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特許7085436物品管理装置、物品管理方法および履歴管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】物品管理装置、物品管理方法および履歴管理方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 19/00 20060101AFI20220609BHJP
   E05B 65/10 20060101ALI20220609BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20220609BHJP
   G06F 1/3293 20190101ALI20220609BHJP
   G06F 12/16 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
E05B19/00 E
E05B65/10 Z
E05B49/00 D
E05B49/00 F
G06F1/3293
G06F12/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018139255
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020016069
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501079875
【氏名又は名称】グローリーAZシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】谷村 康典
(72)【発明者】
【氏名】新田 宏樹
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-128447(JP,A)
【文献】実開昭62-162728(JP,U)
【文献】特開2003-307061(JP,A)
【文献】特開2017-160604(JP,A)
【文献】特開昭56-108119(JP,A)
【文献】特開2005-122603(JP,A)
【文献】特開2012-052362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0270469(US,A1)
【文献】特開2017-027399(JP,A)
【文献】特開2009-264000(JP,A)
【文献】特開平05-149043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
G06F 1/26- 1/3296
G06F 12/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を管理する物品管理装置であって、
第1の記憶部およびこの第1の記憶部よりも記憶容量が少ない第2の記憶部を有する記憶部と、
前記物品管理装置の動作履歴を前記第1の記憶部に記憶する第1の制御部と、
前記第1の制御部よりも省電力で動作し、少なくとも前記物品管理装置が異常状態のときに、前記物品管理装置の動作履歴の少なくとも一部を前記第2の記憶部に記憶する第2の制御部と
を備えることを特徴とする物品管理装置
【請求項2】
前記第1の制御部および前記第1の記憶部は、前記物品管理装置に供給される主電力により動作し、
前記第2の制御部および前記第2の記憶部は、前記異常状態のときに前記主電力とは異なる予備電力により動作する
ことを特徴とする請求項記載の物品管理装置。
【請求項3】
前記予備電力は、前記物品管理装置に設けられたバッテリから供給される
ことを特徴とする請求項記載の物品管理装置。
【請求項4】
前記バッテリに蓄えられた前記予備電力が少ないことを報知する報知部を備える
ことを特徴とする請求項記載の物品管理装置。
【請求項5】
前記異常状態は、前記第1の記憶部に記憶できない状態である
ことを特徴とする請求項ないしいずれか一記載の物品管理装置。
【請求項6】
前記異常状態を検知する異常状態検知部を備える
ことを特徴とする請求項ないしいずれか一記載の物品管理装置。
【請求項7】
非常時に開放可能とする非常扉
記主電力の遮断状態、前記第1の記憶部の動作異常状態、前記第1の制御部の動作異常状態、および前記非常扉の開放状態の少なくとも1つを検知する異常状態検知部と
を備える
ことを特徴とする請求項記載の物品管理装置。
【請求項8】
物品を収納する収納部と、
前記収納部に収納された前記物品の取り出しを許可する第1の認証部とを備え、
前記第2の制御部は、前記異常状態のときに、前記第1の認証部を使った前記物品の取り出しにかかる前記動作履歴の少なくとも一部を前記第2の記憶部に記憶する
ことを特徴とする請求項ないしいずれか一記載の物品管理装置。
【請求項9】
前記第1の認証部は、前記異常状態のときにも動作可能である
ことを特徴とする請求項記載の物品管理装置。
【請求項10】
物品を収納する複数の収納部と、
前記複数の収納部に収納された前記物品の取り出しを許可する第2の認証部とを備え、
前記第2の制御部は、前記異常状態のときに、前記第2の認証部を使った前記物品の取り出しにかかる前記動作履歴の少なくとも一部を前記第2の記憶部に記憶する
ことを特徴とする請求項ないしいずれか一記載の物品管理装置。
【請求項11】
前記第2の認証部は、前記異常状態のときにも動作可能である
ことを特徴とする請求項10記載の物品管理装置。
【請求項12】
前記第1の記憶部と前記第2の記憶部とは別の箇所に設けられている
ことを特徴とする請求項ないしいずれか一記載の物品管理装置。
【請求項13】
前記第2の制御部は、異常状態が解除されたら、前記第2の記憶部に記憶された動作履歴を前記第1の記憶部に移行するように前記第1の制御部に送る
ことを特徴とする請求項ないし12いずれか一記載の物品管理装置。
【請求項14】
物品を管理する物品管理装置による物品管理方法であって、
第1の制御部により前記物品管理装置の動作履歴を第1の記憶部に記憶する第1の管理ステップと、
少なくとも前記物品管理装置が異常状態のときに、前記第1の制御部よりも省電力で動作する第2の制御部により前記物品管理装置の前記動作履歴の少なくとも一部を前記第1の記憶部よりも記憶容量が少ない第2の記憶部に記憶する第2の管理ステップと
を備えることを特徴とする物品管理方法
【請求項15】
