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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】油脂状態測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20220609BHJP
   G01N 33/03 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N33/03
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017233249
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019100906
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井田 康仁
(72)【発明者】
【氏名】白田 卓也
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-010934(JP,A)
【文献】特開2010-281610(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185524(WO,A1)
【文献】特開2003-153812(JP,A)
【文献】特開2003-250708(JP,A)
【文献】米国特許第05049742(US,A)
【文献】特開2017-198717(JP,A)
【文献】特開2006-337049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G01N 33/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂の状態を測定する油脂状態測定装置であって、
前記油脂を透過した可視光域の光の明度に基づいて前記油脂の酸価を測定する酸価測定部を備え、
前記酸価測定部は、前記明度と前記酸価との対応関係が定義されたテーブルを記憶する記憶部と、
前記油脂を貯留して食材を揚げる油槽から前記食材を揚げるときの揚げ条件の情報を取得する取得部と、を備え、
前記テーブルは、第1のテーブルと、当該第1のテーブルとは前記明度と前記酸価との対応関係が異なる第2のテーブルと、を含み、
前記酸価測定部は、前記取得部が取得した揚げ条件に応じて前記第1のテーブルと前記第2のテーブルとを切り替える
油脂状態測定装置。
【請求項2】
油脂の状態を測定する油脂状態測定装置であって、
前記油脂を透過した可視光域の光の明度に基づいて前記油脂の酸価を測定する酸価測定部を備え、
前記酸価測定部は、前記明度と前記酸価との対応関係が定義されたテーブルを記憶する記憶部と、
前記油脂が使われる店舗の販売時点情報管理情報を取得する取得部と、を備え、
前記テーブルは、第1のテーブルと、当該第1のテーブルとは前記明度と前記酸価との対応関係が異なる第2のテーブルと、を含み、
前記酸価測定部は、前記取得部が取得した販売時点情報管理情報の発注情報に応じて前記第1のテーブルと前記第2のテーブルとを切り替える
油脂状態測定装置。
【請求項3】
前記酸価測定部は、測定した前記油脂の酸価を電圧値に変換して出力する
請求項1又は2に記載の油脂状態測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂の状態を測定する油脂状態測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品に含有される油脂が劣化すると、味が変化したり、異臭がしたりする等の問題が生じるため、食品に含有される油脂又は食品の加工に用いられる油脂については基準が設けられている。食品用の油脂が劣化した状態とは、油脂に含まれる脂肪酸に酸素が結合した状態、すなわち油脂が分解されることにより遊離脂肪酸の量が多くなった状態等とされている。このうち、食品の単位量あたりの遊離脂肪酸の量を示すものは「酸価」であり、食品に使用される上記基準において測定項目の一つとして用いられている。
【0003】
酸価は、試料1g中に含まれる遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに用いる水酸価カリウムの量(mg)としてJIS-K0070等の規格で定義されている。酸価の値を正確に知るには、中和滴定法、電位差滴定法等の測定方法が用いられる。
