IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 田淵電機株式会社の特許一覧

特許7085363トランス及びこれを用いたLLC共振回路
<>
  • 特許-トランス及びこれを用いたLLC共振回路 図1
  • 特許-トランス及びこれを用いたLLC共振回路 図2
  • 特許-トランス及びこれを用いたLLC共振回路 図3
  • 特許-トランス及びこれを用いたLLC共振回路 図4
  • 特許-トランス及びこれを用いたLLC共振回路 図5
  • 特許-トランス及びこれを用いたLLC共振回路 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】トランス及びこれを用いたLLC共振回路
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20220609BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
H01F30/10 A
H02M3/28 Q
H02M3/28 Y
H01F30/10 C
H01F30/10 M
H01F30/10 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018033032
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019149443
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト/太陽光発電システム効率向上技術の開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久嗣
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-047018(JP,A)
【文献】特開2008-205466(JP,A)
【文献】特開2012-231585(JP,A)
【文献】特開平08-227815(JP,A)
【文献】実開平4-8420(JP,U)
【文献】特開2012-182339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/24
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
同心状に巻回された1次巻線及び2次巻線とを有する上面視で円形状のコイル本体と、
前記1次巻線及び前記2次巻線の少なくとも一方に接続された付属コイルとを備え、
前記コアは、前記コイル本体が装着される第1脚部及び該第1脚部と閉磁路を形成する第2脚部を有するコア本体と、前記コア本体から分岐され、前記付属コイルが装着される第3脚部を有する付属コア部と、を備え
前記第1脚部、前記第2脚部及び前記第3脚部の各脚部は、上端同士及び下端同士が板状の基体で接続され、
前記第2脚部は、前記第1脚部と前記第3脚部との間に設けられた中脚部を含み、
前記中脚部は、前記コイル本体と対向する壁面が前記コイル本体の外形に沿うように円弧状に凹み、
前記付属コイルの巻数は、前記1次巻線及び前記2次巻線の巻数よりも小さく、
前記第3脚部は、前記各脚部の並び方向の幅が前記第1脚部よりも狭いことを特徴とするトランス。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスにおいて、
前記第3脚部は、前記並び方向に直交する前後方向の幅が前記第1脚部よりも広い
ことを特徴とするトランス。
【請求項3】
請求項に記載のトランスにおいて、
前記第1脚部及び前記第3脚部は軸方向の中間位置にエアギャップを有する一方、前記第2脚部は軸方向に連続一体的に形成されている
ことを特徴とするトランス。
【請求項4】
請求項1または2に記載のトランスにおいて、
前記第3脚部の断面積は、前記第1脚部の断面積以下である
ことを特徴とするトランス。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載のトランスと、スイッチング部と、共振コンデンサとを有し、直流入力電圧を前記スイッチング部に受け、該スイッチング部の出力を、前記共振コンデンサを介して前記トランスの1次巻線に与えて共振させる共振部と、
前記トランスの2次巻線から得られる出力電圧を所定の直流出力電圧に変換して出力する変換部とを備えている
ことを特徴とするLLC共振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁型のトランス及びそのトランスを用いたLLC共振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LLC共振回路において、トランスの1次巻線と2次巻線との距離を離して実装することにより得られる漏れインダクタンスを利用して共振動作を行わせる技術が知られている。例えば、特許文献1では、1次巻線と2次巻線とをボビンの長手方向(巻線の巻回方向と直交する方向)に距離を離して巻き付け、そのボビンをコアの中脚部に挿通する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-33938号公報
