(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】配線回路基板、その製造方法および撮像装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/42 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
H05K3/42 650B
(21)【出願番号】P 2017190951
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 周作
(72)【発明者】
【氏名】高倉 隼人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】河邨 良広
(72)【発明者】
【氏名】若木 秀一
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-044589(JP,A)
【文献】特開2009-224750(JP,A)
【文献】特開2001-044583(JP,A)
【文献】特開2011-181740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/11
H05K 3/40
H05K 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向を貫通する開口部を有する絶縁層を、金属板の厚み方向一方面に設ける第1工程と、
第1バリア層を、前記開口部から露出する前記金属板の前記厚み方向一方面に、めっきにより設ける第2工程と、
第2バリア層を、前記第1バリア層の前記厚み方向一方側、および、前記開口部に臨む前記絶縁層の内側面に連続状に設ける第3工程と、
導体層を、前記第2バリア層に接触するように設ける第4工程と、
前記金属板を、エッチングして除去する第5工程と
を備え
、
前記第2工程では、前記第1バリア層の周端縁は、前記絶縁層において前記開口部に臨む絶縁内側面の厚み方向他端縁に接触することを特徴とする、配線回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第3工程では、前記第2バリア層を、前記第1バリア層の前記厚み方向一方面に設けることを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記第3工程では、前記第2バリア層を、さらに、前記開口部の周囲における前記絶縁層の前記厚み方向一方面に設けることを特徴とする、請求項1または2の配線回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1工程では、前記絶縁層の前記内側面が、前記厚み方向に対して傾斜するテーパ形状を有するように、前記開口部を設けることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程では、前記第2バリア層を、スパッタリングにより形成することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記第2バリア層の材料が、クロムであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記導体層の厚みが、12μm以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項8】
厚み方向を貫通する開口部を有する絶縁層と、
前記開口部の厚み方向他端縁に位置し、前記絶縁層の前記厚み方向他方面と面一である第1バリア層と、
前記第1バリア層の前記厚み方向一方側、前記開口部に臨む前記絶縁層の内側面、および、前記開口部の周囲における前記絶縁層の前記厚み方向一方面に連続して配置される第2バリア層と、
前記第2バリア層の前記厚み方向一方面に配置される導体層と
を備え、
前記第1バリア層の周端縁は、前記絶縁層において前記開口部に臨む絶縁内側面の厚み方向他端縁に接触することを特徴とする、配線回路基板。
【請求項9】
前記絶縁層の前記内側面が、前記厚み方向に対して傾斜するテーパ形状を有することを特徴とする、請求項8に記載の配線回路基板。
【請求項10】
前記導体層の厚みが、12μm以下であることを特徴とする、請求項8または9に記載の配線回路基板。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の配線回路基板と、
前記配線回路基板に実装され、前記導体層と電気的に接続される撮像素子と
