(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】開閉体の開閉装置並びに被開閉体
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20220609BHJP
F16C 11/10 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
F16C11/04 F
F16C11/10 A
(21)【出願番号】P 2018095503
(22)【出願日】2018-05-17
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000124085
【氏名又は名称】加藤電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】三浦 文昭
(72)【発明者】
【氏名】高木 実
(72)【発明者】
【氏名】神保 三四郎
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172784(JP,A)
【文献】特開2003-314530(JP,A)
【文献】特開平08-114215(JP,A)
【文献】特開平08-028545(JP,A)
【文献】特開2005-273739(JP,A)
【文献】特開2006-220198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04
F16C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被開閉体側へ取り付けられる取付部材と、
この取付部材に対し回転可能に取り付けられると共に開閉体
が取り付け
られるところのその中心部
を軸方向
に貫通する貫通孔を有する第1軸部材と、
この第1軸部材の回転を制御する回転制御手段とで構成し、
この回転制御手段を、フリクショントルク変動手段と、このフリクショントルク変動手段と前記第1軸部材を互いに連動させる連動手段と、前記第1軸部材の回転角度を規制するストッパー手段とで構成し、
前記フリクショントルク変動手段を、前記取付部材に第1軸部材に隣接して設けた第2軸部材と、この第2軸部材に設けられたところのカム手段と、このカム手段を加圧する加圧手段と、前記第1軸部材の吸込み手段と、で構成
し、
前記カム手段は、前記第2軸部材に回転可能に取り付けられ前記第1軸部材に共に回転可能に取り付けた第1ギアと噛み合う第2ギアの側面に設けたところの外周側凹部と内周側凹部と、これらの外周側凹部と内周側凹部の各端部に続いて設けられたそれぞれ一対の外周側第1段部と内周側第1段部と、この外周側第1段部と内周側第1段部に続いて設けられた外周側第2段部と内周側第2段部を有する回転カム部と、前記第2軸部材へ非回転かつ軸方向へスライド可能に取り付けられたところの前記回転カム部と対向する側に外周側凸部と内周側凸部から成る固定カム部を有するスライドカム部材と、で構成したことを特徴とする、開閉体の開閉装置。
【請求項2】
前記取付部材は、取付板とこの取付板から屈曲して設けた側板とで構成したことを特徴とする、請求項1に記載の開閉体の開閉装置。
【請求項3】
前記第1軸部材は、その一端部側において前記側板へ回転可能に取り付けられることを特徴とする、請求項2に記載の開閉体の開閉装置。
【請求項4】
前記連動手段は、前記第1軸部材
に回転可能に取り付けた第1ギアと、前記第2軸部材に回転可能に取り付けられ前記第1ギアと噛み合う第2ギアとで構成したことを特徴とする、請求項1に記載の開閉体の開閉装置。
【請求項5】
前記ストッパー手段は、前記側板に設けたストッパー片と、前記第1軸部材に共に回転可能に取り付けた第1ギアに設けられ、前記第1軸部材の所定の回転角度において前記ストッパー片に当接する凸部とで構成したことを特徴とする、請求項2に記載の開閉体の開閉装置。
【請求項6】
前記フリクショントルク変動手段