【文献】国際公開第2013/42671号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような実装をすると、トランスの巻線に漏れ磁束が鎖交することにより、巻線に渦電流損が誘導される(特許文献2参照)。そうすると、巻線の温度が上昇するという問題がある。近年、高入力電圧及び高周波で動作するトランスが求められており、そうすると、温度上昇の問題が特に顕著に表れる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、巻線に鎖交する漏れ磁束を著しく低減させたトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るトランスは、コアと、同心状に巻回された1次巻線及び2次巻線とを有するコイル本体と、前記1次巻線及び前記2次巻線の少なくとも一方に接続された付属コイルとを備え、前記コアは、前記コイル本体が装着される第1脚部及び該第1脚部と閉磁路を形成する第2脚部を有するコア本体と、前記コア本体から分岐され、前記付属コイルが巻回される第3脚部を有する付属コア部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本形態によると、励磁インダクタンスLmを形成するためのコイル本体と、漏れインダクタンスLrを形成するための付属コイルとを分けている。そして、コイル本体は、コア本体の第1脚部に装着し、付属コイルは、コア本体から分岐されることで、磁気的に分離された第3脚部に装着している。これにより、従来技術のように、積極的にトランスの漏れインダクタンスを利用して共振動作を行う場合と比較して、トランスの巻線に鎖交する磁束量を著しく低減することができる。そうすることで、1次巻線及び2次巻線に誘起される渦電流が大幅に低減され、巻線温度の上昇を著しく低減させることができる。
【0008】
上記態様において、前記第1脚部及び前記第3脚部は軸方向の中間位置にエアギャップを有する一方、前記第2脚部は軸方向に連続一体的に形成されていてもよい。
【0009】
これにより、コイル本体及び付属コイルの相互間における磁気的な分離性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、巻線に鎖交する漏れ磁束を著しく低減させることができるので、トランスが過度に発熱するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るトランスを斜め上側から見た斜視図である。
図2】コアを斜め上側から見た斜視図である。
図3】コアを斜め上側から見た分解斜視図である。
図4図1のIV-IV線断面図である。
図5】本実施形態に係るLLC共振回路の構成例を示す図である。
図6】トランスの印加電圧と温度上昇との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0013】
本実施形態に係るトランス及びそのトランスを用いたLLC共振回路は、例えば、太陽光発電装置の発電電力を変換し、商用電源系統に連系したり、負荷に供給したりするパワーコンディショナ等に使用される。
【0014】
本開示に係るトランスは、(1)励磁インダクタンスを形成するためのコイル(コイル本体に相当)と、漏れインダクタンスを形成するためのコイル(付属コイルに相当)とを物理的に分離していること、及び、(2)上記分離したコイルを単一のコアに装着できるようにコアの形状を工夫していること、に特徴がある。
【0015】
以下において、具体的に説明する。
【0016】
-トランスの構成-
図1に示すように、トランス1は、コイル本体2と、付属コイル3と、コイル本体2及び付属コイル3が装着されるコア4とを備える。
【0017】
コイル本体2は、1次巻線21及び2次巻線22と、ボビン23とを備えている。1次巻線21及び2次巻線22は、両巻線の互いの結合の度合いを示す結合係数kが高くなるようにボビン23に巻回されている。具体的に、コイル本体2には、1次巻線21及び2次巻線22が同心状に巻回されている。
【0018】
ボビン23は、中央に円形状の貫通孔(図示省略)が形成された2つの円板が対向配置され、両円板間を円筒状のボビン本体(図示省略)で連結している。これにより、ボビン23には、後述するコア4の第1脚部42を挿通するための挿通孔(図示省略)が形成される。
【0019】
なお、以下の説明では、ボビン23のボビン本体の軸方向を上下方向と呼ぶものとする。図1図4では、ボビン23の上下方向が、図面でも上下方向となるように図示しており、説明の便宜上、図面にしたがって「上」及び「下」を定義する。
【0020】