【0004】
しかし、食用油脂の状態を日常的に管理するために、調理場等において、それらの測定方法により酸価を測定するのは現実的ではない。そこで、酸価を簡単に測定することができる方法として、試験紙を用いた測定方法が普及している。この試験紙は、指示薬等が濾紙に含浸されたものである。試験紙を用いた測定方法では、ユーザが試験紙に食用油脂を付着させて試験紙の色を変化させ、変化後の色を、酸価と関連付けられた色見本と見比べて食用油脂の酸価の値を判定する。
【0005】
また、他の方法として、容器内の食用油脂と劣化度を判断する基準となる色を付した色部材とを、ユーザが二つの開口部を有する比色マスクを介して見比べて、食用油脂の劣化度を判定する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】登録実用新案第3196157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の試験紙や比色マスクを用いた測定方法は、簡単に測定することができる利点を有する反面、ユーザが試験紙や容器内の食用油脂の色を肉眼で判定する官能検査である。また、測定に熟達したユーザが酸価の測定を行うとは限らない。このため、当該測定方法を通じて得られた酸価の精度が必ずしも高いとはいえず、測定するユーザの間でばらつきが生じる問題がある。すなわち、試験紙や容器内の食用油脂の色が複数の色見本のいずれとも一致しない場合には、測定対象の色が、どの組み合わせの色見本の中間色となるかを判断し、その組み合わせの色見本の酸価の間の値が、測定対象となる食用油脂の酸価であると概算するしかない。また、色の見え方には個人差があり、測定環境によって色の見え方が異なることがあるため、試験紙や食用油脂の色が同じであっても複数のユーザの間、又は測定環境の違いによって判定結果が異なる場合がある。なお、こうした課題は、食用油脂に限らず、潤滑油等、他の用途で用いられる油脂の酸価を測定する場合においても概ね共通したものである。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、油脂の状態を簡単に測定することができ、且つその精度を向上することのできる油脂状態測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する油脂状態測定装置は、油脂の状態を測定する油脂状態測定装置であって、前記油脂を透過した可視光域の光の明度に基づいて前記油脂の酸価を測定する酸価測定部を備える。
【0010】
発明者らは、油脂の酸価と油脂の色のR値(RGBカラーモデルの赤色成分)、G値(RGBカラーモデルの緑色成分)、及びB値(RGBカラーモデルの青色成分)との間に相関性があることを見出した。上記構成によれば、油脂の酸価が、油脂中に可視光を透過させることで測定されるため、従来の酸価を求めるための滴定法に比べて、簡単に測定することができる。また、酸価測定部によって透過光の明度に基づいて酸価を測定するため、試験紙を用いた酸価の測定に比べ、精度を高めるとともに、測定者の間で生じるばらつきも抑制することができ、油脂の酸価について客観的な情報を得ることができる。さらに、可視光を用いるため、より高い波長を用いる場合に比べ、減衰しにくいので外乱に強くすることができる。なお、明度は、√(R^2+G^2+B^2)に限らず、R値とG値とB値とのいずれか2つから得られる、√(R^2+G^2)、√(R^2+B^2)、√(G^2+B^2)も含み、更に、R値、G値、B値の各値も含む。
【0011】
上記油脂状態測定装置について、前記酸価測定部は、前記明度と前記酸価との対応関係を定義されたテーブルを記憶する記憶部を備えることが好ましい。
上記構成によれば、テーブルに基づいて明度に対応する酸価を求めることができる。
【0012】
上記油脂状態測定装置について、前記テーブルは、第1のテーブルと、当該第1のテーブルとは前記明度と前記酸価との対応関係が異なる第2のテーブルとを含み、前記酸価測定部は、油脂の使用環境に応じて前記第1のテーブルと前記第2のテーブルとを切り替えることが好ましい。
【0013】
油脂は、例えば揚げ調理を行う食品に応じて同じ酸価に対する明度が異なる。そこで、上記構成によれば、揚げ調理を行う食品等、油脂の使用環境に応じてテーブルを切り替えることにより、的確な測定を行うことができるようになる。