を備えることを特徴とする、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板、その製造方法および撮像装置、詳しくは、配線回路基板の製造方法、それにより得られる配線回路基板、および、それを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置用基板の製造方法として、以下の方法が提案されている(特許文献1参照)。銅合金の表面に、まず、穴を有する絶縁層を形成し、次いで、Au層を穴内の銅合金の表面に形成し、続いて、ニッケル層を穴内においてAu層上に形成し、その後、銅層を、穴内において、ニッケル層上に形成する。その後、銅合金をエッチングにより除去する。
【0003】
特許文献1に記載の方法では、Au層がエッチングストッパ層となり、銅合金のみが除去される。そのため、銅層の損傷が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1に記載の方法では、ニッケル層が、エッチングストッパ層ではなく、そのため、Au層のみで、エッチング液の浸入を防止できない場合がある。
【0006】
また、Au層の周端縁と、絶縁層において穴に臨む内側面との間からエッチングが浸入する場合がある。
【0007】
これらの場合には、銅層がエッチング液によって損傷するという不具合がある。
【0008】
本発明は、エッチングのときに、エッチング液が開口部内に浸入することを十分に抑制して、導体層の損傷を十分に抑制できる配線回路基板の製造方法、それにより得られる配線回路基板および撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、厚み方向を貫通する開口部を有する絶縁層を、金属板の厚み方向一方面に設ける第1工程と、第1バリア層を、前記開口部から露出する前記金属板の前記厚み方向一方面に、めっきにより設ける第2工程と、第2バリア層を、前記第1バリア層の前記厚み方向一方側、および、前記開口部に臨む前記絶縁層の内側面に連続状に設ける第3工程と、導体層を、前記第2バリア層に接触するように設ける第4工程と、前記金属板を、エッチングして除去する第5工程とを備える、配線回路基板の製造方法を含む。
【0010】
この製造方法によれば、第2工程で、第1バリア層を設け、第3工程で、第2バリア層を設けるので、第5工程で、金属板をエッチングしても、2つのバリア層で、エッチング液が導体層に向かって浸入することを十分に抑制することができる。
【0011】
また、この製造方法によれば、第3工程で、第2バリア層を、第1バリア層の厚み方向一方側、および、開口部に臨む絶縁層の内側面に連続状に設ける。そのため、第5工程において、たとえ、エッチング液が、第1バリア層の周端縁、および、絶縁層の内側面の間に浸入しても、第2バリア層が、エッチング液のそれ以上の浸入を確実に抑制することができる。
【0012】
その結果、導体層の損傷を十分に抑制することができる。
【0013】
本発明(2)は、前記第3工程では、前記第2バリア層を、前記第1バリア層の前記厚み方向一方面に設ける、(1)に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0014】
この製造方法によれば、第3工程では、第2バリア層を、第1バリア層の厚み方向一方面に設けるので、第2バリア層を第1バリア層とを開口部内において接触させることができる。そのため、互いに接触する2つのバリア層によるエッチング液の浸入の抑制効果を向上させることができる。
【0015】
本発明(3)は、前記第3工程では、前記第2バリア層を、さらに、前記開口部の周囲における前記絶縁層の前記厚み方向一方面に設ける、(1)または(2)に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0016】
たとえ、エッチング液が絶縁層の内側面に沿って厚み方向一方側に浸入しようとしても、この製造方法によれば、開口部の周囲における絶縁層の厚み方向一方面に設けられる第2バリア層によって、エッチング液のそれ以上の厚み方向一方側への浸入を抑制することができる。
【0017】
本発明(4)は、前記第1工程では、前記絶縁層の前記内側面が、前記厚み方向に対して傾斜するテーパ形状を有するように、前記開口部を設ける、(1)~(3)のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0018】
この製造方法によれば、第1工程では、絶縁層の内側面が、厚み方向に対して傾斜するテーパ形状を有するように、開口部を設けるので、絶縁層の内側面を、ストレート形状の内側面に比べて、長くすることができる。そのため、第3工程において設けられる第2バリア層と、絶縁層の内側面との接触面積を増大させて、かかる第2バリア層によって、第5工程におけるエッチング液の浸入抑制効果を向上させることができる。
【0019】
本発明(5)は、前記第3工程では、前記第2バリア層を、スパッタリングにより形成する、(1)~(4)のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0020】
この製造方法によれば、第3工程をスパッタリングにより実施するので、第2バリア層を簡単に形成することができる。
