(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】監視制御システムの情報伝送方式、監視制御システムの情報伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04L 45/247 20220101AFI20220609BHJP
H04L 12/46 20060101ALI20220609BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
H04L45/247
H04L12/46 E
H04Q9/00 301Z
(21)【出願番号】P 2018066360
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591043581
【氏名又は名称】東京都
(73)【特許権者】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518108494
【氏名又は名称】一般社団法人東京下水道設備協会
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 典之
(72)【発明者】
【氏名】川上 博行
(72)【発明者】
【氏名】熱田 孝
(72)【発明者】
【氏名】安藤 哲男
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 良陽
(72)【発明者】
【氏名】田村 浩明
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 弘二
(72)【発明者】
【氏名】山崎 千恵
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】高倉 正佳
(72)【発明者】
【氏名】三溝 正孝
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-042380(JP,A)
【文献】特開2017-220851(JP,A)
【文献】特開2013-250918(JP,A)
【文献】特開2003-309887(JP,A)
【文献】特開2000-132201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
41/00-101/695
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下位ステーションから上位ステーションに運転状況の瞬時データが伝送される一方、上位ステーションから下位ステーションに制御データが伝送される監視制御システムの情報伝送方式であって、
前記上位ステーションは、前記下位ステーションと装置固有のフォーマットでデータを授受するFEP(Front-End Processor)を備え、
前記下位ステーションは、上位ステーションと共通化したフォーマットでデータを授受するFEPを備え、
前記上位ステーションの前記FEPを多重化構成する一方、
前記下位ステーションの前記FEPを、前記上位ステーション側の多重化数に応じた複数台系とし、
前記上位ステーションと前記下位ステーションとの間を複数の通信系統を備えた多重通信構成とし、
前記上位ステーションの前記各FEPと前記下位ステーションの前記各FEPとの間の各通信系統に異常検出用の通知を往復させ、
前記通知の往復の成否に基づき前記各通信系統の異常を検出することを特徴とする監視制御システムの情報伝送方式。
【請求項2】
前記上位ステーションは、二重化構成されたFEPを備え、
前記下位ステーションは、二台系のFEPを備え、
前記上位ステーションと前記下位ステーションとの間の前記通信系統は、二系統を備え、
前記上位ステーションは、前記二系統の主従系を管理する二重化制御部を備える一方、
前記下位ステーションの前記各FEPは、前記管理に従って制御通信されることを特徴とする請求項1記載の監視制御システムの情報伝送方式。
【請求項3】
前記二重化制御部は、
前記主系の前記FEPでのみ前記制御データを送信させる一方、
前記従系の前記FEPでは前記制御データを送信させない
ことを特徴とする請求項2記載の監視制御システムの情報伝送方式。
【請求項4】
前記二重化制御部は、
前記主系に前記異常の検出があれば、
前記通信系統の主系切替を実行することを特徴とする請求項
2または3記載の
監視制御システムの情報伝送方式。
【請求項5】
前記二重化制御部は、
前記切替前に前記従系に前記異常の検出があれば、
