(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】テープ巻取り用治具及び小巻テープ
(51)【国際特許分類】
B65H 18/10 20060101AFI20220609BHJP
B65H 18/28 20060101ALI20220609BHJP
B25F 3/00 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B65H18/10
B65H18/28
B25F3/00 Z
(21)【出願番号】P 2018106028
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】518195069
【氏名又は名称】小林 太
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】小林 太
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-173904(JP,A)
【文献】特開2017-001823(JP,A)
【文献】実開昭58-045249(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/00-18/28
B25F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動の回転工具に装着することができるテープ巻取り用治具であって、
前記電動の回転工具に着脱可能な連結部と、
前記連結部から延び、テープを巻取り可能な細い棒状の巻取部と、
前記巻取部の長手方向に延びるように設けられ、テープを差し込み可能であるスリット状の開口部と、を備え
、
前記開口部は、前記巻取部の長手方向における前記連結部とは反対側の先端部に開放せず、前記巻取部を貫通するように形成されるテープ巻取り用治具。
【請求項2】
前記電動の回転工具は、電動ドライバである請求項1に記載のテープ巻取り用治具。
【請求項3】
前記開口部は、前記巻取部の回転軸を通り、かつ回転軸に対して垂直に貫通することにより形成される請求項1又は2に記載のテープ巻取り用治具。
【請求項4】
電動の回転工具に着脱可能な連結部、前記連結部から延び、テープを巻取り可能な細い棒状の巻取部、及び前記巻取部の長手方向に延びるように設けられ、テープを差し込み可能であるスリット状の開口部、を有するテープ巻取り用治具と、
前記テープ巻取り用治具に巻き付けられたテープと、を備え
、
前記開口部は、前記巻取部の長手方向における前記連結部とは反対側の先端部に開放せず、前記巻取部を貫通するように形成される小巻テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ巻取り用治具及び小巻テープに関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンディショナ等の空調設備の設置や保守作業において、壁と近接した配管、密集した配管と配管との間等の狭い空間で、保護テープ、断熱シート等を配管に巻き付ける場合がある。上記のような狭い空間では、テープの巻径が大きい場合、配管と壁との間等にテープを通すことが困難であり、配管に巻き付けることが容易ではない。市販のテープは芯の径が大きいため、現場の作業者は、径の小さい棒状物に市販のテープを巻き取って小巻テープを作成している。
【0003】
例えば、特許文献1には、電動ドライバを用いてテープを巻き取る治具が記載されている。電動ドライバから回転力を伝達する伝達部材に捲回部材を取り付け、テープを捲回部材に巻き付けている。これにより、作業者が手で巻いて行っていた小巻のテープの作成時間及び作業負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、治具の捲回部材の外周面にテープの端部を軽く押し付けながら、電動ドライバの動作を開始して、捲回部材にテープを巻き付けている。しかし、特許文献1に記載の治具では、幅の狭いテープ、粘着力の弱いテープ、非粘着テープ等を用いた場合、捲回部材の表面にテープがうまく固定されず巻き始めにズレが生じるおそれがある。ズレが生じた状態でテープを巻き取り続けることにより、巻き取られたテープに皺や捩れが生じ、場合によっては、テープを巻き直す必要も生じる。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、巻き崩れを生じさせることなくテープを迅速に巻き取ることができるテープ巻取り用治具及び小巻テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電動の回転工具に装着することができるテープ巻取り用治具であって、前記電動の回転工具に着脱可能な連結部と、前記連結部から延び、テープを巻取り可能な細い棒状の巻取部と、前記巻取部の長手方向に延びるように設けられ、テープを差し込み可能であるスリット状の開口部と、を備えるテープ巻取り用治具に関する。