第1の制御部により物品を管理する物品管理装置の動作履歴を第1の記憶部に記憶し、少なくとも前記物品管理装置が異常状態のときに、前記第1の制御部よりも省電力で動作する第2の制御部により前記物品管理装置の前記動作履歴の少なくとも一部を前記第1の記憶部よりも記憶容量が少ない第2の記憶部に記憶し、前記動作履歴を管理する履歴管理方法であって、
前記物品管理装置の通常状態における前記動作履歴を前記第1の記憶部に記憶し、前記物品管理装置の異常状態における前記動作履歴を前記第2の記憶部に記憶する第1の記憶ステップと、
前記第2の記憶部に記憶された前記動作履歴の一番古い動作履歴を記憶したまま、それ以外の前記動作履歴の少なくとも一部を消去し、新規の動作履歴を新たに記憶する第2の記憶ステップと
を備えることを特徴とする履歴管理方法
【請求項16】
前記第2の記憶ステップは、前記第2の記憶部に記憶された前記動作履歴の一番古い動作履歴を記憶したまま、前記第2の記憶部に記憶された一番新しい前記動作履歴を消去し、新規の動作履歴を新たに記憶する
ことを特徴とする請求項15記載の履歴管理方法。
【請求項17】
前記第2の記憶ステップは、前記第2の記憶部に記憶された前記動作履歴の一番古い動作履歴を記憶したまま、前記第2の記憶部に記憶された一番古い前記動作履歴の次に古い前記動作履歴を消去し、新規の動作履歴を新たに記憶する
ことを特徴とする請求項15記載の履歴管理方法。
【請求項18】
前記第2の記憶ステップは、前記第2の記憶部に記憶された前記動作履歴のうちの重要でない前記動作履歴から優先して消去し、新規の動作履歴を新たに記憶する
ことを特徴とする請求項15記載の履歴管理方法。
【請求項19】
前記物品管理装置の異常状態が解除されたら、前記第2の記憶部に記憶された前記動作履歴を前記第1の記憶部に移行する移行ステップを備える
ことを特徴とする請求項15ないし18いずれか一記載の履歴管理方法。
【請求項20】
前記動作履歴とは、前記物品の取り出しにかかる動作履歴である
ことを特徴とする請求項15ないし19いずれか一記載の履歴管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を管理する物品管理装置、この物品管理装置による物品管理方法、およびこの物品管理装置の動作履歴を管理する履歴管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を管理するために、重要物管理機や鍵管理機などの物品管理装置が用いられている。例えば、鍵管理機では、シリンダに挿入された鍵を施錠状態で保管し、予め登録されている個人識別可能な解錠情報が入力されたときに、シリンダを解錠するとともに、入力された解錠情報を含む鍵の解錠の履歴を記憶して管理している。
【0003】
このような物品管理装置では、例えば停電などの非常時の対策が必要となっている。その対策として電池を用いているものがあるが、施錠、解錠、履歴の記憶などの機能を全て電池の電力によって行うため、大きな電力を供給する電池が必要で、電池が大きくかつ重くなり、それに伴って物品管理装置も大きくかつ重くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-184363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物品管理装置では、省電力化が望まれるが、大きな電力を用いなければ施錠、解錠などとともに履歴の記憶も行うことができず、必要な履歴が残されず、物品の管理を厳正にできない。
【0006】
本発明は、省電力化への対応が可能で、必要な動作履歴を確実に残し、物品の管理を厳正にできる物品管理装置、物品管理方法および履歴管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の物品管理装置は、物品を管理する物品管理装置であって、第1の記憶部およびこの第1の記憶部よりも記憶容量が少ない第2の記憶部を有する記憶部と、前記物品管理装置の動作履歴を前記第1の記憶部に記憶する第1の制御部と、前記第1の制御部よりも省電力で動作し、少なくとも前記物品管理装置が異常状態のときに、前記物品管理装置の動作履歴の少なくとも一部を前記第2の記憶部に記憶する第2の制御部とを備えるものである。
【0008】
らに、前記第1の制御部および前記第1の記憶部は、前記物品管理装置に供給される主電力により動作し、前記第2の制御部および前記第2の記憶部は、前記異常状態のときに前記主電力とは異なる予備電力により動作するものである。
【0009】
さらに、前記予備電力は、前記物品管理装置に設けられたバッテリから供給されるものである。
【0010】
さらに、前記バッテリに蓄えられた前記予備電力が少ないことを報知する報知部を備えるものである。
【0011】
そして、前記異常状態は、前記第1の記憶部に記憶できない状態である。
【0012】
さらに、前記異常状態を検知する異常状態検知部を備えるものである。
【0013】
さらに、非常時に開放可能とする非常扉を備え、前記異常状態検知部は、前記主電力の遮断状態、前記第1の記憶部の動作異常状態、前記第1の制御部の動作異常状態、および前記非常扉の開放状態の少なくとも1つを検知するものである。
【0014】
また、物品を収納する収納部と、前記収納部に収納された前記物品の取り出しを許可する第1の認証部とを備え、前記第2の制御部は、前記異常状態のときに、前記第1の認証部を使った前記物品の取り出しにかかる前記動作履歴の少なくとも一部を前記第2の記憶部に記憶するものである。
【0015】
前記第1の認証部は、前記異常状態のときにも動作可能であるものである。
【0016】
あるいは、物品を収納する複数の収納部と、前記複数の収納部に収納された前記物品の取り出しを許可する第2の認証部とを備え、前記第2の制御部は、前記異常状態のときに、前記第2の認証部を使った前記物品の取り出しにかかる前記動作履歴の少なくとも一部を前記第2の記憶部に記憶するものである。
【0017】
前記第2の認証部は、前記異常状態のときにも動作可能である。
【0018】
そして、前記第1の記憶部と前記第2の記憶部とは別の箇所に設けられているものである。
【0019】
さらに、前記第2の制御部は、異常状態が解除されたら、前記第2の記憶部に記憶された動作履歴を前記第1の記憶部に移行するように前記第1の制御部に送るものである。
【0020】
また、本発明の物品管理方法は、物品を管理する物品管理装置による物品管理方法であって、第1の制御部により前記物品管理装置の動作履歴を第1の記憶部に記憶する第1の管理ステップと、少なくとも前記物品管理装置が異常状態のときに、前記第1の制御部よりも省電力で動作する第2の制御部により前記物品管理装置の前記動作履歴の少なくとも一部を前記第1の記憶部よりも記憶容量が少ない第2の記憶部に記憶する第2の管理ステップとを備えるものである。
