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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/533 20060101AFI20220609BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/511 110
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018031604
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019146630
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】与那覇 奨
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-172658(JP,A)
【文献】特表平09-507033(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097004(WO,A1)
【文献】特開2014-068995(JP,A)
【文献】特開2014-068745(JP,A)
【文献】特開2007-195665(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208279(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003469(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する細長形状の本体を備えた吸収性物品であって、
長手方向に延在する圧搾溝を備えており、
前記の圧搾溝は、装着時に装着者の体液排出口に対応する領域を含む中央領域に設けられた一対の中央圧搾溝と、前記一対の中央圧搾溝の後方に設けられた一対の後方第1圧搾溝と、前記一対の後方第1圧搾溝の後方に設けられた一対の後方第2圧搾溝とを含み、
前記一対の中央圧搾溝の後端はそれぞれ、幅方向内側に向かって湾曲しており、
前記一対の後方第1圧搾溝はそれぞれ、幅方向内側に凸に湾曲しており、
前記一対の後方第1圧搾溝の後端間の幅方向の間隔は、前記吸収体の幅の1/4以下であり、
前記後方第1圧搾溝の前端は、幅方向において、前記中央圧搾溝の後端より内側に位置し、長手方向において、前記中央圧搾溝の後端と同じ位置にあるか又はより後方に位置し、
前記一対の後方第1圧搾溝間には圧搾部が形成されておらず、
一対の圧搾部がさらに設けられており、前記各圧搾部は、前記一対の後方第1圧搾溝の側方に、前記後方第1圧搾溝の前端を前方に越えずにそれぞれ設けられている、吸収性物品。
【請求項2】
長手方向に延びる中心線の各側において、前記中央圧搾溝の後端と、前記後方第1圧搾溝の前端との間の幅方向の間隔は、2~10mmである、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記一対の後方第1圧搾溝間の幅方向の最小間隔は、7.5~15mmである、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記一対の後方第1圧搾溝の後端間の幅方向の間隔は、10~20mmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性物品は、前記中央領域と、前記中央領域の後方の、股下部と臀部との境界付近から臀部後方にかけての部位に対応する後方領域とを有し、
前記一対の中央圧搾溝の後端はそれぞれ、前記中央領域を越えて後方領域にまで延びている、請求項1から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品として、表面シートと裏面シートとの間に吸収体が設けられてなる本体を備えたものが知られている。このような吸収性物品においては、身体の形に対応した吸収性物品の変形を容易にしたり、体液の移行をコントロールしたりするために、幅方向に間隔を置いて、長手方向に延びる圧搾溝を対で設けることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、長手方向に延びる一対の第1圧搾溝と、この第1圧搾溝よりも幅方向外側に配置された一対の第2圧搾溝とを有する吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、縦方向に延びる中心線から左右両側に離れた位置に、第1の可撓軸及び第1の可撓軸の外側に間隔を空けた第2の可撓軸がそれぞれ縦方向に延びて形成された吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5766254号公報