の前記吸込み手段を、前記カム手段を構成するところの前記第2軸部材に回転可能に取り付けられた第2ギアの側面に設けたところの外周側凹部と内周側凹部を有する回転カム部と、前記第2軸部材へ非回転かつ軸方向へスライド可能に取り付けられたところの前記回転カム部と対向する側に外周側凸部と内周側凸部から成る固定カム部を有するスライドカム部材とで構成したことを特徴とする、請求項1に記載の開閉体の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくに自動車の前部座席の背もたれの後部に開閉体の一種である車載用モニターを開閉可能に取り付ける際に用いて好適な、開閉体の開閉装置並びにこの開閉装置を用いた自動車などの各種機器から成る被開閉体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内部の座席近辺に搭載させる車載モニターを揺動可能或は開閉可能に支持する支持装置として、下記特許文献1~3に記載されたものが公知である。このうち特許文献1~2に示された車載モニターの取付構造は、ヒンジシャフトにハーネス挿通用の挿通孔のない無垢のものを用いるものであり、特許文献3に示されたものは、ヒンジシャフトの軸方向を貫通してハーネス用の挿通孔が設けられると共に、このヒンジシャフトにフリクションワッシャーやウェイブワッシャーなどを用いたフリクショントルク発生手段を設けてある。
【0003】
しかしながら、特許文献1~2に記載のものは、ハーネスが外部へ露出してしまい、デザイン上好ましいものではないという問題があった。また、特許文献3に記載のものは、ヒンジシャフトの軸方向へハーネスの挿通用の挿通孔が設けられる関係上、ハーネスが外部へ露出してしまうことは避けられるが、この場合、通常のヒンジシャフトに比べて軸径の太いものを用いる必要があり、フリクションワッシャーやウェイブワッシャーなどのフリクショントルク発生手段を構成する部材の半径方向の有効面積が小さくならざるを得ず、モニターを取り付ける場所によっては、当該モニターを必要な角度で安定停止させるフリクショントルクが得にくいという問題があった。また、下記特許文献に記載されたもののように、ヒンジシャフト1軸にフリクショントルク発生手段を設けたものは、ヒンジシャフトの軸方向の長さが長くなるため、開閉装置全体の幅が長くなり、このことが開閉装置へ取り付ける被開閉体の幅を減少させてコンパクト化する際の障害ともなっていた。さらに、近年はハーネスに変えてFPC(フレキシブル基盤)を用いるようになっており、このFPCに対応した開閉装置も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-177235号公報
【文献】特開2007-308124号公報
【文献】特開2000-330475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、開閉体を支持し、ハーネスを通す挿通孔を軸方向に貫通させた第1軸部材を用いても、この第1軸部材とは別のところに回転制御手段を設け、第1軸部材と回転制御手段を連動させることにより、必要なフリクショントルクを得ることができた上で、ハーネスも外部へ露出せず、しかも、車載モニターの幅を減少させてコンパクト化を図り、さらにFPCにも対応できる、とくに車載用モニター等の開閉体の開閉装置を提供せんとするにある。
【0006】
以下の説明では、車載用モニターの開閉装置を例に取って説明するが、本発明に係る開閉装置は、このものに限定されず、広くディスプレイ装置等の電子機器の開閉装置として用いることが可能なので、本発明に係る開閉装置を用いて開閉される電子機器を開閉体と読み替え、この開閉体を取り付ける側を、被開閉体と称するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本願発明の請求項1に係る開閉体の開閉装置は、被開閉体側へ取り付けられる取付部材と、この取付部材に対し回転可能に取り付けられると共に開閉体が取り付けられるところのその中心部を軸方向に貫通する貫通孔を有する第1軸部材と、この第1軸部材の回転を制御する回転制御手段とで構成し、この回転制御手段を、フリクショントルク変動手段と、このフリクショントルク変動手段と前記第1軸部材を互いに連動させる連動手段と、前記第1軸部材の回転角度を規制するストッパー手段とで構成し、前記フリクショントルク変動手段を、前記取付部材に第1軸部材に隣接して設けた第2軸部材と、この第2軸部材に設けられたところのカム手段と、このカム手段を加圧する加圧手段と、前記第1軸部材の吸込み手段と、で構成し、前記カム手段は、前記第2軸部材に回転可能に取り付けられ前記第1軸部材に共に回転可能に取り付けた第1ギアと噛み合う第2ギアの側面に設けたところの外周側凹部と内周側凹部と、これらの外周側凹部と内周側凹部の各端部に続いて設けられたそれぞれ一対の外周側第1段部と内周側第1段部と、この外周側第1段部と内周側第1段部に続いて設けられた外周側第2段部と内周側第2段部を有する回転カム部と、前記第2軸部材へ非回転かつ軸方向へスライド可能に取り付けられたところの前記回転カム部と対向する側に外周側凸部と内周側凸部から成る固定カム部を有するスライドカム部材と、で構成したことを特徴とする。