【0008】
前記電動の回転工具は、電動ドライバであることが好ましい。
【0009】
前記開口部は、前記巻取部の回転軸を通り、かつ回転軸に対して垂直に貫通することにより形成されることが好ましい。
【0010】
また本発明は、電動の回転工具に着脱可能な連結部、前記連結部から延び、テープを巻取り可能な細い棒状の巻取部、及び前記巻取部の長手方向に延びるように設けられ、テープを差し込み可能であるスリット状の開口部、を有するテープ巻取り用治具と、前記テープ巻取り用治具に巻き付けられたテープと、を備える小巻テープに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、巻き崩れを生じさせることなくテープを迅速に巻き取ることができるテープ巻取り用治具及び小巻テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るテープ巻取り用治具の電動ドライバへの装着前後の状態を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るテープ巻取り用治具を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るテープ巻取り用治具を示す正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るテープ巻取り用治具を示す左側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るテープ巻取り用治具を示す右側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る小巻テープを示す斜視図である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係るテープ巻取り用治具によるテープ巻取り開始時の態様を示す斜視図である。
【
図7B】本発明の一実施形態に係るテープ巻取り用治具によるテープの巻取り完了時の態様を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る小巻テープをエアコンディショナの配管に巻き付ける様子を斜め下方から見た斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る小巻テープをエアコンディショナの配管に巻き付ける様子を斜め下方から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本実施形態に係るテープ巻取り用治具10の電動ドライバ20への装着前後の状態を示す正面図である。本実施形態に係るテープ巻取り用治具10は、電動ドライバ20等の回転工具に装着して用いられ、回転させて市販のテープを巻き取ることが可能な治具である。
【0015】
電動ドライバ20は、本体部21と、チャック部22と、を含む汎用の電動ドライバであり、チャック部22にテープ巻取り用治具10が装着される。
【0016】
本実施形態に係るテープ巻取り用治具10の構成について説明する。
図2はテープ巻取り用治具10の斜視図、
図3はテープ巻取り用治具10の正面図、
図4はテープ巻取り用治具10の左側面図、
図5はテープ巻取り用治具10の右側面図である。
図1から
図5に示すように、テープ巻取り用治具10は、電動の回転工具に着脱可能な連結部11と、テープを巻取り可能な巻取部12と、テープを差し込み可能な開口部13と、を含んで構成される。連結部11及び巻取部12は一体的に形成される。
【0017】
連結部11は、電動ドライバ20との連結部位である。連結部11は、その一端側が電動ドライバ20のチャック部22に嵌挿可能に構成される。
図2から
図5に示すように、本実施形態に係る連結部11の形状は六角柱状である。連結部11の径のサイズについては、電動ドライバ20に装着可能なサイズであればよい。
【0018】
巻取部12は、連結部11の他端から長手方向に延びる細長い円柱であり、後述するテープ30(
図6参照)が巻き付けられる部位である。巻取部12の径は、径の小さいテープを作成できるサイズであれば特に制限されない。なお、本実施形態に係る巻取部12の径のサイズは連結部11の径よりも小さい。巻取部12の長さは、巻取り対象となる市販のテープの幅に応じて設定することが好ましい。
