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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】毛髪用バーム
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20220609BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220609BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/92
A61Q5/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018017341
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2019131529
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】西垣 祥子
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-019024(JP,A)
【文献】特開2007-015935(JP,A)
【文献】特開2010-202621(JP,A)
【文献】特開2011-098907(JP,A)
【文献】特開2014-227357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/31
A61K 8/37
A61K 8/92
A61Q 5/06
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃で固形のワックス(A)を10~50質量%と、
25℃で揮発する揮発性油(B)を5~35質量%と、
25℃で液状の液状油(C)(但し、液状油(C)には、揮発性油(B)に該当する液状油は含まない)を1~35質量%と、
水(D)を12~50質量%と、
ダイマージリノール酸エステル(F)を0.01~5質量%とを含
前記ワックス(A)がキャンデリラロウであり、
前記揮発性油(B)が炭化水素であり、
前記液状油(C)が炭化水素である、毛髪用バーム。
【請求項2】
25℃で液状のノニオン界面活性剤(E)を0.1~20質量%含む、請求項1に記載の毛髪用バーム。
【請求項3】
25℃での針入度が65以下である請求項1または2に記載の毛髪用バーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用バームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肌、爪、毛髪などに潤いを与える化粧料として、バームと呼ばれるものが市場に流通しており、人気が高まっている。このバームは、主成分としてミツロウやシアバターなどの半固形~固形油を含み、剤型も半固形~固形である。
【0003】
バームを毛髪に用いると、毛髪に持続性のある潤いやまとまりを与えることが知られているが、セット力が低く、求められるヘアスタイルを実現できないことが問題となっていた。また、剤の伸びが悪いため、整髪しにくく、洗い落ちも悪いという欠点があった。
【0004】
半固形~固形油を含む整髪料についての先行技術としては、例えば、特許文献1において、整髪のしやすさを向上させるために、室温で固形のロウ類とともに、室温で液状の分岐型液状油を配合した整髪用乳化化粧料が開示されている。また、特許文献2では、セット力を高めるために、ロウ類等の油性成分とともに被膜性高分子を配合した整髪用乳化化粧料組成物が開示されている。特許文献3には、30℃で固体であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油とともに毛髪セット用ポリマーを配合した毛髪化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-007438号公報
【文献】特開2004-182612号公報
【文献】特開2010-126523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明では、整髪料の伸びが改善され、整髪しやすくなっているものの、セット力やヘアスタイルの持続力は満足いくものではなかった。
特許文献2に開示された発明では、セット力が高まった反面、ごわつきやべたつきが生じ、再整髪ができないといった問題があった。
【0007】
特許文献3に開示された発明では、再整髪性を有し、ごわつきやべたつきが低減されていたものの、セット力が充分なものではなかった。
本発明者は、バームを毛髪に用いた場合のセット力の低さを解決する手段を検討する段階で、バームとともに被膜性高分子や毛髪セット用ポリマーを用いてみたが、非常に硬い剤型となり、整髪しにくく、洗い落ちも悪化した。
【0008】
このようなことから、本発明は、セット力が高く、毛髪を立ち上げて保持できる持続力がありながらも、再整髪性があり、整髪しやすく、洗い落ちに優れた毛髪用バームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪用バームは上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[4]である。
[1]25℃で固形のワックス(A)を10~50質量%と、25℃で揮発する揮発性油(B)を5~35質量%と、25℃で液状の液状油(C)(但し、液状油(C)には、揮発性油(B)に該当する液状油は含まない)を1~35質量%と、水(D)を12~50質量%とを含む、毛髪用バーム。