【文献】特許第4180865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸収性物品においては、特に多めの体液の排出に対応しなければならない場合には、体液が直接排出される中央領域のみにおいて体液を吸収させるのではなく、体液を後方に移行させて後方領域でも吸収させて、後方領域の吸収体も利用することが好ましい。
【0006】
上記の特許文献1、2に開示の構成では、長手方向に延びる圧搾溝に沿って、中央領域から後方へと体液を誘導しやすくなっている。しかしながら、圧搾溝は密度が高められた部分であるので、圧搾溝及びその両側の領域の吸収体の吸収容量(吸収できる体液の量)は、圧搾されていない領域に比べて低い。特許文献1、2に開示の構成では、このような圧搾溝が中央領域から後方の領域にわたって連続して延在しているので、後方に誘導されてきた体液を、後方の領域で十分に吸収及び拡散できない場合があった。このため、体液が中央領域から後方に継続してスムーズに移行できずに中央領域内に滞り、側方から漏れる可能性があった。
【0007】
上記の点に鑑みて、本発明の一形態は、後方領域において体液を良好に吸収及び拡散させることができ、漏れを防止することのできる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の形態は、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する細長形状の本体を備えた吸収性物品であって、長手方向に延在する圧搾溝を備えており、前記の圧搾溝は、装着時に装着者の体液排出口に対応する領域を含む中央領域に設けられた一対の中央圧搾溝と、前記一対の中央圧搾溝の後方に設けられた一対の後方第1圧搾溝とを含み、前記後方第1圧搾溝の前端は、幅方向において、前記中央圧搾溝の後端より内側に位置し、長手方向において、前記中央圧搾溝の後端と同じ位置にあるか又はより後方に位置する。
【0009】
上記第一の形態によれば、後方第1圧搾溝の前端が、中央圧搾溝の後端より幅方向内側に、且つ長手方向で見て中央圧搾溝の後端と同じ位置にあるか又はそれより後方に位置しているため、後方第1圧搾溝と中央圧搾溝とは不連続となっている。そのため、一対の中央圧搾溝に沿って後方に誘導されてきた体液を、一対の中央圧搾溝の後端から周辺に、少なくとも部分的に放射状に拡散させることができる。また、後方第1圧搾溝の前端が中央圧搾溝の後端の幅方向内側にあることで、一対の後方第1圧搾溝の前側方の領域を広くすることができ、その前側方の領域に体液を吸収させることができるので、後方領域の吸収体をより有効に利用することができる。さらに、後方第1圧搾溝と中央圧搾溝とは長手方向で重なっていないので、体液は中央圧搾溝の後端から周辺へとより一層拡散しやすくなる。このように、後方領域での体液の吸収及び拡散が良好に行われるので、中央圧搾溝からの体液の移行をよりスムーズに行うことができ、漏れ等を防止することができる。
【0010】
本発明の第二の形態では、前記一対の後方第1圧搾溝はそれぞれ、幅方向内側に凸に湾曲している。
【0011】
上記第二の形態によれば、各後方第1圧搾溝が内側に凸になるように湾曲している。これにより、装着時に吸収性物品を、後方に向かうにつれ徐々に深くなり再び浅くなる臀部の溝に適合した形状に変形させることができる。
【0012】
上記第三の形態では、長手方向に延びる中心線の各側において、前記中央圧搾溝の後端と、前記後方第1圧搾溝の前端との間の幅方向の間隔は、2~10mmである。
【0013】
本発明の第三の形態によれば、中央圧搾溝の後端と、後方第1圧搾溝の前端との間の幅方向の間隔を所定の値としている。これにより、中央圧搾溝の後端から体液を拡散できる範囲を拡大して、体液の拡散及び吸収を促進できる一方、中央圧搾溝の後端から拡散した体液を後方第1圧搾溝が引き込むことができる間隔を確保することができる。