【0021】
とりわけ、絶縁層の内側面がテーパ形状を有する場合には、かかる内側面に対して、スパッタリングにより第2バリア層を確実に形成することができる。
【0022】
本発明(6)は、前記第2バリア層の材料が、クロムである、(1)~(5)のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0023】
この製造方法によれば、第2バリア層の材料が、クロムであるので、第5工程におけるエッチング液の浸入を確実に抑制することができる。
【0024】
本発明(7)は、前記導体層の厚みが、12μm以下である、(1)~(5)のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法を含む。
【0025】
導体層の厚みが12μm以下であれば、第5工程において、エッチング液の浸食に起因する導体層の損傷が、接続信頼性に大きく影響を及ぼす。
【0026】
しかし、本発明では、第3工程で第2バリア層を設けるので、第5工程で、金属板をエッチングしても、エッチング液が導体層に向かって浸入することを十分に抑制でき、そのため、上記した影響を排除することができる。
【0027】
本発明(8)は、厚み方向を貫通する開口部を有する絶縁層と、前記開口部の厚み方向他端縁に位置し、前記絶縁層の前記厚み方向他方面と面一である第1バリア層と、前記第1バリア層の前記厚み方向一方側、前記開口部に臨む前記絶縁層の内側面、および、前記開口部の周囲における前記絶縁層の前記厚み方向一方面に連続して配置される第2バリア層と、前記第2バリア層の前記厚み方向一方面に配置される導体層とを備える、配線回路基板を含む。
【0028】
この配線回路基板では、応力が厚み方向に交差する方向に導体層にかかっても、第2バリア層を介して、内側面から絶縁層に分散させることができる。そのため、導体層の強度を向上させることができる。
【0029】
本発明(9)は、前記絶縁層の前記内側面が、前記厚み方向に対して傾斜するテーパ形状を有する、(8)に記載の配線回路基板を含む。
【0030】
絶縁層の内側面が、厚み方向に対して傾斜するテーパ形状を有するので、上記した応力を上記した方向により一層効率的に分散させることができる。
【0031】
本発明(10)は、前記導体層の厚みが、12μm以下である、(8)または(9)に記載の配線回路基板を含む。
【0032】
この配線回路基板によれば、導体層の厚みが12μm以下と薄いので、薄型化および低弾性化が図られる。
【0033】
本発明(11)は、(8)~(10)に記載の配線回路基板と、前記配線回路基板に実装され、前記導体層と電気的に接続される撮像素子とを備える、撮像装置を含む。
【0034】
この撮像装置は、上記の配線回路基板を備えるので、信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の配線回路基板の製造方法によれば、導体層の損傷を十分に抑制することができる。
【0036】
本発明の配線回路基板では、導体層の強度を向上させることができる。
【0037】
本発明の撮像装置は、信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1A~
図1Fは、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態の製造工程図であり、
図1Aが、ベース絶縁層を金属板に設ける第1工程、
図1Bが、第1バリア層を設ける第2工程、
図1Cが、連続層を設ける第3工程、
図1Dが、導体層を設ける第4工程、
図1Eが、カバー絶縁層を設ける工程、
図1Fが、金属板をエッチングして除去する第5工程を示す。
【
図2】
図2は、
図1Fに示す配線回路基板を備える撮像装置の概略断面図を示す。
【
図3】
図3は、
図1A~
図1Fに示す一実施形態の変形例であって、
図1Cに対応し、第2バリア層を所定のパターンで予め形成する第3工程を示す。
【
図5】
図5A~
図5Cは、
図1A~
図1Fに示す一実施形態の変形例であって、
図1B~
図1Fに対応し、
図5Aが、ストレート形状の開口部を有する絶縁層を形成する第1工程、第1バリア層を形成する第2工程、
図5Bが、第2バリア層(連続層)を形成する第3工程、
図5Cが、導体層を形成する第4工程、カバー絶縁層を形成する第6工程、金属板を除去する第5工程を示す。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、
図1A~
図1Fに示す一実施形態の変形例であって、
図1C~
図1Fに対応し、
図6Aが、介在層を形成する工程、および、第2バリア層(連続層)を形成する第3工程、
図6Bが、導体層を形成する第4工程、カバー絶縁層を形成する第6工程、金属板を除去する第5工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1A~
