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特許7085411フレキソ印刷機、及び該印刷機を用いた印刷フィルムの製造方法
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  • 特許-フレキソ印刷機、及び該印刷機を用いた印刷フィルムの製造方法 図1
  • 特許-フレキソ印刷機、及び該印刷機を用いた印刷フィルムの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】フレキソ印刷機、及び該印刷機を用いた印刷フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 5/18 20060101AFI20220609BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220609BHJP
   B41F 5/04 20060101ALI20220609BHJP
   B41M 1/04 20060101ALI20220609BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B41F5/18
B32B27/32 E
B41F5/04 A
B41M1/04
B41M1/30 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018107045
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019209580
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】天野 詠一
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩司
(72)【発明者】
【氏名】小代 康敬
(72)【発明者】
【氏名】佐坂 利桂
(72)【発明者】
【氏名】小田 克郎
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-141403(JP,A)
【文献】特開2000-033665(JP,A)
【文献】特開2005-225083(JP,A)
【文献】特開2005-310409(JP,A)
【文献】特開2005-047185(JP,A)
【文献】特開2007-112128(JP,A)
【文献】特開2016-132755(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0377512(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0262902(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011053747(DE,A1)
【文献】特開2001-030612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0290926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/18
B32B 27/32
B41F 5/04
B41M 1/04
B41M 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材を沿わせるためのセンタードラムと、該センタードラムの周囲に設置された複数の印刷ユニットと、を備えるセンタードラム方式のフレキソ印刷機において、
前記複数の印刷ユニットのうち、上流側に位置する1又は複数の印刷ユニットはゴム版を備え、該1又は複数の印刷ユニットよりも下流側に位置する印刷ユニットは樹脂版を備える
ことを特徴とするフレキソ印刷機。
【請求項2】
請求項1記載のフレキソ印刷機を用いた印刷フィルムの製造方法であって、
フィルム基材の一方の表面に、前記ゴム版を備える印刷ユニットを用いて、アンカーコート剤を塗工するアンカーコート剤塗工工程と、
該アンカーコート剤塗工工程により形成されたアンカーコート層上に、前記樹脂版を備える印刷ユニットを用いて、インキを塗工するインキ塗工工程と、を順に備える
ことを特徴とする印刷フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記フィルム基材がコロナ放電処理されていない
ことを特徴とする請求項2記載の印刷フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フィルム基材は、前記一方の表面がポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン層で形成されており、
前記アンカーコート剤は、
ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂を溶解させる溶剤と、を含む
ことを特徴とする請求項2または3記載の印刷フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記溶剤が、エステル系溶剤及び/又はエーテル系溶剤を主成分とする
