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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/34 20060101AFI20220609BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20220609BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20220609BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20220609BHJP
   C04B 35/64 20060101ALI20220609BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20220609BHJP
   C04B 35/488 20060101ALI20220609BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20220609BHJP
   F26B 3/347 20060101ALI20220609BHJP
   F26B 5/04 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B01J37/34 ZAB
B01J35/04 301N
B01J32/00
B01J23/10 A
C04B35/64
C04B38/06 B
C04B35/488 500
B28B11/24
F26B3/347
F26B5/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018049633
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019155336
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 健太
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012566(WO,A1)
【文献】特表平11-509617(JP,A)
【文献】特開2013-180413(JP,A)
【文献】特開2005-131800(JP,A)
【文献】特開2005-305417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
B28B 11/00-11/24
C04B 35/64
C04B 38/06
C04B 35/488
F26B 3/347
F26B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体を備えたハニカム構造体の製造方法であって、
セリア-ジルコニア複合酸化物粒子とアルミナ粒子とを含む原料ペーストを押出成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を得る押出成形工程と、
前記ハニカム成形体を乾燥させてハニカム乾燥体を得る乾燥工程と、
前記ハニカム乾燥体を脱脂してハニカム脱脂体を得る脱脂工程と、
前記ハニカム脱脂体を焼成する焼成工程と、を含み、
前記乾燥工程では、前記ハニカム成形体の貫通孔が露出する端面を鉛直方向に向けて、マイクロ波吸収部材で前記ハニカム成形体の側面を囲いながら前記ハニカム成形体及び前記マイクロ波吸収部材にマイクロ波を照射し、
鉛直方向に垂直な断面における前記マイクロ波吸収部材により囲まれた形状の面積は、鉛直方向に垂直な断面における前記ハニカム成形体の面積の1.3倍以下であり、前記マイクロ波吸収部材の鉛直方向の平均長さは、前記ハニカム成形体の鉛直方向の長さの0.8倍以上であり、
前記マイクロ波吸収部材は前記原料ペーストを乾燥させた多孔質体であることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
鉛直方向に垂直な断面における前記マイクロ波吸収部材により囲まれた形状の面積は、鉛直方向に垂直な断面における前記ハニカム成形体の面積の1.2倍以下である請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程における雰囲気圧力は、9000Pa以下である請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥工程を行う前の前記ハニカム成形体の含水率が25重量%以上である請求項1~3のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記原料ペーストに占めるセリア-ジルコニア複合酸化物粒子の重量割合は15~35重量%である請求項1~4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥工程において照射されるマイクロ波の周波数は902~928MHz又は2400~2500MHzである請求項1~5のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記マイクロ波吸収部材は、前記ハニカム成形体の側面に沿って略等間隔に配置された、複数個の板状のマイクロ波吸収体で構成されており、
