(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】レコード位置検出装置及びレコード位置表示方法
(51)【国際特許分類】
G11B 17/022 20060101AFI20220609BHJP
G11B 3/60 20060101ALI20220609BHJP
G11B 17/038 20060101ALI20220609BHJP
G11B 19/20 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
G11B17/022
G11B3/60
G11B17/038
G11B19/20 G
(21)【出願番号】P 2022021914
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2022-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134110
【氏名又は名称】株式会社デジタルストリーム
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青柳 哲秋
(72)【発明者】
【氏名】笠井 久則
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-089481(JP,A)
【文献】特開昭56-016964(JP,A)
【文献】特開昭61-054001(JP,A)
【文献】特開昭57-036461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 17/022
G11B 3/60
G11B 17/038
G11B 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レコードが載置されるターンテーブルに設けられたスピンドルに固定可能な支持部と、
前記支持部に設置され、前記支持部に対して前記スピンドルの軸周りに回転可能であるセンサ取り付け部と、
前記センサ取り付け部に取り付けられ、前記レコードに形成された円形の溝の位置を検出するセンサと、
を備えるレコード位置検出装置。
【請求項2】
前記センサによって検出された前記溝の位置に基づいて、前記レコードの中心と前記ターンテーブルの回転中心が一致しているときの基準溝の位置に対する、前記センサによって検出された前記溝の位置のずれ量を算出するずれ量算出部を更に備える請求項1に記載のレコード位置検出装置。
【請求項3】
前記センサは、互いに交差する二つの方向における前記溝の位置を検出する請求項2に記載のレコード位置検出装置。
【請求項4】
前記ずれ量算出部によって算出された前記溝の位置の前記ずれ量に基づいて、前記ターンテーブル上の前記レコードの位置を表示部に表示させる表示制御部を更に備える請求項2又は3に記載のレコード位置検出装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記スピンドルに挿入可能な開口部を有し、前記開口部に前記スピンドルが挿入されて前記スピンドルに固定可能である請求項1から3のいずれか1項に記載のレコード位置検出装置。
【請求項6】
レコードが載置されるターンテーブルに設けられたスピンドルに固定可能な支持部と、前記支持部に設置され、前記支持部に対して前記スピンドルの軸周りに回転可能であるセンサ取り付け部と、前記センサ取り付け部に取り付けられ、前記レコードに形成された溝の位置を検出するセンサとを備えるレコード位置検出装置を用いるレコード位置表示方法であって、
前記センサによって検出された前記溝の位置に基づいて、前記レコードの中心と前記ターンテーブルの回転中心が一致しているときの前記溝の位置に対する、前記センサによって検出された前記溝の位置のずれ量を算出するステップと、
算出された前記溝の位置の前記ずれ量に基づいて、前記ターンテーブル上の前記レコードの位置を表示部に表示させるステップと、
を備えるレコード位置表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レコード位置検出装置及びレコード位置表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レコードを再生する際、レコードは、レコードプレーヤーのターンテーブルに載置される。レコードの中心には穴が設けられており、ターンテーブルの回転中心において上方に突出して設けられたスピンドルにレコードの中心穴を挿入することで、レコードが位置決めされる。
【0003】