ことを特徴とする請求項4記載の印刷フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記アンカーコート剤に含まれるポリオレフィン系樹脂が、
塩素化度が35%よりも低い塩素化ポリオレフィンであって、重量平均分子量が3万以上20万以下である
ことを特徴とする請求項4または5記載の印刷フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷機、及び該印刷機を用いた印刷フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ麺、乳酸菌飲料、乾電池などの商品は、通常、プラスチックフィルム等によって包装された状態で提供販売される。かかる包装には種々の形態があり、製造ラインで自動包装する形態として、例えば、シュリンク包装(熱収縮包装)が挙げられる。
【0003】
シュリンク包装(熱収縮包装)は、様々なメリット(例えば、被包装物品の形状などに係わらずフィルムを被包装物品に密着させた包装が可能である、複数の物品でも一纏めに固定保持して包装することができる等)を有していることから、種々の被包装物品の包装への採用が進んでいる。そして、見た目の向上や宣伝効果を得るために、包装する熱収縮性フィルム自体にさまざま図柄や文字の印刷が施されている。
【0004】
熱収縮性フィルムの素材としては、通常、熱融着および熱収縮しやすいポリオレフィン系樹脂が採用されているが、中でもフィルム化した際に高光沢となるポリプロピレン系樹脂が好適に採用されている。
しかしながら、熱収縮性フィルムの表面(印刷面)がポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂層の場合、インキの定着性が低くなるという問題が発生している。そこでポリオレフィン系樹脂層に印刷を施す際は、予めフィルムにコロナ放電処理を施し、ポリオレフィン系樹脂層のぬれ性を高める方法がとられている。
【0005】
コロナ放電処理は、フィルムの印刷適性を向上させる反面、熱シール性を低下させるという問題がある。シュリンク包装時、熱収縮性フィルムは被包装物品を覆うように、適当な大きさにカットされ、端縁が熱シールされる。
印刷面と熱シールされる面が異なる場合(いわゆる表印刷の場合)、熱シールされる面はコロナ放電処理が施されないので、熱シール部分の強度は維持される。しかしながら、印刷がシュリンク包装体の最表面に位置するため、該包装体を輸送する際などに、印刷が剥れたり傷ついたりする恐れがある。印刷面と熱シールされる面が同じ場合(いわゆる裏印刷の場合)、印刷はシュリンク包装体の最表面には位置せず、印刷が剥れたり傷ついたりする恐れは低い。しかしながら、熱シールされる面にコロナ放電処理が施されることとなり、熱シール部分の強度が弱くなる。そして包装直後、或いはその後の収縮トンネル内等において、熱シール部が開いてしまうという問題があった。
このような問題を解決する為に、後工程においてヒートシールされる部分を除いてコロナ放電処理を施すことも検討した。しかしながらコロナ放電処理は、その構造上の特徴から、フィルムの流れ方向と平行に処理をしない箇所を設定することは可能であるが、フィルムの幅方向と平行に、正確に未処理部分を設定することはできなかった。
【0006】
従来、上記問題を解消するため、フィルム基材の印刷面に、後工程にて熱シールされる部分を除いて、断続的にアンカーコート剤(ポリオレフィン系樹脂を溶剤に溶解させたもの)を塗工してアンカーコート層を設け、該アンカーコート層上にインキ層を形成する印刷方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、グラビア印刷機を用いて、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムに塩素化ポリオレフィン系樹脂を含むアンカーコート層を形成し、このアンカーコート層の上にウレタン系樹脂を含むデザイン印刷層を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-141403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、フィルム印刷には、一般的に、フレキソ印刷とグラビア印刷が採用されている。フレキソ印刷は、樹脂製の樹脂版を使用するので、細かい文字やシャープな表現の印刷を得意とし、センタードラムを採用した印刷機においては、見当精度および印刷速度がグラビア印刷に比べて優れている。一方、グラビア印刷は、濃淡を明確に印刷することができるので、陰影や質感、グラデーションなどの表現の印刷を得意とする。そして、金属製の金属版を使用するので、版の耐久性が樹脂製の樹脂版を使用するフレキソ印刷と比べて優れている。
【0009】
特許文献1の技術では、フレキソ印刷と比べて細かい文字やシャープな表現を再現しにくい等の問題を有しているほか、フレキソ印刷と比べてインキを多量に使用するので溶剤の使用量も多くなり、環境規制への対応が難しくなるという問題もある。
尚、特許文献1に開示されたアンカーコート層は、塩素化ポリオレフィン系樹脂がトルエンなどの有機溶剤に溶解されたコート液により形成されている。フレキソ印刷機の樹脂版は、トルエンなどの有機溶剤によって膨潤し易い為、特許文献1記載のコート液をフレキソ印刷機にてフィルム基材に塗工すると、すぐに樹脂版が膨潤し、所望の量のコート液を塗工することができなくなる。
