(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 17/12 20060101AFI20220609BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
F04D17/12
F04D29/44 F
F04D29/44 W
(21)【出願番号】P 2017029167
(22)【出願日】2017-02-20
【審査請求日】2019-11-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】枡谷 穣
(72)【発明者】
【氏名】樋口 寛史
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】塩澤 正和
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-206800(JP,A)
【文献】特開平9-79192(JP,A)
【文献】特開平9-144698(JP,A)
【文献】特開2016-56741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 17/12
F04D 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸回りに回転するインペラと、
前記インペラで圧縮する対象の流体の主流を、前記インペラに対して前記主軸の径方向外側から径方向内側に案内するリターンベーンを有するリターン流路と、
前記リターン流路の下流側と接続され、前記主流の方向を前記主軸に沿った方向に転換する第一曲がり流路とを有する複数段の圧縮ユニットと、
少なくともいずれか一段の前記圧縮ユニットの前記リターン流路と接続され、吸い込んだ流体を前記主流に合流させる中間吸込流路と
を備え、
前記中間吸込流路は、
前記リターン流路とを仕切る仕切壁を有し、前記主軸の軸線方向視においてスクロール形状に形成され、流体を吸い込む吸込口から吸い込んだ流体が通過するチャンバと、前記吸込口から吸い込み前記チャンバを通過した流体を前記インペラに案内するインレットガイドベーンとを有し、
前記仕切壁の先端部は、前記リターンベーンの径方向の中央部に位置し、
前記インレットガイドベーンは、接続された前記リターン流路の前記リターンベーンと一体に形成され、前記リターンベーンの後縁から前記リターンベーンの中央部までの翼型と同じ形状であり、
前記チャンバの径方向の内側の側壁が、前記インレットガイドベーンの前縁より径方向外側で、前記リターン流路の入口部である第二曲がり流路より径方向の内側に位置していることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記仕切壁は、前記主軸に沿った断面視において、径方向外側から径方向内側に向かうに連れて前記主軸方向の厚さが薄くなることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記仕切壁の先端部は、前記リターン流路の入口部である第二曲がり流路と、前記第一曲がり流路との中間部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記中間吸込流路は、前記チャンバがケーシングの外径内に収容されていることを特徴とする請求項2に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間吸込流路を有する遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
多段遠心圧縮機では、二段目以降の圧縮段へ流入する主流に、中間吸込流路から注入流を合流させる技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-206080号公報
【文献】特開平09-144698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中間吸込流路を有する遠心圧縮機では、ガスの流入角をリターンガイドベーンの入口角と同程度にすることが好ましい。特許文献1に記載の技術では、第2の通路と前段羽根車からの通路とが、リターンベーンの入口部まで、ケーシングの内面に設けられた仕切壁によって仕切られている。これにより、ガスの流入角をリターンガイドベーンの入口角と同程度にする。また、特許文献2に記載の技術では、注入流の通路におけるリターンベーンに係合され、かつ回転軸方向では主流と注入流が合流する位置にあり、半径方向ではリタ-ンベ-ン前縁より上流側からリタ-ンベ-ン前縁よりも内周側の所定位置まで主流と注入流を分離するように設置された仕切壁を備えている。これにより、主流と注入流がリターンベーンにより十分に減速された後に合流し、かつ合流部における流れの速さおよび方向の整合を取る。
