IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Kyuluxの特許一覧

特許7085176膜、膜の製造方法、有機発光素子、照明装置および化合物
<>
  • 特許-膜、膜の製造方法、有機発光素子、照明装置および化合物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】膜、膜の製造方法、有機発光素子、照明装置および化合物
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220609BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20220609BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220609BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20220609BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20220609BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220609BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
H05B33/14 B
H05B33/14 Z
H05B33/10
C07D209/86 CSP
C09K11/06 645
H01L27/32
G09F9/30 365
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017106223
(22)【出願日】2017-05-30
(65)【公開番号】P2018200999
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】516003621
【氏名又は名称】株式会社Kyulux
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 礼隆
(72)【発明者】
【氏名】ピン クエン ダニエル ザン
(72)【発明者】
【氏名】那須 圭朗
(72)【発明者】
【氏名】能塚 直人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善丈
(72)【発明者】
【氏名】藤村 秀俊
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144224(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0035376(KR,A)
【文献】特表2016-520999(JP,A)
【文献】国際公開第2013/154064(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50-51/56
H05B 33/00-33/28
C07D 209/86
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物を含む膜。
【化1】
[一般式(1)において、Rはシアノ基を表し、R、R~Rは各々独立に下記一般式(12)で表される基を表す。]
【化2】
[一般式(12)において、R31、R32、R34、R35、R37、R38は各々独立に水素原子または置換基を表し、R33およびR36は各々独立に置換基を表すが、R 33 およびR 36 の少なくとも一方は置換もしくは無置換のアルキル基である。]
【化3】
[一般式(2)において、R'~R28'は各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基を表す。R29'~R31'は各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
【請求項2】
下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物を有機溶媒に溶解した溶液を塗布する工程を含む膜の製造方法。
【化4】
[一般式(1)において、Rはシアノ基を表し、R、R~Rは各々独立に下記一般式(12)で表される基を表す。]
【化5】
[一般式(12)において、R31、R32、R34、R35、R37、R38は各々独立に水素原子または置換基を表し、R33およびR36は各々独立に置換基を表すが、R 33 およびR 36 の少なくとも一方は置換もしくは無置換のアルキル基である。]
【化6】
[一般式(2)において、R'~R28'は各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基を表す。R29'~R31'は各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
【請求項3】
前記塗布をインクジェット方式で行う、請求項2に記載の膜の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物を含む有機発光素子。
【化7】
[一般式(1)において、Rはシアノ基を表し、R、R~Rは各々独立に下記一般式(12)で表される基を表す。]
【化8】
[一般式(12)において、R31、R32、R34、R35、R37、R38は各々独立に水素原子または置換基を表し、R33およびR36は各々独立に置換基を表すが、R 33 およびR 36 の少なくとも一方は置換もしくは無置換のアルキル基である。]
【化9】
[一般式(2)において、R'~R28'は各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基を表す。R29'~R31'は各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物を同じ層に含む、請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
、R~Rの少なくとも1つが、R31~R38の少なくとも1つが分枝アルキル基である一般式(12)で表される基である、請求項4または5に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記一般式(2)のR'、R'、R16'、R21'の少なくとも1つが、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基である、請求項4~6のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記一般式(2)のR'、R'、R16'、R21'のすべてが、各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基である、請求項4~6のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項9】
量子ドットを含む発光層を有する、請求項4~8のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項10】
有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項4~9のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項11】
遅延蛍光を放射する、請求項4~10のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項12】
請求項4~11のいずれか1項に記載の有機発光素子を備えた照明装置。
【請求項13】
白色光を発する、請求項12に記載の照明装置。
【請求項14】
バックライトである、請求項12または13に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゼン環にシアノ基が2つ以上とカルバゾリル基等が1つ以上置換した化合物とルブレン化合物とを組み合わせて用いた膜と、その膜の製造方法に関する。また、これら2種の化合物を組み合わせて用いた有機発光素子と、それを用いた照明装置に関する。さらに、新規なジシアノベンゼン化合物とその合成中間体にも関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、正孔輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。その中には、遅延蛍光を放射する化合物に着目した研究も見受けられる。
遅延蛍光は、エネルギー供与により励起状態になった化合物において、励起三重項態から励起一重項状態への逆項間交差が生じた後、その励起一重項状態から基底状態に戻る際に放射される蛍光であり、直接生じた励起一重項状態からの蛍光(通常の蛍光)よりも遅れて観測される蛍光である。こうした遅延蛍光を放射しうる化合物を有機エレクトロルミネッセンス素子の発光材料に用いると、その形成確率が大きい励起三重項状態のエネルギーが蛍光に変換されて発光に有効利用できるため、高い発光効率が見込めることになる。このため、遅延蛍光を放射する化合物の開発が盛んに進められ、そのような化合物を発光材料に利用する提案も幾つかなされている。
例えば特許文献1には、下記の構造を有する4CzIPNのように、ベンゼン環にシアノ基が2つ以上とカルバゾリル基等が1つ以上置換した化合物が、遅延蛍光を放射することができる化合物であることが記載されている。そして、このような化合物を有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光材料として用いれば、発光効率を高めることができることが記載されている。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5366106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような化合物とホスト材料からなる共蒸着膜を発光層とする有機発光素子は、高い発光効率を示すものの、比較的短波長領域で発光するものが多い。このため、高い発光効率を示しながら、より長波長領域で発光する有機発光素子を提供する技術が必要とされている。
このような状況下において本発明者らは、ベンゼン環にシアノ基が2つ以上とカルバゾリル基等が1つ以上置換した化合物を使用しつつも、より長波長領域で発光し、発光効率が高くて、さらに駆動寿命も長い有機発光素子を提供することを目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、ベンゼン環にシアノ基が2つ以上とカルバゾリル基等が1つ以上置換した化合物を特定のルブレン化合物と組み合わせて用いることにより、より長波長領域で発光し、発光効率が高くて駆動寿命が長い有機発光素子を実現できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて提案されたものであり、以下の構成を有する。
【0006】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物を含む膜。
【化2】
[一般式(1)において、R1~R5の少なくとも1つはシアノ基を表し、R1~R5の少なくとも1つは下記一般式(11)で表される基を表し、残りのR1~R5は水素原子または置換基(ただしシアノ基と一般式(11)で表される基は除く)を表す。]
【化3】
[一般式(11)において、R21~R28は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、下記<A>か<B>の少なくとも一方を満たす。
<A> R25およびR26は一緒になって単結合を形成する。
<B> R27およびR28は一緒になって置換もしくは無置換のベンゼン環を形成するのに必要な原子団を表す。]
【化4】
[一般式(2)において、R1'~R28'は各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基を表す。R29'~R31'は各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
[2] 前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物で表される化合物を有機溶媒に溶解した溶液を塗布する工程を含む膜の製造方法。
[3] 前記塗布をインクジェット方式で行う、[2]に記載の膜の製造方法。
[4] 前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物を含む有機発光素子。
[5] 前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物を同じ層に含む、[4]に記載の有機発光素子。
[6] 前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(1’)で表される化合物である、[4]または[5]に記載の有機発光素子。