前記主系切替を実行しないことを特徴とする請求項4記載の監視制御システムの情報伝送方式。
【請求項6】
下位ステーションから上位ステーションに運転状況の瞬時データが伝送される一方、上位ステーションから下位ステーションに制御データが伝送され、
前記上位ステーションが、前記下位ステーションと装置固有のフォーマットでデータを授受するFEP(Front-End Processor)を備え、
前記下位ステーションが、上位ステーションと共通化したフォーマットでデータを授受するFEPを備えた監視制御システムの情報伝送方法であって、
前記上位ステーションの二重化された前記FEPと、前記下位ステーションの二台系の前記FEPとを用いた各通信系統によりデータ送信するステップと、
前記上位ステーションの前記各FEPと前記下位ステーションの前記各FEPとの間の各通信系統に異常検出用の通知を往復させ、前記通知の往復の成否に基づき前記各通信
系統の異常を検出するステップと、
を有することを特徴とする監視制御システムの情報伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下位ステーションから上位ステーションまでネットワークを介して階層化された監視制御システムにおけるステーション間の情報伝送の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上位の制御ステーションと下位の被制御ステーションとの間の制御通信方式が記載されている。ここでは制御ステーションにはフロントエンドプロセッサ(Front-End Processor:以下、FEPと省略する。)が設けられている。
【0003】
このFEPは、上位ステーションと共通化したフォーマットおよびデータを授受する一方、下位ステーションと各装置固有のフォーマットおよびデータを授受する。これにより制御ステーションと被制御ステーションとの間の通信プロトコル及びデータの違いを吸収し、その間の統一した通信を可能としている。
【0004】
特許文献2には、二重化コンピュータシステムで構築されたシステム監視制御装置が記載されている。ここではホストコンピュータとフロントエンドプロセッサとを二重化し、プロントエンドプロセッサと多数の入出力デバイスとの回線接続状態を監視制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-42380
【文献】特開平4-31946
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の制御通信方式によれば、ステーション間に伝送されるデータは、FEPで統一されて通信される。しかしながら、FEPがシングル構成なため、FEPの故障時や保守作業時などの異常時にステーション間の監視制御ができないおそれがあった。
【0007】
この点につき、特許文献2に示す二重化コンピュータシステムで構築されたシステム監視制御装置などが提案されているものの、制御ステーションの情報法伝送方式おけるFEPの二重化を提案するものではなく、ステーション間の監視制御に向かないおそれがある。
【0008】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、FEPの故障時や保守作業時などの異常時発生時にステーション間の監視制御を可能にし、監視制御システムの情報伝達の信頼性を向上させることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様は、下位ステーションから上位ステーションに運転状況の瞬時データが伝送される一方、上位ステーションから下位ステーションに制御データが伝送される監視制御システムの情報伝送方式であって、
前記各ステーションは、それぞれの上位ステーションと共通化したフォーマットおよびデータを授受し、それぞれの下位ステーションと各装置固有のフォーマットおよびデータを授受するFEP(Front-End Processor)を備え、
前記上位ステーションの前記FEPを多重化構成する一方、
前記下位ステーションの前記FEPを、前記上位ステーション側の多重化数に応じた複数台系とし、
前記上位ステーションと前記下位ステーションとの間を複数の通信系統を備えた多重通信構成とし、
前記上位ステーションの前記各FEPと前記下位ステーションの前記各FEPとの間の各通信系統に異常検出用の通知を往復させ、
前記通知の往復の成否に基づき前記各通信系統の異常を検出することを特徴としている。
【0010】
