(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】防振支持構造
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20220609BHJP
F16F 15/067 20060101ALI20220609BHJP
F16F 1/06 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
F16F15/04 A
F16F15/067
F16F15/04 D
F16F1/06 A
(21)【出願番号】P 2018192630
(22)【出願日】2018-10-11
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】池田 政弘
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-536067(JP,A)
【文献】特開2004-116442(JP,A)
【文献】特開2017-180658(JP,A)
【文献】特開2005-030570(JP,A)
【文献】特開2008-039095(JP,A)
【文献】特開2014-020427(JP,A)
【文献】特開昭61-286620(JP,A)
【文献】特表2013-524138(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102302377(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00-15/36
F16F 1/00-6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーメッシュをコイル状に形成したバネ部材を備えることを特徴とする防振支持構造。
【請求項2】
請求項1記載の防振支持構造において、
前記ワイヤーメッシュは、その厚みよりも幅のほうが大きい扁平状をなし、前記扁平状をなす前記ワイヤーメッシュがコイル状に形成されていることを特徴とする防振支持構造。
【請求項3】
ワイヤーメッシュをコイル状に形成したバネ部材を相手部材に取り付ける防振支持構造であって、
前記バネ部材と、前記相手部材に設けた取付孔と、を備え、
前記バネ部材を前記取付孔の周縁部にねじ込むことにより前記バネ部材を前記相手部材に取り付けることを特徴とする防振支持構造。
【請求項4】
ワイヤーメッシュをコイル状に形成したバネ部材を相手部材に取り付ける防振支持構造であって、
前記バネ部材と、前記バネ部材の内周に差し込まれるカラーと、前記カラーの内周に差し込まれるボルトと、前記相手部材に設けたネジ穴と、を備え、
前記ボルトを前記ネジ穴にねじ込むことにより前記バネ部材を前記相手部材に取り付けることを特徴とする防振支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から
図4に示すように、ゴム等の高分子材料よりなるバネ部材101を備える防振支持構造(防振グロメット)が知られており、この防振支持構造は、支持体102によって被支持体103を支持する状況下で、支持体102から被支持体103へ或いは反対に被支持体103から支持体102へ振動が伝播されるのを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防振支持装置は例えば、自動車用機器の分野で用いられ、特にエンジン周辺や排気装置周辺に用いられる。
【0005】
近年、自動車における居住空間確保の観点から内燃機関部分の省スペース化が図られており、これに伴って機器周辺の環境温度が高くなる傾向にある。
【0006】
したがって、高分子材料よりなるバネ部材101が熱害を受けることがないようその対策を講じる必要がある。
【0007】
本発明は、耐熱性に優れ、熱害を受けにくく、しかも主に軸方向のバネ性を発揮することが可能な防振支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の防振支持構造は、ワイヤーメッシュをコイル状に形成したバネ部材を備えることを特徴とする。
【0009】
また、実施の態様として、上記記載の防振支持構造において、前記ワイヤーメッシュは、その厚みよりも幅のほうが大きい扁平状をなし、前記扁平状をなす前記ワイヤーメッシュがコイル状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の防振支持構造は、ワイヤーメッシュをコイル状に形成したバネ部材を相手部材に取り付ける防振支持構造であって、前記バネ部材と、前記相手部材に設けた取付孔と、を備え、前記バネ部材を前記取付孔の周縁部にねじ込むことにより前記バネ部材を前記相手部材に取り付けることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の防振支持構造は、ワイヤーメッシュをコイル状に形成したバネ部材を相手部材に取り付ける防振支持構造であって、前記バネ部材と、前記バネ部材の内周に差し込まれるカラーと、前記カラーの内周に差し込まれるボルトと、前記相手部材に設けたネジ穴と、を備え、前記ボルトを前記ネジ穴にねじ込むことにより前記バネ部材を前記相手部材に取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、上記構成により、耐熱性に優れ、熱害を受けにくく、しかも主に軸方向のバネ性を発揮することが可能な防振支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る防振支持構造に備えられるバネ部材の斜視図