【化5】
[一般式(1’)におけるRA1~RA5の少なくとも1つはシアノ基を表し、RA1~RA5の少なくとも1つは分枝アルキル置換カルバゾリル基を表し、残りのRA1~RA5は水素原子または置換基(ただしシアノ基と分枝アルキル置換カルバゾリル基は除く)を表す。]
[7] 前記一般式(2)のR2'、R6'、R16'、R21'の少なくとも1つが、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基である、[4]~[6]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[8] 前記一般式(2)のR2'、R6'、R16'、R21'のすべてが、各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基である、[4]~[6]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[9] 量子ドットを含む発光層を有する、[4]~[8]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[10] 有機エレクトロルミネッセンス素子である、[4]~[9]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[11] 遅延蛍光を放射する、[4]~[10]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
[12] [4]~[11]のいずれか1項に記載の有機発光素子を備えた照明装置。
[13] 白色光を発する、[12]に記載の照明装置。
[14] バックライトである、[12]または[13]に記載の照明装置。
[15] 下記一般式(12’)で表される化合物。
【化6】
[一般式(12’)において、RA31~RA38の少なくとも1つがアシル基または分枝アルキル基を表し、その他のRA31~RA38は水素原子または置換基(ただしアシル基および分枝アルキル基は除く)を表す。]
[16] 下記一般式(1’)で表される化合物。
【化7】
[一般式(1’)におけるRA1~R A5の少なくとも1つはシアノ基を表し、RA1~R A5の少なくとも1つは分枝アルキル置換カルバゾリル基を表し、残りのRA1~R A5は水素原子または置換基(ただしシアノ基と分枝アルキル置換カルバゾリル基は除く)を表す。]
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ベンゼン環にシアノ基が2つ以上とカルバゾリル基等が1つ以上置換した化合物を用いながらも、高い発光効率で長波長領域発光し、なおかつ駆動寿命が長い有機発光素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべて1Hであってもよいし、一部または全部が2H(デューテリウムD)であってもよい。
【0010】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明では、下記一般式(1)で表される化合物を用いる。
【化8】
【0011】
一般式(1)において、R1~R5の少なくとも1つはシアノ基を表し、R1~R5の少なくとも1つは下記一般式(11)で表される基を表し、残りのR1~R5は水素原子または置換基(ただしシアノ基と一般式(11)で表される基は除く)を表す。
【化9】
一般式(11)において、R21~R28は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、下記<A>か<B>の少なくとも一方を満たす。両方とも満たしていてもよい。
<A> R25およびR26は一緒になって単結合を形成する。
<B> R27およびR28は一緒になって置換もしくは無置換のベンゼン環を形成するのに必要な原子団を表す。
【0012】
一般式(1)において、R1~R5の少なくとも1つはシアノ基を表す。いずれか1つがシアノ基であるとき、そのシアノ基はR1~R3のいずれであってもよい。いずれか2つがシアノ基である場合は、R1とR3の組み合わせや、R2とR4の組み合わせを例示することができる。いずれか3つがシアノ基である場合は、R1とR3とR4の組み合わせを例示することができる。
【0013】
一般式(1)において、R1~R5の少なくとも1つは上記一般式(11)で表される基を表す。2つ以上が一般式(11)で表される基を表すとき、それらは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることがより好ましい。
一般式(11)で表される基は、例えば下記一般式(12)~(15)のいずれかで表される構造を有するものであることが好ましい。特に下記一般式(12)で表される構造を有するものであることが好ましい。
【化10】
【0014】
一般式(12)~(15)において、R31~R38、R41~R46、R51~R62およびR71~R80は、各々独立に水素原子または置換基を表す。一般式(12)~(15)で表される基が置換基を有するときの置換位置や置換数は特に制限されない。各基の置換数は、0~6個が好ましく、0~4個がより好ましく、例えば0~2個とすることも好ましい。複数の置換基を有するとき、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることがより好ましい。
一般式(12)で表される基が置換基を有する場合は、R32~R37のいずれかが置換基であることが好ましい。例えば、R32とR37が置換基である場合、R33とR36が置換基である場合、R34とR35が置換基である場合を好ましく例示することができる。
一般式(13)で表される基が置換基を有する場合は、R42~R46のいずれかが置換基であることが好ましい。例えば、R42が置換基である場合と、R43が置換基である場合を好ましく例示することができる。
一般式(14)で表される基が置換基を有する場合は、R52~R60のいずれかが置換基であることが好ましい。例えば、R52~R54のいずれかがが置換基である場合、R55~R60のいずれかが置換基である場合を好ましく例示することができる。
一般式(15)で表される基が置換基を有する場合は、R72~R74およびR77~R79のいずれかが置換基であることが好ましい。例えば、R72とR79が置換基である場合、R73とR78が置換基である場合、R74とR77が置換基である場合、R72、R74、R77およびR79が置換基である場合を好ましく例示することができる。特に、R74とR77が置換基である場合、R72、R74、R77およびR79が置換基である場合をより好ましく例示することができる。このときの置換基は、各々独立に炭素数1~20の置換もしくは無置換のアルキル基、または炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基であることが特に好ましく、炭素数1~6の無置換のアルキル基、炭素数6~10の無置換のアリール基、または炭素数6~10のアリール基で置換された炭素数6~10のアリール基であることがさらにより好ましい。
【0015】
一般式(11)のR21~R28、一般式(12)のR31~R38、一般式(13)のR41~R46、一般式(14)のR51~R62および、一般式(15)のR71~R80がとりうる置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルキル置換アミノ基、炭素数2~20のアシル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基、炭素数12~40のジアリールアミノ基、炭素数12~40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキルスルホニル基、炭素数2~10のアルキルアミド基、炭素数7~41のアリールアミド基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12~40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12~40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基である。さらに好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数6~15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
【0016】
本明細書でいうアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。また、直鎖部分と環状部分と分枝部分のうちの2種以上が混在していてもよい。アルキル基の炭素数は、例えば1以上、2以上、4以上、6以上とすることができる。また、炭素数は30以下、20以下、10以下、6以下、4以下とすることができる。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デカニル基、イソデカニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。
【0017】
本明細書でいうアリール基は、芳香族炭化水素環1つだけからなる基であってもよいし、芳香族炭化水素環に1つ以上の環が縮合した基であってもよい。芳香族炭化水素環に1つ以上の環が縮合した基である場合は、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環および非芳香族複素環のうちの1以上が芳香族炭化水素環に縮合した基を採用することができる。アリール基の炭素数は、例えば6以上、10以上、14以上、18以上とすることができる。また、炭素数は30以下、18以下、14以下、10以下とすることができる。アリール基の具体例として、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基を挙げることができる。
【0018】
本明細書でいうヘテロアリール基は、複素芳香環1つだけからなる基であってもよいし、複素芳香環に1つ以上の環が縮合した基であってもよい。複素芳香環に1つ以上の環が縮合した基である場合は、芳香族炭化水素環、複素芳香環、脂肪族炭化水素環および非芳香族複素環のうちの1以上が芳香族炭化水素環に縮合した基を採用することができる。ヘテロアリール基の環骨格構成原子数は、例えば5以上、6以上、10以上、14以上、18以上とすることができる。また、炭素数は30以下、18以下、14以下、10以下とすることができる。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して結合する基であっても複素芳香環を構成する炭素原子を介して結合する基であってもよい。ヘテロアリール基の複素芳香環の環骨格を構成するヘテロ原子として、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子を挙げることができる。ヘテロアリール基の具体例として、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ピリミジル基、4-ピリミジル基、5-ピリミジル基、トリアジニル基、9-カルバゾリル基、10-フェノキサジル基、10-フェノチアジル基を挙げることができる。
【0019】
本明細書でいうハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0020】
本明細書でいうアルケニル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。また、直鎖部分と環状部分と分枝部分のうちの2種以上が混在していてもよい。アルケニル基の炭素数は、例えば2以上、4以上、6以上とすることができる。また、炭素数は30以下、20以下、10以下、6以下、4以下とすることができる。アルケニル基の具体例として、エテニル基、n-プロペニル基、イソプロペニル基、n-ブテニル基、イソブテニル基、tert-ブテニル基、n-ペンテニル基、イソペンテニル基、n-ヘキセニル基、イソヘキセニル基、2-エチルヘキセニル基、n-ヘプテニル基、イソヘプテニル基、n-オクテニル基、イソオクテニル基、n-ノネル基、イソノネル基、n-デケニル基、イソデケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基を挙げることができる。
【0021】