【0008】
本願発明の請求項2に係る開閉体の開閉装置は、前記取付部材を、取付板とこの取付板から屈曲して設けた側板とで構成したことを特徴とする。
【0009】
本願発明の請求項3に係る開閉体の開閉装置は、前記第1軸部材がその一端部側において前記側板へ回転可能に取り付けられることを特徴とする。
【0010】
本願発明の請求項4に係る開閉体の開閉装置は、前記連動手段を、前記第1軸部材に回転可能に取り付けた第1ギアと、前記第2軸部材に回転可能に取り付けられ前記第1ギアと噛み合う第2ギアとで構成したことを特徴とする。
【0011】
本願発明の請求項5に係る開閉体の開閉装置は、前記ストッパー手段を、前記側板に設けたストッパー片と、前記第1軸部材に共に回転可能に取り付けた第1ギアに設けられ、前記第1軸部材の所定の回転角度において前記ストッパー片に当接する凸部とで構成したことを特徴とする。
【0013】
本願発明の請求項6に係る開閉体の開閉装置は、前記フリクショントルク変動手段の前記吸込み手段を、前記カム手段を構成するところの前記第2軸部材に回転可能に取り付けられた第2ギアの側面に設けたところの外周側凹部と内周側凹部を有する回転カム部と、前記第2軸部材へ非回転かつ軸方向へスライド可能に取り付けられたところの前記回転カム部と対向する側に外周側凸部と内周側凸部から成る固定カム部を有するスライドカム部材とで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1発明によれば、第1軸部材に設けた挿通孔にハーネスなどを通すことにより、ハーネスが外部へ露出しないことからデザイン性を高めることができる上に、回転制御手段により、第1軸部材の回転を制御し、この第1軸部材に共に回転するように取り付けた開閉体の回転トルクを制御することができるものである。さらに、フリクショントルク変動手段を第1軸部材とは別に設けたので、開閉装置の幅を減少できることにより、この開閉装置を用いたモニターなどの開閉体の幅を減少できて、そのコンパクト化を図ることができるものである。その上、第1軸部材へフリクショントルク変動手段を設けないことから、軸方向の幅に余裕ができ、そこへFPC(フレキシブル基盤)を取り付けることもできるものである。
【0016】
請求項2の発明によれば、取付部材の構成を簡単にすることにより製造コストを下げることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、第1軸部材を取付部材の側板へ回転可能に取り付ける構成が簡単なので、製造コストを下げることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、連動手段の構成が簡単なので、こちらも製造コストを下げることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、取付部材の側板に設けたストッパー片と、第1ギアに設けた凸部から成るストッパー手段により、第1軸部材の回転角度を規制し開閉部材の開閉角度を制御することができるものである。
【0021】
請求項6発明によれば、前記吸込み手段を、前記カム手段を構成する前記第2ギアの側面に設けたところの外周側凹部と内周側凹部を有する回転カム部と、前記第2軸部材へ非回転かつ軸方向へスライド可能に取り付けられたところの前記回転カム部と対向する側に外周側凸部と内周側凸部から成る固定カム部を有するスライドカム部材とで構成することにより、第2ギアから第1ギアを介して第1軸部材の所定の回転角度で吸込み機能を発揮させ開閉体の操作性を向上させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る開閉装置を用いて開閉体を被開閉体へ取り付けた状態を示し、(a)はその正面図、(b)はその左側面図である。