実際のレコードでは、レコードの中心穴の径はスピンドルの径よりも大きかったり、中心穴がレコードの絶対的な中心からずれて形成されたりしている。そのため、スピンドルにレコードの中心穴を挿入してレコードをターンテーブルに載置したときに、スピンドルの中心とレコードの中心がずれて、レコードの位置が偏心する場合がある。レコードが偏心して載置されている場合、ターンテーブルが精度良く回転していても、レコードが水平面方向に振られながら回転することから、レコードの再生音の音質に影響が生じる。
【0004】
下記の特許文献1には、レコードに形成された円形を有する最終溝をトーンアームに取り付けた針先でトレースし、トレース時のトーンアームの角度変位によってレコードの偏心状態を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レコードには、導出溝に続く円形の無音溝である最終溝が形成されており、最終溝の中心は、レコードの絶対的な中心である。したがって、最終溝の中心がターンテーブルの回転中心に一致すれば、ターンテーブル上のレコードの偏心が解消される。そこで、最終溝の中心位置を取得するため、回転時のレコードの最終溝を検出対象として、最終溝の位置の変化を検出する方法がある。最終溝の位置の変化がないとき、レコードの中心がターンテーブルの回転中心に一致した状態と判断できる。
【0007】
特許文献1のように、トーンアームに取り付けられた針先が最終溝をトレースすることでレコードの偏心状態を検出する場合、トーンアームの角度変位を検知するため、トーンアームに対してセンサを別途設置する必要がある。その結果、レコードプレーヤーの装置構成が複雑になり、場合によっては、再生音の音質が変化してしまう。また、偏心検出のため、再生前に針先をレコードの最終溝付近に落とす必要があるため、針の破損等に注意する必要がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、レコードプレーヤーの構成や形状に関わらずターンテーブル上のレコードの位置を簡易に検出することが可能なレコード位置検出装置及びレコード位置表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレコード位置検出装置は、レコードが載置されるターンテーブルに設けられたスピンドルに固定可能な支持部と、前記支持部に設置され、前記支持部に対して前記スピンドルの軸周りに回転可能であるセンサ取り付け部と、前記センサ取り付け部に取り付けられ、前記レコードに形成された円形の溝の位置を検出するセンサとを備える。
【0010】
この構成によれば、支持部は、レコードが載置されるターンテーブルに設けられたスピンドルに固定される。センサ取り付け部は、スピンドルの軸周りに回転可能に支持部に設置される。ターンテーブルが回転すると、スピンドルに固定された支持部がターンテーブルに合わせて回転する。センサ取り付け部にはセンサが取り付けられ、センサは、レコードに形成された円形の溝の位置を検出する。なお、位置の検出対象とされる円形の溝は、レコードの導出溝に続く円形の無音溝である最終溝、又は、最終溝よりも中心側に形成された円形の溝などである。
【0011】
センサ取り付け部は、スピンドルの軸周りに回転可能に支持部に対して設置されている。そのため、ユーザーは、ターンテーブルの回転時、センサ取り付け部が支持部の回転力を受けないように、センサ取り付け部を地面に対して一定の位置かつ一定の方向に保持できる。ユーザーがセンサ取り付け部を手で把持することで、センサ取り付け部は、一定の位置かつ一定の方向に保持される。このとき、支持部のみがターンテーブルと共に回転し続け、センサ取り付け部は、ターンテーブルに合わせて回転せずに、地面に対して静止状態とされる。
【0012】
センサは、センサ取り付け部に取り付けられていることから、ターンテーブルの回転の影響を受けずに、地面に対して静止した状態でレコードに形成された溝の位置を検出できる。そして、センサがターンテーブルの外側に取付けられる場合と異なり、レコード位置検出装置がスピンドルに固定されるだけで、センサの検出範囲内にレコードの溝が容易に収められる。したがって、ユーザーは、検出範囲に関するセンサの煩雑な調整を行うことなく、様々なレコードプレーヤーにおいて、レコード位置検出装置によってレコードの位置検出を簡易に行うことができる。
【0013】
本発明に係るレコード位置検出装置において、前記センサによって検出された前記溝の位置に基づいて、前記レコードの中心と前記ターンテーブルの回転中心が一致しているときの基準溝の位置に対する、前記センサによって検出された前記溝の位置のずれ量を算出するずれ量算出部を更に備えてもよい。
【0014】
この構成によれば、センサによって検出された溝の位置に基づいて、レコードの中心とターンテーブルの回転中心が一致しているときの基準溝の位置に対する、検出された溝の位置のずれ量が算出される。
【0015】
本発明に係るレコード位置検出装置において、前記センサは、互いに交差する二つの方向における前記溝の位置を検出してもよい。
【0016】