【0010】
またアンカーコート剤は透明であるため、塗工された位置をセンサーなどで感知し、塗工位置のずれを補正することができない。その為、特許文献1に開示された技術では、アンカーコート層とデザイン印刷層との正確な見当合わせ(位置合わせ)が困難であった。薄膜の熱収縮性フィルムは、各印刷ユニット間で若干の伸びが発生することがあり、特に見当合せが困難である。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、コロナ放電処理されていないフィルム基材に対しても、品質の高い印刷を、長期間にわたって行うことができる印刷機の提供を目的とする。また、該印刷機を用いた印刷フィルムの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(フレキソ印刷機)
第1発明のフレキソ印刷機は、フィルム基材を沿わせるためのセンタードラムと、該センタードラムの周囲に設置された複数の印刷ユニットと、を備えるセンタードラム方式のフレキソ印刷機において、前記複数の印刷ユニットのうち、上流側に位置する1又は複数の印刷ユニットはゴム版を備え、該1又は複数の印刷ユニットよりも下流側に位置する印刷ユニットは樹脂版を備えることを特徴とする。
(印刷フィルムの製造方法)
第2発明の印刷フィルムの製造方法は、第1発明のフレキソ印刷機を用いた印刷フィルムの製造方法であって、フィルム基材の一方の表面に、前記ゴム版を備える印刷ユニットを用いて、アンカーコート剤を塗工するアンカーコート剤塗工工程と、該アンカーコート剤塗工工程により形成されたアンカーコート層上に、前記樹脂版を備える印刷ユニットを用いて、インキを塗工するインキ塗工工程と、を順に備えることを特徴とする。
第3発明の印刷フィルムの製造方法は、第2発明において、前記フィルム基材がコロナ放電処理されていないことを特徴とする。
第4発明の印刷フィルムの製造方法は、第2発明または第3発明において、前記フィルム基材は、前記一方の表面がポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン層で形成されており、前記アンカーコート剤は、ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂を溶解させる溶剤と、を含むことを特徴とする。
第5発明の印刷フィルムの製造方法は、第4発明において、前記溶剤が、エステル系溶剤及び/又はエーテル系溶剤を主成分とすることを特徴とする。
第6発明の印刷フィルムの製造方法は、第4発明または第5発明において、前記アンカーコート剤に含まれるポリオレフィン系樹脂が、塩素化度が35%よりも低い塩素化ポリオレフィンであって、重量平均分子量が3万以上20万以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
(フレキソ印刷機)
第1発明によれば、上流側に位置する印刷ユニットがゴム版を備える為、樹脂版を膨潤させる溶剤を含むアンカーコート剤であっても、該印刷ユニットによりフィルム基材に塗工することができる。また、下流側に位置する印刷ユニットが樹脂版を備える為、該印刷ユニットによりインキを塗工することにより、細かい文字やシャープな表現の印刷が可能である。また、センタードラム方式を採用することによって、フィルム基材の伸びが抑制され、透明なアンカーコート剤であっても位置ずれを起こすことなく塗工することができる。
(印刷フィルムの製造方法)
第2発明によれば、フィルム基材とインキ層との間にアンカーコート層を備える印刷フィルムを製造することができる為、フィルム基材にインキを適切に定着させることができる。また、アンカーコート剤がゴム版により塗工されるため、版の膨潤が抑制され、長期間連続して印刷することができる。
第3発明によれば、フィルム基材がコロナ放電処理されていない為、得られる印刷フィルムの熱シール性は良好であり、被包装物品を包装する際に、熱シール部が開き難い(剥離し難い)。
第4発明によれば、フィルム基材のアンカーコート剤が塗工される層と、アンカーコート剤とが、共にポリオレフィン系樹脂を含むため、フィルム基材にアンカーコート剤を適切に定着させることができる。
第5発明によれば、アンカーコート剤に含まれる溶剤がエステル系溶剤及び/又はエーテル系溶剤を主成分とするので、作業者への負担や環境負荷を低減することができる。
第6発明によれば、アンカーコート剤に含まれるポリオレフィン系樹脂が所定の物性を有しているので、エステル系溶剤及び/又はエーテル系溶剤、特にエステル系溶剤に適切にポリオレフィン系樹脂を溶解させることができ、インキをフィルム基材により強固に定着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の印刷フィルムFの概略説明図である。
図2】(A)は印刷ユニット20、30を備えた本実施形態のフレキソ印刷機1の概略説明図であり、(B)は本実施形態のフレキソ印刷機1のセンタードラム2の周囲に配置されるゴム版印刷ユニット20の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態のフレキソ印刷機は、フィルム基材の一方の表面に図柄などを印刷する設備であり、該表面がポリオレフィン層であっても、コロナ放電処理することなく、図柄等を適切に印刷することができる。