図1Fにおいて、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向の一例)を示し、紙面上側が上側(厚み方向一方側の一例)、紙面下側が下側(厚み方向他方側の一例)を示す。紙面左右方向は、面方向(厚み方向に直交する方向の一例)を示す。
【0040】
具体的には、方向は、各図の方向矢印に準拠する。
【0041】
これらの方向の定義により、配線回路基板1および撮像装置22(
図2)(後述)の製造時および使用時の向きを限定する意図はない。
【0042】
なお、以降の各図は、各部材の角度、寸法などが、本願発明を容易に理解するために誇張して描画されており、正確に表されていない場合を含む。
【0043】
本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態は、
図2に示すように、撮像素子21と電気的に接続されて、撮像装置22に備えられる(組み込まれる)ための配線回路基板10(撮像装置用配線回路基板)の製造方法である。
【0044】
図1A~
図1Eに示すように、配線回路基板10の製造方法は、絶縁層の一例としてのベース絶縁層1を金属板2に設ける第1工程と、第1バリア層7を設ける第2工程と、第2バリア層8を設ける第3工程と、導体層9を設ける第4工程と、カバー絶縁層14を設ける第6工程と、金属板2をエッチングして除去する第5工程とを備える。
【0045】
図1Aに示すように、第1工程では、厚み方向を貫通する開口部3を有するベース絶縁層1を、金属板2の上面に設ける。
【0046】
ベース絶縁層1は、面方向に延びるシート形状を有する。また、ベース絶縁層1は、互いに平行する絶縁上面4および絶縁下面5を有する。絶縁上面4および絶縁下面5は、ともに、平坦面である。絶縁下面5は、金属板2の上面と接触している。また、ベース絶縁層1は、開口部3に臨む絶縁内側面6を有する。
【0047】
開口部3は、面方向に互いに間隔を隔てて複数配置される。複数の開口部3のそれぞれは、平面視略円形状を有する。複数の開口部3のそれぞれは、その開口断面積(面方向に沿って切断したときの開口断面積)が下側に向かうに従って小さくなるテーパ形状を有する。そのため、絶縁内側面6は、断面視において(厚み方向に沿って切断したときに)、面方向において互いに対向するテーパ面(傾斜面)であって、下側に向かうに従ってそれらの対向距離が小さくなるように、形成されている。つまり、開口部3は、下方に向かって縮径する略円錐台形状を有する。開口部3の下端縁は、金属板2によって閉塞されている。
【0048】
ベース絶縁層1の材料としては、例えば、絶縁材料が挙げられる。絶縁材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂などが挙げられる。好ましくは、ポリイミドなどが挙げられる。
【0049】
金属板2は、面方向に延び、平坦な上面を有するシート形状を有する。金属板2の材料としては、例えば、第5工程によるエッチング(
図1F)(後述)によって除去される材料が挙げられ、また、第2工程(後述)におけるめっき(具体的には、電解めっき)における給電層となる導体が挙げられる。また、金属板2は、以降で説明する第1バリア層7、第2バリア層8、導体層9およびカバー絶縁層14を支持する支持層となるので、金属板2の材料としては、剛性を有する材料が挙げられる。具体的には、金属板2の材料としては、例えば、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、銅合金などの金属が挙げられ、好ましくは、ステンレスが挙げられる。金属板2の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0050】
第1工程では、ベース絶縁層1を、例えば、フォト加工により、金属板2の上面に設ける。具体的には、まず、感光成分および絶縁材料を含有する感光絶縁組成物を調製し、続いて、感光絶縁組成物を、金属板2の上面に塗布し、その後、必要により乾燥して、皮膜を形成する。次いで、開口部3に対応するパターンを有するフォトマスクを介して皮膜を露光し、現像して、その後、必要により、露光後加熱する。なお、テーパ形状を有する絶縁内側面6は、露光時の露光ギャップなどで光の平行度を調整することで形成する。
【0051】
あるいは、開口部3を有するパターンに形成されたベース絶縁層1を、金属板2の上面に配置(載置)する。
【0052】
これにより、開口部3を有するベース絶縁層1を金属板2の上面に形成する。
【0053】
ベース絶縁層2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、30μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0054】