【0021】
た、本発明の履歴管理方法は、第1の制御部により物品を管理する物品管理装置の動作履歴を第1の記憶部に記憶し、少なくとも前記物品管理装置が異常状態のときに、前記第1の制御部よりも省電力で動作する第2の制御部により前記物品管理装置の前記動作履歴の少なくとも一部を前記第1の記憶部よりも記憶容量が少ない第2の記憶部に記憶し、前記動作履歴を管理する履歴管理方法であって、前記物品管理装置の通常状態における前記動作履歴を前記第1の記憶部に記憶し、前記物品管理装置の異常状態における前記動作履歴を前記第2の記憶部に記憶する第1の記憶ステップと、前記第2の記憶部に記憶された前記動作履歴の一番古い動作履歴を記憶したまま、それ以外の前記動作履歴の少なくとも一部を消去し、新規の動作履歴を新たに記憶する第2の記憶ステップとを備えるものである。
【0022】
らに、前記第2の記憶ステップは、前記第2の記憶部に記憶された前記動作履歴の一番古い動作履歴を記憶したまま、前記第2の記憶部に記憶された一番新しい前記動作履歴を消去し、新規の動作履歴を新たに記憶するものである。
【0023】
あるいは、前記第2の記憶ステップは、前記第2の記憶部に記憶された前記動作履歴の一番古い動作履歴を記憶したまま、前記第2の記憶部に記憶された一番古い前記動作履歴の次に古い前記動作履歴を消去し、新規の動作履歴を新たに記憶するものである。
【0024】
あるいは、前記第2の記憶ステップは、前記第2の記憶部に記憶された前記動作履歴のうちの重要でない前記動作履歴から優先して消去し、新規の動作履歴を新たに記憶するものである。
【0025】
さらに、前記物品管理装置の異常状態が解除されたら、前記第2の記憶部に記憶された前記動作履歴を前記第1の記憶部に移行する移行ステップを備えるものである。
【0026】
そして、前記動作履歴とは、前記物品の取り出しにかかる動作履歴である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、省電力化への対応が可能で、物品管理装置の必要な動作履歴を確実に残し、物品の管理を厳正にできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施の形態を示す物品管理装置の第1の扉を開放した斜視図である。
図2】同上物品管理装置の第2の扉および表示ユニットを開放した斜視図である。
図3】同上物品管理装置のブロック図である。
図4】同上物品管理装置のフローチャートである。
図5】同上物品管理装置の動作履歴の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0030】
図1および図2に物品管理装置10を示す。本実施の形態では、物品管理装置10として鍵管理機11を示す。
【0031】
鍵管理機11は、筐体である本体12を備えている。本体12の前面に第1の扉13、第2の扉14および表示ユニット15がそれぞれ開閉可能に設けられ、本体12の背面に非常扉16が開閉可能に設けられている。
【0032】
本体12の前面には、第1の扉13によって開閉される鍵管理部17、第2の扉14によって開閉されるプリンタ18および鍵交換部19、表示ユニット15によって開閉される非常ダイヤル錠20、さらにカードリーダ21などが配設されている。
【0033】
鍵管理部17は、物品23としてホルダ24にリング25で連結された鍵26を管理する。鍵管理部17には、ホルダ24が挿入されてそのホルダ24を施錠する複数の錠機構27が配設されている。錠機構27は、例えば、鍵管理部17のパネル部28に上下2段で各段毎に5個ずつの配列で設けられている。パネル部28の各錠機構27の位置には、ホルダ24が挿入される挿入口29が形成されている。各錠機構27の挿入口29の形状はそれぞれ異なっており、複数のホルダ24のうちの対応する形状のホルダ24のみ挿入可能とし、誤挿入防止が図られている。挿入口29の内側には、ホルダ24が所定の施錠位置まで挿入されたことを検知するホルダ検知部、および所定の施錠位置に挿入されたホルダ24を施錠するホルダ施錠部などが配設されている。ホルダ施錠部は、挿入されたホルダ24を係止部材によって係止し、例えばソレノイドなどの電気的駆動部によって係止部材による係止を解除可能とする。また、パネル部28の各錠機構27の上側には、例えばホルダ24を抜き取ったり挿入する錠機構27の位置などを表示するための錠表示部30が設けられている。なお、各錠機構27は、物品23を収納する収納部31である。
【0034】
鍵管理部17での鍵26の管理に用いられるホルダ24は、例えば、ホルダ本体、およびこのホルダ本体にリング25を介して係止されるリング係止体などを有している。鍵26が装着されたリング25を介して組み合わされたホルダ本体とリング係止体は、リング25が取り外し不可に係止されている。リング25への鍵26の装着や交換のためのホルダ本体とリング係止体の係止解除は、鍵交換の権限を有する権限者によって鍵交換部19で行うことが可能となっている。なお、1つのホルダ24には、1つの鍵26が連結される場合に限らず、利用目的に応じて複数の鍵26が一緒に連結される場合もある。そして、ホルダ24は、錠機構27毎に対応して断面形状がそれぞれ異なっており、複数の錠機構27の挿入口29うちの対応する錠機構27の挿入口29にのみ挿入可能で、誤挿入防止が図られている。
【0035】
プリンタ18は、鍵抜取情報および鍵交換情報などを含む鍵管理機11の動作履歴を本体12内に配置されたロール紙などの用紙に印字する。プリンタ18で印字された用紙は、本体12の前面から導出されるか、もしくは本体12内の巻取ユニット32によって巻き取られる。
【0036】
鍵交換部19は、ホルダ24における鍵26の着脱を可能な状態にするもので、鍵交換の権限を有する権限者のみが利用できる。鍵交換部19は、いずれのホルダ24も挿入可能とする挿入口33、挿入口33内の所定の係止解除位置まで挿入されたホルダ24に対してホルダ本体とリング係止体の係止を解除してリング25を外せる状態とする解除部材、権限者によるホルダ24に対しての係止解除を許可するとともに権限者以外によるホルダ24に対しての係止解除を不可とする鍵交換規制部、およびホルダ24に対して係止解除を行なうことを検知する鍵交換検知部などを有している。鍵交換規制部は、例えば、ソレノイドなどの電気的駆動部でストッパを挿入口33に進退させるストッパ機構を用い、通常はストッパが挿入口33内に侵入され、ホルダ24が挿入口33の所定の係止解除位置まで挿入されるのを規制し、また、権限者が操作する場合にのみストッパが挿入口33内から退避され、ホルダ24が挿入口33の所定の係止解除位置まで挿入されるのを可能とする。