【0005】
また、中間吸込流路の全圧とリターン流路の全圧との差が大きいと、中間吸込流路の入口の全圧もリターン流路の全圧から差が生じる。このため、圧縮機の保証条件の一つである中間吸込入口の圧力と圧縮機入口と出口の圧力バランスを保つことが困難になる。さらに、全圧に差がある流体が次の圧縮段に流入するので、次の圧縮段の性能が低下するおそれがある。このため、中間吸込流路を有する遠心圧縮機では、中間吸込流路の全圧とリターン流路の全圧とを同程度にすることが好ましい。
【0006】
さらにまた、ケーシング全体の径を小さく抑え、遠心圧縮機のコストを低減することが好ましい。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、中間吸込流路の全圧とリターン流路の全圧とを同程度にして運転効率を向上し、小型化することができる遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の遠心圧縮機は、主軸回りに回転するインペラと、前記インペラで圧縮する対象の流体の主流を、前記インペラに対して前記主軸の径方向外側から径方向内側に案内するリターンベーンを有するリターン流路と、前記リターン流路の下流側と接続され、前記主流の方向を前記主軸に沿った方向に転換する第一曲がり流路とを有する複数段の圧縮ユニットと、少なくともいずれか一段の前記圧縮ユニットの前記リターン流路と接続され、吸い込んだ流体を前記主流に合流させる中間吸込流路とを備え、前記中間吸込流路は、前記主軸の軸線方向視においてスクロール形状に形成され、流体を吸い込む吸込口から吸い込んだ流体が通過するチャンバと、前記吸込口から吸い込み前記チャンバを通過した流体を前記インペラに案内するインレットガイドベーンとを有し、前記インレットガイドベーンは、接続された前記リターン流路の前記リターンベーンと一体に形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、中間吸込流路の全圧とリターン流路の全圧とを同程度にして運転効率を向上し、小型化することができる。
【0010】
本発明の遠心圧縮機においては、前記中間吸込流路は、前記リターン流路とを仕切る仕切壁を有し、前記仕切壁は、前記主軸に沿った断面視において、径方向外側から径方向内側に向かうに連れて前記主軸方向の厚さが薄くなることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、リターンベーンと一体であるインレットガイドベーンで、主流の流れを乱さずに、吸い込んだ流体をインペラに案内することができる。
【0012】
本発明の遠心圧縮機においては、前記仕切壁の先端部は、前記リターン流路の入口部である第二曲がり流路と、前記第一曲がり流路との中間部に配置されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、中間吸込流路の全圧とリターン流路の全圧とを同程度にして運転効率を向上し、小型化することができる。
【0014】
本発明の遠心圧縮機においては、前記中間吸込流路は、前記チャンバがケーシングの外径内に収容されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、遠心圧縮機を大型化することなく、リターンベーンと一体であるインレットガイドベーンを有する中間吸込流路を適用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中間吸込流路の全圧とリターン流路の全圧とを同程度にして運転効率を向上し、小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る圧縮機の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る圧縮機の中間吸込流路の断面図である。
【
図5】
図5は、流体の圧力の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、従来の圧縮機の中間吸込流路の断面図である。
【
図9】
図9は、従来の流体の圧力の分布の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、従来の流体の圧力の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0019】