この構成によれば、センサによって、互いに交差する二つの方向における溝の位置が検出されて、交差する二つの方向における溝の位置のずれ量が算出される。これにより、交差する二つの方向において溝の位置のずれ量を変更できるため、レコードの中心とターンテーブルの回転中心を一致させやすい。
【0017】
本発明に係るレコード位置検出装置において、前記ずれ量算出部によって算出された前記溝の位置の前記ずれ量に基づいて、前記ターンテーブル上の前記レコードの位置を表示部に表示させる表示制御部を更に備えてもよい。
【0018】
この構成によれば、ずれ量算出部によって算出された溝の位置のずれ量に基づいて、ターンテーブル上のレコードの位置が表示部に表示される。表示部がターンテーブル上のレコードの位置を表示することによって、ユーザーは、表示部を確認しながらレコードの位置を調整できる。
【0019】
本発明に係るレコード位置検出装置において、前記支持部は、前記スピンドルに挿入可能な開口部を有し、前記開口部に前記スピンドルが挿入されて前記スピンドルに固定可能でもよい。
【0020】
この構成によれば、支持部は開口部を有し、開口部には、レコードが載置されるターンテーブルに設けられたスピンドルを挿入でき、支持部は、開口部にスピンドルが挿入されてスピンドルに固定される。
【0021】
本発明に係るレコード位置表示方法は、レコードが載置されるターンテーブルに設けられたスピンドルに固定可能な支持部と、前記支持部に設置され、前記支持部に対して前記スピンドルの軸周りに回転可能であるセンサ取り付け部と、前記センサ取り付け部に取り付けられ、前記レコードに形成された溝の位置を検出するセンサとを備えるレコード位置検出装置を用いるレコード位置表示方法であって、前記センサによって検出された前記溝の位置に基づいて、前記レコードの中心と前記ターンテーブルの回転中心が一致しているときの前記溝の位置に対する、前記センサによって検出された前記溝の位置のずれ量を算出するステップと、算出された前記溝の位置の前記ずれ量に基づいて、前記ターンテーブル上の前記レコードの位置を表示部に表示させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、レコードプレーヤーの構成や形状に関わらずターンテーブル上のレコードの位置を簡易に検出することができ、再生音の音質に影響を与えることなく、レコードの中心がターンテーブルの回転中心に一致しているか否かを検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレコード位置検出装置及びターンテーブルを示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るレコード位置検出装置及びターンテーブルを示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るレコード位置検出装置のディスプレイを示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るレコード位置検出装置を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るレコード位置検出装置を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るレコード位置検出装置を示すブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るレコード位置検出装置のセンサを示す概略図である。
【
図8】レコードの最終溝とターンテーブルの回転中心の関係を示す模式的図である。
【
図9】検出された最終溝の位置の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の一実施形態に係るレコード位置検出装置1について、図面を参照して説明する。
レコード位置検出装置1は、ターンテーブル51のスピンドル52に対して着脱可能であり、
図1及び
図2に示すように、ターンテーブル51上のレコード50の位置を検出する際には、スピンドル52に固定されて用いられる。レコード位置検出装置1に設けられたセンサ4は、レコード50に形成された最終溝50A(最内周溝、エンド溝とも呼ばれる。)の位置を検出し、
図3に示すように、検出結果に基づくレコード50の位置がディスプレイ6に表示される。その結果、ユーザーは、ディスプレイ6に表示されたレコード50の位置に基づいて、レコード50の中心がターンテーブル51の回転中心に一致するように調整できる。
【0025】
位置の検出対象とされる最終溝50Aは、レコード50の導出溝に続く円形の無音溝であり、例えばJISZ8108やIEC60050(806)で定義されている最終溝(finishing groove)である。なお、本発明において位置の検出対象とされる円形の溝は、最終溝50Aに限定されず、例えば、最終溝50Aよりも中心側に形成された円形の溝でもよい。検出対象とされる最終溝50A又はその他の円形溝の中心は、レコード50の絶対的な中心である。