【0037】
非常ダイヤル錠20は、非常扉16を施錠するメカ式の錠前である。例えば、非常ダイヤル錠20を回して複数桁の数字を所定の解錠数字に合わせることにより、非常扉16を解錠し、非常扉16を開放可能とする。
【0038】
カードリーダ21は、本体12の前面に上下方向に沿ってスリット状に設けられた読取溝34内に配置されている。カードの磁気記憶帯を読取溝34に沿って上から下に通すことにより、カードリーダ21によってカードの磁気記憶帯から情報が読み取られる。
【0039】
また、第1の扉13は、本体12にヒンジ36によって開閉可能に取り付けられ、本体12に配置された第1の扉施錠機構37(図3に示す)により本体12に対して閉鎖状態で施錠され、第1の扉施錠機構37の解錠によって本体12から開放可能としている。第1の扉施錠機構37は、第1の扉13を施錠および解錠するためのソレノイドなどの第1の扉用電気的駆動部、および第1の扉13の閉塞を検知する第1の扉用検知部などを有している。
【0040】
また、第2の扉14は、本体12にヒンジ39によって開閉可能に取り付けられ、本体12に配置された第2の扉施錠機構40(図3に示す)により本体12に対して閉鎖状態で施錠され、第2の扉施錠機構40の解錠によって本体12から開放可能としている。第2の扉施錠機構40は、第2の扉14を施錠および解錠するためのソレノイドなどの第2の扉用電気的駆動部、および第2の扉14の閉塞を検知する第2の扉用検知部などを有している。
【0041】
また、表示ユニット15は、操作部としてのタッチパネル44を前面に有する表示部45を有している。表示部45は、例えばカラーの液晶表示パネルや有機EL表示パネルなどが用いられている。表示ユニット15は、本体12に対して上部側を中心に上方へ回動可能とする。表示ユニット15の上方への回動により、本体12内の前面側が開放され、非常ダイヤル錠20が操作可能に露出される(図2参照)。
【0042】
また、非常扉16は、本体12に対して閉鎖状態で非常ダイヤル錠20によって施錠され、非常ダイヤル錠20による解錠操作により解錠されて開放可能とする。そして、非常扉16が開放されることにより、鍵管理部17の背面側へのアクセスが可能となる。鍵管理部17の背面側では第1の扉13を手動で解錠操作が可能でかつ任意の錠機構27を手動で解錠操作ができるため、非常扉16が開放されることにより、任意の錠機構27を手動で解錠操作して、その錠機構27からホルダ24を取出可能とする。
【0043】
次に、図3に物品管理装置10である鍵管理機11の制御系のブロック図を示す。
【0044】
鍵管理機11は、第1の基板51および第2の基板52を備えている。第1の基板51および第2の基板52は相互に通信可能に接続されている。第1の基板51および第2の基板52には主電源53から主電力が供給される。主電源53は、本体12内に配置され、主電源53から延びる電源コードをコンセントに接続することで得られる商用交流電源を所定の電源電圧に変換した主電力を供給する。なお、主電力は、表示ユニット15のタッチパネル44および表示部45、カードリーダ21、鍵管理部17の各錠機構27、プリンタ18、鍵交換部19、第1の扉施錠機構37および第2の扉施錠機構40などにも供給される。また、主電力は、第1の基板51および第2の基板52のそれぞれに供給してもよいし、第1の基板51から第2の基板52に供給、あるいは第2の基板52から第1の基板51に供給してもよい。
【0045】
第1の基板51には、第1の制御部55および第1の記憶部56などを含む第1の制御回路57が形成されている。第1の制御部55および第1の記憶部56などを含む第1の制御回路57は、主電力によって動作する。
【0046】
第1の制御部55は、表示ユニット15のタッチパネル44および表示部45、カードリーダ21、鍵管理部17の各錠機構27(ホルダ施錠部、ホルダ検知部および錠表示部30を含む)、プリンタ18(巻取ユニット32を含む)、鍵交換部19(鍵交換規制部および鍵交換検知部を含む)、第1の扉施錠機構37(第1の扉用電気的駆動部および第1の扉用検知部を含む)および第2の扉施錠機構40(第2の扉用電気的駆動部および第2の扉用検知部を含む)などに対して、情報の取得を行ったり動作の制御を行う。
【0047】
第1の制御部55は、カードリーダ21で読み取られるカードの情報、およびタッチパネル44で入力されるパスワードなどに基づいて、鍵管理機11からの鍵26の取り出しを許可するための認証を行う第1の認証部58の機能を有している。なお、非接触カードリーダや生体認証ユニットを鍵管理機11の外部に接続または鍵管理機11が一体的に備える場合、第1の認証部58は、これら非接触カードリーダや生体認証ユニットの読取情報から認証を行ってもよい。
【0048】
第1の記憶部56は、例えばRAMや、フラッシュメモリなどのROMなどで構成されている。
【0049】
なお、非常ダイヤル錠20は、鍵管理機11からの鍵26の取り出しを許可するための認証を行う第2の認証部59である。
【0050】
本実施の形態では、表示部45が各種の情報を報知する報知部60として機能する。なお、報知部60は、表示部45に限らず、表示部45とは別に設けられる報知用表示部であってもよく、あるいは音声などによって報知してもよい。
【0051】
また、第2の基板52には、第2の制御部61および第2の記憶部62などを含む第2の制御回路63が形成されている。
【0052】
第2の基板52は、第2の制御部61および第2の記憶部62などを含む第2の制御回路63に予備電力を供給するためのバッテリ64を備えている。バッテリ64は、第2の基板52に組み込み可能な例えばボタン型電池などの小形の一次電池が用いられている。
【0053】
第2の制御部61および第2の記憶部62などを含む第2の制御回路63は、主電力が供給されているときには主電力によって動作し、主電力が遮断されたときにはバッテリ64からの予備電力によって動作する。第2の制御回路63は、主電力の供給遮断時に予備電力に自動的に切り換え、主電力の供給再開時に予備電力から主電力に自動的に切り換える電力切換回路部65を備えている。
【0054】
第2の基板52には、非常扉16の開閉を検知する非常扉開閉検知部66が接続されている。非常扉開閉検知部66は、例えばマイクロスイッチが用いられ、第2の基板52から電力供給されて動作し、つまり主電力および予備電力のいずれでも動作する。
【0055】