【0016】
まず、本実施形態のフレキソ印刷機1の具体的な構造を説明する前に、フレキソ印刷機1を用いて製造された印刷フィルムFについて説明する。
【0017】
<印刷フィルムF>
図1は、本実施形態のフレキソ印刷機1を用いて製造された印刷フィルムFの概略断面図を示している。
図1に示すように、印刷フィルムFは、フィルム基材fと、このフィルム基材fの印刷面fsに印刷された印刷層PLを有している。
【0018】
(フィルム基材f)
印刷フィルムFのフィルム基材fは、シート状のフィルム部材であり、フィルム基材fの一方の表面fs(以下、この面を印刷面fsという)がポリオレフィン層POLで形成されている。
【0019】
フィルム基材fのポリオレフィン層POLは、ポリオレフィン系樹脂を含む層であればとくに限定されない。
このポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンとα-オレフィンの共重合体等のポリエチレン系樹脂や、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンのランダム共重合体、プロピレンとエチレンのブロック共重合体、プロピレンとエチレンとブテンの三元共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、これらの重合体を変成させた変成ポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
また、ポリオレフィン層POLは、ポリオレフィン系樹脂を含有していれば他の樹脂を含有してもよい。例えば、他の樹脂として、ポリブテン系樹脂、ポリオレフィン系エラストマーなどを挙げることができる。
【0020】
なお、印刷フィルムFが、熱収縮性フィルムとして用いられる場合は、フィルムの収縮特性や光沢性の点から、該ポリオレフィン層POLは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とすることが望ましい。
【0021】
フィルム基材fは、上記のごときポリオレフィン層POLを有していれば、とくに限定されない。
フィルム基材fは、単層のフィルムでもよく、例えば図1に示すように、ベースBとポリオレフィン層POLを積層した構成でもよく、ベースBとポリオレフィン層POLとの間に他の樹脂層を備える構成でもよく、更にはベースBのポリオレフィン層POLと反対側の面に他の樹脂層が積層された構成でもよい。
【0022】
フィルム基材fのベースBの素材もとくに限定されない。
例えば、ポリオレフィン層POLと同じ素材としてもよいし、ポリオレフィン層POLとは異なるポリオレフィン系樹脂を含んだものであってもよいし、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂を素材としてもよい。ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂として、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などを挙げることができる。
【0023】
また、フィルム基材fとしては、様々な用途のものを用いることができる。
例えば、シュリンク包装に使用される熱収縮性フィルムや、食品包装用のラップフィルム、建材加飾用フィルム、ラミネートに使用される延伸フィルムなどを、フィルム基材として用いることができる。
【0024】
フィルム基材fの厚さは、とくに限定されない。
本実施形態のフレキソ印刷機1を採用すると、5μm程の薄膜フィルムから150μm程の厚膜フィルムまで、良好な印刷を行うことができる。本実施形態のフレキソ印刷機1により得られる印刷フィルムFを熱収縮性フィルムとして用いる場合には、フィルム基材fの厚さは5μm~90μm、特に8μm~15μmが好ましい。
【0025】
尚、本実施形態のフレキソ印刷機1は、フィルム基材fがセンタードラムに沿った状態で印刷・搬送されるため、各印刷ユニット間でフィルム基材fが伸び難い。よってフィルム基材fが10μmを下回る薄膜のフィルムであっても、好適に印刷することができる。
【0026】
また本実施形態のフレキソ印刷機1に用いられるフィルム基材fは、コロナ放電処理が施されていないことが望ましい。コロナ放電処理が施されていると、被包装物品を包装する際に印刷フィルムFを熱シールすることが難しくなる。
【0027】
(印刷層PL)
印刷フィルムFの印刷層PLは、フィルム基材fの印刷面fsに積層されたアンカーコート(以下、「AC」と略称する)層ACL、インキ層IcLからなる。このAC層ACLは、フィルム基材fにインキ層IcLを定着させる層として機能する。
【0028】
本実施形態の印刷フィルムFは、該AC層ACLがポリオレフィン系樹脂を含有する。