本明細書でいうアルキニル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。また、直鎖部分と環状部分と分枝部分のうちの2種以上が混在していてもよい。アルキニル基の炭素数は、例えば2以上、4以上、6以上とすることができる。また、炭素数は30以下、20以下、10以下、6以下、4以下とすることができる。アルケニル基の具体例として、エチニル基、n-プロピニル基、イソプロピニル基、n-ブチニル基、イソブチニル基、tert-ブチニル基、n-ペンチニル基、イソペンチニル基、n-ヘキシニル基、イソヘキシニル基、2-エチルヘキシニル基、n-ヘプチニル基、イソヘプチニル基、n-オクチニル基、イソオクチニル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デキニル基、イソデキニル基、シクロヘキシニル基、シクロヘプチニル基を挙げることができる。
【0022】
本明細書でいうアルコキシ基のアルキル部分の説明と具体例、アルキルチオ基のアルキル部分の説明と具体例、本明細書でいうアルキル置換アミノ基のアルキル部分の説明と具体例、本明細書でいうアシル基のアルキル部分(アシル基からカルボニル基を除いた部分)の説明と具体例、本明細書でいうアルコキシカルボニル基のアルキル部分の説明と具体例、本明細書でいうアルキルスルホニル基のアルキル部分の説明と具体例、本明細書でいうアルキルアミド基のアルキル部分の説明と具体例、本明細書でいうトリアルキルシリル基のアルキル部分の説明と具体例、本明細書でいうトリアルキルシリルアルキル基の各アルキル部分の説明と具体例、本明細書でいうトリアルキルシリルアルケニル基のアルキル部分の説明と具体例、本明細書でいうトリアルキルシリルアルキニル基のアルキル部分の説明と具体例については、上記のアルキル基の説明と具体例を参照することができる。
【0023】
本明細書でいうジアリールアミノ基のアリール部分の説明と具体例、本明細書でいうアリールアミド基のアリール部分の説明と具体例については、上記のアリール基の説明と具体例を参照することができる。
本明細書でいうトリアルキルシリルアルケニル基のアルケニル部分の説明と具体例については、上記のアルケニル基の説明と具体例を参照することができる。
本明細書でいうトリアルキルシリルアルキニル基のアルキニル部分の説明と具体例については、上記のアルキニル基の説明と具体例を参照することができる。
【0024】
本発明の好ましい一態様を例示すると、一般式(11)で表される基は、置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1-インドリル基、または置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることが好ましい。すなわち、一般式(1)のR1~R5のいずれか1つは、置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1-インドリル基、または置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることが好ましい。一般式(1)のR1~R5のいずれか2つ以上が、置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1-インドリル基、または置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることがより好ましい。
【0025】
一般式(1)において、R1~R5のいずれか1つが一般式(11)で表される基である場合は、R1~R3のいずれであってもよい。いずれか2つが一般式(11)で表される基である場合は、R1とR3の組み合わせや、R2とR4の組み合わせを例示することができる。いずれか3つが一般式(11)で表される基である場合は、R1とR3とR4の組み合わせを例示することができる。
【0026】
一般式(11)で表される基が結合しているベンゼン環の2つのオルト位のうちのいずれか一方はシアノ基であることが好ましい。2つのオルト位の両方がシアノ基であってもよい。また、ベンゼン環に一般式(11)で表される基が2つ以上結合している場合は、それらのうちの少なくとも2つが、一般式(11)で表される基が結合しているベンゼン環の2つのオルト位のうちのいずれか一方はシアノ基であるという条件を満たしていることが好ましい。
【0027】
一般式(1)において、R1~R5の少なくとも1つはシアノ基を表し、R1~R5の少なくとも1つは上記一般式(11)で表される基を表すが、残りのR1~R5は水素原子または置換基(ただしシアノ基と一般式(11)で表される基は除く)を表す。
【0028】
1~R5がとりうる好ましい置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルキル置換アミノ基、炭素数2~20のアシル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキルスルホニル基、アミド基、炭素数2~10のアルキルアミド基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1~20の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。さらに好ましい置換基は、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1~10の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数6~15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3~12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。さらになお好ましくは、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子である。
【0029】
一般式(1)において、R1~R5のうち水素原子であるものは3つ以下であることが好ましく、2つ以下であることがより好ましく、1つ以下であることがさらに好ましく、0であることも好ましい。
【0030】
好ましい組み合わせとして、例えば、一般式(1)のR1~R5の1~4つがシアノ基であり、R1~R5の少なくとも1つが置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1-インドリル基、または置換もしくは無置換のジアリールアミノ基のいずれかであり、残りのR1~R5が、各々独立にヒドロキシ基またはハロゲン原子である場合を挙げることができる。別の好ましい組み合わせとして、R1~R5の1~4つがシアノ基であり、残りのR1~R5が、各々独立に置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1,2,3,4-テトラヒドロ-9-カルバゾリル基、置換もしくは無置換の1-インドリル基、または置換もしくは無置換のジアリールアミノ基のいずれかである場合を挙げることもできる。別の好ましい組み合わせとして、一般式(1)のR1~R5の1~4つがシアノ基であり、R1~R5の少なくとも1つが置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基であり、残りのR1~R5が、各々独立にヒドロキシ基またはハロゲン原子である場合を挙げることもできる。別の好ましい組み合わせとして、一般式(1)のR1~R5の1~4つがシアノ基であり、残りのR1~R5が置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基である場合を挙げることもできる。別の好ましい組み合わせとして、一般式(1)のR1~R5の1~3つがシアノ基であり、R1~R5の少なくとも1つが置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基であり、残りのR1~R5がヒドロキシ基である(ただしR1~R5の少なくとも1つはヒドロキシ基)場合を挙げることもできる。別の好ましい組み合わせとして、一般式(1)のR1~R5の少なくとも1~3つがシアノ基であり、R1~R5の少なくとも1つが置換もしくは無置換の9-カルバゾリル基であり、残りのR1~R5がハロゲン原子である(ただしR1~R5の少なくとも1つはハロゲン原子)場合を挙げることもできる。
【0031】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下の例示化合物において、一般式(12)~(15)のいずれかで表される基が分子内に2つ以上存在している場合、それらの基はすべて同一の構造を有する。例えば、表1の化合物1では、一般式(1)のR1、R2、R4およびR5が一般式(12)で表される基であるが、それらの基はいずれも無置換の9-カルバゾリル基である。また、以下の表において式(21)~(24)と記載されているものは、本明細書に後掲の式(21)~(24)である。溶液製膜を行う場合は、例えば化合物1101~1112を好ましく採用することができる。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
以下において、一般式(1)で表される化合物のさらに別の具体例を例示する。以下の表における一般式(12a)と一般式(12b)は下記の通りである。また、表8および表9における「*1」は、一般式(1)のベンゼン環に結合する位置を示す。
【化11】
【0040】
【表8】
【0041】
【表9】
【0042】
【表10】
【0043】
表8~10中におけるD1~D60およびA1~A13の構造を以下に示す。
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【0047】
【化16】
【0048】
[一般式(1)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物は、既知の合成法を応用することにより合成することができる。例えば、下記一般式(3)で表される化合物に、下記一般式(11’)で表される化合物を反応させることにより合成することが可能である。
【化17】
【0049】
一般式(3)におけるRB1~RB5の少なくとも1つはシアノ基を表し、RB1~RB5の少なくとも1つはハロゲン原子を表し、残りのRB1~RB5は水素原子または置換基(ただしシアノ基とハロゲン原子は除く)を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示することができる。一般式(11’)におけるR21~R28の説明と具体例については、一般式(11)における対応する説明と具体例を参照することができる。
一般式(3)で表される化合物と一般式(11’)で表される化合物を反応させることにより、一般式(3)のハロゲン原子が結合していた位置に一般式(11’)の部分構造が置換し、結果として一般式(1)で表される化合物が得られる。一般式(3)で表される化合物のハロゲン原子の結合位置を適切に選択しておくことによって、所望の位置に一般式(11’)の部分構造が置換した化合物を得ることができる。
具体的な反応条件と反応工程については、後述の合成例を参考にすることができる。
【0050】
上記反応に用いる一般式(11’)で表される化合物は、下記の一般式(12’)で表される化合物を包含する。一般式(12’)のRA31~RA38の説明と具体例については、一般式(12)における対応する説明と具体例を参照することができる。
【化18】
【0051】
一般式(12’)において、RA31~RA38の少なくとも1つがアルキル基である化合物は、カルバゾールにアシルクロリドを反応させることによりアシル基を導入し、アシル基を還元してアルキル基に変換することにより得ることができる。アシル基の導入反応は、例えば塩化メチレン溶媒中で塩化アルミニウムの存在下で行うことができる。また、アルキル基への変換反応は、例えばテトラヒドロフラン中にて塩化アルミニウムの存在下でLiAlH4を作用させることにより行うことができる。これらの反応の具体的な反応条件と反応工程については、後述の合成例を参考にすることができる。
【0052】
反応中間体として得られるアシル置換カルバゾールやアルキル置換カルバゾールの例として、以下の群に属する化合物を挙げることができる。以下に記載されるRA31~RA38は一般式(12’)におけるRA31~RA38である。
(1)RA31~RA38の少なくとも1つがアシル基である化合物。
例えば、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数2以上のアシル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数3以上のアシル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数4以上のアシル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数5以上のアシル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数6以上のアシル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数7以上のアシル基である化合物、RA33がアシル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも2つがアシル基である化合物、RA33とRA36が各々独立にアシル基である化合物、RA33とRA36が同じアシル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが分枝アシル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数2以上のアルキル部分を2つ以上含むアシル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも2つがアシル基であって対称構造を有する化合物、RA31~RA38の少なくとも1つがアシル基であってその他のRが水素原子である化合物を挙げることができる。