第2の制御部61は、電力切換回路部65によって主電力から予備電力に切り換わったことに基づいて鍵管理機11が異常状態にあることを検知する異常状態検知部67の機能、およびバッテリ64に蓄えられた予備電力の残量を検知するバッテリ残量検知部68の機能を有している。なお、鍵管理機11の異常状態とは、第1の記憶部56に記憶できない状態でもある。
【0056】
第2の記憶部62は、例えばRAMや、フラッシュメモリなどのROMなどで構成されている。
【0057】
そして、第2の制御部61は、主電力が供給されているときには通常モードで連続的に動作し、予備電力に切り換わったときには省電力化モードとなって間欠的に動作する。第2の制御部61は、少なくとも非常状態のときであって、本実施の形態では通常状態および非常状態のときに、非常扉開閉検知部66によって検知される非常扉16の開閉を監視し、鍵管理機11の動作履歴の少なくとも一部であって非常扉開閉検知部66によって検知される非常扉16の開閉の動作履歴を第2の記憶部62に記憶する。第2の制御部61は、異常状態が解除されたら、第2の記憶部62に記憶された動作履歴を第1の記憶部56に移行するように第1の制御部55に対して送信する。
【0058】
したがって、第2の制御部61は、非常扉16の開閉の監視、第2の記憶部62に対する動作履歴の記憶および読み出し、および第1の制御部55との通信を主な制御内容としており、第1の制御部55に比べて制御内容が少なく、第1の制御部55よりも処理能力が低くても対応できる。そのため、第2の制御部61は、第1の制御部55よりも処理能力が低くて省電力で動作するものが用いられている。
【0059】
第2の記憶部62は、非常扉16の開閉の動作履歴を主な記憶内容としており、第1の記憶部56に比べて記憶容量が少なくても構わない。そのため、第2の記憶部62は、第1の記憶部56よりも記憶容量が少なくて省電力で動作するものが用いられている。第2の記憶部62の記憶容量は、第1の記憶部56が記憶する非常扉16の開閉の動作履歴の件数よりも少ない件数の非常扉16の開閉の動作履歴を記憶可能とする記憶容量であって、例えば10件の非常扉16の開閉の動作履歴を記憶可能とする記憶容量である。
【0060】
このように、第2の基板52の第2の制御部61および第2の記憶部62はいずれも省電力で動作するため、主電力が遮断された鍵管理機11の異常状態のときに予備電力を供給するバッテリ64が第2の基板52に組み込み可能な例えばボタン型電池などの小形の一次電池であっても、そのバッテリ64を長期間に亘って使用できる。例えば、バッテリ64は、1日に12時間、年に250日の使用で、予備電力を10年程度は供給可能とする。
【0061】
なお、本実施の形態では、第1の記憶部56および第2の記憶部62が鍵管理機11が有する記憶部70として構成される。
【0062】
次に、鍵管理機11の動作を説明する。なお、この鍵管理機11の動作の説明には、物品管理方法および履歴管理方法の説明が含まれる。
【0063】
まず、主電力が供給された鍵管理機11の電源オン状態であって、鍵管理機11の通常状態における鍵26の取出操作について説明する。
【0064】
鍵26の取り出しを行う操作者のカードをカードリーダ21に通し、その後に表示部45に表示される入力画面で操作者がパスワードを入力する。操作者情報が第1の認証部58で認証されることにより、表示部45にホルダ24の抜き取りが可能な錠機構27の選択画面が表示される。
【0065】
表示部45の選択画面では、実際の錠機構27の配列に対応した配置でかつ錠機構27毎に番号を付した選択ボタンが一覧表示されるとともに、予め登録されている操作者の取出権限のある鍵26に対応した選択ボタンが取出権限のない鍵26に対応した選択ボタンとは別の表示形態で表示される。さらに、取出権限のある鍵26のうち、鍵26が取出状態にある錠機構27の番号の選択ボタンと鍵26を取出可能な錠機構27の番号の選択ボタンとが異なる色で表示される。このとき、本体12の鍵管理部17においては、各錠機構27の錠表示部30の表示形態が同期される。
【0066】
操作者が表示部45の選択画面で選択した後、確定操作をすることにより、選択された錠機構27が解錠される。操作者は、ホルダ24を錠機構27から抜き取り、ホルダ24とともに鍵26を鍵管理機11から取り出して使用する。
【0067】
ホルダ24が錠機構27から抜かれたことを錠機構27のホルダ検知部が検知すると、第1の制御部55により取出日時、操作者情報および鍵情報を含む取出情報の動作履歴が第1の記憶部56に記憶される(物品管理方法の第1の管理ステップ)。
【0068】
次に、鍵26の返却操作について説明する。
【0069】
返却する鍵26のホルダ24を対応する錠機構27の挿入口29に挿入する。ホルダ24が錠機構27の所定の施錠位置まで挿入されることにより、錠機構27のホルダ施錠部によってホルダ24が施錠される。なお、ここで説明した返却操作は認証操作を必要としない通常運用の場合であるが、取出操作時と同様に、鍵26の返却に認証操作を必要とする返却認証運用とすることもできる。
【0070】
ホルダ24が錠機構27に挿入されて施錠されたことを錠機構27のホルダ検知部が検知すると、第1の制御部55により少なくとも返却日時を含む返却情報の動作履歴が第1の記憶部56に記憶される(物品管理方法の第1の管理ステップ)。
【0071】
次に、ホルダ24に連結されている鍵26を別の鍵26に交換したり、別の鍵26を追加する鍵交換操作について説明する。
【0072】
鍵交換の権限を有する権限者が、上述と同様にカード情報およびパスワードの入力による認証後に、タッチパネル44で鍵交換を行うホルダ24を選択する。これにより、選択されたホルダ24の錠機構27が解錠され、また、第2の扉14が解錠されるとともに、鍵交換部19の鍵交換規制部が規制解除して、鍵交換部19へのホルダ24の挿入が可能な状態となる。
【0073】
管理者は、選択したホルダ24を錠機構27から抜き取り、抜き取ったホルダ24を鍵交換部19の挿入口33に挿入する。ホルダ24を挿入口33に挿入すると、挿入口33内の解除部材により、ホルダ24に対してホルダ本体とリング係止体の係止を解除してリング25を外せる状態となる。
【0074】
ホルダ24が挿入口33に挿入されたことを鍵交換部19の鍵交換検知部で検知すると、第1の制御部55により交換日時、管理者情報および鍵情報などを含む鍵交換の動作履歴が第1の記憶部56に記憶される。
【0075】
その後、管理者は、ホルダ24のホルダ本体からリング係止体を抜き外すことにより、リング25を取り外すことができる。交換する鍵26を連結したリング25、あるいは別の鍵26を追加したリング25をリング係止体に装着し、このリング係止体をホルダ本体に組み合わせて係止する。なお、ホルダ24のホルダ本体からリング係止体を抜き外したら、ホルダ本体を挿入口33から抜き取り、鍵交換部19の外でホルダ24のホルダ本体とリング係止体とを組み合わせる操作をしてもよい。そして、鍵交換操作の終えたホルダ24は元の錠機構27に挿入する。