【0014】
上記油脂状態測定装置について、前記テーブルは、前記明度に対応する前記酸価に幅があるテーブルであり、前記酸価測定部は、油脂の使用環境に応じて前記明度に対応する酸価を変更することが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、揚げ調理を行う食品等、油脂の使用環境に応じて測定される酸価を変更することができるようになる。
上記油脂状態測定装置について、前記酸価測定部は、測定した前記油脂の酸価を電圧値に変換して出力することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、測定部から電圧値が入力された装置は、酸価の情報を動作情報に変換する必要がなく、測定部から入力された電圧値に応じて動作することができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、油脂の状態を簡単に測定することができ、且つその精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】油脂状態測定装置の第1の実施形態の概略構成を示す図。
図2】同実施形態の油脂状態測定装置のフライヤーに対する設置状態を示す図。
図3】同実施形態の油脂状態測定装置における酸価と光の強度との関係を示すグラフ。
図4】同実施形態の油脂状態測定装置が用いる相関情報を示すグラフ。
図5】油脂状態測定装置が用いる相関情報の変形例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図4を参照して、油脂状態測定装置の一実施形態を説明する。本実施形態の油脂状態測定装置は、食用油脂の酸価を測定する装置である。食用油脂は、食材を揚げる揚げ物調理器であるフライヤーに貯留されて加熱されて用いられ、食材を揚げることを繰り返すことで劣化が進行する。
【0020】
図1に示すように、油脂状態測定装置1は、検出センサ10と、検出センサ10に電気的に接続された測定部30とを備えている。
検出センサ10は、センサ本体11と、検出部20と、センサ本体11と検出部20とを接続する一対の第1パイプ25及び第2パイプ26とを備えている。センサ本体11は、ホルダ15とホルダ15の上部を覆うカバー19とを備えている。ホルダ15及びカバー19は、アルミニウム合金等の金属、又は樹脂からなる。ホルダ15の下部には、第1パイプ25及び第2パイプ26の基端を固定するパイプ固定部16がボルトにより固定されている。なお、第1パイプ25及び第2パイプ26の固定方法は、溶接であっても、第1パイプ25及び第2パイプ26の基端に雄ねじ又は雌ねじを設けてパイプ固定部16に締結してもよい。また、第1パイプ25及び第2パイプ26の基端をセンサ本体11に直接固定してもよい。
【0021】
検出部20には、第1パイプ25及び第2パイプ26の先端が嵌装されている。検出部20と、第1パイプ25及び第2パイプ26の先端との固定方法は、溶接であっても、雄ねじ又は雌ねじによる締結であってもよい。検出部20内には、第1パイプ25に連通する90°屈曲した第1連通路27が形成されるとともに、第2パイプ26に連通する90°屈曲した第2連通路28が形成されている。第1連通路27の屈曲部には光路を90°変更するように第1プリズム21が設けられている。第2連通路28の屈曲部には光路を90°変更するように第2プリズム22が設けられている。検出部20の中央には、間隙17が形成されている。検出部20には、間隙17を挟んで第1光学窓23及び第2光学窓24が密閉されて設けられている。
【0022】
ホルダ15は、第1収容部11aを備えている。第1収容部11aはカバー19によって覆われている。ホルダ15及びカバー19によって区画される空間には、回路基板12が収容されている。回路基板12は、ホルダ15側へボルト11cにより固定されている。回路基板12の底面には、1つの発光部13と、1又は複数の受光部14とが実装されている。
【0023】
発光部13は、白色の可視光域の光を出射する光源であって、白色LED等から構成される。発光部13は、光を第1プリズム21に出射可能な向きで回路基板12に固定されている。各受光部14は、R(赤)、G(緑)、B(青)といった色成分毎に光の強度を検出するセンサであって、フォトダイオードやカラーフィルタを備えている。各受光部14は、第2プリズム22側から出射される光を受光可能な位置にそれぞれ固定されている。
