(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】ボールクリップ装置
(51)【国際特許分類】
B42F 1/02 20060101AFI20220609BHJP
B42F 1/10 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B42F1/02 J
B42F1/10
(21)【出願番号】P 2019066063
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519113826
【氏名又は名称】株式会社宇佐美修徳堂
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 直治
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-160953(JP,A)
【文献】特開2008-44239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 1/02
B42F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側に垂直面が形成され他側に傾斜面が形成され、一方向を向いて配列され、上部がレール部材で連結される複数のブロック体と、
前記ブロック体の底部に取り付けられる下支え板と、
前記ブロック体とブロック体の間に配置され、前記垂直面と前記下支え板の上面に接触して支持される第1ボールと、
前記ブロック体とブロック体の間に配置され、一側が前記第1ボールの外周面に接触し、他側が前記傾斜面に接触して支持される第2ボールと、
前記下支え板が互いに離隔され、前記ブロック体の下部に形成される紙材の差込口と、が備えられ、
前記第1ボールの中心と前記第2ボールの中心を結ぶ線(m)が斜め下方向を向くように配置され、前記差込口から差し込まれた紙材が、前記第1ボール及び前記第2ボールで挟み込まれ、前記第2ボールの斜め下方向への押圧力で保持されることを特徴とするボールクリップ装置。
【請求項2】
前記ブロック体の両側面に囲い板が設けられ、前記囲い板は、前記第1ボール及び第2ボールの脱落を防止し、前記紙材が前記第1ボール及び前記第2ボールの間に挿入可能となるよう互いに離隔していることを特徴とする請求項1に記載のボールクリップ装置。
【請求項3】
前記第1ボール及び前記第2ボールが、ガラス玉であることを特徴とする請求項1に記載のボールクリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールクリップ装置に係り、より詳しくは、挟み込む時、紙材と壁との間の摩擦がないボールグリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙を球体と壁の間に挟み込むペーパクリップが開示される。具体的には、紙が球体と壁の間に挟み込まれ、紙は傾斜面にある球体により水平に壁に押圧される。この構造では、紙をペーパクリップに差し込む時、紙と壁との摩擦が大きく紙が変形しやすい。また、球体が紙を押圧する力は傾斜面の角度を60度とした場合、紙を壁に押す力は、球体の重量が10gなら約4.3gと小さい。紙の厚さは、薄いものでは0.07mm、ハガキなら約0.25mm程度である。破れにくい和紙は、厚さが約0.15mmである。そのため、紙を差し込む時に、壁との摩擦がない構造が望まれる。また、同じ球体でも押圧力を大きくできる構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、差し込む時に壁と接触がなく、紙材を押圧するボールの押圧力をより大きくできるボールグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるボールクリップ装置は、一側に垂直面が形成され他側に傾斜面が形成され、一方向を向いて配列され、上部がレール部材で連結される複数のブロック体と、前記ブロック体の底部に取り付けられる下支え板と、前記ブロック体とブロック体の間に配置され、前記垂直面と前記下支え板に接触して支持される第1ボールと、前記ブロック体とブロック体の間に配置され、一側が前記第1ボールの外周面に接触し、他側が前記傾斜面に接触して支持される第2ボールと、前記下支え板が互いに離隔され、前記ブロック体の下部に形成される紙材の差込口と、が備えられ、前記第1ボールの中心と前記第2ボールの中心を結ぶ線(m)が斜め下方向を向くように配置され、前記差込口から差し込まれた紙材が、前記第1ボール及び前記第2ボールで挟み込まれ、前記第2ボールの斜め下方向への押圧力で保持されることを特徴とする。
【0006】
前記ブロック体の両側面に囲い板が設けられ、前記囲い板は、前記第1ボール及び第2ボールの脱落を防止し、前記紙材が前記第1ボール及び前記第2ボールの間に挿入可能となるよう互いに離隔していることを特徴とする。
【0007】
前記第1ボール及び前記第2ボールが、ガラス玉であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のボールクリップ装置によれば、
(1)第1ボールと第2ボールで紙材を挟み込む構造としたので、紙材が壁と接触せず、差し込む時の紙材の変形やしわが防げる。
(2)第2ボールが第1ボールの外周面に角度を持って接触させ、第1ボールの中心と第2ボールの中心を結ぶ線(m)が斜め下方向を向くように配置したので、第2ボールが紙材を押圧する押圧力を、垂直な壁に紙材を水平に押圧する場合に比較してより大きくできる。
(3)複数のブロック体は、一側に垂直面が形成され、他側に傾斜面が形成されたブロック体を共通に使用できる。
(4)複数のブロック体をレール部材に直線状に取り付けたので、多数の紙材を挟み込んで吊り下げることができる。吊り下げる紙材の枚数をこなすことができる。
【0009】