【0076】
次に、鍵管理機11の異常状態での動作について図4のフローチャートを参照して説明する。なお、図4は第2の制御部61の動作を示す。
【0077】
鍵管理機11は、停電時、あるいは鍵管理機11の持ち運びや金庫内での保管のために電源コードがコンセントから引き抜かれた場合、主電力が遮断された電源オフ状態である異常状態となる。
【0078】
第1の基板51への主電力が遮断されると、第1の制御部55は動作を停止し、第1の扉13は閉鎖されている場合には施錠状態に保持され、また、錠機構27はホルダ24の施錠状態に保持されるため、通常の鍵取出操作によって鍵26を取り出すことはできなくなる。
【0079】
一方、第2の基板52では、主電力が遮断されると、電力切換回路65によってバッテリ64から供給される予備電力に自動的に切り換わり、この予備電力により第2の制御部61および第2の記憶部62などの動作が継続される。そして、第2の制御部61は、主電力から予備電力に切り換わったことに基づいて異常状態検知部67が鍵管理機11の異常状態を検知する(ステップS1)。異常状態を検知すると(ステップS1のYES)、第2の制御部61は、通常モードから省電力モードに切り換わる(ステップS2)。省電力モードの第2の制御部61は、間欠的に動作し、予備電力の消費を抑制する。
【0080】
主電力が遮断された鍵管理機11の異常状態において、第2の制御部61は、非常扉開閉検知部66による非常扉16の開放検知(ステップS3)、または非常扉16の閉鎖検知(ステップS4)を監視する。
【0081】
そして、主電力が遮断された鍵管理機11の異常状態において、鍵26を取り出す場合には、表示ユニット15を上方に回動させて第2の認証部59である非常ダイヤル錠20を露出させ、非常ダイヤル錠20を解錠操作する(図2参照)。非常ダイヤル錠20は、解錠数字を知る管理者などの操作者のみが解錠可能とする。
【0082】
操作者により非常ダイヤル錠20が解錠操作されると、本体12の背面側の非常扉16が解錠される。操作者により、非常扉16が開放されることで、鍵管理部17の背面側へのアクセスが可能となり、鍵管理部17の背面側から第1の扉13が手動で解錠操作されるとともに、任意の錠機構27が手動で解錠操作される。そのため、操作者により、第1の扉13が開放され、錠機構27からホルダ24が抜き外され、そのホルダ24とともに鍵26が取り出される。
【0083】
このとき、非常扉16の開放を非常扉開閉検知部66で検知すると(ステップS3のYES)、第2の制御部61は、第2の記憶部62に記憶されている動作履歴の件数が満杯となる所定数に達しているか確認する(ステップS5)。ここで、所定数に達していなければ(ステップS5のNO)、第2の制御部61は、非常扉16の開放時刻を第2の記憶部62に記憶する(ステップS6)(物品管理方法の第2の管理ステップ、履歴管理方法の第1の記憶ステップ)。
【0084】
操作者による鍵26の取出後に、非常扉16が閉じられると、非常ダイヤル錠20によって非常扉16が施錠される。
【0085】
このとき、非常扉16の閉鎖を非常扉開閉検知部66で検知すると(ステップS4のYES)、第2の制御部61は、第2の記憶部62に記憶されている動作履歴の件数が満杯となる所定数に達しているか確認する(ステップS7)。ここで、所定数に達していなければ(ステップS7のNO)、第2の制御部61は、非常扉16の閉鎖時刻を第2の記憶部62に記憶する(ステップS8)(物品管理方法の第2の管理ステップ、履歴管理方法の第1の記憶ステップ)。これにより、非常扉16の開放時刻と閉鎖時刻を一組とした1件の動作履歴が第2の記憶部62に記憶される。
【0086】
また、異常状態のまま鍵26を返却する場合、非常ダイヤル錠20が解錠操作されて非常扉16が解錠されることで、鍵管理部17の背面側へのアクセスが可能となり、鍵管理部17の背面側から第1の扉13が手動で解錠操作される。第1の扉13が開放され、返却するホルダ24が対応する錠機構27に装着された後、非常扉16が閉じられる。この場合にも、非常扉16の開放時刻と閉鎖時刻を一組とした1件の動作履歴が第2の記憶部62に記憶される。
【0087】
そして、非常扉16の開閉を伴う鍵26の取り出しや返却が繰り返されると、ステップ4において、第2の記憶部62に記憶されている動作履歴の件数が満杯となる所定数に達することがある(ステップS5のYESまたはステップS7のYES)。
【0088】
この場合、第2の記憶部62に記憶された動作履歴のうちの一番古い動作履歴を記憶したまま、それ以外の動作履歴の少なくとも一部を消去し(ステップS9またはステップS10)、ステップS6またはステップS8を経て、新規の動作履歴を新たに記憶する(履歴管理方法の第2の記憶ステップ)。
【0089】
動作履歴の消去は、第2の記憶部62に記憶された一番新しい動作履歴の消去、第2の記憶部62に記憶された一番古い動作履歴の次に古い動作履歴の消去、第2の記憶部62に記憶された動作履歴のうちの重要でない動作履歴から優先して消去などがあり、いずれでもよい。鍵管理機11では、異常状態の発生時において、一番古い動作履歴と一番新しい動作履歴を確認することが重要であり、既に記憶されている一番新しい動作履歴や、一番古い動作履歴の次に古い動作履歴などの重要度は比較的低い。
【0090】
図5には第2の記憶部62に記憶された一番新しい動作履歴を消去する例を示す。第2の記憶部62には例えば10件の動作履歴を記憶可能とする。第2の記憶部62に既に10件の動作履歴が記憶されている場合、ステップS9またはステップS10において、既に記憶されている10件目の一番新しい動作履歴を消去し(消去した状態を複数の下矢印で示す)、ステップS6またはステップS8を経て、新規の10件目(一番下側)の動作履歴を新たに記憶する。なお、図5には非常扉16を短時間に開閉して動作履歴を10件以上した例を示す。
【0091】
なお、動作履歴を消去しても、記憶した動作履歴の件数の履歴は、第2の記憶部62に別途記憶する。
【0092】
なお、鍵管理機11の異常状態において、ステップS3での非常扉16の開放検知(ステップS3)の監視とともに、ステップS4での非常扉16の閉鎖検知の監視を行っているのは、主電力の供給時に非常扉16が開放されている状態で、主電力が遮断されると、最初に検知する動作履歴が非常扉16の閉鎖となる場合もあるためである。