このポリオレフィン系樹脂としては、例えば、塩素化ポリエチレン系樹脂、アクリル変成ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル変成ポリプロピレン系樹脂などを挙げることができる。中でも塩素化ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂等の塩素化ポリオレフィン系樹脂は、フィルム基材fにインキ層IcLを定着させる機能に優れ、後述するAC層ACLの形成に使用されるAC剤の溶剤であるエステル系溶剤及び/又はエーテル系溶剤への溶解性も良好である。
【0029】
フィルム基材fのポリオレフィン層POLが、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする場合、AC層ACLは塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル変成ポリプロピレン系樹脂を含むことが望ましく、特に塩素化ポリプロピレン系樹脂を含むことが望ましい。
【0030】
塩素化ポリオレフィン系樹脂における塩素含有率は、エステル系溶剤及び/又はエーテル系溶剤などの環境への影響を低減した溶剤に溶解できるものであればよい。
しかしながら、塩素化度は35%以下が好ましく、20%~35%がより好ましい。塩素化度が20%よりも低いとフィルム基材fに接着し易くなるが溶剤に溶けにくくなる。一方、塩素化度を35%よりも高くすると、溶剤に溶解し易くなるがフィルム基材fに接着しにくくなる。
したがって、溶剤への溶解性とフィルム基材fへの接着性の観点から、AC層ACLに含まれるポリオレフィン系樹脂の塩素化度は、35%以下が好ましく、より好ましくは20%~35%である。とくに、環境や作業性の観点では、ポリオレフィン系樹脂の塩素化度が30%以下、好ましくは25%~30%となるように調整する。
この場合、AC層の形成に用いられるAC剤の溶剤は、エステル系溶剤を主成分とすることが望ましい。エステル系溶剤は、塩素含有率が低い塩素化ポリオレフィン系樹脂であってもよいが、適切に溶解しかつフィルム基材fへの接着性も維持させることができる。エーテル系溶剤を使用する場合は、エステル系溶剤と混合して使用することが望ましい。
【0031】
このAC層ACLに含まれるポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量も後述するAC剤の溶剤に溶解することができるものであれば、とくに限定されない。
例えば、ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、3万~20万のものが好ましく、より好ましくは3万~15万である。重量平均分子量が3万よりも低くなると、凝集力が低くなるゆえ接着力が低下する。一方、重量平均分子量が20万よりも大きくなると、相溶性が低くなるゆえ溶剤への溶解性が低下する。
したがって、接着力と溶解性の観点から、AC層に含まれるポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量が、3万~20万、より好ましくは3万~15万となるように調整するのが好ましい。
【0032】
とくに、環境や作業性の観点でも、ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量が、3万~20万、より好ましくは3万~15万となるように調整する。この場合、後述するAC剤の溶剤がエステル系溶剤及び/又はエーテル系溶剤などの環境への影響を低減した溶剤であっても、上述したポリオレフィン系樹脂を適切に溶解し、かつフィルム基材に接着できるようになる。
【0033】
印刷層PLのインキ層IcLは、カップ麺や乳酸菌飲料、乾電池、飲料ボトル、食品などの被包装体の商品名や製品の写真、イメージ図などの図柄等を構成する層である。
【0034】
このインキ層IcLは、バインダー樹脂や着色剤などを含むインキを、1色あるいは複数色印刷することによって形成することができる。このバインダー樹脂としては、硝化綿やポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂などを挙げることができる。
また、着色剤としては、公知の顔料や染料などを挙げることができる。
さらに、インキ層IcLの形成に用いられるインキは、溶剤として水溶性の溶剤(例えば、イソプロピルアルコール、エチルアルコール)などを採用することができる。
【0035】
印刷層PLの厚みはとくに限定されない。
例えば、印刷層PLの厚みが1μm~20μmとなるように形成することができる。また、印刷層PLのAC層ACLとインキ層IcLの厚みもとくに限定されないが、AC層ACLの厚みは0.5μm~5μm、インキ層IcLの厚みは1色当り0.5μm~5μmとなるように形成することができる。例えば、AC層ACLの厚みを1μmとし、インキ層IcLを厚み1μmの2色刷りとすると、厚みが3μmの印刷層PLを形成することができる。
【0036】
本実施形態の印刷フィルムFは、印刷層が断続的に設けられている。即ち、印刷フィルムFには、AC層ACLもインキ層IcLも積層されていない部分が存在する。該部分は、ポリオレフィン層POLが表面に現れている為、当該部分において熱シールすることで良好なシール強度を得ることができる。
【0037】