(2)本発明の他の態様は、下位ステーションから上位ステーションに運転状況の瞬時データが伝送される一方、上位ステーションから下位ステーションに制御データが伝送され、
前記各ステーションは、それぞれ上位ステーションと共通化したフォーマットおよびデータを授受する一方、それぞれ下位ステーションと各装置固有のフォーマットおよびデータを授受するFEP(Front-End Processor)を備えた監視制御システムの情報伝送方法であって、
前記上位ステーションの二重化された前記FEPと、前記下位ステーションの二台系の前記FEPとを用いた各通信系統によりデータ送信するステップと、
前記上位ステーションの前記各FEPと前記下位ステーションの前記各FEPとの間の各通信系統に異常検出用の通知を往復させ、前記通知の往復の成否に基づき前記各通信経路の異常を検出するステップと、
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、FEP故障や保守作業時などの異常時発生時にステーション間の監視制御が可能となる。この点で監視制御システムの情報伝達の信頼性向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の係る監視制御システムの構成図。
【
図3】(a)は実施例1のFEP自動切替前の状態図、(b)は実施例1のFEP自動切替後の状態図。
【
図4】(a)は実施例2のFEP自動切替前の状態図、(b)は実施例2のFEP自動切替後の状態図。
【
図5】(a)は実施例3のFEP自動切替前の状態図、(b)は実施例3のFEP自動切替後の状態図。
【
図6】(a)は実施例4のFEP自動切替前の状態図、(b)は実施例4のFEP自動切替後の状態図。
【
図7】(a)はFEP手動切替前の状態図、(b)はFEP手動切替後の状態図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。ここでは本発明の情報伝達方式は、監視制御システムに適用され、本発明の情報伝達方法が実行されている。
【0014】
この監視制御システムは、下位ステーションから上位ステーションまでネットワークを介して階層化され、機器などの運転状況の瞬時データ(監視情報)と制御データとを区別し、かつ通信プロトコルの異なるステーション間での情報伝達を実行する。
【0015】
ここでは各ステーションには、特許文献1と同様にFEPが設けられ、上位ステーションと下位ステーションとの間の通信プロトコル及びデータの違いを吸収し、その間の統一した通信を可能としている。
【0016】
このとき各ステーションのFEPは冗長化(多重化)が施されている。具体的には上位ステーションのFEPと下位ステーションのFEPとが冗長化(多重化)され、両FEP間に複数の通信系統を備えている。併せて上位ステーション・下位ステーション間の通信系統について異常検出機能を有し、監視制御システムの信頼性を向上させている。なお、本実施形態で使用される主な用語の定義を以下に示す。
【0017】
(1)上位ステーション:FA(Factory Automation)プロトコルを使用するステーションは、複数の形態が想定される。ここでは下位ステーションから機器などの運転状況の瞬時データ(監視情報)を受信する位置付の計算機(コンピュータ)を総称して上位ステーションと表すものとする。例えば上位ステーション/下位のステーションが、遠制(Remote Control System)と被遠制(Remotely Controlled System)の関係にあれば、遠制側のステーションが相当する。
【0018】
(2)下位ステーション:前述のようにFA(Factory Automation)プロトコルを使用するステーションは、複数の形態が想定される。ここでは上位ステーションに瞬時データを送信する位置付の計算機を総称して下位ステーションと表すものとする。例えば上位ステーション/下位のステーションが、遠制と被遠制の関係にあれば、被遠制側のステーションが相当する。
【0019】
(3)FAプロトコル:FA系システム間、特に特許文献1のマルチベンダシステム間でFA系情報の通信を可能とするものを「FAプロトコル」と呼ぶものとする。このFAプロトコルは、TCP/IPやUDP/IPをベースとして、FA系システムの機能要件を満たすマルチベンダ通信プロトコルである。
【0020】
≪システム構成例≫
図1に基づき前記監視制御システムの構成例を説明する。この監視制御システムは、最上位管理ステーション11から管理ステーション12を介して統括ステーション13との間でネットワーク1を通した情報伝送が実行される。