【0093】
また、停電の解消、あるいは電源コードがコンセントに接続されて、主電力が供給再開されると、第1の基板51では、第1の制御部55および第1の記憶部56の動作が開始され、通常の鍵取出操作によって鍵26を取り出すことが可能となる。このとき、ホルダ24の有無状態がチェックされて、チェック結果が記録されるようになっていてもよい。
【0094】
一方、第2の基板52では、電力切換回路65によってバッテリ64の予備電力から主電力に自動的に切り換わり、この主電力により第2の制御部61および第2の記憶部62などの動作が継続される。そして、第2の制御部61は、予備電力から主電力に切り換わったことに基づいて異常状態検知部67が鍵管理機11の異常状態の検知を解除する。異常状態の検知を解除すると(ステップS1のNO)、第2の制御部61は、省電力モードから通常モードに切り換わる(ステップS11)。通常モードの第2の制御部61は、連続して動作する。
【0095】
そして、第1の制御部55と第2の制御部61が相互に通信可能となると、第2の制御部61は、動作履歴が第2の記憶部62にあるか確認する(ステップS12)。なお、主電力によって動作を開始した第1の制御部55が第2の制御部61に対して第2の記憶部62に記憶されている動作履歴の送信を要求することで、動作履歴の確認を行ってもよい。
【0096】
例えば、異常状態のときに、非常扉16の開閉がなかった場合には、動作履歴は第2の記憶部62にないと判断する(ステップS12のNO)。この場合、第2の制御部61は、動作履歴がないことを第1の制御部55に通知してもよい。
【0097】
動作履歴が第2の記憶部62にある場合には(ステップS12のYES)、第2の制御部61により第2の記憶部62に記憶されている動作履歴を第1の記憶部56に移行するように第1の制御部55に送信する移行処理を行う(ステップS13)(履歴管理方法の移行ステップ)。なお、第2の記憶部62に記憶されている動作履歴を第1の記憶部56に移行した後には、第2の記憶部62に記憶されている移行済みの動作履歴を削除してもよい。
【0098】
また、主電力が供給されている場合でも、ステップS3~S8のように、非常ダイヤル錠20によって非常扉16が解錠され、非常扉16が開閉されれば、その動作履歴が第2の記憶部62に記憶され、第2の記憶部62に記憶された動作履歴が第1の記憶部56に移行される。
【0099】
そして、第1の記憶部56に移行された動作履歴は、表示部45で表示したり、プリンタ18によって動作履歴を用紙に印字したジャーナルを出力することにより、確認することができる。
【0100】
また、第2の制御部61では、バッテリ残量検知部68の機能によってバッテリ64に蓄えられた予備電力の残量を監視している。そして、バッテリ64に蓄えられた予備電力の残量が所定量まで少なくなると、その旨を報知部60で報知する。例えば、報知部60が表示部45である場合、第2の制御部61から第1の制御部55に報知情報が送信され、第1の制御部61により表示部45で報知する。なお、報知部60が表示部45とは別の例えばLED表示ランプなど構成される場合、第2の制御部61によりLED表示ランプなどを点灯や点滅させて報知してもよい。そして、バッテリ64の残量が少なくなったことを報知することで、係員がバッテリ64を交換したり、バッテリ64に二次電池を用いている場合にはバッテリ64を充電することができる。また、バッテリ64の充電は主電力によって行われるようになっていてもよい。なお、バッテリ64に蓄えられた予備電力の残量の検知は、第2の制御部61で行うことに限らず、第1の制御部55で行ってもよい。
【0101】
以上のように、物品管理装置10である鍵管理機11、および物品管理方法によれば、第1の制御部55と、この第1の制御部55よりも省電力で動作する第2の制御部61とを用い、第2の制御部61により、鍵管理機11の動作履歴の少なくとも一部を記憶部70に記憶するため、省電力化への対応が可能で、鍵管理機11の必要な動作履歴を確実に残し、鍵26の管理を厳正にできる。
【0102】
さらに、少なくとも鍵管理機11の異常状態のときに、物品管理装置の動作履歴の少なくとも一部を記憶部70に記憶するため、鍵管理機11の必要な動作履歴を確実に残し、鍵26の管理を厳正にできる。
【0103】
さらに、記憶部70として、第1の記憶部56と、この第1の記憶部56よりも記憶容量が少なくて省電力で動作する第2の記憶部62とを用い、鍵管理機11の異常状態のときに、第2の制御部61により、鍵管理機11の動作履歴の少なくとも一部を第2の記憶部62に記憶するため、より一層の省電力化への対応が可能となる。
【0104】
第2の制御部61および第2の記憶部62は、鍵管理機11の異常状態のときに主電力とは異なる予備電力により動作するが、省電力化へ対応していることで、予備電力の消費を抑制することができる。
【0105】
予備電力がバッテリ64から供給される場合でも、バッテリ64の予備電力の消費を抑制できるため、小形のバッテリ64を用いることができる。
【0106】
バッテリ64に蓄えられた予備電力が少ないことを報知部60で報知するため、バッテリ64の予備電力切れにより、異常状態のときに動作履歴が記憶できなくなるのを防止できる。
【0107】
さらに、異常状態は第1の記憶部56に記憶できない状態であるが、必要な動作履歴は第2の記憶部62に残すことができる。
【0108】
さらに、異常状態を検知する異常状態検知部67を備えるため、異常状態のときに、第2の制御部61により動作履歴を記憶部70(第2の記憶部62)に記憶できる。
【0109】
異常状態検知部67は、主電力の遮断状態の他に、第1の記憶部56の動作異常状態、第1の制御部55の動作異常状態、および非常扉16の開放状態の少なくとも1つを検知してもよい。いずれの異常状態のときでも、第2の制御部61により動作履歴を記憶部70(第2の記憶部62)に記憶できる。そして、主電力の遮断状態は、第2の基板52に供給される電力が主電力から予備電力に切り換わったことで検知できる。第1の記憶部56の動作異常状態は、第1の制御部55で第1の記憶部56の記憶異常などの動作異常を判断することで検知できる。第1の制御部55の動作異常状態は、第1の制御部55と第2の制御部61との通信異常などに基づいて検知できる。非常扉16の開放状態は、非常扉開閉検知部66に基づいて検知できる。
【0110】
さらに、複数の収納部31(錠機構27)に収納された鍵26の取り出しを許可する第2の認証部59(非常ダイヤル錠20)を備えるため、異常状態のときでも、第2の認証部59(非常ダイヤル錠20)を使った鍵26の取り出しができるとともに、第2の認証部59(非常ダイヤル錠20)を使った鍵26の取り出しにかかる動作履歴の少なくとも一部を第2の記憶部62に記憶し、必要な動作履歴を残すことができる。