【0019】
開口部13は、
図3に示すように、テープ30を差し込むことが可能なスリット状の開口部であり、巻取部12の長手方向に延びるように設けられる。開口部13は、巻取部12の外周から回転軸を通り、回転軸に対して垂直に反対側の外周へ貫通するように形成される。巻取部12の外周に形成される開口部13の大きさは、市販のテープの幅及び厚さに応じて設定することが好ましい。
【0020】
本実施形態のテープ巻取り用治具10を用いて形成される小巻テープ100について説明する。本実施形態に係る小巻テープ100は、エアコンディショナ等の空調機器の配管と壁の間等の狭い空間での施工に用いられる。
【0021】
図6は、本実施形態に係る小巻テープ100を示す斜視図である。
図6に示すように、小巻テープ100は、テープ巻取り用治具10と、テープ巻取り用治具10に巻き付けられたテープ30と、を備える。
【0022】
テープ巻取り用治具10に巻き付けられるテープ30は、薄い帯状のものが用いられる。例えば、粘着性テープ、非粘着性テープ、断熱シート等がテープ30として挙げられる。小巻テープ100の巻径は、施工される作業スペースに応じて適宜調整される。
【0023】
以下、本実施形態に係るテープ巻取り用治具10の使用形態について、
図1、7A、及び7Bを参照しながら説明する。
図7Aは、テープ巻取り用治具10によるテープ30の巻取り開始時の態様を示す斜視図である。
図7Bは、テープ巻取り用治具10によるテープ30の巻取り完了時の態様を示す斜視図である。
【0024】
まず、
図1に示すように、電動ドライバ20にテープ巻取り用治具10が装着される。具体的には、テープ巻取り用治具10の連結部11が、電動ドライバ20のチャック部22に嵌挿されることにより固定される。
【0025】
次に、
図7Aに示すように、径の大きな芯に巻かれているテープ30の端部が、上記テープ巻取り用治具10の開口部13に挿通される。そして、反対側の開口部13から引き出されたテープ30を、巻取部12の外周面に向かって折り返して押さえ付ける。これにより、テープ30が巻取部12に安定して固定される。さらに、電動ドライバ20を操作して、テープ巻取り用治具10を低速で回転させる。数周巻き付けた後、回転速度を上げる。これにより、迅速かつ正確にテープ30を巻き換えることができる。
【0026】
ここで、巻取部12の外周面が滑らかであり、開口部13等が形成されていないテープ巻取り用冶具10の場合、巻取部12の外周面にテープ30を押し当てながらテープ30を巻き取ることになる。しかし、特に、幅が狭いテープ、粘着力の弱いテープ、非粘着性テープ等を用いると、テープ30が巻取部12の外周面を滑りズレが生じるおそれがある。ズレが生じた状態でテープ30を巻き取り続けることにより、巻き取られたテープ30に皺や捩れが生じ、場合によっては、テープ30を巻き直す必要も生じる。
【0027】
これに対して、本実施形態に係るテープ巻取り用治具10は、巻取部12に開口部13が形成されている。上述したように、テープ30を開口部13に挿通させて巻取部12の外周面に向かって折り返して押さえ付けることにより、テープ30の巻始め端部をより安定して固定することができる。これにより、皺や捩れ等のテープ30の巻き崩れを抑制すると共に、迅速にテープ30を巻き取ることが可能となる。
【0028】
図7Bに示すように、テープ30が巻き付けられたテープ巻取り用治具10は、電動ドライバ20から取り外される。これにより、小巻テープ100が得られる。なお、テープ30の巻取り量を増やし小巻テープ100の径を大きくすると、壁と近接した配管、密集した配管と配管との間等に通すことができなくなるおそれがあるため、上述のように、テープ30の巻取り量は、テープを使用する配管等の設置状況に応じて調整することが好ましい。
【0029】
テープ巻取り用治具10に巻き付けられたテープ30を使い切った後、再度上述した工程により、テープ巻取り用治具10を電動ドライバ20に装着して、テープ30を巻き付ける。これにより、何度でも簡単に小巻テープ100を作成することができる。このように、テープ巻取り用治具10は、市販のテープの芯と異なり使い捨てではなく、再利用可能であるため、部品点数が抑えられると共に経済的である。また、不要なゴミが発生しないという利点もある。
【0030】
以下、本実施形態に係る小巻テープ100の使用方法について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。
図8は、室内の壁50にエアコンディショナ40を設置するため、小巻テープ100を使用して、エアコンディショナ40の裏側から延びる複数の配管41を束ねる様子を斜め下から見た図である。