【0021】
また、統括ステーション13から制御(上位)ステーション14を介して被制御(下位)ステーション15との間でネットワーク2を通した情報伝送を実行する階層化された情報ネットワークを構築している。
【0022】
ここで前記監視制御システムは、両ステーション14,15のFEP20,21の二重化,ネットワーク2の二重通信構成,異常検出機能(ヘルシーチェック機能・通信系統の切替機能の追加)の特徴を有している点で特許文献1と相違する。以下、この特徴を中心に前記監視制御システムの情報伝達方式/情報伝達方法を説明する。
【0023】
≪FEPの二重化等≫
図2に基づきFEP20,21の二重化およびネットワーク2の二重通信構成を説明する。
図2中の20は、制御ステーション(例えば遠制ポンプ場など)14の二重化された遠制FEP-A,FEP-Bを示している。この各遠制FEP-A20,FEP-B20は、二重化コントローラ(DC:Duplicate Controller)24により管理制御されている。
【0024】
また、同21は、被制御ステーション(例えば被遠制ポンプ場など)15の二台系の被遠制FEP-A,FEP-Bを示し、さらに同22はLANスイッチを示している。
【0025】
ここでは制御ステーション14・被制御ステーション15間の通信系統は、A系統「被遠制FEP-A21・遠制FEP-A20系」と、B系統「被遠制FEP-B21・遠制FEP-B20系」の二系統からなり、該各系統は個々に制御通信を行う。この制御通信には、従来のFEPシングル構成(例えば特許文献1のFEP構成など)と同等なものが使用可能である。なお、A,B系統は互いの制御通信を干渉しないように構成されているものとする。
【0026】
さらにA,B系統は、それぞれネットワーク障害の回避のため、二重通信の機能を持つ。すなわち、あらかじめ下位の被遠制FEP-A21,FEP-B21から上位の遠制FEP-A20,FEP-B20に対して、「1系ルート」と「2系ルート」の二つの通信ルートを設定し、各ルートを瞬時データ,制御データ,時刻情報の通信に使用する。
【0027】
これにより制御ステーション14と被制御ステーション15との間は、A系統(1系ルート,2系ルート)とB系統(1系ルート、2系ルート)とによりデータの送受信を行うことができる。例えば被遠制FEP-A21,FEP-B21から遠制FEP-A20,FEP-B20に瞬時データなどを送信する際は、以下のルートを経由する。
・A系統
1系ルート:被遠制FEP-A21(A1)→1系ルート→遠制FEP-A20(A1)
2系ルート:被遠制FEP-A21(A2)→2系ルート→遠制FEP-A20(A2)
・B系統
1系ルート:被遠制FEP-B21(B1)→1系ルート→遠制FEP-B20(B1)
2系ルート:被遠制FEP-B21(B2)→2系ルート→遠制FEP-B20(B2)
そして、1系ルート・2系ルートの二重化通信が選択されている場合、送信側のFEP(例えば被遠制FEP-A21)は、同時に1系ルート・2系ルートを通じて受信側のFEP(例えば遠制FEP-A20)にデータ送信する。このとき受信側のFEPは、先に受信したルートのデータを受信データとする(先着優位)。なお、イーサネット(登録商標)方式においては、高速迂回によるループバック方式のため、1系ルート・2系ルートの両データとも同一ルート(右または左回り)にて通信が行われる。
【0028】
ここでA,B系統の主従管理は、遠制FEP-A20,FEP-B20を管理制御する二重化コントローラ24により行われる。この主従管理に従って二台系の被遠制FEP-A21,FEP-B21が制御通信を実行する。
【0029】
また、遠制FEP-A20,FEP-B20のデータ受信は主系で実施され、該主系の各ルート(1系ルート,2系ルート)の先着データをプロセスデータとして制御ステーション14の記憶部装置(図示省略)に記憶させて格納する。一方、従系は、データ受信メモリの読み込みが行うものの、プロセスデータとしての格納は行わない。なお、被遠制FEP-A21,FEP-B21は、通信系統の主従に関係なく、遠制FEP-A20,FEP-B20に上り信号を伝送する。
【0030】
一方、遠制FEP-A20,FEP-B20の制御情報通信は、二重化コントローラ24の主従管理の下、主系でのみ制御データが送信され、従系では制御データの送信は行われない。例えばA系統が主系の場合、遠制FEP-A20から制御データを受信した被遠制FEP-A21は、図示省略のプロセス制御系システム(プロコン)に該制御データを出力する。
【0031】