1次巻線21と2次巻線22との結合係数kは、例えば、0.9以上、1以下であり、より好ましくは0.97以上、1以下である。なお、結合係数k=1とは、漏れ磁束がない状態を示している。1次巻線21と2次巻線22との結合係数を高くすることにより、1次巻線21及び2次巻線22に鎖交する磁束を小さくすることができるので、トランス(コイル本体)の発熱を抑える効果が得られる。
【0021】
なお、コイル本体2の巻線構造は、結合係数kが高い構造であれば、具体的な構造は特に限定されない。一般的に、結合係数kを高めるためには、1次巻線21と2次巻線22との距離が近い方がよい。例えば、従来から知られている、いわゆるサンドイッチ巻き構造を本態様に適用することができる。サンドイッチ巻き構造とは、一方の巻線(例えば、1次巻線21)で形成された巻線層と巻線層の間に、他方の巻線(例えば、2次巻線22)で形成された巻線層を挟み込む構造である。そうすることで、上下方向及び径方向の両方において1次巻線21と2次巻線22との距離が近くなり、結果として、結合係数が高くなる。
【0022】
また、1次巻線21及び2次巻線22の素線の材質や線径は、特に限定されない。例えば、1次巻線21及び2次巻線22は、例えば、銅製であり、素線径が0.03~0.1mmφのリッツ線である。
【0023】
1次巻線21と2次巻線22との結合係数を高めると、その分、1次巻線21及び2次巻線22との相互関係から生じる漏れインダクタンスLrは小さくなる。そこで、本実施形態では、漏れインダクタンスLrを別体のコイル(以下、付属コイル3という)で生成する分離構造を採用している。
【0024】
付属コイル3は、付属ボビン31と、1次巻線21及び2次巻線22の少なくとも一方に配線24で接続され、付属ボビン31に巻回された付属巻線32とを備えている。
【0025】
付属ボビン31は、中央に長円状の貫通孔(図示省略)が形成された2つの円板が対向配置され、両円板間を長円筒状のボビン本体(図示省略)で連結した構成である。この構成により、後述するコア4の第3脚部45が挿通できるようになっている。
【0026】
図1では、付属巻線32が1次巻線21に接続された例、すなわち、付属コイル3がトランス1の1次側に取り付けられた例を示している。なお、付属巻線32が2次巻線22に接続される、すなわち、付属コイル3がトランス1の2次側に取り付けられてもよい。また、付属コイル3が、トランス1の1次側及び2次側の両方に、別々に取り付けられてもよい。さらに、1次側の付属コイルと2次側の付属コイルとが結合された結合構造にしてもよい。
【0027】
なお、付属コイル3の素線の材質や線径は、特に限定されない。例えば、コイル本体2の1次巻線21及び2次巻線22と共通であってもよい。また、付属コイル3の巻数は、1次巻線21及び2次巻線22の巻数よりも小さい。後述するLLC共振回路Aにおいて、漏れインダクタンスLrが励磁インダクタンスLmよりも小さく設定されるので、本実施形態ではそのように巻数を設定している。
【0028】
図2及び図3は、コア4の形状を示す斜視図であり、コイル本体2及び付属コイル3の装着前の状態を示している。
【0029】
図2及び図3に示すように、コア4は、コア本体40と、コア本体40から分岐された付属コア部44とを備える。
【0030】
コア本体40は、上下一対のコア部(以下、上コア部4a及び下コア部4bという)を有する。上コア部4aと下コア部4bとは、図面正面から見た上下方向の中央位置(接合位置)に形成した仮想平面に対して面対称の形状である。すなわち、上コア部4a及び下コア部4bは、同一形状の共通の部材であり、上下を反転させて使用している。そこで、以下の説明では、下コア部4bの構成についてのみ説明し、上コア部4aの構成の説明を省略する。
【0031】
図3に示すように、下コア部4bは、上下方向と直交する左右方向に延びる略矩形板状の基体41と、基体41上に上向きに立設された第1脚部42及び一対の第2脚部43を有する。
【0032】
第1脚部42は、円柱形状であり、基体41の左右方向の中間位置に一体的に立設される。また、第1脚部42の断面形状は、ボビン23の挿通孔の開口より若干小さく、第1脚部42の一部又は全部がボビン23のボビン本体内に収容できるように構成されている。
【0033】
第2脚部43は、第1脚部42の左右方向の両側に立設されている。第1脚部42と第2脚部43との間隔は、第1脚部42にコイル本体2が装着できるように、コイル本体2の径方向の厚さよりも若干広く設定される。また、両方の第2脚部43において、他方の第2脚部43との対向する対向方向の内壁は、コイル本体2の形状にあわせて、円弧に切り欠かれている。
【0034】
下コア部4bの基体41は、一方の第2脚部43(図3では左側の第2脚部43)よりも外側に突出するように延びていて、その左端には、付属コイル3を装着するための第3脚部45が立設されている。
【0035】
