(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】給電ケーブル中継用回転翼機を備える給電方法
(51)【国際特許分類】
B64F 3/02 20060101AFI20220609BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20220609BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220609BHJP
B64C 27/04 20060101ALI20220609BHJP
B64C 25/32 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B64F3/02
B64D27/24
B64C39/02
B64C27/04
B64C25/32
(21)【出願番号】P 2019164132
(22)【出願日】2019-09-10
(62)【分割の表示】P 2019536990の分割
【原出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-75869(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094842(WO,A1)
【文献】特開2017-13653(JP,A)
【文献】特開2016-74257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 3/02
B64D 27/24
B64C 39/02
B64C 27/04
B64C 25/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用回転翼機と、中継用回転翼機と、少なくとも前記作業用回転翼機に対して給電ケーブルを利用して給電を行う給電機とを含む、回転翼機の給電方法であって、
前記給電ケーブルによる前記給電がされた状態で前記作業用回転翼機を飛行させるステップと、
前記作業用回転翼機と前記給電機との位置関係が所定の関係になった場合に、前記中継用回転翼機を前記給電ケーブルの所定の部位に接続させて前記給電ケーブルを支持するステップと、
を含
み、
前記作業用回転翼機または前記中継用回転翼機の少なくともいずれかは、自機を構造物に対して固定可能な固定手段を有しており、当該固定手段により自機を前記構造物に固定させるステップを更に含む、
給電方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の給電方法であって、
前記作業用回転翼機または前記中継用回転翼機は、自機を前記構造体に固定させた後に、その飛行を停止する、
給電方法。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2のいずれかに記載の給電方法であって、
前記給電機は、前記中継用回転翼機に対して前記給電ケーブルを利用して給電を行う
、
給電方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれかに記載の給電方法であって、
前記中継用回転翼機は、前記
給電ケーブルをその延伸方向に移動自在に係止可能な支持部を有しており、
前記中継用回転翼機は、前記支持部によって前記給電ケーブルを支持する、
給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電ケーブル中継用回転翼機を備える給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途に利用されるドローン(Drone)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの回転翼機(以下、単に「回転翼機」と総称する)を利用してインフラ点検やイベント会場の監視等様々な業務を行う動きがある。前記業務の様に、長期間かつ広範囲での使用を目的とする回転翼機は、その使用時間に耐え得る電力の供給が可能なバッテリーを備える必要がある。
【0003】
一方、特許文献1では、バッテリーによる制限を受けることなく、長時間の飛行が可能となる飛行体のシステムを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシステムは、地上に設置した給電機から、有線で飛行体に給電を行い、また、給電に使用するケーブルを軽量の物としている。これによれば、飛行体が自機に搭載するバッテリーによる制限を受けることなく、長時間かつ広範囲の飛行が可能となる。
【0006】
