乗算した合計コスト値と関数値とを加算した結果の値に基づいて最適経路を決定するようにしてもよい。このような構成とすることで、目的関数のみを用いる場合と比較して、車両や荷物にとってより好ましい経路が最適経路として決定される可能性がある。
【0032】
なお、本例では、合計コスト値の算出において、道路の通行所要時間及び合計距離に関する情報が用いられていないが、もちろん、合計コスト値の算出において道路の通行所要時間及び/又は合計距離に関する情報が用いられてもよい。
【0033】
記憶部15は、最適経路決定装置10において行われる様々な処理で必要なデータ及び処理の結果として得られたデータを記憶させる機能を有する。
図2に示すように、一例として、記憶部15においてサービス特定情報と車両関連情報とコスト情報と道路に関する道路情報を記憶させるようにしてもよい。
【0034】
次に、車両関連情報やサービス特定情報に応じて決定されるコスト情報に関する具体例について説明する。
【0035】
例えば、車両関連情報に応じて決定されるコスト情報は、車種情報が示す車両の車種ごとに、車両による使用を回避させたい道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、当該道路以外の道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が小さくなるように決定されてもよい。ここで、車両による使用を回避させたい道路とは、車両の通行を回避させたい事情が存在する道路をいう。車両による使用を回避させたい事情の例には、道路の幅が使用車種の車幅の車両で通行するのに適さないという事情や道路のカーブが使用車種の車両では困難であるという事情、使用車種の車両では舗装されていない道路の通行が困難であるという事情がある。
【0036】
車両による使用を回避させたい道路か否かの判断においては、車両関連情報だけでなく、さらに道路情報が用いられてもよい。道路に関する情報の例には、道路の曲率や斜度、舗装状況、段差の有無、幅を示す情報がある。例えば、車種情報が示す車両の車種が所定の幅未満の道路の使用を回避させたいものである場合、道路情報に基づいて、所定の幅未満の道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、所定の幅以上の道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が小さくなるように決定される。
【0037】
また、サービス特定情報に応じて決定されるコスト情報は、荷物情報が示す荷物の内容ごとに、荷物にとって車両による使用を回避させたい道路ついては最適経路決定部14により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、当該道路以外の道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が小さくなるように決定されてもよい。ここで、荷物にとって車両による使用を回避させたい道路とは、当該荷物を積載している最中の車両の通行を回避させたい事情が存在する道路をいう。荷物にとって車両の通行を回避させたい事情の例には、傾けてはいけない荷物や揺らしてはいけない荷物を車両が積んでいるという事情がある。例えば揺らしてはいけない荷物を車両が積んでいるという事情により回避される道路の例には、舗装されていない道路や踏切を含む道路がある。
【0038】
また、車両関連情報に応じて決定されるコスト情報は、積載中荷物情報が示す荷物の内容ごとに、荷物にとって車両による使用を回避させたい道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、当該道路以外の道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が小さくなるように決定されてもよい。ここでの荷物にとって車両による使用を回避させたい道路は、荷物情報が示す荷物の内容ごとにコスト情報が決定される場合と同様の道路であるため説明を省略する。
【0039】
特定の道路が荷物にとって車両による使用を回避させたい道路であるのか否かの判断には、荷物情報や積載中荷物情報だけでなく、さらに道路情報が用いられてもよい。例えば、荷物情報や積載中荷物情報が示す荷物の内容が坂道の使用を回避させたいものである場合、道路情報に基づいて、坂道である道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、坂道でない道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が小さくなるように決定される。
【0040】