【0026】
レコード位置検出装置1は、
図1から
図6に示すように、支持部2と、センサ取り付け部3と、センサ4と、制御部5と、ディスプレイ6と、ベアリング7などを備える。
【0027】
支持部2は、
図1及び
図5に示すように、ターンテーブル51のスピンドル52に固定可能に構成されている。支持部2は、例えば、開口部10を有する底部8と、底部8に接続されてスピンドル52を囲むように設けられた第1円筒部9を備える。
【0028】
底部8は、例えば、スピンドル52に挿入可能な開口部10を有する。底部8は、レコード位置検出装置1のターンテーブル51への設置時においてターンテーブル51側に対向する面、すなわち、レコード位置検出装置1の底面に形成される。開口部10は、底部8の中心に形成される。
【0029】
開口部10にはスピンドル52を固定可能な機構が設けられる。例えば、開口部10の内部に、3点でスピンドル52を挟むことが可能な合成樹脂製の嵌合部材14が設けられる。ターンテーブル51によってスピンドル52の径が異なるため、嵌合部材14は、径方向の外側へ撓みつつ、スピンドル52を保持可能な形状が望ましい。開口部10にスピンドル52が挿入されることによって、支持部2がスピンドル52に固定される。ターンテーブル51が回転すると、スピンドル52に固定された支持部2がターンテーブル51に合わせて回転する。
【0030】
第1円筒部9は、軸方向が支持部2の開口部10内で固定されたスピンドル52の軸方向とほぼ平行となるように設けられる。
【0031】
センサ取り付け部3は、スピンドル52の軸周りに回転可能に支持部2に設置される。センサ取り付け部3は、支持部2がスピンドル52に固定された状態において、スピンドル52の軸周りに回転できる。これにより、ユーザーは、ターンテーブル51の回転時、センサ取り付け部3が支持部2の回転力を受けないように、センサ取り付け部3を地面に対して一定の位置かつ一定の方向に保持できる。ユーザーがセンサ取り付け部3を把持することで、センサ取り付け部3は、一定の位置かつ一定の方向に保持される。このとき、支持部2のみがターンテーブル51と共に回転し続け、センサ取り付け部3は、ターンテーブル51に合わせて回転せずに、地面に対して静止状態とされる。
【0032】
センサ取り付け部3は、
図5に示すように、センサ4が内部に収容されたケーシング15と、ケーシング15の下部に設けられた第2円筒部16を備える。
【0033】
第2円筒部16は、第1円筒部9と同様に、軸方向が支持部2の開口部10内で固定されたスピンドル52の軸方向とほぼ平行となるように設けられる。第2円筒部16は、第1円筒部9の軸心と第2円筒部16の軸心が一致するように、第1円筒部9の内部に設置される。支持部2がスピンドル52に固定された状態において、スピンドル52は第2円筒部16の内部に収容される。
【0034】
第1円筒部9と第2円筒部16の間には、ベアリング7が設置される。ベアリング7の外輪は、支持部2の第1円筒部9の内周面に固定され、ベアリング7の内輪は、センサ取り付け部3の第2円筒部16の外周面に固定される。これにより、支持部2とセンサ取り付け部3は、互いに回転可能に組み合わされている。ベアリング7は、支持部2とセンサ取り付け部3の間で作用する摩擦力を小さくすることができる。
【0035】
センサ取り付け部3のケーシング15の内部には、センサ4や制御部5(
図5参照)、電源部などが収容され、
図2及び
図5に示すように、ケーシング15の上面にはディスプレイ6が設置される。
【0036】
センサ4は、例えば対象物の位置を検出可能なセンサであり、レコード50に形成された最終溝50Aの位置を検出する。センサ4は、
図1、
図4、
図6及び
図7に示すように、投光部17と、受光部18を有する。
【0037】
投光部17は、例えば、
図7に示すように、赤外線LED21を有し、対象物に向けて赤外線を照射可能である。投光部17の赤外線LED21は、赤外線をレコード50の最終溝50Aに対して照射する。投光部17から照射された赤外線は、最終溝50Aにて反射し、受光部18へ向かう。
【0038】
受光部18は、例えば、位置検出素子(PSD)22を有する。位置検出素子22は、位置検出素子22上の光の入射位置を検出して出力する。受光部18の位置検出素子22は、最終溝50Aにて反射した赤外線を受光する。検出される光の入射位置が変化することで、受光部18は、最終溝50Aの位置の変化を検出できる。センサ4で検出された最終溝50Aの位置に関する情報は、制御部5へ送られる。
【0039】