【0014】
本発明の第四の形態では、前記一対の後方第1圧搾溝間の幅方向の最小間隔は、7.5~15mmである。
【0015】
上記第四の形態によれば、一対の後方第1圧搾溝間の幅方向の最小間隔を所定の値としている。これにより、一対の後方第1圧搾溝間の領域が臀部の溝により入り込みやすくなり、フィット性が高まる一方、後方第1圧搾溝同士が過度に近付くことにより本体が硬くなって装着感を損なうことを防止することができる。
【0016】
本発明の第五の形態では、前記一対の後方第1圧搾溝の後端間の幅方向の間隔は、10~35mmである。
【0017】
上記第五の形態によれば、一対の後方第1圧搾溝の後端間の幅方向の間隔を所定の値としている。これにより、後方第1圧搾溝同士が過度に近付くことにより本体が硬くなることを防止することができ、また後方第1圧搾溝に沿って誘導される体液が、後方において幅方向外側に広がり過ぎることを防止することができる。
【0018】
本発明の第六の形態では、前記一対の中央圧搾溝の後端はそれぞれ、幅方向内側に向かって湾曲している。
【0019】
上記第六の形態によれば、一対の中央圧搾溝の後端が幅方向内側に向かって湾曲しているため、中央領域から誘導されてきた体液を、中央圧搾溝の幅方向内側に位置する後方第1圧搾溝に伝えやすくなる。
【0020】
本発明の第七の形態では、一対の圧搾部が設けられており、前記各圧搾部は、前記一対の後方第1圧搾溝の側方にそれぞれ設けられている、
【0021】
上記第七の形態によれば、一対の圧搾部によって、一対の後方第1圧搾溝の幅方向外側の領域にコシを持たせることができる。そのため、吸収性物品の装着時に、一対の後方第1圧搾溝間の領域が盛り上がるように本体を変形させた場合に、上記変形を良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一形態によれば、後方領域において体液を良好に吸収及び拡散させることができ、漏れを防止することのできる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一形態による吸収性物品の一部破断図である。
図2】本発明の一形態による吸収性物品のI-I線断面図である。
図3】本発明の一形態における後方領域での拡散の様子を示す拡大図である。
図4図1の吸収性物品の変形例を示す図である。
図5図1の吸収性物品の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0025】
図1に、本発明の一形態による吸収性物品1の一部破断図を示す。また、図2に、図1のI-I線断面を示す。図1、2に示すように、吸収性物品1は、不透液性の裏面シート2と、透液性の表面シート3と、これら両シート2、3間に設けられた吸収体4とを有する本体(吸収性物品本体)8とを備えている。吸収体4の形状保持等のために、吸収体4は、クレープ紙又は不織布等からなる被包シート5によって包まれていてもよい。吸収性物品1の使用時には、本体8の裏面シート2側がショーツ等に固定され、表面シート3側が肌側となるように装着する。
【0026】
本体8は、全体としては、長手方向(図中の第1方向D1)に所定の長さを有し、長手方向と直交する幅方向(図中の第2方向D2)に所定の幅を有する細長い形状を有している。本体8の幅は、図示の例では略一定となっているが、長手方向D1にわたって変化していてもよい。吸収性物品1は、長手方向に延びる中心線(長手方向中心線)CLに対し略線対称の形状及び構造を有していてよい。
【0027】
また、吸収性物品本体8は、装着時に装着者の膣口等の体液排出口に対応する領域(体液排出口対応領域)30を有しており、体液排出口対応領域30は中心30Qを有している。中心30Qは、長手方向中心線CL上にあり、体液排出口対応領域30の長手方向長さの中央に位置している。そして、吸収性物品1は、体液排出口対応領域30を含む中央領域Mと、中央領域Mの前方にある前方領域Fと、中央領域Mの後方にある後方領域Rとを有する。中央領域Mは、その両側方から延びる、吸収性物品1を装着の際に下着に確実に固定するためのウィングW、Wを有していてよい。前方領域Fは、ウィングWの前方の起点となる位置から前端縁までの領域であり、後方領域Rは、ウィングWの後方の起点となる位置から後端縁までの領域とすることができる。また、ウィングW、Wが設けられている場合、体液排出口対応領域30の中心30Qは、長手方向で見て、ウィングW、Wの側方の端縁の長さの中点の位置、或いはウィングW、Wの前方の基点と後方の基点との中点に位置するものとすることができる。