ここで、コスト情報は、設定対象に対してコスト値を直接設定するための情報であってもよいし、コスト情報が設定されている対象に対して予め設定されたコスト値に対し重み情報を乗算する構成であってもよい。例えば、コスト情報は、コスト値が所定の値に設定されたり、算出されているコスト値に加算や減算がされたりするように決定される。また例えば、コスト情報は、コスト値に所定の重みをかけるように決定される。所定の重みの例には、0~1や0~100などといった所定範囲内の数値がある。例えば、荷物情報が示す荷物の内容が坂道の通行を避けるべきものである場合、道路に関する情報に基づいて、坂道である道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値に1の重みをかけるように決定され、坂道でない道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値に0.1の重みをかけるように決定される。1未満の数値の重みがコスト値にかかると当該コスト値が算出された道路が決定される可能性が減少する。所定の重みの他の例としては、0又は1の2値の何れかがある。なお、坂道である道路の斜度よってコスト値にかける重みが変更されてもよい。例えば、コスト情報は、坂道である道路の傾度が上昇するに従って、コスト値にかける重みを上昇させるように決定されてもよい。なお、コスト情報は、コスト値に所定の重みをかけるように決定される場合、重みをかける対象は、個々の道路単位で決定されてもよいし、道路の種類単位で決定されてもよい。
【0041】
以上、車両関連情報やサービス特定情報に応じて決定されるコスト情報に関する具体例について説明した。なお、最適経路の決定に用いられるコスト情報は、車両や荷物に関する情報のみに限られない。例えば、天候や業種に関するコスト情報が最適経路の決定にさらに用いられてもよい。以下、天候や業種に関するコスト情報をさらに用いて最適経路を決定する場合について説明する。
【0042】
最適経路決定装置10は、複数のサービスを実行する地域の天候を示す天候情報を取得する天候情報取得部を備え、コスト情報取得部13は、天候情報に応じて決定されるコスト情報をさらに取得してもよい。道路の天候を示す情報の例には、「晴れ」や「曇り」、「雨」、「雪」を示す情報がある。なお、「雨」を示す情報は、降水量や降水確率など雨の量や確率に関する情報を含んでいてもよい。ここで、最適経路決定部14による合計コスト値の算出の基となるコスト情報は、天候情報に応じて決定されるものを含む。
【0043】
ここで、天候情報に応じて決定されるコスト情報は、天候情報が示す天候ごとに、車両による使用を回避させたい道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、当該道路以外の道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が小さくなるように決定されてもよい。ここでの車両による使用を回避させたい道路とは、特定の天候のときに車両による使用を回避させたい事情が存在する道路をいう。そのような道路の例には、天候が「雨」や「雪」のとき、天候が「晴れ」や「曇り」のときと比較して状態が悪化する道路がある。状態が悪化する道路の例には、車両がスリップする可能性が高くなる道路や通行所要時間が長くなる道路がある。
【0044】
また、最適経路決定装置10は、サービスの業種を示す業種情報を取得する業種情報取得部を備え、コスト情報取得部13は、業種情報に応じて決定されるコスト情報をさらに取得してもよい。業種情報が示す業種の例には、「引っ越し業」や「精密機械配送業」がある。ここで、最適経路決定部14による合計コスト値の算出の基となるコスト情報は、業種情報に応じて決定されるものを含む。
【0045】
ここで、業種情報に応じて決定されるコスト情報は、業種情報が示す業種ごとに、車両による使用を回避させたい道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が大きくなるように決定され、当該道路以外の道路については最適経路決定部14により算出されるコスト値が小さくなるように決定されてもよい。ここでの車両による使用を回避させたい道路とは、特定の業種のサービスの実行において車両による使用を回避させたい事情が存在する道路をいう。そのような道路の例には、特定の業種が扱う種類の荷物に対し、車両が通行すると悪影響を与え得る道路がある。業種により扱う荷物の内容や車両の大きさ等が異なり得るため、業種情報により決定されるコスト情報でコスト値を算出することで、より適する経路を決定することができるようになる。
【0046】