(2)RA31~RA38の少なくとも1つが分枝アルキル基である化合物。
例えば、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数4以上の分枝アルキル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数5以上の分枝アルキル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数6以上の分枝アルキル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数7以上の分枝アルキル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが炭素数8以上の分枝アルキル基である化合物、RA33が分枝アルキル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも2つが分枝アルキル基である化合物、RA33とRA36が各々独立に分枝アルキル基である化合物、RA33とRA36が同じ分枝アルキル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも2つが分枝アルキル基であって対称構造を有する化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが2-エチルヘキシル基である化合物、RA31~RA38の少なくとも1つが分枝アルキル基であってその他のRが水素原子である化合物を挙げることができる。
【0053】
一般式(12’)で表されるアルキル置換カルバゾールを用いて、上記の反応式にしたがって反応させることにより、下記一般式(1’)で表される化合物を合成することができる。
【化19】
【0054】
一般式(1’)におけるRA1~R A5の少なくとも1つはシアノ基を表し、RA1~R A5の少なくとも1つは分枝アルキル置換カルバゾリル基を表し、残りのRA1~R A5は水素原子または置換基(ただしシアノ基と分枝アルキル置換カルバゾリル基は除く)を表す。
【0055】
シアノ基はRA1~RA5のうちの1~3つとしたり、1~2つとしたり、1つにしたりすることができる。例えば、少なくともRA2をシアノ基とすることができる。分枝アルキル置換カルバゾリル基は、RA1~RA5のうちの1~4つとしたり、2~4つとしたり、3~4つとしたり、4つとしたりすることができる。例えば、少なくともRA1を分枝アルキル置換カルバゾリル基としたり、少なくともRA2を分枝アルキル置換カルバゾリル基としたり、少なくともRA3を分枝アルキル置換カルバゾリル基としたりすることができる。また、少なくともRA1とRA3を分枝アルキル置換カルバゾリル基としたり、少なくともRA1とRA4を分枝アルキル置換カルバゾリル基としたり、少なくともRA1とRA5を分枝アルキル置換カルバゾリル基としたり、少なくともRA3とRA4を分枝アルキル置換カルバゾリル基としたり、少なくともRA3とRA5を分枝アルキル置換カルバゾリル基としたりすることができる。
分枝アルキル置換カルバゾリル基における分枝アルキル基の説明と具体例については、一般式(12’)の分枝アルキル基の説明と具体例を参照することができる。分枝アルキル置換カルバゾリル基としては、一般式(12’)の9位の水素原子を取り去った基を挙げることができる。
【0056】
[一般式(2)で表される化合物]
本発明では、下記一般式(2)で表される化合物を用いる。
【0057】
【化20】
【0058】
一般式(2)において、R1'~R28'は各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基を表す。
【0059】
1'~R28'が採りうるアルキル基の説明と具体例については、上記一般式(1)におけるアルキル基の説明と具体例を参照することができる。
一般式(2)のR1'~R28'のうちアルキル基の数は、例えば0以上、1以上、2以上、4以上、6以上、8以上にすることができる。また、一般式(2)のR1'~R28'のうちアルキル基の数は、例えば28以下、18以下、12以下、8以下、4以下、2以下にすることができる。
【0060】
1'~R28'が採りうるアリール基の説明と具体例については、上記一般式(1)におけるアルキル基の説明と具体例を参照することができる。
一般式(2)のR1'~R28'のうちアリール基の数は、例えば0以上、1以上、2以上、4以上、6以上、8以上にすることができる。また、一般式(2)のR1'~R28'のうちアリール基の数は、例えば28以下、18以下、12以下、8以下、4以下、2以下にすることができる。
【0061】
1'~R28'が採りうるヘテロアリール基の説明と具体例については、上記一般式(1)におけるアルキル基の説明と具体例を参照することができる。
一般式(2)のR1'~R28'のうちヘテロアリール基の数は、例えば0以上、1以上、2以上、4以上、6以上、8以上にすることができる。また、一般式(2)のR1'~R28'のうちヘテロアリール基の数は、例えば28以下、18以下、12以下、8以下、4以下、2以下にすることができる。
【0062】
上記のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、それぞれ置換基を有していてもよい。そのような置換基として、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のジアルキルアミノ基、炭素数12~30のジアリールアミノ基、炭素数2~20のアシル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数3~40のヘテロアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルキルスルホニル基、アミド基、炭素数2~10のアルキルアミド基、炭素数3~20のトリアルキルシリル基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5~20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは、例えばこれらの具体例の置換基により置換されていてもよい。
【0063】
1'~R28'が採りうるーSi(R29')(R30')(R31')で表される基におけるR29'~R31'は、各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。ここでいう置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基については、R1'~R28'の説明における対応する記載と範囲を参照することができる。
29'~R31'は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、3つのうち2つが同一で1つが異なっていても、3つすべてが互いに異なっていてもよい。R29'~R31'は、各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基(トリアルキルシリル基)であってもよく、また、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基(トリアリールシリル基)であってもよく、さらに、各々独立に置換もしくは無置換のヘテロアリール基(トリヘテロアリールシリル基)であってもよい。R29'~R31'の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基で、少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリール基であってもよく、また、R29'~R31'の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基で、少なくとも1つが置換もしくは無置換のヘテロアリール基であってもよく、さらに、R29'~R31'の少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリール基で、少なくとも1つが置換もしくは無置換のヘテロアリール基であってもよい。また、R29'~R31'の1つが置換もしくは無置換のアルキル基で、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であってもよい。
ーSi(R29')(R30')(R31')で表される基として、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、tertーブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、tertーブチルジフェニルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基、トリベンジルシリル基などを挙げることができる。
一般式(2)のR1'~R28'のうちーSi(R29')(R30')(R31')で表される基の数は、例えば0以上、1以上、2以上、4以上、6以上、8以上にすることができる。また、一般式(2)のR1'~R28'のうちーSi(R29')(R30')(R31')で表される基の数は、例えば28以下、18以下、12以下、8以下、4以下、2以下にすることができる。
【0064】
一般式(2)のR1'~R28'のうちの少なくとも1つは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基[以下において、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、またはーSi(R29')(R30')(R31')で表される基を「特定置換基」と称する]であることが好ましい。R1'~R28'のうちの特定置換基の数は、例えば2以上、4以上、6以上、8以上にすることができる。また、R1'~R28'のうちの特定置換基の数は、例えば28以下、18以下、12以下、8以下、4以下にすることができる。
特定置換基が置換されている位置は特に制限されない。例えば、1つのベンゼン環あたりの特定置換基数が0~3、0~2、0または1となるようにすることができる。例えば、特定置換基は下記の第1群の中から選択されるいずれかの位置に存在させることができ、その存在数は1以上、2以上、3以上、4以上としたり、12以下、8以下、4以下、2以下としたりすることができる。特定置換基は下記の第2群の中から選択されるいずれかの位置に存在させることもでき、その存在数は1以上、2以上、3以上、4以上としたり、8以下、6以下、4以下、2以下としたりすることができる。特定置換基は下記の第3群の中から選択されるいずれかの位置に存在させることもでき、その存在数は1以上、2以上、3以上、4以上としたり、8以下、6以下、4以下、2以下としたりすることができる。第1群の特定置換基数は0であってもよく、第2群の特定置換基数は0であってもよく、第3群の特定置換基数は0であってもよい。
(第1群)R1'、R4'、R5'、R8'、R9'、R13'、R14'、R18'、R19'、R23'、R24'、R28'
(第2群)R10'、R12'、R15'、R17'、R20'、R22'、R25'、R27'
(第3群)R2'、R3'、R6'、R7'、R11'、R16'、R21'、R26'
【0065】
特定置換基の置換位置の具体例として、R2'、R6'、R11'、R16'、R21'、R26'の6つ;R2'、R6'、R9'、R24'の4つ;R2'、R6'、R10'、R25'の4つ;R2'、R6'、R14'、R19'の4つ;R2'、R6'、R15'、R20'の4つ;R2'、R6'、R16'、R21'の4つ;R11'、R16'、R21'、R26'の4つ; R2'、R6'の2つ;R2'、R11'の2つ;R2'、R16'の2つ;R2'、R21'の2つ;R2'、R26'の2つ;R11'、R21'の2つ;R14'、R19'の2つ;R15'、R20'の2つ;R16'、R21'の2つ;R2'の1つ;R10'の1つ;R11'の1つを挙げることができる。