しかしながら、インフラ点検等に給電ケーブルを備えた回転翼機を用いる場合、回転翼機の航路周辺には障害物が存在するため、回転翼機の飛行はケーブルの取り回しに制約される。また、給電機から距離が離れれば、ケーブルが地面や水面等に接し、回転翼機の飛行を阻害する他、ケーブルの周囲の安全性を保てない等の問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、効率と安全性を向上し得るケーブル支持方法を持つ給電システムを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、作業用回転翼機と、中継用回転翼機と、少なくとも前記作業用回転翼機に対して給電ケーブルを利用して給電を行う給電機とを含む、回転翼機の給電方法であって、前記給電ケーブルによる前記給電がされた状態で前記作業用回転翼機を飛行させるステップと、前記作業用回転翼機と前記給電機との位置関係が所定の関係になった場合に、前記中継用回転翼機を前記給電ケーブルの所定の部位に接続させて前記給電ケーブルを支持するステップと、を含む、給電方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、効率と安全性を向上し得るケーブル支持方法を持つ給電システムを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による給電方法の全体を示す図である。
【
図2】本発明による給電方法の使用例を示す図である。
【
図3】本発明による給電方法の他の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による給電ケーブル中継用回転翼機を備える給電方法は、以下のような構成を備える。
[項目1]
作業用回転翼機と、中継用回転翼機と、少なくとも前記作業用回転翼機に対して給電ケーブルを利用して給電を行う給電機とを含む、回転翼機の給電方法であって、 前記給電ケーブルによる前記給電がされた状態で前記作業用回転翼機を飛行させるステップと、前記作業用回転翼機と前記給電機と位置関係が所定の関係になった場合に、前記中継用回転翼機を前記給電ケーブルの所定の部位に接続させて前記給電ケーブルを支持するステップと、を含む、給電方法。
[項目2]
項目1に記載の給電方法であって、前記中継用回転翼機は、自機を構造物に対して固定可能な固定手段を有しており、前記給電ケーブルの前記所定の部位に接続させた後に、前記中継用回転翼機を前記構造体に固定させるステップを更に含む、給電方法。
[項目3]
項目2に記載の給電方法であって、前記中継用回転翼機は、自機を前記構造体に固定させた後に、その飛行を停止する、給電方法。
[項目4]
項目1乃至項目3のいずれかに記載の給電方法であって、前記給電機は、前記中継用回転翼機に対して前記給電ケーブルを利用して給電を行う給電方法。
[項目5]
項目1乃至項目4のいずれかに記載の給電方法であって、前記中継用回転翼機は、前記ケーブルをその延伸方向に移動自在に係止可能な支持部を有しており、前記中継用回転翼機は、前記支持部によって前記給電ケーブルを支持する、給電方法。
【0012】
<本発明の実施の形態>
以下、本発明の実施の形態による給電ケーブル中継用回転翼機を備える給電方法について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明の実施の形態による、給電ケーブル中継用回転翼機を備える給電方法では、有線で給電される作業用回転翼機10と、給電ケーブル2を支持する(少なくとも一台以上の)中継用回転翼機20と、少なくとも作業用回転翼機10に対して給電ケーブル2を利用して給電を行う給電機30の組み合わせにより、作業用回転翼機10が給電ケーブル2の取り回しに制約されることなく長時間、広範囲に作業を行うことが実現される。
【0014】
図2に示されるように、作業用回転翼機10及び中継用回転翼機20は、各々プロペラ13(23)およびモータ14(24)を少なくとも1つ以上備えている。モータ14(24)は、プロペラ13(23)の回転を生じさせるものであり、例えば、駆動ユニットは、電気モータ又はエンジン等を含むことが可能である。プロペラ13(23)は、モータ14(24)によって駆動可能であり、時計方向に及び/または反時計方向に、モータの回転軸(例えば、モータの長軸)の周りに回転することにより、作業用回転翼機10ならびに中継用回転翼機20を出発地から離陸させ、水平移動させ、目的地に着陸させるための推進力を発生させる。
【0015】
また、作業用回転翼機10は、作業の目的に応じた機構を備えていてもよい。例えば、カメラやセンサ等の外界情報を取得可能な情報取得機器、人が行う作業の代替となり得る作業ハンド、スピーカー、噴霧機器、照明機器等が挙げられるが、前記機構の用途や種類に関してはこの限りではない。
【0016】
作業用回転翼機10は、給電ケーブル2によって給電されている状態で飛行することが可能である。作業用回転翼機10は自機にバッテリー等を備えていてもよいが、給電機30から給電されながら飛行することで、さらに長時間の活動が可能となる。自機にバッテリー等を備えた場合は、給電機30や給電ケーブル2に障害が起こった際の予備電源として使用し、安全な運用を行うこともできる。
【0017】
給電ケーブル2は、少なくとも作業用回転翼機10の飛行および作業に必要な電力を提供する。ほかに、データ(例えば、回転翼機の操縦に関わる情報、情報取得機器が取得した情報等)の転送機能を有していてもよい。無線の送受信は自然的あるいは人為的に障害を起こす場合があり、有線でのやりとりが適している場所では給電ケーブル2を使用するのが望ましい。
【0018】
中継用回転翼機20は、作業用回転翼機10と、給電機30との位置関係が所定の関係になった場合に、支持部22を給電ケーブル5の所定の部位に接続して、給電ケーブル2を支持する。
【0019】
なお、中継用回転翼機20が備える支持部22は、給電ケーブル2をその延伸方向に移動自在に係止可能な支持部22を有しており、これにより、中継用回転翼機20が給電ケーブル2を支持すると同時に、作業用回転翼機10が中継用回転翼機20との距離にとらわれることなく移動を継続することを可能にする。