以上、天候や業種に関するコスト情報をさらに用いて最適経路を決定する場合について説明した。このようにして、最適経路の決定に際し天候や業種についても考慮することで、より最適な経路を決定することが可能となる。具体的には、車両の車種や荷物の内容と、天候や業種とを組み合わせて最適経路を決定することにより、天候や業種を考慮しない場合と比較して、車両の車種や荷物の内容にとってより好ましい経路を最適経路として決定することが可能となる。
【0047】
次に、本発明に係る最適経路決定装置10における最適経路決定処理の流れについて説明を行う。
図3は、本発明に係る最適経路決定装置10における最適経路決定処理の流れを表したフローチャート図である。この
図3に示すように、最適経路決定処理は、複数のサービスそれぞれについての実行地点の情報と荷物情報とを含むサービス特定情報を取得することによって開始される(ステップS101)。次に、最適経路決定装置10は、車種情報と積載中荷物情報とを含む車両関連情報を取得する(ステップS102)。次に、最適経路決定装置10は、車両関連情報に応じて決定されるコスト情報及び/又は荷物情報に応じて決定されるコスト情報を取得する(ステップS103)。次に、最適経路決定装置10は、サービス特定情報とコスト情報とに基づいて合計コスト値を算出する(ステップS104)。そして、最適経路決定装置10は、合計コスト値を評価に用いて最適経路を決定し(ステップS105)、処理を終了する。
【0048】
以上のように、本例による最適経路決定装置10によれば、複数のサービスそれぞれについて、実行地点の情報と、対象の荷物の内容を定めた荷物情報とを含むサービス特定情報を取得するサービス特定情報取得部11と、複数のサービスを実行する少なくとも1以上の車両の車種情報と、積載中荷物情報とを含む車両関連情報を取得する車両関連情報取得部12と、車両関連情報に応じて決定されるコスト情報及び/又は荷物情報に応じて決定されるコスト情報を取得するコスト情報取得部13と、取得されたサービス特定情報とコスト情報とに基づいて、複数の経路について移動に要する合計コスト値を算出し、合計コスト値を評価に用いて最適経路を決定する最適経路決定部14とを備えるようにしたので、それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を、車両の車種や荷物の内容を考慮して決定することが可能となる。
【0049】
なお、最適経路の決定について、上述した合計コスト値を評価に用いること以外に、予め使用しない道路を所定のデータベースに登録しておき、最適経路に当該道路を含ませないようにしてもよい。具体的には、利用を禁止する道路のコスト値を非常に大きいものにするためのデータベースを予め記憶部15に記憶させておく。そして、コスト情報取得部13において、コスト情報を取得する際に当該データベースについても参照し、利用を禁止する道路のコスト値を非常に大きいものになるようコスト情報を取得してもよい。或いは、最適経路決定部14において、当該データベースを参照し、利用を禁止する道路のコスト値を非常に大きく算出してもよい。このような構成とすることで、ユーザが設定した使用させたくない特定の道路を確実に含まない最適経路を決定することが可能となる。
【0050】
なお、本発明におけるサービスとしては、宅配サービス、店舗への卸業、自動販売機のメンテナンス、訪問医療/訪問介護、乗合いタクシーなど、複数の拠点を1台の車両で回るという形態の業種であれば適用可能である。
【0051】
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を取ることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 最適経路決定装置
11 サービス特定情報取得部
12 車両関連情報取得部
13 コスト情報取得部
14 最適経路決定部
15 記憶部
20 サービス実行者端末
30 本部端末
40 通信ネットワーク
【要約】
【課題】それぞれが異なる地点で実行される複数のサービスを連続的に処理する際の移動の最適経路を車両の車種や荷物の内容を考慮して決定することが可能な最適経路決定装置及び最適経路決定プログラムを提供すること。
【解決手段】複数のサービスそれぞれについて、実行地点の情報と、対象の荷物の内容を定めた荷物情報とを含むサービス特定情報を取得し、複数のサービスを実行する少なくとも1以上の車両の車種情報と、積載中荷物情報とを含む車両関連情報を取得し、車両関連情報に応じて決定されるコスト情報及び/又は荷物情報に応じて決定されるコスト情報を取得し、取得したサービス特定情報と前記コスト情報とに基づいて、複数の経路について移動に要する合計コスト値を算出し、合計コスト値を評価に用いて最適経路を決定するようにした。
【選択図】
図2