レコード50の溝は、断面がV字形であり、溝の斜面は、レコード50の水平面に対して45°である。また、レコード50に形成される最終溝50Aの半径は、レコード50に関わらず、ほぼ同じ値である。したがって、センサ4からの赤外線が最終溝50Aに照射されて、最終溝50Aで反射した赤外線が受光されるように、センサ4の投光部17及び受光部18の高さ及び角度が決定されて、決定結果に基づいてセンサ4がセンサ取り付け部3に設置されている。
【0040】
センサ4は、互いに交差する方向、例えば90°に交差する方向のレコード50の最終溝50Aまで距離を検出可能な二つの第1センサ4A及び第2センサ4Bを備える。第1センサ4A及び第2センサ4Bは、それぞれ投光部17と受光部18を有する。レコード50表面に対して平行な面において、交差する二つの方向をX方向、Y方向とした場合、第1センサ4AがX方向の位置を検出し、第2センサ4BがY方向の位置を検出する。
【0041】
制御部5は、
図6に示すように、例えば、ずれ量算出部19と、表示制御部20などを有する。
【0042】
ずれ量算出部19は、センサ4によって検出された最終溝50Aの位置に基づいて、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心が一致しているときの基準最終溝50Bの位置に対する、センサ4によって検出された最終溝50Aの位置のずれ量(
図8参照)を算出する。ずれ量算出部19は、第1センサ4A及び第2センサ4Bそれぞれによってレコード50が回転しているときに検出される最終溝50Aの位置の変動量に基づいて、最終溝50Aの中心位置を算出する。
【0043】
より具体的に説明すると、最終溝50Aは円形であり、レコード50が回転しているときに時間変化する最終溝50Aの位置が検出される。レコード50の絶対的な中心とターンテーブル51の回転中心が一致しているとき、検出される最終溝50Aの位置は一定であるから、最終溝50Aの位置に関するデータは直線状で得られる。
【0044】
他方、
図8に示すように、レコード50がターンテーブル51上で偏心した位置にあるとき、検出される最終溝50Aの位置は一定周期で変動するから、
図9に示すように、最終溝50Aの位置に関するデータは振動する波形状で得られる。得られた波の振幅の絶対値が、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心との距離(ずれ量)に相当する。
【0045】
ずれ量算出部19は、第1センサ4Aと第2センサ4Bのそれぞれで得られた波の振幅(振動の最大値及び最小値)をそれぞれ算出する。振動の中心値が、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心が一致しているときの基準最終溝50Bの位置に相当する。
【0046】
また、ずれ量算出部19は、各時点の第1センサ4Aで検出されている最終溝50AのX方向の位置と、基準最終溝50BのX方向の位置(振動の中心値)との間の長さL1を算出し、第2センサ4Bで検出されている最終溝50AのY方向の位置と、基準最終溝50BのY方向の位置(振動の中心値)との間の長さL2を算出する。
【0047】
長さL1及びL2が0であるとき、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心が一致する。長さL1及びL2が0以外の値であるときは、検出されている最終溝50Aが基準最終溝50Bから外れており、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心が一致していない。
【0048】
表示制御部20は、
図3に示すように、ずれ量算出部19で算出された長さL1及びL2に関するデータに基づいて、検出されている最終溝50Aのずれ量をディスプレイ6に表示させる。
【0049】
表示制御部20は、算出された長さL1及びL2に基づいて、X-Y座標に座標(L1,L2)をプロットし、ディスプレイ6に座標(L1,L2)でプロットされた点Pを表示する。また、原点Oは、長さL1及びL2が0で、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心が一致するときの位置である。ディスプレイ6では、原点Oが固定位置に表示され、座標(L1,L2)でプロットされた点Pが検出結果に応じた位置に表示される。これにより、ディスプレイ6において交差する二つの方向の最終溝50Aのずれ量を表示でき、交差する二つの方向において最終溝50Aの位置のずれ量を変更できるため、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心を一致させやすい。
【0050】
ディスプレイ6において、ターンテーブル51上のレコード50の位置が表示されることによって、ユーザーは、ディスプレイ6を確認しながらレコード50の位置を調整できる。ずれ量が0となったとき、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心が一致する。