好ましい例として、R2'、R6'、R16'、R21'の4つが特定置換基である場合、さらには、R2'、R6'、R16'、R21'の4つが特定置換基であってその他のRが水素原子である場合を挙げることができる。他の好ましい例として、R2'、R6'、R16'、R21'の4つが置換もしくは無置換のアルキル基である場合、さらには、R2'、R6'、R16'、R21'の4つが無置換のアルキル基であってその他のRが水素原子である場合を挙げることができる。他の好ましい例として、R2'、R6'、R16'、R21'の4つが炭素数1~12のアルキル基である場合、さらには、R2'、R6'、R16'、R21'の4つが炭素数1~12のアルキル基であってその他のRが水素原子である場合を挙げることができる。他の好ましい例として、R2'、R6'、R16'、R21'の4つが炭素数4~12のアルキル基である場合、さらには、R2'、R6'、R16'、R21'の4つが炭素数4~12のアルキル基であってその他のRが水素原子である場合を挙げることができる。一般式(2)で表される化合物を蒸着製膜する場合はアルキル基の炭素数は1~4であることが好ましく、一般式(2)で表される化合物を溶液製膜する場合はアルキル基の炭素数は4~12であることが好ましい。他の好ましい例として、R2'、R6'、R16'、R21'の4つがtert-ブチル基である場合、さらには、R2'、R6'、R16'、R21'の4つがtert-ブチル基であってその他のRが水素原子である場合を挙げることができる。他の好ましい例として、R2'、R6'、R16'、R21'の4つが2-エチルヘキシル基である場合、さらには、R2'、R6'、R16'、R21'の4つが2-エチルヘキシル基であってその他のRが水素原子である場合を挙げることができる。
なお、一般式(2)のR1'~R28'のうちの近接する2つのRまたは3つのRが、互いに連結して環構造を形成することはない。
【0066】
以下の表に、一般式(2)で表される化合物の具体例を示す。
【表11】
【0067】
一般式(1)で表される化合物や一般式(2)で表される化合物の分子量は、例えばこれらの化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさ らに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)で表される最小化合物の分子量と一般式(2)で表される最小化合物の分子量である。
一般式(1)で表される化合物や一般式(2)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
【0068】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物や、分子内に一般式(2)で表される構造を複数個含む化合物や、分子内に1つ以上の一般式(1)で表される構造と1つ以上の一般式(2)で表される構造を含む化合物を用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造や一般式(2)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のR1~R5のいずれかに重合性官能基を含むモノマーや一般式(2)のR1'~R28'のいずれかに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を電荷輸送材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしをカップリングさせたり、一般式(2)で表される構造を有する化合物どうしをカップリングさせたり、一般式(1)で表される構造を有する化合物と一般式(2)で表される構造を有する化合物をカップリングさせたりすることにより、二量体や三量体を得て、それらを用いることも考えられる。
【0069】
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(4)または(5)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
【化21】
【0070】
一般式(4)または(5)において、Qは一般式(1)で表される構造または一般式(2)で表される構造を含む基を表し、L1およびL2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0~20であり、より好ましくは1~15であり、さらに好ましくは2~10である。連結基は-X11-L11-で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(4)または(5)において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換のアルコキシ基である。
1およびL2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)の構造のR1~R5のいずれか、一般式(2)のR1'~R28'のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
【0071】
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(21)~(24)で表される構造を挙げることができる。
【化22】
【0072】
これらの式(21)~(24)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)の構造のR1~R5のいずれか、一般式(2)のR1'~R28'のいずれかにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
【化23】
【0073】
分子内に一般式(1)や一般式(2)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)や一般式(2)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)や一般式(2)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)や一般式(2)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
【0074】
[膜と膜の製造方法]
本発明は、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物を含む膜を提供する。
一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の組み合わせは、任意に選択することができる。好ましい組み合わせとして、例えば、一般式(1)で表される化合物1、4、6、301、302、304、501、504、523と、一般式(2)で表される化合物2045~2291との任意の組み合わせを挙げることができる。また、一般式(1)で表される化合物1、4、6、301、302、304、501、504、523と、一般式(2)で表される化合物2045~2131との任意の組み合わせを挙げることができる。また、一般式(1)で表される化合物1、4、6、301、302、304、501、504、523と、一般式(2)で表される化合物2085~2131との任意の組み合わせを挙げることができる。また、一般式(1)で表される化合物301、302、304と、一般式(2)で表される化合物2088、2089、2097との任意の組み合わせを挙げることができる。また、一般式(1)で表される化合物302、304と、一般式(2)で表される化合物2097との任意の組み合わせを挙げることができる。
化合物1と化合物2045~2291とを順に組み合わせて含む膜を、それぞれ膜1-2045~膜1-2291としてここに具体的に開示する。化合物4と化合物2045~2291とを順に組み合わせて含む膜を、それぞれ膜4-2045~膜4-2291としてここに具体的に開示する。化合物6と化合物2045~2291とを順に組み合わせて含む膜を、それぞれ膜6-2045~膜6-2291としてここに具体的に開示する。化合物301と化合物2045~2291とを順に組み合わせて含む膜を、それぞれ膜301-2045~膜301-2291としてここに具体的に開示する。化合物302と化合物2045~2291とを順に組み合わせて含む膜を、それぞれ膜302-2045~膜302-2291としてここに具体的に開示する。化合物304と化合物2045~2291とを順に組み合わせて含む膜を、それぞれ膜304-2045~膜304-2291としてここに具体的に開示する。化合物501と化合物2045~2291とを順に組み合わせて含む膜を、それぞれ膜501-2045~膜501-2291としてここに具体的に開示する。化合物504と化合物2045~2291とを順に組み合わせて含む膜を、それぞれ膜504-2045~膜504-2291としてここに具体的に開示する。化合物523と化合物2045~2291とを順に組み合わせて含む膜を、それぞれ膜523-2045~膜523-2291としてここに具体的に開示する。
【0075】
膜内の一般式(1)で表される化合物の含有量は一般式(2)で表される化合物の含有量の例えば1倍以上にしたり、2倍以上にしたり、5倍以上にしたり、10倍以上にしたりすることができ、また、例えば200倍以下にしたり、100倍以下にしたり、50倍以下にしたり、30倍以下にしたりすることができる。
【0076】
また、膜には、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物以外の化合物が含まれていてもよい。例えば、有機発光素子の発光層におけるホスト材料として用いられる化合物が含まれていてもよい。具体的な材料例としては、後述のホスト材料として用いることができる化合物例を参照することができる。一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物以外の化合物であってホスト材料として用いられる化合物の膜内における含有量は、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の合計重量の例えば1倍以上にしたり、2倍以上にしたり、3倍以上にしたりすることができ、また、例えば100倍以下にしたり、10倍以下にしたり、5倍以下にしたりすることができる。
本発明の膜には、適切な励起光を照射したり、一対の電極間に挟み込んで通電したりすることにより、膜から発光させることが可能である。発光は、主として一般式(2)で表される化合物からの発光であってもよいし、膜中に存在させることが可能な他の発光材料からの発光であってもよい。本明細書でいう「主として」とは、膜からの全発光の50%超をしめる発光成分からの発光を意味する。主として発光する発光成分からの発光は、全発光の70%超、90%超、99%超とすることが可能である。一般式(1)や一般式(2)で表される化合物以外の発光材料としては、例えば量子ドット、それ以外の無機発光材料、有機発光材料を挙げることができる。一般式(1)や一般式(2)で表される化合物以外の発光材料が膜中に含まれている場合、そのような発光材料の含有量は、一般式(2)で表される化合物の例えば0.00001倍以上にしたり、0.0001倍以上にしたり、0.001倍以上にしたり、0.01倍以上にしたりすることができ、また、2倍以下にしたり、1倍以下にしたり、0.5倍以下にしたり、0.1倍以下にしたりすることができる。
【0077】
主として一般式(2)で表される化合物から発光する場合、その発光ピーク波長は、一般式(2)で表される化合物を除外した膜からの発光ピーク波長[すなわち一般式(1)で表される化合物からの発光ピーク波長]よりも長い。その発光ピーク波長の差は、例えば30nm以上にしたり、60nm以上にしたり、90nm以上にしたりすることができ、また、250nm以下にしたり、200nm以下にしたり、150nm以下にしたりすることができる。また、発光ピーク波長は、例えば480nm以上にしたり、510nm以上にしたり、530nm以上にしたりすることができ、また、700nm以下にしたり、650nm以下にしたり、600nm以下にしたりすることができる。
他の発光材料が膜中に含まれていて、その発光材料から主として発光する場合の発光ピーク波長は、その発光材料を除外した膜からの発光ピーク波長[すなわち一般式(2)で表される化合物からの発光ピーク波長]よりも長い。その発光ピーク波長の差は、例えば10nm以上にしたり、30nm以上にしたり、60nm以上にしたりすることができ、また、250nm以下にしたり、200nm以下にしたり、150nm以下にしたりすることができる。また、発光ピーク波長は、例えば500nm以上にしたり、600nm以上にしたり、650nm以上にしたりすることができ、また、800nm以下にしたり、750nm以下にしたり、700nm以下にしたりすることができる。
【0078】
本発明の膜の厚みは、例えば0.1nm以上にしたり、1nm以上にしたり、5nm以上にしたり、10nm以上にしたりすることができ、また、100nm以下にしたり、50nm以下にしたり、30nm以下にしたりすることができる。