鉛直方向に垂直な断面において、前記ハニカム成形体の重心と前記マイクロ波吸収部材によって囲まれた形状の重心とが略重なるように前記マイクロ波吸収部材を配置する請求項1~のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記乾燥工程では、前記ハニカム成形体の上面及び/又は下面に、さらにマイクロ波吸収体を接触させる請求項1~のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記乾燥工程では、前記ハニカム成形体及び前記マイクロ波吸収部材を調湿部材で覆う請求項1~のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)等の有害ガスが含まれている。そのような有害ガスを分解する排ガス浄化触媒は三元触媒とも称され、コージェライト等からなるハニカム状のモノリス基材に触媒活性を有する貴金属粒子を含むスラリーをウォッシュコートして触媒層を設けたものが一般的である。
【0003】
このようなモノリス基材を作製する方法として、特許文献1には、水を含むセラミック原料組成物を成形してセラミック成形体を作製し、セラミック成形体に減圧雰囲気下でマイクロ波を照射し、その後焼成する方法が開示されている。また特許文献2には、湿度70%以上の高湿度条件でハニカム成形体を乾燥させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-106484号公報
【文献】特許4131103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、水分の蒸発を促進することはできるが、乾燥時間を短縮しようとすると、ハニカム乾燥体の表面にクラックが生じることがあった。
また、特許文献2に記載された方法では、湿度が高いため乾燥までに長時間を要することがあり、特に含水率が25重量%を超えるハニカム成形体の乾燥に用いた場合、ハニカム成形体の内部の乾燥速度に対して外部の乾燥速度が著しく遅くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、割れやクラックを発生させることなくハニカム構造体を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体を備えたハニカム構造体の製造方法であって、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子とアルミナ粒子とを含む原料ペーストを押出成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を得る押出成形工程と、上記ハニカム成形体を乾燥させてハニカム乾燥体を得る乾燥工程と、上記ハニカム乾燥体を脱脂してハニカム脱脂体を得る脱脂工程と、上記ハニカム脱脂体を焼成する焼成工程と、を含み、上記乾燥工程では、上記ハニカム成形体の貫通孔が露出する端面を鉛直方向に向けて、マイクロ波吸収部材で上記ハニカム成形体の側面を囲いながら上記ハニカム成形体及び上記マイクロ波吸収部材にマイクロ波を照射し、鉛直方向に垂直な断面における上記マイクロ波吸収部材により囲まれた形状の面積は、鉛直方向に垂直な断面における上記ハニカム成形体の面積の1.3倍以下であり、上記マイクロ波吸収部材の鉛直方向の平均長さは、上記ハニカム成形体の鉛直方向の長さの0.8倍以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明のハニカム構造体の製造方法では、乾燥工程において、ハニカム成形体の側面をマイクロ波吸収部材で囲いながら、ハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材にマイクロ波を照射する。
マイクロ波吸収部材はハニカム成形体の側面に近接しているため、ハニカム成形体に含まれる水分の一部を吸収して、ハニカム成形体の乾燥を促進することができる。さらにマイクロ波照射により、ハニカム成形体が加熱されるとともに、マイクロ波吸収部材も加熱されるため、ハニカム成形体を外部から加熱するヒータの役割を果たす。そのため、ハニカム成形体はマイクロ波により内部から加熱されるとともに、マイクロ波吸収体によって側面からも加熱されることとなり、ハニカム成形体から均一に水分が除去されるため、クラックや割れが発生することを抑制することができる。
そして、鉛直方向に垂直な断面において、マイクロ波吸収部材によって囲まれた形状の面積が、ハニカム成形体の面積の1.3倍以下であるため、マイクロ波吸収部材がハニカム成形体の表面に充分近接しており、ハニカム成形体とマイクロ波吸収部材との間の隙間が少ない。従って、上述したマイクロ波吸収部材によるハニカム成形体の乾燥が効率的に進行する。
【0009】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、鉛直方向に垂直な断面における上記マイクロ波吸収部材により囲まれた形状の面積は、鉛直方向に垂直な断面における上記ハニカム成形体の面積の1.2倍以下であることが好ましい。
鉛直方向に垂直な断面において、マイクロ波吸収部材によって囲まれた形状の面積が、ハニカム成形体の面積の1.2倍以下であると、ハニカム成形体とマイクロ波吸収部材との間の隙間がさらに少なくなり、マイクロ波吸収部材によるハニカム成形体の乾燥がより効率的に進行する。
【0010】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記乾燥工程における雰囲気圧力は、9000Pa以下であることが好ましい。
乾燥工程における雰囲気圧力が9000Pa以下であると、水分の蒸発が促進され、乾燥工程に必要な時間を短くすることができる。