【0028】
図1においては、後方領域Rの長手方向D1の長さは、前方領域Fの長さよりも長くなっているが、本形態は、後方領域Rの長さと前方領域Fの長さとが同じになっていてもよい。
【0029】
図示の形態では、吸収性物品1はウィングW、Wを有しているが、吸収性物品1はウィングW、Wのない形態とすることができる。その場合、ウィングW、Wが従来形成される位置にウィングW、Wを形成した場合に、ウィングW、W前方の起点となる位置から前方の領域を前方領域Fとし、ウィングW、Wの後方の起点となる位置から後方の領域を後方領域Rとすることができる。
【0030】
後方領域Rは、装着時に装着者の股下部と臀部との境界付近から臀部後方にかけての部位に対応できる領域であり、臀裂が開始する位置及び肛門にも対向する領域といえる。後方領域Rの前端は、吸収性物品1の前端から110~170mm程度後方に、体液排出口対応領域30の中心30Qから30~60mm程度後方に位置し得る。
【0031】
吸収性物品1の全長は、170~360mmであると好ましく、230~270mmであるとより好ましく、240~260mmであるとより好ましい。なお、後方領域Rの長手方向の長さは、70~250mmとすることができる。
【0032】
吸収体4の前方及び後方の端縁部では裏面シート2と表面シート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。また、吸収体4の側方においては、表面シート3側の両側部に長手方向D1に沿って設けられたサイド不織布7、7と、裏面シート2とが上記接着手段によって接合されており、これにより上述のウィングW、Wが形成されていてよい。
【0033】
裏面シート2としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0034】
表面シート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートである。表面シート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることができる。
【0035】
裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0036】
また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用することができ、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。
【0037】
吸収体4の厚みは、0.5~25mmの範囲内とすることができ、1.5~6.5mmの範囲であると好ましい。吸収体4は、前面にわたり均一な厚みを有していなくともよく、体液排出口対応領域50及びその付近の領域、また後方領域の幅方向中央部分を膨出させた構造とすることもできる。また、吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
【0038】
サイド不織布7としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。例えば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する効果又は肌触り感を高める場合は、シリコン系、パラフィン系の撥水剤等をコーティングした撥水処理不織布を用いることが好ましい。また、ウィングWにおける経血等の吸収性を高める場合には、不織布の材料として、親水処理された不織布を用いることが好ましい。不織布の種類としては、折り癖が付きにくく、シワになりにくく柔らかいエアスルー不織布が好ましい。
【0039】