【0079】
本発明の膜の製造方法は特に制限されない。例えば、膜を構成する各成分を異なる蒸着源から共蒸着させることにより膜を形成してもよいし、膜を構成する各成分を溶剤中に溶解させた溶液を塗布した後に乾燥することにより膜を形成してもよい。溶剤としては、例えばトルエン、ヘキサン、ハロゲン溶媒、アルコール系溶媒、水などを用いることができる。溶剤に溶けやすくするために、例えば一般式(2)で表される化合物として、炭素数が4以上のアルキル基や、炭素数が6以上のアルキル基や、炭素数が8以上のアルキル基を有する化合物を好ましく採用することができる。塗布する方法としては、インクジェット法、スピンコート法、キャスト法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、エアーナイフ塗布法、ワイヤーバー塗布法、グラビア塗布法、フレキソ塗布法、リバース塗布法、リバースロール塗布法、エクストルージョン塗布法、スクリーン法、マイクロコンタクト法、ディップコート法、SAM(Self-assembled Monolayer)法などを適宜選択して採用することができる。
【0080】
[有機発光素子]
本発明は、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物を含む有機発光素子を提供する。一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物は同じ層に含まれていても、異なる層(例えば隣接する層)に含まれていてもよい。好ましいのは、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物が同じ層に含まれている場合であり、その場合は上記の膜と膜の製造方法を、本発明の有機発光素子の層と層の形成方法として採用することができる。一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物が含まれている層は、例えば発光層とすることができる。あるいは、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物が含まれている層は、発光層(例えば量子ドットを含む層)に隣接する層とすることができる。
本発明の有機発光素子は、主として一般式(2)で表される化合物から発光するものであってもよいし、一般式(1)や一般式(2)で表される化合物以外の発光材料から主として発光するものであってもよい。一般式(1)や一般式(2)で表される化合物以外の発光材料としては、例えば量子ドット、それ以外の無機発光材料、有機発光材料を挙げることができる。一般式(1)で表される化合物は、エネルギーを一般式(2)やその他の発光材料へ移動することができるが、本発明の有機発光素子からの発光には、一般式(1)で表される化合物からの発光が含まれていてもよい。一般式(1)で表される化合物からの発光は、有機発光素子からの全発光の例えば20%未満にしたり、10%未満にしたり、5%未満にしたり、1%未満にしたり、0.1%未満にしたりすることができる。また、一般式(1)や一般式(2)で表される化合物以外の発光材料から主として発光する場合であっても、一般式(2)で表される化合物からの発光が含まれていてもよい。一般式(2)で表される化合物からの発光は、有機発光素子からの全発光の例えば20%未満にしたり、10%未満にしたり、5%未満にしたり、1%未満にしたり、0.1%未満にしたりすることができる。
一般式(1)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射しうる化合物がある。このため、本発明の有機発光素子は遅延蛍光を放射するものとして構成することが可能である。遅延蛍光は、通常の蛍光よりも減衰が遅くて、発光寿命が長い。遅延蛍光の発光寿命は、例えば0.05μs以上であったり、0.2μs以上であったり、0.5μs以上であったりすることがある。
【0081】
本発明の有機発光素子は、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などとして提供することができる。有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
【0082】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0083】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23-ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.(ohms per square)以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10~1000nm、好ましくは10~200nmの範囲で選ばれる。
【0084】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.(ohms per square)以下が好ましく、膜厚は通常10nm~5μm、好ましくは50~200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0085】
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。本発明では、例えば一般式(1)で表される化合物をホスト材料として用いて、一般式(2)で表される化合物を発光材料(ドーパント)として用いることができる。また、一般式(1)や一般式(2)で表される化合物以外のホスト材料を用いて、一般式(1)で表される化合物を第1のドーパント(アシストドーパント)として用いて、一般式(2)で表される化合物を第2のドーパント(発光材料)として用いることもできる。さらには、一般式(1)で表される化合物をホスト材料として用いて、一般式(2)で表される化合物を第1のドーパント(アシストドーパント)として用いて、さらに別の化合物を第2のドーパント(発光材料)として用いることもできる。あるいは、発光層には量子ドットやその他の無機材料や有機材料を発光材料として採用し、一般式(1)や一般式(2)で表される化合物は発光層に隣接する層に存在させることもできる。
一般式(1)や一般式(2)で表される化合物以外にホスト材料を用いる場合、そのようなホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が一般式(1)や一般式(2)で表される化合物よりも高い値を有する有機化合物を用いることが好ましい。その結果、一般式(1)や一般式(2)で表される化合物に生成した一重項励起子および三重項励起子を、分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。なお、本発明の有機発光素子からの発光の中にはホスト材料からの発光が含まれていてもかまわない。
発光層における一般式(1)で表される化合物や一般式(2)で表される化合物やその他の材料の含有量については、上記の膜中の各化合物や材料の含有量の記載を参照することができる。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物を用いることが好ましい。
【0086】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0087】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0088】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0089】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0090】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0091】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0092】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0093】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)や一般式(2)で表される化合物を1層の有機層に用いるだけでなく、複数の有機層に用いてもよい。その際、各有機層に用いる一般式(1)や一般式(2)で表される化合物は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0094】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。
【0095】
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【化24】
【0096】
【化25】
【0097】
【化26】
【0098】
【化27】
【0099】
【化28】
【0100】
発光層に採用することができる量子ドットについて説明する。量子ドットは、量子閉じ込め効果を有するナノサイズの半導体粒子である。量子ドットの構成材料種や粒子径を調節することによって、量子ドットのバンドギャップ値を制御することができる。このため、所望の波長領域で発光する量子ドットを準備しやすいという利点がある。それにより、目的とする発光色度をカラーフィルターを用いずに実現できるため、高効率を実現できる。本発明で用いることができる量子ドットの直径は2~10nmであるものが好ましく、4~8nmであるものがより好ましく、5~6nmであるものがさらに好ましい。
量子ドットの構成材料種は特に制限されない。通常は、周期表第14~16族から選択される1以上の元素により構成された量子ドットを好ましく用いることができる。例えば、C、Si、Ge、Sn、P、Se、Teなどの単一元素からなる単体であってもよいし、2つ以上の元素からなる化合物であってもよい。2つ以上の元素からなる量子ドットとしては、SiC、SnO2、Sn(II)Sn(IV)S3、SnS2、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、BN、BP、BAs、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、Al23、Al2Se3、Ga23、Ga2Se3、Ga2Te3、In23、In23、In2Se3、In2Te3、TlCl、TlBr、TlI、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS)、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、As23、As2Se3、As2Te3、Sb23、Sb2Se3、Sb2Te3、Bi23、Bi2Se3、Bi2Te3、Cu2O、Cu2Se、CuCl、CuBr、CuI、AgCl、AgBr、NiO、CoO、CoS、Fe34、FeS、MnO、MoS2、WO2、VO、VO2、Ta25、TiO2、Ti25、Ti23、Ti59、MgS、MgSe、CdCr24、CdCr2Se4、CuCr24、HgCr2Se4、BaTiO3を挙げることができる。また、これらを混合して用いることもできる。上記の例示の中では、CdSe、ZnSe、CdS、CdSeS/ZnSを好ましく採用することができる。また、本発明では、市販の量子ドットを用いることもできる。例えば、Aldorich社製の型番753785や753742などを好ましく用いることができる。
本発明で用いる量子ドットは、表面がコーティングされているものであってもよい。
量子ドットは、適切な溶剤に溶解させた溶液を用いてスピンコートする等の方法により製膜することができる。溶剤としては、例えばトルエン、ヘキサン、ハロゲン溶媒、アルコール系溶媒、水などを用いることができる。
【0101】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0102】
【化29】
【0103】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0104】
【化30】
【0105】
【化31】
【0106】
【化32】
【0107】
【化33】
【0108】
【化34】
【0109】
【化35】
【0110】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0111】
【化36】
【0112】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0113】
【化37】
【0114】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0115】
【化38】
【0116】
【化39】
【0117】
【化40】
【0118】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0119】