【
図2】
図1の開閉装置を開閉体を閉じた状態で
図2のA-A線方向から見た拡大側面図である。
【
図3】
図1に示した開閉装置を正面側から見た拡大正面図である。
【
図4】
図1に示した開閉装置を平面側から見た拡大平面図である。
【
図6】本発明に係る開閉装置単体を
図5とは違う角度で見た斜視図である。
【
図7】本発明に係る開閉装置単体の平面断面図である。
【
図9】本発明に係る開閉装置の取付部材の斜視図である。
【
図10】本発明に係る開閉装置の第1軸部材を示し、(a)は斜視図、(b)は縦断面図、(c)は支持部材側から見た側面図、(d)は取付部材側から見た側面図である。
【
図11】本発明に係る開閉装置の第2軸部材を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は右側面図ある。
【
図12】本発明に係る開閉装置の第1ギアを示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【
図13】本発明に係る開閉装置の第2ギアを示し、(a)はその一面側から見た斜視図、(b)は他面側から見た斜視図、(c)縦断面図である。
【
図14】本発明に係る開閉装置のスライドカム部材を示し、(a)はその一面側から見た斜視図、(b)は他面側から見た斜視図である。
【
図15】本発明に係る開閉装置の動作を説明するもので、(a)は開閉体の開成角度0度の閉成状態を示し、(b)は開閉体の開成角度10度の開成状態を示している。
【
図16】本発明に係る開閉装置の動作を説明するもので、(a)は開閉体の開成角度100度の開成状態を示し、(b)は開閉体の開成角度210度の開成状態を示している。
【
図17】本発明に係る開閉装置の動作を説明するもので、(a)は開閉体の開閉角度とトルク変動の状態を説明するもので、(b)はこれを模擬的に図示したものである。
【
図18】本発明に係る開閉装置のカム手段の動作を模擬的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
なお、上述したように、以下の説明では自動車の前部座席の背もたれ部の背面側に取り付けられる、例えばテレビ受像機などのモニターの開閉装置を例として説明するが、このものには限定されず、広く一般的なパソコン等のディスプレイ装置や、その他のディスプレイ装置、或は広く蓋体の開閉装置としても用いることができるものである。したがって、本明細書、特許請求の範囲等においては、モニターの部分を開閉体と読み替え、背もたれの部分を被開閉体と称している。
【0025】
また、本願明細書並びに特許請求の範囲に記載された取付部材、第1軸部材、第2軸部材、支持部材、第2軸部材、回転制御手段、フリクショントルク変動手段、連動手段、カム手段、吸込み手段、ストッパー手段等の用語は、実施例に挙げた形態や構造に限定されない。以下に記載したものよりさらに広い概念を包含している。
【実施例1】
【0026】
図面によれば
図1において、自動車の前部座席(被開閉体A)の背もたれ部aの背面側には、一対の開閉装置B、B’を介してモニターから成る開閉体Cが当該背もたれ部aに設けた収容部D内に収容された状態から、使用状態の開成位置まで開閉可能となるように取り付けられている。これらの一対の開閉装置B、B’は、基本的には同じ構成のものであるが、一方のものは異なる構成のもの、例えば2軸を用いないで単に1軸だけのもの、軸部材の軸方向に貫通したハーネスの挿通孔を設けないもの、などの場合も考えられる。しかしながら、以下の説明では、左右とも同じ構成のものとして、左側の開閉装置Bについて説明し、右側の開閉装置B’のものの説明は省略する。
【0027】
なお、
図1(b)に示したように、開閉体Cの閉成状態では、この開閉体Cは、前部座席から成る被開閉体Aの背もたれ部aの背面側に設けられて収容部D内に収容され、背もたれ部aの後部へ突出しない構成となっているが、このものに限定されない。
【0028】
図2~