本形態の吸収性物品1の本体には、複数の圧搾溝(圧縮溝、エンボスともいう)が設けられている。この圧搾溝は、表面シート3から裏面シート2側に窪む溝として形成されたものである。圧搾溝は、平面視で、吸収性物品1の長手方向中心線CLを対称線とする線対称に形成されていてよい。圧搾溝は、吸収体4の上に表面シート3を積層させた積層体を、一対の加圧ロールの間に通過させることによって形成することができる。例えば、積層体の表面シート3側及び吸収体4側に、凸状のロール及び平坦なロールが配置されるようにして、両ロールから加圧することができる。
【0040】
図1に示すように、本形態の吸収性物品1は、中央領域Mにおいて、長手方向中心線CLの両側に、互いに幅方向に間隔を空けて、長手方向に延在する一対の中央圧搾溝10、10を有している。さらに、吸収性物品1は、後方領域Rにおいて、長手方向中心線CLの両側に、互いに幅方向に間隔を空けて、長手方向に延在する一対の後方第1圧搾溝11、11を有している。一対の後方第1圧搾溝11、11は、後方領域Rの前半分の領域、例えば後方領域Rの前端から最大70mmまでの領域内に設けられていることが好ましい。図1に示すように、一対の後方第1圧搾溝11、11とその前方の一対の中央圧搾溝10、10とは、互いに連結されていない。
【0041】
吸収性物品1の通常の使用においては、体液は、体液排出口対応領域30を含む中央領域Mに直接的に排出される。中央領域Mにおいて受けとめられた体液の一部は、受けとめられた位置で表面シート3を通って吸収体に吸収されるが、一部は吸収体内を面方向に拡散して移行し得る。拡散の際、体液は、吸収体の密度が高くなっている一対の中央圧搾溝10、10に沿って長手方向D1に誘導され得る。
【0042】
ここで、多量の体液が直接的に一気に排出され得る中央領域Mは、できるだけ速やかに圧搾溝に沿って後方へ体液を誘導させる構造になっていることが好ましい。一方、中央領域Mから拡散又は誘導されてきた体液が行き着く後方領域Rにおいては、吸収体によって体液を良好に吸収及び拡散できるようにすることが好ましい。後方領域Rにおける体液吸収量を多くできれば、中央領域Mから後方領域Rへの体液の継続的な移行がスムーズにでき、中央領域Mでの横漏れ等を防ぐことができるからである。
【0043】
本形態では、図1に示すように、一対の中央圧搾溝10、10と一対の後方第1圧搾溝11、11とは、不連続になっている。そのため、一対の中央圧搾溝10、10に沿って後方に誘導されてきた体液は、一対の中央圧搾溝10、10の後端10b、10bに達すると、後端10b、10bからその周辺の領域に拡散することができる。
【0044】
中央圧搾溝10の後端10bからの拡散について、図3を参照してより具体的に説明する。図3は、図1に示す吸収性物品1の中央領域Mの後方から後方領域Rの前方の範囲の一部を拡大した図である。図3に示すように、中央圧搾溝10に沿って後方に誘導されてきた体液の少なくとも一部は、中央圧搾溝10の後端10bを中心として放射状に(図3に示す点線の部分同心円状に)拡散することができる。このような後方領域Rにおける放射状の体液の拡散は、例えば圧搾溝が中央領域Mから後方領域Rにかけて連続している従来の形態では起こり難いが、本形態による一対の中央圧搾溝10、10と一対の後方第1圧搾溝11、11との不連続な配置によって可能となった。このように、本形態によって、従来では適切に利用できていなかった後方領域Rの前側方の領域において体液を良好に吸収させることができるので、後方領域R全体の吸収体の吸収性能を上げることができる。
【0045】
さらに、図3に示すように、中央圧搾溝10の後端10bから拡散された体液の一部は、近傍に位置している後方第1圧搾溝11に引き込まれ得る。これにより、中央圧搾溝10の後端10bから拡散してきた体液を、後方第1圧搾溝11に沿って、さらに後方に誘導させることができる。
【0046】
図1及び図3に示すように、一対の後方第1圧搾溝11、11の前端11a、11aは、幅方向D2において、一対の中央圧搾溝10、10の後端10b、10bより内側に位置している。これにより、一対の後方第1圧搾溝11、11の前方の幅方向外側の領域、すなわち後方領域の前側方の領域を広くすることができる。これにより、体液を吸収できる領域を広げることができ、後方領域Rの吸収体をより有効に活用することができるので、後方領域R全体で吸収でより多くの体液を吸収させることができる。また、一対の後方第1圧搾溝11、11の前端11a、11aの離間幅(後述の間隔a)を、一対の中央圧搾溝10、10間の後端10b、10bの離間幅(後述の間隔d)より狭くすることができるので、一対の後方第1圧搾溝11、11間の領域を、一対の中央圧搾溝10、10間の領域よりも鋭く盛り上げることができ、一対の後方第1圧搾溝11、11間の領域が臀部の溝に入り込みやすくなってフィット性が高まり、後方領域Rでの漏れも防止することができる。