【0024】
ホルダ15には、発光部13が出射した光を通過させる第1通過孔11dが貫通している。第1通過孔11dのうち発光部13側の端部に対して反対側となる端部には第1パイプ25が設けられている。また、ホルダ15には、検出部20を通過し、第1プリズム21及び第2プリズム22によって反射した光が第2パイプ26を通過した後通過する第2通過孔11eが貫通している。受光部14は、第2通過孔11eを通過した光を受光可能な位置に取り付けられている。第2通過孔11eのうち、受光部14側の端部に対して反対側となる端部には第2パイプ26が設けられている。すなわち、発光部13から出射した光は、第1通過孔11d→第1パイプ25→第1連通路27(第1プリズム21)→第1光学窓23→間隙17→第2光学窓24→第2連通路28(第2プリズム22)→第2パイプ26→第2通過孔11eを通過して受光部14に到達する。
【0025】
また回路基板12の上面には、信号線及び電源線が束ねられた信号・電源線18が接続されている。各受光部14が検出した色成分毎の光強度は、例えば回路基板12に設けられた変換回路によって電圧信号等に変換されて信号・電源線18を介して測定部30に送信される。
【0026】
測定部30は、演算部、揮発性記憶部及び不揮発性記憶部を有し、検出センサ10から入力した検出信号を用いて、不揮発性記憶部に格納されたプログラムを実行することにより各種演算を行う。測定部30は、酸価測定部に対応する。
【0027】
測定部30は、検出センサ10から入力した検出信号に応じて、透過光のR(赤)の強度を示すR値、G(緑)の強度を示すG値、B(青)の強度を示すB値を算出する。また、測定部30は、R値、G値、及びB値に基づき、明度ΔEを算出する。
【0028】
明度ΔEは、以下の式(1)で求めることができる。なお、「R」はR値、「G」はG値、「B」はB値を示す。また、明度ΔEは式(1)によらず、明度を測定可能なセンサによって直接測定しても構わない。
【0029】
【数1】
測定部30は、明度ΔEと酸価との関係を示す相関情報を不揮発性記憶部に記録している。測定部30は、相関情報を用いて、算出した明度ΔEに応じた酸価を求める。そして、測定部30は、求めた酸価を出力する。
【0030】
また油脂状態測定装置1は、表示部31を備えている。表示部31は、測定部30から入力した酸価を、例えば「1.0」のように数値で表示する。ユーザは、表示部31に表示された数値を、劣化の基準とされる基準値と比較して、食用油脂の交換や継ぎ足しの要否を判断する。なお、表示部31は、酸価が基準値を超えているときに食用油脂の交換を促してもよい。
【0031】
図2に示すように、検出センサ10は、フライヤー40に取り付けられる。フライヤー40は、食用油脂を貯留する油槽41を備えている。油槽41の内部には、油槽41に貯留された食用油脂を加熱する加熱部42が設けられている。加熱部42は、電気式、ガス式等のいずれであってもよい。
【0032】
油槽41の下部には、油槽41内の食用油脂を排出する排出路43が接続されている。排出路43の先端は、排出された食用油脂を回収する容器45内に開口している。排出路43には、開閉弁44が取り付けられている。開閉弁44は、開状態とすることで食用油脂が排出路43を通過可能とし、閉状態とすることで食用油脂が排出路43を通過不可能とする。開閉弁44は例えばバタフライ弁や電磁弁である。
【0033】
検出センサ10は、フライヤー40の油槽41に取り付けられている。すなわち、検出センサ10の測定室である間隙17は、油槽41内に設けられ、貯留された食用油脂に浸される。なお、検出センサ10を矢印のように移動させる移動機構(図示略)を備えることが望ましい。検出センサ10は、油槽41の食用油脂の加熱温度に対応している。
【0034】
図3及び図4を参照して、相関情報について説明する。
図3に示すグラフは、横軸が酸価、縦軸が光の強度、すなわちR値、G値、B値を示す。R値、G値、B値はすべて、酸価が大きくなるに伴い低下する。R値、G値、及びB値のうち、B値は、酸価が大きくなるに伴い、最も大きく低下する。また、R値、G値、及びB値のうち、R値は、酸価の増大に伴う低下量が最も小さい。
【0035】