【化41】
【0120】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0121】
【化42】
【0122】
本発明の有機発光素子は白色発光素子とすることができる。白色発光素子とすることにより、例えば照明装置やバックライトとして利用することができる。白色発光素子とするには、2種以上の発光材料を用いて2種以上の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を実現することが好ましい。2種以上の発光色の組み合わせとしては、例えば青色、緑色、赤色の3原色や、補色の関係にある2色の組み合わせを例示することができる。補色の関係にあるものとして、青色と黄色、青緑と橙色等を例示することができる。これら2種以上の発光色を発光する2種以上の発光材料を、本発明の有機発光素子に使用することにより、白色発光素子とすることが可能である。
2種以上の発光材料は、単一の発光層に共存させてもよいし、異なる発光層に個別に存在させてもよい。例えば、青色発光材料、緑色発光材料、赤色発光材料の3種の発光材料を用いる場合は、青色発光材料層、緑色発光材料層、赤色発光材料層を設けてもよい。このとき、各発光層は積層されていてもよいし、同一平面内に並列配置されていてもよい。例えば、青色発光材料層、緑色発光材料層、赤色発光材料層であれば、これらの層が積層されていてもよいし、同一平面内に青色発光材料層領域、緑色発光材料層領域、赤色発光材料層領域がアレー状に並列配置されていてもよい。積層されている場合は、青色発光材料層、緑色発光材料層、赤色発光材料層が任意の順に互いに接するように積層されていてもよいし、間に別の層を挟んで積層されていてもよい。
具体的な白色発光素子の構成例として、例えば特開2016-149368号公報の図1図8に記載されている構成例や、各実施例に記載されている具体的な構成例(段落0044~0079、段落0129~0133も参照);特開2015-32582号公報の図1に記載されている構成例や、各実施例に記載されている具体的な構成例;特開2015-130335号公報の図1に記載されている構成例や、各実施例に記載されている具体的な構成例を挙げることができる。これらの具体例の中のイエローグリーン発光層等の発光層に、本発明の一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物を含む層として構成することにより、白色発光素子とすることができる。
【0123】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
【0124】
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定であり、熱失活の速度定数が大きく、発光の速度定数が小さいことから直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
【0125】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX-Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物を用いることにより、発光効率と駆動寿命が改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例
【0126】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR-3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
【0127】
(合成例)化合物1108の合成
(1)中間体1の合成
【化43】
【0128】
窒素気流下、塩化アルミニウム(18.6g、139.4mmol)のジクロロメタン溶液(150mL)を0℃に冷却し、2-エチルヘキサノイルクロリド(22.67g、139.4mmol)を滴下した。0℃で20分間攪拌した後、同温度下、9H-カルバゾール(10.0g、59.8mmol)を加えた。冷却バスを取り外し、徐々に室温に戻しながら20時間攪拌した。この反応混合物を氷水に加えクエンチし、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムにより乾燥させた。これを減圧濃縮し、得られた粗生成物をヘキサン洗浄することで、白色固体の中間体1(収量22.36g、53.29mmol、収率89.4%)を得た。
1H-NMR(500MHz、CDCl3、δ):8.81(d,J=1.5Hz,2H)、8.54(s,1H)、8.16(dd,J=8.5Hz,1.5Hz,2H)7.51(d,J=8.5Hz,2H),3.58-3.53(m,2H)、1.92―1.82(m、4H)、1.69-1.58(m、4H)、1.35-1.27(m、8H)、0.94(t,J=7.5Hz、6H)、0.88-0.85(m、6H)
ASAPマススペクトル分析:理論値419.2、観測値419.2
【0129】
(2)中間体2の合成
【化44】
【0130】
窒素気流下、塩化アルミニウム(3.18g,23.82mmol)のテトラヒドロフラン溶液(250mL)を0℃に冷却し、水素化アルミニウムリチウム(1.81g,47.6mmol)を加えた。同温度下、中間体1(5.0g,11.91mmol)のテトラヒドロフラン溶液(25mL)を滴下し、10分間攪拌した。冷却バスを取り外し、徐々に室温に戻しながら72時間攪拌した。この反応混合物を氷水に加えてクエンチし、酢酸エチルにより抽出、有機層を10%塩酸、飽和食塩水により洗浄、無水硫酸マグネシウムにより乾燥させた。これを減圧濃縮し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:2)で精製し、白色液体の中間体2(4.52g、11.54mmol、収率97.0%)を得た。
1H-NMR(500MHz、CDCl3,δ):7.84(s,1H)、7.81(d、J=1.5Hz、2H)、7.30(d,J=8.5Hz、2H),7.18(dd,J=8.5Hz、1.5Hz、2H)、2.73-2.65(m,4H)、1.68-1.61(m、2H)、1.39-1.25(m、16H)、0.92-0.87(m、12
H)
ASAPマススペクトル分析:理論値391.3、観測値391.3
【0131】
(3)化合物1108の合成
【化45】
【0132】
窒素気流下、水素化ナトリウム(60% in oil、0.22g、5.52mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)に、中間体2(1.8g,4.60mmol)のテトラヒドロフラン溶液(5mL)を滴下した。室温30分間攪拌した後、テトラフルオロイソフタロニトリル(0.184g,0.92mmol)を加え、18時間攪拌した。この反応混合物を飽和塩化アンモニウム水でクエンチし、酢酸エチルより抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。これを減圧濃縮し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:10)で精製し、淡黄色液体の化合物1108(1.45g、0.86mmol、収率93.5%)を得た。
1H-NMR(500MHz、CDCl3,δ):7.94(d,J=1.5Hz、2H)、7.59(d、J=8.5Hz、2H)7.47(dd、J=8.5Hz、1.5Hz、2H)、7.39-7.34(m、4H),7.27-7.24(m、4H),7.18-7.16(m、4H)6.96(s、2H)、6.48(d,J=8.5Hz、2H),6.25(d,J=8.5Hz、2H),2.82-2.74(m,4H)、2.57-2.37(m,10H)、2.27-2.22(m,2H)、1.77-1.72(m、2H)、1.50-1.07(m、70H)、0.97-0.81(m、48H)
ASAPマススペクトル分析:理論値1685.3、観測値1685.7
【0133】
(実施例1)インクジェット法による膜の形成
mCBPを79mgと化合物304(4CzIPN-Me)を20mgと化合物2097(TBRb)を1mg用意し、これらを10mLのトルエン中に溶解させて溶液を調製した。各化合物は溶媒に完全に溶解した。溶液をインクジェット法にてガラス基板上に噴射し、乾燥することによって膜を形成する。
【0134】
(実施例2)スピンコート法による膜の形成
実施例1で調製した溶液をガラス基板上にスピンコートし、乾燥することによって膜を形成する。
【0135】
(実施例3)インクジェット法による有機エレクトロルミネッセンス素子の作製1
特許第4203470号公報の実施例1における発光層の代わりに、実施例1で調製した溶液を用いてインクジェット法により発光層を形成し、その他の手順は同公報の実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が高く、長寿命である。
【0136】
(実施例4)インクジェット法による有機エレクトロルミネッセンス素子の作製2
特許第4203470号公報の実施例2における発光層の代わりに、実施例1で調製した溶液を用いてインクジェット法により発光層を形成し、その他の手順は同公報の実施例2と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が高く、長寿命である。
【0137】
(実施例5)インクジェット法による有機エレクトロルミネッセンス素子の作製3
特許第4203470号公報の実施例3における発光層の代わりに、実施例1で調製した溶液を用いてインクジェット法により発光層を形成し、その他の手順は同公報の実施例3と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が高く、長寿命である。
【0138】
(実施例6)有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度2~4×10-4Paで積層した。まず、ITO上にHATCNを10nmの厚さに形成し、その上に、TrisPCzを20nmの厚さに形成し、さらにその上に、mCBPを10nmの厚さに形成した。続いて、mCBPと化合物304(4CzIPN-Me)と化合物2097(TBRb)を異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの発光層を形成した。この時、化合物304(4CzIPN-Me)の濃度は25重量%とし、化合物2097(TBRb)の濃度は0.5重量%とした。次に、T2Tを10nmの厚さに形成し、その上に、BPyTP2を55nmの厚さに形成した。さらに、Liqを1nmの厚さに形成し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子は5.42V、2.59mA/cm2にて輝度が1000cd/m2となった。最大外部量子効率は12.2%と高く、ピーク波長は563nm、CIE-XYZ表色系における色度座標xは0.46、yは0.53であった。また、寿命試験を行ったところ、輝度が95%になるまでの時間は1060時間であった。
【0139】
(実施例7)白色発光素子の作製1
特表2007-533073号公報の段落0054に記載の発光層のAlq3とドーパント(C545T)の代わりに、mCBP(74.5重量%)と化合物304(4CzIPN-Me)(25重量%)および化合物2097(TBRb)(0.5重量%)を用いて発光層を形成し、その他の手順は同公報の段落0054を含む実施例と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が高く、長寿命である。
【0140】
(実施例8)白色発光素子の作製2
特開2012-18931号公報の段落0054に記載の発光層のAlq3とドーパント(C545T)の代わりに、mCBP(74.5重量%)と化合物304(4CzIPN-Me)(25重量%)および化合物2097(TBRb)(0.5重量%)を用いて発光層を形成し、その他の手順は同公報の段落0054を含む実施例と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が高く、長寿命である。
【0141】
(実施例9)白色発光素子の作製3
特開2014-179344号公報の段落0054に記載の発光層のAlq3とドーパント(C545T)の代わりに、mCBP(74.5重量%)と化合物304(4CzIPN-Me)(25重量%)および化合物2097(TBRb)(0.5重量%)を用いて発光層を形成し、その他の手順は同公報の段落0054を含む実施例と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が高く、長寿命である。
【0142】
(実施例10)白色発光素子の作製4