【0111】
第2の認証部59(非常ダイヤル錠20)は、異常状態のときにも動作可能であるため、鍵26を取り出すことができる。
【0112】
さらに、第1の記憶部56と第2の記憶部62とは別々の箇所に設けられているため、つまり第1の記憶部56と第2の記憶部62とは別部品であるため、第2の記憶部62には第1の記憶部56よりも記憶容量が少なくて省電力で動作するものを用いることができる。
【0113】
また、物品管理装置10である鍵管理機11の動作履歴を管理する履歴管理方法によれば、鍵管理機11の動作履歴を記憶部70に記憶する第1の記憶ステップと、記憶部70に記憶された動作履歴の一番古い動作履歴を記憶したまま、それ以外の動作履歴の少なくとも一部を消去し、新規の動作履歴を新たに記憶する第2の記憶ステップとを備えるため、記憶容量を少なくすることが可能であって省電力化への対応が可能で、鍵管理機11の必要な動作履歴を確実に残し、鍵26の管理を厳正にできる。
【0114】
さらに、記憶部70として、第1の記憶部56と、この第1の記憶部56よりも記憶容量が少なくて省電力で動作する第2の記憶部62とを用い、第1の記憶ステップにおいて、鍵管理機11の通常状態における動作履歴を第1の記憶部56に記憶し、鍵管理機11の異常状態における動作履歴を第2の記憶部62に記憶し、また、第2の記憶ステップにおいて、第2の記憶部62に記憶された動作履歴の一番古い動作履歴を記憶したまま、それ以外の動作履歴の少なくとも一部を消去し、新規の動作履歴を新たに記憶するため、より一層の省電力化への対応が可能となる。
【0115】
第2の記憶ステップでは、第2の記憶部62に記憶された動作履歴の一番古い動作履歴を記憶したまま、第2の記憶部62に記憶された一番新しい動作履歴を消去し、新規の動作履歴を新たに記憶するか、あるいは、第2の記憶部62に記憶された一番古い動作履歴の次に古い動作履歴を消去し、新規の動作履歴を新たに記憶するか、あるいは、第2の記憶部62に記憶された動作履歴のうちの重要でない動作履歴から優先して消去し、新規の動作履歴を新たに記憶する。鍵管理機11では、異常状態の発生時において、一番古い動作履歴と一番新しい動作履歴を確認することが重要であり、既に記憶されている一番新しい動作履歴や、一番古い動作履歴の次に古い動作履歴などの重要度は比較的低いため、鍵管理機11の必要な動作履歴を確実に残し、鍵26の管理を厳正にできる。
【0116】
さらに、履歴管理方法において、鍵管理機11の異常状態が解除されたら、第2の記憶部62に記憶された動作履歴を第1の記憶部56に移行する移行ステップを備えるため、動作履歴を第1の記憶部56で管理できるとともに、記憶容量の少ない第2の記憶部62への新規の動作履歴を新たに記憶することができる。
【0117】
さらに、履歴管理方法において、動作履歴とは、鍵26の取り出しにかかる動作履歴であり、鍵管理機11の必要な動作履歴を確実に残し、鍵26の管理を厳正にできる。
【0118】
なお、本実施の形態では、鍵管理機11が有する記憶部70として第1の記憶部56および第2の記憶部62を有するが、記憶部70は1つでも構わない。すなわち、第1の記憶部56および第2の記憶部62の上述した動作を行うものであれば、その形状や構造は限定されない。例えば、第1の記憶部56と第2の記憶部62は必ずしも別体である必要はなく、1つの記憶部70の使用領域を分けて実現されてもよい。
【0119】
また、本実施の形態では、異常状態のときに、第2の認証部59(非常ダイヤル錠20)を使って、複数の収納部31(錠機構27)に収納された鍵26の取り出しを可能としたが、第1の認証部58を使って任意の収納部31(錠機構27)に収納された鍵26の取り出しを1つずつ可能としてもよい。この場合にも、第2の制御部61は、異常状態のときに、第1の認証部58を使った鍵26の取り出しにかかる動作履歴の少なくとも一部を第2の記憶部62に記憶する。さらに、異常状態のときに、第1の認証部58に予備電力を供給することにより、第1の認証部58は異常状態のときにも動作可能とすることができる。
【0120】
また、非常ダイヤル錠20の認証により第1の扉13を開放し、所定のメカキー操作で、全てのホルダ24のロックが解錠されるような機構となっていてもよい。その場合、第1の扉13の開放履歴をログとして保存する。
【0121】
また、本実施の形態においては、主電力の電源オフ時と電源オン時の動作履歴の情報を比較するようにしてもよい。これら動作情報を比較することで、動作情報に何か新しい情報があれば、主電力の電源オフ時に何かしら操作が行われたことを迅速かつ容易に判断することができる。
【0122】
動作情報から何か情報が消えていれば、主電力の電源オフ時に記憶部70に不正な操作が行われた可能性があることを迅速かつ容易に判断することができる。
【0123】
さらに、動作情報の比較対象は、全体の動作情報だけでなく、例えばホルダ24毎の動作履歴や、特定のホルダ24の動作履歴や、所定時間の動作履歴だけを比較対象とすることも当然可能であり、比較対象自体は特に限定されるものではない。
【0124】
比較結果に異常(つまり差異)があれば、操作者に報知するようになっていてもよい。また、ホルダ24毎に比較を行う場合、異常があったホルダ24がどれであるかを操作者がわかるような報知を行ってもよい。
【0125】
さらに、比較結果に異常(つまり差異)があれば、差異部分の動作履歴の情報を画面出力したり、外部に送信したり、印字することができるようにしてもよい。
【0126】
また、本実施の形態では、物品管理装置10として鍵管理機11に適用したが、例えば、物品を保管する金庫、物品としての貨幣を保管する貨幣処理装置、物品としての貸与物を保管する重要物管理装置、および物品としての預入物を保管するロッカーなどにも適用し、物品の取り出しにかかる動作履歴の記憶管理を行ってもよい。
【0127】
なお、取り出しにかかる動作履歴としては、例えば、物品の抜き取り履歴、物品にアクセスする扉の解錠履歴、該扉の開閉履歴など、物品の取り出しに関係する情報全般を含む。
【符号の説明】
【0128】
10 物品管理装置
16 非常扉
23 物品
31 収納部
55 第1の制御部
56 第1の記憶部
58 第1の認証部
59 第2の認証部
60 報知部
61 第2の制御部
62 第2の記憶部
64 バッテリ
67 異常状態検知部
70 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5