図14に示すように、本発明に係る開閉装置Bは、被開閉体A側の取付プレート部Eへ取り付けられる取付部材1と、この取付部材1に対し回転可能に取り付けられると共に開閉体Cを取り付けたところのその中心部軸方向を貫通する貫通孔2aを有する第1軸部材2と、この第1軸部材2の回転を制御する回転制御手段3とで構成し、この回転制御手段3を、フリクショントルク変動手段4とこのフリクショントルク変動手段4へ第1軸部材2の回転駆動力を伝達する連動手段5と、前記第1軸部材2の回転角度を規制するストッパー手段6とで構成し、前記フリクショントルク変動手段4を、前記取付部材1に対し第1軸部材2に隣接して設けた第2軸部材14と、この第2軸部材14に設けられたところのカム手段15と、このカム手段15を加圧する加圧手段7と、吸込み手段8と、で構成されている。
【0029】
取付部材1は、例えばSUSのような金属プレート製である。とくに
図8と
図9に示したように、この取付部材1は、取付板1aとこの取付板1aよりプレス加工により屈曲させて設けた側板1bとから成る断面略L字形状を呈したもので、取付板1aがそこに設けた取付孔1c、1cを介して取付ネジ1d、1dで被開閉体A側へ取り付けられる構成である。側板1bには、その平面部分に第1軸部材2を回転可能に取り付ける軸受孔1eと、この軸受孔1eに隣接して第2軸部材14を固着する取付孔1fと、後述する補強プレート25を取りつける取付孔1gが設けられている。側板1bの頂部にはさらに軸受孔1eに隣接してストッパー片1hが屈曲された状態で設けられている。なお、この取付部材1の構成は、実施例のものは構成が簡単なので安価に製造できるが、このものには限定されず、所定間隔を開けて並立させた両側板を有するものとすることは強度的に望ましい。さらに、材料としてはSUSのような金属製に限らず、例えばABSのような機械的強度のある合成樹脂製としても良い。
【0030】
第1軸部材2(公知技術のヒンジシャフトに相当)は、とくに
図8と
図10に示したような構成を有し、その中心部軸方向を貫通して開閉体C側から引き出される後述するハーネスHなどを通す貫通孔2aが設けられた、同じくSUSのような金属製の筒状のものである。この第1軸部材2は、中央部の軸部2bと、この軸部2bの一端部側の取付部材1側に設けた第1変形部2cと、この第1変形部2cに続いて設けられた口径の大きな第2変形部2dと、この第2変形部2dを設けた側とは反対側の端部に設けた支持部材9を固定するための第3変形部2eとを有している。この第1軸部材2は第2変形部2dに連動手段5の第1ギア10の中心部軸方向に設けた変形孔10aへ挿通係合させ、次いで、スペーサーワッシャー11の中心部軸方向に設けた変形孔11aへ挿通係合させ、第1変形部2cを取付部材1の側板1bに設けた軸受孔1eに通し、側板1bの反対側に突出した当該第1変形部2cへ係止リング12を中心部軸方向に設けた変形孔12aに通した上で、突出した第1変形部2cの端部を加締めることによって、軸方向へ移動規制された状態で、側板1bに対し回転可能に取り付けられている。第3変形部2eには、支持部材9がその面部に設けた変形取付孔9aを挿通係合させ、突出した第3変形部2eの露出端部を加締めることにより第1軸部材2と共に回転するように取り付けられている。実施例のものは、この支持部材9には取付孔9b、9bが設けられ、この取付孔9b、9bを介して取付ネジ13、13で開閉体Cの側部が取り付けられている。尚、開閉体Cは支持部材9を用いず直接第1軸部材2を取り付けるように構成することもできる。さらに、第1軸部材2は、その幅方向へフリクショントルク変動手段を設けないことから、FPC(フレキシブル基盤)を取り付けるスペースを確保できるものである。
【0031】
回転制御手段3は、フリクショントルク変動手段4と、このフリクショントルク変動手段4と前記第1軸部材2を互いに連動させる連動手段5と、前記第1軸部材2の回転角度を規制するストッパー手段6とで構成されており、フリクショントルク変動手段4は、前記取付部材1に第1軸部材2に隣接して設けた第2軸部材14と、この第2軸部材14に設けられたところのカム手段15と、このカム手段15を加圧する加圧手段7と、前記第1軸部材2の吸込み手段8とで構成されている。
【0032】