【0051】
なお、表示制御部20による出力情報や、ディスプレイ6での表示画面は、上述した例に限定されない。ディスプレイ6には、検出された波形が表示されたり、長さL1,L2などの具体的な数値などが表示されたりしてもよい。また、ずれ量が所定の閾値以下となったことが分かるように表示制御が行われてもよい。例えば、プロットされた点Pの色が変更されたり、画面の色が変更されたりすることで、ユーザーは、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心がほぼ一致したことを認識できる。
【0052】
上述したとおり、ずれ量算出部19は、レコード位置検出装置1に設置されたセンサ4から最終溝50Aまでの距離の絶対値ではなく、検出された最終溝50Aの位置の変化量に基づいて、基準最終溝50Bの位置を取得する。そのため、センサ4の設置位置や設置方向は、基準最終溝50Bの位置の取得に影響を与えない。すなわち、第1センサ4A及び第2センサ4Bの検出範囲内にレコード50の最終溝50Aが収まるように各センサ4が設置されれば、ずれ量算出部19は、基準最終溝50Bの位置を取得できる。したがって、本実施形態では、センサ4の設置位置や設置方向の精度に許容範囲を持たせることができる。
【0053】
制御部(Controller)5は、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)11、主記憶装置(Main Memory)12、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)13などを備えている。
【0054】
CPU11は、例えば、バスを介して接続された二次記憶装置13に格納されたOS(Operating System)により制御部5の制御を行うとともに、二次記憶装置13に格納された各種プログラムを実行することにより各種処理を実行する。CPU11は、1つ又は複数設けられており、互いに協働して処理を実現してもよい。
【0055】
主記憶装置12は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPU11の実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
【0056】
二次記憶装置13は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置13は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。二次記憶装置13の一例として、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)フラッシュメモリなどが挙げられる。二次記憶装置13は、例えば、Windows(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)等の情報処理装置全体の制御を行うためのOS、BIOS(Basic Input/Output System)、周辺機器類をハードウェア操作するための各種デバイスドライバ、各種アプリケーションソフトウェア、及び各種データやファイル等を格納する。また、二次記憶装置13には、各種処理を実現するためのプログラムや、各種処理を実現するために必要とされる各種データが格納されている。二次記憶装置13は、複数設けられていてもよく、各二次記憶装置13に上述したようなプログラムやデータが分割されて格納されていてもよい。
【0057】
レコード位置検出装置1が備える機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置13などに記憶されており、このプログラムをCPU(プロセッサ)11が主記憶装置12に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置13に予めインストールされている形態や、他の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例として、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。
【0058】
次に、本実施形態に係るレコード位置検出装置1の使用方法について説明する。
まず、ターンテーブル51にレコード50を載置した後、レコード位置検出装置1をターンテーブル51のスピンドル52に装着し固定する。スピンドル52にレコード位置検出装置1を固定する際、支持部2の底部8に設けられた開口部10にスピンドル52を挿入する。これにより、レコード位置検出装置1は、レコード50のレーベル上方に位置する。