【0011】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記乾燥工程を行う前の上記ハニカム成形体の含水率が25重量%以上であることが好ましい。
本発明のハニカム構造体の製造方法では、含水率が25重量%以上のハニカム成形体であっても、割れやクラックを発生させることなく短時間で乾燥させることができるため、このようなハニカム成形体の乾燥に特に適している。
【0012】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記原料ペーストに占めるセリア-ジルコニア複合酸化物粒子の重量割合は15~35重量%であることが好ましい。
本発明のハニカム構造体の製造方法では、原料ペーストに占めるセリア-ジルコニア複合酸化物粒子(以下、CZ粒子ともいう)の重量割合が15~35重量%であるハニカム成形体であってもクラックを発生させることなく短時間で乾燥できるため、CZ粒子の重量割合が上記範囲である原料ペーストを成形してなるハニカム成形体の乾燥に特に適している。
【0013】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記乾燥工程において照射されるマイクロ波の周波数は902~928MHz又は2400~2500MHzであることが好ましい。
【0014】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記マイクロ波吸収部材は、酸化セリウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
マイクロ波吸収部材が上記材料であると、マイクロ波の照射によりハニカム成形体を外部から加熱しやすくなる。
なお、マイクロ波吸収部材を構成する材料としては、2500MHzにおけるマイクロ波半減深度が15cm程度のものが好ましく、例えば酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0015】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記マイクロ波吸収部材は、上記原料ペーストを乾燥させた多孔質体であることが好ましい。
マイクロ波吸収部材が原料ペーストを乾燥させた多孔質体であると、マイクロ波を照射した際に、ハニカム成形体とマイクロ波吸収部材の発熱量が同程度となるため、ハニカム成形体の内部と外部とで温度差が発生しにくい。さらにマイクロ波吸収部材が多孔質体であると、ハニカム成形体に含まれる水分を吸収しやすくなるため、ハニカム成形体の水分量のバラツキを抑制することができる。
【0016】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記マイクロ波吸収部材は、上記ハニカム成形体の側面に沿って略等間隔に配置された、複数個の板状のマイクロ波吸収体で構成されており、鉛直方向に垂直な断面において、上記ハニカム成形体の重心と上記マイクロ波吸収部材によって囲まれた形状の重心とが略重なるように上記マイクロ波吸収部材を配置することが好ましい。
マイクロ波吸収部材が、ハニカム成形体の側面に沿って等間隔に配置された複数の板状のマイクロ波吸収体で構成されており、ハニカム成形体の重心とマイクロ波吸収部材によって囲まれた形状の重心とが、鉛直方向に垂直な断面において略重なるように配置すると、ハニカム成形体が外部から略均等に加熱されるため、ハニカム成形体中の水分量のバラツキが起こりにくくなる。
【0017】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記乾燥工程では、上記ハニカム成形体の上面及び/又は下面に、さらにマイクロ波吸収体を接触させることが好ましい。
ハニカム成形体の上面及び/又は下面にさらにマイクロ波吸収体を接触させることによって、ハニカム成形体の上面及び/又は下面からもハニカム成形体を加熱することができる。
【0018】
本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記乾燥工程では、上記ハニカム成形体及び上記マイクロ波吸収部材を調湿部材で覆うことが好ましい。
乾燥工程において、ハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材を調湿部材で覆うことにより、ハニカム成形体の周囲の湿気を一定に保つことができるため、ハニカム成形体中の水分量がばらつくことをさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明のハニカム構造体の製造方法における乾燥工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1のA-A線断面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、図2におけるハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材を模式的に分離した図である。
図4図4は、図1の側面図である。