【0047】
さらに、図1及び図3に示すように、一対の後方第1圧搾溝11、11の前端11a、11aは、長手方向D1において、一対の中央圧搾溝10、10の後端10b、10bと同じ位置にあるか、又はそれより後方にある。つまり、一対の中央圧搾溝10、10と一対の後方第1圧搾溝11、11とは、長手方向で重なっていない。これにより、上述したような中央圧搾溝10の後端10bを中心とした体液の放射状の拡散を、後方第1圧搾溝11が妨げる可能性を最小限に抑えることができる。
【0048】
このように、一対の中央圧搾溝10、10と一対の後方第1圧搾溝11、11との上述の配置によって、中央圧搾溝10及び後方第1圧搾溝11が有する、体液を引き込んで長手方向に誘導する機能を維持しつつ、中央圧搾溝10の後端10bから周辺の吸収体に体液を拡散させることができる。これにより、従来の構成では活用され難かった後方領域の前側方の領域の吸収体の吸収機能を活用することができ、後方領域R全体としての吸収性能を上げることができる。よって、中央圧搾溝10に沿って誘導される体液が中央領域Mにおいて滞ることなく、スムーズに後方に移行されるので、中央領域Mから後方への誘導をさらに促すことができ、中央領域Mでの横漏れ等を防止することができる。
【0049】
一対の後方第1圧搾溝11、11は、長手方向に直線状に延在していても湾曲していてもよい。しかし、図1及び図3に示すように、一対の後方第1圧搾溝11、11がそれぞれ、幅方向内側に凸になるように湾曲している、すなわち、平面視で、一対の後方第1圧搾溝11、11が、長手方向D1で見て中央の位置が括れた形状を有していると好ましい。通常、臀部の溝は、股下部から長手方向後方に向かうにつれ徐々に深くなり、臀部後方に近付くと再び徐々に浅くなっていく。一対の後方第1圧搾溝11、11の上記の形状によって、臀部の溝の形状に適合するように、長手方向中心線CL付近が表面シート側(肌側)に盛り上がるように後方領域Rを変形させることができ、吸収性物品1のフィット性を向上させることができる。
【0050】
なお、一対の後方第1圧搾溝11、11の凸形状の曲率半径は、20~50mm程度であると好ましく、25~35mm程度であるとより好ましい。このような範囲の曲率半径とすることで、装着時に後方領域Rを、臀部の溝により適合した形状に変形させることができる。
【0051】
中央圧搾溝10の後端10bと、後方第1圧搾溝11の前端11aとの間の幅方向の間隔e(図1)は、2~10mmであると好ましく、3~8mmであるとより好ましい。間隔eを2mm以上とすることで、中央圧搾溝10の後端10bから体液を拡散させることができる範囲を大きくすることができる。また、間隔eを10mm以下とすることで、中央圧搾溝10の後端10bと後方第1圧搾溝11の前端11aとが適度に近づいて、中央圧搾溝10の後端10bから拡散した体液を、後方第1圧搾溝11へと良好に引き込むことができる。
【0052】
上述のように一対の後方第1圧搾溝11、11がそれぞれ、平面視で、幅方向内側に凸の形状を有している場合、一対の後方第1圧搾溝11、11間の幅方向の間隔は、長手方向D1の中央付近で最小となり得る。一対の後方第1圧搾溝11、11間の幅方向D2の最小間隔b(図1)は、7.5~15mmであると好ましく、8~13mmであるとより好ましい。間隔bを7.5mm以上とすることで、後方第1圧搾溝11、11同士が近づき過ぎることによって本体が硬くなり、装着感を損なうことを防止することができる。また、間隔bを15mm以下とすることで、装着時に肌側が盛り上がるように本体を変形させた際に、一対の後方第1圧搾溝11、11間の領域が臀部の溝により入り込みやすくなり、フィット性を高めることができる。
【0053】