開口部3の上端縁の最大長さ(最大径)は、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1500μm以下である。開口部3の下端縁の最大長さ(最大径)は、例えば、5μm以上、好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。絶縁内側面6と、開口部3から露出する金属板2の上面との成す角度αは、例えば、鈍角であり、具体的には、90度超過、好ましくは、120度以上であり、また、例えば、170度以下、好ましくは、160度以下である。
【0055】
図1Bに示すように、次いで、第2工程では、第1バリア層7を、開口部3から露出する金属板2の上面にめっきにより設ける。
【0056】
第1バリア層7は、第5工程のエッチング液に対するバリア層であり、開口部3内の下端縁に位置しており、開口部3内において、面方向に延びる薄膜形状を有する。また、第1バリア層7の周端縁は、絶縁内側面6の下端縁に接触している。また、第1バリア層7は、互いに平行し、厚み方向に間隔を隔てて配置される第1上面11および第2下面12を有する。
【0057】
第2下面12は、金属板2の上面と接触しており、絶縁下面5と、面方向に面一である。つまり、第2下面12は、絶縁下面5と面方向に連続する。
【0058】
第1上面11は、面方向に投影したときに、絶縁内側面6と重複しており、絶縁上面4の下側に間隔を隔てて位置する。
【0059】
第1バリア層7の材料としては、第5工程によるエッチング(後述)によってエッチング液の浸入を抑制できるエッチングバリア性材料が挙げられ、具体的には、金、白金、パラジウム、クロム、それらの合金などが挙げられ、好ましくは、金が挙げられる。
【0060】
第1バリア層7は、例えば、電解めっき、無電解めっきなどにより、設けられる。好ましくは、第1バリア層7は、金属板2から給電する電解めっきによって、開口部3から露出する金属板2の上面に、形成される。
【0061】
第1バリア層7の厚みは、例えば、0.05μm以上、好ましくは、0.2μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、5μm以下である。
【0062】
図1Cに示すように、次いで、第3工程では、第2バリア層8を、第1バリア層7の第1上面11、絶縁内側面6、および、開口部3の周囲における絶縁層1の絶縁上面4に、連続状に設ける。
【0063】
具体的には、まず、第2バリア層8を含む連続層13を、第1バリア層7における第1上面11の全面と、絶縁層1における絶縁内側面6および絶縁上面4の全面とに、連続状に設ける。
【0064】
連続層13は、上記した絶縁内側面6と、第1上面11とに連続している。これにより、連続層13は、第1上面11の周端縁の外面(絶縁内側面6に対向する外側面)と、絶縁内側面6の下端縁との間を閉塞する。
【0065】
さらに、連続層13は、絶縁内側面6において、その下端縁以外の全面に配置されており、かかる全面を被覆(閉塞)している。
【0066】
なお、連続層13は、上記した各面に沿って連続して延びる薄膜形状を有し、上記した各面に追従しており、連続層13が延びる方向と直交する方向において同一厚みを有する。
【0067】
なお、連続層13は、次に説明する第4工程(
図1D参照)におけるパターニングにより、第2バリア層8となる(形成される)層であって、第2バリア層8と同一厚みを有し、同一材料からなる。
【0068】
連続層13の材料としては、第5工程によるエッチング(後述)によって、第1バリア層7を通過したエッチング液のさらなる浸入を抑制できるエッチングバリア性材料が挙げられ、また、導体層9の絶縁層1に対する密着性を向上させる密着性材料(つまり、導体層9の絶縁層1に対する密着力に比べて、連続層13の絶縁層1に対する密着力、および、連続層13の導体層9に対する密着力が大きくなる材料)が挙げられる。また、連続層13の材料は、第2バリア層8が後述する第4工程におけるめっきの下地層(シード層、種膜)となることから、導体が挙げられる。
【0069】
また、連続層13の材料としては、第1バリア層7の材料と同一または相異なっていてもよい。なお、連続層13の材料と第1バリア層7の材料とが相異なる場合には、それらの間には、境界が形成され、また、連続層13の材料と第1バリア層7の材料とが同一である場合には、それらの間には、形成方法の相違に基づく境界が形成される。好ましくは、連続層13の材料は、第1バリア層7の材料と相違しており、具体的には、クロムが挙げられる。連続層13の材料がクロムであれば、第5工程によるエッチング(後述)において、第1バリア層7を通過したエッチング液のさらなる浸入をより一層抑制でき、また、導体層9の絶縁層1に対する密着性を十分に向上させることができる。
【0070】
連続層13を、例えば、スパッタリング、めっき(無電解めっきなど)などの薄膜形成方法により、形成する。好ましくは、スパッタリングにより形成する。スパッタリングであれば、均一な厚みの連続層13を簡易に形成できる。