図5図5は、乾燥工程の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、乾燥工程のさらに別の一例を模式的に示す斜視図である。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明のハニカム構造体の製造方法は、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム焼成体を備えたハニカム構造体の製造方法であって、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子とアルミナ粒子とを含む原料ペーストを押出成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を得る押出成形工程と、上記ハニカム成形体を乾燥させてハニカム乾燥体を得る乾燥工程と、上記ハニカム乾燥体を脱脂してハニカム脱脂体を得る脱脂工程と、上記ハニカム脱脂体を焼成する焼成工程と、を含み、上記乾燥工程では、上記ハニカム成形体の貫通孔が露出する端面を鉛直方向に向けて、マイクロ波吸収部材で上記ハニカム成形体の側面を囲いながら上記ハニカム成形体及び上記マイクロ波吸収部材にマイクロ波を照射し、鉛直方向に垂直な断面における上記マイクロ波吸収部材により囲まれた形状の面積は、鉛直方向に垂直な断面における上記ハニカム成形体の面積の1.3倍以下であり、上記マイクロ波吸収部材の鉛直方向の平均長さは、上記ハニカム成形体の鉛直方向の長さの0.8倍以上であることを特徴とする。
【0021】
以下、成形工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程についてそれぞれ説明する。
【0022】
(成形工程)
成形工程では、CZ粒子とアルミナ粒子とを含む原料ペーストを押出成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を得る。
原料ペーストには、さらに無機繊維、有機バインダ、造孔剤、成形助剤、分散媒等が含まれていてもよい。
【0023】
CZ粒子を構成するセリア-ジルコニア複合酸化物は、排ガス浄化触媒の助触媒(酸素貯蔵材)として用いられている材料である。セリア-ジルコニア複合酸化物としては、セリアとジルコニアとが固溶体を形成したものが好ましい。
【0024】
セリア-ジルコニア複合酸化物は、セリウム以外の希土類元素をさらに含んでいてもよい。希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテニウム(Lu)等が挙げられる。
【0025】
セリア-ジルコニア複合酸化物は、セリアを20重量%以上含むことが好ましく、25重量%以上含むことがより好ましく、一方、セリアを70重量%以下含むことが好ましく、60重量%以下含むことがより好ましい。また、セリア-ジルコニア複合酸化物は、ジルコニアを80重量%以下含むことが好ましく、70重量%以下含むことがより好ましい。このようなセリア-ジルコニア複合酸化物は熱容量が小さいため、ハニカム構造体の温度が上昇しやすくなり、暖機性能を高めることができる。
【0026】
CZ粒子の平均粒子径は耐熱衝撃性を向上させる観点から、1~50μmであることが好ましい。また、CZ粒子の平均粒子径は1~30μmであることがより好ましい。CZ粒子の平均粒子径が1~50μmであると、ハニカム構造体とした際に、表面積が大きくなるため、酸素吸蔵能を高くすることができる。
【0027】
アルミナ粒子の種類は特に限定されないが、θ相のアルミナ粒子(以下、θ-アルミナ粒子ともいう)であることが好ましい。
θ相のアルミナ粒子をセリア-ジルコニア複合酸化物の仕切り材として用いることにより、アルミナ粒子が使用中に熱によって互いに焼結することを抑制できるため、触媒機能を維持することが可能となる。さらに、アルミナ粒子をθ相とすることにより、耐熱性を高くすることができる。
【0028】
アルミナ粒子の平均粒子径は特に限定されないが、ガス浄化性能及び暖機性能を向上させる観点から、1~10μmであることが好ましく、1~5μmであることがより好ましい。
【0029】
製造されたハニカム構造体において、CZ粒子及びアルミナ粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製 S-4800)を用いて、ハニカム構造体のSEM写真を撮影することにより求めることができる。
また、ハニカム構造体の原料となるCZ粒子及びアルミナ粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(MALVERN社製 MASTERSIZER2000)により求めることができる。
【0030】
アルミナバインダとしては、ベーマイトが好ましい。
ベーマイトは、AlOOHの組成で示されるアルミナ1水和物であり、水等の媒体に良好に分散するので、ベーマイトをアルミナバインダとして用いることが好ましい。
また、ベーマイトを用いることで原料ペースト中の水分率を低くし、成形性を高めることができる。
【0031】
無機繊維を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等が挙げられ、二種以上併用してもよい。これらの中では、アルミナ繊維が好ましい。
【0032】
無機繊維のアスペクト比は、5~300であることが好ましく、10~200であることがより好ましく、10~100であることがさらに好ましい。
なお、無機繊維とは、アスペクト比が5以上のものをいう。
【0033】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0034】
造孔剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、コークス、デンプン等が挙げられる、本発明では、アクリル樹脂、コークス及びデンプンのうち2種類以上を用いることが好ましい。