ただし、制御ステーション14と被制御ステーション15との時刻同期にあたっては、遠制FEP-A20,FEP-B20の時刻情報通信は主系・従系の双方向から時刻データが送信され、被遠制FEP-A21,FEP-B21の二台系に対して時刻同期が行えるものとする。このときプロセス制御系システムへの時刻データ出力は、被遠制FEP-A21,FEP-B21のうち主系通信側で行う。
【0032】
ここで従系の通信系統は、制御データの送受信を実施しないものの、制御データ通信や時刻情報通信についてTCP/IPの接続を常時行うものとする。この場合、制御データ通信はTCP/IPの接続のみで送受信するデータが無い状態が継続するため、別途にTCP/IPの接続確認(生存確認)を設定してもよい。
【0033】
なお、FEP二重化での伝送規約および伝送フォーマットなどは、シングル構成の規約を転用し、A系統とB系統とは同じ伝送フォーマットを使用する。
【0034】
≪異常検出機能等≫
二重化コントローラ24は、通信系統の主従系を管理し、さらに各通信系統の異常を検出する。この主従系は、製造メーカなどにより予め二重化コントローラ24にデフォルト設定されているものとする。ここでは一例として二重化コントローラ24に「主系=A系統」および「従系=B系統」と設定された事例を想定する。
【0035】
この場合にA系統の遠制FEP-A20は、上位主従区分を主系コードとした異常検出用のヘルシーチェック(下り)を被遠制FEP-A21に通知する。また、B系統の遠制FEP-B20は、上位主従系区分を従系コードとした異常検出用のヘルシーチェック(下り)を被遠制FEP-B21に通知する。
【0036】
これにより被遠制FEP-A21,FEP-B21側でA.B系統の主従系を検出することができる。このとき被遠制FEP-A21,FEP-B21への前記通知は、それぞれ5秒周期で送信される。この周期は、仕様などに応じて任意の値に設定することができる。
【0037】
この応答として、前記通知の受信後に被遠制FEP-A21,FEP-B21から遠制FEP-A20,FEP-B20にヘルシーチェック(上り)の通知が送信される。また、遠制FEP-A20,FEP-B20は、被遠制FEP-A21,FEP-B21から送信されたヘルシーチェック(上り)の通知を受信する。
【0038】
このようにヘルシーチェック(下り/上り)の通知を往復させ、該通知の往復の成否に基づきA,B系統の異常が検出される。例えば(A)遠制FEP-A20,FEP-B20のダウン、(B)被遠制FEP-A21,FEP-B21のダウン、(C)両ルート(1系ルート・2系ルート)共に回線断などの各事像が生じた通信系統は、ヘルシーチェック(下り/上り)の通知を往復させることができず、異常が検出される。
【0039】
このとき主系のA系統について異常が検出されれば、二重化コントローラ24により主系切替、即ちB系統への主系切替が自動的に実施される。ただし、切替前に従系(B系)の異常が検出されていれば主系切替は実施されないものとする。
【0040】
一方、ヘルシーチェック(下り/上り)の通知の往復が成功した場合には、通信系統の異常は検出されず、主系切替を実施することなく、従前通りの主従系(主系=A系,従系=B系)のまま監視制御が継続される。以下、実施例1~4に基づき異常検出および主系切替を具体的に説明する。この実施例1~4の主従系管理は前記事例と同じとする。
【0041】
(1)実施例1
図3に基づき実施例1の主系切替を説明する。この実施例1は、主系(A系統)の被遠制FEP-A21がダウンしたときの主系切替を示している。
【0042】
ここでは
図3(a)に示すように、被遠制FEP-A21が故障や保守作業などによりダウンした状態を想定する。この場合に被遠制FEP-A21は、遠制FEP―A20からのヘルシーチェック(下り)に対する応答、即ちヘルシーチェック(上り)を送信できない。
【0043】
したがって、遠制FEP-A20がヘルシーチェック(上り)を受信することができず、ヘルシーチェック(上り)の受信がタイムアウトする。このタイムアウト時間は仕様などにより任意に設定できるものとする。
【0044】
これにより遠制FEP-A20は、主系(A系統)の異常、即ちA系の両ルート(1系ルート・2系ルート)の回線断/被遠制FEP-A21のダウンを検出し、二重化コントローラ24に検出結果を送る。
【0045】
この検出結果が入力されると二重化コントローラ24は、前記検出後に従系(B系統)の正常状態、即ち異常が検出されていない状態が15秒以上継続していることを条件に主系切替を実施する。この正常状態の確認としては、例えば遠制FEP-B20が3周期分のヘルシーチェック(上り)を受信したことなどを条件としてもよい。