また、図1の印刷フィルムFはAC層ACLとインキ層IcLの形状が同じであるが、これらの大きさは相違しても良い。インキ層IcLとフィルム基材fとが接することがなく、その間にAC層ACLが介在すれば、例えばフィルム基材fにAC層ACLのみが積層された部分があっても良い。例えば、AC層ACLは、後工程においてヒートシールされる部分を除いてベタ印刷し、インキ層IcLは図柄に合せた印刷とすることもできる。
【0038】
<フレキソ印刷機1>
つぎに、本実施形態のフレキソ印刷機1を具体的に説明する。
図2(A)は、本実施形態のフレキソ印刷機1(以下、単にフレキソ印刷機1という)の概略を示している。このフレキソ印刷機1は、センタードラム型の設備であり、センタードラム2と、印刷部10と、を備えている。
【0039】
図2(A)に示すように、フレキソ印刷機1のセンタードラム2は、円筒状のロールであり、供給されたフィルム基材fを沿わせた状態で回転すれば、該フィルム基材fを供給された側とは反対側へ搬送できる。
なお、図2(A)では、センタードラム2は、回転軸を中心として反時計回りに回転する。
【0040】
このセンタードラム2の近傍には、フィルム基材供給ローラーとフィルム排出ローラーとが設けられている。
具体的には、フィルム基材fをセンタードラム2の表面に沿うように供給する為に、フィルム基材供給ローラー(図2(A)では紙面上方から二番目に位置するローラー)が設けられている。一方、センタードラム2から印刷層PLを形成した印刷フィルムFが排出される位置の下流には、フィルム排出ローラー(図2(A)では紙面最上方に位置するローラー)が設けられている。かかるローラーは、印刷フィルムFを印刷されていない面から支え、搬送する。
【0041】
フレキソ印刷機1は、センタードラム2上のフィルム基材fの印刷面fsにAC剤やインキを塗工する印刷部10を備える。
印刷部10は、センタードラム2の周方向に沿って配置されたゴム版を備える印刷ユニット(以下、「ゴム版印刷ユニット」と略称す)20と、樹脂版を備える印刷ユニット(以下、「樹脂版印刷ユニット」と略称する)30と、からなる。
本実施形態のフレキソ印刷機1では、フィルム基材fが供給される上流側の場所に、ゴム版印刷ユニット20が位置し、ゴム版印刷ユニット20よりも下流に、樹脂版印刷ユニット30が配置される。
このゴム版印刷ユニット20は、エステル系溶剤及び/又はエーテル系溶剤等を用いたAC剤であっても、長期間にわたって塗工することができる。また樹脂版印刷ユニット30は、高品質の印刷をAC層ACL上に形成することができる。
【0042】
なお、印刷部10は、上流側にゴム版印刷ユニット20を、下流側に樹脂版印刷ユニット30を、それぞれ1ユニット以上有していれば、その数はとくに限定されない。
例えば、図2(A)に示すように、印刷部10が、ゴム版印刷ユニット20を1ユニット、樹脂版印刷ユニット30を3ユニット(樹脂版印刷ユニット30A、30B、30C)、備えた構成とすることができる。また、印刷部10が、ゴム版印刷ユニット20を2ユニット、樹脂版印刷ユニット30を3ユニット(樹脂版印刷ユニット30A、30B、30C)、備えた構成としてもよい。この場合、フィルム基材fが供給される上流側にゴム版印刷ユニット20を二つ連続して配置し、その後樹脂版印刷ユニット30A、30B、30Cを配置した構成とすればよい。
【0043】
ゴム版印刷ユニット20と樹脂版印刷ユニット30では、印刷版がゴム製と樹脂製である点以外、構造上の特徴的な違いはないので、以下では、ゴム版印刷ユニット20を印刷ユニット20、30の代表として説明する。
【0044】
図2(B)に示すように、ゴム版印刷ユニット20は、フィルム基材fの印刷面fsに塗液を塗工する印刷部21と、この印刷部21に塗液を供給する供給部25と、を備えている。
【0045】
図2に示すように、ゴム版印刷ユニット20の印刷部21は、円筒状のローラー23と、このローラー23の周囲に巻き付けて固定されたシート状の印刷版22と、を備えている。そして、印刷部21は、センタードラム2と逆方向に回転する。例えば、センタードラム2が反時計回りに回転する場合、印刷部21は、時計回りに回転するように配置されている。
【0046】
印刷部21の印刷版22は、表面がゴム製のゴム版である。このゴム版とは、版全体がゴム製のものや、表面がゴム製でありその他の基材層が樹脂製のものも含む。なお、印刷版22は、有機溶剤に対する耐久性を向上させる観点では、版全体がゴム製のものが好ましい。
【0047】
印刷版22に使用されるゴムの材質は、従来のゴム版に使用されているものを特に限定なく採用することができる。
このようなゴムとして、クロロプレンゴム、エチレンプロピルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム等を例示することができる。
【0048】
なお、印刷版22は、ローラー23に対して着脱可能に固定できる構造とするのが好ましい。この場合、用途に応じて印刷版22を交換することができる。
【0049】
図2に示すように、ゴム版印刷ユニット20の供給部25は、印刷部21の印刷版22に塗液を供給する供給ロールと、この供給ロールに対して塗液を供給するチャンバーと、を備える。
【0050】
この供給部25の供給ロールは、印刷部21の印刷版22と逆方向に回転する。例えば、供給ロールは、公知のフレキソ印刷設備に用いられるアニロックスロールと同様の機能を有する部材である。この供給ロールは、着脱可能となるように設けられていれば、画質の調整を簡単に行うことができるようなる。