造孔剤とは、焼成体を製造する際、焼成体の内部に気孔を形成するために用いられるものをいう。
【0035】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0036】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0037】
上記した原料としてCZ粒子、アルミナ粒子、アルミナ繊維及びアルミナバインダを使用した際、これらの配合割合は、原料中の焼成工程後に残存する全固形分に対し、CZ粒子:25~75重量%、アルミナ粒子:15~35重量%、アルミナ繊維:5~15重量%、アルミナバインダ:5~20重量%が好ましい。
【0038】
原料ペーストを調製する際には、混合混練することが好ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0039】
成形工程では、セリア-ジルコニア複合酸化物粒子とアルミナ粒子とアルミナバインダを含む上記原料ペーストを押出成形することにより、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を得る。
【0040】
ハニカム成形体の形状は特に限定されるものではないが、円柱形状が好ましい。また、円柱形状の場合の直径が150mm以下であることが好ましい。
また、ハニカム成形体の形状は角柱形状であってもよく、角柱形状である場合は、四角柱形状であることが好ましい。
【0041】
(乾燥工程)
乾燥工程では、ハニカム成形体の貫通孔が露出する端面を鉛直方向に向けて、マイクロ波吸収部材でハニカム成形体の側面を囲いながら、ハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材にマイクロ波を照射する。
【0042】
図1を用いて、本発明のハニカム構造体の製造方法における乾燥工程を説明する。
図1は、本発明のハニカム構造体の製造方法における乾燥工程の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、本発明のハニカム構造体の製造方法における乾燥工程では、ハニカム成形体10の貫通孔が露出する端面10a及び10bを鉛直方向(図1中、矢印zで示される方向)に向ける。ハニカム成形体10の側面11はマイクロ波吸収部材20で囲われている。この状態で、ハニカム成形体10及びマイクロ波吸収部材20にマイクロ波を照射することにより、乾燥工程を行う。
マイクロ波吸収部材20は12個の板状のマイクロ波吸収体21で構成されており、12個のマイクロ波吸収体21はハニカム成形体10の側面11に沿って略等間隔に配置されており、マイクロ波吸収体21同士の間には隙間22が形成されている。またマイクロ波吸収体21は、マイクロ波吸収体21同士の接触部分ではハニカム成形体10と接触しておらず、隙間13(図2を参照)が形成されている。12個のマイクロ波吸収体21は保持部材30によりハニカム成形体10の側面11に固定されている。
【0043】
図2は、図1のA-A線断面図である。図2は、鉛直方向に垂直な方向(図1における矢印x及び矢印yの示す方向)の断面図でもある。
また鉛直方向に垂直な断面において、ハニカム成形体10の重心gと、マイクロ波吸収部材20の重心gは略重なっている。
【0044】
図2における、マイクロ波吸収部材により囲まれた形状の面積及びハニカム成形体の面積について、図3(a)及び図3(b)を用いて説明する。
図3(a)及び図3(b)は、図2におけるハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材を模式的に分離した図である。図3(a)は、図2に示す断面図からハニカム成形体10を取り除いたものに相当し、図3(b)は、図2に示す断面図からマイクロ波吸収部材20を取り除いたものに相当する。
図3(a)に示すように、マイクロ波吸収部材20により囲まれる形状は、マイクロ波吸収部材20を構成するマイクロ波吸収体21のハニカム成形体10に最も近い辺21aによって形成される十二角形Paであり、その面積はSである。一方、ハニカム成形体10の面積には、ハニカム成形体10中の貫通孔の体積も含み、その面積はSである。そして、面積Sは面積Sの1.3倍以下(S/S≦1.3)である。
なお、マイクロ波吸収部材を構成するマイクロ波吸収体のハニカム成形体に最も近い辺だけでハニカム成形体が囲まれていない場合、マイクロ波吸収体の上記辺を互いに延長して形成される形状を、マイクロ波吸収部材により囲まれる形状とする。
【0045】
鉛直方向に垂直な断面において、マイクロ波吸収部材によって囲まれた形状の面積は、鉛直方向に垂直な断面におけるハニカム成形体の面積の1.3倍以下であればよく、1.2倍以下であることが好ましく、1.1倍以下であることがさらに好ましい。
なお、鉛直方向に垂直な断面において、マイクロ波吸収部材によって囲まれる形状の面積がハニカム成形体の面積よりも小さくなることはないため、上記倍率は1.0倍が最小値である。この場合、マイクロ波吸収部材とハニカム成形体との間に隙間がない状態となる。
上記倍率が1.3倍を超える場合、ハニカム成形体の外部からの加熱のバランスが悪く、クラックが発生しやすくなる。
【0046】
図4は、図1の側面図である。
図4に示すように、マイクロ波吸収部材20の鉛直方向の平均長さLは、ハニカム成形体10の鉛直方向の長さLの0.8倍以上となっている。