図4に示すグラフの横軸は明度ΔEであり、縦軸は酸価である。線Aは、食用油脂に投入される食材が食肉である場合の明度ΔE及び酸価の変化を示し、線Bは、食用油脂に投入される食材が野菜である場合の明度ΔE及び酸価の変化を示し、線Cは、食用油脂に投入される食材が食肉及び野菜の両方である場合の明度ΔE及び酸価の変化を示す。測定部30の不揮発性記憶部には、このグラフのデータが、明度ΔEと酸価との対応関係が定義されたテーブルの状態で記憶されている。このテーブルは、食用油脂の種類毎、食材毎に予め作成された複数のテーブルを含む。なお、複数のテーブルが第1のテーブル及び第2のテーブルに相当する。
【0036】
次に、油脂状態測定装置1の動作について説明する。
測定部30の図示しない操作部をユーザが操作して、測定対象の食用油脂が食肉に使用されるか野菜に使用されるかを選択する。測定部30は、物体情報である食材情報を取得すると、食用油脂の使用環境として食材に応じてテーブルを切り替える。
【0037】
測定部30は、移動機構によって検出センサ10の間隙17を食用油脂に浸させる。測定部30は、検出センサ10から検出信号を取得すると、食用油脂の酸価を算出するとともに、移動機構によって検出センサ10を食用油脂から取り出させる。なお、測定部30は、食用油脂の酸価を定期的に測定してもよいし、随時測定してもよい。また、ユーザが食用油脂の酸価を測定するように操作した際に測定部30が食用油脂の酸価を測定してもよい。
【0038】
また、検出センサ10の耐熱温度が油槽41の食用油脂の加熱温度よりも低い場合には、以下のように動作する。測定部30は、油槽41内の食用油脂の温度を検出する温度センサから温度を取得して、油槽41の食用油脂の温度が検出センサ10の耐熱温度以下に低下しているか否かを確認する。測定部30は、油槽41の食用油脂の温度が検出センサ10の耐熱温度以下に低下していると確認すると、移動機構によって検出センサ10の間隙17を食用油脂に浸させる。測定部30は、検出センサ10から検出信号を取得すると、食用油脂の酸価を算出するとともに、移動機構によって検出センサ10を食用油脂から取り出させる。
【0039】
ユーザは、検出センサ10を作動させて、発光部13から白色光を出射させる。なお、透過光のR値とB値や、透過光のG値とB値など、特定の組み合わせでのみ照射する場合は、白色LED等の代わりに、赤色と青色成分のみ含む光や、緑色と青色成分のみ含む光を発光可能なLED等を用いることができる。
【0040】
測定部30は、受光部14から入力した信号に基づき、R値、G値、及びB値を算出し、明度ΔEを演算する。また、測定部30は、不揮発性記憶部に格納された相関情報のテーブルを読み出し、選択された食材に応じた情報を抽出する。そして、測定部30は、相関情報のテーブルに基づき、明度ΔEに対応する酸価を求める。測定部30は、酸価を求めると、表示部31に出力する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)食用油脂の酸価が、食用油脂中に可視光域の光を透過させることで測定されるため、従来の酸価を求めるための滴定法に比べて、簡単に測定することができる。また、測定部30によって透過光の明度に基づいて酸価を測定するため、試験紙を用いた酸価の測定に比べ、精度を高めるとともに、測定者の間で生じるばらつきも抑制することができ、食用油脂の酸価について客観的な情報を得ることができる。さらに、可視光を用いるため、より高い波長を用いる場合に比べ、減衰しにくいので外乱に強くすることができる。
【0042】
(2)明度ΔEと酸価との対応関係が定義されたテーブルに基づいて明度に対応する酸価を求めることができる。
(3)揚げ調理を行う食品等、油脂の使用環境に応じてテーブルを切り替えることにより、的確な測定を行うことができる。
【0043】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、明度と酸価との対応関係が異なる複数のテーブルを用いた。しかしながら、図5に示すように、明度に対応する酸価に幅があるテーブルを用いて、測定部30が油脂の使用環境に応じて明度に対応する酸価を変更するようにしてもよい。例えば、初期値は明度に対応する酸価が実線の値に設定されており、野菜のみを揚げ調理するときには明度に対応する酸価を一点鎖線で示す下限寄りに変更し、同じ食用油脂において食肉のみを揚げ調理するときには明度に対応する酸価を破線で示す上限寄りに変更する。このような構成によれば、揚げ調理を行う食品等、油脂の使用環境に応じて測定される酸価を変更することができるようになる。
【0044】