[2]25℃で液状のノニオン界面活性剤(E)を0.1~20質量%含む、[1]に記載の毛髪用バーム。
[3]ダイマージリノール酸エステル(F)を0.01~5質量%含む、[1]または[2]に記載の毛髪用バーム。
[4]25℃での針入度が65以下である[1]~[3]のいずれかに記載の毛髪用バーム。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、セット力が高く、毛髪を立ち上げて保持できる持続力がありながらも、再整髪性があり、整髪しやすく、洗い落ちに優れた毛髪用バームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の毛髪用バームについて具体的に説明する。
<毛髪用バーム>
一般にバームとは、剤形が常温で半固形~固形であり、非常に粘度の高いクリームや軟膏を意味する。本発明では、毛髪に用いるバームを毛髪用バームと記す。また、本発明では、常温とは、15~25℃を指す。
【0012】
本発明の毛髪用バームは、25℃で固形のワックス(A)を10~50質量%と、25℃で揮発する揮発性油(B)を5~35質量%と、25℃で液状の液状油(C)(但し、液状油(C)には、揮発性油(B)に該当する液状油は含まない)を1~35質量%と、水(D)を12~50質量%とを含む。
【0013】
本発明の毛髪用バームは、25℃で液状のノニオン界面活性剤(E)を0.1~20質量%含むことが好ましい。なお、本発明では、25℃で流動性を有するノニオン界面活性剤を液状のノニオン界面活性剤と記す。
【0014】
本発明の毛髪用バームは、ダイマージリノール酸エステル(F)を0.01~5質量%含むことが好ましい。
本発明の毛髪用バームは、25℃での針入度が65以下であることが好ましい。また、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。なお、上記の各成分の含有量は、毛髪用バームを100質量%とした場合の含有量を示している。
【0015】
本発明の毛髪用バームは、半固形~固形の剤型が好ましい。
本発明者は、本発明の毛髪用バームは、室温で半固形~固形の剤型であるが、手のひらの温度で溶ける剤型として設計したことによって、整髪の際に、毛髪に少量ずつ均一に塗布できるようになり、整髪のしやすさを向上できたと推察した。さらに、整髪後は毛髪用バームが冷えて常温となり、再度半固形~固形の剤型に戻ることによって、セット力と持続力が高まるとともに、べたつきの無い質感になると考えた。そして、再整髪の際には、毛髪に触れる手のひらの温かさによって毛髪用バームが再度溶けるため、アレンジや再整髪が可能になると考えた。
【0016】
<25℃で固形のワックス(A)>
本発明の毛髪用バームは、25℃で固形のワックス(A)を10~50質量%含み、15~40質量%含むことが好ましく、20~35質量%含むことがより好ましい。
本発明の毛髪用バームは、固形のワックスの中でも、25℃において固形であるものを上記の量含むことによって、セット力を高め、持続力を付与することができる。前記下限量より少ないとセット力が弱く、前記上限量より多いとべたつきが生じる。
【0017】
25℃で固形のワックス(A)として、具体的には、ロウ類、炭化水素類、油脂類等が挙げられる。例えば、ロウ類としては、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ、羊毛脂、ミツロウ等が挙げられ、炭化水素類としては、オゾケライト、セレシン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ、油脂類としては、カカオ脂、パーム油、パーム核油、モクロウ、牛脂等が挙げられる。これらの中でも、べたつきが無く、毛髪のセット力が優れているという観点から、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、モクロウが好ましく、キャンデリラロウがより好ましい。
25℃で固形のワックス(A)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
<25℃で揮発する揮発性油(B)>
本発明の毛髪用バームは、25℃で揮発する揮発性油(B)を5~35質量%含み、10~30質量%含むことが好ましく、15~25質量%含むことがより好ましい。
【0019】
本発明の毛髪用バームは、揮発性油のなかでも、25℃で揮発する揮発性油を上記の量含むことによって、手での溶け込みに優れ、持続力を付与することができる。前記下限量より少ないと手での溶け込みが悪く、整髪しにくくなり、前記上限量より多いと整髪後のセット力や持続力が弱くなる。
【0020】
25℃で揮発する揮発性油(B)として、具体的には、25℃で揮発性を有する炭化水素、鎖状シリコーン、環状シリコーンなどが挙げられる。これらの中でも、常圧において沸点が260℃以下のものが好ましい。前記炭化水素としては、炭素数6~16の炭化水素が好ましく、具体的には、ドデカン、イソドデカン、軽質流動イソパラフィン等が挙げられる。前記鎖状シリコーンとしては、例えば、鎖状ジメチルポリシロキサンが挙げられ、具体的には、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン等が挙げられる。前記環状シリコーンとしては、例えば、環状ジメチルポリシロキサンが挙げられ、具体的には、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、手での溶け込みがよく、セット力が優れているという観点から、ドデカン、イソドデカン、デカメチルシクロペンタシロキサンが好ましく、ドデカンがより好ましい。