特開2015-130335号公報の段落0077に記載の発光層のホストとして用いている化学式(6)の材料の代わりにmCBP(74.5重量%)を用い、ドーパントとして用いている化学式(7)の材料の代わりに化合物304(4CzIPN-Me)(25重量%)および化合物2097(TBRb)(0.5重量%)を用いて発光層を形成し、その他の手順は同公報の段落0077を含む実施例と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が高く、長寿命である。
【0143】
(実施例11)白色発光素子の作製5
特開2015-32582号公報の段落0068に記載のイエローグリーン発光層の構成材料の代わりに、mCBP(74.5重量%)と化合物304(4CzIPN-Me)(25重量%)および化合物2097(TBRb)(0.5重量%)を用いて層を形成し、その他の手順は実施例1-1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が高く、長寿命である。
【0144】
(実施例12)白色発光素子の作製6
特開2015-32582号公報の段落0106に記載のイエローグリーン発光層の構成材料の代わりに、mCBP(74.5重量%)と化合物304(4CzIPN-Me)(25重量%)および化合物2097(TBRb)(0.5重量%)を用いて層を形成し、その他の手順は同公報の実施例8-1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が高く、長寿命である。
【0145】
(実施例13)白色発光素子の作製7
特開2016-149368号公報の段落0047~0048で参照している図1に記載の発光層145に、mCBP(74.5重量%)と化合物304(4CzIPN-Me)(25重量%)および化合物2097(TBRb)(0.5重量%)を用いて層を形成し、その他は同公報の記載にしたがって有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、最大外部量子効率が高く、長寿命である。
【0146】
【化46】
【0147】
上記実施例1において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例1と同じ方法により製造した膜を、膜1a~303a、305a~1367aとしてここに開示する。
上記実施例2において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例2と同じ方法により製造した膜を、膜1b~303b、305b~1367bとしてここに開示する。
上記実施例3において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例3と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子1c~303c、305c~1367cとしてここに開示する。
上記実施例4において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例4と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子1d~303d、305d~1367dとしてここに開示する。
上記実施例5において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例5と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子1e~303e、305e~1367eとしてここに開示する。
上記実施例6において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例6と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子1f~303f、305f~1367fとしてここに開示する。
上記実施例7において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例7と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子1g~303g、305g~1367gとしてここに開示する。
上記実施例8において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例8と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子1h~303h、305h~1367hとしてここに開示する。
上記実施例9において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例9と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子1i~303i、305i~1367iとしてここに開示する。
上記実施例10において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例10と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子1j~303j、305j~1367jとしてここに開示する。
上記実施例11において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例11と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子1k~303k、305k~1367kとしてここに開示する。
上記実施例12において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例12と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子1l~303l、305l~1367lとしてここに開示する。
上記実施例13において用いた化合物304(4CzIPN-Me)の代わりに、上記一般式(1)で表される化合物1~303、305~1367をそれぞれ用いて、実施例13と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子1m~303m、305m~1367mとしてここに開示する。
【0148】
上記実施例1において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例1と同じ方法により製造した膜を、膜2001a~2096a、2098a~2442aとしてここに開示する。
上記実施例2において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例2と同じ方法により製造した膜を、膜2001b~2096b、2098b~2442bとしてここに開示する。
上記実施例3において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例3と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子2001c~2096c、2098c~2442cとしてここに開示する。
上記実施例4において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例4と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子2001d~2096d、2098d~2442dとしてここに開示する。
上記実施例5において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例5と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子2001e~2096e、2098e~2442eとしてここに開示する。
上記実施例6において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例6と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子2001f~2096f、2098f~2442fとしてここに開示する。
上記実施例7において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例7と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子2001g~2096g、2098g~2442gとしてここに開示する。
上記実施例8において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例8と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子2001h~2096h、2098h~2442hとしてここに開示する。
上記実施例9において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例9と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子2001i~2096i、2098i~2442iとしてここに開示する。
上記実施例10において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例10と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子2001j~2096j、2098j~2442jとしてここに開示する。
上記実施例11において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例11と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子2001k~2096k、2098k~2442kとしてここに開示する。
上記実施例12において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例12と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子2001l~2096l、2098l~2442lとしてここに開示する。
上記実施例13において用いた化合物2097(TBRb)の代わりに、上記一般式(2)で表される化合物2001~2096、2098~2442をそれぞれ用いて、実施例13と同じ方法により製造した白色発光素子を、素子2001m~2096m、2098m~2442mとしてここに開示する。
【0149】
上記実施例6において用いたHATCNの代わりに、正孔注入材料として用いることができるものとして上記したHATCNを除く8個の化合物をそれぞれ用いて、実施例6と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子1n~8nとしてここに開示する。
上記実施例6において用いたTrisPCzの代わりに、正孔輸送材料として用いることができるものとして上記したTrisPCzを除く36個の化合物をそれぞれ用いて、実施例6と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子1o~36oとしてここに開示する。
上記実施例6において用いたmCBPの代わりに、ホスト材料として用いることができるものとして上記したmCBPを除く41個の化合物をそれぞれ用いて、実施例6と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子1p~41pとしてここに開示する。
上記実施例6において用いたT2Tの代わりに、正孔阻止材料として用いることができるものとして上記したT2Tを除く10個の化合物をそれぞれ用いて、実施例6と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子1q~10qとしてここに開示する。
上記実施例6において用いたBPyTP2の代わりに、電子輸送材料として用いることができるものとして上記したBPyTP2を除く33個の化合物、電子注入材料として用いることができるものとして上記したLiF、CsFを除く4個の化合物をそれぞれ用いて、実施例6と同じ方法により製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、素子1r~37rとしてここに開示する。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の有機発光素子は、高い発光効率と長い駆動寿命を実現しうるものである。また、本発明の化合物は、そのような有機発光素子用の発光材料として有用である。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0151】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 電子阻止層
6 発光層
7 電子輸送層
8 陰極
図1