第3脚部45の形状は、第1脚部42よりも左右方向の幅が狭い断面長円状の柱状体である。すなわち、第3脚部の断面積は、第1脚部の断面積以下である。付属コイルの巻数は、1次巻線及び2次巻線の巻数よりも小さく、必要なインダクタンス値も小さいので、第3脚部をこのような形状にしている。このような構成にすることで、トランスのサイズが小さくなる。なお、第3脚部45の形状は、断面長円状の柱状体に限定されず、他の形状、例えば、円柱形状であってもよい。
【0036】
また、図面左側の第2脚部43と第3脚部45との間隔は、付属コイル3が装着できるように、付属コイル3の径方向の厚さより若干広く設定される。
【0037】
なお、本開示における付属コア部44には、基体41が第2脚部43から延出した延出部分と、第3脚部45とが含まれる。すなわち、本実施形態の構成では、上コア部4a及び下コア部4b(以下、まとめて上下コア部4a,4bという場合がある)において、基体41が、コア本体40及び付属コア部44で共通化されている。
【0038】
そして、上コア部4aと下コア部4bとが、両コア部4a,4bの開放側の端面同士、すなわち、第1脚部42、第2脚部43及び第3脚部45の端面同士を互いに突き合わせた状態で接合される。
【0039】
ここで、第1脚部42及び第3脚部45の上下方向の高さは、第2脚部43の上下方向の高さよりも低い。これにより、上下の第1脚部42間及び上下の第3脚部45間に、それぞれ、エアギャップGm,Grが形成される(図2図4参照)。
【0040】
なお、上下コア部4a,4bの第1脚部42間に形成されたエアギャップGmは、コイル本体2で形成される励磁インダクタンスLm用のエアギャップである。また、上下コア部4a,4bの第3脚部45間に形成されたエアギャップGrは、付属コイル3で形成される漏れインダクタンスLr用のエアギャップである。また、左右方向両側の第2脚部43同士は高さが揃えてあり、上下コア部4a,4bの第2脚部43間にはエアギャップが形成されないようにしている。これにより、図4の仮想線で示すように磁束が流れて、コイル本体2で形成される励磁インダクタンスLmと、付属コイル3で形成される漏れインダクタンスLrとが磁気結合しないようにすることができる。
【0041】
このように、コイル本体2と付属コイル3とを別体のコイルとして構成するとともに、互いを磁気的に分離することで、コイル本体2や付属コイル3の巻線(素線)に対して磁束が鎖交しないようにすることができる。これにより、トランス1が過度に発熱するのを防ぐことができる。
【0042】
-LLC共振回路の構成-
図5に示すように、LLC共振回路Aは、電源Eからの電源電圧Viを入力端子INに受け、交流に変換して出力する共振部60と、共振部60の出力を所定の出力電圧Voに変換して出力端子OUTから出力する変換部62と、制御回路7とを備える。なお、以下の説明において、入力端子INのうち、正極側と負極側とを分けて説明する場合に、符号INP,INMを付して説明する場合がある。同様に、出力端子OUTのうち、正極側と負極側とを分けて説明する場合にそれぞれにOUTP,OUTMを付して説明する場合がある。
【0043】
共振部60は、スイッチング部61と、共振コンデンサC11,C12と、前述のトランス1とを備える。
【0044】
スイッチング部61は、正極側の入力端子INPと負極側の入力端子INMとの間に直列に設けられた第1及び第2スイッチング素子Q11,Q12を有する。図5では、第1及び第2スイッチング素子Q11,Q12として、N型のMOS-FETと寄生ダイオードとを並列接続したものを用いている例を示している。なお、スイッチング部61の構成は、図5の構成に限定されず、同様の機能を有する他のスイッチング回路を適用してもよい。
【0045】
共振コンデンサC11,C12は、電流共振用のコンデンサC11及び電圧共振用のコンデンサC12を含む。電圧共振用コンデンサC12は、第1スイッチング素子Q11に並列に接続される。同様に、電流共振用共振コンデンサC11と、付属巻線32と、トランス1の1次巻線21との直列回路が、第1スイッチング素子Q11に並列に接続される。
【0046】
換言すると、正極側の入力端子INPが、第1共振コンデンサC11及び付属巻線32を介して、トランス1の1次巻線21の一端(例えば、巻始端)に接続される。そして、トランス1の1次巻線21の他端(例えば、巻終端)が、第2スイッチング素子Q12を介して負極側の入力端子INMに接続される。また、第1スイッチング素子Q11と、第1共振コンデンサC11と、トランス1の1次巻線21とにより、閉ループ回路が形成される。
【0047】
変換部62は、共振部60から出力された共振電圧を、所定の出力電圧Voに変換して出力する回路である。具体的に、変換部62は、トランス1の2次巻線22の一端(例えば、巻始端)と正極出力端子OUTPとの間に直列接続された第2コンデンサC21とダイオードD22とを備える。ダイオードD22は、トランス1の2次巻線22の一端から正極側の出力端子OUTPに向かって順方向に接続される。トランス1の2次巻線22の他端(例えば、巻終端)は、負極側の出力端子OUTMに接続される。