なお、マイクロ波吸収部材の鉛直方向の平均長さは、2箇所において測定されたマイクロ波吸収部材の鉛直方向の長さの平均値とする。マイクロ波吸収部材が2つ以上のマイクロ波吸収体からなる場合、全てのマイクロ波吸収体の鉛直方向の長さの平均値をマイクロ波吸収部材の鉛直方向の長さの平均値とする。このとき、各マイクロ波吸収体の鉛直方向の長さは、2箇所において測定されたマイクロ波吸収体の鉛直方向の長さの平均値とする。
【0047】
マイクロ波吸収部材の鉛直方向の平均長さは、ハニカム成形体の鉛直方向の長さの0.8倍以上であればよい。
マイクロ波吸収部材の上記平均長さは、ハニカム成形体の上記長さの0.9倍以上であることが好ましい。
マイクロ波吸収部材の上記平均長さは、ハニカム成形体の上記長さの1.1倍以下であることが好ましく、1.0倍以下であることがより好ましい。
【0048】
マイクロ波吸収体は、ハニカム成形体の側面に沿って略等間隔に配置されていることが好ましい。マイクロ波吸収体がハニカム成形体の側面に沿って略等間隔に配置されていると、ハニカム成形体を均一に加熱しやすくなる。
【0049】
マイクロ波吸収部材は、酸化セリウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化アルミニウムを含むことがより好ましい。
マイクロ波吸収部材が上記材料を含むと、マイクロ波の照射によりハニカム成形体を外部から加熱しやすくなる。
【0050】
マイクロ波吸収部材を構成する材料としては、2500MHzにおけるマイクロ波半減深度が15cm程度のものが好ましく、例えば酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0051】
マイクロ波吸収部材の形状としては、ハニカム成形体の側面を囲むことができるような形状であればよく、例えば、板状のマイクロ波吸収体をハニカム成形体の側面に沿って略等間隔に配置したものや、ハニカム成形体の外径寸法と略同一又は僅かに大きな寸法の中空部分を有する環状又は筒状が挙げられる。
このとき、マイクロ波吸収部材の重心が、ハニカム成形体の重心と垂直方向に略重なることが好ましい。
【0052】
マイクロ波吸収部材が複数個のマイクロ波吸収体で構成されている場合、複数個のマイクロ波吸収体をハニカム成形体の側面に固定するために、保持部材を使用してもよい。
保持部材としては、伸縮性を有する環状の紐、帯等が挙げられる。
板状のマイクロ波吸収体をハニカム成形体の側面に略等間隔に配置する場合、マイクロ波吸収体の外側を伸縮性を有する帯(例えば輪ゴムのようなバンド)で固定することにより、マイクロ波吸収体の位置を固定することができる。
【0053】
マイクロ波吸収部材は多孔質体であってもよく、緻密体であってもよいが、多孔質体であることが好ましい。
マイクロ波吸収部材が多孔質体であると、ハニカム成形体に含まれる水分を吸収しやすくなるため、ハニカム成形体の水分量のバラツキを抑制することができる。
【0054】
マイクロ波吸収部材は、ハニカム成形体を得るために用いられた原料ペーストを乾燥させた多孔質体であることがより好ましい。
マイクロ波吸収部材が原料ペーストを乾燥させた多孔質体であると、マイクロ波を照射した際に、ハニカム成形体とマイクロ波吸収部材の発熱量が同程度となるため、ハニカム成形体の内部と外部とで温度差が発生しにくい。
【0055】
乾燥工程における雰囲気圧力は特に限定されないが、9000Pa以下であることが好ましく、6700Pa以下であることがより好ましい。
【0056】
乾燥工程においてハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材に照射されるマイクロ波の波長は特に限定されないが、902~928MHz又は2400~2500MHzであることが好ましく、2400~2500MHzであることがより好ましい。
【0057】
マイクロ波の出力は特に限定されないが、500~10000Wであることが好ましい。
またマイクロ波の照射時間は特に限定されないが、5~100分であることが好ましい。
【0058】
(脱脂工程)
脱脂工程では、ハニカム乾燥体を加熱してハニカム脱脂体を得る。
脱脂工程においてハニカム乾燥体を加熱する際の最高温度は800℃未満であることが好ましく、350~700℃であることがより好ましい。また最高温度での加熱時間は60分以下であることが好ましい。
【0059】
脱脂工程における酸素濃度は特に限定されないが、1~21体積%であることが好ましい。
脱脂工程における昇温速度は特に限定されないが、0.5~10℃/minであることが好ましい。
【0060】
(焼成工程)
続いて、ハニカム脱脂体を焼成してハニカム焼成体を得る焼成工程を行う。
焼成工程の温度は、800~1300℃であることが好ましく、900~1200℃であることがより好ましい。また、焼成工程の時間は、1~24時間であることが好ましく、3~18時間であることがより好ましい。焼成工程の雰囲気は特に限定されないが、酸素濃度が1~21体積%であることが好ましい。
【0061】
焼成工程は脱脂工程から連続して行ってもよいし、脱脂工程の完了後に別途行ってもよい。
脱脂工程から連続して焼成工程を行う場合、脱脂炉として用いた炉を焼成炉として用いてもよい。
なお、脱脂工程においてハニカム乾燥体の脱脂が完了したかどうかは、重量変化率により確認する。具体的には、原料中に含まれる有機物の重量分だけ、ハニカム乾燥体の重量に対してハニカム脱脂体の重量が変化していることを確認して、脱脂が完了したものとする。
【0062】
以上の工程により、ハニカム焼成体からなるハニカム構造体を製造することができる。