一対の後方第1圧搾溝11、11の後端11b、11b間の幅方向の間隔c(図1)は、8~18mmであると好ましく、10~13mmであるとより好ましい。間隔cを10mm以上とすることで、後方第1圧搾溝11、11同士が過度に近付いて、本体の剛性が過度に大きくなり、装着感を損なうことを防止することができる。また、間隔cを20mm以下とすることで、後方第1圧搾溝11に沿って体液が後方に誘導されてきた場合、後方第1圧搾溝11の後方において、幅方向外側に広がり過ぎることを防止することができる。なお、間隔cは、吸収体4の幅(幅方向D2の長さ)の1/4以下とすることができる。
【0054】
一対の後方第1圧搾溝11、11の前端11a、11a間の幅方向の間隔a(図1)は、一対の中央圧搾溝10、10の後端10b、10b間の幅方向の間隔dより小さくなっていれば特に限定されないが、12~24mmであると好ましく、14~20mmであるとより好ましい。間隔aを12mm以上とすることで、装着時に吸収性物品1を、臀部の溝に適合させて変形させることができる。また、24mm以下とすることで、一対の後方第1圧搾溝11、11の前端11a、11a近くの幅方向外側の領域を広げることができ、中央圧搾溝10の後端10bからの体液が拡散する領域を大きくすることができる。なお、一対の後方第1圧搾溝11、11の前端11a、11a間の幅方向の間隔aは、後端11b、11b間の幅方向の間隔cよりも大きくなっていてよい。これにより、装着時に吸収性物品1を、溝の深さがゆるやかに深くなる股下部の後方から臀部にかけての身体部位に適合して変形させることができる。
【0055】
図示の形態では、一対の中央圧搾溝10、10の長手方向D1の長さは、中央領域Mの長手方向D1の長さより長くなっている。すなわち、一対の中央圧搾溝10、10は、中央領域Mの前端及び後端を越えて設けられている。しかし、一対の中央圧搾溝10、10の長さは、中央領域Mの長さと同等であってもよいし、一対の中央圧搾溝10、10は、中央領域M内の範囲に延在していてもよい。但し、一対の中央圧搾溝10、10の後端10b、10bが中央領域Mを越えて後方領域Rにまで延びていると、上述の放射状の拡散が起こる基点となる後端10bが後方領域Rに位置することができ、後方領域Rでの体液の吸収及び拡散を促進できるため、好ましい。
【0056】
一対の中央圧搾溝10、10は、長手方向に沿って直線状に延在していてもよいし、少なくとも部分的に湾曲していてもよい。しかし、図1に示すように、一対の中央圧搾溝10、10の後端10b、10bが、幅方向内側を向いている、すなわち幅方向内側向かって湾曲又は屈曲していると好ましい。これにより、上述のように後端10bを基点として体液が放射状に拡散できる領域を、一対の中央圧搾溝10、10の幅方向外側により広く確保することができる。さらに、一対の中央圧搾溝10、10はそれぞれ、平面視で、幅方向外側に凸の形状を有していることが好ましい。
【0057】
一対の中央圧搾溝10、10の後端10b、10b間の幅方向の間隔d(図1)は、一対の後方第1圧搾溝11、11の前端11a、11a間の幅方向の間隔aより大きいのであれば特に限定はされないが、15~40mmであると好ましく、25~30mmであるとより好ましい。なお、一対の中央圧搾溝10、10の後端10b、10b間の幅方向の間隔bは、前端10a、10a間の幅方向の間隔よりも小さくすることができる。
【0058】
図1に示すように、吸収性物品1は、圧搾溝として、一対の後方第1圧搾溝11、11の後方に配置された一対の後方第2圧搾溝12、12を有していてよい。図示のように、この一対の後方第2圧搾溝12、12は、幅方向の間隔が後方に向かって漸次大きくなる部分を含んでいてよい。
【0059】
図示の形態では、一対の後方第2圧搾溝12、12は互いに連結されていないが、前方及び後方の少なくとも一方で、互いに連結されていてもよい。また、一対の後方第2圧搾溝12、12の形状は、全体として逆ハート形状になっているが、形状はこれに限られず、逆三角形、滴形状等であってもよい。
【0060】
一対の後方第2圧搾溝12、12の前端12a、12aは、幅方向D2において、一対の後方第1圧搾溝11、11の後端11b、11bより幅方向内側に位置していることが好ましい。これにより、体液が中央圧搾溝10から、後方第1圧搾溝11を経て後方へ誘導されてきた場合に、後方第1圧搾溝11の後端11bに達した体液が、後端11bから、上述の中央圧搾溝10の後端10bからの拡散(図3)と同様に少なくとも部分的に放射状に拡散することができ、その領域を幅方向外側へ広げることができる。よって、例えば多量の体液が排出された場合でも、後方領域Rの吸収体を有効に利用でき、中央領域Mでの漏れ等を防止することができる。