連動手段5は、第1軸部材2に回転を拘束されて取り付けられた第1ギア10と、この第1ギア10と噛み合い第2軸部材14に回転自在に取り付けられた第2ギア16から成る。この連動手段5は、実施例のものに限定されず、中間ギアを用いて第1ギア10から第2ギア16へ駆動力を伝達するように構成したり、傘歯車を用いる実施例などが考えられる。第2ギア16は、一方の側に回転カム部18が設けられ、他方の側に窪所16bが設けられており、この窪所16bにその中心部軸方向に円形挿通孔24aを設け、その面部に潤滑油保持用の小孔24b、24b・・を設けたワッシャー24が嵌め込まれ第2ギア16と第2軸部材14の大径部14bとの間に介在させられている。尚、大径部14bに設けた係合凹部14aはワッシャー24に設けた係合片24cと係合している。
ストッパー手段6は、側板1bに設けたストッパー片1hと第1ギア10に設けた係合凸部10bとで構成され、第1軸部材2を所定の回転角度で回転規制させ、開閉体Cの開閉角度を制限するものである。
【0033】
フリクショントルク変動手段4を構成する第2軸部材14は、とくに
図8と
図11に示したように、取付部材1の側板1bに設けた軸受孔1eに隣接して設けた取付孔1fに挿通される外周に係合凹部14aを有する大径部14bと、この大径部14bを挟んで一方に設けた第1変形軸部14cと、大径部14bの他方側に軸心を共通にして設けた小径部14dからなり、小径部14dには大径部14bに続いて円形軸部14eが設けられ、この円形軸部14eに続いてさらに第2変形軸部14fと第3変形軸部14gが設けられ、第3変形軸部14gには雄ネジ部14hが設けられている。この第2軸部材14は、大径部14bを取付孔1fに挿入させ、側板1bの反対側へ突出した第1変形軸部14cを、補強プレート25に設けた変形取付孔25aへ挿通させてその先端側を突出させ、さらに突出した突出部分を加締めることにより、非回転に取付部材1の側板1bへ取り付けられている。補強プレート25には前述した変形取付孔25aの他に取付孔25b、25bが設けられ、この取付孔25b、25bを通した取付ネジ15c、15cで側板1bに設けた取付孔1g、1gへ固着される構成である。なお、この固着方法は取付ネジに変えて加締めピンを用いても良い。
【0034】
次に、同じくフリクショントルク変動手段4を構成するカム手段15は、その中心部軸方向に設けた挿通孔16aに第2軸部材14の円形軸部14eを通して回転自在に設けたところの連動手段5の第2ギア16の一側面側に設けた回転カム部18と、第2軸部材14に第2ギア16に隣接してその中心部軸方向に設けた変形挿通孔19aに第2軸部材14の第2変形軸部14fを通して回転を規制されて設けられているが軸方向へ移動可能に設けられた固定カム部20を有するスライドカム部材19とで構成されている。回転カム部18は、同心状に半径方向へ対向して設けた外周側凹部18aと内周側凹部18bと、各外周側凹部18aと内周側凹部18bの両端部から続いて設けられた外周側第1段部18c、18cと内周側第1段部18d、18dと、この各外周側第1段部18c、18cと内周側第1段部18d、18dに続いて設けられた一段軸方向へ高くした外周側第2段部18eと内周側第2段部18fとから形成されている。固定カム部20は、スライドカム部材19の第2ギア16に設けた回転カム部18と対向する側に、同心状に外周側凸部20aと内周側凸部20bから構成されている。回転カム部18と固定カム部20は、加圧手段7により常時互いに圧接状態にある。
【0035】
この加圧手段7は、スライドカム部材19に隣接して設けられ、第2軸部材14の第2変形軸部14fにその変形挿通孔22a、22a・・・を挿通係合させつつ軸方向へ移動可能に重ねて設けられた複数枚の皿バネ22、22・・・と、第2軸部材14の雄ネジ部14hにネジ着された締付けナット23とで構成され、常にスライドカム部材19に設けた固定カム部20を第2ギア16に設けた回転カム部18側へ押圧している。
【0036】
吸込み手段8は、回転カム部18に設けた外周側凹部18a及び内周側凹部18bと固定カム部20側に設けられた外周側凸部20aと内周側凸部20bとで構成されており、開閉体Cの閉成位置において吸込み機能を発揮し、開閉体Cを自動的に閉成方向へ回転付勢させるものである。ストッパー手段6は、取付部材1の側板1bに設けたストッパー片1hと第1ギア10に設けた係合凸部10bとで構成され、第1軸部材2を所定の回転角度で回転規制させ、開閉体Cの開閉角度を制限するものである。
【0037】
次に、本発明に係る開閉装置の動作について説明する。まず、開閉体Cであるモニターの開閉操作時のトルク変動は