【
図3】(A)は同防振支持構造の組立て状態を示す斜視図、(B)は同防振支持構造の作動状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態に係る防振支持構造は、その構成部品として
図1に示すように、ワイヤーメッシュをコイル状(螺旋状)に形成したバネ部材11を備えている。
【0015】
ワイヤーメッシュは、金属細線をメリヤス状に編成し、圧縮成型加工や波付け加工を施したものである。金属細線の材質はステンレス、亜鉛メッキ鉄線、銅メッキ鉄線、チタン、アルミまたは真鍮などとされている。金属細線の線径はφ0.04~0.60mm程度とされている。金属細線の密度は0.9~4.0g/cm3程度とされている。
【0016】
また、ワイヤーメッシュは、その厚みt1よりも幅w1のほうが大きい扁平状をなし、このように扁平状をなすワイヤーメッシュが所定の外径d1、内径d2およびピッチpを備えるコイル状の、円筒体をなすバネ部材11として形成されている。
【0017】
上記ワイヤーメッシュよりなるコイル状のバネ部材11は、被支持体(支持対象機器ブラレットなど)としての一方の相手部材21に取り付けられる。
【0018】
取付けに際しては
図2に示すように、相手部材21に予め取付孔22を設け、この取付孔22の周縁部に対しバネ部材11を螺旋運動(矢印S)させ、取付孔22の周縁部に対しバネ部材11を軸方向の中ほどまでねじ込んでゆくことによりバネ部材11を相手部材21に取り付ける。取付孔22は円孔であって、その内径d
3をバネ部材11の外径d
1よりも小さく、バネ部材11の内径d
2よりも大きく形成されている。相手部材21の厚みt
3はバネ部材11のピッチpと同等かもしくはバネ部材11のピッチpよりも少々大きく形成されている。
【0019】
尚、このようにワイヤーメッシュよりなるコイル状のバネ部材11を被支持体としての一方の相手部材21に取り付けるに際しては
図2に示したように、相手部材21における取付孔22の周縁部の円周上一箇所に切欠き状の係合部23を設け、対応してバネ部材11の特定ピッチにおける外径部平面上の円周上一箇所に突起状の係合部13を設けるのが好適である。そして、このようにすると取付孔22に対しバネ部材11を螺旋運動させ取付孔22の周縁部に対しバネ部材11をねじ込んでゆく過程で、切欠き状の係合部23に突起状の係合部13が係合し、係合した時点でねじ込みが停止され、ねじ込み量が規制される。したがってこのようにねじ込み量の規制手段(ストッパ)を備えることにより、バネ部材11のねじ込み量を常に一定化することができる。
【0020】
また、上記ワイヤーメッシュよりなるバネ部材11は、支持体(車体側ベースなど)としての他方の相手部材31に取り付けられる。
【0021】
取付けに際しては
図2に示すように、相手部材31に予めネジ穴32を設け、バネ部材11の内周にフランジ42付きのカラー41を差し込み、カラー41の内周に頭部52付きのボルト51を差し込み、ネジ穴32に対しボルト51をねじ込んでゆくことによりバネ部材11を相手部材31に取り付ける。ネジ穴32に対するボルト51のねじ込みは
図3(A)に示すように、コイル状のバネ部材11にピッチ間スキマcが残る程度で停止させる。
図3(B)に示すようにこのピッチ間スキマcは、バネ部材11のバネ作動に応じてその大きさが変化し、または一時的に消失することになる。
【0022】
上記構成の防振支持構造においては、ゴム等の高分子材料よりなるバネ部材が設けられておらず、その代わりとしてワイヤーメッシュよりなるバネ部材11が設けられており、ワイヤーメッシュよりなるバネ部材11はその材質上、優れた耐熱性を発揮する。したがって耐熱性に優れ、熱害を受けにくく、高温雰囲気での用途に耐え得る構造の防振支持構造を提供することができる。
【0023】
また、バネ部材11がワイヤーメッシュをコイル状に形成したものとされているため、このバネ部材11は主に軸方向(コイル中心軸線方向)のバネ性を発揮する。したがって軸方向に入力する荷重や振動を受け止めやすい構造の防振支持構造を提供することができる。
【0024】
また、バネ部材11をコイル状に形成することで、バネ部材11は複数の部品に分割されておらず一体形成され、取付孔22に対し1点での孔部装着が可能とされ、同時に外径側取付部も形成することが可能とされている。
【0025】
また、コイル状のバネ部材11の内周側に挿入したカラー41がバネ部材11の内周面に接触することで、主支持方向である軸方向挙動時に、ワイヤーメッシュ縮径分とカラー41の外周面が摺動し、摩擦力が発生する。したがってこの摩擦力による摩擦減衰を得ることが可能とされている。
【0026】
尚、この場合、防振領域となる振幅小の領域ではワイヤーメッシュよりなるバネ部材11のバネ性のみで減衰を発揮させ、共振領域や過大な外部入力が発生したときには摩擦力による摩擦減衰を加えるのが好ましく、このようにすればバネ部材11による防振特性を最適化することができる。
【0027】
以上のように本発明によれば、従来では両立が困難であった高温雰囲気での効果的な防振支持の両立が、組付けの煩雑さを伴なうこともなく実現されることになる。
【符号の説明】
【0028】
11 バネ部材
13,23 係合部
21,31 相手部材
22 取付孔
32 ネジ穴
41 カラー
42 フランジ
51 ボルト
52 頭部