25℃で揮発する揮発性油(B)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
<25℃で液状の液状油(C)>
本発明の毛髪用バームは、25℃で液状の液状油(C)(但し、液状油(C)には、揮発性油(B)に該当する液状油は含まない)を1~35質量%含み、5~30質量%含むことが好ましく、10~25質量%含むことがより好ましい。
【0022】
本発明の毛髪用バームは、25℃で液状の液状油(C)を上記の量含むことによって、手での溶け込みに優れ、ごわつきが無く、再整髪性を付与することができる。前記下限量より少ないと手での溶け込みが悪く、剤が室温の場合でも、粘度が高くならない。前記上限量より多いと整髪後の毛髪の質感が重くなり、セット力や持続力が弱くなる。
【0023】
25℃で液状の液状油(C)として、具体的には、植物油脂類、液状エステル油類、エーテル類、炭化水素類などが挙げられる。例えば、植物油脂類としては、マカデミアンナッツ油、ホホバ種子油、オリーブ油、ローズヒップ油、アボカド油、パーシック油、アーモンド種子油、コーン油、ヒマワリ種子油、ハイブリッドヒマワリ油、ヘーゼルナッツ油、ヤシ油、マンゴー種子油等が挙げられ、液状エステル油類としては、ミリスチン酸ブチル、2-エチルヘキサン酸アルキル(例えば、2-エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸アルキル(C14-18))、セバシン酸ジエチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ポリプロピレングリコール-3ベンジルエーテル(ミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル)、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸フィトステリル等が挙げられ、エーテル類としては、グリセリンモノセチルエーテル、モノオレイルグリセリルエーテル等のアルキルグリセリルエーテル等が挙げられ、炭化水素類としては、植物性スクワラン、スクワラン、流動パラフィン等が挙げられる。これらの中でも、手での溶け込みに優れ、べたつきが無いという観点から、植物性スクワラン、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素類と液状エステル油類が好ましく、スクワランがより好ましい。
25℃で液状の液状油(C)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
<水(D)>
本発明の毛髪用バームは、水(D)を12~50質量%含み、15~45質量%含むことが好ましく、20~40質量%含むことがより好ましい。
本発明の毛髪用バームは、水(D)を上記の量含むことによって、整髪後の毛髪の質感に軽さを付与することができる。上記上限量より多いと、整髪後の毛髪の質感が重くなり、持続力が弱くなる。
水(D)として、具体的には、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水および天然水が挙げられ、殺菌済みのものが好ましい。
【0025】
<25℃で液状のノニオン界面活性剤(E)>
本発明の毛髪用バームは、25℃で液状のノニオン界面活性剤(E)を0.1~20質量%含むことが好ましく、1~15質量%含むことがより好ましく、2~10質量%含むことが特に好ましい。
【0026】
本発明の毛髪用バームは、任意で、25℃で液状のノニオン界面活性剤(E)を上記の量含むことによって、手での溶け込み、洗い落ちをより改善することから好ましい。
25℃で液状のノニオン界面活性剤(E)として、具体的には、オレイン酸モノグリセライド(HLB2.8)、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド(HLB2.9)、カプリル酸モノグリセライド(HLB3.2)、ソルビタンモノオレエート(HLB4.3)、イソステアリルグリセリルエーテル(HLB5.0)、ソルビタンモノラウレート(HLB8.6)、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(HLB10.5)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(HLB11.0)、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(HLB11.8)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(HLB13.3)、ポリオキシエチレン(9)トリデシルエーテル(HLB13.3)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(HLB14.9)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(HLB15.6)等が挙げられる。これらの中でも、手での溶けこみやすさ、整髪のしやすさの観点から、HLB10以上のものが好ましく、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートがより好ましい。
25℃で液状のノニオン界面活性剤(E)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
<ダイマージリノール酸エステル(F)>
本発明の毛髪用バームは、ダイマージリノール酸エステル(F)を0.01~5質量%含むことが好ましく、0.05~4質量%含むことがより好ましく、0.1~2質量%含むことが特に好ましい。