【0071】
連続層13の厚みは、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上、であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、100nm以下である。
【0072】
その後、第4工程において、連続層13は、パターニング(連続層13における不要部分が除去)されて、第2バリア層8のみが残る(形成される)。
【0073】
図1Dに示すように、次いで、第4工程では、導体層9を、連続層13に接触するように設ける。
【0074】
導体層9は、平面視において、後でパターニングされる第2バリア層8と重複する平面視パターンで、連続層13の上面に形成される。
【0075】
導体層9を、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法などのパターン形成方法によって、形成する。
【0076】
好ましくは、導体層9を、アディティブ法によって、連続層13の上面に形成する。具体的には、まず、図示しないめっきレジストを、連続層13の上面に、導体層9の逆パターンで配置し、続いて、金属板2から第1バリア層7を介して連続層13に給電して、導体層9を電解めっきにより形成する。すなわち、連続層13を種膜(シード層)として利用して、電解めっきする。
【0077】
その後、めっきレジストを除去し、続いて、めっきレジストが被覆していた連続層13(導体層9から露出する連続層13、つまり、連続層13における不要部分)を剥離などによって除去する。
【0078】
これによって、導体層9が形成されるとともに、第2バリア層8が形成される。
【0079】
第2バリア層8は、第1バリア層7の第1上面11と、絶縁内側面6(下端縁)と、開口部3の周囲の絶縁上面4とに連続するパターンに形成される。
【0080】
導体層9は、第2バリア層8の上面に接触しており、平面視において、第2バリア層8と同一パターンに形成されている。
【0081】
導体層9の材料としては、例えば、銅、ニッケル、または合金などの導体などが挙げられ、好ましくは、銅が挙げられる。
【0082】
導体層9の厚みは、例えば、0.5μm以上、好ましくは、2μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、12μm以下、より好ましくは、8μm以下、さらに好ましくは、5μm以下、とりわけ好ましくは、3μm以下である。
【0083】
導体層9の厚みが上記した上限以下であれば、配線回路基板10の薄型化を図ることができる。また、配線回路基板10の弾性率が下がるため、撮像装置22の低反り化が図られる。
【0084】
図1Eに示すように、第6工程では、次いで、カバー絶縁層14を、絶縁上面4に、導体層9を部分的に被覆するように、設ける。例えば、カバー絶縁層14を、フォト加工などによって、ベース絶縁層1と同一の絶縁材料から形成する。カバー絶縁層14の厚みは、特に限定されず、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、30μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0085】
図1Fに示すように、その後、第5工程では、金属板2をエッチングして除去する。
【0086】
具体的には、エッチングレジスト(図示せず)を、導体層9を被覆するように配置し、続いて、金属板2をエッチング液に暴露させる。
【0087】
エッチング液の種類、エッチング条件などは、特に限定されず、例えば、金属板2を除去できるが、ベース絶縁層1および第1バリア層7を除去しないように、適宜設定される。
【0088】
これにより、配線回路基板10を製造する。配線回路基板10は、ベース絶縁層1と、第1バリア層7と、第2バリア層8と、導体層9と、カバー絶縁層14とを備える。好ましくは、配線回路基板10は、ベース絶縁層1と、第1バリア層7と、第2バリア層8と、導体層9と、カバー絶縁層14とのみからなる。
【0089】
配線回路基板10の厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは、40μm以下であり、また、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上である。
【0090】
次に、
図2に示すように、上記した配線回路基板10を備える撮像装置22を説明する。
【0091】
配線回路基板10の下側に、撮像素子21を準備し、次いで、撮像素子21の端子23を第1バリア層7と接触させる。これにより、撮像素子21の端子23が、第1バリア層7および第2バリア層8を介して、導体層9と電気的に接続される。これにより、撮像素子21が配線回路基板10に実装される。