図1を用いて、本実施形態の圧縮機(遠心圧縮機)1の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る圧縮機の概略構成を示す断面図である。圧縮機1は、一軸で多段圧縮の遠心圧縮機である。圧縮機1は、ケーシング2と、軸受部3と、主軸4と、圧縮部5とを有する。
【0020】
ケーシング2は、軸受部3と主軸4と圧縮部5とを収容した筐体である。ケーシング2は、吸引口21と、吐出口22とを有する。吸引口21は、吸引流路211を介してケーシング2内に流体を吸引する。吸引流路211は、吸引口21と圧縮部5との間の流体の流路である。吐出口22は、吐出流路221を介してケーシング2から流体を吐出する。吐出流路221は、吐出口22と圧縮部5との間の流体の流路である。ケーシング2の内部には、吸引口21と吐出口22との間に、圧縮する対象の流体が流れる流路を有する。
【0021】
軸受部3は、主軸4を軸線回りに回転自在に軸支する。
【0022】
図1ないし
図3を用いて、圧縮部5について説明する。
図2は、本実施形態に係る圧縮機の中間吸込流路の断面図である。
図3は、
図2のA-A線断面図である。圧縮部5は、吸引口21から吸引した流体を圧縮し吐出口22から吐出する。圧縮部5は、複数段の圧縮ユニット6を有する。本実施形態では、圧縮部5は、五段の圧縮ユニット6を有する。
【0023】
複数段の圧縮ユニット6は、吸引流路211と吐出流路221との間に直列に配置されている。一段目の圧縮ユニット6は、吸引流路211と接続されている。五段目の圧縮ユニット6は、吐出流路221と接続されている。複数段の圧縮ユニット6は同様に構成されているため、中間吸込ユニット7が配置された二段目の圧縮ユニット6について説明し、その他の圧縮ユニット6の説明を省略する。
【0024】
圧縮ユニット6は、第一曲がり流路61と、第一曲がり流路61に配置されたインペラ62と、前段の圧縮ユニット6と接続されたリターン流路63と、リターン流路63に配置されたリターンベーン64とを有する。
【0025】
第一曲がり流路61は、流体の流れる方向を主軸4に沿った方向に90°転換する。第一曲がり流路61は、上流側の曲げ部611と下流側の曲げ部612とを有している。上流側の曲げ部611は、流体の流れるを軸線方向に沿った方向に転換させる。下流側の曲げ部612は、流体の流れるを径方向の内側から外側に向かう方向に転換させる。一段目の圧縮ユニット6の第一曲がり流路61は、上流側が吸引流路211と接続され、下流側が二段目の圧縮ユニット6のリターン流路63と接続されている。二段目以降の圧縮ユニット6の第一曲がり流路61は、上流側がリターン流路63の下流側と接続され、下流側が次段の圧縮ユニット6のリターン流路63の上流側と接続されている。第一曲がり流路61を通過した流体は、次段の圧縮ユニット6に流入する。
【0026】
インペラ62は、主軸4に固定されている。インペラ62は、表面に多数のブレード621が配置されている。インペラ62は、主軸4に連動して回転することで、第一曲がり流路61に流入する流体をリターン流路63に向けて送出する。
【0027】
リターン流路63は、流体を圧縮ユニット6のインペラ62に対して径方向外側から径方向内側に流入させる。リターン流路63は、リターン流路63の入口部である第二曲がり流路631を有する。リターン流路63は、第二曲がり流路631において、流体を、径方向の外側から内側に向かう方向に180°転換させる。リターン流路63は、上流側が前段の圧縮ユニット6の第一曲がり流路61の下流側と接続され、下流側が第一曲がり流路61の上流側と接続されている。リターン流路63を通過した流体は、第一曲がり流路61に流入する。
【0028】
リターンベーン64は、流体をインペラ62に案内する。リターンベーン64は、リターン流路63を流れる流体を整流する。より詳しくは、リターンベーン64は、リターン流路63を流れる流体を、径方向の内側、言い換えると、主軸4側に案内する。リターンベーン64は、リターン流路63の周方向に等間隔で配置されている。言い換えると、リターンベーン64は、主軸4の回転方向に所定の間隔で、リターン流路63の全周に配置されている。リターンベーン64は、周方向に隣接するリターンベーン64と離れて配置されている。リターンベーン64は、径方向に伸びた板状の部材である。より詳しくは、リターンベーン64は、湾曲した曲面を有する翼型である。これにより、リターン流路63に流入した流体は、リターンベーン64の間を通過して、インペラ62に到達する。
【0029】