ブロック体の両側面に囲い板を設けたので、第1ボール及び第2ボールが側面から脱落しないようにできる。ブロック体に溝を形成してボールを保持する場合に比較して製作が容易になる。例えばボールの径が変更になっても、内部空間の大きさにもよるが、そのまま使用できる。
【0010】
第1ボール及び第2ボールをガラス玉としたので、プラスチックと比較して耐久性と耐薬品性を有する。ステンレスの鋼球と比較して腐食の心配がない。ガラス玉は、鋼球に比べて軽く、第2ボールの直径が大きくなるところ、斜め下方向を向く押圧力で、サイズが大きくなることを押さえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によるボールクリップ装置の正面図である。実施例1
【
図3】本発明によるボールクリップ装置の一使用例を示す図である。
【
図4】第1ボールと第2ボールの動きを示す説明図である。(A)は紙材を差し込む場合、(B)は紙材を抜き去る場合を示す。
【
図6】本発明によるボールクリップ装置の他の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明のボールクリップ装置を詳しく説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明によるボールクリップ装置100の正面図である。ボールクリップ装置100は、上部がレール部材8で連結される複数のブロック体5と、2つのブロック体5の間に配置される第1ボール1及び第2ボール2と、下支え板4と、を含んで構成される。ブロック体5は、一側に垂直面7が形成され、他側に傾斜面6が形成される。また、ブロック体5は、一方向を向いて配列され、垂直面7と傾斜面6が対向するように配列される。ブロック体5は、最低でも2つが必要で、複数個が配列される。
【0014】
第1ボール1は、ブロック体5、5間に配置され、ブロック体5の垂直面7と、下支え板4の上面に接触して支持される。第2ボール2は、ブロック体5、5間に配置され、一側が第1ボール1の外周面に接触し、他側がブロック体5の傾斜面6に接触して支持される。ブロック体5の前後両側面には、囲み板3が設けられるので、第1ボール1及び第2ボール2の外部への落下が防止される。ブロック体5、5の間が、紙材10を挟み込み箇所になる。そのため、下支え板4は、左右方向に互いに離隔されており、ブロック体5の下部に紙材10の差込口9が形成される。差込口9から差し込まれた紙材10は、第1ボール1及び第2ボール2で挟み込まれ、吊り下げ状態に保持される。
【0015】
図2は、
図1のA-A断面図(平面図)である。囲み板3も左右方向に互いに離隔されており、差し込んだ紙材10が上部まで差し込める。本実施例では、第2ボール2の直径は、第1ボール1の直径より大きくした。具体的には、第2ボール2は直径が25mm、重量が19.4gのガラス玉で、第1ボール1は、直径が17mm、重量が6.5gのガラス玉である。差し込んだ紙材10は、第1ボール1及び第2ボール2で挟み込まれる。
【0016】
図3は、本発明によるボールクリップ装置100の一使用例を示す図である。2本のレール部材8に複数のブロック体5が取り付けられており、紙材10の上部の左右2箇所を挟み込む。ボールクリップ装置100は、和紙を吊り下げ、染色(版画等)後の乾燥を早める際に使用できる。
【0017】
図4は、第1ボール1と第2ボール2の動きを示す説明図である。(A)は紙材10を差し込む場合、(B)は紙材10を抜き去る場合を示す。(A)に示すように、紙材10を差込口9に差し込み、さらに押し上げて紙材10を第1ボール1と第2ボール2で挟み込み、第2ボール2を紙材10の厚さ分、0.07~0.25mm上昇させ、紙材10を吊り下げ状態とする。吊り下げ状態では、傾斜面6の上に第2ボール2があるので、第2ボール2の自重によって紙材10が第1ボール1に押圧される。なお、第2ボール2は、紙材10が挿入されない状態では、底部が下支え板4の上面から離れた状態にある。(B)に示すように、紙材10を抜き去る場合は、紙材10を下方向に引き抜く。一定の引き抜き力があれば、第2ボール2が摩擦で回転するので、紙材10を引く抜くことができる。
【0018】
図5は、紙材10を挟み込む時の押圧力の説明図である。第2ボール2の自重をFとし、傾斜面6の角度をθとし、第1ボール1の中心と第2ボール2の中心を結ぶ線mが水平線となす角度をθ’とする。第2ボール2は、斜め下方向(線mで示す方向)への押圧力(Fa)で紙材10を保持する。なお、第2ボール2は、傾斜面6を押圧力(Fb)で押圧する。第1ボール1の直径をd1、第2ボール2の直径をd2とすると、長さLをd1+d2より小さく設定することで、線mを斜め下方向に向けるができる。d1とd2が同じ直径であっても、長さLをd1+d2より小さく設定すれば、線mを斜め下方向に向けることができる。第2ボール2は、第1ボール1と同じ直径のものでもこのような位置関係に配置できる。
【0019】
図6は、本発明によるボールクリップ装置100の他の使用例を示す図である。
レール部材8は1本でもよく、紙材10を湾曲させて、上部の左右2箇所を挟み込むことができる。
【0020】
本実施例によれば、(1)紙材が壁と接触しないので、紙材の変形やしわが防げる。(2)第1ボールと第2ボールで紙材を挟み込み、第2ボールが紙材を斜め下方向に押圧するので、同じボールであっても押圧力をより大きくできる。(3)複数のブロック体をレール部材に取り付けたので、多数の紙材を挟み込んで吊り下げることができる。(4)第1ボールと第2ボールを耐薬品性の有るガラス玉(ビー玉)を使用できる。などの効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、多数の紙材を吊り下げるボールクリップ装置として好適である。
【符号の説明】
【0022】
1 第1ボール
2 第2ボール
3 囲い板
4 下支え板
5 ブロック体
6 傾斜面
7 垂直面
8 レール部材
9 差込口
10 紙材
100 ボールクリップ装置