図17の(a)に示してある。上側が開成時のトルク変動を示し、下側が閉成時のトルク変動を示している。開閉体Cは、被開閉体Aである前部座席の背もたれ部aの後部に設けたところの正面視略矩形状の収容部Dに開閉装置B、B’を介して収容されている。この収容状態が閉成状態であり、
図17(a)と(b)に示したように0度である。この状態において、吸込み手段8を構成するスライドカム部材19の固定カム部20の外周側凸部20aと内周側凸部20bは、
図18の(f)に示したように、第2ギア16に設けた回転カム部18の外周側凹部18aと内周側凹部18bに落ち込んでおり、かつ加圧手段7によってスライドカム部材19が回転カム部18側へ押圧されているため、開閉体Cはその自重により図中反時計方向へ回転付勢されるが、閉成状態を安定的に保っており、自動車の揺れや振動によっては、自動的に反時計方向へ回転してしまうことはなく安定的に閉成状態を保っている。
【0038】
次に、開閉体Cであるモニターを視聴すべくその下側に手をあてがい上方へ持ち上げると、支持部材9を介して第1軸部材2が回転し開閉体Cは開かれ始めるが、
図17と
図18(e)と(d)に示したように、最初の10度までは第2ギア16側の回転カム部18の外周側凹部18aと内周側凹部18bとスライドカム部材19の固定カム部20の外周側凸部20aと内周側凸部20bから脱出する際の抵抗に遭遇するが、若干力を籠めることによって開かれ始める。その後同じく
図17と
図18の(c)に示したように、10度から100度までの開成角度範囲においては、外周側凸部20aと内周側凸部20bがスライドカム部材19の外周側第1段部18c、18cと内周側第1段部18d、18d上に移動することから、フリーストップに開かれる。この100度の開成角度からさらに開閉体Cを押し上げると、
図17と
図18の(b)に示したように、スライドカム部材19の固定カム部20の外周側凸部20aと内周側凸部20bが、回転カム部18の外周側第2段部18eと内周側第2段部18f側へ移動するため、さらに強いフリクショントルクが創出され、閉成方向へ回転しようとする開閉体Cの回転トルクを上回るフリクショントルクが創出される。そのため開閉体Cはフリーストップで開かれ自重で閉じられてしまうことはない。この最大開成角度は210度であるが、実際にはヘッドレスト部bに突き当たるので190度前後になる。この状態で、開閉体Cの開成位置は安定し、フリクション
トルクにより、自動車の揺れや振動によって、回転してしまうことはないものである。
【0039】
開いた開閉体Cを閉じる際には、
図17のトルク変動を示すように、開く際とは逆のトルク変動が発生し、開閉体Cは
図18の(a)から(f)に示したように、元の0度の位置まで閉じられる。この際に、開閉体Cの10度の閉成角度からは吸込み手段8による吸込み動作が生じ、開閉体Cは自動的に0度まで閉じられることになる。この状態が開閉体Cが収容部Dへ収容された状態である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、以上のように構成したので、ハーネスを用いた場合には外部から見えないようにでき、さらに開閉装置の幅を縮小できることにより、この開閉装置を用いる開閉体の幅を減少してコンパクト化を図ることのできた上で、FPC(フレキシブル基盤)の取付も可能である、とくに車載用モニターから成る開閉体開閉装置として、さらに広く電子機器からなる開閉体を被開閉体へ開閉可能に取り付ける開閉装置として好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0041】
A 被開閉体(前部座席)
a 背もたれ部
B、B’ 開閉装置
C 開閉体(モニター)
D 収容部
E 取付プレート
H ハーネス
1 取付部材
1a 取付板
1b 側板
1e 軸受孔
1f 取付孔
2 第1軸部材
2a 貫通孔
2b 軸部
3 回転制御手段
4 フリクショントルク変動手段
5 連動手段
6 ストッパー手段
7 加圧手段
8 吸込み手段
9 支持部材
10 第1ギア
14 第2軸部材
15 カム手段
16 第2ギア
18 回転カム部
18a 外周側凹部
18b 内周側凹部
18c 外周側第1段部
18d 内周側第1段部
18e 外周側第2段部
18f 内周側第2段部
19 スライドカム部材
20 固定カム部
20a 外周側凸部
20b 内周側凸部
25 補強プレート