このような構成の複数段の圧縮ユニット6で圧縮部5が構成されている。本実施形態では、一段目の圧縮ユニット6は、吸引流路211から流入した流体を圧縮し、二段目の圧縮ユニット6へ流入させる。二段目以降の圧縮ユニット6は、前段の圧縮ユニット6から流入した流体を圧縮し、次段の圧縮ユニット6に流入させる。五段目の圧縮ユニット6は、四段目の圧縮ユニット6から流入した流体を圧縮し、吐出流路221から吐出する。
【0030】
図1ないし
図4に示すように、中間吸込ユニット7について説明する。
図4は、
図2のB-B線断面図である。中間吸込ユニット7は、吸い込んだ流体を、リターン流路63を流れる流体である主流に合流させる。本実施形態では、中間吸込ユニット7は、二段目の圧縮ユニット6と接続されている。中間吸込ユニット7は、中間吸込口(吸込口)71と、中間吸込流路72と、中間吸込流路72に配置されたIGV73とを有する。
【0031】
中間吸込口71は、中間吸込流路72のスクロールの周方向に沿って配置されている。中間吸込口71は、ケーシング2の外周に配置されている。中間吸込口71は、径方向と平行な方向に沿って延びている。中間吸込口71は、下流側が中間吸込流路72の上流側と接続されている。
図4に示すように、本実施形態では、中間吸込口71は、主軸4の軸線方向視(以下、「軸線方向視」という。)において、中間吸込流路72の左上部に上向きに配置されている。
【0032】
中間吸込流路72は、リターン流路63と接続されている。中間吸込流路72は、中間吸込口71から吸い込んだ流体を主流に合流させる。中間吸込流路72は、軸線方向視においてスクロール形状である。中間吸込流路72は、スクロールの全体がケーシング2の外径内に収容されている。中間吸込流路72は、チャンバ721と流入路722とを有する。
【0033】
チャンバ721は、スクロール形状に形成されている。本実施形態では、チャンバ721は、軸線方向視において、反時計回りのスクロールを形成している。チャンバ721は、中間吸込口71から吸い込んだ流体が通過する。チャンバ721は、径方向外側が中間吸込口71と連通している。チャンバ721は、径方向内側が流入路722と連通している。チャンバ721の径方向の内側の側壁721aは、IGV73の前縁732よりわずかに径方向外側に位置している。
【0034】
流入路722は、チャンバ721の径方向の内側と、リターン流路63とを連通している。
【0035】
中間吸込流路72の側壁(仕切壁)723は、リターン流路63と中間吸込流路72とを仕切る。側壁723は、主軸に沿った断面視において、径方向外側から径方向内側に向かうに連れて厚さが薄くなるように形成されている。言い換えると、側壁723は、主軸に沿った断面視において、くさび形状に形成されている。側壁723の内径端(先端)723aは、リターンベーン64の径方向の中央部に位置している。言い換えると、中間吸込流路72は、リターンベーン64の径方向の中央部において、リターン流路63と接続されている。リターン流路63と中間吸込流路72との接続部は、リターン流路63の第二曲がり流路631と第一曲がり流路61との中間部に配置されている。
【0036】
IGV73は、吸い込みチャンバ721を通過した流体を圧縮ユニット6のインペラ62に案内する。IGV73は、リターンベーン64と一体である。一体であるとは、IGV73とリターンベーン64とが一体物であることと、IGV73とリターンベーン64とを組み合わせ一体化していることとを含む。IGV73とリターンベーン64とは、周方向において、同じ位置に同じ間隔で配置されている。IGV73は、リターンベーン64の翼型に合わせた翼型である。より詳しくは、IGV73は、リターンベーン64の後縁641から中央部までの翼型と同じ形状である。IGV73の前縁732は、先端部を丸くした鈍頭状である。IGV73の後縁731とリターンベーン64の後縁641とは、軸線方向視において、同じ位置に配置されている。IGV73とリターンベーン64とは、軸線方向視において、重なり合って配置されている。
【0037】
一体であるIGV73とリターンベーン64との間には、中間吸込流路72の側壁723が介在していない。言い換えると、IGV73とリターンベーン64とは軸線方向の翼面の端面同士が接している。
【0038】
次に、上記構成を有する圧縮機1の作用および効果について説明する。
【0039】
圧縮機1は、主軸4に連動してすべての圧縮ユニット6のインペラ62を回転させる。これにより、流体は、吸引口21から吸入され、吸引流路211を介して圧縮ユニット6の第一曲がり流路61に流入する。そして、流体は、インペラ62で昇圧される。そして、流体は、第一曲がり流路61から次段の圧縮ユニット6のリターン流路63に送出される。