この供給部25のチャンバーは、内部に塗液を保持しながら、保持した塗液を供給ロールに供給することができる構造を有する。
【0051】
なお、ゴム版印刷ユニット20の印刷部21が、樹脂版印刷ユニット30の印刷部に相当する。また、ゴム版印刷ユニット20の印刷版22、ローラー23、供給部25が、それぞれ樹脂製印刷ユニット30の印刷版、ローラー、供給部に相当し、供給部25の供給ロール、チャンバーが、それぞれ供給部の供給ロール、チャンバーに相当する。
【0052】
また、上記塗液には、ゴム版印刷ユニット20で用いられる場合には上記AC剤が含まれ、樹脂版印刷ユニット30で用いられる場合には上記インキが含まれる。
【0053】
ゴム版印刷ユニット20における印刷版22は、上記のごときゴム製であるが、樹脂版印刷ユニット30では、印刷版の表面素材は樹脂である。
樹脂版印刷ユニット30における印刷版に使用される樹脂は、版の製造し易さ、印刷精度などを考慮すると、感光性樹脂を採用することが望ましい。なかでも、ウレタン系,ポリエステル系,ポリブタジエン系等のアクリレートを主骨格としたプレポリマー,アクリレートオリゴマー,アクリレートモノマーと、光重合禁止剤,光重合開始剤等の混合物からなる感光性樹脂が、好適に用いられる。
【0054】
<印刷フィルムFの製造方法>
本実施形態のフレキソ印刷機1が以上のごとき構成であるので、かかるフレキソ印刷機1を用いれば、以下に示す方法により上述したフィルムFを製造することができる。
本実施形態の印刷フィルムFの製造方法は、フィルム基材fの一方の表面に、ゴム版を備える印刷ユニット20を用いてアンカーコート剤を塗工するアンカーコート剤塗工工程と、前記アンカーコート剤塗工工程によって形成されるアンカーコート層上に、樹脂版を備える印刷ユニット30を用いて、インキを塗工するインキ塗工工程と、を順に備えることを特徴とする。
【0055】
印刷に先立ち、まずフィルム基材fを、フレキソ印刷機1のフィルム基材供給ローラー側からセンタードラム2表面に供給し、更には排出ローラー側から排出し、センタードラム2の表面に設置する。なお、フィルム排出ローラーから排出された印刷フィルムFは図示しない巻き取り部に巻き取られるようになっている。
【0056】
次いで、フレキソ印刷機1のセンタードラム2を作動すると、該ドラム2の回転により、フィルム基材供給ローラー側から供給されたフィルム基材fは排出ローラー側に誘導される。その際、フィルム基材fは、各印刷ユニット20、30の印刷版とセンタードラム2の間を通り、印刷面fsにAC剤やインキが印刷される。
【0057】
図2(A)に示すように、フレキソ印刷機1において、フィルム基材供給ローラー側から順に、ゴム版印刷ユニット20、樹脂版印刷ユニット30A、樹脂版印刷ユニット30B、樹脂版印刷ユニット30Cが配設されている場合には、フィルム基材fの印刷面fsには、まず、ゴム版印刷ユニット20によってAC剤が塗工されてAC層ACLが形成される(AC剤塗工工程)。ついで、このAC層ACLの上に、樹脂版印刷ユニット30A、30B、30Cによってインキが塗工され印刷されてインキ層IcLが形成される(インキ塗工工程)。
【0058】
本実施形態のフレキソ印刷機1は、上述したようにセンタードラム方式を採用しているので、インキ層IcLをAC層ACLの上に相互にずれないように印刷することができる(図1参照)。つまり、フレキソ印刷機1を用いれば、見当精度を向上させた印刷フィルムFを製造することができる。このため、品質の優れた印刷フィルムFを効率的に生産することができる。
【0059】
ここでAC剤の溶剤には、上述したようなポリオレフィン系樹脂を溶解することができる有機溶剤が用いられる。
【0060】
一般的なフレキソ印刷においては、印刷版は樹脂製であるため、本実施形態のフレキソ印刷機1で用いるAC剤を印刷すると、AC剤に含まれる溶剤によって印刷版が膨潤等の不具合を発生する。このような不具合が発生した印刷版を用いて印刷を行えば、AC剤の塗工性が悪くなり、塗工量が安定しない、所望の形状に印刷できない、等の問題が発生し易い。しかも、このような膨潤は数回~数十回の使用により進行するため、短い間隔で印刷版を交換しなければならないといった問題が生じる。
【0061】
しかしながら、本実施形態の印刷フィルムの製造方法では、ゴム版印刷ユニット20を用いてAC剤を塗工する為、上述したような問題を解消することができる。
そして従来の水溶性のインキを使用する際のフレキソ印刷と同等の期間、印刷版22を交換することなく、AC剤を塗工することができる。よって、作業性が大幅に向上する。
【0062】
とくに、AC剤の溶剤としてエステル系溶剤及び/又はエーテル系溶剤を採用すれば、トルエン等のような溶剤に比べて、製造時における作業者への負担や環境負荷を低減することができる。
また、ゴム版印刷ユニット20の印刷版22の膨潤をより適切に抑制することができるため、印刷版22の使用期間を延長し、生産効率を上げることができる。
【0063】
なお、AC剤の溶剤としてエステル系溶剤及び/又はエーテル系溶剤を採用する場合には、AC剤に含まれるポリオレフィン系樹脂として上述したような物性(塩素化度、重量平均分子量)のものを用いれば、より適切に溶解させることができ、インキをフィルム基材fにより強固に定着させることができる。