・上記実施形態では、明度として式(1)にて得られるΔEを採用したが、明度は、√(R^2+G^2+B^2)に限らず、R値とG値とB値とのいずれか2つから得られる、√(R^2+G^2)、√(R^2+B^2)、√(G^2+B^2)を採用してもよく、更に、R値、G値、B値の各値を採用してもよい。これらいずれの明度であっても、図3に示すように、酸価の上昇に対して強度が低下するため、油脂の状態を簡単に測定することができ、且つその精度を向上することができる。
【0045】
・上記実施形態では、受光部14を、R(赤)、G(緑)、B(青)といった色成分毎に光の強度を検出するセンサとしたが、受光部14を、R(赤)、G(緑)、B(青)の色成分のうち必要な色成分のみを検出するセンサとしてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、表示部31は、酸価を数値で表示した。これ以外の態様として、酸価が基準値未満であるか基準値以上であるかをユーザが識別可能に出力してもよい。例えば、測定した酸価が予め設定された基準値未満の場合に青色の光を出射するランプを点灯させ、測定した酸価が基準値以上の場合に赤色の光を出射するランプを点灯させてもよい。あるいは、測定した酸価が基準値未満であるか否かをマークで識別可能に表示部31に表示してもよい。あるいは、音声、音、振動その他ユーザが識別可能な方法により、測定した酸価が基準値未満であるか否か示しても良い。
【0047】
・上記実施形態では、測定部30の測定結果を表示部31に出力したが、測定部30の測定結果をフライヤー40の制御装置に出力して、測定部30の測定結果をフライヤー40の制御に用いてもよい。測定部30は、酸価を電圧値に変換して電圧としてフライヤー40の制御装置に出力してもよい。このようにすれば、フライヤー40の制御装置は、電圧値に応じて動作させることができる。
【0048】
・上記実施形態において、油脂状態測定装置1がフライヤー40から情報を取得して、フライヤーの揚げ条件(温度、時間等)に基づいてテーブルを変更してもよい。例えば、食肉は170℃で揚げ、野菜は180℃で揚げると大別できるので、170℃で揚げる回数が多いときには、食肉の揚げ調理が多いと判断し、食肉を揚げる使用環境に応じた測定とすることも可能である。
【0049】
・上記実施形態において、油脂状態測定装置1がPOS(販売時点情報管理:Point Of Sales system)情報を取得して、POS情報に基づいてテーブルを変更してもよい。例えば、発注情報に基づき、食肉の発注量が多ければ、次回は食肉が多く揚げられると判断できるため、食肉を揚げる使用環境に応じた測定することも可能である。
【0050】
・上記実施形態では、検出センサ10を、第1プリズム21と第2プリズム22とを間隙17を介して配置した構成とし、発光部13から出射した光を、間隙17を通過させて受光部14にて受光させるようにしたが、検出センサ10はこの構成に限定されない。例えば、石英ガラス等からなるセルに食用油脂を入れ、発光部13から出射した光をセルに透過させ、透過光を受光部14に受光させるようにしてもよい。このようにしても油脂の状態を簡単に測定することができ、且つその精度を向上することができる。
【0051】
・上記実施形態では、検出センサ10と測定部30とを別部材としたが、測定部30を検出センサ10に内蔵してもよい。このようにすれば、検出センサ10と測定部30とを信号・電源線18等で接続する必要がなく、検出センサ10のみで油脂状態を測定することが可能となる。
【0052】
・上記実施形態では、測定対象を食用油脂としたが、これ以外の油脂であってもよい。例えば、機械の潤滑油等の油脂を測定対象としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…油脂状態測定装置、10…検出センサ、11…センサ本体、11a…第1収容部、11c…ボルト、11d…第1通過孔、11e…第2通過孔、12…回路基板、13…発光部、14…受光部、15…ホルダ、16…パイプ固定部、17…間隙、18…信号・電源線、19…カバー、20…検出部、21…第1プリズム、22…第2プリズム、23…第1光学窓、24…第2光学窓、25…第1パイプ、26…第2パイプ、27…第1連通路、28…第2連通路、30…測定部、31…表示部、40…フライヤー、41…油槽、42…加熱部、43…排出路、44…開閉弁、45…容器。
図1
図2
図3
図4
図5