【0092】
これにより、配線回路基板10と、撮像素子21とを備える撮像装置22を得る。
【0093】
そして、この製造方法によれば、
図1Bに示す第2工程で、第1バリア層7を設け、
図1Cに示す第3工程で、第2バリア層8となる連続層13を設ける。そのため、
図1Fに示す第5工程で、金属板2をエッチングしても、2つのバリア層(第1バリア層7および第2バリア層8)で、エッチング液が導体層9に向かって浸入することを十分に抑制することができる。
【0094】
また、この製造方法によれば、
図1Cに示すように、第3工程で、第2バリア層8となる連続層13を、第1バリア層7の第1上面11(第1バリア層7の上側)、および、絶縁層1の絶縁内側面6に連続状に設ける。そのため、第5工程において、たとえ、エッチング液が、第1バリア層7の周端縁、および、絶縁層1の絶縁内側面6の間に浸入しても、第2バリア層8が、エッチング液のそれ以上の浸入を確実に抑制することができる。
【0095】
その結果、導体層9の損傷を十分に抑制することができる。
【0096】
また、この製造方法によれば、
図1Cに示すように、第3工程では、第2バリア層8となる連続層13を、第1バリア層7の第1上面11に設けるので、第2バリア層8を第1バリア層7とを直接接触させることができる。そのため、互いに接触する2つのバリア層による開口部3へのエッチング液の浸入の抑制効果を向上させることができる。
【0097】
また、たとえ、エッチング液が絶縁層1の絶縁内側面6に沿って上に向かって浸入しようとしても、この製造方法によれば、開口部3の周囲における絶縁層1の絶縁上面4に設けられる第2バリア層8によって、エッチング液のそれ以上の上側への浸入を抑制することができる。
【0098】
さらに、この製造方法によれば、
図1Aに示すように、第1工程では、絶縁層1の絶縁内側面6が、厚み方向に対して傾斜するテーパ形状を有するように、開口部3を設けている。そのため、ベース絶縁層1の絶縁内側面6を、ストレート形状の絶縁内側面6(
図5A参照)に比べて、長くすることができる。そのため、
図1Cにおける第3工程において設けられる第2バリア層8となる連続層13と、ベース絶縁層1の絶縁内側面6との接触面積を増大させて、連続層13から形成される第2バリア層8によって、第5工程におけるエッチング液の浸入抑制効果を向上させることができる。
【0099】
図1Cに示す第3工程において、第2バリア層8を、絶縁層1の絶縁内側面6に確実に設けることができる。
【0100】
また、この製造方法によれば、
図1Cに示すように、第3工程をスパッタリングにより実施すれば、第2バリア層8となる連続層13を簡単に形成することができる。
【0101】
とりわけ、ベース絶縁層1の絶縁内側面6がテーパ形状を有する場合には、かかる絶縁内側面6に対して、スパッタリングにより連続層13を確実に形成することができる。
【0102】
さらに、第2バリア層の材料が、クロムであれば、第5工程におけるエッチング液の浸入を確実に抑制することができる。
【0103】
また、導体層9の厚みが12μm以下と薄ければ、第5工程において、第1バリア層1および第2バリア層8がなければ、エッチング液の浸食に起因する導体層9の損傷が、接続信頼性の低下が顕在化する。具体的には、薄い導体層9が穿孔されるなどの損傷を生じる。
【0104】
しかし、この製造方法によれば、第3工程で第2バリア層8を設けるので、第5工程で、金属板2をエッチングしても、エッチング液が導体層9に向かって浸入することを十分に抑制でき、そのため、上記した損傷を抑制することができる。
【0105】
他方、導体層9の厚みが8μmを超過すれば、上記した穿孔などの可能性が少ない。
【0106】
この配線回路基板1では、応力が面方向に導体層9にかかっても、第2バリア層8を介して、絶縁内側面6から絶縁層1に分散させることができる。そのため、導体層9の強度を向上させることができる。
【0107】
さらに、絶縁層1の絶縁内側面6が、テーパ形状を有するので、上記した応力を面方向により一層効率的に分散させることができる。
【0108】
また、導体層9の厚みが12μm以下と薄ければ、配線回路基板1の薄型化を図ることができる。また、配線回路基板10の弾性率が下がるため、撮像装置22の低反り化が図られる。
【0109】
図2に示す撮像装置22は、上記した配線回路基板1を備えるので、信頼性に優れる。
[変形例]
以下の変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例を適宜組み合わせることができる。さらに、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0110】
一実施形態では、
図1Cに示すように、連続層13を絶縁層1の全面に形成し、続いて、
図1Dに示すように、導体層9の形成と同時に、連続層13から第2バリア層8をパターニングしている。しかし、例えば、