【0048】
変換部62は、さらに、第2コンデンサC21とダイオードD22との間の中間ノードN62と負極側の出力端子OUTMとの間に、直列に接続された逆流防止ダイオードD21を備える。逆流防止ダイオードD21は、上記中間ノードN21から負極側の出力端子OUTMに向かう方向に対して逆方向に接続される。また、両出力端子OUT間に、出力コンデンサC22が接続される。
【0049】
制御回路7は、LLC共振回路A全体の動作を制御するものであり、例えば、IC(Integrated Circuit)で実現することができる。制御回路7は、例えば、自回路内にあらかじめ登録されたプログラムやシーケンス等にしたがって動作する。より具体的に、制御回路7は、例えば、スイッチング部61の第1及び第2スイッチング素子Q11,12を、それぞれオンオフ制御するための制御信号Vg11,Vg12を出力する。
【0050】
なお、本開示において、「接続」との用語には、電気的に接続されるもの全般が含まれるものとする。すなわち、「接続」とは、直接接続されたものに限定されず、例えば、抵抗素子や半導体素子等を介して電気的に接続されるものを含む概念である。
【0051】
図6は、本実施形態に係るトランス1を適用したLLC共振回路(以下、実施回路という)と、付属コイルを設けない構成に係るLLC共振回路(以下、比較回路という)との1次巻線の温度上昇を比較した図である。図6において、丸印が実施回路の結果であり、三角印が比較回路の結果である。
【0052】
図6では、電源電圧Viとして、270V及び330Vを印加し、所定時間の経過後に熱電対を用いて1次巻線21の温度を測定している。また、比較回路は、PQ型のコアを用いており、コイル本体の1次巻線と2次巻線との巻回位置を軸方向にずらすことで、漏れインダクタンスを生成しているものである。
【0053】
図6に示すように、比較回路では、電源電圧が270Vにおいて1次巻線温度が89度、330Vでは同110度まで達しているのに対し、実施回路では、270V及び330Vの両方において、1次巻線温度が65度程度であり、温度上昇が著しく低減されている。
【0054】
さらに、発明者は、実施回路と比較回路の漏れ磁束を計測した。漏れ磁束の計測方法として、トランスへの通電中に、計測用コイルをトランスに近接させ、その計測用コイルに誘導される誘導電圧を測定した。その結果、誘導電圧が、比較回路に対して1/9程度になり、実施回路では、トランス外部への漏れ磁束も著しく低減されることが確認できた。
【0055】
以上のように、本実施形態によると、励磁インダクタンスLmを形成するためのコイル本体2と、漏れインダクタンスLrを形成するための付属コイル3とを分けている。そして、コイル本体2は、コア本体40の第1脚部42に装着するとともに、付属コイル3は、コア本体40とは磁気的に分離された第3脚部45に装着している。このような構成にすることで、従来技術のように、積極的にトランスの漏れインダクタンスを利用して共振動作を行う場合と比較して、トランス1の巻線に鎖交する磁束量を著しく低減することができる。従来技術では、上記漏れ磁束がトランスの巻線に鎖交することにより、巻線に渦電流損が誘導され、巻線温度が上昇していたが、本実施形態の構成では、漏れ磁束を巻線に鎖交させることなく漏れインダクタンスが得られるので、そのような温度上昇を著しく低減することができる。
【0056】
<その他の実施形態>
以上、本発明の好ましい実施形態及びその変形例について説明したが、本開示に係る技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え等を行った実施形態にも適用が可能である。また、上記実施形態説明した構成要素や以下において説明する構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、エアギャップGmは、上下コア部4a,4bの第1脚部42間に形成される、すなわち、トランス1の上下方向の中間位置に形成されるものとしたが、これに限定されない。例えば、エアギャップGmが、基体41と、上コア部4a又は下コア部4bとの境界部分に形成されていてもよい。エアギャップGrについても同様であり、エアギャップGrが、トランス1の上下方向の中間位置に代えて、基体41と、上コア部4a又は下コア部4bとの境界部分に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係るトランスは、トランスの発熱を大幅に低減することができるので、例えば、家庭やオフィス等で使用される電気機器、電源機器、電力変換装置等に用いるトランスとして極めて有用である。
【符号の説明】
【0059】
A LLC共振回路
1 トランス
2 コイル本体
3 付属コイル
4 コア
21 1次巻線
22 2次巻線
40 コア本体
42 第1脚部
43 第2脚部
44 付属コア部
45 第3脚部
図1
図2
図3
図4
図5
図6