【0046】
この主系切替の結果、
図3(b)に示すように、通信系統の主系がA系統からB系統に切り替えられる。このとき被遠制FEP-B21は、遠制FEP-B20からの上位主従区分の主系コードにより通信系統の切替を認識し、B系統の1系ルート・2系ルートを通じて制御通信を実行する。
【0047】
これにより被遠制FEP-A21がダウンしても、ステーション14,15間の制御通信が途絶えることがなく、両者14,15間の制御通信が継続される。なお、実施例1の切替後に被遠制FEP-A21が復旧しても、通信系統の主系統はB系統のままとする。
【0048】
(2)実施例2
図4に基づき実施例2の主系切替を説明する。この実施例2は、主系(A系統)の遠制FEP-A20がダウンしたときの主系切替を示している。
【0049】
ここでは
図4(a)に示すように、遠制FEP-A20が故障や保守作業などによりダウンした状態を想定する。このとき遠制FEP-A20は、ヘルシーチェック(下り)の通知を定められた周期(5秒周期)で送信することができず、未送信の周期が記録される。
【0050】
また、二重化コントローラ24は、前記周期の度にヘルシーチェック(下り)の送信記録をチェックし、未送信の周期があれば遠制FEP-A20のダウンを検出する。この検出後に二重化コントローラ24は、実施例1と同様に従系(B系統)の正常状態が15秒以上継続していることを前提に通信系統の主系切替を実施する。
【0051】
この主系切替の結果、
図4(b)に示すように、通信系統の主系がA系統からB系統に切り替えられる。ここでは実施例1と同様に被遠制FEP-B21は、遠制FEP-B20からの上位主従区分の主系コードにより通信系統の切替を認識し、B系統の1系ルート・2系ルートを通じて制御通信を実行する。
【0052】
これにより遠制FEP-A20がダウンしても、ステーション14,15間の制御通信が途絶えることはなく、両者14,15間の制御通信が継続される。
【0053】
なお、遠制FEP-A20がダウンした場合、ヘルシーチェック(下り)の受信もタイムアウトする。したがって、被遠制FEP-A21が、主系(A系統)の異常、即ちA系統の両ルート(1系ルート・2系ルート)の回線断/遠制FEP-A20のダウンを検出する。この検出結果を、B系統を通じて二重化コントローラ24に送って主系切替を実施してもよいものとする。
【0054】
(3)実施例3
図5に基づき実施例3を説明する。この実施例3は、主系(A系統)の両ルート(1系ルート・2系ルート)に回線断が生じた場合の主系切替を示している。
【0055】
ここでは遠制FEP-A20は、
図5(a)に示すように、1系ルートに回線断が生じたため、2系ルートにより制御通信を行っていた。ところが、2系ルートにも回線断が生じたため、遠制FEP-A20はヘルシーチェック(上り)を受信することができず、ヘルシーチェック(上り)の受信がタイムアウトする。
【0056】
これにより遠制FEP-A20は、主系(A系統)の異常、即ちA系の両ルート(1系ルート・2系ルート)の回線異常/被遠制FEP-A21のダウンを検出し、二重化コントローラ24に検出結果を送る。
【0057】
この検出結果が入力されると二重化コントローラ24は、実施例1,2と同様に従系(B系統)の正常状態が15秒以上継続していることを前提に通信系統の主系切替を実施する。
【0058】
すなわち、
図5(b)に示すように、通信系統の主系がA系統からB系統に切り替えられる。このとき被遠制FEP-B21は、遠制FEP-B20からの上位主従区分の主系コードにより通信系統の切替を認識する。
【0059】
ここでB系統は、1系ルートが回線断しているため、2系ルートで制御通信が実行される。これにより主系(A系統)の全ルート(1系ルート・2系ルート)に回線断が生じても、ステーション14,15間の制御通信が途絶えることがなく、両者14,15間の制御通信が継続される。
【0060】
なお、主系の両ルートに回線断が生じた場合、ヘルシーチェック(下り)の受信もタイムアウトする。したがって、被遠制FEP-A21が、主系(A系統)の異常、即ち遠制FEP-A20のダウン/両ルート(1系ルート・2系ルート)の回線断を検出する。この検出結果を、B系統を通じて二重化コントローラ24に送って主系切替を実施してもよい。
【0061】
(4)実施例4
図6に基づき実施例4を説明する。この実施例4は、