図3に示すように、予め所定のパターンの第2バリア層8を、第1バリア層7の第1上面11と、絶縁内側面6と、開口部3の周囲における絶縁層1の絶縁上面4とに連続状に形成することもできる。
【0111】
その後、
図1Dに示すように、導体層9を、第2バリア層8の上面に形成し、続いて、
図1Eに示すように、カバー絶縁層14を形成し、
図1Fに示すように、金属板2を除去する。
【0112】
一実施形態では、
図1Dに示すように、第2バリア層8を、開口部3の周囲における絶縁層1の絶縁上面4に設けている。しかし、例えば、
図4Aに示すように、開口部3の周囲における絶縁層1の絶縁上面4を露出させ、第1バリア層7の第1上面11、および、絶縁内側面6のみに設けることもできる。
【0113】
その後、
図4Aの実線および
図4Bに示すように、導体層9を形成し、続いて、カバー絶縁層14を順に形成し、
図4Bの仮想線で示す金属板2を除去する。
【0114】
一実施形態では、
図1Aに示すように、絶縁内側面6が、テーパ形状を有するように、開口部3を絶縁層1に形成している。しかし、
図5Aに示すように、絶縁内側面6が、厚み方向に沿うストレート形状を有するように、開口部3を絶縁層1に形成することもできる。
【0115】
その後、第1バリア層7を形成し、次いで、
図5Bに示すように、第2バリア層8(となる連続層13(仮想線))を形成し、次いで、
図5Cに示すように、導体層9を形成し、次いで、カバー絶縁層14(仮想線)を形成し、その後、金属板2を除去する。
【0116】
図6Aに示すように、介在層15を、開口部3内において、第1バリア層7と、第2バリア層8との間に配置する(介在させる)こともできる。
【0117】
介在層15は、第1バリア層7の第1上面11の全面に形成される。介在層15は、面方向に延びる略円板形状を有する。介在層15の材料としては、例えば、ニッケルなどの金属が挙げられる。介在層15の厚みは、例えば、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、25μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0118】
介在層15は、第2工程および第3工程間に、形成される。介在層15を、例えば、スパッタリング、めっき(電解めっきなど)などの薄膜形成方法により、形成する。好ましくは、めっきにより介在層15を形成する。具体的には、第2工程の後に、めっきにより、介在層15を、第1バリア層7の第1上面11に形成する。
【0119】
その後、第3工程において、第2バリア層8となる連続層13を、介在層15の上面と、絶縁内側面6と、開口部3の周囲における絶縁層1の絶縁上面4とに、連続状に形成する。
【0120】
その後、
図6Bに示すように、導体層9および第2バリア層8を形成し、次いで、カバー絶縁層14を形成し、その後、仮想線で示す金属板2を除去する。
【0121】
これにより、
図6Bの実線で示すように、ベース絶縁層1と、第1バリア層7と、介在層15と、第2バリア層8と、導体層9と、カバー絶縁層14とを備える配線回路基板10を得る。
【0122】
図7Aおよび
図7Bに示すように、配線回路基板10に、さらに、シールド層16および第2カバー絶縁層17を備えることもできる。
【0123】
図7Aに示すように、シールド層16は、カバー絶縁層14の上面、および、カバー絶縁層14から露出する導体層9の上面に設けられる。シールド層16のパターン、形成方法、厚みなどは、特に限定されない。なお、シールド層16の材料は、導体層9の材料と同様である。
【0124】
図7Bに示すように、第2カバー絶縁層17は、シールド層16を被覆するように、カバー絶縁層14の上面に設けられる。第2カバー絶縁層17のパターン、形成方法などは、特に限定されない。なお、第2カバー絶縁層17の材料および厚みは、カバー絶縁層14のそれらと同様である。
【0125】
この方法では、
図7Aに示すように、第6工程(
図1E参照)の後に、シールド層16を形成し、続いて、
図7Bに示すように、第2カバー絶縁層17を形成し、その後、
図7の仮想線で示す金属板2を除去する(第5工程)。
【0126】
この配線回路基板10は、ベース絶縁層1と、第1バリア層7と、第2バリア層8と、導体層9と、カバー絶縁層14と、シールド層16と、第2カバー絶縁層17とを備える。
【0127】
一実施形態では、配線回路基板10は、撮像装置用配線回路基板として説明したが、その用途はこれに限定されず、例えば、検査用基板(異方導電性シート)、フレキシブル配線回路基板などに用いることができる。
【符号の説明】
【0128】
1 絶縁層
2 金属板
3 開口部
4 絶縁上面
6 絶縁内側面
7 第1バリア層
8 第2バリア層
9 導体層
10 配線回路基板(撮像装置用配線回路基板)
11 第1上面
22 撮像装置
23 撮像素子