図9は、
図8の破線部分の拡大図であり、小巻テープ100を配管41に巻き付けている様子を示す図である。
【0031】
図8に示すように、エアコンディショナ40の複数の配管41は、エアコンディショナ40の裏側からエアコンディショナ40と壁50との間を通り、壁穴51を抜け、屋外の室外機(図示せず)に接続されている。エアコンディショナ40は、完全に壁50に設置されておらず、上部のみ壁50に取り付けられ下部が浮いた状態であるが、配管41と壁50との隙間は狭い。このため、市販の芯が太いテープを隙間に通すことは困難である。
【0032】
これに対して、小巻テープ100の芯であるテープ巻取り用治具10の径は十分小さいため、テープ30の巻取り量を調整すれば、
図9に示すように、テープをさらに小分けすることなく、小巻テープ100を配管41と壁50との隙間に通してテープ30を配管41に巻き付けることができる。
【0033】
以上説明した実施形態に係る取巻き用治具10又は小巻テープ100によれば、以下のような効果を奏する。
【0034】
テープ巻取り用治具10は、電動の回転工具に着脱可能な連結部11と、連結部11から延び、テープを巻取り可能な細い棒状の巻取部12と、巻取部12に設けられたスリット状の開口部13と、を備える。
【0035】
この構造のテープ巻取り用治具10を電動の回転工具に装着して、テープ巻取り用治具10を回転させながらテープ30を巻き取ることにより、テープ30の巻取り時間を短縮することができる。また、テープ30を巻き始める際に、スリット状の開口部13にテープ30を差し込み、テープ30の位置がズレないように規制することができる。これにより、テープ30の巻き崩れの発生が抑制される。よって、市販のテープよりも径の小さい小巻テープ100の作成作業の効率を向上することができる。
【0036】
電動の回転工具として、電動ドライバ20を用いる。電動ドライバ20は、施工現場で汎用されている工具であり、持ち運びが容易な上、回転数の調整も可能である。よって、利便性が向上する。
【0037】
上記開口部13は、上記巻取部12の回転軸を通り、かつ回転軸に対して垂直に貫通することにより形成される。このため、テープ30を開口部13に挿通させて巻取部12の外周面に向かって折り返し押さえ付けることができる。これにより、テープ30の巻始め端部がより安定して固定される。
【0038】
小巻テープ100は、電動の回転工具に着脱可能な連結部11、連結部11から延び、テープを巻取り可能な細い棒状の巻取部12、及び巻取部12の長手方向に延びるように設けられ、テープを差し込み可能であるスリット状の開口部13、を有するテープ巻取り用治具10と、テープ巻取り用治具10に巻き付けられたテープ30と、を備える。
【0039】
この構造により、テープ30の巻取り量を調整すれば、狭い空間でもテープを対象物に巻き付けることが可能となる。また、テープ30を使い切った後、再度、テープ巻取り用治具10を電動ドライバ20に装着して、テープ30を巻き付ける。これにより、何度でも簡単に小巻テープ100を作成することができる。このように、テープ巻取り用治具10は、市販のテープの芯と異なり使い捨てではなく、再利用可能であるため、部品点数が抑えられると共に経済的である。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく適宜変更が可能である。
【0041】
上記実施形態では、電動の回転工具として電動ドライバ20を用いているが、テープ巻取り用治具10を装着でき、回転させることができる回転工具であれば特に制限はない。
【0042】
上記実施形態では、テープ巻取り用治具10の形状は細長い棒状であるが、電動ドライバ20等の回転工具に装着可能であり、かつ、径の小さいテープを作成できる形状であれば特に制限されない。
【0043】
上記実施形態では、連結部11の形状は六角柱状であるが、電動ドライバ20等の回転工具に脱着可能な形状であれば特に制限されず、例えば、四角、五角、七角等の多角柱状であっても、円柱状であってもよい。
【0044】
上記実施形態では、開口部13が巻取部12の外周から反対側の外周へ貫通して形成される例を説明したが、開口部13を貫通孔とせず、巻取部12の外周面に形成された凹溝としてもよい。この構造により、テープ30を巻き始める際に、凹溝である開口部13にテープ30の端部を差し込むことができるため、テープ30の位置を規制しやすい。このため、テープ30の巻き崩れを抑制する効果が期待できる。
【符号の説明】
【0045】
10 テープ巻取り用治具
11 連結部
12 巻取部
13 開口部
30 テープ
100 小巻テープ