【0063】
(担持工程)
続いて、該ハニカム構造体の隔壁に対して貴金属を担持させる担持工程について説明する。ハニカム構造体の隔壁に貴金属を担持させることによりハニカム触媒とすることができる。
【0064】
隔壁に貴金属を担持する方法としては、例えば、貴金属もしくは錯体を含む溶液にハニカム焼成体又はハニカム構造体を浸漬した後、引き上げて加熱する方法等が挙げられる。
上記担持工程では、貴金属の担持量が0.1~15g/Lであることが好ましく、0.5~10g/Lであることがより好ましい。
【0065】
(その他の工程)
本発明のハニカム構造体の製造方法では、焼成工程により得られたハニカム焼成体の外周面に外周コート層を形成してもよい。
ハニカム焼成体の外周面に外周コート層を形成する方法としては、ハニカム焼成体の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布した後、乾燥固化する方法が挙げられる。
外周コート層用ペーストとしては、原料ペーストと同じ組成のものが挙げられる。
【0066】
焼成工程により得られたハニカム焼成体を複数個、接着層を介して接着してもよい。
複数個のハニカム焼成体を接着層を介して接着する方法としては、複数個のハニカム焼成体の両端面を除く外周面に接着層用ペーストを塗布して、接着させた後、乾燥固化する方法が挙げられる。接着層用ペーストとしては、原料ペーストと同じ組成のものが挙げられる。
【0067】
本発明のハニカム構造体の製造方法を構成する乾燥工程の別の例について説明する。
【0068】
図5は、乾燥工程の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図5では、ハニカム成形体10の上面10a及び下面10bに、さらにマイクロ波吸収体40a及び40bが接触している。
ハニカム成形体10の上面10a及び下面10bにさらにマイクロ波吸収体40a、40bが接触していると、マイクロ波吸収部材20によりハニカム成形体10の側面から加熱されるだけでなく、マイクロ波吸収体40a、40bによってハニカム成形体10が上面10a及び下面10bからも加熱されるため、ハニカム成形体10の乾燥が均一に進行しやすい。
【0069】
ハニカム成形体の上面及び/又は下面に接触されるマイクロ波吸収体の大きさは特に限定されないが、鉛直方向に垂直な方向の断面において、マイクロ波吸収体の断面積はハニカム成形体の断面積の0.2~1.0倍であることが好ましい。
ハニカム成形体の上面及び/又は下面に接触されるマイクロ波吸収体が貫通孔を有する形状である場合、該マイクロ波吸収体の貫通孔の向きがハニカム成形体の貫通孔の向きと同じ方向となるように該マイクロ波吸収体を配置することが好ましい。上記の方向でマイクロ波吸収体を配置することで、ハニカム成形体から水分が抜けやすくなる。
【0070】
図6は、乾燥工程のさらに別の一例を模式的に示す斜視図である。
図6では、ハニカム成形体10、ハニカム成形体10の側面11を囲むマイクロ波吸収部材20、並びに、ハニカム成形体10の上面10a及び下面10bに接触するマイクロ波吸収体40a及び40bが、調湿部材50により覆われている。
マイクロ波を照射する際にハニカム成形体10、マイクロ波吸収部材20及びマイクロ波吸収体40a、40bが調湿部材50により覆われていると、ハニカム成形体10、マイクロ波吸収部材20及びマイクロ波吸収体40a、40bから放出される水蒸気が調湿部材50の内部に長時間留まるため、ハニカム成形体10、マイクロ波吸収部材20及びマイクロ波吸収体40a、40bの周囲の蒸気圧の急激な変化を抑制することができ、ハニカム成形体10の一部だけで水の蒸発(乾燥)が急激に進行することを抑制することができる。
そのため、乾燥工程におけるクラックの発生をさらに抑制することができる。
【0071】
調湿部材としては、マイクロ波吸収性が低く、水蒸気透過性の低い材料が好ましい。
マイクロ波吸収性が低く、水蒸気透過性の低い材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
調湿部材の形状は、ハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材をまとめて覆うことができるものであれば特に限定されないが、袋状や箱状の立体形状であってもよく、帯状やシート状であってもよい。
袋状や箱状の場合、内部空間にハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材を収容して、袋の開口部を閉じる、蓋をする等の方法が挙げられる。
帯状の場合、帯状の調湿部材をハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材に巻きつけてその表面の大部分を覆う方法が挙げられる。
調湿部材は、ハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材を完全に覆っていてもよいが、ハニカム成形体から発生した水蒸気が外部に一切もれないような構造ではなく、内部の水蒸気を徐放するものであることが好ましい。
【0072】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0073】
[原料ペーストの作製]