【0059】
そして、ターンテーブル51を回転させると共に、レコード位置検出装置1によるレコード位置の検出を開始する。
【0060】
ターンテーブル51が回転すると、スピンドル52に固定された支持部2もターンテーブル51の回転に合わせて回転する。ターンテーブル51の回転開始時は、センサ取り付け部3も支持部2と共に回転する。この状態のとき、ユーザーは、センサ取り付け部3が支持部2の回転力を受けないように、センサ取り付け部3のみを手で把持してセンサ取り付け部3を一定の位置かつ一定の方向に保持する。このとき、支持部2のみがターンテーブル51と共に回転し続け、センサ取り付け部3は、ターンテーブル51に合わせて回転せずに、地面に対して静止状態とされる。
【0061】
センサ4は、センサ取り付け部3に取り付けられていることから、ターンテーブル51の回転の影響を受けずに、地面に対して静止した状態でレコード50に形成された最終溝50Aの位置を検出できる。そして、支持部2がスピンドル52に固定されたときのセンサ4の検出範囲は,レコードプレーヤーに関わらず、ほぼ同一に設定される。そのため、センサがターンテーブル51の外側に取付けられる場合と異なり、レコード50の最終溝50Aをセンサ4の検出範囲内に容易に収めることができるため、検出範囲に関するセンサ4の煩雑な調整を行うことなく、レコード50の位置検出が簡易に行われる。
【0062】
センサ4には、互いに交差する方向の二つの第1センサ4A及び第2センサ4Bが設けられており、第1センサ4AによってX方向の最終溝50Aの位置が検出され、第2センサ4BによってY方向の最終溝50Aの位置が検出される。
【0063】
そして、センサ4によって検出された最終溝50Aの位置に基づいて、最終溝50Aのずれ量が算出される。具体的には、第1センサ4Aと第2センサ4Bのそれぞれで得られた波の振幅がそれぞれ算出される。振動の中心値が、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心が一致しているときの基準最終溝50Bの位置に相当する。また、第1センサ4Aで検出されている最終溝50AのX方向の位置と、基準最終溝50BのX方向の位置(振動の中心値)との間の長さL1が算出され、第2センサ4Bで検出されている最終溝50AのY方向の位置と、基準最終溝50BのY方向の位置(振動の中心値)との間の長さL2が算出される。
【0064】
次に、算出された長さL1及びL2に関するデータに基づいて、検出されている最終溝50Aのずれ量がディスプレイ6に表示される。算出された長さL1及びL2に基づいて、X-Y座標に座標(L1,L2)がプロットされ、ディスプレイ6において座標(L1,L2)でプロットされた点Pが表示される。原点Oは、長さL1及びL2が0で、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心が一致するときの位置である。
【0065】
そして、ターンテーブル51の回転が停止される。ディスプレイ6には、基準最終溝50Bに対する検出された最終溝50Aのずれ量が表示されることから、ユーザーは、ディスプレイ6を確認しながら、ターンテーブル51上のレコード50の位置をずらして、最終溝50Aのずれ量を調整できる。X方向及びY方向においてずれ量が0となったとき、レコード50の中心とターンテーブル51の回転中心が一致する。
【0066】
以上、本実施形態に係るレコード位置検出装置1は、ターンテーブル51のスピンドル52に対して着脱可能となっている。本実施形態によれば、従来技術(例えば特許文献1)と異なり、トーンアームにセンサを別途設置する必要がないため、レコードプレーヤーの装置構成が複雑にならず、再生音の音質に影響を与えることもない。また、レコードプレーヤーを改造することなく、様々なレコードプレーヤーにおいてレコード位置検出装置1を使用することができる。
【0067】
センサ4は、レコード50の絶対的な中心を検出するため、回転時のレコード50の最終溝50Aを検出対象としている。本実施形態に係るレコード位置検出装置1と異なり、センサをレコードプレーヤーの外部に設置して、その位置から最終溝50Aを検出する場合、センサの検出範囲内に最終溝50Aが収まるように、センサの設置位置や設置方向を調整する必要がある。しかし、ユーザーがセンサの設置に関する調整を行うには手間や時間がかかる。また、レコードプレーヤーの形状やサイズは一様ではないため、センサの設置が困難な場合もある。
【0068】