【0040】
圧縮機1は、中間吸込ユニット7の中間吸込流路72から流体を吸い込ませる。吸い込まれた流体は、中間吸込流路72を通過しながらIGV73で整流されて、全周において主流と合流する。
【0041】
そして、中間吸込ユニット7で吸い込まれた流体が合流した流体は、第一曲がり流路61に流入する。そして、流体は、インペラ62で昇圧される。
【0042】
このようにして、圧縮機1は、複数段の圧縮ユニット6で圧縮された流体を、吐出流路221の吐出口22から吐出させる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によれば、リターン流路63と中間吸込流路72とは、リターン流路63の第二曲がり流路631から離れた位置、かつ、第一曲がり流路61の上流側の曲げ部611から離れた位置で接続している。これにより、本実施形態によれば、ハブ側のリターン流路63の静圧と、シュラウド側の中間吸込流路72の静圧とが同程度になる。
【0044】
図5を用いて、リターン流路63の圧力と中間吸込流路72の圧力とについて説明する。
図5は、流体の圧力の一例を示すグラフである。第一曲がり流路61の上流側の曲げ部611においては、ハブ側の静圧が高く、シュラウド側の静圧が低い。しかしながら、リターン流路63と中間吸込流路72との接続部が上流側の曲げ部611から離れているので、ハブ側であるリターン流路63の静圧と、シュラウド側である中間吸込流路72の静圧とは同程度になる。このため、
図5に示すように、本実施形態では、リターン流路63の静圧と中間吸込流路72の静圧とが同程度になる。
【0045】
さらに、リターン流路63と中間吸込流路72との接続部において、それぞれの流速が等しくなるようにしている。これにより、リターン流路63の静圧と中間吸込流路72の静圧とに同じ動圧を加え、リターン流路63の全圧と中間吸込流路72の全圧とを算出すると、
図5に示すように、同等の全圧になっていることが導き出される。
【0046】
このように、本実施形態は、リターン流路63の全圧と中間吸込流路72の全圧とを同程度にすることができる。
【0047】
本実施形態は、リターン流路63の全圧と中間吸込流路72の全圧とが同程度であるので、圧縮機1の入口と出口と中間吸込入口との圧力バランスが保たれる。また、本実施形態によれば、次段の圧縮ユニット6には全圧の差がない流体が流入するので、次段の圧縮ユニット6のインペラ62の性能を維持することができる。このように、本実施形態は、圧縮機1の運転効率を向上することができる。
【0048】
これに対して、
図6ないし
図10を用いて、従来の圧縮機100について説明する。
図6は、従来の圧縮機の中間吸込流路の断面図である。
図7は、
図6のC-C線断面図である。
図8は、
図6のD-D線断面図である。
図9は、従来の流体の圧力の分布の一例を示すグラフである。
図10は、従来の流体の圧力の一例を示すグラフである。
図6に示すように、従来の圧縮機100は、リターン流路163と中間吸込流路172との接続部の構成が圧縮機1と異なる。
【0049】
圧縮ユニット160は、本実施形態の圧縮ユニット6と同様に構成されている。より詳しくは、リターン流路163は、本実施形態のリターン流路63と同様に構成されている。
図7に示すように、リターンベーン164は、本実施形態のリターンベーン64と同様に構成されている。中間吸込ユニット170は、中間吸込流路172とIGV173とが中間吸込ユニット7と異なる。
図8に示すように、中間吸込流路172は、軸線方向視において、線対称である。IGV173は、周方向の位置によって、翼型が異なる。より詳しくは、対象軸に対して対称関係にある一対のIGV173は、線対称の翼型が配置されている。これにより、IGV173とリターンベーン164とは、異なる翼型、配置である。
図6に示すように、IGV173とリターンベーン164との間には、中間吸込流路172の側壁1721が介在している。側壁1721の内径端173aは、リターンベーン164の後縁1641およびIGV173の後縁1731と径方向において一致する位置に位置付けられている。
【0050】
さらに、側壁1721の内径端173aは、曲がり流路161の上流側の曲げ部1611に近接している。言い換えると、リターン流路163と中間吸込流路172との接続部は、曲がり流路161の上流側の曲げ部1611に近接している。これにより、
図9に示すように、ハブ側のリターン流路163の静圧が高く、シュラウド側の中間吸込流路172の静圧が低くなる。
【0051】