【実施例
【0064】
<膨潤試験>
感光性樹脂からなる樹脂版A~D、ゴム版A、Bをノルマル酢酸プロピルに浸漬した。浸漬から1時間後、4時間後、24時間後に各版の重量変化を確認した。重量の増加割合を表1に記す。
【0065】
【表1】
【0066】
浸漬する溶剤をメチルシクロヘキサンに変更し、同様の試験を行った。結果を表2に記す。また浸漬する溶剤をノルマルヘプタンに変更し、同様の試験を行った。結果を表3に記す。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
樹脂版A~Dはノルマル酢酸プロピルに1時間浸漬するだけで膨潤し、重量が20重量%以上増加することが確認された。また、ゴム版は樹脂版よりも膨潤し難いこと、特にノルマル酢酸プロピルに膨潤し難いことが確認できた。
【0070】
<印刷試験>
本発明の印刷機を用いることによって、AC剤によってインキを定着させた印刷フィルムを製造することができることを確認した。
【0071】
実験では、最も上流に位置する印刷ユニット(第1印刷ユニット)がゴム版を備え、その他の印刷ユニットが樹脂版を備えるセンタードラム方式のフレキソ印刷機を用いた。
実験に用いたフィルム基材は、コロナ放電処理が施されていないポリプロピレン系樹脂からなる単層の熱収縮性フィルム(厚さ13μm、幅925mm)を使用した。
【0072】
実験では、AC剤を以下のように調製した。
容器に溶剤としてノルマル酢酸プロピルを80L供給し、更に塩素化ポリプロピレン(塩素化度26、重量平均分子量10万)を投入した。 なお、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
また、塩素化度は、JIS-K7229に準拠して測定した。
実験に使用したインキは、XS-716 507原色藍(SO)、XS-716 709白(SO)(DICグラフィックス(株)社製)であった。
【0073】
[実施例1]
ゴム版を備える第1ユニットにてAC剤を塗工し、次いで樹脂版を備える第2印刷ユニットにてインキ(XS-716 507藍)を塗工し、更に樹脂版を備える第3印刷ユニットにてインキ(XS-716 709白)を塗工し、印刷フィルムを製造した。印刷速度は150m/minとした。
【0074】
[実施例2]
印刷速度を300m/minとした以外は実施例1と同様にして印刷フィルムを製造した。
【0075】
実施例で得られたフィルムについて、以下の要領にて(1)テープ剥離試験、(2)もみ試験、(3)爪でのスクラッチ試験を行い、インキの密着性を評価した。
[テープ剥離試験]
印刷面にセロテープ(登録商標)No.405を貼り、該テープを指の腹で1回軽く抑えた後、直ちにテープをはがす(剥離速度はゆっくり)。同じ個所に5回、テープの貼付けと剥離を行い、剥離後のテープを黒色用紙へ貼り付けて、剥離面積の割合を算出する。
剥離面積の割合が、10%未満のものを10点、10%以上15%未満のものを9点、15%以上20%未満のものを8点、20%以上30%未満のものを7点、30%以上40%未満のものを6点、40%以上50%未満のものを5点、50%以上60%未満のものを4点、60%以上70%未満のものを3点、70%以上80%未満のものを2点、90%以上のものを1点と評価する。
【0076】
[もみ試験]
印刷フィルムを、幅2.5cm、長さ10cmの長方形に切り出し、フィルムの印刷面を内側にして半折した後、更に半折し(四つ折り)、印刷面同士を擦り合わせるように50回もみ、その後、剥離面積の割合を算出する。
テープ剥離試験と同様にして、剥離面積の割合を点数で評価する。
[爪でのスクラッチ試験]
同じ個所を50回、爪をねかせてこする。尚、下地にカッターマットを使用する。
テープ剥離試験と同様にして、剥離面積の割合を点数で評価する。
【0077】
実施例1、2で得られた印刷フィルムを、印刷から1日経過後と、印刷から7日経過後に評価した。評価結果を表4に記す。また印刷から1日経過後の印刷フィルムを170℃で30%収縮させた後、評価した。結果を表5に記す。更に印刷から1日経過後の印刷フィルムを、180℃で50%収縮させた後、評価した。結果を表6に記す。いずれの試験も6~7点が判定基準で、それを超えるものが合格である。
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
インキの定着性については、加熱収縮の前後、いずれも十分であることが確認できた。また、表4より、時間をおくことによってインキの定着性が向上することが確認できた。また、表4乃至6より、フィルムを熱収縮させることによってインキの定着性が向上することが確認できた。更に表5および表6の結果から、印刷1日後のサンプルについて、30%収縮させた後も、50%収縮させた後も、いずれもインキがフィルム基材にしっかりと定着していることが確認できた。
【符号の説明】
【0082】
1 フレキソ印刷機
2 センタードラム
10 印刷部
20 ゴム版を備える印刷ユニット
30 樹脂版を備える印刷ユニット
B フィルム基材のベース
f フィルム基材
F 印刷フィルム
PL フィルムの印刷層
POL フィルム基材のポリオレフィン層
ACL 印刷層のアンカーコート層
IcL 印刷層のインキ層
図1
図2