図6(a)に示すように、主系(A系統)の片系ルート(1系ルート)に回線断などの回線異常が生じた場合を示している。
【0062】
ここでは主系(A系統)が2系ルートで制御通信を継続可能なため、
図6(b)に示すように、主系切替は実施されることはなく、A系統を主系にしたまま監視制御が実行される。
【0063】
このように本実施形態の前記監視制御システムによれば、回線異常(回線断,FEPの故障など)や保守作業によりステーション14・ステーション15間の監視制御ができない従来方式の問題が解決される。
【0064】
すなわち、本実施形態の情報伝送方式によれば、通信系統の主系が異常により停止しても、自動的に主系切替が実施されるため、ステーション14・15間の監視制御を継続することができる。この点で高い信頼性の監視制御システムを提供することができる。
【0065】
≪その他・他例≫
(1)本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えば二重化コントローラ24の自動切替だけでなく、手動により通信系統の主系を切り替えてもよい。
【0066】
すなわち、
図7(a)の状態で主従系が管理されている場合に遠制FEP-A20の保守作業を実施する状態を想定する。この場合には保守作業の開始前に主系切替を実施し、
図7(b)に示すように、主系をA系統からB系統に切り替えればよい。これにより遠制FEP-A20の保守作業中にもステーション14,15間の制御通信を継続することができる。
【0067】
また、ステーション14・15間のFEP20,21を二重化するだけでなく、ステーション11・12間,ステーション12・13間,ステーション13,14間のFEPを二重化(二台系)して二重通信化を図ってもよい。
【0068】
なお、本実施形態の説明では、二重化コントローラ24において通信系統の主従を管理し、さらに各通信系統の異常を検出するとしたが、遠制FEP20が二重化コントローラ24の機能を備えてもよい。
【0069】
(2)また、上記実施形態から把握される本発明の技術的特徴は、特許請求の範囲の記載に限定されない。以下に他の技術的特徴について一例を示す。
【0070】
〔請求項a〕
上位ステーションの主系のFEPは、上位主従区分を主系とした異常検出用の通知を下位ステーションの主系のFEPに送信する一方、
上位ステーションの従系のFEPは、上位主従区分を従系とした異常検出用の通知を下位ステーションの従系のFEPに送信し、
下位ステーションの各FEPは、前記各通知の受信により通信系統の主従系を検出することを特徴とする請求項2記載の監視制御システムの情報伝送方式。
【0071】
〔請求項b〕
上位ステーションの主系のFEPは、異常検出用の通知を任意の周期で下位ステーションの主系のFEPに送信し、該通知に対する応答の受信がタイムアウトすれば主系の異常を検出し、
二重化制御部は、前記異常が主系で検出されれば、主系切替を実行することを特徴とする請求項4記載の監視制御システムの情報伝送方式。
【0072】
〔請求項c〕
上位ステーションの主系のFEPが、異常検出用の通知を下位ステーションの主系のFEPに送信できない場合には、
二重化制御部は、主系の異常を検出し、さらに主系切替を実行することを特徴とする請求項4記載の監視制御システムの情報伝送方式。
【0073】
〔請求項d〕
上位ステーションの主系のFEPのダウン
下位ステーションの主系のFEPのダウン
主系の通信ルートのすべて回線断
の各事象が生じた場合に主系切替が実行されることを特徴とする請求項bまたはc記載の監視制御システムの情報伝送方式。
【0074】
〔請求項e〕
通信系統の系切替は、主系の異常検出後に従系の正常状態が事前設定の時間継続することを条件とする
ことを特徴とする請求項4,b~d監視制御システムの情報伝送方式。
【0075】
〔請求項f〕
主系切替は、上位ステーションの従系のFEPが主系に切り替わる一方、主系のFEPが従系に切り替わり、
主系切替後に上位ステーションの新たに主系となったFEPは、上位主従区分を主系とする異常検出用の通知を下位ステーションのFEPに送信する
ことを特徴とする請求項a記載の監視制御システムの情報伝送方式。ただし、前記請求項a~fの発明は、請求項1~6の発明の技術的範囲に含まれているものとする。
【符号の説明】
【0076】
1,2…ネットワーク
11…最上位管理ステーション
12…管理ステーション
13…統括ステーション
14…制御ステーション
15…被制御ステーション
20,21…FEP
22…LANスイッチ
24…二重化コントローラ(二重化制御部)