さらに、リターン流路163の静圧と中間吸込流路172の静圧とに同じ動圧を加えて算出した、リターン流路163の全圧と中間吸込流路172の全圧は、
図10のようになる。すなわち、中間吸込流路172の全圧がリターン流路163の全圧より低くなる。リターン流路163の全圧と中間吸込流路172の全圧との差が大きいと、中間吸込流路172の入口の全圧が、リターン流路163の全圧より低くなる。この場合、従来の圧縮機100は、圧縮機100の入口と出口と中間吸込入口との圧力バランスを保つことが困難になる。さらに、従来の圧縮機100は、全圧の差がある流体が次段の圧縮ユニット160に流入し、次段の圧縮ユニット160の性能が低下するおそれがある。
【0052】
しかも、従来の圧縮機100は、IGV173とリターンベーン164との翼型が異なり、翼面の断面形状が異なる。これにより、IGV173とリターンベーン164との間に中間吸込流路172の側壁1721が介在していていない構成にすると、IGV173の翼面の端面と、リターンベーン164の翼面の端面とが流体中に暴露してしまう。さらに、対称軸の片側に配置されたIGV173については、翼型の湾曲方向がリターンベーン164の翼型の湾曲方向と異なる。これにより、IGV173とリターンベーン164との間に中間吸込流路172の側壁1721が介在していていない構成とすると、主流の流れが乱れ、圧縮ユニット160の性能を低下させるおそれがある。
【0053】
これに対して、本実施形態は、リターンベーン64と一体であるIGV73で、主流の流れを乱さずに、吸い込んだ流体を主流に合流させてインペラ62に案内することができる。
【0054】
本実施形態によれば、中間吸込流路72のスクロールがケーシング2の外径内に収容されている。これにより、本実施形態は、全体を大型化することなく、リターンベーン64と一体であるIGV73を有する中間吸込ユニット7を配置することができる。
【0055】
本実施形態は、チャンバ721の径方向の内側の側壁721aが、IGV73の前縁732よりわずかに径方向外側に位置している。これにより、本実施形態では、ケーシング2の外径を大きくすることなく、中間吸込ユニット7を配置することができる。このように、本実施形態は、圧縮機1のコストの大きな割合を占めるケーシング2が大型化されないので、コストを低減することができる。
【0056】
これに対して、チャンバ721の径方向の内側の側壁721aが、IGV73の前縁732より大きく径方向外側に位置している場合、中間吸込ユニット7全体が径方向外側に位置することになり、ケーシング2の外径が大きくなる。
【0057】
本実施形態は、中間吸込流路72のチャンバ721がスクロール形状に形成されている。これにより、本実施形態は、中間吸込ユニット7から吸い込む流体の流量や回転数を含む流入条件が変化しても、IGV73の前縁732への流入角をスクロールの周方向に沿った所定角度に保つことができる。これにより、本実施形態は、吸い込む流体の流入条件が変化しても、リターンベーン64の前縁への流入角が変化することを抑制することができる。
【0058】
これに対して、中間吸込流路72のチャンバ721がスクロール形状ではない場合、吸い込む流体の流入条件が変化すると、IGV73の前縁732への流入角が変化する。これにより、リターンベーン64の前縁への流入角も変化する。
【0059】
本実施形態は、側壁723が、主軸に沿った断面視において、くさび形状に形成されている。これにより、内径端723aからの後流の発生を抑制することができる。しかも、側壁723の径方向外側の厚みを内径端723aより厚くすることで、側壁723の強度を高めることができる。さらにまた、側壁723の径方向外側の厚みを内径端723aより厚くすることで、切削や鋳造を含む製造を容易にすることができる。
【0060】
本実施形態において、中間吸込ユニット7は、二段目の圧縮ユニット6と接続されているものとして説明したがこれに限定されない。中間吸込ユニット7は、いずれの圧縮ユニット6と接続されていてもよい。中間吸込ユニット7は、複数の圧縮ユニット6と接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 圧縮機(遠心圧縮機)
2 ケーシング
4 主軸
5 圧縮部
6 圧縮ユニット
61 第一曲がり流路
611 上流側の曲げ部
612 下流側の曲げ部
62 インペラ
63 リターン流路
631 第二曲がり流路
64 リターンベーン
641 後縁
7 中間吸込ユニット
71 中間吸込口(吸込口)
72 中間吸込流路
721 チャンバ
722 流入路
723 側壁(仕切壁)
723a 内径端
73 IGV(インレットガイドベーン)
731 後縁
732 前縁