これに対して、本実施形態に係るレコード位置検出装置1はスピンドル52に固定される。最終溝50Aの半径は、レコード50に関わらず、ほぼ同じ値であるため、本実施形態では、最終溝50Aが検出範囲内となるように、センサ4の高さ及び角度が決定されており、決定結果に基づいてセンサ4がレコード位置検出装置1に設置されている。したがって、スピンドル52に固定されたときのセンサ4の検出範囲は、レコードプレーヤーに関わらずほぼ同一に設定され、かつ、レコード50に関わらず最終溝50Aが検出範囲内に収まる。そのため、センサがターンテーブル51やレコードプレーヤーの外側に取付けられる場合と異なり、レコード位置検出装置1がスピンドル52に固定されるだけで、レコード50の最終溝50Aがセンサ4の検出範囲内に容易に収められる。したがって、ユーザーは、検出範囲に関するセンサ4の煩雑な調整を行うことなく、様々なレコードプレーヤーにおいて、レコード位置検出装置1によってレコード50の中心がターンテーブル51の回転中心に一致しているか否かの検出を簡易に行うことができる。
【0069】
レコード位置検出装置1が設置されるスピンドル52は、ターンテーブル51と共に回転する。そのため、センサが単にスピンドル52に固定可能とされているだけでは、センサも回転してしまうため、最終溝50Aの位置の変化を検出できない。本実施形態では、スピンドル52に固定されるのは支持部2であり、支持部2にはセンサ取り付け部3が回転可能に設置されている。レコード50の位置を検出する際、センサ取り付け部3が支持部2の回転力を受けないように、センサ取り付け部3は、地面に対して静止状態とされて、一定の位置かつ一定の方向に保持される。したがって、センサ4は、ターンテーブル51の回転の影響を受けずに、地面に対して静止した状態でレコード50に形成された最終溝50Aの位置の変化を検出できる。
【0070】
なお、上述した実施形態では、支持部2に開口部10が形成されて、開口部10にスピンドル52が挿入される構成について説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明では、レコード位置検出装置1の支持部2がスピンドル52に対して固定できればよく、例えば、スピンドル52を固定できる構成を有する部品が支持部2の底面の外部に設けられてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、センサ4によって検出された最終溝50Aの位置に基づいてレコード50の最終溝50Aのずれ量を算出する制御部5や、レコード50のずれ量を表示するディスプレイ6が、ケーシング15の内部に設置される例について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、制御部5やディスプレイ6がケーシング15の外部に設置されてもよい。すなわち、制御部5やディスプレイ6は、支持部2及びセンサ取り付け部3とは別体とされる。この場合、検出された最終溝50Aの位置やレコード50のずれ量に関する情報が、ケーシング15の外部に設置された制御部5やディスプレイ6に送られる。また、別体とされる制御部5やディスプレイ6は、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(例えば、スマートフォン、タブレット型端末)等によって実現されてもよい。
【0072】
さらに、上記実施形態では、センサ取り付け部3がユーザーの手で把持されることで、センサ取り付け部3が地面に対して静止状態とされる例について説明したが、本発明はこの例に限定されない。支持部2又はセンサ取り付け部3の内部に駆動部が設けられて、駆動部によってセンサ取り付け部3がターンテーブル51の回転方向とは反対方向に回転されるようにしてもよい。これにより、センサ取り付け部3は、ユーザーの手などで保持されることなく、地面に対して静止状態とされ得る。
【符号の説明】
【0073】
1 :レコード位置検出装置
2 :支持部
3 :センサ取り付け部
4 :センサ
4A :第1センサ
4B :第2センサ
5 :制御部
6 :ディスプレイ(表示部)
7 :ベアリング
8 :底部
9 :第1円筒部
10 :開口部
11 :CPU
12 :主記憶装置
13 :二次記憶装置
14 :嵌合部材
15 :ケーシング
16 :第2円筒部
17 :投光部
18 :受光部
19 :ずれ量算出部
20 :表示制御部
21 :赤外線LED
22 :位置検出素子
50 :レコード
50A :最終溝(溝)
50B :基準最終溝(基準溝)
51 :ターンテーブル
52 :スピンドル
【要約】
【課題】レコードプレーヤーの構成や形状に関わらずターンテーブル上のレコードの位置を簡易に検出することが可能なレコード位置検出装置及びレコード位置表示方法を提供する。
【解決手段】レコード位置検出装置1は、レコード50が載置されるターンテーブル51に設けられたスピンドル52に固定可能な支持部2と、支持部2に設置され、支持部2に対してスピンドル52の軸周りに回転可能であるセンサ取り付け部3と、センサ取り付け部3に取り付けられ、レコード50に形成された円形の最終溝の位置を検出するセンサ4とを備える。
【選択図】
図1