【0020】
中継用回転翼機20は、自機を構造物(例えば、橋梁、建造物、樹木など)に対して固定可能な固定手段を有しており、給電ケーブル2の前記所定の部位に支持部22を接続させた後に、固定部21を前記構造体に固定させることが出来る。固定部21による固定方法は、フック形状による吊り下がり、磁気による吸着、空気による負圧吸着等、固定の対象物に適する方法を決定する。
【0021】
また、中継用回転翼機20は、自機を構造体に固定させた後に飛行を停止することが出来る。これにより、中継用回転翼機20は、自機が飛行していない間も給電ケーブル2を支持し続ける。
【0022】
なお、中継用回転翼機20は、自機が備えるバッテリー等により駆動しても良いし、給電機30より給電ケーブル2を利用して給電を受けて駆動してもよい。
【0023】
給電ケーブル2の端に位置する作業用回転翼機10は、離陸地点より、作業ポイントへ向かって飛行を開始する。作業用回転翼機10と給電機30との位置関係が所定の関係になると、給電ケーブル2へ中継用回転翼機20の支持部22が接続する。中継用回転翼機20は、作業用回転翼機10の航路に応じて、最適な位置に留まり、給電ケーブル2を支持する。作業用回転翼機10が作業を終えると、中継用回転翼機20ならびに作業用回転翼機10は着陸地点へ向かい、着陸する。
【0024】
[変形例1]
図1に示されるように、中継用回転翼機20の台数は複数でもよい。中継用回転翼機20の台数は、給電ケーブル2の長さや剛性、ならびに作業用回転翼機10の飛行範囲や飛行航路等に応じて、好適な台数を用いることが望ましい。
【0025】
[変形例2]
本発明の実施にかかる給電機30には、必要に応じてウインチ構造を設ける。この動力は人力であったり、電動機、エンジン、空気等であったりする。ウインチを設けることで、給電ケーブル2の引き出し、巻取りを簡便に行うほか、作業用回転翼機10および中継用回転翼機20の係留の役割を担うことも可能である。
【0026】
[変形例3]
上述した実施の形態においては、作業用回転翼機10は飛行状態で作業を行うことをメインとしていたが、
図3に示されるように、中継用回転翼機20と同様に構造体に固定した状態で作業(監視、センサ等による情報の取得等)を行うこととしてもよい。
【0027】
上述した回転翼機は、
図4に示される機能ブロックを有している。なお、図示される機能ブロックは最低限の参考構成である。フライトコントローラは、所謂処理ユニットである。処理ユニットは、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。処理ユニットは、図示しないメモリを有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うために処理ユニットが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。メモリは、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0028】
処理ユニットは、回転翼機の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する回転翼機の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために回転翼機の推進機構(モータ等)を制御する。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0029】
処理ユニットは、1つ以上の外部のデバイス(例えば、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部と通信可能である。送受信機は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。例えば、送受信部は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。送受信部は、センサ類で取得したデータ、処理ユニットが生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0030】
本実施の形態によるセンサ類は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0031】
本発明の回転翼機は、インフラ点検業務専用回転翼機としての利用、及び倉庫、工場内における産業用の回転翼機としての利用が期待できる。また、本発明の回転翼機は、マルチコプター・ドローン等の飛行機関連産業において利用することができ、さらに、本発明は、カメラ等を搭載した監視用の回転翼機としても好適に使用することができる他、セキュリティ分野、農業、撮影等の様々な産業にも利用することができる。
【0032】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 構造体
2 給電ケーブル
10 作業用回転翼機
13 プロペラ(作業用回転翼機)
14 モータ(作業用回転翼機)
20 中継用回転翼機
21 固定部
22 支持部
23 プロペラ(中継用回転翼機)
24 モータ(中継用回転翼機)
30 給電機