CZ粒子(平均粒子径:2μm)を26.4重量%、θ-アルミナ粒子(平均粒子径:2μm)を13.2重量%、アルミナ繊維(平均繊維径:3μm、平均繊維長:60μm)を5.3重量%、アルミナバインダとしてベーマイトを11.3重量%、有機バインダとしてメチルセルロースを5.3重量%、造孔剤としてアクリル樹脂を2.1重量%、同じく造孔剤としてコークスを2.6重量%、成形助剤として界面活性剤であるポリオキシエチレンオレイルエーテルを4.2重量%、及び、イオン交換水を29.6重量%混合混練して、原料ペーストを調製した。
【0074】
[成形工程]
押出成形機を用いて、原料ペーストを押出成形して、円柱状のハニカム成形体を作製した。
ハニカム成形体は、直径が149.3mm、長さが150mmの円柱状であり、貫通孔の密度が65.1個/cm(420cpsi)、隔壁の厚さが0.165mm(6.5mil)であった。
【0075】
[乾燥工程]
(実施例1)
原料ペーストを厚さ約10mmのシート状に成形した物を所定の形状に切断し、120℃で10分間乾燥させることにより、厚さ10mm×幅40mm×長さ120mmのマイクロ波吸収体(多孔質)を得た。
このマイクロ波吸収体を12枚、ハニカム成形体の側面に等間隔に配置し、ゴムバンドによってマイクロ波吸収体をハニカム成形体の側面に固定した状態で、6700Paに減圧した乾燥炉内に静置し、周波数2500MHzのマイクロ波を照射してハニカム成形体を乾燥させた。
このとき、鉛直方向に垂直な断面において、マイクロ波吸収部材によって囲まれる形状は一辺40mmの正十二角形であり、その面積は17914mmであった。一方、鉛直方向に垂直な断面においてハニカム成形体の形状は直径149.3mmの円であり、面積は17502mmであった。上記面積から求められる、マイクロ波吸収部材によって囲まれる形状の面積のハニカム成形体の面積に対する倍率は、1.02倍であった。
マイクロ波の出力は1470W、照射時間は12分とした。
得られたハニカム乾燥体の表面に凹みやクラックはみられなかった。
【0076】
[脱脂工程及び焼成工程]
ハニカム乾燥体を1100℃で10時間脱脂・焼成することにより実施例1に係るハニカム焼成体を作製した。
【0077】
(実施例2)
ハニカム成形体とセルパターン、セル密度、セル隔壁の厚さが同じで直径が77mm、長さが86mmのハニカム成形体を2つ準備し、これを120℃で10分間乾燥させてマイクロ波吸収体とした。
このマイクロ波吸収体をさらにハニカム成形体の上面及び下面にそれぞれ接触するように配置したほかは、実施例1と同様の手順で実施例2に係るハニカム焼成体を得た。
乾燥工程の終了後に、ハニカム乾燥体の表面には凹みやクラックはみられなかった。
【0078】
(実施例3)
ハニカム成形体、ハニカム成形体の側面に配置されたマイクロ波吸収体、及び、ハニカム成形体の上面及び下面に配置されたマイクロ波吸収体のすべてを直径200mmのポリプロピレン製の筒に収容し、上面及び下面を工業用ストレッチフィルム(ポリ塩化ビニリデン製、厚さ15μm)でゆるく塞ぐことにより、調湿部材によってハニカム成形体及びマイクロ波吸収部材のすべてを覆ったほかは、実施例2と同様の手順で、実施例3に係るハニカム焼成体を得た。なお、乾燥炉の減圧は、ポリプロピレン製の筒の内部が徐々に減圧されるよう、実施例1、2よりも時間をかけて行った。
乾燥工程の終了後に、ハニカム乾燥体の表面には凹みやクラックはみられなかった。
【0079】
(実施例4)
マイクロ波吸収体の寸法を厚さ10mm×幅86mm×長さ150mmに変更し、枚数を6枚に変更したほかは、実施例1と同様の手順で、実施例4に係るハニカム焼成体を作製した。
鉛直方向に垂直な断面において、マイクロ波吸収部材によって囲まれる形状は一辺約86.2mmの正六角形であり、その面積は19300mmであった。上記面積から求められる、マイクロ波吸収部材によって囲まれる形状の面積は、ハニカム成形体の面積の1.10倍であった。
乾燥工程の終了後に、ハニカム乾燥体の表面には凹みやクラックはみられなかった。
なお、マイクロ波吸収体同士にはわずかに隙間が生じており、上記マイクロ波吸収部材によって囲まれる形状は、マイクロ波吸収体のハニカム成形体に最も近い面を延長して得られる形状である。
【0080】
(比較例1)
マイクロ波吸収体を配置しないほかは実施例1と同様の手順で比較例1に係るハニカム焼成体を得た。乾燥工程の終了後にハニカム乾燥体の表面を観察すると、端面に多数のクラックが発生していた。
【0081】
(比較例2)
ハニカム成形体の側面に配置されるマイクロ波吸収体の数を3枚に変更したほかは、実施例4と同様の手順で比較例2に係るハニカム焼成体を得た。乾燥工程の終了後にハニカム乾燥体の表面を観察すると、端面にクラックががみられた。
鉛直方向に垂直な断面において、マイクロ波吸収部材によって囲まれる形状は、一辺259mmの正三角形であり、鉛直方向に垂直な断面においてマイクロ波吸収部材によって囲まれる形状の面積は、ハニカム成形体の面積の1.65倍であった。
なお、マイクロ波吸収体同士の端面は互いに接触していないため、一辺259mmの正三角形は、マイクロ波吸収体の最もハニカム成形体に近い面を延長して得られる形状である。
【0082】
以上の結果より、本発明のハニカム構造体の製造方法を用いると、ハニカム乾燥体に凹みやクラックが生じにくいことがわかった。
【符号の説明】
【0083】
10 ハニカム成形体
11 ハニカム成形体の側面
13 隙間
20 マイクロ波吸収部材
21 マイクロ波吸収体
22 隙間
30 保持部材
40a、40b マイクロ波吸収体
50 調湿部材
マイクロ波吸収部材により囲まれる形状の面積
ハニカム成形体の面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6