【0028】
本発明の毛髪用バームは、任意で、ダイマージリノール酸エステル(F)を上記の量含むことによって、べたつき、ごわつきを生じることなく、セット力をより向上することができるため好ましい。
【0029】
ダイマージリノール酸エステル(F)として、具体的には、ダイマージリノール酸とアルコール、アルコール混合物、またはダイマージオールとのエステル等が挙げられる。例えば、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)等が好ましく、セット力を付与する観点から、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルがより好ましい。
ダイマージリノール酸エステル(F)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0030】
<その他成分>
本発明の毛髪用バームは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、増粘剤、金属封鎖剤、保湿剤、生薬類、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、および色素等の添加剤を含有することができる。
【0031】
本発明の毛髪用バームは、例えば、増粘剤として、ステアリン酸、カルボキシビニルポリマーを用いることができ、pH調整剤として、トリエタノールアミン(TEA)を用いることができ、金属封鎖剤として、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム(EDTA-2Na)を用いることができる。
【0032】
<毛髪用バームの製造等>
本発明の毛髪用バームは、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、好ましくは加熱条件下、例えば75~85℃ の加熱条件下で、本発明の毛髪用バームを製造することが好ましい。
【0033】
本発明の毛髪用バームは、25℃での針入度が65以下であることが好ましく、20~50であることがより好ましい。針入度が上記の値であることによって、毛髪用バームのセット力や軽さが向上する。針入度は、例えば、日本油脂工業株式会社製「PENETRO METER」TESTER TYPE201等で測定することができる。
【0034】
<用途>
本発明の毛髪用バームは、毛髪に塗布して使用することができる。
本発明の毛髪用バームは、毛髪に塗布して整髪する際、セット力が高く、毛髪を立ち上げて保持できる持続力がありながらも、再整髪性があり、整髪しやすい。また、洗い落ちに優れている。
【実施例
【0035】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1~42、比較例1~8〕
表1~3に示す処方で各成分を混合することにより毛髪用バームを製造し、試料として以下の方法で評価した。なお、表中の処方の数値は、毛髪用バームを100質量%とした場合の、各成分の質量%を表している。結果を表1~3に示す。
なお、表1~3に記載の各成分は以下の市販品を用いた。
【0036】
<25℃で固形のワックス(A)>
キャンデリラロウ:製品名 TOWAX-4F3(東亜化成社製)
<25℃で揮発する揮発性油(B)>
ドデカン:製品名 Parafol12-97(SASOL社製)
<25℃で液状の液状油(C)>
スクワラン:NIKKOL精製オリーブスクワラン(日光ケミカルズ社製)
<25℃で液状のノニオン界面活性剤(E)>
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート:レオドールTW-S120V(花王社製)
<ダイマージリノール酸エステル(F)>
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル:LUSPRANDD-DA7(日本精化社製)
<その他の成分>
ステアリン酸:ルナックS-98(花王社製)
カルボキシビニルポリマー:カーボポール934(Lubrizol社製)
トリエタノールアミン(TEA):トリエタノールアミン(三井化学社製)
エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム(EDTA-2Na):キレスト2B-SD(中部キレスト社製)
【0037】
〔官能評価〕
室温(25℃)の条件下で、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ、試料1gを手に取った後、トップ10cm、ネープ5cmのショートカットにした東京チャーム社製No.55デザインカットモデルの毛髪に塗布し、整髪した。整髪後、後述する(1)~(14)の各項目に記載した評価項目および評価基準に従って官能評価を行った。各項目につき10名の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
【0038】
〔物性評価〕
後述する(15)~(16)の各項目に記載した評価項目および評価基準に従って物性評価を行った。
【0039】
〔評価項目および評価基準〕
(1)手での溶け具合
試料1gを手のひらで伸ばし広げた際に、剤の溶ける具合を触感で評価した。
4点:溶けが非常によく滑らかになる。
3点:溶けがよい。
2点:溶けがやや悪い。
1点:溶けずに手のひらで伸びない。
(2)剤の溶ける早さ
試料1gを手のひらで伸ばし広げた際に、溶けて滑りがよくなるまでの早さを評価した。
4点:非常に早い。
3点:早い。
2点:やや遅い。
1点:非常に遅い。
(3)均一塗布性
試料を毛髪に塗布する際、毛髪への伸びとなじみが良く、毛髪に均一に塗布しやすいか触感で評価した。