【0061】
図4に、吸収性物品1の変形例を示す。図4の形態では、一対の臀部溝フィット用圧搾部20、20が形成されている点で、図1の形態と異なる。この一対の臀部溝フィット用圧搾部20、20のそれぞれは、一対の後方第1圧搾溝11、11の側方にそれぞれ形成されている。
【0062】
装着時に吸収性物品1を身体の形状に沿って変形させた場合、後方第1圧搾溝11、11が折られて、後方第1圧搾溝11、11間の領域が肌方向に盛り上がり、臀部の溝に入り込むようになる。本形態では、後方第1圧搾溝11、11間の間隔が比較的狭く、後方第1圧搾溝11、11の両側方の領域が大きくなっているため、後方第1圧搾溝11、11の両側方の領域の剛性が小さい。よって、上記のように後方第1圧搾溝11、11間の領域を盛り上げるように吸収性物品1を変形させた際、特に使用者が動いた場合等には、後方第1圧搾溝11、11の両側方の領域がヨレて、その影響が、一対の後方第1圧搾溝11、11間の領域にも及ぼされ、適切に臀部の溝に適合しなくなる場合がある。
【0063】
これに対し、一対の臀部溝フィット用圧搾部20、20が設けられていることで、後方第1圧搾溝11、11の両側方にコシを持たせることができるので、上記のような後方領域Rの変形の際にも、上述の後方第1圧搾溝11、11間の領域が盛り上がった形状を良好に維持することができる。
【0064】
図4の形態では、臀部溝フィット用圧搾部20は、閉じた円形の圧搾溝となっているが、臀部溝フィット用圧搾部20の形態はこれに限られない。臀部溝フィット用圧搾部20は、円形でなく、楕円形、多角形等の閉じた又は一部が開いた圧搾溝であってもよい。また、所定の面積を有する円形、楕円形、多角形等の圧搾部であってもよい。
【0065】
後方第1圧搾溝11両側方に、臀部溝フィット用圧搾部20が設けられている範囲及び位置は、上述の中央圧搾溝10の後端10bからの体液の拡散を妨げないのであれば、特に限定されない。臀部溝フィット用圧搾部20が設けられている範囲は、長手方向D1において5~30mm程度であってよく、幅方向D2において5~25mm程度であってよい。また、臀部溝フィット用圧搾部20は、後方第1圧搾溝11の前端11aを前方に越えて形成されていないことが好ましく、後方第1圧搾溝11の前端11aより長手方向D1に3mm以上後方に形成されていることが好ましい。
【0066】
図5に、図4の一対の臀部溝フィット用圧搾部20、20の変形例である一対の臀部溝フィット用20A、20Aを備えた吸収性物品1を示す。臀部溝フィット用圧搾部20Aは、閉じた円形の圧搾溝が2つ重なり合い、2つの円形からそれぞれ外側に突出する部分を有する形状を有する。また、臀部溝フィット用圧搾部20Aの形状は、楕円形、多角形等が複数重なり合ったような形状とすることができる。さらに、臀部溝フィット用圧搾部は、花、星、ハート等のモチーフからなる形状であってもよい。
【0067】
本形態による吸収性物品1は、後方領域Rにおける吸収体を活用できるものであるので、比較的多量の体液が一気に排出される場合、また断続的であっても体液が多数回排出され、排出される体液の合計量が多いような場合に、好適に用いることができる。また、吸収体量の少ないスリムタイプの吸収性物品、特に生理用ナプキンとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 吸収性物品
2 裏面シート
3 表面シート
4 吸収体
5 被包シート
7 サイド不織布
8 本体(吸収性物品本体)
10 中央圧搾溝
10a 中央圧搾溝の前端
10b 中央圧搾溝の後端
11 後方第1圧搾溝
11a 後方第1圧搾溝の前端
11b 後方第1圧搾溝の後端
12 後方第2圧搾溝
12a 後方第2圧搾溝の前端
20、20A 臀部溝フィット用圧搾部
30 体液排出口対応領域
30Q 体液排出口対応領域の中心
CL 長手方向中心線
F 前方領域
M 中央領域
R 後方領域
D1 第1方向(長手方向)
D2 第2方向(幅方向)
W ウィング
図1
図2
図3
図4
図5