4点:非常に均一塗布性が高い。
3点:均一塗布性が高い。
2点:やや均一塗布性が低い。
1点:均一塗布性が低い。
(4)束の形成力
整髪により毛髪が束になる力を目視で評価した。
4点:非常に束の形成力があり細かく多い束が出来ている。
3点:束の形成力があり適度に束が出来ている。
2点:束の形成力が少なく、束が少ない。
1点:束の形成力が非常に少なく、束が無い。
(5)束の硬さ
整髪によって形成した毛髪の束の硬さを触感で評価した。
4点:非常に硬い束でつんつんしている。
3点:やや硬めの束である。
2点:やや柔らかめの束である。
1点:柔らかい束である。
(6)スタイルの作りやすさ
整髪の際に、試料を塗布することで束になった毛髪を、動かしたい方向に動かしてスタイルをつくりやすいか評価した。
4点:非常にスタイルを作りやすい。
3点:スタイルを作りやすい。
2点:スタイルを作りにくい。
1点:非常にスタイルを作りにくい。
(7)毛髪の立ち上げ
毛髪を根元から立ち上げるように整髪し、立ち上がりを評価した。
4点:非常に立ち上がりやすい。
3点:立ち上がりやすい。
2点:立ち上がりにくい。
1点:非常に立ち上がりにくい。
(8)べたつきの無さ
整髪後の毛髪のベタつきの無さを触感で評価した。
4点:全くベタつきが無い。
3点:ほとんどベタつきが無い。
2点:ベタつく。
1点:非常にベタつく。
(9)ごわつきの無さ
整髪後の毛髪のごわつきの無さを触感で評価した。
4点:全くごわつきが無い。
3点:ほとんどごわつきが無い。
2点:ごわつく。
1点:とてもごわつく。
(10)軽さ
整髪後の毛髪の質感を触感で評価した。
4点:非常に軽い質感である。
3点:やや軽い質感である。
2点:やや重い質感である。
1点:非常に重い質感である。
(11)指どおり
整髪中および整髪後の毛髪の指どおりの良さを触感で評価した。
4点:非常に指どおりがよい。
3点:指どおりがよい。
2点:指どおりが悪い。
1点:非常に指どおりが悪い。
(12)持続性
毛髪の立ち上がりを評価したウィッグを20℃、湿度50%で12時間放置し、ヘアスタイルの持続性を目視で評価した。
4点:持続しており毛が立っている。
3点:やや持続している。
2点:あまり持続しておらず、立ち上がりが弱い。
1点:全く持続しておらず毛が寝ている。
(13)再整髪性
整髪したウィッグを20℃、湿度50%で2時間放置した後、再度手で整髪を行い、動かしたい方向に毛髪を動かしてスタイルを整えられるかどうかを評価した。
4点:再整髪性が非常にある。
3点:再整髪性がややある。
2点:再整髪性があまりない。
1点:再整髪性が全くなく、思うように整髪できない。
(14)洗い落ち
整髪後、手に残っている試料の洗い落ちの評価を行った。
4点:洗い落ちがよく、手に残った試料が水のみで簡単に落ちる。
3点:洗い落ちがややよく、手に残った試料が水でのこすり洗いで落ちる。
2点:洗い落ちが悪く、手に残った試料を落とすために洗剤での1度洗いが必要である。
1点:洗い落ちが非常に悪く、手に残った試料を落とすために洗剤での2度洗いが必要である。
(15)25℃での針入度
日本油脂工業株式会社製「PENETRO METER」TESTER TYPE201 を用いて、25℃での試料の針入度(硬さ)を測定した。
◎:20~50
○:51~65
△:66~75
×:76以上
(16)45℃での安定性
試料をPET素材の100mL透明容器に90g充填し、45℃の恒温槽に30日間保管した後、剤の外観を目視で評価した。
4点:安定性が高く変化が無い。
3点:やや安定性が高く、容器を傾けた際に流動性が出る程度の粘度低下は起こるが外観の変化は特に無い。
2点:安定性が低く、油や水が少し浮き出てきている。
1点:非常に安定性が低く、完全に水層と油層で分離している。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
実施例1~42で製造した毛髪用バームは、いずれも(1)~(16)の全評価項目において良好な結果となった。また、実施例39および40は、特に良好な結果となった。
本発明の毛髪用バームは、整髪する際に伸びがよく、さらに、毛髪にまとまりを与え、束を形成することができ、その束を立ち上げて動かすことができる高いセット力を有する。そして、べたつきが無く、指通りにも優れていることがわかる。また、外観と物性を一定期間維持する安定性も有する。
【0044】
比較例1で製造した毛髪用バームは、25℃で固形のワックス(A)の配合量が少ないため、セット力が弱く、安定性も悪かった。
比較例2で製造した毛髪用バームは、25℃で固形のワックス(A)の配合量が多いため、整髪しにくく、べたつきが生じ、洗い落ちも悪かった。
【0045】
比較例3で製造した毛髪用バームは、25℃で揮発する揮発性油(B)の配合量が少ないため、剤の手のひらでの溶け込みが悪く、整髪しにくく、べたつきが生じた。セット力、持続力が弱く、洗い落ちも悪かった。
【0046】
比較例4で製造した毛髪用バームは、25℃で揮発する揮発性油(B)の配合量が多いため、セット力、持続力が弱かった。また、洗い落ちが悪く、安定性も悪かった。
比較例5で製造した毛髪用バームは、25℃で液状の液状油(C)の配合量が少ないため、手での溶け込みが悪く、整髪しにくかった。洗い落ちも悪かった。
比較例6で製造した毛髪用バームは、25℃で液状の液状油(C)の配合量が多いため、質感が重くなり、セット力が悪く、安定性も悪かった。
【0047】
比較例7で製造した毛髪用バームは、水(D)の配合量が少ないため、べたつきやごわつきが生じ、洗い落ちも悪かった。
比較例8で製造した毛髪用バームは、水(D)の配合量が多いため、質感が重くなり、セット力、持続力が弱く、再整髪性が悪かった。